タイトル: | 公開特許公報(A)_微生物の胞子または細胞の調製方法、これらの胞子または細胞の水性懸濁液の調製方法、この微生物を培養するための培養片、この培養片から得られる培養済みの培養片および培養装置 |
出願番号: | 2004279417 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12N 1/14,C12M 1/00,C12N 1/16,C12N 1/20 |
阿部 恵子 JP 2006087391 公開特許公報(A) 20060406 2004279417 20040927 微生物の胞子または細胞の調製方法、これらの胞子または細胞の水性懸濁液の調製方法、この微生物を培養するための培養片、この培養片から得られる培養済みの培養片および培養装置 阿部 恵子 500256576 江崎 光史 100069556 三原 恒男 100092244 奥村 義道 100093919 鍛冶澤 實 100111486 阿部 恵子 C12N 1/14 20060101AFI20060310BHJP C12M 1/00 20060101ALI20060310BHJP C12N 1/16 20060101ALI20060310BHJP C12N 1/20 20060101ALI20060310BHJP JPC12N1/14 BC12M1/00 CC12N1/16 AC12N1/20 A 7 5 OL 15 4B029 4B065 4B029AA08 4B029AA12 4B029BB02 4B029BB03 4B029BB06 4B029BB07 4B029BB08 4B029BB09 4B029CC02 4B029CC07 4B029GA06 4B029GA08 4B029GB06 4B029GB07 4B029GB08 4B029GB09 4B029GB10 4B065AA01X 4B065AA57X 4B065AA58X 4B065AA71X 4B065AA72X 4B065BB01 4B065BC31 4B065BC32 4B065BC33 4B065BC41 4B065BD50 4B065CA60 本発明は、微生物の胞子または細胞の調製方法、これらの胞子または細胞の水性懸濁液の調製方法、特に、作業者が微生物に直接触れたり、あるいはこの微生物が解放された大気に曝されたりすることなく、微生物の所望数量の胞子または細胞を調製する方法、またはこれらの胞子または細胞を所望の濃度で含む水性懸濁液を簡単に、かつ便利に調製する方法、この微生物を培養するための培養片、この培養片から得られる培養済みの培養片、および培養装置に関するものである。 例えば、カビの胞子を含む水性懸濁液は、或る薬剤(防カビ剤)に対するカビの抵抗性を調べるための、例えば、次の(1) または(2) のようにして行なわるカビの薬剤抵抗性試験、またはカビの発育を阻止する或る薬剤の最小濃度を調べるために次の(3) のようにして行なわるカビの最小発育阻止濃度(Minimal Inhibitory Concentration:MIC)測定試験において、従来使用されている。(1) 105 個のカビの胞子が予め表面に分散されている直径9cmのシャーレ内の寒天平板培地上に、防カビ剤入りの壁紙、防カビ剤入りのビニル製カーテンまたは防カビ剤が練り込まれたプラスチック等の切片を載せて、このカビの胞子を培養し、そして所定の期間経過後に、この切片周辺に形成されたカビの発育阻止帯のでき方を観察することによって、上記の壁紙等の素材中に含ませた 防カビ剤の効果を調べる。(2) 所定個数のカビの胞子が予め表面に分散されている寒天平板培地に、防カビ剤を含ませたペーパーディスクを載せて、カビの胞子を培養し、そして所定の期間経過後に、このディスク周辺に形成されたカビの発育阻止帯の大きさを観察することによって、防カビ剤のカビ発育阻止効果を調べる。(3) 所定個数のカビの胞子が懸濁していて、しかも或る所定の濃度の薬剤を含む薬液、およびこの濃度が次々に倍々と希釈されている希釈薬液を含む液体培地でカビを培養して所定期間経過後のカビの発育状態を観察し、その発育の有無によって、この薬剤がカビの発育を阻止するための最小濃度を調べる。 このような試験では、試験中にカビが増殖したり死滅したりするので、試験開始時の胞子懸濁液中の胞子濃度が試験ごとに大きく異なっていると、信頼できる結果を得るのは困難であり、再現性のある安定した結果を得るためには、試験開始時に一定の濃度でカビの胞子を含む胞子懸濁液を用いることが規定されている。 上記の(1) および(2) の薬剤抵抗性試験においては、通常、1mL当たり1〜2×106 個の胞子が含まれる胞子懸濁液を調製して、その0.1または0.05mLを直径9cmのシャーレ内の寒天平板培地表面上に広げて、上記の所定の個数が105 個となるようにする。また、上記の(3) の最小発育阻止濃度測定試験においては、上記の或る所定の濃度で薬剤を含む2mLの薬液を10倍、更に10倍、・・・と次々に希釈した希釈薬液に、1mL当たり1〜2×106 個の胞子が含まれる胞子懸濁液を0.1mLずつ添加して培養する。 微生物の所定濃度の胞子または細胞を含むこのような水性懸濁液を製造する場合には、他の微生物を混入させないために無菌の条件下でこの微生物を培養する操作と、その後に続く何段階かの連続した操作が必要であり、もし、培養を目的とする微生物以外の微生物、例えば細菌、真菌または放射菌等が試験操作中に外部から培養片または培養液中に混入すると、正しい試験結果を得ることができなかった。 