生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_重合性組成物
出願番号:2004245724
年次:2011
IPC分類:C08G 59/68,C08G 59/22,C07D 303/02


特許情報キャッシュ

西田 裕文 JP 4632152 特許公報(B2) 20101126 2004245724 20040825 重合性組成物 ナガセケムテックス株式会社 000214250 古谷 信也 100104813 西田 裕文 20110216 C08G 59/68 20060101AFI20110127BHJP C08G 59/22 20060101ALI20110127BHJP C07D 303/02 20060101ALI20110127BHJP JPC08G59/68C08G59/22C07D303/02 C08G 59/00− 59/72 C07D 301/00−305/14 CA/REGISTRY(STN) 特開平11−115025(JP,A) 特開2002−220454(JP,A) 14 2006063154 20060309 16 20070823 久保 道弘 本発明は、有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩をアニオン重合開始剤として用いた重合性のエポキシ化合物組成物、及び、有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩をアニオン重合開始剤として用いたエポキシ化合物の重合方法に関する。 エポキシ化合物はエポキシドの開環反応により開環重合物を導く。例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を持った化合物であるエポキシ樹脂は、硬化触媒の作用によりエポキシドの開環反応が生じて3次元的構造の重合物が形成される。エポキシ樹脂硬化触媒としては、通常、アミン系化合物又はルイス酸等が用いられる。 このエポキシドの開環反応は、アミンのような求核試薬が存在する場合に、アニオンを生じ、このアニオンがエポキシ環をイオン的に重合させていく。また、例えば、酸無水物が第三アミンと反応してカルボキシレートアニオンが生成する場合に、このアニオンとエポキシ基とが反応することにより樹脂硬化が生じる。このように、エポキシ化合物の開環重合にはアニオン重合過程が含まれており、従来一般に使用されているアニオン重合を導くエポキシ硬化触媒は、上述のようなアニオンを形成することによりエポキシ基との反応を導くものであったと言えよう。 このような反応機構を有するものとしては、例えば、イミダゾール系触媒型硬化剤等が知られており、硬化剤とエポキシ基との反応で生じたアニオンがエポキシ基との反応に供給される。一方、イオン含有ポリマーをエポキシ樹脂に配合してなるエポキシ樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。上記特許文献においては、エポキシ樹脂に硬化剤としてイオン含有ポリマーを使用し、極めて優れた耐熱特性を発揮する硬化物が得られる。しかしながら、イオン含有ポリマーの製造は、一般に困難であり、各種のものを容易に入手することが難しい。また、上記組成物は、エポキシ化合物としてエポキシ樹脂を対象としており、架橋エポキシ硬化物を生じる。 エポキシ化合物の重合体の物性に対する改質は、次のような可能性を開く問題に関連する。すなわち、1官能エポキシ化合物の重合体であって高い重合度のものを得ることができたなら、従来の架橋型エポキシ樹脂とは物理的性質を全く異にするポリマーとすることが期待される。また、2官能以上のエポキシ樹脂の重合体の場合には、架橋が疎な部分がなく均一性の高い高架橋密度重合体が期待される。これらのエポキシポリマー(エポキシドの開環重合物をいう。以下同じ。)は熱可塑性を発揮したり、物理強度等が従来にない特性を発揮する可能性がある。このような重合体は、産業分野の技術革新に呼応してエポキシ樹脂の一層高度な性能が要求されるようになっている当該技術分野の要請に応えるものと言える。 従って、従来のエポキシ用硬化剤、硬化促進剤において使用が試みられたことのない新規のアニオン重合開始剤を検討することにより、重合開始剤の容易な製造可能性、重合の高い反応速度、高い重合度の達成、従来にない物性のエポキシポリマー、硬化物性の向上等を実現することが期待される。特開2004−204186号公報 上述の現状に鑑みて、本発明は、重合開始剤の容易な製造可能性、重合の高い反応速度、高い重合度の達成、従来にない物性のエポキシポリマー、硬化物性の向上等を実現することができるアニオン重合開始剤の配合による重合性のエポキシ化合物組成物、及び、エポキシ化合物の重合方法を提供することを目的とする。 本発明者は、エポキシ樹脂にイオン含有ポリマーを配合すると、通常使用される脂肪族ポリアミン、アミドアミン、ポリアミド、芳香族ポリアミン、酸無水物、ルイス塩基、ポリメルカプタン等のエポキシ樹脂硬化剤を使用することなくして、硬化エポキシ樹脂が得られ、しかも、極めて優れた耐熱特性を発揮することを見いだし、この発見を更に検討した結果、有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩が良好なアニオン重合開始剤となることを見出した。