タイトル: | 公開特許公報(A)_ジアセチルスペルミンの測定方法および測定試薬キット |
出願番号: | 2004217804 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 33/53,G01N 33/493,G01N 33/50,G01N 33/531,G01N 33/543,G01N 33/553,G01N 33/574 |
川喜田 正夫 平松 恭子 榎本 昌泰 小坂 美恵子 JP 2006038594 公開特許公報(A) 20060209 2004217804 20040726 ジアセチルスペルミンの測定方法および測定試薬キット アルフレッサファーマ株式会社 000231394 南條 博道 100104673 川喜田 正夫 平松 恭子 榎本 昌泰 小坂 美恵子 G01N 33/53 20060101AFI20060113BHJP G01N 33/493 20060101ALI20060113BHJP G01N 33/50 20060101ALI20060113BHJP G01N 33/531 20060101ALI20060113BHJP G01N 33/543 20060101ALI20060113BHJP G01N 33/553 20060101ALI20060113BHJP G01N 33/574 20060101ALI20060113BHJP JPG01N33/53 SG01N33/493 AG01N33/50 BG01N33/531 AG01N33/543 581DG01N33/543 583G01N33/553G01N33/574 Z 8 1 OL 15 2G045 2G045BB52 2G045CB03 2G045DA19 2G045FA29 2G045FB03 2G045FB15 2G045GC10 本発明は、金コロイド凝集反応を利用するジアセチルスペルミンの測定方法に関する。より詳細には、検体中のジアセチルスペルミンをng/mL単位で高感度にかつ短時間に測定することを可能にする技術に関する。 ジアセチルスペルミンは、尿中ポリアミン成分の1種であり、健常者尿中では尿中総ポリアミンの0.6%を占めるにすぎない微量成分である。しかし、癌患者の尿中においては、他の成分と比較して高い頻度で排泄量が増加し、しかも増加の割合も際立って高い。そのため、ジアセチルスペルミンは腫瘍マーカーとして注目されている(非特許文献1および2参照)。さらに、悪性腫瘍の治療効果の判定や予後予測の指標としても期待されている(非特許文献2)。 近年、臨床検査などの各種検査では自動化および測定時間の短縮が図られている。例えば、臨床検査においては、生体試料中の微量物質を測定するために免疫反応を利用する免疫測定方法が広く用いられている。免疫測定法としては、RIA法、EIA法、免疫比濁法、ラテックス凝集法、金属コロイド凝集法などの多くの方法がある。この中でもラテックス凝集法および金属コロイド凝集法は、反応液の分離や洗浄を行う必要がないため、自動化に適している。しかし、ジアセチルスペルミンなどの低分子物質(以下、ハプテンという)の測定においては、通常の免疫測定とは異なり競合法による免疫反応を利用するため、その測定を高感度かつ短時間に行うには困難が伴い、自動化の妨げとなっている。そのため、従来、生体試料中のng/mL濃度のハプテンを測定する場合、RIA法やEIA法で測定されることが多く、自動化に適さず、簡便に測定できなかった。このように、ハプテン測定においても、高感度かつ短時間で測定が可能な、自動化に適した技術が望まれている。 金属コロイド凝集法によるハプテンの測定用試薬として、血中ハロペリドール測定用試薬「マーキット(登録商標)Gハロペリドール」および血中ブロムペリドール測定用試薬「マーキット(登録商標)Gブロムペリドール」が、大日本製薬株式会社(製造、株式会社アズウェル)より販売されている。これらによれば、血液中のハロペリドールおよびブロムペリドールを自動分析機により、高感度かつ短時間に測定することができる(非特許文献3および4)。しかしながら、腫瘍マーカーとして注目されているジアセチルスペルミンを金属コロイド凝集法により測定する方法については未だ知られていない。 尿中のジアセチルスペルミンの測定については、ELISAに用いるためのジアセチルスペルミン特異抗体の製法が報告されている(非特許文献5)。また、ジアセチルスペルミンの測定用試薬の一つとして、「尿中ジアセチルスペルミン測定試薬用ELISAキット」が、株式会社トランスジェニック(販売、フナコシ株式会社)より市販されている。このキットは、ELISA法を行うための試薬であり、構成品も10種と多く、測定操作方法は煩雑であり、自動化および短時間での測定は困難である。 以上のとおり公知の測定法では、ジアセチルスペルミンを高感度かつ短時間で測定を行うことができず、自動化も困難であった。スギモト(Sugimoto, M.)ら,ジャーナル・オブ・キャンサー・リサーチ・クリニカル・オンコロジー(J. Cancer Res. Clin. Oncol.),1995年,第121巻,p.317−319ヒラマツ(Hiramatsu, K.)