それで、例えば、上記の培養でカビを扱う場合には、次のような煩雑な手順を経て、無菌状態に保たれる培養方法を遂行することが従来必要であった。I.先ず、カビを培養するための培地を作製する。例えば斜面培地を作製する場合には、蒸留水に所定濃度の栄養分と寒天を溶かして、これをキャップ付きの試験管または乾熱滅菌済の綿栓付きの試験管に分注してから、この分注後の試験管に高圧蒸気滅菌を施し、この滅菌処理により寒天が溶けた状態となった試験管を斜めに並べて放置して、この寒天を固化させることによって斜面培地を製造する。II.次に、培養を目的とするカビを上記の培地に接種する。保存菌が発育している予め用意された斜面培地と、上記のようにして作製された新しい斜面培地とを安全キャビネット内に入れる。火炎滅菌により滅菌されているエーゼで保存菌を釣菌して、この保存菌を新しい培地に接種する。接種が済んだ培地が入っている試験管には、外部から雑菌が混入しないようにキャップを被せるか、または綿栓を施した後、25℃〜30℃の温度に保たれた恒温器に入れて、1〜2週間培養する。III.全ての操作が無菌状態で遂行されるように、培養試験で用いられる器具類は全て滅菌する。ピペット、試験管、漏斗はアルミホイルで包んで乾熱滅菌し、胞子懸濁液調製用の界面活性剤含有水溶液(例えば、0.05%のTween80を含む生理的食塩水)は、これを試験管または三角フラスコに入れてアルミホイルで蓋をした状態で高圧蒸気滅菌する。ガーゼは良く洗って乾かした後、アルミホイルで包んで高圧蒸気滅菌する。IV.培養後のカビが発育した斜面培地に、滅菌ピペットを用いて、上記滅菌済の界面活性剤含有液を注入した後、試験管内で静かにゆっくりとピペッティング(ピペットによる吸入と吐出)を繰り返す。V.上記のピペッティングが済んだカビの胞子または更に菌糸を含む菌液を滅菌済の試験管に採って、更にピペッティングを繰り返す。VI.このピペッティングが済んだ菌液に更に上記滅菌済の界面活性剤含有水溶液を加えて、多少の色が残っている程度まで、この菌液を希釈する。VII.希釈された菌液をヘモサイトメーター(血球計算盤)に載せて、その菌液の中のカビの胞子および菌糸を観察する。菌液に胞子のみが含まれる場合は、その胞子の数を測定する。菌液に菌糸が多く混ざっている場合には、滅菌ガーゼが敷かれた漏斗で菌液を過して菌糸を取り除いた後、ヘモサイトメーターを用いて菌液中の胞子の数を測定する。VIII.菌液中の胞子の数が1mL当たり1〜2×106 個となるように、菌液を滅菌済みの界面活性剤含有水溶液で希釈して、それの胞子濃度を調整する。 しかしながら、このような微生物の培養に関する従来の方法では、カビ等の微生物を扱うに当たって上記のような無菌操作が必要であり、この無菌操作を習得した者しか胞子懸濁液を調製することができなかった。 また、カビの胞子は培養の際に空気中に飛散してアレルゲンになる恐れがあるので、培養および胞子懸濁液調製の操作に当たっては、この胞子を空気中に飛散させないように注意を払う必要があった。 さらに、病原性のある微生物を扱う場合には、無菌操作を習得した者であっても、その微生物との接触はできるだけ避ける必要があった。 例えば、カビが接種される寒天平板培地を用いる従来の方法でカビの胞子の水性懸濁液を製造する場合にも、前述の斜面培地を用いる場合と同様に、(1) 寒天平板培地の製造、(2) 培地へのカビの接種、(3) 接種されたカビの培養、(4) 培養後の平板培地に着生した胞子に水性液を注ぎ攪拌することによる胞子懸濁液の調製、(5) 胞子懸濁液中に混在する菌糸を除去するための濾過、(6) 血球計算板を用いる胞子濃度の測定、および(7) 適当な胞子濃度の懸濁液とするための水性液による希釈等の多くの操作が必要となるため、培養から胞子懸濁液調製に至るまでの作業が何段階にもなる上に、各作業は連続して行う必要があって、作業を進める時期が制約されるとともに、手数と手間がかかるばかりでなく、それに伴って、人体と扱う微生物とが直接接触する機会が多くなるという問題があった。 本発明は、上記のような問題に着目して発明されたもので、カビなどの微生物を取り扱う者と取り扱われる微生物(以下、使用微生物という)とが隔離され、かつ、使用微生物が周囲の環境に漏出することによってこの周囲環境が汚染されるという事態が防止されると同時に、この周囲環境中の雑菌で使用微生物が汚染されることも防止されて、従来の無菌操作を必要とすることなく、容易に使用微生物の所望数量の胞子または細胞を調製できる方法、時間に縛られることなく、随時の時期に所望濃度の胞子または細胞を含む水性懸濁液を得ることができる、微生物の胞子または細胞の水性懸濁液の調製方法、およびこれらの調製方法で微生物を培養するための培養片、この培養片から得られる培養済みの培養片、および培養装置を提供することを目的としている。 本発明によれば、上記の目的は、1.