生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材、およびこれらを用いた卵アレルギー体質改善用または卵アレルギー予防用加工食品
出願番号:2004217083
年次:2006
IPC分類:A61K 38/00,A23L 1/30,A23L 1/32,A61K 35/54,A61P 37/08


特許情報キャッシュ

木 村 守 関 亜希子 JP 2006036669 公開特許公報(A) 20060209 2004217083 20040726 卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材、およびこれらを用いた卵アレルギー体質改善用または卵アレルギー予防用加工食品 キユーピー株式会社 000001421 吉武 賢次 100075812 中村 行孝 100091487 紺野 昭男 100094640 横田 修孝 100107342 木 村 守 関 亜希子 A61K 38/00 20060101AFI20060113BHJP A23L 1/30 20060101ALI20060113BHJP A23L 1/32 20060101ALI20060113BHJP A61K 35/54 20060101ALI20060113BHJP A61P 37/08 20060101ALI20060113BHJP JPA61K37/02A23L1/30 AA23L1/32 BA61K35/54A61P37/08 9 OL 12 4B018 4B042 4C084 4C087 4B018LB01 4B018LB02 4B018LB05 4B018LB09 4B018LB10 4B018MD72 4B018ME07 4B042AC04 4B042AD40 4B042AH11 4B042AP30 4C084AA02 4C084AA03 4C084AA06 4C084AA17 4C084AA27 4C084CA41 4C084MA52 4C084NA06 4C084ZB131 4C087AA01 4C087AA02 4C087AA04 4C087BB61 4C087CA16 4C087CA17 4C087CA47 4C087MA52 4C087NA05 4C087NA06 4C087NA14 4C087ZB08 4C087ZB13発明の背景発明の分野 本発明は、卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材、およびこれらを用いた卵アレルギー体質改善用または卵アレルギー予防用加工食品に関する。背景技術 従来より、卵アレルギー患者の治療方法としては、一般的に、原因となる食品を食事から除くという、いわゆる除去食療法がとられている。しかし、除去食療法は対症療法であり、自然寛解にゆだねる方法であるためか、卵アレルギー体質が治るには通常半年から数年と長期間を要する。卵アレルギー患者の多くは、実際には成長期の乳幼児であるが、卵は、乳幼児にとって摂取すべき栄養価に優れた食品である。卵は、ケーキを含めた菓子類、麺類等を始めとして多くの加工食品に利用されているため、卵アレルギー患者はこれら加工食品を長期間摂取できないこととなり、その結果、特に、卵アレルギー体質の乳幼児にとって、栄養が偏り、発育不全に繋がる恐れがある。その上、卵アレルギー体質の乳幼児のみならずその親の精神的負担も大きいという問題がある。 これらの問題点を解決する方法として、例えば、生卵白を加熱凝固させた加熱凝固卵白を極微量から段階的に量を増やして与えるという、いわゆる減感作療法が知られている。しかし、加熱凝固卵白は、単に生卵白を加熱凝固させたものであるので、加熱凝固卵白中の卵白蛋白には加熱変性してアレルゲン性を消失したオボアルブミン等ばかりでなく、加熱変性し難くアレルゲン性が維持されているオボムコイドが残存している。そのため、減感作療法中にアナフィラキシーショック等のアレルギー症状を引き起こす場合があり、当該治療法を行なうには充分な注意と熟練を要するという問題があった。 特開平7−236454号公報(特許文献1)には、卵アレルギー体質の人が摂取してもアレルギー反応を引き起こし難い加工卵白が開示されている。当該加工卵白は、天然の卵白に比べてオボムコイドの含有割合が減少している加熱凝固卵白からなる加工卵白であり、特許文献1の詳細な説明には、オボムコイドの具体的な含有量の例として、生卵白中のオボムコイドの含有量は卵白蛋白の約11%であるのに対して、特許文献1に係る加工卵白は0.3〜5%であることが記載されている。