タイトル: | 公開特許公報(A)_マーカーとして緑色蛍光タンパク質(GFP)を利用するがん転移モデル |
出願番号: | 2004244330 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12Q1/02,A01K67/02,A01K67/027,C12N5/10,C12N15/09 |
タン,ユーイン 千島 隆司 JP 2005006660 公開特許公報(A) 20050113 2004244330 20040824 マーカーとして緑色蛍光タンパク質(GFP)を利用するがん転移モデル アンチキャンサー インコーポレーテッド 502326772 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 大屋 憲一 100077425 タン,ユーイン 千島 隆司 US 08/848,539 19970428 US 09/049,544 19980327 7C12Q1/02A01K67/02A01K67/027C12N5/10C12N15/09 JPC12Q1/02A01K67/02A01K67/027C12N5/00 BC12N15/00 A 17 1998547250 19980428 OL 14 4B024 4B063 4B065 4B024AA01 4B024AA12 4B024BA80 4B024CA02 4B024DA02 4B024DA03 4B024EA02 4B024FA02 4B024FA10 4B024GA13 4B024HA11 4B024HA17 4B063QA06 4B063QA19 4B063QQ08 4B063QQ79 4B063QR48 4B063QR77 4B063QX02 4B065AA91X 4B065AA93X 4B065AB01 4B065BA01 4B065CA24 4B065CA44 4B065CA46マーカーとして緑色蛍光タンパク質(GFP)を利用するがん転移モデル技術分野本発明は、腫瘍の進行に関する研究に関わるものである。より詳細には、脊椎移動物の系において腫瘍の転移を研究するためのモデル系に関するものである。 腫瘍組織の転移する能力が、悪性腫瘍で生命が脅かされる状況のほとんどをつくると長い間考えられてきた。転移とは、原発性腫瘍と異なる部位で転移(secondary)性腫瘍が増殖することである。したがって、原発性腫瘍を外科的に除去しても、こうした状況の進行を阻止することができない場合がある。転移性腫瘍の増殖を制御し得るプロトコールを開発する上で、転移が起こるメカニズムに関する理解が非常に重要である。転移のメカニズムを理解するためには、転移性の腫瘍塞栓および微小転移を実時間の経過にそって観察することができるように、多数の宿主細胞のバックグラウンドに対して少数の腫瘍細胞を同定することができるモデルを提示することが必要である。 外部蛍光標識された腫瘍細胞を用いて、腫瘍転移における浸潤および初期の播種段階がin vitroで明らかにされた。Khokha,R.ら、Cancer Metastasis Rev(1995)14:279- 301;Koop,S.ら、Cancer Res(1995)55:2520-2523.さらに、Margolis,L.B.ら、In Vitro Cell Dev Biol(1995)31:221-226は、組織培養された宿主マウスの肺において外部蛍光標識された肺がん細胞の移動を可視化することができた。しかしながら、いずれの場合も、外来の蛍光標識の限界のために長期間の観察はできなかった。レトロウイルスによる緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の導入によって、in vitroでヒトがん細胞(Levy,J.P.ら、Nature Biotechnol(1996)14:610-614)ならびに造血細胞(Grignani,F.ら、Cancer Res(1998)58:14-19およびCheng,L.ら、Gene Therapy(1997)4:1013-1022)の安定なトランスフェクタントが得られることが明らかになった。 βガラクトシダーゼ遺伝子をマーカーとして利用する、こうしたモデルをつくることが試みられた(Lin,W.C.ら、Cancer Res(1990)50:2808-2817;Lin,W.C.ら、Invasion and Metastasis(1992)12:197-209)。しかしながら、上記マーカーは新鮮な組織も加工された組織も使用することができないため、十分ではないことが判明した。本発明は、腫瘍の侵襲および微小転移の形成を生存可能な新鮮な組織において可視化することのできるマーカーを与える。さらに、適当な対照培地を与えることによって、定着し増殖する腫瘍において血管形成を可視化するために本発明の方法を適用することができる。本発明の方法は腫瘍増殖および転移のモデルに適用できるのみならず、レトロウイルスベクターを利用して腫瘍を有するヒト患者において臨床データを得るために使用することができる。 本発明はマーカーとして緑色蛍光タンパク質(GFP)を利用する。主として融合DNAの発現をモニターするためのこのタンパク質の異種発現が、米国特許第5,491,084号において開示された。この文書は、E.coliおよびC.elegansにおけるGFPの発現を記載し、細胞は一般に改変(modified)してGFPの発現が可能になると仮定している。上記文書に記載のこのような発現は、融合DNAの発現をモニターする方法のみならず、細胞内のタンパク質の局在をモニターする方法も可能にする。 転移モデルを与える本発明の態様は、一連の出版物によって報告され、記述されている。Chishima,T.ら、Cancer Research(1997)57:2042-2047は、ヒト化した緑色蛍光タンパク質(GFP)およびジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の遺伝子含有するジシストロンベクターの構築を記載する。