或る微生物を培養して、この微生物の所望の数量の胞子または細胞を調製する方法であって、 (1) 前記培養のために、前記微生物と、それを生長させるための栄養源とを付着させた担体が、酸素と水蒸気は透過させるが前記微生物およびその他の微生物は透過させない材料で少なくとも一部が形成され、かつ、これ以外の部分が透明な材料で形成されているか、または前記少なくとも一部のうちの一部または全部が透明である容器の中に封入されている封入型の培養片、または前記担体が前記容器の中に封入されていない開放型の培養片を使用して、 (2) 恒温恒湿の密閉状態の空気環境が保たれている培養装置内に前記培養片を入れて、この培養片における前記微生物を培養し、ここで (3) 前記培養装置は、密閉構造を有することによって、この装置の内部と外部との間の空気の流通が遮断されているとともに、この内部と外部との間の微生物の出入が阻止されており、かつ、この装置内部の空気環境が恒温恒湿に保たれていて、この恒湿のための湿度調節が装置内部の空気環境に曝された湿度調節剤によって達成されており、そして (4) 前記微生物の胞子または細胞の数量が所望の数量となるまでこの微生物を 培養する、 ことを特徴とする、前記調製方法、2.或る微生物を培養して、この培養によって数量が所望の数量まで増えたこの微生物の胞子または細胞を用いて、この胞子または細胞の所望濃度の水性懸濁液を調製する方法であって、 (1) 前記培養のために、前記微生物と、それを生長させるための栄養源とを付着させた担体が、酸素と水蒸気は透過させるが前記微生物およびその他の微生物は透過させない材料で少なくとも一部が形成され、かつ、これ以外の部分が透明な材料で形成されているか、または前記少なくとも一部のうちの一部または全部が透明である容器の中に封入されている封入型の培養片、または前記担体が前記容器の中に封入されていない開放型の培養片を使用して、 (2) 恒温恒湿の密閉状態の空気環境が保たれている培養装置内に前記培養片を入れて、この培養片における前記微生物を培養し、ここで (3) 前記培養装置は、密閉構造を有することによって、この装置の内部と外部との間の空気の流通が遮断されているとともに、この内部と外部との間の微生物の出入が阻止されており、かつ、この装置内部の空気環境が恒温恒湿に保たれていて、この恒湿のための湿度調節が装置内部の空気環境に曝された湿度調節剤によって達成されており、そして (4) 培養済みの培養片における前記微生物の胞子または細胞の濃度が前記水性懸濁液中で所望の濃度となるように、これらの胞子または細胞を水性液中に懸濁させることによって、この胞子または細胞の懸濁液を調製する、 ことを特徴とする、前記調製方法、3.前記の封入型または開放型の培養片が収められて、これらの培養片における微生物を培養するための培養装置であって、この培養装置が、密閉構造を有することによって、この装置の内部と外部との間の空気の流通が遮断されているとともに、この内部と外部との間の微生物の出入が阻止されており、かつ、この装置内部の空気環境が恒温恒湿に保たれていて、この恒湿のための湿度調節が装置内部の空気環境に曝された湿度調節剤によって達成されることを特徴とする、前記培養装置、4.微生物を培養するための封入型または開放型の培養片であって、前記微生物と、それを生長させるための栄養源とを付着させた担体が、それぞれ、酸素と水蒸気は透過させるが微生物は透過させない材料で少なくとも一部が形成され、かつ、これ以外の部分が透明な材料で形成されているかまたは前記少なくとも一部のうちの一部または全部が透明である容器の中に封入されているか、または封入されていないことを特徴とする、前記封入型または開放型の培養片、および5.前記培養装置を用いる培養によって前記記微生物の胞子または細胞の数量が所望の数量まで高められている、前記4の項に記載された封入型または開放型の培養片、に係わるものである。 本発明で培養を意図する微生物とは、カビばかりでなく、カビ以外の酵母のような真菌、細菌、放線菌および単細胞性藻類等の微小なあらゆる生物を指しており、また、ここで「微生物は透過させない材料」とは、培養を目的とする微生物ばかりでなく、その他の一般の微生物、所謂雑菌も透過させない材料を意味している。 微生物の胞子または細胞の懸濁液が調製される場合、この懸濁液については、懸濁液中に分散している個々の胞子または細胞の数について測定され、例えば、この微生物がカビである場合には、この懸濁液は、培養後の発育したカビの菌糸上に着生した胞子がそれぞれ個々に分離した状態の懸濁液として調製されて、この個々の胞子の数が数えられる。 上記の水性液としては、微生物の発育に適したものならば、従来知られているどのような水性液でも使用することができ、特に、界面活性剤入りの生理的食塩水、例えば0.05〜0.1%のTween80が添加された0.85%の生理的食塩水が好ましく使用される。 本発明による前記の培養片は、培養の開始前であっても、また培養済みであっても、−20℃のフリーザーに入れて保管すれば、5年以上の保存が可能であって、その間はいつでも培養を開始することができるばかりでなく、所望数量の培養済みの胞子または細胞をいつでも得ることもでき、また、いつでも所望濃度の胞子または細胞の水性懸濁液を調製することができる。 これに対し、従来の方法では、保存されていた使用微生物を新しい斜面培地に接種して培養するのに1〜2週間の長い期間が必要であり、しかも、斜面培地で発育させた使用微生物は、長期間冷蔵庫で保存することができないばかりでなく、できるだけ速やかにその水性懸濁液の調製プロセスに戻す必要があった。 また、本発明による封入型の培養片では、内部に所望数量の胞子または細胞が封入されて外部に漏出しない状態にあるため、例えば冷凍の宅配便等の輸送方法で送ることも可能であるので、使用微生物の保存場所、培養場所および胞子または細胞の懸濁液を調製してこれを使用する場所が互いに離れていても、この封入型の培養片を利用できるという利便性が得られる。 