ら,ジャーナル・オブ・キャンサー・リサーチ・クリニカル・オンコロジー(J. Cancer Res. Clin. Oncol. ),1997年,第123巻,p.539−545血中ハロペリドール測定用試薬「マーキット(登録商標)Gハロペリドール」添付文書血中ブロムペリドール測定用試薬「マーキット(登録商標)Gブロムペリドール」添付文書ヒラマツ(Hiramatsu, K. )ら,ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J. Biochem.),1998年,第124巻,p.231−236 本発明は、測定感度が良好で、測定時間が短縮された、B/F分離を必要としない自動化に適したジアセチルスペルミンの測定法およびそのための測定キットを提供することを目的とする。 上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、まず、ジアセチルスペルミンを含有する検体と、塩とジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合した後、抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合し、金コロイドの免疫反応凝集による吸光度変化を測定することによって、ng/mL濃度のジアセチルスペルミン測定を、高感度かつ短時間に行うことが可能であることを見出し、本発明を完成した。 詳細には、本発明においては、予め検体とジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質とを混合し、次いで抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを添加することによって抗原抗体反応を開始し、検体中の被測定物質であるジアセチルスペルミンとジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質との間で抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドが競合反応する、一段階のみの免疫競合反応とした。 本発明は、検体中のジアセチルスペルミンの量を測定する方法を提供し、この方法は、(a)該検体と、塩およびジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合する工程、(b)該混合液に、抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合する工程、および(c)該ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質と抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドの免疫反応凝集による吸光度変化を、450〜580nmで2回以上測定した吸光度、または、450nm〜580nmを主波長および620nm〜800nmを副波長とする二波長で2回以上測定した吸光度より求める工程を含む。 好適な実施態様では、上記工程(a)から(c)が15分以内で行われる。さらに好適な実施態様では、10分以内で行われる。 他の好適な実施態様では、上記混合液中に終濃度として、0.3〜10%の塩、10〜1000mMの緩衝剤、および5〜3000ng/mLのジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有するように、これら物質が第1試薬に含有される。 好適な実施態様では、ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質は、アセチルスペルミン結合ウシ血清アルブミンである。 好適な実施態様では、上記第1試薬は、平均分子量5,000から500,000の水溶性高分子物質を0.01%〜10%(W/V)含有する。 他の好適な実施態様では、抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドの抗ジアセチルスペルミン抗体は、アセチルスペルミン結合ウシ血清アルブミンを動物に投与することによって生成されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、そして上記ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質の蛋白質部分と反応しない。 好適な実施態様では、上記検体は、尿である。 本発明はまた、上記の方法を実施するために使用される、塩およびジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する第1試薬、および抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を含むジアセチルスペルミン測定用試薬キットを提供する。 本発明の検体中のジアセチルスペルミンの量を測定する方法は、(a)該検体と、塩およびジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合する工程、(b)該混合液に抗ジアセチルスペルミン類似化合物抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合する工程、および(c)該ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質と抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドの免疫凝集による吸光度変化を、450nm〜580nmおよび620nm〜800nmの二波長で2回以上測定した吸光度変化量より求める工程を含み、この方法によれば、ng/mLのジアセチルスペルミンが短時間に精度良く測定できる。