タイトル: | 公開特許公報(A)_脂溶性ビタミン吸着防止組成物 |
出願番号: | 2004257947 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K31/355,A61K9/08,A61K47/10 |
齋藤 伸也 今村 康二 落合 留美 堀江 孝子 森岡 進 JP 2005097300 公開特許公報(A) 20050414 2004257947 20040906 脂溶性ビタミン吸着防止組成物 大正製薬株式会社 000002819 佐鳥 宗一 100115406 北川 富造 100074114 齋藤 伸也 今村 康二 落合 留美 堀江 孝子 森岡 進 JP 2003314285 20030905 7A61K31/355A61K9/08A61K47/10 JPA61K31/355A61K9/08A61K47/10 5 OL 8 4C076 4C086 4C076AA11 4C076CC23 4C076DD37 4C076DD38 4C076FF12 4C076FF18 4C076FF63 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA09 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA08 4C086MA16 4C086NA03 4C086ZC29 本発明は脂溶性ビタミン、特にビタミンEまたはその誘導体のポリオレフィン系材質に対する吸着を防止した外用液剤に関する。 ビタミンEは脂質、特に不飽和脂肪酸に対する抗酸化作用により、過酸化脂質の生成を防ぐなど重要な脂溶性ビタミンであるため、食品、化粧品をはじめとする様々な液体組成物中に配合されている。しかしながら、ポリオレフィン系材質の容器に充填した際に、当該成分が容器に吸着し、その定量値が経時的に低下してしまうことが知られている。 従来、ビタミンEまたはその誘導体含有組成物の容器材質への吸着防止技術として、種々の方法が報告されている。例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類を添加して、ビタミンEおよびその誘導体のポリオレフィン系容器への吸着を防止する技術が開示されている(特許文献1)。しかしながら、それらの配合によりベタツキが生じるなど使用感の低下を招いていた。 また、1〜20重量%のへキシレングリコールを配合することでビタミンEの合成樹脂製容器への吸着を防止する技術が開示されている(特許文献2)。しかし、ヘキシレングリコールの使用は、においなど使用感上の不具合が懸念されるため好ましくない。また、この文献では水性基剤にグリセリン、1,3-ブチレングリコールおよびエタノール等を添加した組成物では、ビタミンEの吸着が防止されず、ヘキシレングリコール添加時にのみビタミンEの吸着が防止できると記載されている。 さらに、界面活性剤と80%以上のエタノールを配合量した溶液中ではビタミンEアセテートのポリエチレンに対する収着が抑制され、エタノール配合量が80%未満の領域では収着定数kが急激に増大することが示されている(非特許文献1)。しかし、エタノール濃度が80%以上という高い領域では皮膚刺激が高いという報告(非特許文献2)があり、外用剤にするには好ましくない。また、エタノールと界面活性剤を同時配合することにより皮膚刺激が発生するという報告(非特許文献3)もあることから、エタノール製剤には界面活性剤を配合しないほうが好ましいと考えられる。 その他、容器にあらかじめビタミンEまたはその誘導体を含有させ、当該成分の吸着を防止する方法(特許文献3)、容器材質をエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂とすることで、当該成分の吸着を防止する方法(特許文献4)なども知られているが、脂溶性ビタミンを容器に含有させると、当該成分が容器から溶出することが懸念されるなどの問題があった。 さらに、容器の材質を特殊なものとする場合、汎用されているポリオレフィン系材質と比べ、必要に応じた強度や、柔軟性、透明度、加工性などを有する素材の入手が困難であり、コストも高くなってしまう。 液剤容器として一般的に使用されることも多いポリエチレンテレフタレートは、脂溶性ビタミンの吸着が生じないことが知られている(特許文献4、特許文献5)が、ポリエチレンテレフタレートは柔軟性が悪いため、容器の加工が難しい等の問題があった。 このように、脂溶性ビタミンの容器への吸着を防止するためには、吸着防止を目的とした成分の添加や特殊な材質の容器を使用しなければならないなど、困難な点があった。