更に、本発明による開放型の培養片でも、これを前記の培養装置で培養することによって、前記使用微生物の胞子または細胞の数量が所望の数量まで高められた培養済みの培養片を、あらゆる微生物を透過させない材料で形成された容器の中に封入して、例えば、滅菌済みのネジ口キャップ付き試験管に入れてこのキャップをしっかりと締めつけた状態にして、これを冷凍保存しておけば、この培養済みの培養片を必要とする所が遠隔の地であっても、前記培養済みの培養片を、いつでも必要な時に、冷凍の宅配便等の輸送手段でこの遠隔の地まで送ることができる。 このようにして送られてきた培養済みの培養片は、受け取った側で試験管に入った状態のまま常温に戻した後、その試験管に胞子または細胞懸濁用の生理的食塩水を適当量加えて、この試験管の中身を試験管ミキサーで攪拌するという簡単な作業だけで、所望濃度の胞子または細胞の懸濁液を調製することができる。 本発明によれば、或る微生物の所望数量の胞子または細胞を調製する場合、およびこれらの胞子または細胞を用いて所望濃度の胞子または細胞を含む水性懸濁液を調製する場合に、微生物を取り扱う者とこの微生物、すなわち使用微生物とが隔離され、かつ、使用微生物が周囲の環境に漏出して、その環境が漏出微生物によって汚染されるという事態が避けられると同時に、この周囲環境中の雑菌で使用微生物 が汚染されるのも防止されて、従来の無菌操作を必要とすることなく、容易に使用微生物を培養できて、培養後の微生物の所望数量の胞子または細胞を容易に取得することができ、しかも、時間に縛られることなく、随時の時期に使用微生物の所望濃度の胞子または細胞の水性懸濁液を得ることができ、また、このような調製方法において便利に使用できる培養片および培養装置が提供される。 本発明の方法では、例えば、前述のようなカビの薬剤抵抗性試験のような用途に供するために、カビの胞子を含む水性懸濁液が製造されるが、カビの胞子を含む水性懸濁液は、カビとそれの栄養分とを予め付着させた担体が、酸素と水蒸気は透過させるがカビの胞子は透過させない容器の中に封じ込まれた前記の封入型の培養片、または前記の開放型の培養片を、密閉状態にある恒温恒湿に保たれた培養装置内の空気環境下で培養し、培養片にあるカビを発育させて、前記担体上で発育した菌糸に新しいカビの胞子を着生させ、ついで、この胞子を担体ごと懸濁用の、例えば生理的食塩水のような水性液に入れて攪拌し、前記胞子を前記水性液中に懸濁させることによって、調製される。 このような調製過程において栄養分の量と培養期間を調節することによって、培養後における培養片中の胞子の数量を調節することができ、また、胞子を懸濁させるための水性液の量等を調節することによって、最終的に得られる胞子懸濁液における胞子濃度をコントロールすることができる。 本発明による封入型の培養片の一例を示している図1の平面図と、この平面図のA−A線を含む垂直面に沿って示される縦断側面図の図2によれば、本発明の封入型の培養片1は、例えば、カビの胞子3を付着させ、そしてそれの栄養源を含ませた担体4がヒートシール5によって薄い板状の容器2の中に封入されている構造となっており、そしてこの容器2の底部2aは酸素と水蒸気を透過させるフィルムで構成され、そして担体4を挟んでこの底部2aの周辺にヒートシールされて容器2の上部2bは透明なフィルムで構成されている。 この容器2は、使用微生物であるカビの生長に必要な酸素と水蒸気は透過させるが、このカビや雑菌のような微生物は透過させない性質を具えた、適宜の厚さのシート、フィルムまたは薄膜状の材料で少なくとも一部が形成されている。このような材料としては、例えば、不織布または再生セルロースまたは酢酸セルロースのようなセルロースに由来する材料の膜、ポリメチルメタクリレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリルおよびポリスルホン等の合成高分子材料の膜が挙げられ、そして、前記材料が不織布またはその他の不透明な材料である場合には、これ以外の部分、すなわち、前記少なくとも一部以外の部分は、菌の生長状態が外部から観察できるように、透明でなければならない。したがって、不織布のような不透明な材料で容器全体が形成されていることはない。 また、前記の少なくとも一部が、トリアセチルセルロースフィルム、セロファンフィルムまたはビニロンフィルムのような酸素と水蒸気は透過させるが真菌のような微生物は透過させず、しかも透明である材料で形成されている場合、この材料は容器の一部を形成していてもよいし、あるいは容器全体を形成していてもよい。 要するに、この容器2は、カビの生長を促し、かつ、その生長が外部から目視で観察できるように、その容器2の少なくとも一部が、酸素と水蒸気の透過を許すとともにこのカビや雑菌のような微生物は透過させず、しかも前記少なくとも一部と重複する部分もしくは全部、または前記少なくとも一部以外の部分が透明であればよい。 容器2は、一般にどのような形態、形状のものであってもよく、例えば、柔軟な袋状のものであっても、あるいは、適度の剛性を有する箱状のものであってもよい。 使用微生物であるカビとしては、本発明によって培養できるものであれば、どのような種類のものでも本発明の対象として採用することができ、例えば、アスペルギルス(Aspergillus sp.)