しかし、特許文献1には、当該加工卵白は卵のアレルゲン性が軽減されているので軽度の卵アレルギー患者も摂取し得ることは記載されているものの、卵アレルギー患者のアレルギー体質そのものの改善について、あるいは卵アレルギー体質でない人であっても卵アレルギーになり難い体質への改善、即ち、卵アレルギーの予防については、何らの記載も示唆もされていない。その上、同文献の加工卵白にはオボムコイドが0.3〜5%と依然として高濃度で含有されており、このような高濃度では、後述の本発明者らによる試験例の結果から明らかなように、上記の範囲より低い0.1%の場合(全卵白蛋白に対して1mg/gのオボムコイド含有の場合に相当)ですら卵アレルギー体質改善効果あるいは卵アレルギー予防効果は期待し得なかった。 特開2003−261452号公報(特許文献2)には、卵白由来のオボムコイドを有効成分として含有する免疫応答抑制剤、およびこれを含有したアレルギー抑制食品が開示されている。しかし、特許文献2には、卵白由来のオボムコイドの使用により、他のアレルゲン蛋白質であるβ−ラクトグロブリン(乳アレルゲン)に対する免疫応答を抑制することに関しては、マウスに1mg経口投与する場合の具体的な記載が見出し得ても、卵アレルギー体質そのものの改善について、あるいは卵アレルギーの予防については、何ら具体的な記載も見出し得ず、高々、卵アレルゲンに対してもオボムコイド1mg投与であろうことが示唆されているに過ぎない。オボムコイドは卵アレルゲンであることから、このような投与量で卵アレルギー患者に用いる場合は、特に、減感作療法で行なう必要があり、前述したとおり減感作療法は、減感作療法中にアナフィラキシーショック等のアレルギー症状を引き起こす場合があることから、当該治療法を行なうときも充分な注意と熟練を要するという問題があった。 なお上記記載中で挙げられた文献を列記すると下記の通りである。特開平7−236454号公報特開2003−261452号公報発明の概要 本発明者らは、上記特許文献2における示唆に従い、卵白由来のオボムコイドを用いて、卵アレルゲンに対する免疫応答抑制効果、即ち、卵アレルギー抑制効果について調べた結果、所望効果は期待し得ないことを確認した。このような状況下にあって、本発明者らは、卵アレルギーの体質改善並びに卵アレルギーの予防を課題とし、更に鋭意研究を重ねたところ、特定範囲の極微量のオボムコイドと、オボムコイド以外の卵白蛋白の加熱凝固卵白を含んでなる加工卵白は、卵アレルギー体質改善効果並びに卵アレルギー予防効果を奏し得るものであることを確認し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、全卵白蛋白に対して5〜500μg/gのオボムコイドと加熱凝固卵白を含有してなる加工卵白を有効成分として含むことを特徴とする卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材を提供するものである。 また、本発明は、上記卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材を配合してなる加工食品を提供するものである。 更にまた、本発明は、全卵白蛋白に対して5〜500μg/gのオボムコイドと加熱凝固卵白を含有してなる加工卵白を配合してなる卵アレルギー体質改善用または卵アレルギー予防用加工食品を提供するものである。 本発明の加工卵白は、卵アレルゲンであるオボムコイドの含有量が特定範囲の極微量であり、しかもオボムコイド以外の卵アレルゲンである卵白蛋白も加熱処理により卵アレルゲン性が消失した加熱凝固卵白であることから、卵アレルギー患者に摂取させた場合でもアレルギー症状を引き起し難く、更に、当該加工卵白を配合した加工食品を摂取させることにより、卵アレルギー患者の卵アレルギー体質の改善が図れ、また、卵アレルギー体質でない人であっても卵アレルギーになり難い体質への改善、即ち、卵アレルギーの予防が図れるという効果を奏し得る。発明の具体的な説明加工卵白 本発明の加工卵白は、卵白、主に卵白蛋白を加工したものであり、本発明においては、オボムコイドと加熱凝固卵白を含有し、全卵白蛋白に対して5〜500μg/gという特定範囲の極微量のオボムコイドを含有していることを特徴とするものである。 オボムコイドは非常に熱安定性に優れ、100℃、1時間の加熱処理でも変性しないという性質を有する。これに対し、オボムコイド以外の卵白蛋白は、約60〜80℃で加熱変性し、凝固すると言われている。なお、当該変性温度に関しては一般的に、砂糖を10%添加すると約2℃、食塩を10%添加すると約8℃加熱変性温度が上昇するとも言われている。