このベクターをCHO-K1細胞にトランスフェクションして、クローン-38を得た。クローン-38はメトトレキセート(MTX)の存在下で維持される安定したGFP発現を示した。クローン-38細胞をマウスに注入し、腫瘍断片を得て、これを次に外科的同所(orthotopic)移植(SOI)によってヌードマウスの卵巣漿膜に移植した。このモデルで、転移の進行を観察できると考えられる。 Chishima,T.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1997)94:11573-11576は、Clontechから入手したコドン最適化hGFP-S65Tクローンを用いたAnip 973ヒト肺腺がん細胞のトランスフェクションによるクローン-26の調製を記述する。クローン-26をヌードマウスに静脈注射し、その結果生じる腫瘍を組織培養で観察した。 Chishima,T.ら、Clin Exp Metastasis(1997)15:547-552、およびChishima,T.ら、Anticancer Res(1997)17:2377-2384はクローン-26に関する同様の研究を記載しているが、ここで、その細胞はヌードマウスの皮下に接種されて肉眼で観察できる腫瘍を生じ、その腫瘍はさらにSOIによってヌードマウスの内臓胸膜に移植された。このモデルにおいて同様に転移を観察した。 Chishima,T.ら、In Vitro Cell Dev Biol(1997)33:745-747は、クローン-26の組織培養およびGFPの放射する蛍光を利用した増殖の可視化を記載する。前述の公刊物の内容は、引用により本文に編入される。 上記に加えて、Cheng,L.ら、Gene Therapy(1997)4:1013-1022は、レトロウイルスプロモーターの制御下でGFP遺伝子を用いた造血幹細胞の改変を報告している。著者はヒト幹細胞をこの系でかろうじてトランスフェクションしたと述べているが、増強型のGFPを使用することによって、十分な明度が達成できるだろう。 さらに、Grignani,F.ら、Cancer Rcs(1998)58:14-19は、ヒト造血幹細胞への効率のよい遺伝子導入を達成するためのGFPを発現するハイブリッドEBV/レトロウイルスベクターの利用を報告している。 さまざまな色を与えるように改変した種々の型のGFPを含有するベクターがClontechから発売されている。哺乳動物細胞で発現させることを目的としたClontech製ベクターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にGFPを配置している。米国特許第5,491,084号Khokha,R.ら、Cancer Metastasis Rev(1995)14:279-301Koop,S.ら、Cancer Res(1995)55:2520-2523Margolis,L.B.ら、In Vitro Cell Dev Biol(1995)31:221-226Levy,J.P.ら、Nature Biotechnol(1996)14:610-614Grignani,F.ら、Cancer Res(1998)58:14-19Cheng,L.ら、Gene Therapy(1997)4:1013-1022Lin,W.C.ら、Cancer Res(1990)50:2808-2817Lin,W.C.ら、Invasion and Metastasis(1992)12:197-209Chishima,T.ら、Cancer Research(1997)57:2042-2047Chishima,T.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1997)94:11573-11576Chishima,T.ら、Clin Exp Metastasis(1997)15:547-552Chishima,T.ら、Anticancer Res(1997)17:2377-2384Chishima,T.ら、In Vitro Cell Dev Biol(1997)33:745-747Cheng,L.ら、Gene Therapy(1997)4:1013-1022Grignani,F.ら、Cancer Rcs(1998)58:14-19 本発明は、現実に添ったリアルタイムの設定のもとで、原発性腫瘍からの転移の形成に関する詳細な研究を可能にするモデルを提示する。緑色蛍光タンパク質(GFP)を安定な、容易に肉眼で観察できるマーカーとして利用することによって、このような転移の進行をモデル化することができ、そのメカニズムを解明することができる。 ある態様において、本発明は、原発性腫瘍の転移の進行を観察するための方法を目的とし、その方法は、GFPを発現する腫瘍細胞を含有するように改変させた脊椎動物の被検体から新鮮な器官組織を除去すること、および摘出された組織で蛍光の存在を観察すること、を含んでなる。 別の態様において、本発明はGFPを発現する腫瘍細胞を含有するように改変させた脊椎動物被検体を目的とする。 上記の態様において、脊椎動物被検体は、たとえば緑色蛍光タンパク質を発現するように改変させた腫瘍細胞または腫瘍を被検体に導入した、免疫に障害を持つマウスのようなモデル系を構成することができる。あるいは、被検体は、もともと腫瘍を有するが、その腫瘍が上記GFPを産生するようにレトロウイルスベクターを用いたウイルス感染またはトランスフェクションを受けた、ヒトまたはその他の脊椎動物でもよい。 さらに別の態様において、本発明は、異種制御因子の制御のもとでGFPを産生するように改変させた腫瘍細胞、肉眼で見える量のGFPを包含するだけでなく安定な細胞系統を与えるために不死化された細胞、GFPを産生する転移性腫瘍を含有する組織、およびこのような転移性腫瘍を含有する組織の組織培養、を目的とする。 