生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_骨髄細胞の培養方法
出願番号:2004240061
年次:2006
IPC分類:C12N 5/06,A61L 27/00


特許情報キャッシュ

福地 健 山下 憲司 大串 始 町田 浩子 JP 2006055066 公開特許公報(A) 20060302 2004240061 20040819 骨髄細胞の培養方法 株式会社カネカ 000000941 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 安富 康男 100086586 野田 慎二 100115141 福地 健 山下 憲司 大串 始 町田 浩子 C12N 5/06 20060101AFI20060206BHJP A61L 27/00 20060101ALN20060206BHJP JPC12N5/00 EA61L27/00 G 6 OL 9 4B065 4C081 4B065AA93X 4B065BB11 4B065BB14 4B065BB25 4B065BB37 4B065BD45 4B065CA44 4C081AB04 4C081CD34 4C081EA02本発明は、骨髄細胞及び骨髄由来細胞の培養過程において、増殖、分化に影響のない抗生物質の添加に係わる技術分野に属するものである。骨髄液中には骨、軟骨、筋肉、脂肪など多様な細胞に分化しうる性質を持った間葉系細胞(略称:MSC)が存在することが明らかになってきている(例えば特許文献1、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。MSCは、このように多種多様な細胞、臓器に分化しうる能力(これをpluriopotential propertiesと呼ぶ)を有しているので、この細胞を増殖、分化に影響のない形で、かつ微生物の汚染なく増幅させる方法は、再生医療発展の見地から極めて重要である。このような細胞を培養する過程においては、抗生物質を用いる方法が一般的であり、実験レベルにおいては特に頻繁に用いられている。例えば、市販の3種混合抗生剤(抗生物質−抗真菌剤(×100)15240−062、インビトロジェン社製)が良く使用されている。また、抗菌スペクトルが広いと言われているゲンタマイシンをオステオブラスト様細胞に100μg/mlで添加し、骨分化した場合、アルカリフォスファターゼ活性(ALP活性)が低下するという報告がある(非特許文献4参照)。国際公開第01/83709号パンフレットPliard,Aら、Conversion of an Immortilized Mesodermal Progenitor Cell Towards Osteogenic、Chondrogenic、or Adipogenic Pathways、J Cell Biol 130(6):1461−72(1995)Mackayら,A.Mら、Chondrogenic Differentiation of Cultured Human Mesenchymal Stem Cells From Marrow、Tissue Engineering4(4):415−428(1998)Angele,Pら、Engineering of Osteochondoral Tissue With Bone Marrow Mesenchymal Progenitor Cells in a Derivatized Hyaluronan−Geratin Composite Sponge、Tissue Engineering5(6):545−553(1999)J.ORTOP TRAUMA 17(3):212−216 MAR(2003)上述したように3種混合抗生剤などを指定濃度で用いたり、それ以外の抗生剤でも添加量が的確でなかった場合には、骨髄細胞の増殖、分化が抑えられ、本来細胞の持っている能力が十分に発揮できないことが懸念される。実際、本発明者らは、骨髄細胞の培養に上記3種混合抗生剤を規定量添加すると、DNA含量が低下し、分化が抑制されることを見出した(後述の実施例2の比較データ参照)。このようなことから考えると、抗生物質を添加しない培養が理想であるが、培養期間中、細菌や真菌による汚染を完全に防止できるとは限らず、このリスクを排除するためには、抗生剤を添加する必要がある。