| タイトル: | 特許公報(B2)_ビオチンの製造方法 |
| 出願番号: | 2004284001 |
| 年次: | 2010 |
| IPC分類: | C12P 17/18,C12R 1/645 |
大杉 匡弘 松井 徳光 JP 4578914 特許公報(B2) 20100903 2004284001 20040929 ビオチンの製造方法 株式会社シールド・ラボ 391043527 山本 秀策 100078282 安村 高明 100062409 森下 夏樹 100113413 大杉 匡弘 松井 徳光 20101110 C12P 17/18 20060101AFI20101021BHJP C12R 1/645 20060101ALN20101021BHJP JPC12P17/18 BC12P17/18 BC12R1:645 C12P 17/18 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed ビタミン,2000年,vol.74, no.4,p.231 [2-III-2] 飯島記念食品科学振興財団年報,2002年,p.129-134 農林水産技術研究ジャーナル,2002年,vol.25, no.10,p.29-33 温故知新,2004年 7月,no.41,p.80-86 11 2006094750 20060413 32 20070620 戸来 幸男 本発明は、ビオチンの生産方法に関する。より詳細にはビオチンの高収量発酵生産法に関する。 ビオチン(C10H16N2O3S)は、別名ビタミンHまたは補酵素Rとも呼ばれ、ビタミンB複合体の一つで、多くの動植物の生育に必要な物質である。不斉炭素を3個含むため理論的には8個の立体異性体があるが、天然にはD型[(+)−cis−ヘキサヒドロ−2−オキソ−1H−チエノ−(3,4)−イミダゾール−4−吉草酸]しか存在しない。他の7つの異性体、すなわち、L−ビオチン、アロビオチンなどは補酵素活性を示さない。生体内では、ほとんどビオチン酵素の補欠分子族としてたんぱく質のリジンのε−アミノ基とアミド結合していることが知られている(結合型)。遊離の状態(遊離型)で存在することは少ない。主に、ビオチン酵素による炭酸固定および炭酸転移反応に関与することでその生理作用を発揮することが知られている。ビオチン酵素(プロピニルCoAカルボキシラーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼ、メチメマロニルCoA:ピルビン酸トランスカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAデカルボキシラーゼなど)の反応により広く脂肪酸、糖あるいは分岐鎖アミノ酸の代謝に関与する。 ビオチンが栄養学的に重要であることは、ネズミに大量の生卵白を含む飼料を与えたときに起こる皮膚炎、脱毛、体重低下、姿勢の異常や痙攣性歩行などが「卵白障害」と呼ばれるビオチン欠乏に起因することから明らかにされた。 ビオチンは、ローヤルゼリー、ビール酵母、パン酵母、動物の肝臓に多く含まれている。しかし、野菜、果実類には少ない。米には鶏卵黄(生)とほぼ同じ量のビオチンを含むが、米を搗いたり、小麦およびトウモロコシを製粉したり、トウモロコシ、ニンジン、ホウレレン草やトマトなどの殺菌(缶詰)などの食品の加工によってビオチンが損失することが知られている(大杉匡弘、代謝、VOL.27 No.2「ビオチン」(1990)21〜28頁:非特許文献1)。 ビオチンは、低いpHにも高いpHにも安定で、酸素、光、加熱に対しても安定であるが、食品の加工保存中にしばしば損失し、ビオチンの残存率はチーズ製造中で28%、調理した肉で77%、全乳または脱脂乳の濃縮、乾燥などで63〜90%、殺菌(缶詰)の間でニンジンが60%、トウモロコシが37%、大豆が22%、ホウレン草が33%、トマトが45%であることが報告され、食物が摂取されるまでにかなりのビオチンが損失すると推定されている(大杉匡弘、前述)。さらに、食品中に含まれるビオチンは、そのほとんどがたんぱく質と結合した結合型で存在しているので、そのままでは腸から吸収されないといわれている。 ビオチンの効能として知られるのは、以下の通りである(例えば、http://www.j−medical.net/vm/vm、http://vitamin.seikatu−cb.com/bita/biotinを参照のこと)。