また、本発明は、固形腫瘍における脈管形成を観察しその経過を追求するための方法を包含するが、この方法は(通常は)上記腫瘍を露出させ、観察することを含んでなる。腫瘍はGFPを発現するように変異させ、こうした観察を可能にするように対比色素(contrast dye)を投与する。 発明を実施する方法 本発明は、一般的な腫瘍転移のメカニズムを研究するため、並びに固形腫瘍内の脈管形成を研究するためのモデル系を与える。腫瘍細胞の移動および腫瘍から遠い組織でのコロニー形成を、その移動およびコロニー形成の進行にしたがって経過観察することができるように腫瘍細胞を標識するため、目に見えるマーカーである緑色蛍光タンパク質(GFP)を利用する。さらに、観察対象にローダミンのような対比染色を施すことによって、GFPで標識された固形腫瘍内での血管の増殖も観察することができる。 本発明のさまざまな態様において使用される標識は、緑色蛍光タンパク質(GFP)である。このタンパク質をコードする本来の遺伝子は、生物発光クラゲAequorea victoria(和名:発光オワンクラゲ)からクローニングされた(Morin,J.ら、J Cell Physiol(1972)77:313-318)。この遺伝子が利用できることによって、遺伝子発現のマーカーとしてGFPを用いることが可能になった。GFPそれ自体は、283アミノ酸からなる、分子量27kDのタンパク質である。蛍光を発するために本来の起源に由来する追加のタンパク質をまったく必要とせず、本来の起源においてのみ利用可能な基質やコファクターも不要である(Prasher,D.C.ら、Gene(1992)111:229-233;Yang,F.ら、Nature Biotechnol(1996)14:1252-1256;Cody,C.W.ら、Biochemistry(1993)32:1212-1218)。発現を増強し、励起および蛍光発光を変化させるために、GFP遺伝子の変異体が有用であることが明らかになった。GFP-S65T(65位のセリンがスレオニンで置換されている)は本発明の方法に特に有用であり、490nmの単一励起ピークを有する(Heim,R.ら、Nature(1995)373:663-664;米国特許第5,625,048号)。Delagrade,S.ら、Biotechnology(1995)13:151-154;Cormack,B.ら、Gene(1996)173:33-38およびCramer,A.ら、Nature Biotechnol(1996)14:315-319によって他の変異体も開示された。また、他の変異体が米国特許第5,625,048号に開示されている。 適当な改変によって、GFPの放射する光のスペクトルを変化させることができる。したがって、"GFP"という用語を本明細書で使用するが、この定義に包含されるタンパク質は、外見上は必ずしも緑色ではない。さまざまな種類のGFPが緑以外の色を示すが、これらもまた"GFP"の定義に含まれており、本発明の方法および材料において有用である。さらに、本明細書において"GFP"の定義に当てはまる緑色蛍光タンパク質が、ウミシイタケRenilla reriformisのような他の生物から単離されたことにも言及しておく。本発明のモデルにおいて有用となるように腫瘍細胞を改変させるために、また体内で生じた腫瘍をレトロウイルスで形質転換するために、あらゆる適当な利用しやすいタイプのGFP遺伝子を使用することができる。例証のために以下に記す実施例においては、特にヒト化したhGFP-S65Tクローンを使用する。 GFPを用いた一般的な細胞標識のための方法は、米国特許第5,491,084号(上記)に開示されている。 応用として、本発明の方法は、腫瘍の転移増殖に対するさまざまな治療候補プロトコルや物質の効果を研究するためのモデル系を与える。 一般に、モデルは脊椎動物、望ましくは哺乳動物を、腫瘍組織を含有するように改変することを含むが、ここにおいて、腫瘍細胞はそれ自体GFPの発現系を含有するように改変されている。腫瘍細胞は本発明の細胞系統から生じさせることができるが、ここで腫瘍細胞はGFPおよびSV40 T抗原の発現系を含有するように改変されている。このような脊椎動物系において、GFP発現系を含有する形質転換された細胞を接種し、この形質転換細胞が腫瘍を形成することを可能にすることによって、腫瘍を形成させることができる。典型的にはこうした接種は皮下に行なわれ、腫瘍は固形の塊として形成される。このようにして形成された腫瘍を、適当な宿主組織に移植し、進行、転移、増殖を可能にさせる。 初期腫瘍の増殖に適した方法は、GFPを産生する腫瘍細胞の経皮的注入を包含するが、こうした腫瘍細胞の例としては、CHO細胞、HeLa細胞、癌腫および肉腫細胞系統、ヒト肺腺がん細胞系統Anip 973のような確立された細胞系統、ならびにGFPを含有するヒト乳がん細胞系統MDA-MB468およびMDA-MB435;ヒト前立腺がん細胞系統PC3およびDU-145、ヒト膠芽腫細胞系統324、マウス黒色腫B16および本発明の不死化細胞を包含する当分野で利用可能な他の細胞系統、がある。接種される細胞はGFP発現系を含有するように改変を受ける。接種後、一般的には固形の腫瘍が、典型的な例としては皮下注射した部位に増殖する。これらの腫瘍はそれ自体が蛍光を発するが、次いでその腫瘍を除去して、モデル系の脊椎動物に移植するために使用することができる。 GFPで標識された固形腫瘍の脊椎動物への移植技術は、望ましい部位、典型例としては腫瘍細胞が発生したもとの部位への外科的同所移植(SOI)による直接移植を包含する。適当な部位は、肺、肝臓、膵臓、胃、乳房、卵巣、前立腺、骨髄、脳および他の悪性腫瘍にかかりやすい組織を包含する。ひとたび固形腫瘍が移植されると、移植された脊椎動物は転移を研究するためのモデル系となる。 