また、洗浄などの工程が不要であるため、自動化に適している。したがって、本発明の方法は、ジアセチルスペルミン測定の臨床検査分野などでの迅速化および省力化に寄与することができる。 本発明の検体中のジアセチルスペルミンの量を測定する方法は、(a)該検体と、塩およびジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合する工程、(b)該混合液に、抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合する工程、および(c)該ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質と抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドの免疫反応凝集による吸光度変化を、450nm〜580で2回以上測定した吸光度、または、450nm〜580nmを主波長および620nm〜800nmを副波長とする二波長で2回以上測定した吸光度より求める工程を含む。 (検体) 本発明において、測定に供する検体としては、血清、血漿、尿、または髄液などの生体試料、あるいは環境中より得られたサンプルまたはその抽出物などが挙げられる。本発明においては、尿が特に好適である。 (第1試薬) 本発明の方法で使用される第1試薬は、塩およびジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する。 本発明において、ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質とは、ジアセチルスペルミン類似化合物と免疫原性蛋白質との結合物をいう。ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質(結合蛋白質)は、測定対象のジアセチルスペルミンと抗ジアセチルスペルミン抗体に対して競合反応し得るものであれば、ジアセチルスペルミン類似化合物として、どのような物質が蛋白質に結合したものであってもよい。蛋白質と結合させるジアセチルスペルミン類似化合物としては、結合蛋白質中のジアセチルスペルミン相当部分の化学構造が可能な限り本来のジアセチルスペルミンの構造に類似しているものを選択することが望ましい。また、ジアセチルスペルミン類似化合物としては、ジアセチルスペルミンと担体タンパク質との結合に伴って、ジアセチルスペルミン分子の一部が担体分子上の官能基と化学結合を生じることにより、必然的に遊離のジアセチルスペルミンとは一部異なる構造を有するようになった化合物も含む。本発明においては、ジアセチルスペルミン類似化合物として、N−アセチルスペルミンを用いることが好ましい。また、ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質には、蛋白質1分子当たり、4〜40程度のジアセチルスペルミン類似化合物が結合していることが好ましい。 ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質の蛋白質は、ハプテンを結合させるために当該技術分野で通常用いられる免疫原性蛋白質であり、各種動物由来のアルブミン、ヘモシアニン、サイログロブリン、フィブリノーゲン、酵素などから適宜選択される。これらの蛋白質は、天然に存在する形態でジアセチルスペルミン類似化合物を結合させることもできるが、該蛋白質のアミノ酸側鎖の一部を化学修飾して改変蛋白質とした後に、ジアセチルスペルミン類似化合物との結合に供してもよい。本発明においては、ウシ血清アルブミン(BSA)のリシン残基の側鎖にメルカプトサクシニル基が付加されているメルカプトサクシニルBSAが好ましい。 上記ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質は、当業者が通常用いる方法により製造することができる。このような製造方法は、ジアセチルスペルミン類に存在するアミノ基、カルボキシル基またはチオール基などの官能基を利用して、ジアセチルスペルミン類似化合物と蛋白質とを直接または結合剤を介して化学結合させるものであり、ジアセチルスペルミン類似化合物類の構造に応じて種々のものが知られている(生化学実験法11 エンザイムイムノアッセイ、P.Tijssen著、石川栄治編、252頁、1989年、東京化学同人)。化学結合を形成させるための試薬としては、アシル化剤、アルキル化剤などが挙げられる。好ましくは、カルボキシル基を活性化することにより得られるN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、弱アルカリ条件下で用いられるマレイミド類などである。