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タイトル:公開特許公報(A)_カロテノイド類含有抽出物の製法
出願番号:2004253525
年次:2006
IPC分類:C09B 61/00,C12P 23/00


特許情報キャッシュ

北村 晃利 大原 英治 能沢 由香 堀田 良晴 高橋 二郎 JP 2006070114 公開特許公報(A) 20060316 2004253525 20040831 カロテノイド類含有抽出物の製法 富士化学工業株式会社 390011877 北村 晃利 大原 英治 能沢 由香 堀田 良晴 高橋 二郎 C09B 61/00 20060101AFI20060217BHJP C12P 23/00 20060101ALI20060217BHJP JPC09B61/00 AC12P23/00 6 OL 12 特許法第30条第1項適用申請有り 1.テフロン 4B064 4B064AH01 4B064CA08 4B064CC21 4B064CE02 4B064DA01 本発明は、カロテノイド類を含有する天然物を有機溶媒中に懸濁させて破砕と同時に抽出を行った後、有機溶媒を留去することによって得られるカロテノイド類抽出物の製法及びその抽出物に関する。更に詳しくは、カロテノイド類の経時的安定性が高く、臭気が少ないカロテノイド類抽出物およびその生産性の高い製造方法に関する。 カロテノイド類は、植物や動物の組織あるいは器官、藻類、微生物の菌体など天然界に広く分布している赤−黄色色素である。カロテノイド類は食品、飲料の着色剤としての食品添加物の分野およびサケあるいはマスなどの魚類、鶏などの家禽類などの肉、体表、卵などへの色付けなどを目的とした飼料添加物、抗酸化作用による抗酸化剤や医薬品用途などとして近年その用途が拡大している。これらは、合成法により工業的に生産されているが、近年安全性の問題から合成品を食品および飼料添加物として用いることはできなくなりつつあり、また近年の天然物指向ともあいまってこれらの合成品を代替するために天然のカロテノイド化合物を製造する技術の開発が強く望まれている。 また、カロテノイド類でも、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチンなど酸素原子を含むキサントフィルと呼ばれ、より高い抗酸化効果を有していることが知られている。特にアスタキサンチンは、カロテノイドの一種でエビ、カニ等の甲殻類、サケ、タイ等の魚類、緑藻ヘマトコッカス等の藻類、赤色酵母ファフィア等の酵母類等、天然、特に海洋に広く分布する食経験豊かな赤色色素である。近年アスタキサンチンがビタミンE(α−トコフェロール)の100〜1,000倍、β−カロテンの約40倍もの強力な抗酸化作用を有し、抗動脈硬化作用、糖尿病に対する作用、免疫賦活作用、抗ストレス作用などが報告されている。 このアスタキサンチンは、高等植物、ファフィア属酵母菌体、藻類、細菌、魚類、甲殻類などから抽出することにより得ることができる。なかでも緑藻類ヘマトコッカスからアスタキサンチンを得る方法はアスタキサンチンを高濃度で含むヘマトコッカスの大量に且つ安定的に培養する方法が開発されたので、天然由来のアスタキサンチンを供給する方法として極めて有利な立場にある。このヘマトコッカス藻体からアスタキサンチンを抽出する方法はいくつかの方法が報告されている。通常、このヘマトコッカスは寒天状の粘質鞘に包まれた細胞壁で覆われているので抽出する際には、藻類の細胞壁を破壊または処理が必要である。ヘマトコッカス藻からアスタキサンチンを抽出する方法としては、細胞壁を高圧下乱流により破壊、乾燥後、有機溶媒で抽出する方法(特許文献1)、ヘマトコッカスを乾燥被胞化状態で細砕して平均粒度10μm以下の細粉としたのち有機溶媒で抽出する方法(特許文献2)、ヘマトコッカス藻を水系破砕し噴霧乾燥したのち有機溶媒で抽出する方法(特許文献3)、ヘマトコッカス藻の細胞壁を破壊した乾燥物を得たのちに二酸化炭素の超臨界状態で抽出する方法(特許文献4)、ヘマトコッカス藻を熱アセトンで処理することによりに抽出する方法(特許文献5)がある。 破砕した藻体を乾燥させたのち有機溶媒で抽出する方法では、細胞破壊時の負荷や乾燥時の負荷および保存中、すなわち抽出物を製造するまでに細胞内の成分を暴露した状態で乾燥物として保管している期間中に生じる酸化物および過酸化物が抽出物中に含まれるため、抽出物中のカロテノイドの安定性や臭気を生じやすいという問題があった。また工程が長くなることや特殊な乾燥・破砕装置が必要であるため、生産性も劣っていた。日本国特開平9−111139号公報日本国特表平2−503632公報公報国際公開WO02/077105号公報日本国特開第2004−41147号公報日本国特開平第11−56346号公報 本発明は、容易に製造することができ、カロテノイド類の回収率や安定性が高く、臭気の少ないカロテノイド類の含有抽出物の製法と、その抽出物を提供することを課題とする。 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、細胞内成分が酸化されやすい粉末または固形物として空気中に暴露せずに、カロテノイド類を含有する天然物を有機溶媒中で破砕しながら抽出し有機溶媒を除去する製法によって得られるカロテノイド類含有抽出物が高い回収率と良好な安定性及び低臭気性を示すことを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、(1) カロテノイド類を含有する天然物を有機溶媒中に懸濁させ、破砕機で破砕しながら有機溶媒中で抽出したのち、固形物を除去し、有機溶媒を除去することによって得られることを特徴とするカロテノイド類含有抽出物の製法であり、(2)カロテノイド類がキサントフィルである(1)の製法であり、(3)カロテノイド類がアスタキサンチンである(1)の製法であり、(4)密閉型培養装置で培養した藻類が天然物である(1)〜(3)のいずれかに記載の製法であり、(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の製法によって得られた抽出物であり、(6)安定性試験で4時間後の残存量が90〜100%である(5)の抽出物である。 本発明のカロテノイド類抽出物は、カロテノイド類を含有する天然物を有機溶媒中で破砕しながら抽出し、有機溶媒を減圧下で除去することによって製造することができる。 本発明で抽出可能なカロテノイド類としては、例えばアスタキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、アドニキサンチン、エキネノン、クリプトキサンチン、アドニブリン、アステロイデノン、ロドキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、β−カロチン、α−カロチン、γ−カロチン、リコペンなどであり、好ましくはアスタキサンチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチンなどのキサントフィルであり、特に好ましくはアスタキサンチンである。 本発明に使用されるカロテノイド類を含有する天然物としては、カロテノイド類を含有している動植物や微生物であればよく、通常は、微生物の菌体、藻類の藻体、植物や動物の組織あるいは器官などの天然物が適用される。具体的には、カロテノイド生産能のある細菌を従属栄養的に培養することにより得られる菌体、ファフィア・ロドチーマのようなカロテノイド生産能のある酵母を従属栄養的に培養して得られる菌体、ヘマトコッカス・プルビアリスあるいはデュナリエラ属のような藻類を明所で独立栄養的に培養することにより得られる藻体、オキアミ、ザリガニ、カニあるいはロブスター等の甲殻類の殻、ニンジン等の植物の組織などがある。