生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_安定性の向上した還元試薬を用いた免疫学的測定法
出願番号:2004298140
年次:2006
IPC分類:G01N 33/531


特許情報キャッシュ

吉村 徹 JP 2006112834 公開特許公報(A) 20060427 2004298140 20041012 安定性の向上した還元試薬を用いた免疫学的測定法 アボットジャパン株式会社 000109015 川口 義雄 100062007 一入 章夫 100113332 小野 誠 100114188 大崎 勝真 100103920 坪倉 道明 100124855 吉村 徹 G01N 33/531 20060101AFI20060331BHJP JPG01N33/531 B 18 OL 17 本発明は、免疫学的測定法において使用する、安定性の向上した還元試薬に関する発明である。 還元剤なかでもジスルフィド結合を還元する目的で使用されるスルフヒドリル基を含有する還元剤は、いくつかの免疫学的測定法において、阻害物質の影響を防ぐためまた、試薬中の主に抗原の活性を維持するために使用されている(特許文献1ないし4参照)。代表的な還元剤として水酸基の結合した、メルカプトエタノールやチオグリセロールが知られているが、不快臭をもつという問題が存在していた。また、もっとも代表的な還元剤はジチオスレイトール(DTT)であるが、ある程度の不快臭を持つことに加え、空気酸化を受けやすく容易に活性を失ってしまうことが知られている。 また、十分な還元活性を示し、不快臭を感じさせず、なおかつ、より長い安定性を保つためにシステインを利用することも知られている。本物質は、不快臭を漂わせないことに加え、還元剤としての活性もイムノアッセイの使用に十分でありDTTより安定な物質であるため、免疫学的測定法に用いるのに適している物質であるが、空気酸化により生じた酸化型システインによる析出が発生するため、溶液状態で保存する場合にはある程度の期間の安定性しか期待できなかった。 近年免疫学的測定法の分野においては、自動化および短時間測定が可能になってきているが、短時間に十分な還元能を発揮するためには還元剤の濃度を上げることが必要となってくる。しかし、還元剤の濃度を上昇させることは、酸化体の発生を招き、析出物の早期発生を招くため、試薬の有効期限の観点からは、マイナスの要因となる。この問題を解決するために、還元剤を粉末状で使用者に供給し、使用直前に使用者に希釈液と混合してもらうなどの手段が講じられているが、操作上簡便とは言いがたいことに加えて、混合後の溶液の保存期間自体が短いという問題点は依然として存在していた。 酸化型体を形成した場合に比較的溶解度が高いグルタチオンも良く使用される還元剤であるが、還元作用が弱いという問題点が存在していた。 トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)のように、安定性の改善された還元剤も存在するが、例えば、免疫測定における反応条件においては十分な還元能を示さないことがあり、有用とはいえなかった。特許第2945025号公報特開2001−289850号公報特開平6−74956号公報特開2001−255325号公報 発明者らは、還元型、酸化型ともに溶解度が高くなおかつ高い還元性能を有し、したがって、高い還元性能及び高い保存安定性があり、しかも不快臭を発生させない、免疫学的測定に使用するのに非常に好ましい物質を得ることを目的として、既存の還元剤について検討を行った。その結果スルフヒドリル基およびアミノ基を有し、カルボキシル基などの陰性の官能基を有しない分子が還元性能を十分に有し、なおかつ長時間安定であり(活性低下がなく、酸化型の溶解度にも優れているため析出が生じない)、しかも不快臭がない、との特徴を有することを見出した。これら還元剤は特に自動化された免疫学的測定の使用のために、溶液状態での安定性に優れた試薬として提供することができる。 本発明を具現化するために実施例中で使用した物質は既存の物質であり、他分野においては多用されている物質であるため、免疫学的測定法において還元剤を利用する特許の明細書の中にその物質が還元剤の一種として記されることは有るが、他において問題がある試薬と同様に記載されていることから、本発明の概念について記したものではまったく無く、本発明の概念は十分に有効・かつ新規性を有するものと考えるものである。 特開2001−289850号明細書および特開平6−74956号明細書は、免疫測定に還元剤を用いる方法について開示しているものである。これら明細書中に本発明で使用する物質のうちの一つが例示されているが、数ある還元剤の一種類として、例示されているだけであり、安定性についての記載があるわけでもなく、また本発明を使用したときの優れた安定性について示唆するものではまったく無い。 