特開平4-300830特許公報第2974538号特開平3-240652特開平4-87954特開2002-234582Chem. Pharm. Bull. 44(1) 196-200 (1996)医薬ジャーナル33, 9, 148-151 (1997)皮膚 第28巻 増刊第2号 増266-増269 (1986) 汎用性が高く、良好な柔軟性、加工性を有するポリオレフィン系材質、特にポリエチレン、ポリプロピレンの容器を用いて、脂溶性ビタミン、特にビタミンEおよびその誘導体を配合した外用液剤の開発が望まれていた。 ここで、特に外用剤の基剤として汎用される成分のみを用いて脂溶性ビタミンの吸着を防止できれば、産業上利用価値の高い製品が提供できる。 本発明は脂溶性ビタミン、特にビタミンEまたはその誘導体のポリオレフィン系材質に対する吸着を防止した外用液剤を提供することを目的とする。 本発明者らは課題を解決するために種々検討した結果、これまでヘキシレングリコール以外のアルコール類では達成不可能とされてきたビタミンEまたはその誘導体のポリオレフィン系材質に対する吸着防止が、製剤中に一定量以上の比率でアルコール類を配合するという簡便な方法により達成できることを見出し本発明を完成した。 すなわち本発明は、A)脂溶性ビタミン、B)エタノール、およびC)多価アルコールを配合し、B)成分の配合量が製剤全体の65〜75容積%、C)成分の配合量が5〜20容積%であり、B)成分とC)成分の合計配合量が製剤全体の80容積%以上の組成物を、ポリオレフィン系素材からなる容器に充填したことを特徴とする外用液剤である。 ここで、「吸着」と「収着」は一般的に固体内部への吸着質の吸収の有無で異なる状態を示すが、本発明ではそれらのどちらについても同様の効果を示す。 本発明における脂溶性ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどがあげられるが、特にビタミンE類の場合に、優れた効果が得られる。 ビタミンE類には、α型、β型、γ型のトコフェロールの他、酢酸トコフェロールなどの誘導体も含まれる。 本発明での脂溶性ビタミンの配合量は、製剤全体の0.01〜1.0W/V%が好ましく、0.05〜0.2W/V%がさらに好ましく、0.05〜0.1W/V%がよりさらに好ましい。配合量が少ないと外用剤としたときの脂溶性ビタミンの効果が不十分であり、配合量が多いと溶解度が不十分なため製剤製造が困難になるからである。 本発明で脂溶性ビタミンの吸着防止効果を得るためには、エタノールと多価アルコールの合計配合量が製剤全体の80容積%以上である必要がある。さらにエタノールは、製剤全体の65〜75容積%の配合量が必要であり、65〜70容積%が好ましい。 多価アルコールの配合量は5〜20容積%であり、好ましくは5〜15容積%である。20容積%を超えて配合するとベタツキなど使用感の低下を招くからである。 本発明における多価アルコールとしては、外用液剤に使用することができるものを使用することができ、好ましいものとしてプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどがあげられ、さらに好ましいものとして、1,3-ブチレングリコールおよびグリセリンをあげることができる。ここで、多価アルコールとしてグリセリンを選択する場合には、比重(20℃での濃グリセリンの比重:1.258以上)の関係から配合量はw/v%であらわしたものを容積%と同様に扱う。すなわち多価アルコールとしてグリセリンを選択した場合には配合量は5〜20w/v%であり、5〜15w/v%が好ましい。なお、本発明で用いるグリセリンは含量98%以上の濃グリセリンのことであり、通常用いられる含量約85%のものを用いる場合にはその含有する水分量を考慮して配合量を決定する必要がある。 ここで、本発明において容積%とは、20℃での各成分単独での容積が最終的な製剤全体に占める割合のことである。したがって、各成分の容積%の合計が100%を超えることもあり得る。 本発明において、ポリオレフィン系樹脂とは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどがあげられ、高密度、低密度いずれのものを用いることもできる。本発明で用いる容器は、ポリオレフィン系樹脂のみでできているものに限らず、容器の一部にポリオレフィン系樹脂を使用しているものにおいてもその効果を発揮することができる。 本発明の外用液剤は広いpH範囲内において安定に使用できるが、pHは5以上9未満が好ましく、pH5.5〜8.5の範囲がさらに好ましい。pHが9以上になるとビタミン類の分解が懸念されるため、実施が困難であり、pHが5より低いと皮膚刺激が生じることがあるからである。 従来、脂溶性ビタミン類を配合するには、一般的に界面活性剤を配合することが多いが、本発明では界面活性剤を配合しなくとも、液剤中に脂溶性ビタミンを配合することができることも特徴の一つである。 