天然物は水を絞っただけの湿性状態や、乾燥した状態の物のどちらでも行うことができる。 特にアスタキサンチンでは、アスタキサンチンを含有している動植物や微生物であればよく、例えば、エビ、オキアミ、カニなどの甲殻類の甲殻、卵および臓器、種々の魚介類の皮および卵、緑藻ヘマトコッカスなどの藻類、赤色酵母ファフィアなどの酵母類、海洋性細菌、福寿草および金鳳花などの種子植物をあげることができる。 アスタキサンチンの含有物は、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌などを、公知の方法に準拠して、適宜な培地で培養することにより得られ、アスタキサンチンを最も高濃度で含有することや生産性の高さから緑藻ヘマトコッカスが最も好適である。ヘマトコッカス緑藻類のアスタキサンチン含量の高いものを得る培養方法としては、異種微生物の混入・繁殖がなく、その他の夾雑物の混入が少ない密閉型の培養方法が好ましく、例えば、密閉型のドーム形状、円錐形状又は円筒形状の培養装置と装置内で移動自在のガス吐出装置を有する培養基を用いて培養する方法(国際公開番号WO99/50384号公報)や、密閉型の培養装置に光源を入れ内部から光を照射して培養する方法、平板状の培養槽で培養する方法が適している。本発明に用いるヘマトコッカス藻のアスタキサンチン含量は特に制限はないが、含量が多いほど抽出効率が良くなるので好ましい。 本発明に用いるヘマトコッカス藻体は、上記製造方法に用いた培養液から常法に従って、例えば遠心分離機や濾別などによって得られる。破砕に用いるヘマトコッカス藻体は湿った状態(このときの使用量は乾燥品に換算して求める)で、又は濾別したヘマトコッカス藻体と抗酸化剤とを水に懸濁させ噴霧乾燥等により乾燥させたものを使用することができる。 本発明の記載で、特に記載がない限り、アスタキサンチンはアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含む。さらに、アスタキサンチンのエステルにはモノエステル体および/またはジエステル体を含む。 含有天然物中のカロテノイド類の含有量は特に制限されるものではないが、通常カロテノイド類の含有率は0.001重量%以上のものが用いられ、好ましくは0.1重量%以上、最も好ましくは1.0重量%以上であり、含有量の上限には特に制限はない。破砕機にかける前のカロテノイド類含有天然物の粒径範囲は、破砕機で破砕できる範囲であれば特に制限はないが、破砕効率が良い範囲であればよく、平均粒子径が1〜5000μm、好ましくは5〜1000μmである。これらの粒径にするために、事前に予備破砕を行うことができる。 本発明のカロテノイド類含有抽出物の製法は、(1)懸濁液の調整、(2)破砕・抽出、(3)固形物の除去、(4)溶媒の除去の工程で行う。 有機溶媒にヘマトコッカス藻体乾燥品を添加し、必要に応じて界面活性剤、抗酸化剤を添加し、撹拌することにより懸濁液を調製する。懸濁液の調製温度は低い方が好ましく、処理中の劣化を防ぐため窒素などの不活性ガスの雰囲気下とする。 ヘマトコッカス藻体の濃度は、乾燥重量で懸濁液の全量に対して1〜80重量%、好ましくは10〜50重量%である。 カロテノイド類を抽出するのに用いることができる有機溶媒は、カロテノイド類を溶解させるものでよく、例えばエタノール、メタノールなどのアルコール類、アセトン、エーテル、酢酸エチル、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、塩化メチレンであり、好ましくはエタノール、メタノール、アセトン、ヘキサンであり、特に好ましくはアセトン、エタノール、ヘキサンである。 カロテノイド類の抽出率や安定性を高めるため、懸濁液中に界面活性剤や抗酸化剤を添加して破砕することができる。界面活性剤としては、水に可溶でHLBが7.0以上、好ましくは10以上、より好ましくはHLBが15以上のものである。具体的には、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等であり、より好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステルである。 ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、下記、日光ケミカルズ製の、デカグリセリルモノラウレート(HLB15.5)、デカグリセリルモノミリステート(HLB14)、デカグリセリルモノモノステアレート(HLB12.0)、デカグリセリルモノオレエート(HLB12.0)、デカグリセリルモノリノレート(12.0)、デカグリセリルモノイソステアレート(HLB12.0)、デカグリセリルジステアレート(HLB9.5)、デカグリセリルジオレエート(HLB10.0)、デカグリセリルジイソステアレート(HLB10.0)、デカグリセリルトリステアレート(HLB7.5)、デカグリセリルトリオレエート(HLB7.0)、デカグリセリルトリイソステアレート(HLB7.0)等が挙げられ、好ましくは水に透明に溶解するデカグリセリルモノラウレート(「Decaglyn1−L」商品名、HLB15.5、日光ケミカルズ製)である。ショ糖脂肪酸エステルとしては、「S−1670」、「LWA−1570」(三菱化学製)、「DK−エステル SS」、又は「DK−エステルF−160」(第一工業製薬製)等をあげることができる。上記界面活性剤としては食品添加物として利用できるものがより好ましい。 抗酸化剤としてはビタミンE(トコフェロール)、ビタミンE誘導体、トコトリエノール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、ビタミンC誘導体、グルタチオン、フィチン酸、カテキン類、フラボノイド類、β−カロチン等が挙げられる。好ましくは、ビタミンE、ビタミンE誘導体、トコトリエノール、ビタミンC、ビタミンC誘導体、ローズマリー抽出物である。 本発明の製法において、アスタキサンチン含有ヘマトコッカス破砕物、界面活性剤、抗酸化剤及び有機溶媒を加える順序は特に制限されない。 本発明のカロテノイド類含有天然物の破砕方法としては、カロテノイド類含有天然物を有機溶媒に懸濁させ、有機溶媒を使用可能な破砕機、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波破砕機、ビーズミル、「マイクロスMIC−5NZ」(商品名、奈良機械製)などを用いて湿式破砕することができ、好ましくはビーズミルで湿式破砕である。 ビーズミルの破砕条件としては、抽出物の劣化を押さえるため短時間で行うのがよく、滞留時間としては1〜30分、好ましくは2〜15分であり、周速は、2〜30m/S、好ましくは8〜12m/Sであり、用いられるビーズ径は、0.2〜5mm、好ましくは0.5〜2mmである。破砕時の温度としては、溶媒の融点から沸点の間であればよく、−10〜50℃、好ましくは−10〜40℃である。破砕時間は破砕するヘマトコッカス藻体、界面活性剤、抗酸化剤の使用量、種類、破砕温度等により異なり特に限定されないが、通常、ヘマトコッカス藻(湿重量)100kgあたり、1〜10時間、好ましくは2〜5時間である。破砕処理は処理中の劣化を防ぐため窒素などの不活性ガスの雰囲気下で行った方がよい。 カロテノイド類含有天然物の破砕物の粒径範囲は特に制限はないが、抽出効率が良く、濾過がしやすい範囲であれば良く、平均粒子径が1〜1000μm、好ましくは5〜100μmである。破砕処理は目的の粒径に破砕するために、必要に応じて1回以上複数回破砕処理を繰り返すことができる。 この破砕処理により溶液中のアスタキサンチンは出発原料と比べて殆ど分解していないことが分かった。この懸濁液は直ちに、固形物除去処理することができる。また破砕懸濁液が直ちに固形物除去処理できない場合には、一時的にこの破砕懸濁液を10℃以下の温度範囲で保管して使用することができる。 