特開2001−255325号明細書において、いくつかの試薬の安定性がDTTより良いため、免疫学的測定法において用いるのに適しているとの記述があるが、1価のSH基(スルフヒドリル基)をもつ還元剤が分子内に2価のSH基をもつDTTより安定であることは、よく知られたことであり、特開2001−255325号明細書は単に既知の事実を記載しているに過ぎない。 特開2001−255325号明細書には、免疫学的測定法に用いる還元剤として本発明に使用する物質の一つが例示されているが、これは数ある還元剤の一種類として例示されているだけであり、析出の問題について何ら言及するものではなく、また不快臭を発生させないことに注意をしているわけでもない。また、本発明のスルフヒドリル基およびアミノ基を有し、カルボキシル基などの陰性の官能基を有しない分子を還元剤としてもちいると、還元性能に加えて空気酸化による析出も考慮した上で溶液状態での安定性を極めて向上させることができることについての示唆をしているわけでも無い。 上記のように本発明を具現化するために実施例中で用いた試薬は既存の物質であるが、これら物質がSH基を有する還元剤でありながら、高い安定性を有し、さらに不快臭も微弱であるとの知見に基づき、免疫学的測定法において用いる優れた還元試薬を提供する本発明は、従来技術に比較し優れた効果を奏する新規な発明である。 上記課題を解決するために、スルフヒドリル基およびアミノ基を有し、カルボキシル基などの陰性の官能基を有しない分子を還元剤として用いることにより、還元剤を必要とする免疫学的測定において、溶液状態で高い安定性を有する試薬を提供することができる。本発明により、製造者は溶液状態で還元試薬を供給することができ、使用者は還元剤を溶解する手間が省け簡便に測定を実施し得ることに加え、溶解後の保存期間をさらに長くすることが可能になる。より具体的には、本発明に用いる還元剤としては、下記式:HS−R1−NH−R2[式中、R1は下記の構造を有する2価の原子団から成る群より選択され、(式中各R3はH、メチルもしくはエチルで置換されていてもよいアミノ、SH、OH、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシから成る群より独立して選択される)、R2はH、メチルまたはエチルを示す]を有するものが好ましい。また、より具体的にはアミノエタンチオールが還元剤として好適である。 本発明に用いるスルフヒドリル基およびアミノ基を有し、カルボキシル基などの陰性の官能基を有しない還元剤は、免疫学的測定試薬のいかなる試薬中にも入れることができる。例えば、通常免疫学的測定試薬は、固相化抗原・抗体試薬、標識抗原・抗体試薬を必要とするが、そのどちらに入れることも可能であり、さらに、測定にアッセイ緩衝液を使用する場合や、サンプル希釈液を使用する場合、また、その他の試薬を使用する場合においても、そのどの試薬中に入れることも可能である。サンプル中に存在する阻害要因の影響を低減させる目的で使用する場合は、抗原・抗体への影響を最低限にするためアッセイ緩衝液またはサンプル希釈液中に存在させることが望ましいが、抗原抗体への悪影響が認められない場合はその限りではない。また主に抗原の活性を維持することを目的として本発明を使用する場合は、固相化溶液、または標識溶液に入れることが望ましい。 また、自動化された短時間測定に供される場合は、おおよそ25mM以上、好ましくは50mM以上、より好ましくは100mM以上の濃度で用いることが予測されるが、その測定において十分な還元性能を発揮できる濃度であれば、それより低くても高くても構わない。本試薬は溶解度の範囲内において使用することができ、例えばアミノエタンチオールを用いる場合には、8.3Mの濃度で析出を生ずることなく使用することができる。 本発明の還元試薬は、単独で用いることもできるし、複数混合して使用することもできる。また本発明の還元試薬と、その他の一般的な還元剤とを混合して使うこともできる。 還元剤を溶液中で保存する際に、安定性をより向上させるために酸性条件下で保存することも可能であるし、空気による酸化を抑制するためにEDTAなどの金属キレート剤を添加することも通常の還元剤と同様に行うことができる。 本発明により、製造者は溶液状態で還元試薬を供給することができ、還元剤を溶解する手間が省けることに加え、溶解後の保存期間をさらに長くすることが可能になる。 以下に本発明を実施するための最良の形態の一つを記載する。但しこれら形態は本発明の例示であり、本発明をこれら形態に限定することを意図するものではない。 1.免疫学的測定キット 免疫学的測定に用いる試薬、例えば抗体、酵素基質、緩衝液等とともに、スルフヒドリル基およびアミノ基を有し、カルボキシル基などの陰性の官能基を有しない還元剤の水溶液を含むキットを本発明の免疫学的測定キットとすることができる。 