本発明は、この予想外の知見に基づいて完成された。 従って、本発明は、エポキシ化合物と前記エポキシ化合物をアニオン重合させるためのアニオン重合開始剤とからなり、前記重合開始剤は有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩からなることを特徴とするアニオン重合性エポキシ化合物組成物である。 本発明の一態様において、上記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、共役塩基としてカルボン酸基の共役塩基、リン酸基の共役塩基、ホウ酸基の共役塩基、ケイ酸基の共役塩基、チオール基の共役塩基及びフェノール性水酸基の共役塩基からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものである。 本発明の他の一態様において、上記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属の塩、とくに、Na又はKの塩である。 本発明の他の態様において、上記エポキシ化合物は、1官能エポキシ化合物又はグリシジルオキシ基、グリシジルアミノ基及び3,4−エポキシシクロヘキセニル基からなる群から選択される少なくとも1種を有する2官能以上のエポキシ樹脂である。 本発明はまた、エポキシ化合物を、有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩をアニオン重合開始剤として用いてアニオン重合させることを特徴とするエポキシ化合物重合体の製造方法でもある。 本発明は、上述の構成により、以下の効果を発揮する。(1)有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩を用いてエポキシ化合物を重合させることができる。(2)高い反応速度で重合体を生成する。(3)停止反応、連鎖移動が起こりにくく、エポキシ化合物の高い重合度を実現する。(4)アニオン重合開始剤の製造が容易である。(5)硬化物の樹脂強度、靱性が高い。(6)1官能エポキシ化合物の高い重合度の重合体を製造することができる。(7)1官能エポキシ化合物を重合することにより、線型で長い重合体が形成され、熱可塑性ポリマーを製造することができる。(8)本発明のアニオン重合開始剤は、吸湿性が比較的低く、空気中で作業することが可能である。(9)2官能以上のエポキシ化合物を重合することにより、損失正接の極大値として観測しうるTgを事実上持たない高耐熱性樹脂を製造することができる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明におけるエポキシ化合物としてはエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、1官能エポキシ化合物であってもよく、2官能以上のエポキシ樹脂であってもよい。1官能エポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル等のベンゼン環を1個有する一核体芳香族モノエポキシ化合物、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、更には、ペンタエチレングリコールモノフェニルエーテルのグリシジルエーテル等のアルコールから誘導されるモノエポキシ化合物等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。 2官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、公知の各種エポキシ樹脂を用いることができ、例えば、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエーテル(YDC−1312(東都化成社製)、2,5−ジイソプロピルヒドロキノンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、フロログルシノールPEG(ナガセケムテックス社製)等)等のベンゼン環を1個有するする一核体芳香族エポキシ樹脂類;Celloxide2021P(ダイセル化学工業社製)、CY175(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等の脂環式エポキシ樹脂;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(EX−251(ナガセケムテックス社製)等)のビスフェノール型エポキシ樹脂類並びにこれらが部分縮合したオリゴマー混合物及びこれらの核水添型エポキシ樹脂;テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルジグリシジルエーテル;ビフェニル型又はテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(YX−4000(ジャパンエポキシレジン社製)等)及びこれらの核水添型エポキシ樹脂;ビスフェノールフルオレン型又はビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂(BCFジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)、BPEFジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製))等のフルオレン型エポキシ樹脂;HP−4032D(大日本インキ化学工業社製)、EXA−4750(大日本インキ化学工業社製)、EXA−4700(大日本インキ化学工業社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂;ELM−100(住友化学社製)、MY721(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等の多官能グリシジルアミン;ZX−1257(東都化成社製)、HP−7200(大日本インキ化学工業社製)等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;RE−305(日本化薬社製)、EOCN−4500(日本化薬社製)、EPPN−501H(日本化薬社製)等のノボラック型エポキシ樹脂;Epikote1032H60(ジャパンエポキシレジン社製)、Epikote1031S(ジャパンエポキシレジン社製)、TECHMORE VG3101(三井化学社製)等の多官能グリシジルエーテル;その他のエポキシ樹脂、例えば、シリル化エポキシ樹脂(シリル化GY260(ナガセケムテックス社製)等)、複素環式エポキシ樹脂(CY350(ナガセケムテックス社製)、トリグリシジルイソシアヌレート等)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、1官能エポキシ化合物と2官能以上のエポキシ樹脂との併用であってもよい。 本発明における重合開始剤としては有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩を用いる。上記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩としては、一般式R−A−M+で表すことができる有機基を有する1官能の弱酸モノマーのアルカリ金属塩、例えば、1官能の、カルボン酸、チオール、フェノール等のアルカリ金属塩、又は、有機酸以外の、有機基を有する1官能の弱酸のアルカリ金属塩、例えば、有機基を有するリン酸、有機基を有するホウ酸、有機基を有するケイ酸等のアルカリ金属塩等を含む。式中、Rは有機基を表し、A−は弱酸基の共役塩基を表す。上記有機基としては特に限定されず、例えば、飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等の1価の炭化水素基等が挙げられる。 上記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩を具体的に例示すれば、例えば、ラウリル酸、n−カプリル酸、シクロヘキサンカルボン酸、3−シクロヘキシルプロピオン酸、フェニル酢酸、酢酸、ステアリン酸、バーサティック酸、2−エチルヘキサン酸等の1官能カルボン酸のアルカリ金属塩;メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトエチルスルフィド等のチオール類のアルカリ金属塩;p−t−ブチルフェノール等のフェノール類のアルカリ金属塩;ジ−2−エチルヘキシルホスフェート等のリン酸類のアルカリ金属塩;ホウ酸ジ−n−オクタデシルエステル等のホウ酸類のアルカリ金属塩;ステアリルジメチルシラノール等のケイ酸類のアルカリ金属塩等が挙げられる。 上記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩としては、有機基を有する2官能以上の弱酸モノマーのアルカリ金属塩を使用することもできる。このような2官能以上の弱酸モノマーのアルカリ金属塩としては、例えば、フタル酸、ドデセニルコハク酸、ドデカンジカルボン酸、カルボン酸末端ブタジエン−アクリロニトリル・液状ゴム(2官能又は3官能)等の有機酸のアルカリ金属塩、ビスフェノールA等のフェノール類のアルカリ金属塩等が挙げられる。 2官能以上の弱酸モノマーのアルカリ金属塩の配合量は、多すぎると弱酸モノマーが凝集して分離するおそれがあるので、使用する場合は、配合される上記1官能弱酸モノマー及び2官能以上の弱酸モノマー全体として1.5官能以下となるように使用するのが好ましく、1.3官能以下がより好ましく、1.2官能程度とすることが一層好ましい。 上記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は弱酸基の共役塩基を有し、例えば、カルボン酸基の共役塩基、リン酸基の共役塩基、ホウ酸基の共役塩基、ケイ酸基の共役塩基、チオール基の共役塩基、フェノール性水酸基の共役塩基等を挙げることができる。なかでも、カルボン酸基の共役塩基(すなわち−COO−)が好ましい。 本発明において、アルカリ金属塩としては、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属の塩であり、なかでもNa又はKの塩が反応性、経済性の面から好ましい。 本発明において、上記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、エポキシ化合物を重合させるための重合開始剤として働くことができる。従って、硬化のために他の硬化剤成分を含有する必要がない。