後述の実施例および試験例で示しているとおり、粉砕した加熱凝固卵白の洗浄によりオボムコイドは加熱凝固卵白より容易に溶出し、加熱凝固卵白中のオボムコイドの含有量が減少する。このような事象は、上述した卵白蛋白の加熱変性温度と合致しており、オボムコイド以外の卵白蛋白は加熱処理により変性し凝固しているのに対して、オボムコイドは加熱による変性を受けておらず、未変性の水溶性を有した状態で維持されているものと推定される。 したがって、「全卵白蛋白に対して5〜500μg/gのオボムコイドと加熱凝固卵白を含有してなる加工卵白」とは、「加熱凝固していないオボムコイドを全卵白蛋白に対して5〜500μg/g、および加熱凝固したオボムコイド以外の卵白蛋白を全卵白蛋白に対して999,995〜999,500μg/g含有してなる加工卵白」と同義である。 このような本発明の加工卵白は、特に限定されるものではないが、例えば、オボムコイドを含有した卵白蛋白の水溶液(例えば、生卵白等)を加熱凝固した後、当該加熱凝固卵白からオボムコイドの一部を水洗除去し、上記範囲のオボムコイドの含有量に調整することにより、または、予め上記範囲のオボムコイドを含有した卵白蛋白の水溶液を用意し、この卵白蛋白水溶液を加熱凝固することにより、または、オボムコイドの含有量が上記範囲より少ない加熱凝固卵白を調製した後、この加熱凝固卵白に別途用意したオボムコイドを添加し、上記範囲のオボムコイドの含有量に調整すること等により調製することができる。 本発明の加工卵白の形態は、塊状物、粉砕物、または乾燥物等のいずれの形態であってもよく、特に、乾燥物は、水分活性が低いので、細菌上の問題もほとんどないことから保存性に優れており、食品原料として取扱い易い、という点で好ましい。 加工卵白の調製に用いうる原料卵白としては、例えば、殻付き卵を割卵して卵黄から分離して得られる生卵白;または、糖分、リゾチーム等の卵白成分の一部を生卵白から除去したもの;または、これらと、オボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボムチン、オボグロブリン、リゾチーム等の卵白蛋白の一種または二種以上の混合物;および、これらに濾過、殺菌、凍結、乾燥等の処理を施したもの等、いずれの原料卵白であってもよい。なお、以下において説明する「加熱凝固卵白」の調製に用いる原料卵白としては、加熱凝固性を有した卵白蛋白を含有したものであることが必須であることから、上記卵白蛋白のうち少なくともオボムコイド以外の卵白蛋白を含有したものを用いる必要がある。加熱凝固卵白 「加熱凝固卵白」とは、上記の液状の原料卵白、あるいは乾燥状態の原料卵白であっては水戻しして液状としたものを、オボムコイド以外の卵白蛋白が熱変性する温度(通常約60〜80℃)以上、具体的には約80℃以上、好ましくは90℃以上で加熱処理して3次元構造を形成させながら、その内部に水分子を取り込ませて外観上ゆで卵の卵白部のようにゲル化したものをいう。 上記液状の原料卵白、あるいは乾燥状態の原料卵白にあっては水戻しして液状としたものの卵白蛋白の濃度は、その後の加熱処理によりゲル化させうる濃度であるならば特に限定されるものではないが、生産性を考慮するならば、5〜30%程度が好ましく、5〜20%がより好ましい。また、加熱処理時間は、加熱処理温度、1回で処理する液状の原料卵白の容量若しくはpH等にもよるが、通常、10〜120分程度でよい。オボムコイド オボムコイドは、分子量が2万8,000程度で、約20〜25%の糖を含んだ糖蛋白質であり、トリプシン阻害作用を有し、卵白蛋白中に約11%含まれている物質である。また、オボムコイドは非常に熱安定性に優れた卵白蛋白であり、全卵白蛋白中に約54%含まれているオボアルブミンは約60〜65℃で熱変性し凝固するのに対して、オボムコイドは100℃、1時間の加熱処理でも凝固しないという性質を有する。 本発明の加工卵白は、このようなオボムコイドを、全卵白蛋白に対して5〜500μg/g、好ましくは10〜100μg/g含有していることを特徴とする。後述の試験例で示しているとおり、上記範囲内では、卵アレルギー体質改善効果、および卵アレルギーになり難い体質への改善効果、即ち、卵アレルギー予防効果を有する。上記範囲外では、これらの効果はさほど、あるいは、ほとんど期待し得ない。なお、オボムコイドの含有量は、後述の実施例で説明しているサンドイッチELISA法で分析した値である。卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材 本発明の「卵アレルギー体質改善材」とは、卵アレルギー患者のアレルギー体質そのものを改善する効果を奏する食材をいい、また、「卵アレルギー予防材」とは、卵アレルギー体質でない人であっても卵アレルギーになり難い体質に改善する、即ち、卵アレルギーを予防する効果を奏する食材をいう。本発明では、前述した加工卵白を有効成分として含むものである。したがって、本発明の加工卵白をそのまま卵アレルギー体質改善材または予防材として用いてもよく、また、上記効果を損なわない範囲内で各種賦形材等を添加して用いてもよい。卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材を配合してなる加工食品:卵アレルギー体質改善用または卵アレルギー予防用加工食品 本発明の「卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材を配合してなる加工食品」、あるいは「卵アレルギー体質改善用または卵アレルギー予防用加工食品」とは、本発明の加工卵白、あるいは当該加工卵白を有効成分として含む卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材を配合してなる加工食品をいう。 当該加工食品としては、通常、卵白、または卵白を含有した全卵を食材として用いた加工食品はもちろんのこと、卵白等を食材として用いていない加工食品であってもよい。例えば、麺類、クッキー、ケーキ、マヨネーズ、かまぼこ、ハム、お粥、スープ、ミルクセーキ、ふりかけ等が挙げられる。また、本発明の加工卵白、または卵アレルギー体質改善材若しくは卵アレルギー予防材の配合量は、目的とする加工食品の食味や食感を損なわない範囲で配合すればよく、好ましくは、卵白蛋白換算で0.1〜40%、より好ましくは1〜25%程度でよい。 以下、本発明を実施例および試験例でもって更に詳しく説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」である。実施例1 生卵白1kgをポリエチレン製の袋に収容、密閉し、90℃で60分間加熱処理して加熱凝固させた。得られた加熱凝固卵白をフードミキサーにより粉砕した後、オボムコイドの溶出を容易にするために0.9%食塩水3kgを加えてさらに高速万能ホモジナイザーにより微細化した。この懸濁液を3,000×gで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄した。この操作を3回繰り返した後、0.9%食塩水を清水に代えてさらに3回繰り返し、得られた沈殿物を凍結乾燥し、残留オボムコイド含量を測定した。 得られた乾燥品は、オボムコイドの含有量が全卵白蛋白に対して1μg/g以下であった。この乾燥品を用いて、これにオボムコイドを適量加えて均一化することにより、全卵白蛋白に対してオボムコイドを1μg/g、10μg/g、100μg/gおよび1mg/g含有する加工卵白をそれぞれ調製した。 なお、得られた乾燥品中の全卵白蛋白の含有量は、乾燥品から水分(減圧100℃乾燥法で分析)および無機質(原子吸光法で分析)を減じた値であり、全卵白蛋白に対してオボムコイドを1μg/g、10μg/g、100μg/gおよび1mg/g含有する加工卵白の全卵白蛋白の含有量はそれぞれ91.7%、91.6%、91.6%および91.8%であった。また、オボムコイドの含有量は、下記の方法により分析した。オボムコイドの含有量の分析:サンドイッチELISA法(enzyme linked immunosorbent assay法) ELISA用96穴マイクロプレートに、リン酸緩衝液(pH7.3:「PBS」と省略)に溶解したオボムコイドに対する抗体を100μLずつ分注し、2時間静置する。0.05%Tween20を含むPBS(「T−PBS」と省略)で5回洗浄した後、5%Bovine Serum Albumin(「BSA」と省略)を含むPBSを100μLずつ分注し、4℃で一晩静置する。洗浄後、1%BSAを含むT−PBS(「BT−PBS」と省略)で段階希釈した測定試料溶液を100μLずつ分注し2時間反応させる。洗浄後、BT−PBSに溶解したペルオキシターゼ標識抗オボムコイド抗体を100μLずつ分注し、2時間反応させる。洗浄後、3,3′,5,5′− tetramethylbenzidineを基質として10分間反応させた後、1Nの硫酸で反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定する。オボムコイドの標準も同様に測定を行ない、その吸光度から試料中のオボムコイド含量を算出した。