1)ブドウ糖の再合成補助:乳酸代謝において、ピルビン酸からオキザロ酢酸に変換される際に働く酵素の補酵素としてその機能を補うことによる。筋肉痛や疲労感を防ぐ。2)核酸の合成を促す:DNAの成分である核酸の生成に関わる酵素の補酵素として働き、細胞の合成を補助する。3)アトピー性皮膚炎の治療、アレルギー。4)その他:脱毛、糖尿病など。 その一方、ビオチンは、核酸の非放射線標識に利用されている。この方法は、米国EnzoBiochem社が開発したもので、ビオチンを共有結合させたDNAプローブに、検出されるべき目的遺伝子をハイブリダイズさせた後、ビオチン−アビジンの特異的結合を利用し、蛍光色素で標識した抗アビジン抗体で目的遺伝子を検出する。 田辺製薬は、ビオチン生産菌Serratia marcescensを、セルフ・クローニングによる組換えと突然変異育種により改良し、コルベン培養で250mg/l生産できる菌株の開発に成功している(日経バイオ最新用語辞典、第四版、561頁、1995年6月30日:非特許文献2)。資生堂は、大腸菌の遺伝子組換えで、流加培養により数100mg/lの収率で生産することに成功している(日経バイオ最新用語辞典、同上)。代謝、VOL.27 No.2「ビオチン」(1990)21〜28頁日経バイオ最新用語辞典、第四版、561頁、1995年6月30日 ビオチンの高収量生産法を提供する。 本発明は、ビオチンの製造方法に関し、この方法は、担子菌を食品素材と静置培養する工程;得られる培養物からビオチン含有液を得る工程;該ビオチン含有液からビオチンを回収する工程を包含し、ここで、該食品素材は、穀類、いも類、粗製砂糖、豆類、果実類、乳および微生物菌体からなる群から選択される。 好ましくは、前記担子菌は、Pleurotus属、Flammulina属、Grifola属、Hypsizigus属、Laetiforus属、Roseofomes属、Schizophyllum属、Ganoderma属、Bionectria属、Nectria属、Cariolus属、Phellinus属、Fomitopsis属、Oligopurus属、Fistulina属、Tricholoma属、Agrocybe属、Hericium属、Lentinus属、Irpex属、Morchella属、Tremella属、Sparasis属、Agaricus属、またはNaematoloma属に属する菌株である。 好ましくは、前記穀類は、アマランサス、オートミール、はだか麦、麦芽汁、きび、中力粉、もち米、紅米、米糠、酒粕、そば米、玉蜀黍、はとむぎ、およびひえからなる群から選択される。 好ましくは、前記いも類は、馬鈴薯、紫芋、およびウコンからなる群から選択される。 好ましくは、前記粗製砂糖は、黒砂糖または蜂蜜である。 好ましくは、前記豆類は、小豆、緑レンズ豆、大豆、およびそれらから調製される食品からなる群から選択される。 好ましくは、前記乳類は、生乳である。 好ましくは、前記微生物菌体は、ビール酵母である。 好ましくは、前記担子菌は、Ganoderma属に属する菌株である。 好ましくは、前記Ganoderma属に属する菌株は、Ganoderma lucidumまたはGanoderma applanatumである。 本発明によれば、容易に入手可能な食品素材に担子菌を接種し、静置するだけで天然型ビオチンが高収量で産生されるので、化学合成法、遺伝子組換え法などによるビオチン生産のような煩雑さはなく、しかも、ビオチン原料として、従来法によるよりも高濃度の天然型ビオチン含有素材を得ることができる。また、食用に供される担子菌および食品素材を原料として用いるので、安全性の高い天然型ビオチン含有素材が提供される。このような天然型ビオチン含有素材は、新たな食品素材として利用可能である。 本明細書で用いる用語は、特に示されなければ、当該分野で通常用いられる意味で用いられる。また、本明細書で用いる用語は、一般に、特に示されなければ、単数形の現であってもその複数形の概念をも含む。また、本明細書で用いる「%」は、特に示されなければ重量%を意味する。 本発明は、ビオチンの製造方法に関し、この方法は、担子菌を食品素材と静置培養する工程;得られる培養物からビオチン含有液を得る工程;該ビオチン含有液からビオチンを回収する工程を包含する。 