固形物除去処理方法としては、常法に従って、例えば、加圧濾過、減圧濾過、自然濾過などで行うことができる。懸濁液には濾過助剤を添加し、濾過速度を高めることができる。濾過助剤としては、セルロース類、珪藻土類、活性炭などであり、珪藻土類が好ましい。濾過時間はカロテノイド類の分解や酸化物を生じさせないため早いほうが好ましく、24時間以下、好ましくは2時間である。濾過時の温度としては、50℃以下、特に25℃以下が好ましい。 溶媒の除去方法としては、常法に従って行えばよく、例えば減圧濃縮機などで濾液から有機溶媒を除去する。抽出物の劣化を押さえるため過剰な加温をしない方が良く、0〜200℃、好ましくは20〜80℃で行い、1回の処理時間は短い方が良く、0.5〜20時間、好ましくは0.5〜10時間で処理できる量で溶媒を除去する。 有機溶媒を更に除去したい場合は、分子蒸留機や薄膜式遠心エバポレーターなどでさらに有機溶媒の濃度を減少させることができる。 本発明の抽出物は、安定性が高く臭気が少ないという特徴がある。本発明の抽出物の安定性は、80℃での負荷試験で4時間後の存在量が90〜100%である。臭気はこれまで公知となっている方法、例えば、国際公開WO02/077105号公報や日本国特開第2004−41147号公報に記載の方法で得られた物より大幅に臭気が押さえられている。 また本発明の抽出物の製法は回収率が高く、抽出前の天然物の含量に対して80〜100%の回収率である。 本発明の抽出物は、化粧品や薬剤、食品、ペット食物、飼料などに配合することができる。 薬剤の製剤型としては、例えば、錠剤、舌下錠、丸剤、坐剤、散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、注射剤、乳剤、貼付剤などの形態に製剤化することができる。例えば、錠剤は薬理的に受容しうる担体と均一に混合して打錠することにより、また、散剤、粉剤、顆粒剤は薬剤と担体とを乾式造粒または湿式造粒して製造することができ、湿式造粒としては、常法により、例えば、噴霧乾燥法、流動層造粒法、混練造粒法又は凍結乾燥法などにより乾燥することにより製造できる。 散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤はラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ハイドロタルサイト、無水リン水素酸カルシウムなどの賦形剤、でんぷん、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、マグネシウムステアレート、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの表面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを用いて製造できる。また、必要に応じて、常法により口腔内速崩壊剤とすることができる。 製剤には必要ならばさらに他の抗酸化剤を添加してもよい。抗酸化剤は特に限定されるものでなく、抗酸化作用を有するものであれば適用可能である。例えば、レチノール、3,4−ジデヒドロレチノールなどのビタミンA類、ビタミンB、D−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸などのビタミンC類、トコフェロール、トコトリエノール、酢酸ビタミンE、コハク酸ビタミンEなどのビタミンE類、リン酸ビタミンE類、コエンザイムQ、フラボノイド、タンニン、エラグ酸、ポリフェノール類、ラジカル阻止剤、ヒドロペルオキシド分解剤、金属キレート剤、活性酸素除去剤、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、及びδ−カロチンを含むカロチン類、トコキノン、及びこれらの薬学的に許容できる塩、並びにそれらの混合物からなる群から1種または2種以上選択することができる。 注射剤は、有効成分を必要に応じてpH調製剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。 懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。 飲食物への添加例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、フライドポテト、ポテトチップス、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカーなど、マカロニ、パスタ、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなど、または果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料または非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコールまたはリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などの一般食品への添加例を挙げることができる。 本発明の飲食物を栄養補助食品あるいは機能性食品として用いる場合、その形態は、上記医薬用製剤と同様の形態であってもよい。乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、または、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などを配合した自然流動食、半消化態栄養食および栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工物を挙げることができる。ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料および色素などを配合してもよい。 飼料として用いる場合は、そのまま飼料として用いてもよいが、一般に用いられる動物用、魚類用配合飼料の配合原料、例えば、トウモロコシ、マイロ、魚粉、ふすま、食塩、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アミノ酸類、ビタミン類、微量ミネラル、既存の抗酸化剤等を配合しても良い。 化粧品の形態としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック、洗浄料等のスキンケア化粧料、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ、口紅等のメーキャップ化粧料、分散液、軟膏、外用液剤、クリーム剤等の化粧料とすることができる。また、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、水(アルカリ単純温泉水、深層水、精製水等を含む)、低級アルコール、多価アルコール、油脂、ロウ、鉱物油、脂肪酸、粉体、金属セッケン、pH調整剤、界面活性剤、増粘剤、色素、植物又は動物系原料由来の抽出物、ビタミン類、アミノ酸類、ホルモン類、殺菌・消毒剤、角質溶解剤、酵素、清涼剤、安定化剤、金属イオンキレート剤、血行促進剤、精油、消臭剤、保湿剤、収斂剤、抗脂漏剤、細胞賦活剤、香料等を添加しても良い。は、これらに限定されるものではない。 本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例をあげるが、本発明がこの実施例のみに限定されないことはいうまでもない。以下に示すアスタキサンチンの量はフリー体換算のアスタキサンチンに換算したときの量である。 <含有率測定試験>未破砕のヘマトコッカス藻体中に含まれるアスタキサンチンの含量とアスタキサンチン抽出物中のアスタキサンチン含量は吸光度法(波長475nm、溶媒アセトン)で測定した。