ただし、本発明の目的を阻害しない範囲で少量の他の公知の硬化剤を配合することを排除しない。 本発明の重合性組成物は、通常、エポキシ化合物のエポキシ基を反応させることができるアニオン量となる割合で、有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩が配合される。有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩を配合することにより、エポキシ樹脂の硬化性が良好であり、かつ、300℃以下において、損失正接の最大値が極めて小さく、1Hzにおける損失正接の最大値が、300℃以下において、0.1以下のものであり得、300℃以下において、損失正接の極大値が実質的に現れないか、現れたとしてもそのピーク高さは非常に低く0.1以下であるものとすることができる。従って、損失正接の極大値として観測しうるTgを事実上持たない樹脂組成物を得ることができる。 本発明においては、エポキシ基と反応させるためにアニオンを配合することにより、エポキシ環の自己重合が開始され、エーテル結合が形成されると考えられる。この反応はエポキシ基を消費するまで進行すると考えられる。本発明においては、このエポキシ基の消費速度は高く、図1に一例を示すように、反応開始後急速にモノマーが消費されて重合が進行する。また、停止反応、連鎖移動が起こりにくく、高重合度のポリマーが成長する。その結果、1官能エポキシ化合物の場合には、リニアで長い重合体が形成される。架橋構造を本質的に持たないので、この重合体は、エポキシ化合物重合体でありながら、熱可塑性を発揮し得る。また、2官能以上のエポキシ樹脂の重合体にあっては、架橋が疎な部分がなく、一様に高度に架橋した樹脂が形成され、上述のようにTgを持たない樹脂が得られることになる。エポキシ基の反応量は、例えば、1H−NMRによりエポキシ環のメチンピークを測定する方法、IRにより914cm−1ピーク(エポキシ基の吸収ピーク)の強度を測定する等の方法で測定することができる。 エポキシ基を反応させることができるに必要なアニオン量は、例えば、エポキシ化合物中のエポキシ基のモル数に対して、上記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩中のアニオンのモル数が0.01以上となる割合で、上記開始剤を配合することが好ましい。配合量が上記範囲より少ないと、重合度が不充分となるおそれがある。下限は0.02以上がより好ましい。一方、上限については特に設けるものではないが、エポキシ化合物中のエポキシ基のモル数に対して、上記アニオンのモル数が過度に多くなると、エポキシ基の重合開始点が増加し、重合度としては低くなるおそれがある。従って、本発明においては、上限としては2.0となる割合がより好ましい。 本発明の重合性組成物は、エポキシ化合物と、上記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩とを、好ましくは、エポキシ化合物のエポキシ基を反応させることができるイオン量となる割合で、混合する工程を有する製造方法で得ることができる。上記混合工程は、通常、有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩を、エポキシ化合物のエポキシ基のモル数に対して、好ましくは、イオンのモル数が0.01以上となる割合で、更に好ましくは0.02〜2.0となる割合で混合すればよい。上記混合工程は、エポキシ化合物と有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩とを室温〜100℃で混合すればよい。 上記混合は、公知の方法で行うことができ、例えば、ディスパーサー、ミキサー、混練機、ホモジェナイザー、3本ロール等の周知の手段を用いることができる。 本発明の重合性組成物には、本発明の効果が損われない範囲で、更に、従来公知の各種の無機充填剤を配合してもよい。無機充填剤の種類や配合量は、用途や組成物の粘度に応じて適宜選択することができる。上記無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ粉末、石英ガラス粉末、結晶性シリカ粉末、ガラス繊維、タルク、アルミナ粉末、珪酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化アンチモン粉末、硫酸バリウム粉末、酸化チタン粉末、水酸化アルミニウム粉末等が挙げられる。エポキシ樹脂組成物の用途が電子・半導体分野である場合には、高純度品が得られ、線膨張係数も小さい溶融シリカ粉末や石英ガラス粉末等が適する。 さらに、本発明の重合性組成物には、本発明の効果が損われない範囲で、例えば、各種カップリング剤、消泡剤、低応力化剤、ゴム粒子、顔料等を含有することができる。 本発明の重合性組成物、特に、エポキシ樹脂組成物は、半導体デバイスの封止材、補強材等として使用することにより、半導体デバイスを使用した各種電子・電気製品の信頼性を向上することができる。該半導体デバイスは、小型化、高密度化が可能であり、各種電子・電気製品に使用され得る。 以下に、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 なお、以下の表中の略号は以下のとおり。