タイトル: | 公開特許公報(A)_シリカ凝集性の評価法及びゴム組成物 |
出願番号: | 2004227370 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 19/00 |
畦地 利夫 大江 裕彰 JP 2006047070 公開特許公報(A) 20060216 2004227370 20040803 シリカ凝集性の評価法及びゴム組成物 東洋ゴム工業株式会社 000003148 蔦田 璋子 100059225 蔦田 正人 100076314 中村 哲士 100112612 富田 克幸 100112623 畦地 利夫 大江 裕彰 G01N 19/00 20060101AFI20060120BHJP JPG01N19/00 B 3 OL 9 本発明は、シリカを含有するゴム組成物におけるシリカ凝集性の評価法及びその評価法に基づき分類されたシリカを含有するゴム組成物に関する。 自動車用タイヤに用いられるトレッド用ゴム組成物は、低燃費性のほかに湿潤路面での制動性能や操縦安定性(ウェットグリップ性)、耐摩耗性が求められており、補強性フィラーとしてシリカを配合して低燃費性やグリップ性を高めることが行われている。例えば、チッ素吸着比表面積が特定範囲にあるシリカの配合、Δ熱重量減少率とCTABとが特定の関係にあるシリカを配合したタイヤトレッド用ゴム組成物など、多くのシリカを配合したゴム組成物が開示されている(特許文献1〜3)。 しかし、シリカはポリマーとの親和性が低く、表面官能基のシラノール基同士の水素結合による自己凝集性が高いことから、ゴム中への均一な分散が容易でなく、シリカ配合の有効性を十分発揮できず、またゴムとの混合性や加工性が劣るという問題を有し、シリカの分散性を向上することがシリカ配合の命題となっている。 従来、シリカの特性評価は、カーボンブラックと同様に窒素吸着比表面積(N2SA)やCTAB、DBP吸油量などのコロイダル特性による分類が行われてきたが、このコロイダル特性によるシリカの評価は、シリカ配合のゴム物性に大きく影響すると考えられるシリカの凝集状態を必ずしも反映しているとは言えず、シリカの凝集性や分散状態をより的確に把握することができるシリカ特有の評価法が求められている。また、このような新たな評価法により分類され、選択されたシリカを配合することで、シリカの分散性を良好にしてシリカ特有のゴム物性を発揮することのできるゴム組成物の開発が必要とされている。特開2002−363346号公報特開2003−55503号公報特開2003−155383号公報 そこで、本発明者らは、シリカの分類を従来のカーボンブラックに適用されていたコロイダル特性とは異なった見地からの検討を行い、すなわちペイン効果として知られているようにゴム物性に影響するシリカの凝集状態を反映する特性について検討した結果、未加硫ゴムの粘弾性特性から加硫後ゴム組成物のシリカ凝集状態を推定することで、それぞれのゴム組成物に適したシリカを分類することに着目したものである。 本発明は、シリカ配合ゴム組成物の加硫後ゴム物性が反映されるシリカの凝集状態を未加硫ゴムの粘弾性特性から得ることができる新規なシリカ分類のためのシリカ凝集性の評価法を提供するものであり、これによりそれぞれのゴム組成物に対して分散性を良好にする最適なシリカの分類、選択を可能とするとともに、この評価法に基づいて選択されたシリカを含有しシリカの特長を最大限に発揮することのできるゴム組成物を提供することを目的とするものである。 本発明は、シリカを含有するゴム組成物の加硫後におけるシリカ凝集性を評価するための評価法であって、未加硫ゴム組成物の周波数1Hz以下、動歪1%以下での測定条件で測定された粘弾性特性から得られる貯蔵弾性率に基づき、次式(1)で表される貯蔵弾性率の比ΔG’を前記シリカ凝集性の指標とすることを特徴とするシリカ凝集性の評価法である。 ΔG’=G’2/G’1……(1) 式中、G’1は未加硫ゴムの60℃における粘弾性試験による貯蔵弾性率、G’2は未加硫ゴムに60℃×2時間の熱負荷をかけた直後の粘弾性試験による貯蔵弾性率を示す。 