このようにして腫瘍の進行、増殖を可能にし、その脊椎動物でもとの移植部位から離れた部位でのGFP標識細胞の出現をモニターする。モニタリングは、その脊椎動物の全身について、動物を切開し、器官を蛍光顕微鏡で直接観察して行なうこともできるが、組織を摘出し顕微鏡で調べることもできる。場合によっては、動物の切開が不要なほど腫瘍が十分に明るく、皮膚を通して直接見ることが可能である。いずれの場合にも、GFPは肉眼で見られるので、組織試料を染色する顕色(development)系は不要である。組織試料は、新鮮な試料として適当な大きさ、一般的には厚さ1mmのスライスに簡便に正確に処理され、これを検査のために顕微鏡下に置く。10細胞以下のコロニーであっても、見ることができる。さまざまな顕微鏡による視覚化の技法が当該分野で公知であり、あらゆる適当な方法を使用することができる。 さらに腫瘍の増殖を組織培養においてin vitroで研究することができる。こうした研究に適した系は、コラーゲンゲル上などで維持されるような、固形培養を包含する。 モデルとして使用するために適した脊椎動物被検体は哺乳動物が望ましく、もっとも望ましいのはウサギ、ラット、マウスなどの利用しやすい実験動物である。ヒトにさらに類似しているために、霊長類も利用できる。とりわけ有用なのは、特に腫瘍が増殖しやすい被検体、たとえば免疫系に障害のある動物、典型例としてはヌードマウスやSCIDマウスである。あらゆる適当な脊椎動物被検体を利用できるが、その選択は主として利便性ともっとも関心のある系に対する類似性で決まる。 移植される腫瘍細胞内で機能できるあらゆる適当な発現系を利用することができる。さまざまなタイプの腫瘍細胞内で発現を果す多数のベクターが市販され入手可能である。ベクターの性質は腫瘍および腫瘍の起源である脊椎動物の種類によって変わる。しかしながら、モデル系において腫瘍を可視化するためにGFPを使用する場合には、モデルの本来の特質を複雑化する可能性のあるレトロウイルスまたは他のウイルス性プロモーターを使用しないベクターを利用することが望ましい。 上記のモデル系に腫瘍を形成させるのに有用な細胞系統を与えるために、細胞にSV40 T-抗原を与える発現ベクターを利用することも好都合である。上記抗原の存在は、培養の不死性を確実にする。したがって、GFPとSV40 T-抗原の両方の産生をもたらす発現系を含んでなるベクターが、本発明において特に有用である。 腫瘍発生に効果のある形質転換細胞をトランスフェクションし、改変するために、あらゆる適当なトランスフェクション法、たとえばリポソーム、リン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション、およびジーンガンを使用する方法、を使用することができる。リポフェクションが望ましい。 これに対して、ヒトがん患者のように被検体の中にもともと存在する腫瘍における、転移を可視化するために本発明の方法を使用する場合には、レトロウイルスまたは他のウイルス性プロモーターを用いたベクターが望ましい。このようなベクターの利用によって、GFP発現系をすでに存在する腫瘍中に挿入することが可能になる。さらに、この発現系は、たとえば転移の診断と治療を同時に可能にする治療用タンパク質のような、他の有用なタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有することができる。上記に適したタンパク質には、メチオニナーゼが包含される(たとえばPCT/US93/11311号およびPCT/US96/09935号参照)。このようなタンパク質はGFPとの融合タンパク質として産生されるか、あるいはジシストロン発現系または独立した別の発現系(一方が治療用タンパク質、他方がGFPのための発現系)のいずれかを用いて別々に産生される。 レトロウイルスをベースにしたGFPの発現系はすでにGrignani,F.ら、Cancer Res(1998)58:14-19およびCheng,L.ら、Gene Therapy(1997)4:1013-1022に記載されている。これらの報告において、レトロウイルス発現系それ自体が造血前駆細胞をトランスフェクションするために使用され、あるいはパッケージング細胞が、哺乳動物細胞の感染にそのまま使用できるウイルス含有上清を与えるために用いられる。したがって、本発明の方法において、脊椎動物被検体に含有される腫瘍は通常、GFP発現系を含有するように改変しパッケージされたウイルスによる感染を受ける。ウイルスによるin situ感染の結果、腫瘍はGFPを産生する能力を有するようになり、実際上、腫瘍そのものが標識されることになる。 哺乳動物細胞内でタンパク質を産生するのに有用なさまざまなレトロウイルス系が当分野で公知である。例としては、Clontech,San Diego,Californiaから販売されている市販のベクターおよびパッケージングシステムがあり、多重クローニング部位(multiple cloning site)に挿入することによってさまざまなプロモーターのもとでGFPの発現を可能にするRetro-XベクターpLNCXおよびpLXSNを包含する。これらのベクターはΨ*(広域(extended)ウイルスパッケージングシグナル)および選択のための抗生物質耐性遺伝子を含有する。こうした系の多くは遺伝子治療に利用するために開発され、レトロウイルス起源に由来する5'および3'LTRの間にはさまれた多重クローニング部位を与えるベクターを包含するので、ヒト患者の腫瘍を標識するのに有用であると考えられる。 したがって、図1a-1bに示すようなレトロウイルスをもとにしたベクターを、パッケージング細胞にトランスフェクションして、直接、標的とするがん細胞に導入することが可能であり、あるいはパッケージング細胞から得られた上清を用いて腫瘍細胞にレトロウイルスを感染させることができる。