未破砕のヘマトコッカス藻体中に含まれるアスタキサンチンを定量するための前処理方法として、本品約50mgを精密に量り、DMSO2mLを加えてテフロンホモジナイナーで5分間摩砕し、遠心分離して得た上清を100mLのメスフラスコにとる。残留物にアセトン5mLを加えて40〜50℃で5分間超音波処理し、遠心分離して得た上清を先と同じメスフラスコにとる。更にアセトン5mLで2〜3回同様に上清が無色になるまで操作を繰り返し、得られた上清を先と同じメスフラスコにとり、アセトンを加えて正確に100mLとする。この液をアセトンで希釈し適当な濃度とし吸光度を測定した。抽出物中のアスタキサンチンはアセトンで希釈し適当な濃度とし吸光度を測定した。 <安定性試験>抽出物10mgをキャップ付き試験管(10ml)に入れ、酸素で置換し、封をした後、80℃で加温した状態で、4時間後のアスタキサンチン含量を含有率測定試験と同様に吸光度法で測定した。 <臭気官能試験>室温で抽出物を社内の試験員5名による官能試験により、5段階で臭気を評価した。(評 価) (内 容)1: 特別なにおいを感じない。2: わずかに特有の海草臭を感じる。3: はっきりと特有の海草臭を感じる。4: 特有の海草臭をやや不快に感じる。5: 極めて不快な特有の臭気がある。 <過酸化物価>0.2〜1.0gの試料を適当量50mLのスクリューキャップ遠沈管にとり、クロロホルム:酢酸(2:3)20mLを加えて混和し、窒素ガス置換を行なった後、窒素ガスを吹き込みながら、飽和ヨウ化カリウム溶液1.0mLを静かに加える。やさしく攪拌してから、暗所に15分間放置した後、10%ヨウ化カリウム溶液20mLを加えて激しく混和してから、3,000rpmで3分間遠心処理を行う。下層を乱さないように静かに攪拌しながら0.01Nチオ硫酸ナトリウムでヨウ素の黄色が薄くなるまで滴定し、これにデンプン試薬0.5mLを添加してから、紫色が消えるまで滴定を行なう。滴定量から次式に従って過酸価物価(POV)を計算して求める。POV(mEq/kg)=滴定量(mL)×滴定液ファクター×10/試料重量(g) <酸価>0.2〜4.0gの試料を適当量100mLのビーカーにとり、エタノール:ジエチルエーテル(1:1)を100mL加えて溶解し、0.1N水酸化カリウム溶液で滴定する。滴定量から以下の式にしたがって酸価を計算して求める。酸価(AV/g)=滴定量(mL)×滴定液ファクター×5.611/試料重量(g) [実施例1]乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末1kg(バイオリール社製 アスタキサンチン含量4.6%)とミックスビタミンE(理研ビタミン、E700) 25gをアセトン1.5kgに分散させ、1mm径のガラスビーズを85%充填した防爆型のビーズミル試験機[ダイノミルKDL-PILOT、WAB社製]を用いて、適時冷却しながら室温で、ディスク周速10m/s、流速140g/min.で破砕処理を2回行い、同時にカロテノイドを含む脂質画分を抽出した。破砕懸濁液全量を吸引濾過により抽出濾液を回収、さらに濾過残渣を1kgのアセトンでリンス3回行い、カロテノイドを含む脂質成分を完全に抽出した。得られた抽出濾液全量から減圧エバポレーター(温度35℃)でアセトンを留去して、カロテノイド(アスタキサンチン)抽出物を得た。 [実施例2]乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末1kg(Bio Real, Inc社製 アスタキサンチン含量4.6%)とミックスビタミンE(理研ビタミン、E700)25gをエタノール2kgに分散させ、1mm径のガラスビーズを85%充填した防爆型のビーズミル試験機[ダイノミルKDL-PILOT、WAB社製]を用いて、適時冷却しながら室温で、ディスク周速10m/s、流速180g/min.で破砕処理を2回行い、同時にカロテノイドを含む脂質画分を抽出した。破砕懸濁液全量を吸引濾過により抽出濾液を回収、さらに濾過残渣を1kgのエタノールでリンス3回行い、カロテノイドを含む脂質成分を完全に抽出した。得られた抽出濾液全量から減圧エバポレーター(温度45℃)でエタノールを留去して、カロテノイド(アスタキサンチン)抽出物を得た。 [実施例3]乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末80kg(AstaReal AB社製 アスタキサンチン含量3.7%)とミックスビタミンE(理研ビタミン、E700)2kgをアセトン120kgに分散させ、1mm径のガラスビーズを85%充填した防爆型のビーズミル試験機[ダイノミルKDL-25BC、WAB製]を用いて、適時冷却しながら室温で、ディスク周束10m/s、流速100kg/hr.で破砕処理を2回行い、同時にカロテノイドを含む脂質画分を抽出した。破砕懸濁液全量を吸引濾過により抽出濾液を回収、さらに濾過残渣を40kgのアセトンでリンス3回行い、カロテノイドを含む脂質成分を完全に抽出した。得られた抽出濾液全量から減圧下(100torr、45℃)でアセトンを留去して、カロテノイド(アスタキサンチン)抽出物を得た。 [比較例1]乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末80kg(バイオリール社製 アスタキサンチン含量4.8%)とミックスビタミンE(理研ビタミン、E700)2kgを水320kgに分散させ、マイクロスMIC−5NZ[奈良機械製]を用いて、回転数1,000rpmで32時間破砕処理し、これを噴霧乾燥(乾燥条件:入り口温度210℃、出口温度100〜102℃、アトマイザー回転数9,000rpm)した。得られた破砕乾燥藻全量を120kgのアセトン中に分散し、カロテノイドを含む脂質画分を抽出した。濾過により抽出濾液を回収、さらに濾過残渣を40kgのアセトンでリンス3回行い、カロテノイドを含む脂質成分を完全に抽出した。得られた抽出濾液は減圧下で基準値以下までアセトンを留去して、カロテノイド(アスタキサンチン)抽出物を得た。 [比較例2]乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末1kg(バイオリール社製 アスタキサンチン含量4.6%)とミックスビタミンE(理研ビタミン、E700)25gを水4kgに分散させ、ビーズミル試験機[ダイノミルKDL-PILOT、WAB社製]を用いて、ディスク周速10m/s、流速100g/min.で破砕処理を2回行い、これを噴霧乾燥(乾燥条件:入り口温度210℃、出口温度98〜102℃、アトマイザー回転数9,000rpm)した。乾燥体1kgを容積4リットルの抽出槽に充填し、抽出槽の温度を40℃に保持し、温度40℃、圧力40MPaの超臨界状態の二酸化炭素を1時間当り10kgの供給速度で2時間供給し、圧力を5MPa、温度30℃とした分離槽の下部の抜き出し弁から抽出物を取り出してカロテノイド(アスタキサンチン)抽出物を得た。 [表1]回収率、安定性、過酸化物価、酸値の比較 抽出物中のアスタキサンチンの回収率や安定性は、実施例1−3のほうが比較例1−2の抽出物より、良いことがわかる。過酸化物価や酸化は実施例1−3のほうが比較例1−2の抽出物より、大幅に少ないことがわかる。 [表2]臭気官能試験 実施例1−3の抽出物の平均は1.7〜2.3であり、比較例1−2の抽出物の平均は3.7〜4.8であり、アスタキサンチン抽出物の臭気は、実施例1−3のほうが比較例1−2抽出物より良いことがわかる。 カロテノイド類を含有する天然物を有機溶媒中に懸濁させ、破砕機で破砕しながら有機溶媒中で抽出したのち、固形物を除去し、有機溶媒を除去することを特徴とするカロテノイド類含有抽出物の製法。 カロテノイド類がキサントフィルである請求項1の製法。 カロテノイド類がアスタキサンチンである請求項1の製法。 密閉型培養装置で培養した藻類が天然物である請求項1〜3のいずれかに記載の製法。 請求項1〜4のいずれかに記載の製法によって得られた抽出物。 安定性試験で4時間後の残存量が90〜100%である請求項5の抽出物。 【課題】 回収率や安定性が高く、臭気の少ないカロテノイド類抽出物の生産性の高い製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】 カロテノイド類を含有する被抽出物を有機溶媒中で破砕しながら、カロテノイド類を含む細胞内成分を空気中に暴露することなく抽出し、有機溶媒を除去することによって、安定性が高く、臭気の少ないカロテノイド類含有抽出物の製造方法。