実施例2 生卵白3kgをポリエチレン製の袋に収容、密閉し、90℃で30分間加熱処理して凝固させた。得られた凝固卵白をフードミキサーにより粉砕した後、0.9%食塩水15kgを加えてさらに高速万能ホモジナイザーにより微細化した。この懸濁液を3,000×gで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄した。この操作を2回繰り返した後、0.9%食塩水を清水に代えてさらに1回繰り返し、得られた沈殿物を凍結乾燥し、加工卵白を調製した。 得られた加工卵白は、そのまま卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材としても用いることができる。当該加工卵白中の全卵白蛋白の含有量は90.5%であり、オボムコイドの含有量は、全卵白蛋白に対して約50μg/gであった。 なお、得られた加工卵白中の全卵白蛋白の含有量およびオボムコイドの含有量は、実施例1における方法に準じて求めた。実施例3 実施例2で調製した加工卵白を用いて加工食品(クッキー)を下記の方法で調製した。ショートニング44gとグラニュー糖44gを混合し、水22gを加えて攪拌した後、さらに薄力粉72gと実施例2で得られた加工卵白18gを加えて練らないように混ぜ合わせた。こうして得られた生地を4℃の冷蔵庫に30分間入れた後、円筒状に成形し、−20℃の冷凍庫で凍らせた。凍った生地を、クッキー1枚当たり固形物換算で1gの上記加工卵白を含有するように切り分けて、オーブンで、170℃で15分間焼成してクッキーを調製した。試験例1試験方法 卵アレルギー予防効果に関して、下記の試験を行なった。 実施例1で得られた加工卵白(オボムコイドを全卵白蛋白に対してそれぞれ1μg/g、10μg/g、100μg/gおよび1mg/g含有した4種類の加工卵白)を100mg/mLとなるように清水に懸濁し、投与試料とした。3週齢のHartley系モルモットに20日間連続で、それぞれの投与試料を固形物換算で体重1kg当たり400mgとなるようにゾンデを用いて胃内投与した。各群5匹ずつのモルモットを使用し、対照群には清水だけを投与した。20日間の投与後、耳静脈から部分採血を行ない、卵白およびオボムコイドに対する抗体価をELISA法で測定した。その後、5日間連続で清水に溶解した卵白溶液(100mg/mL)を固形物換算で体重1kg当たり400mgとなるようにゾンデを用いて胃内投与し、1週間後さらに同様の操作を行なった。最終投与の1週間後に耳静脈から部分採血を行ない、卵白、オボアルブミン、オボムコイドおよびリゾチームに対する抗体価をELISA法で測定した。また、同じ動物に清水に溶解した卵白溶液(固形物換算で10mg/mL)を0.2mLずつ静脈内投与し、30分間アレルギー症状を観察した。観察されたアレルギー症状はスコアー化して評価した。 また、上記の試験に準じてオボムコイドのみを投与する場合についても試験を行なった。但し、上記の試験では、実施例1で得られた加工卵白を100mg/mLとなるように清水に懸濁して投与試料とし、この投与試料を固形物換算で体重1kg当たり400mgとなるようにゾンデを用いて胃内投与しているが、オボムコイドのみを投与する場合の試験では、投与試料のオボムコイドの濃度および体重1kg当たりのオボムコイド胃内投与量を、実施例1で得られた全卵白蛋白に対してオボムコイド100μg/g含有の加工卵白を用いたときのオボムコイドの濃度および胃内投与量となるように調整して試験を行ない、その他は上記の試験に準じて行なった。 なお、図および表中の「OA」とは「オボアルブミン」、「OM」とは「オボムコイド」、「LY」とは「リゾチーム」をそれぞれ意味し、「対照群」とは「清水だけを投与した群」、「OM群」とは「オボムコイドのみを投与した群」、並びに「1μg群」、「10μg群」、「100μg群」および「1mg群」とは、「オボムコイドを全卵白蛋白に対してそれぞれ1μg/g、10μg/g、100μg/gおよび1mg/g含有する加工卵白を投与した群」を意味する。また抗体価は、下記の方法により分析した。抗体価:ELISA法 ELISA用96穴マイクロプレートに、リン酸緩衝液(pH7.3:「PBS」と省略)に100μg/mLとなるように溶解した抗原(卵白、オボムコイド等)を100μLずつ分注し、2時間静置する。0.05%Tween20を含むPBS(「T−PBS」と省略)で5回洗浄した後、5%Bovine Serum Albumin(「BSA」と省略)を含むPBSを100μLずつ分注し、4℃で一晩静置する。