本発明で用いる用語「ビオチン」は、特に注記しなければ、天然に存在するD型[(+)−cis−ヘキサヒドロ−2−オキソ−1H−チエノ−(3,4)−イミダゾール−4−吉草酸]を意味する。また、本発明で用いる用語「ビオチン活性物質」は、Saccharomyces cerevisiaeがその生育に必要とし、Saccharomyces cerevisiaeを検定菌として用いる微生物定量法でビオチン活性として検出される活性を示す物質の群をいい、上記ビオチン、ビオチン生合成の中間体としてビオチンを代替するデスチオビオチン、7−ケト−8−アミノペラルゴン酸、7−ケト−8−アミノペラルゴン酸などを含む。 本明細書で用いる用語「担子菌」は、子実体(きのこ)を生じる菌類をいい、一般に、クロボキシ、サビキンなどを含む原生担子菌類(Protobasidomycetes)と、キクラゲ、シロキクラゲなどを含む異型担子菌類(Heterobasidiomycetes)、シイタケ、マツタケ、キツネのチャブクロ、スッポンタケなどを含む真正担子菌類(Eubasidiomycetes)に含まれる菌株を含む意味で用いられる。しかし、たとえ担子菌としてではなく、例えば、子嚢菌(Ascomycota)として分類されている菌株であっても、ビオチン生成能を有する限り本発明の方法で用いることができる。本明細書で用いる用語「担子菌」は、このような菌株をも包含し、例えば、Nectria属に属する菌株が挙げられる。 好ましくは、本発明の方法では、担子菌として、原生担子菌類のクロボキシ目(Ustilaginales)、サビキシ目(Uredinales)に属する菌株、異型担子菌類のキクラゲ目(Auriculariales)、シロキクラゲ目(Tremellales)に属する菌株、および真正担子菌類に属するサルノコシカケ目(Polyporales)、マツタケ目(Agraicales)などに属する菌株が用いられる。 より好ましくは、本発明の方法では、真正担子菌類に属する、Pleurotus属、Flammulina属、Grifola属、Hypsizigus属、Laetiforus属、Roseofomes属、Schizophyllum属、Ganoderma属、Bionectria属、Nectria属、Cariolus属、Phellinus属、Fomitopsis属、Oligopurus属、Fistulina属、Tricholoma属、Agrocybe属、Hericium属、Lentinus属、Irpex属、Morchella属、Tremella属、Sparasis属、Agaricus属、またはNaematoloma属に属する菌株が用いられる。 さらに好ましくは、本発明の方法では、Pleurotus ostreatus、Pleurotus cornucopiae、Flammulina velutips、Grifola frondosa、Hypsizigus marmoreus、Laetiforus sulphureus、Roseofomes subflexibilis、Schizophyllum commune、Ganoderma lucidum、Ganoderma applanatum、Bionectria ochroleuca、Nectria ochroleuca、Cariolus versiclor、Phellinus linteus、Fomitopsis pinicola、Oligopurus tephroleucus、Fistulina hapatica、Tricholoma matsutake、Tricholoma japonicum、Agrocybe cylindraceae、Hericium erinaceum、Lentinus lepideus、Irpex lacteus、Morchella esculenta、Tremella fuciformis、Sparasis crispa、Agaricus brazei、Naematoloma sublateriumである菌株が用いられる。 上記担子菌は、通常、担子菌の通常の培養方法によって増殖され、食品素材に添加される。担子菌は、液体培養または固体培養のいずれでも増殖され得る。培地としては、特に制限されず、担子菌を培養するための通常の液体培地または固体培地が用いられる。