レトロウイルスとパッケージング細胞の望ましい組み合わせは、GFP-レトロウイルスベクターpLEINとPT-67パッケージング細胞の組み合わせを包含する。パッケージング細胞と結腸がん細胞との共存培養によって、がん細胞へのGFP-レトロウイルスの導入がおこる。 組織培養の技術を用いて、およびGFP-pLEINウイルスを生じるPT-67パッケージング細胞由来の上清を用いて、ヒトのがん組織がGFPによる蛍光を示すようにうまく改変させられることが明らかになった。in vivoで使用するために、ウイルスを腫瘍に局所的に接種することが望ましいが、パッケージング細胞か、またはウイルスを含有する上清のいずれかを注入した後、数時間以内に観察することができる。悪性腫瘍細胞はその緑色の色によって判別することができ、皮膚を通して腫瘍が見られるほど十分に明るい場合もある。 モデル系において、または脊椎動物、典型的には哺乳動物、さらに典型的にはすでに腫瘍に罹っているヒト患者において、腫瘍の転移および増殖を直接観察することに加えて、本発明の方法を適用して、固形腫瘍における脈管形成を観察することができる。腫瘍それ自体はGFPによって上記のように標識される。次いで、被検体に対比色素を投与するが、これは一般に注射によって行ない、静脈注射が望ましい。これによって腫瘍内の血管を観察することが可能になる。適当な色素はローダミンおよび他の対比色素を包含する。GFPの緑色と対照的な色をなす色素であればいずれも使用することができる。色素が血管内にとどまる時間を長引かせるために、色素はポリエチレングリコールのような不活性ポリマーと結合していることが望ましい。容易に肉眼で観察することが可能なように、十分な量の色素が供給される;色素の必要量は、色素の選択、腫瘍の位置、バックグラウンドとなるGFPの性質、および観察のために使用する方法、に依存する。数分以内に、腸間膜、結腸壁、および大網のような領域において固形腫瘍内に成長する血管を観察することができる。相当な期間にわたって、観察を継続することが可能であり、たとえば、数時間後もなお脈管形成が本方法を用いて観察される。 以下の実施例は、例証を意図したものであり、本発明を限定するものではない実施例1GFPを産生する腫瘍細胞の調製Zolotukhin,S.ら、J Virol(1996)70:4646-4654に記載されたヒト化クローンhGFP-S65Tを緑色蛍光タンパク質コード配列として使用した。このコドン最適化遺伝子は、Clontech Laboratories,Inc.(Palo Alto,CA)から得られ、これをGenetics Institute,Cambridge,MAから購入し、Kaufman,R.J.ら、Nucleic Acids Res(1991)19:4485-4490に記載されたジシストロン発現ベクター(pED-mtx1)中にライゲートした。hGFP-S65TをHindIIIで切断して、平滑末端とした;完全なhGFPコード領域をXbaIで切り出した後、あらかじめPstIで切断し、平滑末端として、さらにXbaIで切断したpED-mtx1に一方向にサブクローニングした。 10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミンおよび100μM非必須アミノ酸を含有するDMEMでCHO-K1細胞を培養した。コンフルエントに近い細胞を、リポフェクトアミン(LipofectAMINE、登録商標)試薬(GIBCO)と十分量のプラスミドの沈澱混合物とともに6時間インキュベートし、その後新しい培地で満たす。48時間後に細胞をトリプシン/EDTAによって集め、1.5μMメトトレキセート(MTX)を含有する選択培地中で1:15で継代培養した。安定に組み込まれたプラスミドを有する細胞をMTX含有培地中で選択し、クローニングシリンダー(Bel-Art Products,Pequannock,NJ)を用いてEDTAによって分離した。増幅および導入(transfer)後、GFP蛍光の強さと安定性からクローン-38を選択した。 同様にして、Harbin Medical University,Chinaから入手したヒト肺がん細胞系であるAnip 973細胞を、DMEMの代わりにRPMI1640(GIBCO)を使用した以外は上記のCHO-K1細胞と同様に培養した。トランスフェクション、選択、増幅、および導入は上記のように行なった。GFP蛍光の強さと安定性からクローン-26を選択した。 実施例2改変CHO細胞を用いたマウスモデル クローン-38は1.5μM MTXで安定であり、倍加時間の比較で確認されたように親細胞のCHO-K1と同じ速さで増殖するが、このクローンを上記モデルに使用した。 6週齢のBalb/C nu/nu雌マウス3匹に、トリプシン処理によって集められ、冷たい血清含有培地で3回洗浄後氷上に保存した、107個のクローン-38細胞を1回投与で皮下注射した。細胞は収集後40分以内に総量で0.4ml注入され、そのヌードマウスは注射後3週間で屠殺された。すべてのマウスが、直径13.0mmから18.5mmまでの皮下腫瘍を有していた(平均=15.2mm±2.9mm)。腫瘍組織は強い蛍光を示した。培養されたクローン-38細胞からGFPを抽出することによって、腫瘍から調製されたクローン-38細胞と比較して、GFP産生のレベルが両者で同一であることが明らかになった。 モデルを構築するために、上記のように増殖させたヌードマウス皮下のクローン-38腫瘍から得られた腫瘍断片(1mm3)を、Fu,X.ら、Anticancer Res(1993)13:283-286(引用により本文に編入される)に記載されたように外科的または外科的同所移植(SOI)によって6匹のヌードマウスの卵巣漿膜に移植した。 簡単に述べると、イソフルラン吸入によってマウスに麻酔をかけ、左下腹部直腸労線および腹膜を通して切開を加えて、左卵巣および漿膜の一部を露出させ、鉗子で擦過した。