本発明によると、シリカ配合ゴム組成物の未加硫ゴムの粘弾性特性から、加硫後のシリカの凝集状態を予測することができ、ゴム組成物に対して分散性を良好にする最適なシリカを分類し、選択することができる。これにより、ゴム組成物のシリカ分散性を良好にするシリカの選択を容易にし、シリカの特長を最大限に発揮することのできるシリカ配合ゴム組成物を容易に実現することができる。すなわち、本評価法は、各種のポリマーや配合剤により構成されるゴム組成物とシリカとの親和性(相性)の判断を未加硫ゴムの段階で与えるものである。 また、本発明のゴム組成物は、シリカを含有するゴム組成物であり、請求項1に記載の式(1)により得られた貯蔵弾性率の比ΔG’が1.0〜1.3の範囲にあることを特徴とし、前記範囲に入るシリカを選択することで、ゴム組成物のシリカの凝集を防いで分散性を良好にしシリカの持つ特長を発揮するものとなる。 このゴム組成物の場合、前記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が100m2/g以上であると、シリカの粒径を小さく保つことでゴム組成物の強度、耐摩耗性を確保し、かつΔG’を1.0〜1.3の範囲として小粒径シリカの凝集を防いで分散性を良好にし、グリップ性や低転がり抵抗などシリカの有効性を発現しタイヤトレッドなどの用途に適したゴム組成物を得ることができる。 本発明のシリカ凝集性の評価法によると、シリカ配合の未加硫ゴムの粘弾性特性から加硫後ゴム組成物のシリカ凝集性を予測し、そのゴム組成物に対して分散性の良好なシリカを選択し使用することができる。すなわち、従来のコロイダル特性に加えて新規なシリカ凝集性の指標となるΔG’による分類法を用いることで、ゴム組成物を構成するポリマーや配合剤との親和性(相性)を向上し、ポリマーとの物理、化学的な絡み合いや結合を大幅に改善してシリカの特長を活用し、ウェットグリップ性能や低転がり抵抗と耐摩耗性などの諸性能をバランスさせることが容易となる。 以下に、本発明について詳細に説明する。[シリカ凝集性の評価法] 本発明のシリカ凝集性の評価法に適用されるゴム組成物はシリカを含有するものであれば、ゴム組成物の配合系や加硫系、用途などに特に制限を受けることはない。 本発明のシリカ凝集性の評価法は、シリカを含有する未加硫ゴムの周波数1Hz以下、動歪1%以下での測定条件で測定される貯蔵弾性率の比ΔG’を求めるものである。 前記貯蔵弾性率の比ΔG’は、次式(1)で定義される。 ΔG’=G’2/G’1……(1) 式中、G’1は未加硫ゴムの60℃における粘弾性試験による貯蔵弾性率、G’2は未加硫ゴムに60℃×2時間の熱負荷をかけた直後の粘弾性試験による貯蔵弾性率を示す。 G’1は未加硫ゴムの定常状態(歪未負荷)における粘弾性特性であり、同一試料に60℃×2時間の熱負荷を与えた直後の粘弾性特性G’2との比を取ることで、熱履歴を受ける前後のシリカ凝集の相対比較により熱によって再凝集したゴム組成物中のシリカの凝集状態の指標となり、シリカをゴム組成物中に混合した段階での判断を可能とし、実用に即したものとなる。 このΔG’が大きいほど加硫後ゴム組成物でのシリカの凝集が多くなってシリカの分散性が劣ることを示し、ゴム組成物のポリマーや構成成分に対して分散性のよいシリカをΔG’の値に従って分類し選択することができる。 上記未加硫ゴムの粘弾性特性の測定は、例えば、アルファテクノロジーズ社のRPA−2000等の粘弾性測定装置により行うことができるが、これに限定されるものではない。つまり、異なる温度における未加硫ゴムの貯蔵弾性率を評価できる測定装置であればよい。 未加硫ゴムの貯蔵弾性率G’の測定は、これらの測定装置を用いて、公知の粘弾性特性の測定法に従い複素弾性率を測定し、その複素弾性率の実数部としてG’が求められる。この場合、測定中に加硫反応が進行しないように、加硫温度未満に測定温度を調整すればよい。 本発明の評価対象となるゴム組成物は、そのゴム成分として天然ゴム(NR)、各種のスチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などのジエン系ゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)などのオレフィン系ゴム、フッ素ゴム(FKM)、エピクロロヒドリンゴム(CO)などの各種合成ゴムが挙げられ、それらの1種類以上が使用できる。 