そこで、抗生剤を添加する場合には、抗菌スペクトルが広く、アナフィラキシーショックを起こさないものを選択し、かつ増殖、分化に影響のない濃度を設定することが望ましい。しかし、このような視点から骨髄細胞培養に使用する抗生剤を選択し、濃度設定したものについては、これまで報告がなかった。本発明の目的は、細胞の増殖、分化能力を損なうことなく、効率的に骨髄細胞を培養する方法を提供することである。上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討を進めた結果、抗生物質の中で抗菌スペクトルが広いゲンタマイシン、カナマイシンを用い、かつ、これらを特定の濃度で用いることにより、骨髄細胞の増殖、分化に対して影響のない骨髄細胞の培養方法を見いだし、本発明を完成するに至った。ここで、抗菌スペクトルが広いとは、グラム陰性菌から陽性菌までの広範囲の菌に対して抗菌性を有するという意味である。すなわち、本発明は、0.1〜50μg/mLのゲンタマイシン、または0.1〜100μg/mLのカナマイシンの存在下、骨髄細胞を培養液中で培養することを特徴とする骨髄細胞の培養方法に関する。また、本発明は、5〜50μg/mLのゲンタマイシン、または5〜100μg/mLのカナマイシンの存在下、骨髄細胞を培養液中で培養することを特徴とする上記培養方法に関する。また、本発明は、骨髄細胞が間葉系幹細胞である上記培養方法;骨髄細胞が骨または軟骨組織に分化しうるものである上記培養方法;骨髄細胞が、骨髄液から分離、回収されたものである上記培養方法に関する。さらに、本発明は、上記培養方法により得られた骨髄細胞を回収することを特徴とする骨髄細胞の生産方法に関する。骨髄細胞としては、間葉系細胞などを含む細胞集団が挙げられる。該細胞集団は、間葉系幹細胞、接着性細胞及び血球細胞などを含む。本明細書においては、骨髄細胞は、骨髄由来細胞、すなわち、骨、軟骨、筋肉、肝臓、皮膚に分化したまたは分化しつつある細胞も含む。骨髄細胞は、好ましくは、間葉系幹細胞であるか、骨または軟骨組織に分化しうるものである。また、骨髄細胞は、骨髄液から分離、回収して得ることができる。骨髄液から骨髄細胞を分離、回収して得る方法としては、例えば、骨髄液を遠心分離し、上清を除去し、下層を回収する方法や;フィコールなどの遠心分離助剤を添加して遠心分離し、中間層の画分を回収する方法などが挙げられる。本発明において用いるゲンタマイシン、カナマイシンは、いずれもアミノグリコシド系の抗生物質であり、グラム陰性菌から陽性菌まで広い範囲で抗菌スペクトルを有するものである。本発明の骨髄細胞の培養方法においては、ゲンタマイシンを0.1〜50μg/mL、または、カナマイシンを0.1〜100μg/mL存在させることが必要である。ゲンタマイシン、カナマイシンの添加濃度は、細胞の種類によって変化しうるが、抗菌活性や細胞への毒性の観点から、ゲンタマイシンの濃度は、下限は好ましくは5μg/mL、より好ましくは10μg/mL、上限は好ましくは40μg/mL、より好ましくは30μg/mLであり;カナマイシンの濃度は、下限は好ましくは5μg/mL、より好ましくは10μg/mL、さらに好ましくは50μg/mL、上限は好ましくは90μg/mL、より好ましくは80μg/mLである。ゲンタマイシンの濃度は、好ましくは5〜50μg/mL、より好ましくは10〜30μg/mLであり、カナマイシンの濃度は、好ましくは5〜100μg/mL、より好ましくは50〜100μg/mLである。培養液中には、必要に応じて、ビタミン、分化誘導剤などを含有させることができる。培地としては、例えば、MEM培地、DMEM培地などを用いることができる。培養温度は特に限定されないが、好ましくは25〜40℃、より好ましくは36〜38℃である。培養時間は特に限定されないが、抗生剤を添加した培地では、好ましくは2〜14日間、より好ましくは2〜7日間、さらに好ましくは2〜4日間、特に好ましくは2〜3日間である。培地交換した後も同様である。本発明の骨髄細胞の生産方法は、上記培養方法により得られた骨髄細胞を回収することを特徴とするものである。当該骨髄細胞を回収する方法としては、例えば、上記培養方法により得られた培養物を、トリプシンやr(リコンビナント)−プロテアーゼなどの細胞剥離剤を用いて一定時間処理し、血清などで中和して、骨髄細胞を回収する方法などが挙げられる。