好ましい還元剤としてはアミノエタンチオールがあげられ、反応終濃度が25mM以上、好ましくは50mM以上、より好ましくは100mM以上になる濃度に調製し、密封容器に入れて保存する。 2.免疫学的測定方法 上記還元剤を、免疫学的測定法の実施時にアッセイ緩衝液、サンプル希釈液、固相化溶液などに加え一定時間反応させて、阻害要因の影響を低減させる。 還元剤の溶解度の測定および不快臭の確認 下記に示した還元剤について溶解度の観察を行った。還元剤には、カルボキシル基、スルホン酸基などの陰性基、アミノ基、水酸基といった代表的な官能基のついているスルフヒドリル還元剤を使用した。まず1M濃度において攪拌・溶解を行い、溶けなかったものについては、さらに希釈液を添加し、攪拌溶解を行った。この操作を溶けるまでもしくは0.1Mまで繰り返し、還元剤の溶解度を求めた。さらにいくつかの還元剤については、酸化型での溶解度についても検討した。希釈液には塩化ナトリウム、EDTA、酢酸を含有する水溶液を用いた。結果を表1に記した。表1中に、溶解されたものについては溶解、溶解されなかったものについては不溶と記した。また、水溶液中での臭いについても、表1に記した。 使用した還元剤類は以下の通りである。還元型システイン(L−システイン塩酸塩、シグマアルドリッチ社製 C−7352)、酸化型システイン(L−シスチン、関東化学社製 310C2270)、メルカプトプロパンスルホン酸(3−メルカプトスルホン酸ナトリウム塩、シグマアルドリッチ社製 251682)、メルカプトコハク酸(シグマアルドリッチ社製 M6182)、チオ乳酸(還元型)(チオラクティック酸、シグマアルドリッチ社製 T31003)、還元型アミノエタンチオール(2−アミノエタンチオール塩酸塩、関東化学社製 25100−30)、酸化型アミノエタンチオール(シスタミンジ塩酸塩、アクロスオーガニクス社製 111770250)、ペニシルアミン(D−(−)−ペンシルアミン、シグマアルドリッチ社製 P−4875)、メルカプトピリミジン(2−メルカプトピリミジン、アクロスオーガニクス社製 156740100)、チオグリセロール(シグマアルドリッチ社製M2172) 酸化型における溶解度が高いことによって、保存中の還元剤の析出発生を防ぐことができると考えられることから、酸化型での還元剤の溶解度は、還元剤の安定性を考慮する上で重要な要因である。システインはスルフヒドリル基のほかにアミノ基とカルボキシル基の官能基を一つづつ持つ分子である。アミノ基が無く、カルボキシル基のみがSH基以外の官能基として存在するチオ乳酸においては、いったん溶解したチオ乳酸溶液からわずか数時間で析出が観察されることから、酸化型における溶解度が、システインをも下回る極めて低い濃度でしかないことが示唆される。またシステインより、カルボキシル基を取り除いた構造をもつアミノエタンチオールについては、システインの500倍といった酸化型で極めて高い溶解度を得ることができることがわかった。この結果より、アミノ基を有し、カルボキシル基を持たない構造であることが、酸化型還元剤の溶解度の向上に重要であることが示唆された。 また、臭いについて考察すると、アミノ基の存在する、システインおよびアミノエタンチオールについて不快臭が気にならず、不快臭のある分子はすべてアミノ基が存在しない分子であることがわかった。これはアミノ基の存在が、不快臭を抑制する効果を持つことを示唆するものである。 上記より、不快臭、および溶液状態での安定性を考慮すると、アミノ基をもち、カルボキシル基を持たない分子が、免疫学的測定法に用いる還元剤として有用である、と考えることができる。 IgMの分解 1mg/mlに希釈したMouse IgM(アボットジャパン株式会社より入手)に免疫学的測定法においてよく使用されるトリス緩衝液を添加し、さらに還元剤溶液を添加し(混合比、3容量(IgM 溶液):5容量(トリス緩衝液):5容量(還元剤溶液))、3分後および25分後に高速液体クロマトグラフィーを使用したゲルろ過分析を行った(カラム:東ソー株式会社社製 TSK super SW3000)。本分析方法を用いると、分解されていないIgMを分子量90万付近のピークに、還元剤により分解したIgMモノマーを分子量15万付近のピークに検出することができる。特許第2945025号明細書に記載されているように、IgMは非特異的な偽陽性シグナルを生じさせる物質として知られており、IgMを分解できる還元剤であるということは、免疫学的測定法での使用においての有効性を示す一つの指標と考えることができる。分子量90万部分に存在するピークと15万程度の部分に存在するピークを比較し、還元剤によるIgMの分解割合を算出した(アミノエタンチオール50mM以下の部分に関しては、分解途中と思われる分子量約30万程度のピークも存在していたので、この部分も分解物に含め計算を行った。)。使用した還元剤は以下の通りである。