4片の1mm3腫瘍を擦過部位に8-0ナイロン縫合糸で固定した後、卵巣を腹膜腔に戻した。腹壁および皮膚を6-0絹縫合糸で閉じた。 4週間後、マウスを屠殺し、肺および他のさまざまな器官を除去した。新鮮な試料を約1mmの厚さにスライスし、蛍光および共焦点顕微鏡法で直接観察した。試料はまた、組織学的検査のために蛍光および通常染色によって処理された。 凍結切片を調製したが.ここで、スライドグラスはリン酸緩衝塩類液ですすぎ、4℃で10分間固定した;10%ホルムアルデヒド+0.2%グルタルアルデヒドおよびPBSを添加し、次いでスライドグラスをPBSで洗滌した。固定された組織を標準的な技法を用いてヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。 キセノンランプ電源装置およびGFPフイルターセット(Chromotechnology Corp.,Brattleboro,VT)を装備したNikon顕微鏡を用いて、光学および蛍光顕微鏡観察を実施した。共焦点顕微鏡法は、アルゴンレーザーを有するNicon顕微鏡に装備されたMRC-600 Confocal Imaging System(Bio-Rad)を用いて実施された。 マウスは、屠殺時に、卵巣に直径18.7mm-25.3mm(平均21.9±3.1mm)の腫瘍があった。新鮮な器官組織を組織の処理をせずに蛍光顕微鏡法で検査すると、結腸(6/6マウス)、盲腸(5/6)、小腸(4/6)、脾臓(1/6)、および腹膜壁(6/6)等、腹膜腔全域にわたって腫瘍の播種がみられた。夥しい数の微小転移が全マウスの肺に検出され、多数の微小転移が肝臓(1/6)、腎臓(1/6)、反対側の卵巣(3/6)、副腎(2/6)、大動脈傍リンパ節(5/6)および胸膜(5/6)にも検出された。単細胞微小転移は上記の標準的な組織学的手法では検出できず、多細胞コロニーであっても同方法を用いての検出は困難であった。コロニーが成長するにつれて、中心部での腫瘍細胞密度は著しく減少した。 さらに別の実験において、5×106個のクローン-38細胞をヌードマウスに尾静脈から注射し、2分後にマウスを屠殺した。新鮮な内臓器官を蛍光顕微鏡法で分析し、腹膜壁血管に蛍光細胞の存在を示したが、この蛍光細胞は肺、肝臓、腎臓、脾臓、卵巣、副腎、甲状腺、および脳の毛細血管内に塞栓を形成した。 このように、上記の技法を用いて、関連する標的器官内で播種された細胞が増殖してコロニーを形成する過程に沿って、微小転移の進行を観察することができる。さらに、全身の器官のすべてにおいて、微小転移のスクリーニングも容易に迅速に行なうことができる。 実施例3ヒト肺がん細胞を用いたマウスモデル 手順は概ね実施例2で述べたとおりであるが、クローン-38 CHO細胞の代わりに実施例1で調製したクローン-26細胞を使用した。 A.実施例2と同様に、トリプシン処理による収集および冷却血清含有培地による3回洗浄後40分以内に、1回投与量0.4mlの107個のクローン-26細胞を用いて、6週齢のBalb/C nu/nu雄マウスに皮下注射して腫瘍を増殖させた。細胞は注射まで氷上に保存した。腫瘍の直径が約1.2cmに達したときに動物を屠殺した。1.2cmの腫瘍の形成はおよそ5週間後であった。 B.Astoul,P.ら、Anticancer Research(1994)14:85-92;Astoul,P.J Cell Biochem(1994)56:9-15(いずれも引用により本文に編入される)に記載されたように、1mm3の腫瘍片をSOIによって8匹のマウスの左内臓胸膜に移植した。簡単に述べると、マウスをイソフルラン吸入によって麻酔し、左側の胸に第4肋間を通して横方向に小さな1cmの切開を加え、完全な肺虚脱に至らせる。5片の腫瘍片を7-0ナイロン外科用縫合糸によって縫い合わせ、1回結ぶことによって固定した。鉗子で肺を持ち上げて、一方の縫合糸で肺の下部に腫瘍を縫いつけた後、肺を胸腔に戻し、筋肉と皮膚を一重の6-0絹縫合糸で縫い閉じた。23-ゲージ針を用いて、胸腔から空気を抜き出すことによって肺を再び膨らませた。 C.4匹のマウスを4週間で、別の4匹を8週間で屠殺した。4週間のグループの胸膜腫瘍は、244.40mm3-522.88mm3の範囲であり、8週間のグループの胸膜腫瘍は1279.08mm3-2714.40mm3の範囲であった。これは平均値371mm3および1799mm3に相当した。組織検体を厚さ1mmにスライスして、キセノンランプ電源装置を備えたNikon顕微鏡、および水銀灯電源装置とGFPフィルターセットを装備したLeica立体蛍光顕微鏡を用いて、蛍光顕微鏡法によって直接観察した。すベての動物は、腫瘍が胸壁に侵入し、腫瘍の局所的広がりを示したが、8週間のマウスでは、すべての腫瘍が肺胸膜および壁側胸膜への転移のみならず、縦隔および反対側の胸膜腔にまで及んだ。4週間グループの4匹のうち3匹、および8週間グループのすべてのマウスでは肺門リンパ節も冒された。頸部リンパ節(cervical node)の併発が、8週間グループのマウスのうちの1匹で検出されたが、他の転移は検出されなかった。動物は組織を摘出する前に直接の観察も行なわれた。 正常な肺組織に侵入した腫瘍の周縁をGFP蛍光によって検出することができ、小血管が腫瘍の縁に発達しているのを観察することができた。 D.さらに別の実験において、トリプシン処理によって集め、冷血清含有培地で3回洗浄した、1回量の1×107個のクローン-26細胞を、8匹のヌードマウスに尾静脈から注射した。注射は細胞収集の40分以内で総量0.8mlであった。 今回も、4匹は4週間で屠殺し、残りの4匹は8週間で屠殺して、組織標本を得て、上記のように顕微鏡法によって研究した。非常に多くの微小転移コロニーが、上記2グループのいずれでも肺組織全体で検出され、その大きさは、4週間グループでは5.2μmから32.5μm、8週間グループでは5.5μmから178.3μmの範囲であった。