EX146:p−t−ブチルフェノールグリシジルエーテル(1官能、エポキシ当量=205g/eq)ナガセケムテックス社製AER260: ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能、エポキシ当量=190g/eq)旭化成社製フロログルシノールPGE: フロログルシノールトリグリシジルエーテル(3官能、エポキシ当量=117g/eq)ナガセケムテックス社製CTBN1008SPK: CTBN1008SP(カルボン酸末端ブタジエン−アクリロニトリル・液状ゴム、2官能、宇部興産社製)のカリウム塩(カリウムイオン当量=1887g/eq)CTBN1009SPK: CTBN1009SP(カルボン酸末端ブタジエン−アクリロニトリル・液状ゴム、3官能、宇部興産製)のカリウム塩(カリウムイオン当量=1590g/eq)ACK: 酢酸カリウム(カリウムイオン当量=98g/eq)CHPK: 3−シクロヘキシルプロピオン酸カリウム(カリウムイオン当量=184g/eq)CPK: n−カプリル酸カリウム(カリウムイオン当量=182g/eq)CHK: シクロヘキサンカルボン酸カリウム(カリウムイオン当量=166g/eq)LK: ラウリル酸カリウム(カリウムイオン当量=225g/eq)STK: ステアリン酸カリウム(カリウムイオン当量=332g/eq)DDK: ドデカンジカルボン酸ジカリウム(カリウムイオン当量=103g/eq)EHC−30: アデカハードナーEHC−30、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール、旭電化工業社製1MZ: 1−メチルイミダゾール、BASF社製IK: エチレン−メタクリル酸共重合体のカリウム塩、(カリウムイオン当量=464g/eq)三井・デュポン社製RY200S: フュームドシリカ、日本アエロジル社製アニオン重合性の評価 実施例1〜6及び比較例1〜4 エポキシドとしてEX146を用い、表1に示すアニオン重合開始剤及び配合量で配合した。3本ロールを用いて均一な組成物を調製し、180℃で反応を開始させた後、表に示す時間の経過後に反応物をGPCにかけて、反応物の分子量分布を調べた。結果を表1〜3に示した。また、実施例2のGPCチャートを図1に示した。 なお、GPCの条件は以下のとおり。 日本ウォーターズ社製GPC Alliance/Empowerシステムを用い、検出器に2414示差屈折計(日本ウォーターズ社製)を用いて測定した。カラムは、Shodex KF−802、KF−803、KF−805(昭和電工社製)を直列につないで使用した。溶出液はTHFを使用し、カラム温度40℃で流速1ml/分とした。1官能エポキシ化合物重合体の構造 実施例1〜6から、モノエポキシドのポリマーが溶剤可溶性であり、架橋構造を持たないことが確かめられた。硬化物物性の評価 実施例7〜15及び比較例5〜7 表4に示す成分及び配合量を用いて配合した。混合して均一な組成物を調製し、120℃/2時間の硬化及び180℃/4時間の後硬化の硬化条件で硬化物を得た。長さ約20mm、幅約10〜15mm、厚さ約2mmのサンプルについて、以下の方法で曲げ弾性率E′及び動的粘弾性における損失正接(tanδ)を求めた。25℃における曲げ弾性率と250℃における曲げ弾性率の値から、弾性率維持率を求めた。弾性率維持率は以下の式による。弾性率維持率=(250℃における曲げ弾性率の値/25℃における曲げ弾性率の値)×100(%) ただし、比較例6は250℃ではなく190℃でのデータを使用した。 また、0〜300℃の範囲でtanδの最大値をチャートから読み取った。結果を表4に示した。また、典型例として、図2に実施例11のtanδチャートを、図3に比較例5のtanδチャートを示した。測定方法曲げ弾性率及び動的粘弾性における損失正接tanδ セイコーインスツルメント社製粘弾性測定装置DMS6100を用いて、両持ち曲げモードで1Hzの正弦歪みを印加することにより測定した。測定温度範囲は0〜300℃で、昇温速度は2℃/minとした。 更に、実施例12及び比較例7について、曲げ強度及び破壊靱性値を測定した。測定方法曲げ強度(MPa):ASTM D790に準拠(クロスヘッドスピード2mm/分)破壊靱性値(MPa・m1/2):ASTM D5045に準拠したコンパクトテンション法による(クロスヘッドスピード1mm/分) いずれも、万能試験機インスロン(インスロン社製)を使用して測定した。結果を表5に示した。 実施例1〜6から、本発明のアニオン重合性組成物は、15〜45分以内に殆ど全てのエポキシ化合物を消費し、それに対応して、高分子量成分が増加していくことが明瞭に観察された。そして、実施例1〜6においては、反応開始後約30〜45分以内に、鋭い高分子量ピークが観察され、重合反応が途中で停止することなく進行したことが認められた。これらのことは、典型例として示した実施例2のGPCチャートである図1からも明らかである。しかも、重合体の高分子量化が極めて顕著であった。一方、従来の一般的なアニオン重合開始剤を使用した比較例1〜4では、反応開始後240分経過しても、大半のエポキシドが消費されずに残っており、重合体の高分子量化も進んでいなかった。 また、実施例7〜15から、高温における曲げ弾性率及び弾性率維持率において、本発明のアニオン重合性組成物は優れた特性を有していることがわかる。