本発明においては、N−アセチルスペルミンの1級アミノ基の部分と二価性架橋剤GMBS(N−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド)のエステル部分とをアミド結合させ、生成した付加物のマレイミド部分を利用して、メルカプトサクシニルBSAに結合させることが好ましい。 第1試薬に含有されるジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質は、反応最終液中に、蛋白質濃度として、5〜3000ng/mL、好ましくは20〜500ng/mL、さらに好ましくは30〜200ng/mL含有される。ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質の量が少なすぎると、抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドとの凝集反応が生じ難い。一方、ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質の量が多すぎると、被測定物質のジアセチルスペルミンとジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質との競合反応が生じ難い。 第1試薬は、塩も含む。塩としては、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの無機塩類が挙げられる。これらは、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。これらの無機塩類の濃度は、終濃度として、通常0.3〜10%、好ましくは1〜7%、より好ましくは2〜5%である。塩濃度が0.3%よりも少ないとハプテンとの競合反応が進行し難い。一方、10%より多すぎると反応抑制が強くなり好ましくない。 また、十分な測定感度が得られるという点において、第1試薬は、凝集促進剤として、平均分子量5,000から500,000の水溶性高分子を含有することが好ましい。含有量は、通常0.01%〜10%(W/V)、好ましくは0.01〜5.0%(W/V)より好ましくは0.1〜3.0%(W/V)、さらに好ましくは1.0〜2.0%(W/V)である。水溶性高分子物質としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ポリアクリル酸、プルランなどが挙げられる。 第1試薬には、pHの維持のために適切な緩衝剤が含有され得る。緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、コハク酸緩衝液、あるいはグリシルグリシン、MES(2−(N−モノホリノ)エタンスルホン酸)、HEPES(N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N’−エタンスルホン酸)、TES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)、MOPS(3−(N−モノホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸))などのグッド緩衝液が好適に用いられる。pHは、好ましくは5.0〜9.0、より好ましくは5.5〜8.0、さらに好ましくは6.0〜7.0である。緩衝剤の使用濃度は、終濃度として、好ましくは10〜1000mM、より好ましくは50〜400mMである。 さらに、第1試薬は、アジ化ナトリウム、有機酸類、糖類、アミノ酸類、EDTAなどのキレート剤、DTTなどのSH試薬、各種動物由来のアルブミン、動物血清、γ−グロブリン、ヒトIgGやIgMに対する抗体、非イオンおよびイオン性の界面活性剤などを含有してもよい。これらの添加濃度は適宜選択できる。 (第2試薬) 本発明の方法で使用される第2試薬は、抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを含有する。 上記抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドは、金コロイドに抗ジアセチルスペルミン抗体を結合または吸着させたものであり、当業者が通常用いる方法により製造され得る。抗体はそのまま結合させても、化学処理や酵素処理後に結合させてもよい。また、金コロイドと抗ジアセチルスペルミン抗体とは、ビオチン・アビジンのような親和性のある物質や修飾PEGのような化合物を介して結合してもよい。通常、抗ジアセチルスペルミン抗体を金コロイドに結合させた後、アルブミンなどの蛋白質でブロッキング処理を行う。そのブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン(BSA)が好ましい。 抗ジアセチルスペルミン抗体は、測定対象のジアセチルスペルミンに対して特異的な免疫反応性を有するものであれば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれでもよい。通常は、測定対象のジアセチルスペルミン類似化合物と担体との結合物を動物に投与することにより産生させたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質の蛋白質部分と反応しない抗体である。ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質の蛋白質部分と反応する抗体が含まれている場合は、吸着処理などによって除くことができる。また、抗ジアセチルスペルミン抗体が、測定対象のジアセチルスペルミンに類似の化合物と反応し、測定値に影響を及ぼす場合には、その類似化合物と反応する抗体を除くことができる。このような類似化合物としては、例えば、N1−アセチルスペルミジン、N8−アセチルスペルミジン、N−アセチルスペルミン、N1,N8−ジアセチルスペルミジンなどが挙げられる。これらの類似化合物と反応する抗体を除くためには、例えば、各種のポリアミン誘導体を結合させた樹脂を用いた親和性クロマトグラフィーを利用することができる。特に好適な実施態様においては、非特許文献5に記載の方法に準じて、目的の抗体の親和性精製を行うことができる。 抗ジアセチルスペルミン抗体を製造するための上記化合物における担体としては、該化合物が免疫原となり得るものであればいずれでもよく、例えば、蛋白質やポリペプチドなどが挙げられる。具体的には、アルブミン、グロブリン、ヘモシアニン、サイログロブリン、エデスチンなどが挙げられる。その中でも、好ましいのはアルブミンであり、特に好ましいのはBSAである。また、抗ジアセチルスペルミン抗体を製造するためのハプテンと担体との結合物として、上記第1試薬に含有されるジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質、具体的には、N−アセチルスペルミンを1級アミノ基の部分で二価性架橋剤の一端にアミド結合させたのち、架橋剤の他端で担体蛋白質と結合させたものも使用され得る。本発明においては、二価性架橋剤としてGMBSを利用し、そして担体タンパク質として、BSAのリシン残基をメルカプトサクシニル化したBSA誘導体を利用することが特に好ましい。 ポリクローナル抗体は、上記のジアセチルスペルミン類似化合物と担体との結合物を抗原として使用し、この結合物を適切なアジュバントと混合して、ウサギ、モルモット、羊、山羊などのヒト以外の動物に非経口的に投与(免疫)し、血清を採取して当業者が通常用いる方法で処理することによって製造し得る。 モノクローナル抗体は、上記のように免疫された動物の脾臓細胞を採取し、当業者が通常用いるミルシュタインらの方法によって、ミエローマ細胞との細胞融合、抗体産生細胞スクリーニング、およびクローニングを行い、抗ジアセチルスペルミン抗体を産生する細胞株を樹立し、これを培養することにより製造することができる。 このようにして得られた抗ジアセチルスペルミン抗体を、上述のように金コロイドに結合または吸着させることにより、抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドが得られる。こうして得られた抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドは、特定のジアセチルスペルミンおよびジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質と特異的に結合する。 上記抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドは、反応液中での終濃度として、540nm(光路長1cm)での吸光度が1.5〜3.0となる金コロイド量であることが好ましい。金コロイドはその粒子径によって極大吸収が多少変化するが、540nm付近で極大吸収を示すため、この540nmでの吸光度に基づいて金コロイド濃度を規定することができる。より好ましい金コロイド量は、540nmでの吸光度で、1.9〜2.8であり、さらに好ましい金コロイド量は2.1〜2.6である。反応液中の抗ジアセチルスペルミン結合金コロイド量が、540nmでの吸光度で1.5より少ないと反応が進行し難く、一方、3.0より多いと試薬コストや測定精度面で好ましくない。 第2試薬には、必要に応じて、アジ化ナトリウム、糖類、有機酸類、アミノ酸類、緩衝剤、EDTAなどのキレート剤、各種動物由来のアルブミンや界面活性剤などをさらに含有させてもよい。これらの添加濃度は適宜選択できる。 (ジアセチルスペルミン量の測定方法) 本発明の方法による検体中のジアセチルスペルミン量の測定は、検体と上記第1試薬とを混合し、一定の時間後、上記第2試薬を添加して混合し、金コロイドの凝集による吸光度を、450nm〜580nmおよび620nm〜800nmの二波長で2回以上測定し、吸光度変化量を求めることによって行われる。 吸光度の測定は、好ましくは、第2試薬の添加後2分以内に一回目の吸光度測定を行い、一回目の測定より8分以内に二回目の吸光度測定を行って、一回目と二回目との吸光度差を求める。あるいは、第2試薬添加後、2分以内より吸光度測定を開始し、測定開始後8分より短い時間内での吸光度変化(時間当たり)を求めてもよい。検体と第1試薬とを混合してから全ての測定が終了するまでに要する時間は、好ましくは15分以内であり、より好ましくは10分以内である。測定温度は、好ましくは20〜45℃であり、より好ましくは30〜40℃、さらに好ましくは37℃である。 通常、ジアセチルスペルミン標準品(2濃度以上)を試料と同様の測定操作で測定して検量線を作成し、試料中のジアセチルスペルミン濃度を求める。 (ジアセチルスペルミン測定用試薬キット) 本発明のジアセチルスペルミン測定用試薬キットは、塩およびジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する第1試薬、および抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を含む。第2試薬中の抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドは、好ましくは、終濃度として540nmでの吸光度が1.5〜3.0となるように含まれる。また、本発明のジアセチルスペルミン測定用試薬キットは、検量線作成用のジアセチルスペルミンの標準品を含んでいてもよい。本発明のジアセチルスペルミン測定用測定キットは、上記測定方法において使用することが好ましく、特に好ましくは、尿中ジアセチルスペルミンの測定に使用される。 以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下の実施例において、%は、特に記載がない限り、W/V%を表す。 実施例1:アセチルスペルミン結合BSAの調製 アセチルスペルミン結合BSAは、非特許文献5に記載の方法に準じて作製した。まず、担体蛋白質であるBSA 200mgとS−アセチルメルカプト無水コハク酸 15mgとを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中で混合し、室温で30分間攪拌して、S−アセチルメルカプトコハク酸(AMS)−BSA複合体を作製した。これとは別に、二価性架橋試薬であるGMBS 45mgとN−アセチルスペルミン・3塩酸塩 147mgとをテトラヒドロフラン/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)(1:1(v/v))中で室温にて30分間混合して、アセチルスペルミン−GMS結合物を作製した。次いで、AMS−BSA 200mgにヒドロキシルアミン塩酸塩4.2mgを加え、メルカプトスクシニル−BSA(MS−BSA)とした。次いで、アセチルスペルミン−GMB結合物とMS−BSAとを混合して、N−アセチルスペルミンがアシルアミド結合した免疫抗原アセチルスペルミン−GMB−BSAを作製した。このようにしてアセチルスペルミンを担体にアシルアミド結合させることにより、ジアセチルスペルミン類似化合物を側鎖として多数持つ免疫抗原を作製した。 アセチルスペルミン結合BSAの濃度は、1mg/mLのBSA溶液の280nmにおける吸光度(光路長1cm)、A280を0.66として、A280値に基づいて算出した。 実施例2:抗ジアセチルスペルミン抗体の調製 (抗体作成) 上記実施例1で得たアセチルスペルミン結合BSAとアジュバント(初回免疫:コンプリートアジュバント、追加免疫:インコンプリートアジュバント)とを等量混和したエマルジョンを、ウサギ(New Zealand White種)背部皮下に注射することにより免疫を行った。初回免疫は1mg/羽で、そして追加免疫は1mg/羽の投与量で2週間おきに5〜6回行った。 (抗体精製) 上記の方法で免疫したウサギから採血し、得られた抗血清から、段階的な親和性精製によって高度にジアセチルスペルミン特異的な抗体を分画精製した。親和性精製については、非特許文献5に記載の方法に準じた。すなわち、抗血清をN1−アセチルスペルミン結合カルボキシトヨパールに吸着させ、樹脂に吸着する成分を溶出・回収し、この成分をさらにN8−アセチルスペルミジン結合カルボキシトヨパールに吸着させ、この樹脂に吸着しない成分を溶出し、部分精製抗体を得た。次いで、得られた部分精製抗体を、再度アセチルスペルミン結合カルボキシトヨパールに吸着させ、2mMのN1−アセチルスペルミジンを添加してもなお溶出されず、アセチルスペルミン結合カルボキシトヨパールに吸着したまま残留する成分を回収して精製抗体とした。この抗体は、ジアセチルスペルミンの類似物質として尿中に約30倍も多く存在して尿中ジアセチルスペルミンの定量を妨害する可能性があるN1−アセチルスペルミジンとの交差反応性が0.1%以下であった。 実施例3:金コロイド液の調製 95℃の蒸留水1Lに10%塩化金酸溶液2mLを攪拌しながら加え、1分後に2%クエン酸ナトリウム溶液10mLを加え、さらに20分間攪拌した後30℃に冷却した。冷却後、0.1M炭酸カリウム溶液でpH7.1に調節した。 実施例4:第1試薬の調製 上記実施例1で調製したジアセチルスペルミン結合BSA、塩化ナトリウム、およびポリエチレングリコール20000(PEG)をそれぞれ種々の濃度で含む、0.2%EDTA、0.3%トリトンX−100、0.1%BSA、0.5%ウサギ血清、および0.1%アジ化ナトリウムを含む200mM MES(pH6.2)を調製し、アセチルスペルミン結合BSAの濃度、塩化ナトリウム濃度、およびPEG濃度がそれぞれ異なる種々の第1試薬を調製した。 実施例5:抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイド試薬(第2試薬)の調製 上記実施例2で調製した抗ジアセチルスペルミン抗体を、0.05%アジ化ナトリウムを含む10mM HEPES(pH7.1)で希釈し、40μg/mLの濃度にした。この液100mLを上記実施例3で調製した金コロイド液1Lに加え、冷蔵下で2時間攪拌した。