、クラドスポリウム(Cladosporium sp.)、ペニシリウム(Penicillium sp.)またはワレミア(Wallemia sp.)のようなカビについて本発明を適用することができる。 カビの栄養源としては、従来知られているもの、例えば、グルコース、シュークロース、ペプトン、麦芽エキスおよび酵母エキス等を混ぜ合わせた混合物が挙げられる。 胞子と栄養分を付着させるための担体としては、例えば、濾紙が好都合に使用され、そして、これらの胞子と栄養分は、例えば、予め栄養分を吸収させて乾燥させた15mm角の濾紙の中央に3μL(マイクロリットル)の胞子懸濁液を接種して風乾させることによって、担体に付着させる。 図3は本発明による開放型培養片の一例を示す平面図であって、図4は、この平面図に示される培養片1’を図3のB−B線を含む垂直な平面で示す縦断側面図である。 この培養片1’は、これらの図に示されるように、微生物の生長のために必要な栄養分を含ませた濾紙のような担体4’にカビの胞子3’を付着させた構造となっている。 図5は、本発明で使用される培養装置と、それの使用状態の一例を示す縦断側面図であって、この図では、シャーレ状のプラスチック容器7で構成されている培養装置6が図示されている。 このプラスチック容器7は本体7aと蓋7bとからなり、この本体7aには、容器内の空気の平衡相対湿度を調節するための湿度調節剤が容れられていて、その容器内の平衡相対湿度が一定に維持されており、この湿度調節剤としては、例えば、水、塩と塩の飽和水溶液、塩の水溶液、糖の水溶液またはグリセリン水溶液が挙げられる。前記平衡相対湿度は、例えば、用いられる塩の種類や、塩の水溶液、糖の水溶液またはグリセリン水溶液の濃度によって調節することができる。 上記の塩としては、例えば、K2 SO4 、KNO3 、KClまたはNaCl等が挙げられ、これらの特定の塩の結晶とその飽和溶液とが密閉容器内に入れられて或る一定の温度に保たれると、この密閉容器内の雰囲気の相対湿度はこれらの塩の種類によって定まり、例えば25℃の温度においては、K2 SO4 の結晶とその飽和溶液を用いた場合に97.3%、KNO3 の結晶とその飽和溶液を用いた場合に93.6%、KCl結晶とその飽和溶液を用いた場合に84.3%、そしてNaClの結晶とその飽和溶液を用いた場合に75.3%の相対湿度がそれぞれ密閉容器内の雰囲気中に保たれ、また糖としては、例えば、シュークロースが挙げられる。 この図5では、上記の湿度調節剤として塩と、その塩の飽和水溶液8とが使用されており、そして図1および図2に示される封入型の培養片9が培養装置6の蓋7bの裏面(内面)に両面接着テープ10で貼られて恒湿の空気環境下に曝される。本体7aと蓋7bとの間隙はビニルテープ11で塞がれることによって、プラスチック容器7は密閉状態に保持される。 図6は、本発明で使用される別の培養装置と、その使用状態の例を示す縦断側面図であって、この図では、シャーレ状の滅菌済みプラスチック容器7’で構成されている培養装置6’が図示されている。 このプラスチック容器7’は本体7’aと蓋7’bとからなり、この本体7’aにも、前記と同様に、塩とその塩の飽和水溶液8’からなる湿度調節剤が容れられている。 この図6では、容器本体7’aの底の中央に滅菌済みの小型容器12がグリース13によって固定されており、この小型容器12の上には滅菌されたステンレス製のネット14が置かれて、このネット14に支えられた開放型の培養片9’は一定の湿度に保たれた雰囲気中に維持され、そして前記と同様に、本体7’aと蓋7’bとの間隙もビニルテープで塞がれて、プラスチック容器7’は密閉状態に保持される。 上記の培養装置では、その内部に密閉された空気が装置外部の空気と遮断されているために、この培養装置で図3および図4に示されるような開放型の培養片を培養しても、使用微生物が装置の外部へ漏出することがなく、また、予め滅菌処理された材料でこのような培養装置を作製することによって、外部からの雑菌の侵入が防止される。 このような培養装置は、上記のような構造を有することによってその内部は恒湿に保たれ、また、適当な恒温室に保管されることによって、その内部は恒温恒湿の空気環境に保たれる。 以上のような培養装置で、例えば、Penicillium frequentans のような菌(カビ)を、例えば、25℃の温度およびK2 SO4 の結晶とその飽和溶液を用いて得られる97.3%の相対湿度の下に培養すると、図1および図2に示した封入型の培養片を用いた場合にも、また、図3および図4に示した開放型の培養片を用いた場合にも、それの胞子数は7日後には一定の数量の、すなわち飽和状態の数量に達するので、このような胞子数が高められた状態にあるカビを担体ごと、例えばTween80のような界面活性剤を0.05%含む生理用食塩水である胞子懸濁用液に懸濁させ、その結果得られた懸濁液を、前記胞子懸濁用の水性液、すなわち例えば、Tween80のような界面活性剤を0.05%含む生理的食塩水で希釈することによって、所望の濃度、例えば、1×106 個/mLの濃度の所定の濃度の胞子懸濁液を調製する。 