システイン(L−システイン塩酸塩、シグマアルドリッチ社製 C−7352)、チオ乳酸(シグマアルドリッチ社製 T31003)、ペニシルアミン(D−(−)−ペンシルアミン、シグマアルドリッチ社製 P−4875)、メルカプトプロパンスルホン酸(3−メルカプトスルホン酸ナトリウム塩、シグマアルドリッチ社製 251682)、アミノエタンチオール(2−アミノエタンチオール塩酸塩、関東化学社製 25100−30)、メルカプトピリミジン(2−メルカプトピリミジン、アクロスオーガニクス社製 156740100)、グルタチオン(L−グルタチオン還元型、シグマアルドリッチ社製 G−4251)、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)フォスフィン塩酸塩、シグマアルドリッチ社製 C−4706)。各還元剤は希釈液(塩化ナトリウム、EDTA、酢酸を含有する水溶液)中に溶解した。TCEPに関しては精製水中に溶解した。測定結果を表2に示した。 表2より、アミノ基の存在するシステインおよび、アミノエタンチオールは良好なIgM分解率を示した。カルボキシル基を一つ持つチオ乳酸と、カルボキシル基に加えてアミノ基も持つシステインを比べた場合に、システインのほうが明らかにIgM分解活性が高いことから、アミノ基は、還元剤の還元活性を促進させる重要な働きがあると考えることができる。アミノエタンチオールとシステインを比較した際に、同濃度において特に反応時間3分のときの分解率がアミノエタンチオールにおいて優れていることから、カルボキシル基はIgMの分解活性を低下させる官能基であることが示唆された。またスルホン基を有するメルカプトプロパンスルホン酸における分解率が、アミノエタンチオール、システインと比べて極端に低いことから、スルホン基、カルボキシル基といった陰性の官能基が、還元剤の活性において、重要な働きを果たしていないことも示唆された。 またアミノエタンチオールの濃度について考察すると、反応時間3分において100mM以上の濃度で極めて効果があり、50mM以上である程度の効果が認められ、また反応時間25分においては、25mM以上の濃度で効果が認められることがわかる。近年自動化された短時間測定において、おおよそ30分以内に測定が終了し、また測定中の一回の反応時間が最短で数分程度あるものが主流となってきていることから、自動化された短時間測定を視野に入れた場合、少なくとも25mM以上(反応時9.6mM)、好適には50mM以上(反応時19mM)、最適濃度としては100mM(反応時38mM)以上の濃度で使用することが望ましいと考えられる。 安定性試験 システイン溶液および、アミノエタンチオール溶液について、安定性試験を行った。システイン、アミノエタンチオールを希釈液中に溶解させ、アーキテクト自動免疫分析装置(アボットジャパン社製)用のボトルに添加した。冷蔵(2−8℃)、37℃、オンボード中で保存し、還元活性の測定および目視による析出物の観察を行った。オンボード保存とは、試薬を装置にセットする手間および時間を省くために、いつでも測定ができる状態すなわち、試薬保存用のキャップをはずし、分注ピペットが入るように切り込みの入った専用のゴムキャップをはめた状態で、自動分析装置中に保存(冷蔵)することである。試薬保存用のキャップに比べて、空気の交換が起こりやすい状態での冷蔵保存であり、還元剤の保存にはより過酷な状態であるが、本状態で長期間安定であることは自動免疫分析装置を用いる際の使い勝手の向上に役にたつものである。 還元活性の測定(SH基の活性測定)にはエルマン法を用いた。10ulの10mMの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸(DTNB))溶液に1Mトリス(pH8.0)10ulを添加し、さらにサンプルを90ul添加後、波長412nmの吸光度から波長600nmの吸光度を引いた値を求めた。還元剤添加溶液で得られた値から、還元剤未添加溶液でえられた値を差し引き、還元剤のSH基活性を求めた。本値の低下はSH基活性すなわち、還元活性の低下を示している。 図1にアミノエタンチオール溶液およびシステイン溶液の保存期間・条件とSH基の活性の関係について示した。本図は安定性試験開始日の値を100%としたときの相対値で示したものである。図1より、アミノエタンチオール、システインともに37℃で3ヶ月間保存した場合にでも、有意な活性の低下が起こっていないことがわかる。 表3・4に、システイン、アミノエタンチオールを用いた場合の、保存条件・期間と析出物の発生の有無についての関係を示した。析出疑いと示したものは、少々の析出物様の粒が認められたものの、翌月の測定においては認められなかったために、析出物であるとの確認がされなかったもののことである。析出疑いを含めて考慮すると、溶液状態で保存する場合、システイン0.5M溶液においては、冷蔵状態でも最大2ヶ月しか保存安定性が確保できないことが分かる。一方アミノエタンチオールを用いた場合、37℃においても4ヶ月以上溶液状態で安定性が保持されていることがわかった。