洗浄後、1%BSAを含むT−PBS(「BT−PBS」と省略)で1,000倍希釈した動物血清を100μLずつ分注し2時間反応させる。洗浄後、BT−PBSに溶解したペルオキシターゼ標識抗IgG抗体を100μLずつ分注し、2時間反応させる。洗浄後、3,3′,5,5′− tetramethylbenzidineを基質として10分間反応させた後、0.5mol/Lの硫酸で反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。試験結果 図1に、各試料投与後の卵白およびオボムコイドに対する抗体価の平均を吸光度で示す。全卵白蛋白に対してオボムコイド含有量が1mg/gの加工卵白を与えた群で、オボムコイドに対する抗体価の上昇がわずかにみられたものの、他の群では卵白およびオボムコイドに対する抗体価の上昇はほとんど認められず、抗原性の低いことが確認された。 図2に、卵白で感作した後の卵白、オボアルブミン、オボムコイドおよびリゾチームに対する抗体価の平均を吸光度で示す。清水のみを与えた対照群およびオボムコイドのみを与えたOM群と比較して実施例1で調製した加工卵白を与えた群では、すべての卵白アレルゲンに対して低い値を示し、特に、全卵白蛋白に対してオボムコイド含有量が10μg/gおよび100μg/gの加工卵白を与えた群では、オボムコイドに対する抗体価が低い傾向を示した。 下記の表1のアレルギー症状の観察結果によれば、対照群では5匹のモルモットが5匹ともアナフィラキシーショックにより死亡し、またOM群では5匹中4匹が死亡し、全卵白蛋白に対してオボムコイド含有量が1μg/gの加工卵白を与えた群では1匹が死亡し、1mg/gの加工卵白を与えた群では2匹が死亡し1匹が痙攣等の症状を示したのに対して、オボムコイド含有量が全卵白蛋白に対して5〜500μg/gの範囲にある10μg/gまたは100μg/gの加工卵白を与えた群では、一部のモルモットが鼻をこする程度の症状を示したが、ほとんどが症状無しであった。 これらの結果から、本発明品である、オボムコイドの含有量が全卵白蛋白に対して10μg/gまたは100μg/gの加工卵白を摂取することにより、卵アレルギーになり難い体質に改善されることが、即ち、卵アレルギーを予防しうることが確認された。試験例2試験方法 卵アレルギー体質改善効果に関して、下記の試験を行なった。 3週齢のHartley系モルモットに10日間連続で、清水に溶解した卵白溶液(100mg/mL)を固形物換算で体重1kg当たり400mgとなるようにゾンデを用いて胃内投与した。1週間後、耳静脈から部分採血を行ない、卵白に対する抗体価をELISA法で測定し、抗体価が同様になるように5匹ずつ2群に分け、1群には20日間連続で、実施例2で得られた加工卵白(オボムコイドを全卵白蛋白に対して50μg/g含有)を固形物換算で体重1kg当たり400mgとなるようにゾンデを用いて胃内投与した。もう一方の群には清水を同様に胃内投与した。最終投与の1週間後に、清水に溶解した卵白溶液(固形物換算で10mg/mL)を0.2mLずつ静脈内投与し、30分間アレルギー症状を観察した。観察されたアレルギー症状はスコアー化して評価した。なお、スコアーは、試験例1に準ずる。試験結果 下記の表2にアレルギー症状の観察結果を示す。対照群では、5匹のモルモットが5匹ともアナフィラキシーショックにより死亡したのに対して、本発明品であるオボムコイドの含有量が全卵白蛋白に対して50μg/gの加工卵白を与えた群ではアナフィラキシーショックで死亡したのは2匹に減少しており、本発明品である加工卵白を摂取することにより、卵アレルギー体質が改善されることが確認された。なお、同様な試験を実施例3で得られた加工食品(クッキー)で行なったところ、同様な結果が得られ、卵アレルギー体質が改善されることが確認された。試験例3試験方法 卵アレルギー予防効果に関して、下記の試験を行なった。 実施例3で得られた加工食品(クッキー)を100mg/mLとなるように清水に懸濁し、投与試料とした。3週齢のHartley系モルモットに20日間連続で、投与試料を固形物換算で体重1kg当たり400mg(クッキーとして40mg)となるようにゾンデを用いて胃内投与した。各群5匹ずつのモルモットを使用し、対照群には清水だけを投与した。その後、5日間連続で清水に溶解した卵白溶液(100mg/mL)を固形物換算で体重1kg当たり400mgとなるようにゾンデを用いて胃内投与し、1週間後さらに同様の操作を行なった。最終投与の1週間後に耳静脈から部分採血を行ない、卵白、オボアルブミン、オボムコイドおよびリゾチームに対する抗体価をELISA法で測定した。