本発明の、特定の抗生剤を特定の濃度存在させて骨髄細胞を培養する方法は、細胞の増殖、分化に影響を与えないことから、雑菌の汚染なく、目的の細胞数を効率的に確保することができる。また、当該方法により得られた骨髄細胞は、本来細胞が持っている能力を損なうことなく、患部に移植することが可能である。本発明によれば、例えば患者から採取した骨髄細胞を培養する場合などにおいて、細胞の増殖及び種々組織への分化に影響を与えることなく、雑菌汚染を防いで、骨髄細胞を培養することができ、目的とする細胞を、リスクを少なく、効率的に確保することができる。以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。(実施例1)カナマイシンまたはゲンタマイシンをヒト由来骨髄細胞培養系に添加した場合において増殖に与える影響患者から骨髄液を3ml採取し、この骨髄液に、ヘパリン濃度が10U/mlとなるようにヘパリンを添加した。骨髄液1.5ml分をT75フラスコ(ファルコン製)に播種し、MEMα培地(インビトロジェン社製)+15%ウシ胎児血清培地にて、14日間培養した。この間、培地交換は週2回実施した。その後、細胞をトリプシン処理し、回収後、当該細胞を新しいT75フラスコに細胞数1×105個播種した。これに、カナマイシンまたはゲンタマイシンを種々濃度で添加し、7日間培養した。対照として、上記抗生剤を添加しないものを用いた。培地交換は週2回(火曜、木曜)行った。7日間経過後、細胞をトリプシン処理して剥がし、その細胞数をヌクレオカウンター(ケモスタティクス社)で測定した。なお、各濃度につき2フラスコずつ測定し、その平均値を算出した。カナマイシンを用いた場合の結果を図1に、ゲンタマイシンを用いた場合の結果を図2に示す。その結果、カナマイシンでは500μg/mlの添加濃度までは、細胞の増殖に影響がなかった。ゲンタマイシンでは100μg/mlまでは、細胞の増殖に影響がなかった。従って、上記濃度までは毒性がないと判断された。(実施例2)カナマイシン及びゲンタマイシンを骨誘導培養系に添加した場合において分化に与える影響実施例1にて増殖させた細胞を骨分化誘導系に供した。当該細胞をMEMα培地+15%ウシ胎児血清培地に懸濁し、12穴培養プレートに2×104個/Wellになるように細胞を播種(各Wellに2ml細胞懸濁液を添加)した。播種後、カナマイシンまたはゲンタマイシンを、それぞれのWellに種々濃度になるように添加した。また、比較のために、後述の3種混合抗生剤を規定量添加したもの、及び、抗生剤を添加しないものも用いた。24時間経過後に、骨への分化誘導を促す3種類の添加物(β−グリセロリン酸:CALBIOCHEM 35675、アスコルビン酸リン酸エステル:WAKO 013−12061、デキサメサゾン:SIGMA D8893)をそれぞれ10mM、50μg/mL、100nMになるように添加し、これを骨分化誘導群とした。また、β−グリセロリン酸のみを添加したものを非誘導群とした。これらを5%CO2、37℃のインキュベーター中で2週間培養した。2週間後、細胞を破砕し、骨への誘導指標である細胞内のALP活性(アルカリフォスファターゼ活性)を測定した。この値が大きいほど、骨分化誘導が進んでいることを示す。その結果を図3に示す。なお、図3において、「K10、K100、K500」はそれぞれ、カナマイシン10μg/ml、カナマイシン100μg/ml、カナマイシン500μg/mlを示し、「G5、G50、G100」はそれぞれ、ゲンタマイシン5μg/ml、ゲンタマイシン50μg/ml、ゲンタマイシン100μg/mlを示す。「AB」は3種混合抗生剤(抗生物質−抗真菌剤(×100)15240−062、インビトロジェン社製)規定量(ペニシリン100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/ml、アンフォテリシンB0.25μg/ml)を示す。「Cont」は抗生剤を添加せずに分化誘導したものを示し、「Cont(−)」は抗生剤を添加せず、かつ分化誘導しなかったものを示す。その結果、カナマイシンでは100μg/mlまでは骨誘導活性に影響がなかった。ゲンタマイシンでは50μg/mlまでは骨誘導活性に影響がなかった。また、3種混合抗生剤(抗生物質−抗真菌剤(×100)15240−062、インビトロジェン社製)は、上記規定量を添加すると、骨誘導を大きく阻害した(抗生剤無添加の約1/3の値)。