8週間グループのコロニーは、4週間グループに比べてさほど増殖していないようであった。細胞数10以下程度の非常に多くの小コロニーが、いずれのグループの肺表面にも検出され、脳転移は4週間グループでは1匹、8週間グループからは2匹で検出された。8週間グループのうちの1匹は、全身性の転移を示し、脳、顎下腺、肺全体、膵臓、両側の副腎、腹膜、および肺門リンパ節に転移が存在した。 E.また別の実験において、前節の記載と同様に107個のクローン-26細胞を尾静脈に注射したマウスを、4、8および12週間で屠殺し、その組織を上記のように検査した。8週間で屠殺したマウスのコロニーの大半は、4週間で屠殺したマウスと比べて、明白にさらに大きく増殖したわけではないが、細胞数10以下で大きさが5.5μm-110μmの範囲にある非常に多くの小コロニーが肺表面に検出された。12週間では、休止状態と思われる多数の小転移コロニーが存在したが、他のコロニーはこの時期まで大きく増殖し、その大きさは1100μmにまで達した。これは、肺において休止状態および活発な腫瘍コロニーの2種類が混在することを示唆する。 実施例4クローン-26腫瘍細胞の組織培養における増殖 6週齢SCID/SCIDマウスに静脈注射で7.5×107クローン-26細胞を1回投与した。この細胞は、上記のように、トリプシン処理で収集し、冷却した血清含有培地で3回洗浄し、氷上に保存しておいた。細胞は収集後40分以内に総容量0.5mlで注入した。3週間後、約550μmまでの非常に多数の微小転移コロニーが肺組織全体に検出された。5週間後にマウスを屠殺し、クローン-26の播種されたマウス肺を除去し、Leighton,J.,Cancer Res(1957)17:929-941;Leighton,J.ら、Cancer Res(1960)20:575-597;Hoffman,R.M.Cancer Cells(1991)3:86-92によって開発された組織培養法を用いてスパンゲル上で組織培養した。腫瘍コロニーは肺組織に速やかに広がり、1週間後には支持体のコラーゲンスボンジゲルに侵入し、コロニー形成を始めた。2週間後には、腫瘍細胞は肺組織中のはじめのコロニーから遠く離れたスポンジゲル内にサテライトコロニーを形成し、このように組織培養ではSCIDマウス中よりも速く腫瘍が増殖した。腫瘍コロニーは組織培養で1ヶ月以上増殖することができた。 実施例5GFPレトロウイルス発現ベクターの構築および標識された腫瘍細胞系統の調製 図1aおよび1bは、SV40プロモーターの制御下でGFPを発現する発現ベクターの構築を示す。構築物は、Clontechから入手可能な市販のpEGFPシリーズベクターを利用した。融合タンパク質として、あるいはジシストロン系において、GFPに加えて別のタンパク質を生産することが可能な、細菌発現ベクターおよび哺乳動物発現ベクターがいずれも利用できる。図1aは、GFPとメチオニナーゼとの融合タンパク質のための発現ベクターpGFP/Metの構築を示す;図1bは、GFPとSV40 T-抗原との融合タンパク質の産生のためのベクターpGFP/SV40の構築を示す。 実施例6に記載のpLEIN系を用いた、望ましいスペクトル特性を有するGFPコード配列を含有する市販のベクターを、たとえばヒト乳がん、ヒト前立腺がん、ヒト膠芽腫、およびマウス黒色腫のような、腫瘍を起源とする細胞系統にトランスフェクションした。この方法によって、緑色蛍光タンパク質で標識された、ヒト乳がん細胞系統MF-7,MDA-MB468およびMDA-MB435、ヒト前立腺がん細胞系統PC3およびDU145、ヒト膠芽腫細胞系統324、ヒト肺がん細胞Anip-73およびH460、ヒト結腸がん細胞系統Colo-205,HCT-15およびWiDr、ヒト胃がん細胞系統NVGC-4、ヒト腎臓がん細胞系統SN12C、ヒト舌がん細胞系統SCC-25、ヒト黒色腫LOXおよびSK-mel-5、細胞系統CHO-H1由来の標識されたチャイニーズハムスター卵巣細胞系統、およびマウス黒色腫細胞系統B16が確立された。 SV40T-抗原タンパク質は、培養細胞を不死化して永続する細胞系統を確立するのに有用である。したがって、ベクターpGFP/SV40を一連の腫瘍細胞培養物にトランスフェクションすることによって、蛍光を有する不死化細胞系統が与えられる。 実施例6確立した腫瘍のin vivo標識 クローン-26の代わりに標識されていないAnip973を用いる以外は実施例3のAおよびB項に記載の手順を用いて、ヒト肺がん細胞系統Anip973を起源とする標識されていない腫瘍をマウスに確立した。次に、PT67細胞に含まれるレトロウイルスベクターGFP-レトロウイルスpLEINを含有する1×107パッケージング細胞をこのマウスに注入した。上記ウイルスパッケージングシステムはClontech,San Diego,Californiaから入手できる。pLEINは、野生型GFPが赤色側にシフトした変異体であって、より強い蛍光および哺乳動物細胞でのより高い発現に対してもっとも効果的な、EGFPのコード配列の挿入断片を含有する。これは励起極大を488nmに、発光極大を507nmに有する。この変異体は、64位のPheからLeuへ、65位のSerからThrへ、二重のアミノ酸の置換を含有する。これは、Comack,B.ら、Gene(1996)173:31-38に記載されている。Haas,J.ら、Curr Biol(1996)6:315-324に記載されたように、ヒトのコドン使用の選択性が最大となるように、サイレントな塩基の変化が190以上存在する。このように、pLEINは、pLXINの多重クローニング部位に上記のGFPコード配列が挿入され、GFPとネオマイシン耐性の二つの対等な翻訳を可能にするジシストロン発現系を得ている。マウスの腹膜腔への細胞注入の3日後、明視野顕微鏡および蛍光顕微鏡法によって貯精嚢に腫瘍細胞を観察することができた。 