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特許公報(B2)_アスタキサンチン含有抽出物の製法およびその製法によって得られたアスタキサンチン含有抽出物

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アスタキサンチン含有抽出物の製法およびその製法によって得られたアスタキサンチン含有抽出物
出願番号:2004253525
年次:2012
IPC分類:C09B 61/00,C12P 23/00


特許情報キャッシュ

北村 晃利 大原 英治 能沢 由香 堀田 良晴 高橋 二郎 JP 4934272 特許公報(B2) 20120224 2004253525 20040831 アスタキサンチン含有抽出物の製法およびその製法によって得られたアスタキサンチン含有抽出物 富士化学工業株式会社 390011877 田中 政浩 100085109 北村 晃利 大原 英治 能沢 由香 堀田 良晴 高橋 二郎 20120516 C09B 61/00 20060101AFI20120419BHJP C12P 23/00 20060101ALI20120419BHJP JPC09B61/00 AC12P23/00 C09B 61/00 C12P 23/00 特開2002−348275(JP,A) 特開2004−089158(JP,A) 4 2006070114 20060316 11 20070830 特許法第30条第1項適用 平成15年度地域コンソーシアム研究開発事業成果報告書(平成16年3月発行)に発表 桜田 政美 本発明は、アスタキサンチンを含有するヘマトコッカス藻をエタノールまたはアセトンの有機溶媒中に懸濁させて破砕と同時に抽出を行った後、固形物と該有機溶媒を除去してなるアスタキサンチン抽出物の製法及びその製法によって得られる抽出物に関する。更に詳しくは、経時的安定性が高く、臭気の少ないアスタキサンチン抽出物およびその生産性の高い製造方法に関する。 カロテノイド類は、植物や動物の組織あるいは器官、藻類、微生物の菌体など天然界に広く分布している赤−黄色色素である。カロテノイド類は食品、飲料の着色剤としての食品添加物の分野およびサケあるいはマスなどの魚類、鶏などの家禽類などの肉、体表、卵などへの色付けなどを目的とした飼料添加物、抗酸化作用による抗酸化剤や医薬品用途などとして近年その用途が拡大している。これらは、合成法により工業的に生産されているが、近年安全性の問題から合成品を食品および飼料添加物として用いることはできなくなりつつあり、また近年の天然物指向ともあいまってこれらの合成品を代替するために天然のカロテノイド化合物を製造する技術の開発が強く望まれている。 また、カロテノイド類でも、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチンなど酸素原子を含むキサントフィルと呼ばれ、より高い抗酸化効果を有していることが知られている。特にアスタキサンチンは、カロテノイドの一種でエビ、カニ等の甲殻類、サケ、タイ等の魚類、緑藻ヘマトコッカス等の藻類、赤色酵母ファフィア等の酵母類等、天然、特に海洋に広く分布する食経験豊かな赤色色素である。近年アスタキサンチンがビタミンE(α−トコフェロール)の100〜1,000倍、β−カロテンの約40倍もの強力な抗酸化作用を有し、抗動脈硬化作用、糖尿病に対する作用、免疫賦活作用、抗ストレス作用などが報告されている。 このアスタキサンチンは、高等植物、ファフィア属酵母菌体、藻類、細菌、魚類、甲殻類などから抽出することにより得ることができる。なかでも緑藻類ヘマトコッカスからアスタキサンチンを得る方法はアスタキサンチンを高濃度で含むヘマトコッカスの大量に且つ安定的に培養する方法が開発されたので、天然由来のアスタキサンチンを供給する方法として極めて有利な立場にある。このヘマトコッカス藻体からアスタキサンチンを抽出する方法はいくつかの方法が報告されている。通常、このヘマトコッカスは寒天状の粘質鞘に包まれた細胞壁で覆われているので抽出する際には、藻類の細胞壁を破壊または処理が必要である。ヘマトコッカス藻からアスタキサンチンを抽出する方法としては、細胞壁を高圧下乱流により破壊、乾燥後、有機溶媒で抽出する方法(特許文献1)、ヘマトコッカスを乾燥被胞化状態で細砕して平均粒度10μm以下の細粉としたのち有機溶媒で抽出する方法(特許文献2)、ヘマトコッカス藻を水系破砕し噴霧乾燥したのち有機溶媒で抽出する方法(特許文献3)、ヘマトコッカス藻の細胞壁を破壊した乾燥物を得たのちに二酸化炭素の超臨界状態で抽出する方法(特許文献4)、ヘマトコッカス藻を熱アセトンで処理することによりに抽出する方法(特許文献5)がある。 破砕した藻体を乾燥させたのち有機溶媒で抽出する方法では、細胞破壊時の負荷や乾燥時の負荷および保存中、すなわち抽出物を製造するまでに細胞内の成分を暴露した状態で乾燥物として保管している期間中に生じる酸化物および過酸化物が抽出物中に含まれるため、抽出物中のカロテノイドの安定性や臭気を生じやすいという問題があった。また工程が長くなることや特殊な乾燥・破砕装置が必要であるため、生産性も劣っていた。日本国特開平9−111139号公報日本国特表平2−503632公報公報国際公開WO02/077105号公報日本国特開第2004−41147号公報日本国特開平第11−56346号公報 本発明は、容易に製造することができ、アスタキサンチンの回収率や安定性が高く、臭気の少ないアスタキサンチン含有抽出物の製法と、その抽出物を提供することを課題とする。 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、細胞内成分が酸化されやすい粉末または固形物として空気中に暴露せずに、アスタキサンチンを含有するヘマトコッカス藻をエタノールまたはアセトンの有機溶媒中で破砕しながらアスタキサンチンを抽出した後、固形物と該有機溶媒を除去する製法によって得られるアスタキサンチン含有抽出物が高い回収率と良好な安定性及び低臭気性を示すことを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、(1)アスタキサンチンを含有するヘマトコッカス藻をエタノールまたはアセトンの有機溶媒中に懸濁させ、破砕機で破砕しながら該有機溶媒中でアスタキサンチンを抽出したのち、固形物と該有機溶媒を除去することを特徴とするアスタキサンチン含有抽出物の製造方法であり、(2)破砕機がビーズミルである(1)記載のアスタキサンチン含有抽出物の製法であり、(3)(1)〜(2)のうちのいずれか記載の製法によって得られたアスタキサンチン含有抽出物であり、(4)抽出物10mgをキャップ付き試験管(10ml)に入れ、酸素で置換し、封をした後、80℃で加温した状態で行なった安定性試験で4時間後のアスタキサンチン残存量が90〜100%である(3)のアスタキサンチン含有抽出物である。 本発明のアスタキサンチン抽出物は、アスタキサンチンを含有するヘマトコッカス藻をエタノールまたはアセトンの有機溶媒中で破砕しながら抽出操作を行った後、固形物と該有機溶媒を除去することによって製造することができる。 