本発明でいう所定の濃度とは、例えば、日本におけるカビの薬剤抵抗性試験において指定されている1〜2×106 個/mL、また、米軍規格による防カビ試験法のMIL-STD-810-B Method 5およびMIL-STD-810-D METHOD 508.3ならびにアメリカ材料試験協会規格による合成高分子材料のカビ抵抗性の測定法において指定されている1×106 ±2×105 個/mLのような濃度を指している。 培養後の培養片中には一般に107 〜108 個程度の胞子が生成し、そしてこの生成する胞子の数量は使用したカビの種類によって一定に定まるので、培養後に生じた胞子を前記のような生理用食塩水10〜100mL中に懸濁させれば、通常1×106 個/mL〜2×106 個/mLの濃度に相当する所定濃度の胞子懸濁液を調製することができる。 以下の実施例は、本発明を実施する場合の好ましい例を具体的に示すことを意図するものであって、本発明がこれらの実施例によって限定されることは意図されていない。実施例1 図1および図2に示されたような構造を有する封入型の培養片と、図6に示されるような構造を有する培養装置を用いて、次のように、クラドスポリウム・ヘルバルム(Cladosporium herbarum) IFO 31006を培養後、この菌(カビ)の胞子懸濁液を製造した。(1) 先ず、ゼラチン0.5重量%とグルコース0.5重量%を含む液体培地に上記の菌の胞子を1mL当たり1〜2×106 個の濃度で懸濁させることによって胞子懸濁液を調製した。ついで、菌の栄養源として使われるグルコースペプトン液状培地を予め含ませて乾燥させた、15mm×15mmの寸法を有する濾紙片の中央に前記の胞子懸濁液3μL(マイクロリットル)をスポット状に接種して、この懸濁液を風乾させた後、この濾紙片をポリスチレン製の透明なフィルム(厚さ0.1mm)と不織布とでできた50mm×70mmの寸法の袋の中に入れ、この袋の口をヒートシールすることによって、上記の菌の胞子が袋の外部雰囲気と隔離されている封入型の培養片を作製した。これらの調製 および作製の操作は安全キャビネット内で行い、使用する材料は全て滅菌済みのものを用いた。この培養片はシリカゲルが入った容器内に容れて、培養に使用されるまで冷凍保存した。(2) 外側寸法10cm×外側寸法10cm×深さ3cmの寸法を有する透明なプラスチックケースの本体の底中央に、上部が開放された同じく透明なプラスチック製の小型容器をグリースで貼り付けた後、このプラスチックケース内で前記の小型容器の内外にわたって湿度調節用のK2 SO4 結晶20gとそれの飽和水溶液20mLとを容れて、培養装置(湿室)を作製した。 このように培養装置を構成して、プラスチックケースの蓋と本体との間をビニルテープで封じて密閉容器とした場合には、その容器内の平衡相対湿度は97.3%に調節される(ASTM E104)。(3) 上記培養装置内の小型容器の上にステンレス鋼製のネットを置き、このネットの上に前記の冷凍保存されている封入型の培養片を載せて、プラスチックケースの蓋と本体との間をビニルテープで封じた。このように培養片を容れた培養装置を25℃に保たれている恒温室内に置いて、前記培養片を培養した。(4) 上記のような培養片と培養装置とを同じように組み合わせたものを多数用意し、これらの培養片について様々な時間の経過後に生育した菌の状態、すなわち、着生した胞子の数を調べるために、これらの培養片の各々をそれぞれ24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間および7日間培養した後、それぞれの培養期間経過後の時点で菌の発育を停止させるために、すなわち菌の培養がさらに続くのを阻止するために、シリカゲルの入った容器内に封入型の各培養片を移して、その培養片をこの容器ごと冷蔵庫で保存した。(5) 上記の保存された培養片を、冷蔵庫およびシリカゲルの入った容器から取り出して、この培養片の密閉容器部分である前記の袋の端を鋏で切って、その袋の中から前記濾紙(菌の胞子が付着した担体)を取り出し、この取り出した濾紙全体を、0.05%のTween 80を含む懸濁用の滅菌済み生理的食塩水2mLが入れられた試験管の中に投入して、この試験管の中身を試験管ミキサーにより十分に攪拌することによって、濾紙に付着していた胞子を水の中に 懸濁させた。(6) つぎに、上記のように胞子を懸濁させた各液を0.05%のTween80を含む希釈用の滅菌済み生理的食塩水で10倍、102 倍、103 倍・・・・・と、106 倍までの希釈倍数で希釈し、これらの希釈倍数で希釈された各液の0.1mLずつを、下記のコロニー数の平均値を求めるために、3枚のPG−18寒天平板培地上にそれぞれ広げてこの培地上の胞子を25℃で5日間培養した。培養後、これらの希釈倍数で希釈された各液の胞子が接種された平板培地のうちから、コロニー数がカウントできる培地(平板1枚当たり10〜100個のコロニーが形成されたもの)を選び出して、形成されたコロニー数をカウントし、各希釈液についてそれぞれ用いられた3枚の平板上のコロニー数の平均値を求めた。このようにして求められた平均コロニー数と、これに対応する希釈倍数、平板培地上に接種した希釈液の量および前記(5) における胞子の懸濁に用いられた量とから、各培養片中で上記の培養期間後に生じていた着生胞子全体の数を算出した。 以上の実験によって求められた、培養片の培養期間の長さに対する着生胞子数の変化を図7のグラフで示す。 これらの培養のすべての場合について3回繰り返された実験の平均値が示されており、そして0日の培養期間は培養開始直前の時点を意味している。 