この混合物に、5.46%マンニトール、0.5%BSA、および0.05%アジ化ナトリウムを含む10mM HEPES(pH7.1)を110mL添加し、37℃で90分間攪拌し、8,000回転で40分間遠心分離し、上清を除去した。得られた残渣に、3%マンニトール、0.1%BSA、および0.05%アジ化ナトリウムを含む5mM HEPES(pH7.5)(A溶液)を約1L加え、抗体結合金コロイドを分散させた後、8,000回転で40分間遠心分離し、上清を除去した。残渣をA溶液に分散させ、この抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドの分散液を精製水で30倍希釈したときに540nmでの吸光度が1.0となるようにA溶液を添加し、抗体結合金コロイド原液とした。 さらに、抗体結合金コロイド原液をA溶液で希釈して、種々の抗体結合金コロイド濃度を有する抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイド試薬を調製した。 実施例6:ジアセチルスペルミン添加尿の調製 ジアセチルスペルミン1mg/mLを健常人ヒト尿で希釈し、種々の濃度のジアセチルスペルミンを含有する尿を調製した。 実施例7:第1試薬および第2試薬における各成分の濃度の検討 本実施例においては、第1試薬および第2試薬における各成分の濃度の検討を以下のように行った。まず、上記実施例6で調製したジアセチルスペルミン添加尿検体20μLおよび上記実施例4の第1試薬200μLを混合・攪拌し、37℃で約5分加温した。次いで、上記実施例5で調製した第2試薬50μLを添加・攪拌した後、日立7070形自動分析装置により主波長546nmおよび副波長660nmで測光ポイント18から31の二ポイント測定を行って、二ポイント間の吸光度差を求めた。測定時間は約10分間であった。 (塩濃度およびPEG濃度についての検討) 50ng/mLのアセチルスペルミン結合BSAを含む第1試薬中の塩として、塩化ナトリウムを0%〜7%の間で変化させ、尿中ジアセチルスペルミンを測定したときの吸光度変化を検討した。結果を表1に示す。なお、このとき、第1試薬中のPEG濃度は1.6%または1.8%であり、アセチルスペルミン結合BSA量は50ng/mLであり、そして第2試薬中の抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドの測定液中での吸光度は(540nm(光路長1cm))は2.22であった。 塩化ナトリウム濃度が0%の場合は、ジアセチルスペルミン濃度に依存した吸光度変化が認められず、測定できなかった。塩化ナトリウム濃度が1%〜5%と増加するに従って、ジアセチルスペルミンが0Mのときの吸光度差が小さくなった。塩化ナトリウム濃度が6%および7%の場合は、PEG濃度を1.8%にすることにより、ジアセチルスペルミンが0Mのときの吸光度差が大きくなった。このように、塩濃度が高すぎると、抗原抗体反応が抑制されるため、凝集促進のためにPEGなどの水溶性高分子物質を多く使用する必要が生じ、さらに好ましい塩濃度および好ましいPEG(水溶性高分子物質)濃度の厳密な設定が必要であった。これらのことから、塩化ナトリウム濃度が約2%の場合、ジアセチルスペルミン濃度に依存して明瞭に吸光度差が変化することがわかった。 (抗ハプテン抗体結合金コロイド量についての検討) 2%の塩化ナトリウム、1.6%のPEG、および100ng/mLのアセチルスペルミン結合BSAを含む第1試薬を用い、そして測定液における540nm(光路長1cm)の吸光度が1.5〜3.0となるような量で抗ハプテン抗体結合金コロイド(抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイド)を含む第2試薬を用いて、尿中ジアセチルスペルミンを測定した。結果を表2に示す。 ジアセチルスペルミンが0Mのときの吸光度差が、抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイド量の増加に従って大きくなった。金コロイド量が少ない場合は、ジアセチルスペルミン濃度に依存的な吸光度差の変化(競合反応の進行)が小さいため好ましくない。金コロイド量が多い場合は使用可能であるが、試薬のコストや測定精度の面で好ましくない。これらの結果から、第2試薬中の金コロイド量は、測定液における540nm(光路長1cm)の吸光度が約2.5となる場合が好適であることがわかった。 (ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質の量についての検討) 第1試薬中の競合物質であるハプテン結合蛋白質(アセチルスペルミン結合BSA)量を50ng/mL〜200ng/mLまで変化させて、尿中ジアセチルスペルミンを測定した。結果を表3に示す。このときの抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイド量は、測定反応液中で540nm(光路長1cm)の吸光度が2.5となる濃度であった。 アセチルスペルミン結合BSA量に依存して、ジアセチルスペルミンが0Mのときの吸光度差が大きくなったが、いずれの濃度においても尿中ジアセチルスペルミン濃度に応じた吸光度差の低下が認められ、測定可能であることがわかった。 