また、同じ動物に清水に溶解した卵白溶液(固形物換算で10mg/mL)を0.2mLずつ静脈内投与し、30分間アレルギー症状を観察した。観察されたアレルギー症状はスコアー化して評価した。なお、スコアーは、試験例1に準ずる。試験結果 図3に、卵白で感作した後の卵白、オボアルブミン、オボムコイドおよびリゾチームに対する抗体価の平均を吸光度で示す。対照群と比較して本発明品(クッキー:実施例2で得られた、オボムコイドを全卵白蛋白に対して50μg/g含有した加工卵白を配合)を与えた群では、すべての卵白アレルゲンに対して低い値を示した。 下記の表3にアレルギー症状の観察結果を示す。対照群では、5匹のモルモットが5匹ともアナフィラキシーショックにより死亡したのに対して、本発明品を与えた群ではアナフィラキシーショックで死亡したのは1匹であり、ほとんどのモルモットが症状無しか、あるいは軽度の症状であった。 これらの結果から、試験例1の結果と同様に、本発明品である、オボムコイドの含有量が全卵白蛋白に対して50μg/gの加工卵白を配合したクッキーを摂取することにより、卵アレルギーになり難い体質に改善されることが、即ち、卵アレルギーを予防しうることが確認された。卵アレルギー予防効果に関する試験例1において、各試料投与後の卵白およびオボムコイドに対する抗体価の平均を吸光度で示した図である。卵アレルギー予防効果に関する試験例1において、卵白で感作した後の卵白、オボアルブミン、オボムコイドおよびリゾチームに対する抗体価の平均を吸光度で示した図である。卵アレルギー予防効果に関する試験例3において、卵白で感作した後の卵白、オボアルブミン、オボムコイドおよびリゾチームに対する抗体価の平均を吸光度で示した図である。 全卵白蛋白に対して5〜500μg/gのオボムコイドと加熱凝固卵白を含有してなる加工卵白を有効成分として含むことを特徴とする卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材。 加工卵白が、全卵白蛋白に対して10〜100μg/gのオボムコイドを含有している、請求項1に記載の卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材。 加工卵白が、オボムコイドを含有した卵白蛋白の水溶液を加熱凝固した後、該加熱凝固卵白からオボムコイドの一部を除去してオボムコイドの含有量を調整したものである、請求項1または2に記載の卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材。 オボムコイドを含有した卵白蛋白の水溶液が、殻付き卵を割卵して卵黄から分離して得られた生卵白である、請求項3に記載の卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材。 更に賦形材を含んでなる、請求項1−4のいずれか一項に記載の卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材。 請求項1−5のいずれか一項に記載の卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材を配合してなる加工食品。 加工食品が、麺類、クッキー、ケーキ、マヨネーズ、かまぼこ、ハム、お粥、スープ、ミルクセーキまたはふりかけである、請求項6に記載の加工食品。 全卵白蛋白に対して5〜500μg/gのオボムコイドと加熱凝固卵白を含有してなる加工卵白を配合してなる卵アレルギー体質改善用または卵アレルギー予防用加工食品。 加工食品が、麺類、クッキー、ケーキ、マヨネーズ、かまぼこ、ハム、お粥、スープ、ミルクセーキまたはふりかけである、請求項8に記載の卵アレルギー体質改善用または卵アレルギー予防用加工食品。 【課題】 卵アレルギーの体質の改善が図れ、または、卵アレルギーの予防が図れる食材を提供する。【解決手段】 全卵白蛋白に対して5〜500μg/gのオボムコイドと加熱凝固卵白を含有してなる加工卵白を有効成分として含むことを特徴とする卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材を提供する。また、上記卵アレルギー体質改善材または卵アレルギー予防材を配合してなる加工食品を提供する。さらに、全卵白蛋白に対して5〜500μg/gのオボムコイドと加熱凝固蛋白を含有してなる加工卵白を配合してなる卵アレルギー体質改善用または卵アレルギー予防用加工食品の提供するものである。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る