炭素源としては、炭素源としては、担子菌が同化し得るものならいずれも使用し得、例えば、グルコース、蔗糖、糖蜜などの糖類、デンプン、木粉などが用いられ得る。窒素源としては、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、大豆分解物、尿素などの有機窒素源の他、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウムなどの無機窒素源も用いられ得る。必要に応じて、リン酸塩、硫酸マグネシウム、カリウム、カルシウム、銅、ナトリウム、マンガン、亜鉛などの無機塩類、ビタミン類が添加され得る。これらの培地成分は、担子菌の生育を阻害しない濃度であればよく、通常、炭素源は、0.1〜20%、好ましくは、5〜10%、窒素源は、0.01%、好ましくは0.1〜2%の範囲である。またこれらの成分が適切に含まれる農林廃棄物、食品工業の廃棄物、例えば、麦汁などが好適に用いられ得る。 培地のpHを、2.0〜12.0、好ましくは4.0〜8.0の範囲に調整し、好ましくは、加熱滅菌して使用する。培養温度は、担子菌類が生育し得る温度範囲であればよく、10〜40℃、好ましくは25〜35℃である。液体培養するときは、通気培養または振盪培養(旋回培養)が好ましい。培養時間は、培養条件によって異なるが、通常2〜10日の範囲である。 本明細書で用いる用語「食品素材」は、食用として入手可能な任意の材料を含む意味で用いられ、担子菌が生育し、培養物にビオチンを蓄積し得る限り特に制限はない。従って、食品素材は、一般に、担子菌によって吸収利用される炭素を含む化合物(炭素化合物)、および窒素を含む化合物(窒素化合物)を含んでいる。代表的な、食品素材は、上記に示される通りである。 食品素材は、通常、担子菌の増殖に適するように処理される。このような処理は、当該技術分野で慣用されている物理的処理、化学的処理などを含み、例えば、固形の食品素材の場合は、ミルなどを用いて粉砕したあと水に所定時間浸漬すること、得られた浸漬物を加熱すること、加水分解すること、溶媒処理することなどを包含し、液体の食品素材の場合は、水で希釈すること、担子菌の増殖を促進する成分を添加することなどを含み、さらに、必要に応じて、pHなどの条件を、上記担子菌が増殖する範囲に調整することを包含する。 上記担子菌を食品素材と静置培養する工程は、通常、上記のように増殖させた担子菌と、適切な容器に上記のように処理された食品素材とを、好ましくは無菌条件下で混合し、この容器を、担子菌の生育する温度範囲に静置して行われる。担子菌と食品素材との混合は、増殖させた担子菌の菌体あるいは担子菌の菌体を含む培養物と、食品素材とを物理的に混合するいずれの手段を用いても行われ得る。培養期間は、担子菌の十分な生育が観察される期間であり、特に制限はない。 上記得られる培養物からビオチン含有液を得る工程は、得られた培養物を固液分離する工程であって、遠心分離、濾過など通常の手法が用いられ、特に制限はない。 上記ビオチン含有液からビオチンを回収する工程もまた、特に制限はなく、ビオチンを回収するために公知の方法が用いられ、例えば、ビオチンを、活性炭、イオン交換樹脂に吸着させた後、適切な溶媒によってビオチンを溶出することによって実施される。 以下、実施例によって本願発明を説明する。実施例は、本願発明の例示であって、本願発明の範囲を制限する意図はない。 種々の担子菌(きのこ)を、種々の食品素材を用いて培養し、培養物中のビオチン活性物質を検出および定量し、ビオチン産生能の高い担子菌と食品素材の組合せをスクリーニングした。1.供試した担子菌および食品素材 表1に供試した担子菌を、そして表2に供試した食品素材を示した。なお、表1に示す担子菌は、その和名、学名、株名および供給源(採取地など)で識別している。供給源(採取地など)は、市販のものはその商品名で、寄託機関から購入したものはそのカタログに記載された株名で、そして新たに単離したものについては分離源または採取地を記載している。なお、これら担子菌の単離は、当該分野で慣用されている担子菌の培養手順および分離手順に従って実施したので特に説明はしない。また、表1中、NBRCは、生物遺伝資源センター(NITE Biological Resource Center)、MAFFは、農業生物資源研究所(National Institute of Agrobiological Science;農林水産省(The Ministry of Agriculture、Forestry and Fisheries)に由来する)からそれぞれ得た菌株であることを示す。 