タイトル: | 公開特許公報(A)_血糖値上昇抑制剤 |
出願番号: | 2004202691 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A61K 36/06,A23L 1/22,A23L 1/30,A23L 2/38,A61P 3/10,C12G 3/08,A23L 2/52 |
松田 秀喜 福井 裕 石田 丈博 JP 2006022058 公開特許公報(A) 20060126 2004202691 20040709 血糖値上昇抑制剤 宝酒造株式会社 302026508 井上 昭 100087022 松田 大 100096415 金谷 宥 100102369 中本 宏 100078503 松田 秀喜 福井 裕 石田 丈博 A61K 36/06 20060101AFI20051222BHJP A23L 1/22 20060101ALI20051222BHJP A23L 1/30 20060101ALI20051222BHJP A23L 2/38 20060101ALI20051222BHJP A61P 3/10 20060101ALI20051222BHJP C12G 3/08 20060101ALI20051222BHJP A23L 2/52 20060101ALI20051222BHJP JPA61K35/72A23L1/22 DA23L1/30 ZA23L2/38 ZA61P3/10C12G3/08 102A23L2/00 F 3 OL 8 4B017 4B018 4B047 4C087 4B017LC03 4B017LK25 4B017LP02 4B017LP18 4B018LB08 4B018LB09 4B018MD91 4B018ME03 4B018MF04 4B018MF06 4B047LB09 4B047LG63 4B047LP05 4B047LP07 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC11 4C087CA10 4C087CA50 4C087MA01 4C087NA14 4C087ZC35 本発明は、みりん由来の血糖値上昇抑制剤に関する。 日本人の糖尿病患者は近年増加傾向にあり、大きな社会問題となってきている。糖尿病は大きく二つのタイプに分類され、I型(インスリン依存型)糖尿病とII型(インスリン非依存型)糖尿病がある。このうちII型糖尿病患者は日本人の糖尿病発症者の90%以上を占めており、その改善及び予防が強く望まれている生活習慣病の一つである。 II型糖尿病は、膵臓β細胞からのインスリンの分泌能力の低下や、インスリン標的臓器である骨格筋、肝臓、脂肪組織でのインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)などが関与してインスリン作用の低下が起り、恒常的に高血糖が維持された状態と言える。この状態が続くと、インスリン分泌不全(高インスリン血症)や様々な重篤な合併症(網膜症、腎症、神経障害等)を引起す。また、容易に高血圧症や高脂血症を併発することから、II型糖尿病の改善、治療にはインスリンによるグルコース取込み作用の負担を軽減(インスリン感受性増大)するための血糖値の調節が第一となる。適正な血糖値を得る方法としては、糖質の分解と吸収を阻害、遅延して過血糖を改善(インスリンの過負荷を低減)すること、インスリン抵抗性を改善(インスリン感受性を増大)し、肝臓からの糖産生放出を抑制すること、インスリン分泌を促進させることなどが挙げられる(非特許文献1参照)。 現在、上記項目を満たす臨床薬として、スルホニル尿素剤、アルドース還元酵素阻害剤、インスリン様作用剤など種々の薬剤が開発されている。一方、II型糖尿病の発症には現代の食生活習慣、運動不足、ストレスなどが密接に関わっており、食事療法及び運動療法が糖尿病治療の有効な手段とされている。 最近の食品科学分野での糖尿病進展、発症の予防に関する研究は、糖質の分解と吸収を阻害、遅延して過血糖を改善(インスリンの過負荷を低減)することを目的としたものが主体である。上記の臨床試験例として、糖尿病予備軍域(空腹時血糖値が110〜126mg/dl、及びグルコース負荷2時間後の血糖値が140〜200mg/dl)患者1,429名を用いたSTOP−NIDDM(II型糖尿病予防)試験によって、糖質分解酵素阻害剤であるアカルボースの摂取(194mg/day)が糖尿病発症(進行)リスクを低減化(25%)させるのに極めて効果的であるという報告があり、この知見は、食後血糖値のコントロールが糖尿病予防策として有効なことを示し、食品機能による医療代替性を示唆するものである(非特許文献2参照)。 血糖値改善効果を有する食品成分の報告例としては、茶カテキン、小麦アルブミン、トウチエキス、D−キシロース、L−アラビノースなどが挙げられ、ある程度の血糖値調節が可能であることが示されている。また、コーヒー、リンゴ、ブドウ、タマネギなどの植物から抽出されるクロロゲン酸類からなる血糖値上昇抑制剤等に関する報告がある(特許文献1、特許文献2参照)。 みりんは、もち米や米麹など主に天然の素材を原料にして、微生物が造り出す醸造調味料であり、糖化・熟成工程中に生成される糖類やアミノ酸など豊富な種類の呈味成分を含んでいる。これらの糖類やアミノ酸、アルコールなどにより、甘味の付与、てりつやの付与、消臭効果、味の浸透性向上効果、煮崩れ防止効果、エキス分溶出抑制効果などの調理効果が期待され、食品の加工や煮物等の調理に利用されている。その他、みりんをそのまま使用する以外に、ゼリー、シャーベット、ソース、ドレッシングなどにおいて、みりんを加熱濃縮してアルコールを飛ばした煮切りみりんとして使用するなど、幅広い用途がある。 