比較例3はイオン含有ポリマーを使用しており、優れた特性を示しているが、本発明の組成物はこれに匹敵又は凌駕する特性を示した。従って、重合性有機弱酸のポリマーであるイオン含有ポリマーもエポキシ硬化剤として使用可能であるが、これに対して、有機弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、硬化物性の向上に一層優れていることが確かめられた。なお、実施例7〜15の硬化物は、いずれも損失正接tanδの極大値が0.1以上のピークの有無を観察したところ、そのようなピークを識別せず、事実上、Tgが消失していることが示された。実施例11の損失正接のチャートを示す図2からも、このことを典型例として明らかにするものである。比較例5の損失正接のチャートを示す図3は、従来のエポキシ硬化物の特性を示し、122℃のTgを観察できた。 更に、実施例12と比較例7についての曲げ強度及び破壊靱性値の結果から、本発明のアニオン重合性組成物における有機弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、硬化物の曲げ強度及び破壊靱性値について、イオン含有ポリマーであるエチレン−メタクリル酸共重合体のカリウム塩を使用した場合に比べて2倍の増大が見られ、硬化物の物性が優れていることも判明した。 本発明のアニオン重合性組成物は、容易に入手可能な、有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩を、重合開始剤とすることにより、高重合度のエポキシ化合物重合体を製造することが可能であり、従来にない特性のエポキシ化合物重合体を提供することができ、とくに、耐熱性等の特性の向上したエポキシ樹脂や、新規用途を開拓可能な熱可塑性エポキシ化合物重合体を提供することができ、エポキシ化合物のアニオン重合製造方法やエポキシ樹脂の特性向上に寄与することができる。実施例2におけるGPCチャート。実施例11における曲げ弾性率E′及び動的粘弾性における損失正接(tanδ)のチャート。比較例5における曲げ弾性率E′及び動的粘弾性における損失正接(tanδ)のチャート。エポキシ化合物と前記エポキシ化合物をアニオン重合させるためのアニオン重合開始剤とからなり、前記重合開始剤は有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩からなることを特徴とするアニオン重合性エポキシ化合物組成物。前記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、有機基を有する1官能の弱酸モノマーのアルカリ金属塩である請求項1記載の組成物。前記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、共役塩基としてカルボン酸基の共役塩基、リン酸基の共役塩基、ホウ酸基の共役塩基、ケイ酸基の共役塩基、チオール基の共役塩基及びフェノール性水酸基の共役塩基からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものである請求項1又は2記載の組成物。前記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属の塩である請求項1〜3のいずれか記載の組成物。前記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、Na又はKの塩である請求項4記載の組成物。前記エポキシ化合物は、1官能エポキシ化合物である請求項1〜5のいずれか記載の組成物。前記エポキシ化合物は、グリシジルオキシ基、グリシジルアミノ基及び3,4−エポキシシクロヘキセニル基からなる群から選択される少なくとも1種を有する2官能以上のエポキシ樹脂である請求項1〜5のいずれか記載の組成物。エポキシ化合物を、有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩をアニオン重合開始剤として用いてアニオン重合させることを特徴とするエポキシ化合物重合体の製造方法。前記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、有機基を有する1官能の弱酸モノマーのアルカリ金属塩である請求項8記載の製造方法。前記エポキシ化合物は、1官能エポキシ化合物である請求項8又は9記載の製造方法。前記エポキシ化合物は、2官能以上のエポキシ樹脂である請求項8又は9記載の製造方法。前記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、共役塩基としてカルボン酸基の共役塩基、リン酸基の共役塩基、ホウ酸基の共役塩基、ケイ酸基の共役塩基、チオール基の共役塩基及びフェノール性水酸基の共役塩基からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものである請求項8〜11のいずれか記載の製造方法。前記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属の塩である請求項8〜12のいずれか記載の製造方法。前記有機基を有する弱酸モノマーのアルカリ金属塩は、Na又はKの塩である請求項13記載の製造方法。


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