図7に示されるグラフから、培養期間が0日間である時点では、約5×103 個程度の胞子が濾紙上に接種されていたことが分かる。そして、このグラフによれば、培養期間が1日間である時点では、大部分の胞子が24時間以内に発芽して菌糸の状態になり、この菌糸が濾紙から離れない状態になっていたことが分かる。また、このグラフから、培養期間が2〜5日間である間は、菌糸の発育が進行して、この発育した菌糸に新しい胞子が順次着生した結果、胞子数が次第に増大したことが分かる。さらに、このグラフによれば、培養期間が5日間を過ぎると、この菌の発育は静止期に入って、胞子数がほぼ107 個のままで殆ど変化しなかったことが分かる。実施例2 実施例1のクラドスポリウム・ヘルバルム(Cladosporium herbarum) IFO 31006の代わりに、2種のペニシリウム(Penicillium)、すなわち、ペニシリウム・フニクロサム(Penicillium funiculosum)およびペニシリウム・フリクエンタンス(Penicillium frequentans)を用い、実施例1と同様な方法で、培養によるこれらの菌の胞子数の経時的な変化を調査した。 すなわち、この実施例2においては、0日間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間および7日間培養後の培養片の中から濾紙を取り出して、これを小型試験管内に移し、前記2種のカビの胞子を試験管ミキサーにより実施例1と同様に2mLの懸濁用の生理的食塩水中にそれぞれ懸濁させて、それぞれの胞子懸濁液を調製した。これらの懸濁液を、実施例1と同様に希釈用の生理的食塩水を用いてそれぞれ10〜106 倍の希釈倍数で希釈し、その0.1mLをDG─18寒天平板培地上に拡げて5日間培養し、その結果を、実施例1による図7と同様に、上記の2種の菌についてそれぞれ図8および図9に示した。 これらの培養のすべての場合についても3回繰り返された実験の平均値が示されており、そして0日の培養期間は培養開始直前の時点を意味している。 実施例1で用いたクラドスポリウム・ヘルバルム(Cladosporium herbarum) IFO 31006の場合には、前述のように、5日間の培養期間後に胞子数はほぼ107 個/mLになって、菌糸の発育は静止期に入ったが、この2種のペニシリウム、すなわち、ペニシリウム・フニクロサム(Penicillium funiculosum)およびペニシリウム・フリクエンタンス(Penicillium frequentans)の場合にも、6日間の培養期間後には各菌の発育は静止期に移行し、胞子の数はその後それぞれ1×108 個および3×107 個程度の数のまま変化しなかった。 かび抵抗性試験で用いる胞子懸濁液の胞子濃度は1〜2×106 個/mLが一般的であり、このような所定の濃度の胞子懸濁液は、上記に示されるように、本発明の培養片によって容易に調製できる。 また、防カビ剤の効力を検定するために用いられる最小発育阻止濃度(Minimum Inhibitory Concentration:MIC)測定試験で用いるカビ胞子懸濁液の胞子濃度は1×106 個/mLと定められており、このような所定の濃度の胞子懸濁液は、上記に示されるように、本発明の培養片によって容易に調製できる。 本発明は、以上に述べたように、カビのように胞子を着生する真菌を対象として説明されてきたが、その他の微生物、例えば、単細胞性の真菌である酵母、細菌、放線菌あるいは単細胞性の藻類についても、カビの場合と同様に本発明を適用することができる。 以上に述べた説明から明らかなように、本発明による胞子の調製方法、本発明による胞子懸濁液の調製方法、本発明の培養片および本発明の培養装置は、カビ抵抗性試験または抗カビ規格試験等の試験を実施するために用いられる所定濃度の胞子懸濁液を調製する場合に、上述のように有利に利用することができる。本発明による封入型の培養片の一例を示す平面図である。図1の封入型の培養片を、図1のA−A線を含む垂直面に沿って示した縦断側面図である。本発明による開放型の培養片の一例を示す平面図である。図3の開放型の培養片を、図3のB−B線を含む垂直面に沿って示した縦断側面図である。本発明で使用される培養装置とそれの使用状態の一例を示す縦断側面図である。本発明で使用される培養装置とそれの使用状態の別の一例を示す縦断側面図である。本発明の実施例によって得られた、培養片の培養期間の長さに対する胞子数の変化を示すグラフである。本発明の別の実施例によって得られた、培養片の培養期間の長さに対する胞子数の変化を示すグラフである。本発明の更に別の実施例によって得られた、培養片の培養期間の長さに対する胞子数の変化を示すグラフである。