表2に示す食品素材は、いずれも、市販されているものであって、パッケージまたはカタログに示された商品名、原産地、製造販売元で識別している。2.担子菌(きのこ)菌糸体の培養 表1に示す各菌糸体の培養には、2%麦芽エキスのみからなる液体培地(pH6.0)を用いた。培養は、300ml容三角フラスコに培地200mlを加え、オートレーブ滅菌し、冷却後、各きのこ菌糸の2〜3白金耳量を各々三角フラスコに接種して、25℃、振とう機上で旋回培養(100rpm)して2週間行った。培養により得られた菌糸体(ボール状になるので、これをキノコボールと呼ぶ)を各々種菌とした。3.食品素材の調製 表2に示す各種食品素材は、固体であって大粒の場合はミルで砕き、常温で3〜4時間脱イオン水に浸漬して30〜40%水分含有食品素材とし、その30〜40gをビーカー(口径3.7cm、高さ12cm)に各々取り、オートクレーブ滅菌、冷却した。果汁などの液体である場合は、その約70mlを各々ビーカーに加えた。4.食品素材上でのきのこ菌糸体の培養(生育) 上記のように調製したビーカー中の各々の食品素材に、表1に示す各種きのこ菌糸体培養のキノコボールを各々種菌とした。調べた担子菌(46種類)と食品素材(29種類)との組み合わせは、46×29=1334種類である。 各ビーカーには、アルミシートを被せ、25℃で2〜3週間静置培養を行った。十分にきのこ菌糸が食品素材に充満してから、固体試料の各食品素材に滅菌水30〜40ml加え、さらに、25℃で1ヶ月以上静置培養を行った。培養後、以下の手順に従って、培養液中に蓄積したビオチンおよびビオチン活性物質の定量を行った。5.ビオチン活性物質の定量 ビオチン活性物質の定量は、Saccharomyces cerevisiae(酵母)を用いる微生物定量法に従った。なお、Saccharomyces cerevisiaeは、ビオチン以外に、ビオチン生合成の中間体である、デスチオビオチン、7−ケト−8−アミノペラルゴン酸、7,8−ジアミノペラルゴン酸などに微生物活性を示すことが知られている(非特許文献1、上述)。従って、Saccharomyces cerevisiaeを用いて検出される活性を示すビオチンを含む上記物質群を、本明細書では、ビオチン活性物質と呼んでいる。 市販のビオチン定量用培地を調製し、上記培養液15〜20μlをペーパーデイスクに浸潤させ、これを微生物定量した。定法に従い、生育帯の直径を測定し、標準ビオチン量から換算して、ビオチン活性物質をμg/mlの単位で表した。結果を表3に示す。 表3は、最も左の列に、表1に示される菌株をその番号(1〜46)で示し、そして最も上の行に、表2に示される食品素材をその番号(1〜29)で示し、列と行との交点に記載される数値が、菌株と食品素材の各々の組み合わせにおいて検出された生育帯の直径である。表3中「阻」とあるのは、阻止円があったことを示す。 表3に示される通り、46種類の菌株と29種類の食品素材の組み合わせから得られた試料中のビオチン活性物質含量を測定した結果、種々の組み合わせでビオチン活性物質の生成が確認され、約0.6μg/ml以上のビオチン活性物質を蓄積した組合せは、菌株番号と食品素材の番号をハイフンで結合して表せば、1−1[菌株1(ヒラタケ)と食品素材1(アマランサス)の組合せを表す;以下同様]、13−1、16−1、17−1、18−1、19−1、20−1、13−2、16−2、17−2、18−2、19−2、13−3、19−3、10−4、13−4、19−4、10−5、13−5、14−5、16−5、17−5、19−5、20−5、1−6、13−6、19−6、31−6、9−7、19−7、21−7、9−8、19−8、7−9、8−9、9−9、13−9、16−9、17−9、19−9、20−9、9−10、14−10、9−11、19−11、33−11、13−12、17−12、19−12、26−12、5−13、13−13、16−13、17−13、19−13、26−13、32−13、33−13、37−13、13−14、16−14、17−14、19−14、20−14、35−15、12−16、16−16、17−16、19−16、30−17、33−19、25−20、31−20、37−20、38−20、1−21、12−21、23−21、16−21、18−21、19−21、31−21、16−22、17−22、19−22、5−24、12−24、19−24、20−24、21−24、24−24、25−24、26−24、32−24、33−24、34−24、35−24、36−24、46−24、33−25、12−26、19−27、2−28、13−28、18−28、19−28、2−29、12−29、13−29、17−29、および25−29である。 