ゴム組成物に配合されるシリカは、通常のゴム充填剤として用いられる湿式シリカ、乾式シリカ、変性シリカなどであり、従来のコロイダル特性による特性値に制限を受けることなく、その配合量は通常のゴム組成物に用いられるシリカ配合量であり、例えばゴム成分100重量部に対して10〜100重量部程度であって、シリカを多くしすぎると耐摩耗性や加工性を低下させる。 シリカ配合のゴム組成物にはゴム用のシランカップリング剤を併用することが一般的であり、本発明においてもシランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤としては、ビス−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、シリカ含有量の1〜20重量%が使用される。 また、通常ゴム組成物には、シリカ以外にカーボンブラックなどの補強性フィラー、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤、プロセスオイル、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫助剤などの各種配合剤が配合され用いられるが、これらの配合剤を含むゴム組成物も本発明の評価法に適用されるのは勿論である。 ゴム組成物は、ゴム成分とシリカ、必要に応じて配合された配合剤をオープンロール、密閉式混合機(バンバリーミキサー、ニーダー等)により混練されたものが用いられ、混練直後に採取されたゴム組成物が測定に適している。[ゴム組成物] 本発明のゴム組成物は、シリカを含有するゴム組成物であり、上記式(1)により得られた貯蔵弾性率の比ΔG’が1.0〜1.3の範囲にあることを特徴としている。 ΔG’が1.3を越える場合は、ゴム組成物が熱履歴を受けることでシリカが再凝集しシリカの大きな凝集塊を生じやすくし、ゴム中におけるシリカの分散性を低下させ、加工性にも悪影響を与えるものとなる。 従って、ΔG’が1.0〜1.3の範囲になるシリカを含有するゴム組成物は、シリカの再凝集を防いでミクロ分散性を向上し、ポリマーとシリカの結合を強くしてシリカの持つ特長を発揮するものとなり、例えばウェットグリップ性能や低転がり抵抗性を向上するものとなる。 また、このΔG’が1.0〜1.3の範囲になるシリカを用いたゴム組成物の場合、CTABが100m2/g以上にあるシリカが好ましく、シリカの粒径を小さく保つことでポリマーとの結合を高め、ゴム組成物の補強性を向上して強度、耐摩耗性を確保しつつ、シリカの再凝集を防いで分散を良好にしグリップ性や低転がり抵抗などシリカの有効性を発現することができ、タイヤトレッドなどの用途に適したゴム組成物が得られる。 CTABが100m2/g未満になると、耐摩耗性が悪化し、またグリップ性も低下し、ゴム組成物のバランスのよい性能が得られなくなる。また、CTABが大きくなると、転がり抵抗や低温特性が低下し、加工性も悪化する傾向にあるのでCTABの上限は200m2/g程度とすることが好ましい。 以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 ゴム成分(天然ゴム、RSS#3)、シリカ(A〜C)、及びシランカップリング剤とを下記表1に示す配合処方(重量部)にて共通の配合剤と共に配合し、容量1.7リットルのバンバリーミキサーを用いて混合し実施例及び比較例の各ゴム組成物を調整した。 用いたシリカ(A〜C)とシランカップリング剤は下記の通りである。 シリカ(A):東ソー・シリカ製「ニプシールAQ」、CTAB=187m2/g シリカ(B):東ソー・シリカ製「ニプシールER」、CTAB=78m2/g シリカ(C):Rhodia製「Zeosil 1115MP」、CTAB=115m2/g シランカップリング剤:デグッサ製「Si69」 なお、シリカのCTABはASTM D3765−92記載の方法に準拠して測定した。 