(実施例3)カナマイシン及びゲンタマイシンを軟骨誘導培養系に添加した場合において分化に与える影響実施例1にて増殖させた細胞を軟骨誘導系に供した。培養した細胞を回収し、再度DMEM−ハイグルコース培地(インビトロジェン社製)に、軟骨分化誘導を促す下記の添加物を加えた培地で、間葉系細胞濃度が4×105個/mlになるように懸濁した。この細胞懸濁液を0.5mL取り、15mLファルコンチューブに入れた。その後、遠心分離操作(1000rpm、10min、4℃)を行ったところ、細胞がペレット状になったが、そのままチューブの蓋を緩めて、5%CO2、37℃のインキュベーター中で3週間培養した。分化誘導を開始した時点で、抗生剤としてカナマイシンを100μg/ml、ゲンタマイシンを50μg/ml添加し、実験を行った。比較用サンプルとしては、各抗生剤を添加しないものを用いた。なお、この間に培地は週2回(火曜、金曜)全量(0.5mL)交換した。培養終了後は、球形となった細胞塊を回収し、組織固定用ホルマリンで固定し、軟骨基質染色剤であるトルイジンブルー染色を行った。その結果を図4に示す。紫色はメタクロマジーが起こっていることを示し、また、メタクロマジーは軟骨に分化すると起こる異染色である。組織切片を顕微鏡観察した結果、軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が、抗生剤添加及び無添加で同程度観察され、上記抗生剤は、この濃度において軟骨組織形成に影響を与えないことが確認された。<軟骨分化誘導の際に用いた添加物>以下において、培地とは、上記に示したDMEM−ハイグルコース培地を指す。TGFβ3ヒトリコンビナント:フナコシ RS−0032−43培地に最終濃度10ng/mLで添加デキサメサゾン:SIGMA D8893培地に最終濃度100nMで添加アスコルビン酸リン酸エステル:WAKO 013−12061培地に最終濃度50μg/mLで添加ピルビン酸ナトリウム:コスモバイオ 25−000−C1培地に最終濃度100μg/mLで添加L−プロリン:コスモバイオ 33582培地に最終濃度40μg/mLで添加ITS−プラス:コスモバイオ 354352培地に市販原液を1/100量添加本発明によれば、特定の抗生物質(カナマイシン、ゲンタマイシン)を選択し、かつ、これらを特定濃度用いて骨髄細胞を培養することにより、例えばヒト由来の骨髄細胞を培養する過程などにおいて、雑菌の汚染を防ぎ、細胞の増殖、分化に影響を与えずに(細胞への悪影響がなく)、骨髄細胞を培養することができる。そのため、骨髄から取りだして培養した細胞を再びヒトの体内などに戻す場合、細胞が本来有している能力を損なうことなく移植でき、治療効果の向上につながるものである。カナマイシンをヒト由来骨髄細胞培養系に添加した場合において増殖に与える影響を示した図である。ゲンタマイシンをヒト由来骨髄細胞培養系に添加した場合において増殖に与える影響を示した図である。カナマイシン及びゲンタマイシンを骨誘導培養系に添加した場合において分化に与える影響を示した図である。カナマイシン及びゲンタマイシンを軟骨誘導培養系に添加した場合において分化に与える影響を示した図である。0.1〜50μg/mLのゲンタマイシン、または0.1〜100μg/mLのカナマイシンの存在下、骨髄細胞を培養液中で培養することを特徴とする骨髄細胞の培養方法。5〜50μg/mLのゲンタマイシン、または5〜100μg/mLのカナマイシンの存在下、骨髄細胞を培養液中で培養することを特徴とする請求項1記載の骨髄細胞の培養方法。骨髄細胞が間葉系幹細胞である、請求項1または2記載の培養方法。該骨髄細胞が、骨または軟骨組織に分化しうるものである、請求項1または2記載の培養方法。骨髄細胞が、骨髄液から分離、回収されたものである、請求項1または2記載の培養方法。請求項1〜5のいずれかに記載の培養方法により得られた骨髄細胞を回収することを特徴とする骨髄細胞の生産方法。 【課題】 細胞の増殖、分化能力を損なうことなく、効率的に骨髄細胞を培養する方法の提供。【解決手段】 0.1〜50μg/mLのゲンタマイシン、または0.1〜100μg/mLのカナマイシンの存在下、骨髄細胞を培養液中で培養することを特徴とする骨髄細胞の培養方法。また、上記培養方法により得られた骨髄細胞を回収することを特徴とする骨髄細胞の生産方法。【選択図】 なし


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