システインは37℃において2ヶ月の保存で析出物を発生させることから、アミノエタンチオールの溶液状態での安定性が、システインに比べて極めて高いことが分かった。 本実施例は、実施例1で示した、酸化型還元剤の溶解度を向上させた還元剤を用いることにより、保存による析出物の発生を防ぐことができるということを、実例として示したものである。 実施例1で示した特徴をもつ還元剤すなわち、アミノ基を有し、カルボキシル基を有しない分子を還元剤として用いる場合、システインを用いた場合に比べて、溶液状態においてより長期の保存を行うことができるようになったと、言うことができる。 実施例1,2,3より、アミノ基を持ち、カルボキシル基などの陰性の官能基を持たないスルフヒドリル還元剤を用いた場合、阻害物質の影響を排除するのに十分な活性を有し、不快臭をもたず、なおかつ、溶液状態でシステインを超える長期間の安定性を得る還元剤として、使用できることがわかった。 スルフヒドリル基およびアミノ基を有し陰性の官能基を有しない化合物を含んで成る還元試薬を使用することにより、溶液状態での還元試薬の安定性を向上させたことを特徴とする免疫学的測定方法。 前記還元試薬が溶液状態である請求項1に記載の免疫学的測定方法。 還元剤が下記式:HS−R1−NH−R2[式中、R1は下記の構造を有する2価の原子団から成る群より選択され、(式中各R3はH、メチルもしくはエチルで置換されていてもよいアミノ、SH、OH、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシから成る群より独立して選択される)、R2はH、メチルまたはエチルを示す]を有する請求項1または2に記載の免疫学的測定方法。 該免疫学的測定が、自動化された測定法であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の免疫学的測定方法。 前記還元剤が、アミノエタンチオールである請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫学的測定方法。 還元試薬中の還元剤の濃度が25mM以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫学的測定方法。 還元試薬中の還元剤の濃度が50mM以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫学的測定方法。 還元試薬中の還元剤の終濃度が100mM以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫学的測定方法。 前記免疫学的測定方法が、抗原測定系である請求項1〜8のいずれか1項に記載の免疫測定方法。 スルフヒドリル基およびアミノ基を有し、陰性の官能基を有しない還元剤を含んで成る還元試薬を含む、還元試薬の安定性を向上させたことを特徴とする免疫学的測定キット。 前記還元試薬が溶液状態である請求項10に記載の免疫学的測定キット。 還元剤が下記式:HS−R1−NH−R2[式中、R1は下記の構造を有する2価の原子団から成る群より選択され、(式中各R3はH、メチルもしくはエチルで置換されていてもよいアミノ、SH、OH、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシから成る群より独立して選択される)、R2はH、メチルまたはエチルを示す]を有する請求項10または11に記載の免疫学的測定キット。 該免疫学的測定が、自動化された測定法であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の免疫学的測定キット。 前記還元剤が、アミノエタンチオールである請求項10〜13のいずれか1項に記載の免疫学的測定キット。 還元試薬中の還元剤の濃度が25mM以上である請求項10〜14のいずれか1項に記載の免疫学的測定キット。 還元試薬中の還元剤の濃度が50mM以上である請求項10〜14のいずれか1項に記載の免疫学的測定キット。 還元試薬中の還元剤の濃度が100mM以上である請求項10〜14のいずれか1項に記載の免疫学的測定キット。 前記免疫学的測定方法が、抗原測定系である請求項10〜17のいずれか1項に記載の免疫測定キット。 【課題】 溶液状態での安定性が改善され、さらに刺激臭が軽減された還元剤を含む免疫学的測定法に用いる測定キットおよび該還元試薬を用いる免疫測定方法を提供する。【解決手段】 スルフヒドリル基およびアミノ基を有し、カルボキシル基などの陰性の官能基を有しない分子を還元剤として使用することにより、溶液状態での還元試薬の安定性を向上させること、および刺激臭を軽減することが可能となる。【選択図】なし


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