本発明に使用されるアスタキサンチンを含有するヘマトコッカス藻としては、ヘマトコッカス・プルビアリスあるいはデュナリエラ属のような藻類を明所で独立栄養的に培養することにより得られる藻体がある。ヘマトコッカス藻は水を絞っただけの湿性状態や、乾燥した状態の物のどちらでも行うことができる。 アスタキサンチンの含有物は、例えば、緑藻ヘマトコッカスなどを、公知の方法に準拠して、適宜な培地で培養することにより得られ、アスタキサンチンを最も高濃度で含有することや生産性の高さから緑藻ヘマトコッカスが最も好適である。ヘマトコッカス緑藻類のアスタキサンチン含量の高いものを得る培養方法としては、異種微生物の混入・繁殖がなく、その他の夾雑物の混入が少ない密閉型の培養方法が好ましく、例えば、密閉型のドーム形状、円錐形状又は円筒形状の培養装置と装置内で移動自在のガス吐出装置を有する培養基を用いて培養する方法(国際公開番号WO99/50384号公報)や、密閉型の培養装置に光源を入れ内部から光を照射して培養する方法、平板状の培養槽で培養する方法が適している。本発明に用いるヘマトコッカス藻のアスタキサンチン含量は特に制限はないが、含量が多いほど抽出効率が良くなるので好ましい。 本発明に用いるヘマトコッカス藻体は、上記製造方法に用いた培養液から常法に従って、例えば遠心分離機や濾別などによって得られる。破砕に用いるヘマトコッカス藻体は湿った状態(このときの使用量は乾燥品に換算して求める)で、又は濾別したヘマトコッカス藻体と抗酸化剤とを水に懸濁させ噴霧乾燥等により乾燥させたものを使用することができる。 本発明の記載で、特に記載がない限り、アスタキサンチンはアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含む。さらに、アスタキサンチンのエステルにはモノエステル体および/またはジエステル体を含む。 ヘマトコッカス藻中のアスタキサンチンの含有量は特に制限されるものではないが、通常アスタキサンチンの含有率は0.001重量%以上のものが用いられ、好ましくは0.1重量%以上、最も好ましくは1.0重量%以上であり、含有量の上限には特に制限はない。破砕機にかける前のアスタキサンチン含有ヘマトコッカス藻の粒径範囲は、破砕機で破砕できる範囲であれば特に制限はないが、破砕効率が良い範囲であればよく、平均粒子径が1〜5000μm、好ましくは5〜1000μmである。これらの粒径にするために、事前に予備破砕を行うことができる。 本発明のアスタキサンチン含有抽出物の製法は、(1)懸濁液の調整、(2)破砕・抽出、(3)固形物の除去、(4)溶媒の除去の工程で行う。 有機溶媒にヘマトコッカス藻体乾燥品を添加し、必要に応じて界面活性剤、抗酸化剤を添加し、撹拌することにより懸濁液を調製する。懸濁液の調製温度は低い方が好ましく、処理中の劣化を防ぐため窒素などの不活性ガスの雰囲気下とする。 ヘマトコッカス藻体の濃度は、乾燥重量で懸濁液の全量に対して1〜80重量%、好ましくは10〜50重量%である。 アスタキサンチンの抽出率や安定性を高めるため、懸濁液中に界面活性剤や抗酸化剤を添加して破砕することができる。界面活性剤としては、水に可溶でHLBが7.0以上、好ましくは10以上、より好ましくはHLBが15以上のものである。具体的には、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等であり、より好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステルである。 ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、下記、日光ケミカルズ製の、デカグリセリルモノラウレート(HLB15.5)、デカグリセリルモノミリステート(HLB14)、デカグリセリルモノモノステアレート(HLB12.0)、デカグリセリルモノオレエート(HLB12.0)、デカグリセリルモノリノレート(12.0)、デカグリセリルモノイソステアレート(HLB12.0)、デカグリセリルジステアレート(HLB9.5)、デカグリセリルジオレエート(HLB10.0)、デカグリセリルジイソステアレート(HLB10.0)、デカグリセリルトリステアレート(HLB7.5)、デカグリセリルトリオレエート(HLB7.0)、デカグリセリルトリイソステアレート(HLB7.0)等が挙げられ、好ましくは水に透明に溶解するデカグリセリルモノラウレート(「Decaglyn1−L」商品名、HLB15.5、日光ケミカルズ製)である。ショ糖脂肪酸エステルとしては、「S−1670」、「LWA−1570」(三菱化学製)、「DK−エステル SS」、又は「DK−エステルF−160」(第一工業製薬製)等をあげることができる。上記界面活性剤としては食品添加物として利用できるものがより好ましい。 抗酸化剤としてはビタミンE(トコフェロール)、ビタミンE誘導体、トコトリエノール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、ビタミンC誘導体、グルタチオン、フィチン酸、カテキン類、フラボノイド類、β−カロチン等が挙げられる。好ましくは、ビタミンE、ビタミンE誘導体、トコトリエノール、ビタミンC、ビタミンC誘導体、ローズマリー抽出物である。 本発明の製法において、アスタキサンチン含有ヘマトコッカス破砕物、界面活性剤、抗酸化剤及び有機溶媒を加える順序は特に制限されない。 本発明のアスタキサンチン含有ヘマトコッカス藻の破砕方法としては、アスタキサンチン含有ヘマトコッカス藻を上記特定の有機溶媒に懸濁させ、有機溶媒を使用可能な破砕機、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波破砕機、ビーズミル、「マイクロスMIC−5NZ」(商品名、奈良機械製)などを用いて湿式破砕することができ、好ましくはビーズミルで湿式破砕である。 ビーズミルの破砕条件としては、抽出物の劣化を押さえるため短時間で行うのがよく、滞留時間としては1〜30分、好ましくは2〜15分であり、周速は、2〜30m/S、好ましくは8〜12m/Sであり、用いられるビーズ径は、0.2〜5mm、好ましくは0.5〜2mmである。破砕時の温度としては、溶媒の融点から沸点の間であればよく、−10〜50℃、好ましくは−10〜40℃である。破砕時間は破砕するヘマトコッカス藻体、界面活性剤、抗酸化剤の使用量、種類、破砕温度等により異なり特に限定されないが、通常、ヘマトコッカス藻(湿重量)100kgあたり、1〜10時間、好ましくは2〜5時間である。破砕処理は処理中の劣化を防ぐため窒素などの不活性ガスの雰囲気下で行った方がよい。 アスタキサンチン含有ヘマトコッカス藻の破砕物の粒径範囲は特に制限はないが、抽出効率が良く、濾過がしやすい範囲であれば良く、平均粒子径が1〜1000μm、好ましくは5〜100μmである。破砕処理は目的の粒径に破砕するために、必要に応じて1回以上複数回破砕処理を繰り返すことができる。 この破砕処理により溶液中のアスタキサンチンは出発原料と比べて殆ど分解していないことが分かった。この懸濁液は直ちに、固形物除去処理することができる。また破砕懸濁液が直ちに固形物除去処理できない場合には、一時的にこの破砕懸濁液を10℃以下の温度範囲で保管して使用することができる。 固形物除去処理方法としては、常法に従って、例えば、加圧濾過、減圧濾過、自然濾過などで行うことができる。懸濁液には濾過助剤を添加し、濾過速度を高めることができる。濾過助剤としては、セルロース類、珪藻土類、活性炭などであり、珪藻土類が好ましい。濾過時間はアスタキサンチンの分解や酸化物を生じさせないため早いほうが好ましく、24時間以下、好ましくは2時間である。濾過時の温度としては、50℃以下、特に25℃以下が好ましい。 