実施例7脈管形成の観察 実施例1に記載した1×107クローン-38細胞を含有する懸濁液をマウスの腹膜腔に注入した。5日後、マウスの尾にローダミンを注入し、次に麻酔をかけ、腫瘍が見えるように十分に腹腔を切開した。この手術からの回復は容易である。ある場合には、腹膜内の腫瘍をそのまま皮膚を通してみることができるので、腹部切開は不要である。腫瘍は腹腔内に見ることができ、ローダミン蛍光によって判別されるように脈管形成は明らかである。同様の結果が、小腸壁の網、および腸間膜に増殖した腫瘍で見出された。 同様の実験において、実施例1に記載の、1×107細胞のクローン-26を含有する懸濁液を、マウスの腹膜腔に注入した。1日後、腫瘍は腸間膜および結腸壁に現れた。これらは、マウスを麻酔し、腹部を最小限切開することによって観察された。同様に処置したマウスの3日目の観察によって、小腸壁および網ならびに結腸壁および腸間膜に腫瘍が見られた。5日目には、同様に処置したマウスに100μlの2×10-3Mのローダミンを尾から注射し、腸間膜に増殖する腫瘍の中に少数の血管を観察することができた。60日後、非常に多くの血管が結腸壁に増殖する腫瘍において観察された。図1aは、本発明に有用な発現ベクターの構築を示す。図1bは、本発明に有用な発現ベクターの構築を示す。緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する腫瘍を含有するように改変させた (modified)脊椎動物被検体を必要に応じて切開すること、および蛍光の有無 について組織を観察すること、を含んでなる、原発性腫瘍の転移の進行を追跡するための方法。被検体が切開される、請求項1に記載の方法。組織の少なくとも一部が摘出される、請求項2に記載の方法。上記の摘出組織を顕微鏡検査によって観察する、請求項3に記載の方法。上記脊椎動物被検体が上記腫瘍の外科的同所移植によってGFPを発現する腫瘍を有するように改変させられた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。上記被検体に内生する原発性腫瘍がGFPの発現系を含有するように改変させられた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。上記発現系がウイルスプロモーターを含んでなり;および/または上記脊椎動物被検体がヒトであり;および/または 上記発現系が治療用タンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。GFPを発現する腫瘍を含有するように改変させられた、脊椎動物被検体。上記被検体が哺乳動物であり;および/または 上記被検体が免疫に障害があり;および/または 上記腫瘍が肺腫瘍または卵巣腫瘍であり;および/または上記GFPがhGFP-S65Tであり;および/または 上記のGFPを発現する腫瘍が、GFPを発現する前駆腫瘍、腫瘍に含まれる細胞の起源である細胞を含んでなる上記前駆腫瘍の、組織または器官部位への外科的移植によって与えられる、または上記GFPの発現系を上記被検体の中に生じた腫瘍に供給することによって上記のGFP発現腫瘍が与えられる、請求項8に記載の脊椎動物被検体。異種の調節配列の制御のもとで上記GFPをコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターによってトランスフェクションされた、GFPを産生するように改変した腫瘍細胞。不死化細胞系統である、請求項10に記載の細胞。細胞系統がヒト乳がん細胞系統、ヒト前立腺がん細胞系統、ヒト膠芽腫細胞系統、ヒト肺がん細胞系統、、ヒト結腸がん細胞系統、ヒト胃がん細胞系統 、ヒト腎臓がん細胞系統、ヒト舌がん細胞系統、ヒト黒色腫細胞系統、マウス黒色腫細胞系統、またはチャイニーズハムスター卵巣細胞系統である、請求項11に記載の細胞系統。上記GFPをコードするヌクレオチド配列、および治療用タンパク質または不死化するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターによって腫瘍細胞がトランスフェクションされた、GFPを産生するように改変した腫瘍細胞。上記被検体において腫瘍発生をもたらすに十分な量の請求項10の腫瘍細胞を脊椎動物被検体に皮下投与することを含んでなる、または上記GFPのレトロウイルス発現系を上記被検体に導入することを含んでなる、GFPを発現する腫瘍を有する脊椎動物を調製するための方法。当該腫瘍細胞がGFPを産生する、転移性腫瘍細胞を含有する脊椎動物組織 、または上記組織から調製された組織培養。随意に被検体の組織を露出させること、および腫瘍における血管を観察することを含んでなり、ここにおいて対比色素の存在によって血管を目で見ることができ、上記腫瘍がGFPを発現するように改変していた、脊椎動物被検体に存在する腫瘍において脈管形成を観察するための方法。細胞系統を代表する細胞がSV40 T-抗原および目に見える量のGFPを含有するように改変された、不死化細胞系統。 【課題】 原発性腫瘍の転移の進行を追跡するための方法を提供する。【解決手段】 本発明の方法は、新鮮な器官組織をGFPを発現する腫瘍細胞を含有するように改変させた脊椎動物被検体から除去すること、および摘出された組織で蛍光の存在を観察することを含んでなる。in situで組織を観察することによって蛍光をモニターすることもできる。GFP産生腫瘍を含有する脊椎動物被検体は、転移の機構を研究するために有用なモデルである。さらに、すでに腫瘍のある被検体を処理して、内部に発生した腫瘍をGFPを有するように改変させることができる。これによって臨床応用が可能になる。最後に、GFP標識腫瘍を有する被検体に対比染色の色素を注入することによって、腫瘍における脈管形成を直接観察することができる。【選択図】 なし