共通の配合剤としては、亜鉛華を3重量部、ステアリン酸を3重量部、老化防止剤6Cを2重量部、ワックスを1.5重量部、イオウを2重量部、加硫促進剤CBSを1.2重量部とした。 得られた各ゴム組成物の未加硫ゴムの粘弾性特性をアルファテクノロジーズ社のRPA−2000を用いて測定し、上記式(1)に定義される貯蔵弾性率の比ΔG’を求め、さらに加硫ゴムのシリカ分散性、及びウェットグリップ性能と耐摩耗性を下記方法に従い評価した。その結果を表1に示す。粘弾性特性の測定条件は、周波数=0.1Hz、動歪=0.8%である。[シリカ分散性] 各ゴム組成物を試験用ロールを用いてシートにし、15×15×1cmの試験用モールドを用いて、150℃×30分間でプレス加硫を行い、これをミクロトームを用いて超薄切片を作成し、TEMを用いてシリカの分散状態を観察し、次のように評価した。径が100μm以上の凝集塊が存在せず、シリカの分散性が良好であるを「○」、シリカは分散しているが径が100μm以上の凝集塊が所々に存在するを「△」、シリカの径が100μm以上の凝集塊が多数存在し分散不良であるを「×」として、表1に示した。[グリップ性能] ロスタンレー社製のポータブルスキッドテスターを用いてウエット面でのスキッド抵抗を測定し、比較例3を100として指数表示した。値が大きいほどグリップ性能に優れ良好である。[耐摩耗性] ランボーン摩耗試験機を用いて、温度23℃、スリップ率50%で摩耗損失量を測定し、比較例3を100として指数表示した。値が大きいほど耐摩耗性が良好である。 表1に示す結果から明らかに、本発明の評価法によるシリカ凝集性の指標ΔG’とシリカの分散性とは良好な相関を示し、ΔG’がシリカ凝集性の評価法としての有効であり、ΔG’の値が1.30を境界としてゴム組成物にシリカの凝集塊を多数存在するようになり分散不良を生じることが分かる。 また、シリカのCTABが100m2/g以上で、ΔG’が規定範囲にある実施例1は、ΔG’が規定外の比較例1よりグリップ性能と耐摩耗性が共に向上し、また、シランカップリング剤を使用した実施例2は、シリカの分散性向上による効果が奏されグリップ性能と耐摩耗性をさらに向上することができる。 本発明は、加硫ゴムのシリカの凝集状態、分散性を未加硫ゴムから判断する評価法として、各種配合系、加硫系の各種用途に用いられるシリカ配合ゴム組成物に適用することができ、ゴム組成物に最適なシリカを選択しシリカの特長を有効に発揮するゴム組成物とすることができる。 シリカを含有するゴム組成物の加硫後におけるシリカ凝集性を評価するための評価法であって、 未加硫ゴム組成物の周波数1Hz以下、動歪1%以下での測定条件で測定された粘弾性特性から得られる貯蔵弾性率に基づき、次式(1)で表される貯蔵弾性率の比ΔG’を前記シリカ凝集性の指標とする ことを特徴とするシリカ凝集性の評価法。 ΔG’=G’2/G’1……(1) 式中、G’1は未加硫ゴムの60℃における粘弾性試験による貯蔵弾性率、G’2は未加硫ゴムに60℃×2時間の熱負荷をかけた直後の粘弾性試験による貯蔵弾性率を示す。 シリカを含有するゴム組成物であり、請求項1に記載の式(1)により得られた貯蔵弾性率の比ΔG’が1.0〜1.3の範囲にある ことを特徴とするゴム組成物。 前記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が100m2/g以上である ことを特徴とする請求項2に記載のゴム組成物。 【課題】 シリカ配合ゴム組成物の加硫後ゴム物性が反映されるシリカの凝集状態を未加硫ゴムの粘弾性特性から得ることができる新規なシリカ凝集性の評価法を提供する。 【解決手段】 未加硫ゴム組成物が周波数1Hz以下、動歪1%以下での測定条件で測定された粘弾性特性から得られる貯蔵弾性率に基づき、次式(1)で表される貯蔵弾性率の比ΔG’を前記シリカ凝集性の指標とする。 ΔG’=G’2/G’1……(1) 式中、G’1は未加硫ゴムの60℃における粘弾性試験による貯蔵弾性率、G’2は未加硫ゴムに60℃×2時間の熱負荷をかけた直後の粘弾性試験による貯蔵弾性率を示す。 【選択図】 なし