菌株でいえば、マンネンタケ科のJin−Jue(Ganoderma lucidum)(マンネンタケ)またはGanoderma applanatum(コフキサルノコシカケ)(表3の番号でいえば、13または19)が、各種の食品素材との組み合わせで多量のビオチン活性物質を蓄積し、食品素材でいえば、アマランサス、オートミール、きび、米糠、はとむぎ、ひえ、緑レンズ豆、豆乳を用いた場合に多量のビオチン活性物質(表3の番号でいえば、1、2、5、9、13、14、21、24)が検出された。 マンネンタケ科のJin−Jue(Ganoderma lucidum)およびGanoderma applanatumは、8種および10種の食品素材の組み合わせで、それぞれ、1.0μg/ml以上のビオチン活性物質を蓄積し、特に、アマランサス、オートミール、はだか麦、きび、中力粉、はと麦、ひえからなる群から選択される食品素材との組合せで多量のビオチン活性物質の蓄積が観察された。 添付の図1および図2は、多量のビオチン活性物質が検出された組み合わせをグラフ化している。図1および図2において縦軸は食品素材を、そして横軸は培養液で検出されたビオチン活性物質濃度を示している。担子菌は、棒グラフの模様で識別している。 図1および図2に見られるように、多量のビオチン活性物質が検出された組み合わせは、マンネンタケ−オートミール、アミガサタケ−豆乳、マンネンタケ−きび、コフキサルノコシカケ−きび、クリタケ−豆乳、マンネンタケ−豆乳、コフキサルノコシカケ−中力粉、マンネンタケ−中力粉、オシトイタケ−豆乳、メシバコブ−豆乳、コフキサルノコシカケ−アマランサス、コフキサルノコシカケ−オートミール、ボタンタケ−きび、カンゾウタケ−豆乳、マツタケ−玉蜀黍、マツタケ−はと麦、マンネンタケ−はと麦、カンゾウタケ−ハトムギ、マンネンタケ−ひえなどである。 なお、食品素材として豆乳およびビール酵母を用いた試料に、比較的高い濃度のビオチンが検出された。ビール酵母と異なり、豆乳にはビオチンが含まれていないので、豆乳は、それ自身にビオチンを多く含んでいないため、担子菌がビオチン活性物質を生成しやすい食材培地であると考えられる。6.ビオチン活性物質の培養液からの分離 上記、各種食品素材にきのこ菌糸培養して得た培養液各1,000mlに約50gの活性炭を加え、常温で、1〜2時間振とうし、活性炭にビオチン活性物質を吸着させた。活性炭を吸引ろ過により集めた後、吸着したビオチン活性物質をアンモニア性70%エタノールで溶解抽出した。この抽出物を減圧濃縮したものを少量の水に溶解し、Dowex 1x2(formate)カラム(200〜400mesh、2cmx13.5cm)に吸着させ、水で洗浄後、0.012N formic acidで溶出を行った。溶出した各フラクションについて、ビオチンの微生物定量を行って、活性フラクションを集めた。活性フラクションは、減圧濃縮後約5mlとした。7.ビオチン活性物質の同定7.1.ペーパークロマトグラフィによる方法 上記のようにして得たビオチン活性フラクションの濃縮液を、ビオチン活性物質の種類を同定するためにペーパークロマトグラフィによる分離を行った。分離には、東洋ろ紙No.53を用い、ろ紙の展開は、n−Butanol−acetic acid−water(12:3:5 by volume)で行った。 また、ビオチン活性物質の検出は、真正のビオチン(デスチオビオチン、7−ケト−8−アミノペラルゴン酸、7,8−ジアミノペラルゴン酸を除くビオチン活性物質)は、Lactobacillus plantarum(乳酸菌)を用いる微生物定量法を、その他のビオチン活性物質には、Saccharomyces cerevisiaeを用いる微生物定量法を用いた。 その結果、検出されたビオチン活性物質とそのRf値は、以下の通りであった。 