溶媒の除去方法としては、常法に従って行えばよく、例えば減圧濃縮機などで濾液から有機溶媒を除去する。抽出物の劣化を押さえるため過剰な加温をしない方が良く、0〜200℃、好ましくは20〜80℃で行い、1回の処理時間は短い方が良く、0.5〜20時間、好ましくは0.5〜10時間で処理できる量で溶媒を除去する。 有機溶媒を更に除去したい場合は、分子蒸留機や薄膜式遠心エバポレーターなどでさらに有機溶媒の濃度を減少させることができる。 本発明の抽出物は、安定性が高く臭気が少ないという特徴がある。本発明の抽出物の安定性は、80℃での負荷試験で4時間後の存在量が90〜100%である。臭気はこれまで公知となっている方法、例えば、国際公開WO02/077105号公報や日本国特開第2004−41147号公報に記載の方法で得られた物より大幅に臭気が押さえられている。 また本発明の抽出物の製法は回収率が高く、抽出前の天然物の含量に対して80〜100%の回収率である。 本発明の抽出物は、化粧品や薬剤、食品、ペット食物、飼料などに配合することができる。 薬剤の製剤型としては、例えば、錠剤、舌下錠、丸剤、坐剤、散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、注射剤、乳剤、貼付剤などの形態に製剤化することができる。例えば、錠剤は薬理的に受容しうる担体と均一に混合して打錠することにより、また、散剤、粉剤、顆粒剤は薬剤と担体とを乾式造粒または湿式造粒して製造することができ、湿式造粒としては、常法により、例えば、噴霧乾燥法、流動層造粒法、混練造粒法又は凍結乾燥法などにより乾燥することにより製造できる。 散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤はラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ハイドロタルサイト、無水リン水素酸カルシウムなどの賦形剤、でんぷん、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、マグネシウムステアレート、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの表面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを用いて製造できる。また、必要に応じて、常法により口腔内速崩壊剤とすることができる。 製剤には必要ならばさらに他の抗酸化剤を添加してもよい。抗酸化剤は特に限定されるものでなく、抗酸化作用を有するものであれば適用可能である。例えば、レチノール、3,4−ジデヒドロレチノールなどのビタミンA類、ビタミンB、D−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸などのビタミンC類、トコフェロール、トコトリエノール、酢酸ビタミンE、コハク酸ビタミンEなどのビタミンE類、リン酸ビタミンE類、コエンザイムQ、フラボノイド、タンニン、エラグ酸、ポリフェノール類、ラジカル阻止剤、ヒドロペルオキシド分解剤、金属キレート剤、活性酸素除去剤、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、及びδ−カロチンを含むカロチン類、トコキノン、及びこれらの薬学的に許容できる塩、並びにそれらの混合物からなる群から1種または2種以上選択することができる。 注射剤は、有効成分を必要に応じてpH調製剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。 懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。 飲食物への添加例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、フライドポテト、ポテトチップス、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカーなど、マカロニ、パスタ、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなど、または果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料または非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコールまたはリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などの一般食品への添加例を挙げることができる。 本発明の飲食物を栄養補助食品あるいは機能性食品として用いる場合、その形態は、上記医薬用製剤と同様の形態であってもよい。乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、または、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などを配合した自然流動食、半消化態栄養食および栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工物を挙げることができる。ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料および色素などを配合してもよい。 飼料として用いる場合は、そのまま飼料として用いてもよいが、一般に用いられる動物用、魚類用配合飼料の配合原料、例えば、トウモロコシ、マイロ、魚粉、ふすま、食塩、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アミノ酸類、ビタミン類、微量ミネラル、既存の抗酸化剤等を配合しても良い。 化粧品の形態としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック、洗浄料等のスキンケア化粧料、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ、口紅等のメーキャップ化粧料、分散液、軟膏、外用液剤、クリーム剤等の化粧料とすることができる。また、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、水(アルカリ単純温泉水、深層水、精製水等を含む)、低級アルコール、多価アルコール、油脂、ロウ、鉱物油、脂肪酸、粉体、金属セッケン、pH調整剤、界面活性剤、増粘剤、色素、植物又は動物系原料由来の抽出物、ビタミン類、アミノ酸類、ホルモン類、殺菌・消毒剤、角質溶解剤、酵素、清涼剤、安定化剤、金属イオンキレート剤、血行促進剤、精油、消臭剤、保湿剤、収斂剤、抗脂漏剤、細胞賦活剤、香料等を添加しても良い。は、これらに限定されるものではない。 本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例をあげるが、本発明がこの実施例のみに限定されないことはいうまでもない。以下に示すアスタキサンチンの量はフリー体換算のアスタキサンチンに換算したときの量である。 <含有率測定試験>未破砕のヘマトコッカス藻体中に含まれるアスタキサンチンの含量とアスタキサンチン抽出物中のアスタキサンチン含量は吸光度法(波長475nm、溶媒アセトン)で測定した。未破砕のヘマトコッカス藻体中に含まれるアスタキサンチンを定量するための前処理方法として、本品約50mgを精密に量り、DMSO2mLを加えてテフロンホモジナイナーで5分間摩砕し、遠心分離して得た上清を100mLのメスフラスコにとる。残留物にアセトン5mLを加えて40〜50℃で5分間超音波処理し、遠心分離して得た上清を先と同じメスフラスコにとる。