実施例8:尿中ジアセチルスペルミンの測定 100ng/mLのアセチルスペルミン結合BSA、2%の塩化ナトリウム、および1.8%のPEGを含む第1試薬と、測定反応液中で540nm(1cm)の吸光度が2.5となる濃度の抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを含む第2試薬とを用いて、尿中ジアセチルスペルミンを測定した。結果を図1に示す。図1から明らかなように、尿中ジアセチルスペルミン濃度に応じた吸光度差の低下が認められた。このように、ジアセチルスペルミンをng/mLからμg/mLまでの範囲で測定できることがわかった。 本発明の方法によれば、ng/mLからμg/mLまでの範囲のジアセチルスペルミンが短時間に精度良く測定できる。また、洗浄などの工程が不要であるため、自動化に適している。したがって、本発明の方法は、ジアセチルスペルミン測定の臨床検査分野などでの迅速化および省力化に寄与することができる。さらに、ジアセチルスペルミンは、腫瘍マーカーとしてだけではなく、悪性腫瘍の治療効果の判定や予後予測の指標としても期待されているため、本発明の方法は、臨床検査分野において非常に有用であり得る。尿中ジアセチルスペルミンの濃度と本発明の方法によって測定した吸光度差との関係を示すグラフである。 検体中のジアセチルスペルミンの量を測定する方法であって、(a)該検体と、塩およびジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合する工程、(b)該混合液に抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合する工程、および(c)該ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質と該抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドの免疫反応凝集による吸光度変化を、450〜580nmで2回以上測定した吸光度、または、450nm〜580nmを主波長および620nm〜800nmを副波長とする二波長で2回以上測定した吸光度より求める工程を含む、方法。 前記工程(a)から(c)が15分以内で行われる、請求項1に記載の方法。 前記第1試薬が、終濃度として、0.3〜10%の塩、10〜1000mMの緩衝剤、および5〜3000ng/mLのジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する、請求項1または2に記載の方法。 前記ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質がアセチルスペルミン結合ウシ血清アルブミンである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。 前記第1試薬が、平均分子量5,000から500,000の水溶性高分子物質を0.01W/V%〜10W/V%含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。 前記抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドの抗ジアセチルスペルミン抗体が、アセチルスペルミン結合ウシ血清アルブミンを動物に投与することによって生成されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、そして前記ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質の蛋白質部分と反応しない、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。 前記検体が、尿である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。 請求項1から7のいずれか1項に記載の方法を実施するために使用される、ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する第1試薬、および抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を含む、ジアセチルスペルミン測定用試薬キット。 【課題】 測定感度が良好で、測定時間が短縮された、B/F分離を必要としない自動化に適したジアセチルスペルミンの測定法およびそのための測定キットを提供すること。【解決手段】 本発明の検体中のジアセチルスペルミンの量を測定する方法は、(a)該検体と、塩およびジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合する工程、(b)該混合液に抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合する工程、および(c)該ジアセチルスペルミン類似化合物結合蛋白質と該抗ジアセチルスペルミン抗体結合金コロイドの免疫反応凝集による吸光度変化を、450〜580nmで2回以上測定した吸光度、または、450nm〜580nmを主波長および620nm〜800nmを副波長とする二波長で2回以上測定した吸光度より求める工程を含む。【選択図】 図1