図3に、ビオチン、デスビオチンおよびマンネンタケ科のGanoderma lucidum(マンネンタケ)およびGanoderma applanatum(コフキサルノコシカケ)(表3の番号でいえば、13または19)の、きび、中力粉、はとむぎ、および小豆との組み合わせの培養液のペーパークロマトグラフィー結果を模式的に示した。 バイオオートグラフィーの結果、Rf値が0.5付近のスポットは、7−ケト−8−アミノペラルゴン酸であることから、13−5、19−5には、ビオチン、デスチオビオチン、7−ケト−8−アミノペラルゴン酸が、13−13、19−6、19−13、19−20には7−ケト−8−アミノペラルゴン酸が含まれていることか分かった。従って、これら試料中には、天然型ビオチンとともに、ビオチン生合成の中間体として天然型ビオチンに代替するビオチン活性物質が含まれていることが確認された。7.2.アビジンとの結合 ビオチンとデスチオビオチンは、その構造上尿素環(−CO−NH−)を含む構造をもっている。アビジンというたんぱく質は、ビオチンやデスチオビオチンと特異的に結合してアビジン−ビオチン複合体を形成する。この複合体は、ビオチンとしての活性を有さない。 ビオチン活性フラクションの濃縮液の一部に、アビジン溶液を加え、常温で、約1時間放置後、上記7.1.のペーパークロマトグラフィーを行い、ビオチン活性物質をSaccharomyces cerevisiaeを用いる微生物定量を行った結果、ビオチンおよびデスチオビオチンは全く検出されなかった。従って、Saccharomyces cerevisiaeを用いる微生物定量法で検出されたビオチン活性物質は、ビオチンまたはデスチオビオチンであり、さらに、Lactobacillus plantarumを用いた微生物定量法(デスビオチンには応答しない)により、ビオチン活性物質は、真正ビオチンであることが確認された(結果は示さず)。 ビオチン原料として、従来法によるよりも高濃度の天然型ビオチン含有素材を得ることができる。また、食用に供される担子菌および食品素材を原料として用いるので、安全性の高い天然型ビオチン含有素材が提供される。このような天然型ビオチン含有素材は、新たな食品素材として利用可能である。本発明に従う方法により生成されるビオチンの濃度を概略的に示すグラフである。本発明に従う方法により生成されるビオチンの濃度を概略的に示すグラフである。本発明に従う方法により生成される培養液中のビオチン活性物質のペーパークロマトグラフィーの結果を概略的に示す図である。ビオチンの製造方法であって: 担子菌を食品素材と静置培養する工程; 得られる培養物からビオチン含有液を得る工程; 該ビオチン含有液からビオチンを回収する工程、を包含し、 ここで、該担子菌が、Ganoderma属に属する菌株であり、該食品素材が、穀類、いも類、粗製砂糖、豆類、果実類、乳および微生物菌体からなる群から選択される、方法。前記穀類が、アマランサス、オートミール、はだか麦、麦芽汁、きび、中力粉、もち米、紅米、米糠、酒粕、そば米、玉蜀黍、はとむぎ、およびひえからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。前記いも類が、馬鈴薯、紫芋、およびウコンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。前記粗製砂糖が、黒砂糖または蜂蜜である、請求項1に記載の方法。前記豆類が、小豆、緑レンズ豆、大豆、およびそれらから調製される食品からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。前記乳が、生乳である、請求項1に記載の方法。前記微生物菌体が、ビール酵母である、請求項1に記載の方法。前記食品素材が穀類である、請求項1に記載の方法。前記Ganoderma属に属する菌株が、Ganoderma lucidumまたはGanoderma applanatumである、請求項7または8のいずれかに記載の方法。前記穀類が、アマランサス、オートミール、はだか麦、麦芽汁、きび、中力粉、もち米、紅米、米糠、酒粕、そば米、玉蜀黍、はとむぎ、およびひえからなる群から選択される、請求項8または9のいずれかに記載の方法。前記食品素材が、豆類または乳である、請求項1に記載の方法。