更にアセトン5mLで2〜3回同様に上清が無色になるまで操作を繰り返し、得られた上清を先と同じメスフラスコにとり、アセトンを加えて正確に100mLとする。この液をアセトンで希釈し適当な濃度とし吸光度を測定した。抽出物中のアスタキサンチンはアセトンで希釈し適当な濃度とし吸光度を測定した。 <安定性試験>抽出物10mgをキャップ付き試験管(10ml)に入れ、酸素で置換し、封をした後、80℃で加温した状態で、4時間後のアスタキサンチン含量を含有率測定試験と同様に吸光度法で測定した。 <臭気官能試験>室温で抽出物を社内の試験員5名による官能試験により、5段階で臭気を評価した。(評 価) (内 容)1: 特別なにおいを感じない。2: わずかに特有の海草臭を感じる。3: はっきりと特有の海草臭を感じる。4: 特有の海草臭をやや不快に感じる。5: 極めて不快な特有の臭気がある。 <過酸化物価>0.2〜1.0gの試料を適当量50mLのスクリューキャップ遠沈管にとり、クロロホルム:酢酸(2:3)20mLを加えて混和し、窒素ガス置換を行なった後、窒素ガスを吹き込みながら、飽和ヨウ化カリウム溶液1.0mLを静かに加える。やさしく攪拌してから、暗所に15分間放置した後、10%ヨウ化カリウム溶液20mLを加えて激しく混和してから、3,000rpmで3分間遠心処理を行う。下層を乱さないように静かに攪拌しながら0.01Nチオ硫酸ナトリウムでヨウ素の黄色が薄くなるまで滴定し、これにデンプン試薬0.5mLを添加してから、紫色が消えるまで滴定を行なう。滴定量から次式に従って過酸価物価(POV)を計算して求める。POV(mEq/kg)=滴定量(mL)×滴定液ファクター×10/試料重量(g) <酸価>0.2〜4.0gの試料を適当量100mLのビーカーにとり、エタノール:ジエチルエーテル(1:1)を100mL加えて溶解し、0.1N水酸化カリウム溶液で滴定する。滴定量から以下の式にしたがって酸価を計算して求める。酸価(AV/g)=滴定量(mL)×滴定液ファクター×5.611/試料重量(g)[実施例1] 乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末1kg(バイオリール社製 アスタキサンチン含量4.6%)とミックスビタミンE(理研ビタミン、E700)25gをアセトン1.5kgに分散させ、1mm径のガラスビーズを85%充填した防爆型のビーズミル試験機[ダイノミルKDL-PILOT、WAB社製]を用いて、適時冷却しながら室温で、ディスク周速10m/s、流速140g/min.で破砕処理を2回行い、同時にアスタキサンチンを含む脂質画分を抽出した。破砕懸濁液全量を吸引濾過により抽出濾液を回収、さらに濾過残渣を1kgのアセトンでリンス3回行い、アスタキサンチンを含む脂質成分を完全に抽出した。得られた抽出濾液全量から減圧エバポレーター(温度35℃)でアセトンを留去して、アスタキサンチン抽出物を得た。[実施例2] 乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末1kg(Bio Real, Inc社製 アスタキサンチン含量4.6%)とミックスビタミンE(理研ビタミン、E700)25gをエタノール2kgに分散させ、1mm径のガラスビーズを85%充填した防爆型のビーズミル試験機[ダイノミルKDL-PILOT、WAB社製]を用いて、適時冷却しながら室温で、ディスク周速10m/s、流速180g/min.で破砕処理を2回行い、同時にアスタキサンチンを含む脂質画分を抽出した。破砕懸濁液全量を吸引濾過により抽出濾液を回収、さらに濾過残渣を1kgのエタノールでリンス3回行い、アスタキサンチンを含む脂質成分を完全に抽出した。得られた抽出濾液全量から減圧エバポレーター(温度45℃)でエタノールを留去して、アスタキサンチン抽出物を得た。[実施例3] 乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末80kg(AstaReal AB社製 アスタキサンチン含量3.7%)とミックスビタミンE(理研ビタミン、E700)2kgをアセトン120kgに分散させ、1mm径のガラスビーズを85%充填した防爆型のビーズミル試験機[ダイノミルKDL-25BC、WAB製]を用いて、適時冷却しながら室温で、ディスク周束10m/s、流速100kg/hr.で破砕処理を2回行い、同時にアスタキサンチンを含む脂質画分を抽出した。破砕懸濁液全量を吸引濾過により抽出濾液を回収、さらに濾過残渣を40kgのアセトンでリンス3回行い、アスタキサンチンを含む脂質成分を完全に抽出した。得られた抽出濾液全量から減圧下(100torr、45℃)でアセトンを留去して、アスタキサンチン抽出物を得た。[比較例1] 乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末80kg(バイオリール社製アスタキサンチン含量4.8%)とミックスビタミンE(理研ビタミン、E700)2kgを水320kgに分散させ、マイクロスMIC−5NZ[奈良機械製]を用いて、回転数1,000rpmで32時間破砕処理し、これを噴霧乾燥(乾燥条件:入り口温度210℃、出口温度100〜102℃、アトマイザー回転数9,000rpm)した。得られた破砕乾燥藻全量を120kgのアセトン中に分散し、アスタキサンチンを含む脂質画分を抽出した。濾過により抽出濾液を回収、さらに濾過残渣を40kgのアセトンでリンス3回行い、アスタキサンチンを含む脂質成分を完全に抽出した。得られた抽出濾液は減圧下で基準値以下までアセトンを留去して、アスタキサンチン抽出物を得た。[比較例2] 乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末1kg(バイオリール社製アスタキサンチン含量4.6%)とミックスビタミンE(理研ビタミン、E700)25gを水4kgに分散させ、ビーズミル試験機[ダイノミルKDL-PILOT、WAB社製]を用いて、ディスク周速10m/s、流速100g/min.で破砕処理を2回行い、これを噴霧乾燥(乾燥条件:入り口温度210℃、出口温度98〜102℃、アトマイザー回転数9,000rpm)した。乾燥体1kgを容積4リットルの抽出槽に充填し、抽出槽の温度を40℃に保持し、温度40℃、圧力40MPaの超臨界状態の二酸化炭素を1時間当り10kgの供給速度で2時間供給し、圧力を5MPa、温度30℃とした分離槽の下部の抜き出し弁から抽出物を取り出してアスタキサンチン抽出物を得た。 [表1]回収率、安定性、過酸化物価、酸値の比較 抽出物中のアスタキサンチンの回収率や安定性は、実施例1−3のほうが比較例1−2の抽出物より、良いことがわかる。過酸化物価や酸化は実施例1−3のほうが比較例1−2の抽出物より、大幅に少ないことがわかる。 [表2]臭気官能試験 実施例1−3の抽出物の平均は1.7〜2.3であり、比較例1−2の抽出物の平均は3.7〜4.8であり、アスタキサンチン抽出物の臭気は、実施例1−3のほうが比較例1−2抽出物より良いことがわかる。アスタキサンチン含有ヘマトコッカス藻をエタノールまたはアセトンの有機溶媒中に懸濁させ、破砕機で破砕しながら該有機溶媒中でアスタキサンチンを抽出したのち、固形物と有機溶媒を除去することを特徴とする安定性が高く、臭気の少ないアスタキサンチン含有抽出物の製造方法。破砕機がビーズミルである請求項1記載のアスタキサンチン含有抽出物の製造方法。請求項1〜2のうちのいずれか記載の製造方法によって得られたアスタキサンチン含有抽出物。抽出物10mgをキャップ付き試験管(10ml)に入れ、酸素で置換し、封をした後、80℃で加温した状態で行なった安定性試験で4時間後のアスタキサンチン残存量が90〜100%である請求項3記載のアスタキサンチン含有抽出物。


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