符号の説明 1,1’,9,9’・・・・・・・・・・培養片 2・・・・・・・・・・・・・・・・・・容器 3,3’・・・・・・・・・・・・・・・胞子 4,4’・・・・・・・・・・・・・・・担体 5・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒートシール 6,6’・・・・・・・・・・・・・・・培養装置 7,7’・・・・・・・・・・・・・・・容器 7a,7’a・・・・・・・・・・・・・容器本体 7b,7’b・・・・・・・・・・・・・蓋 8,8’・・・・・・・・・・・・・・・塩とその飽和水溶液 10・・・・・・・・・・・・・・・・・両面接着テープ 11,11’・・・・・・・・・・・・・ビニルテープ 12・・・・・・・・・・・・・・・・・小型容器 13・・・・・・・・・・・・・・・・・グリース 14・・・・・・・・・・・・・・・・・ネット 或る微生物を培養して、この微生物の所望の数量の胞子または細胞を調製する方法であって、(1) 前記培養のために、前記微生物と、それを生長させるための栄養源とを付着させた担体が、酸素と水蒸気は透過させるが前記微生物およびその他の微生物は透過させない材料で少なくとも一部が形成され、かつ、これ以外の部分が透明な材料で形成されているか、または前記少なくとも一部のうちの一部または全部が透明である容器の中に封入されている封入型の培養片、または前記担体が前記容器の中に封入されていない開放型の培養片を使用して、(2) 恒温恒湿の密閉状態の空気環境が保たれている培養装置内に前記培養片を入れて、この培養片における前記微生物を培養し、ここで(3) 前記培養装置は、密閉構造を有することによって、この装置の内部と外部との間の空気の流通が遮断されるとともに、この内部と外部との間の微生物の出入が阻止されており、かつ、この装置内部の空気環境が恒温恒湿に保たれていて、この恒湿のための湿度調節が装置内部の空気環境に曝された湿度調節剤によって達成されており、そして(4) 前記微生物の胞子または細胞の数量が所望の数量となるまで培養する、ことを特徴とする、前記調製方法。 或る微生物を培養して、この培養によって数量が所望の数量まで増えたこの微生物の胞子または細胞を用いて、この胞子または細胞の所望濃度の水性懸濁液を調製する方法であって、(1) 前記培養のために、前記微生物と、それを生長させるための栄養源とを付着させた担体が、酸素と水蒸気は透過させるが前記微生物およびその他の微生物は透過させない材料で少なくとも一部が形成され、かつ、これ以外の部分が透明な材料で形成されているか、または前記少なくとも一部のうちの一部または 全部が透明である容器の中に封入されている封入型の培養片、または前記担体が前記容器の中に封入されていない開放型の培養片を使用して、(2) 恒温恒湿の密閉状態の空気環境が保たれている培養装置内に前記培養片を入れて、この培養片における前記微生物を培養し、ここで(3) 前記培養装置は、密閉構造を有することによって、この装置の内部と外部との間の空気の流通が遮断されるとともに、この内部と外部との間の微生物の出入が阻止されており、かつ、この装置内部の空気環境が恒温恒湿に保たれていて、この恒湿のための湿度調節が装置内部の空気環境に曝された湿度調節剤によって達成されており、そして(4) 培養済みの培養片における前記微生物の胞子または細胞の濃度が前記水性懸濁液中で所望の濃度となるように、これらの胞子または細胞を水性液中に懸濁させることによって、この胞子または細胞の懸濁液を調製する、ことを特徴とする、前記調製方法。 前記微生物がカビ、酵母、細菌、放線菌または単細胞性の藻類である、請求項1または2に記載された調製方法。 前記の封入型または開放型の培養片が収められて、これらの培養片における微生物を培養するための培養装置であって、この培養装置が、密閉構造を有することによって、この装置の内部と外部との間の空気の流通が遮断されているとともに、この内部と外部との間の微生物の出入が阻止されており、かつ、この装置内部の空気環境が恒温恒湿に保たれていて、この恒湿のための湿度調節が装置内部の空気環境に曝された湿度調節剤によって達成されることを特徴とする、前記培養装置。 微生物を培養するための封入型または開放型の培養片であって、前記微生物とそれを生長させるための栄養源とを付着させた担体が、それぞれ、酸素と水蒸気は透過させるが微生物は透過させない材料で少なくとも一部が形成され、かつ、これ以外の部分が透明な材料で形成されているかまたは前記少なくとも一部のうちの一部または全部が透明である容器の中に封入されているか、または封入されていないことを特徴とする、前記封入型または開放型の培養片。 前記の培養装置を用いる培養によって微生物の胞子または細胞の数量が所望の数量まで高められている、請求項5記載の培養片。 あらゆる微生物を透過させない材料で形成された容器の中に封入されている、請求項6記載の開放型培養片。 【課題】無菌操作を必要とすることなく、容易に使用微生物の所望の数量の胞子または細胞を調製して、時間に縛られることなく、随時の時期に所望の濃度の胞子または細胞を含む水性懸濁液を調製できる方法を提供する。【解決手段】(1)微生物と、それを生長させるための栄養源とを付着させた担体が、酸素と水蒸気は透過させるが前記微生物およびその他の微生物は透過させない材料で形成された透明な材料で形成されているか、または容器の中に封入され(2) 恒温恒湿の密閉状態の空気環境が保たれている培養装置内に前記封入体を入れて、この培養片における前記微生物を培養し、ここで(3) 前記培養装置は、この装置内部の空気環境が恒温恒湿に保たれていて、この恒湿のための湿度調節が装置内部の空気環境に曝された湿度調節剤によって達成されており、そして(4) 培養済みの培養片における前記微生物の胞子または細胞の濃度が前記水性懸濁液中で所望の濃度となるように、これらの胞子または細胞を水性液中に懸濁させることによって、この胞子または細胞の懸濁液を調製する、ことを特徴とする、前記調製方法。【選択図】図5