本発明の外用液剤においては上記した成分の他、一般の外用剤に使用される種々の成分、例えば、賦形剤、血管拡張剤(塩化カルプロニウム、ニコチン酸ベンジル、センブリ抽出液、ミノキシジル、オタネニンジンエキス、トウガラシチンキなど)、抗ヒスタミン剤(塩酸イソチペンジルなど)、抗炎症剤(グアイアズレンなど)、角質溶解剤(尿素、サリチル酸など)、殺菌剤(グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、第4級アンモニウム塩、ピロクトンオラミンなど)、保湿剤(ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸など)、各種動植物(イチイ、ボタンピ、カンゾウ、オトギリソウ、附子、ビワ、カワラヨモギ、コンフリー、アシタバ、サフラン、サンシシ、ローズマリ―、セージ、モッコウ、セイモッコウ、ホップ、プラセンタなど)の抽出物、ビタミン類(酢酸レチノール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチンなど)、抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレートなど)、溶解補助剤(アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、各種動植物油、炭化水素類など)、代謝賦活剤(パンテノールなど)、ゲル化剤(水溶性高分子など)、粘着剤、香料、清涼化剤(メントール、ハッカ油、カンフルなど)、染料などの通常使用される成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。 本発明により、ビタミンE類をポリオレフィン製の容器に配合することが可能になったので外用製剤として有用である。 以下に、本発明を実施例および試験例によりさらに詳細に説明する。実施例 表1に示した処方で、アルコール類を基剤として、ビタミンEアセテートを0.08容積%(v/v%)含有するローション剤を調製した。ボトルがポリエチレンテレフタレート製であり、栓部が低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンから構成される容器に充填し外用製剤を得た。試験例1 製剤が栓部に接するようにし、40℃で6ヶ月間保存した後、ローション中のビタミンEアセテートの残量を測定した。結果を表1に示した。 表1の結果から明らかなように、アルコール類を80容積%以上含有させることによりビタミンEアセテートの残存率が向上することがわかった。試験例2 基剤組成と容器材質のビタミンEアセテート吸着に及ぼす影響をより明確にするため、容器材質の平板を製剤に浸漬する単純な系で試験を行った。試験条件はポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LLDPE)のシート(10×15×1mm)を製剤35mLに浸漬し、50℃で2箇月間保存した。浸漬試験前後のビタミンEアセテート含量の差より各材質体積に対するビタミンEアセテート吸着量(g/cm3)を算出した。なお、使用した濃グリセリンは20℃の比重が1.263のものである。 結果を表2に示した。 本発明により、ビタミンEを一般的な容器に保存することが可能になったので医薬品、化粧品などに利用することができる。A)脂溶性ビタミン、B)エタノール、およびC)多価アルコールを配合し、B)成分の配合量が製剤全体の65〜75容積%、C)成分の配合量が5〜20容積%であり、B)成分とC)成分の合計配合量が製剤全体の80容積%以上の組成物を、ポリオレフィン系素材からなる容器に充填したことを特徴とする外用液剤。脂溶性ビタミンがビタミンEまたはその誘導体である請求項1記載の外用液剤。ビタミンEまたはその誘導体の配合量が、製剤全体の0.01〜1W/V%である請求項2記載の外用液剤。多価アルコールがプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリンおよびポリエチレングリコールからなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項1記載の外用液剤。ポリオレフィン系素材がポリエチレンまたはポリプロピレンあるいはそれらの組み合わせである、請求項1記載の外用液剤。 【課題】 本発明は脂溶性ビタミン、特にビタミンEまたはその誘導体のポリオレフィン系材質に対する吸着を防止した外用液剤を提供することを目的とする。【解決手段】 A)脂溶性ビタミン、B)エタノール、およびC)多価アルコールを配合し、B)成分の配合量が製剤全体の65〜75容積%、C)成分の配合量が5〜20容積%であり、B)成分とC)成分の合計配合量が製剤全体の80容積%以上の組成物を、ポリオレフィン系素材からなる容器に充填したことを特徴とする外用液剤。【選択図】 なし