みりんにおいては、調理効果に関する科学的な検証以外に、生理機能の面からのアプローチも行われている。 例えば、みりんの抗酸化性を示すデータとして、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(1,1−Diphenyl−2−Picrylhydrazyl)ラジカル消去活性は、みりん風調味料と比較して3倍程度高い活性を示すことが知られている(非特許文献3参照)。 また、加熱処理したみりん類の抗酸化活性が、加熱処理前より増強されていることを特徴とする新規みりんが提案されている(特許文献3参照)。これは、みりん類を加熱処理して着色せしめることを特徴とする新規みりん類であって、その態様としてアルコール濃度が6〜14%(v/v)であることが示されている。しかし、アルコールが残存しているため、これをそのまま食品に利用するには、アルコール刺激味、刺激臭によって好ましくない場合がある。また、実際に生体内に摂取した場合の血糖値上昇抑制効果に関する検討はこれまでなされていない。特開2003−34636公報特開2002−308766公報特開2001−231536公報ニュー フード インダストリー(New Food Industry),Vol.45,No.4,1−8(2003)ザ ランセット(The Lancet),Vol.359,2072−2077(2002)「日本農芸化学会2002年度(平成14年度)大会講演要旨集」、第109頁 本発明の目的は、日常手軽に経口摂取・摂食でき、かつ副作用がない安全性の高い食品素材からなる血糖値上昇抑制剤を提供することにある。 本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、みりんシロップからなる血糖値上昇抑制剤であり、第2の発明は、当該血糖値上昇抑制剤を添加してなることを特徴とする血糖値上昇抑制作用を有する食品、飲料又は調味料に関する。 本発明者らは、みりんの生理機能を追求すべく鋭意検討した結果、例えば、みりんを加熱濃縮して煮切ることにより得られるみりんシロップを摂食することにより、血糖値上昇抑制の効果を有することを見出し、本発明を完成させた。 本発明により、手軽に経口・摂食できる食品素材としてのみりんシロップからなる血糖値上昇抑制剤を提供することができる。 以下、本発明を具体的に説明する。 本発明における血糖値上昇抑制剤とは、みりんシロップからなる血糖値上昇抑制剤である。 本発明におけるみりんシロップとは、みりん中のアルコールを除き、濃縮したものであり、例えば、みりんを加熱処理してアルコールを除去した煮切りみりんが挙げられる。煮切りみりんの加熱処理方法としては、一般的には鍋に入れたみりんを直火で加熱することが知られているが、特にこれには限定されない。また、煮切りみりんの液量は、加熱処理前のみりんの液量に比べて45〜85%、好ましくは50〜70%のものである。45%未満では、みりん中の糖類の結晶が生じるため取扱いが困難で様々な用途に利用しにくく、85%超では、みりん中のアルコール分の除去が不十分であるため、アルコールの刺激味、刺激臭があり、好ましくない。 本発明における血糖値上昇抑制剤とは、正常人における生理的変動範囲を超えて血糖値、すなわち血中グルコース濃度が上昇した高血糖あるいは過血糖状態を正常な状態に戻すための薬剤、食品等のことをいう。高血糖の判定の標準状態として食後8〜12時間の空腹時間に測定する空腹時血糖値が基準となるが、この空腹時血糖値が常時126mg/dl以上であれば糖尿病と診断され、110〜125mg/dlに該当すれば境界域糖尿病と診断される。上記の糖尿病患者の高血糖状態を正常値の110mg/dl未満になるように、症状を緩和、改善するための血糖値上昇抑制剤には以下のようなものがある。薬剤としては大きくインスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、食後過血糖改善剤の3つに大別される。インスリン分泌促進剤には、スルホニル尿素剤、スルホニルアミド剤などがあり、インスリン抵抗性改善剤には、チアゾリジンジオン剤、ビグアナイト剤等がある。また、食後過血糖改善剤には、α−グリコシダーゼ阻害剤があり、アカルボースやボグリボースといった治療剤が用いられている。また、血糖値上昇抑制効果を有する食品成分としては、柑橘類(みかん、グレープフルーツ、シークワシャー等)、小麦アルブミン、大麦若葉、ニガウリ、白甘藷、ウーロン茶、グアバ茶、ギムネマ茶、桑葉エキス、ガルシニアエキス、オリーブエキス、トウチエキス、月見草エキス、黒米エキス、生コーヒー豆エキス、タマネギ外皮エキス、清酒酵母エキス、黒麹エキス、紅麹エキス、黒酢、蚕粉末、アシル化アントシアニン、グリシンベタイン、キトサン、サポニン、海藻多糖類、難消化性デキストリン、エリスリトール等が挙げられる。本発明の血糖値上昇抑制剤は、これらのものと比べても遜色ないものである。 本発明のみりんシロップからなる血糖値上昇抑制剤は、そのまま経口摂取・摂食することもできるし、該血糖値上昇抑制剤を食品、飲料又は調味料に添加してもよい。 その量は、年齢、体重、性別、投与方法等によって異なるが、経口投与の場合は通常成人(体重60kg)1人当り1回にみりんシロップとして60〜240ml(2倍濃縮の場合84〜336g相当)の範囲を1日1回〜数回に分けて投与するのが好ましい。摂取期間としては、1週以上が好ましい。なお、急性毒性については、みりんはこれまでも調理に使用されてきたものであり安全なものである。 使用方法としては、シロップとしてそのまま使う、混ぜて使う、材料を加えて煮る、素材に塗って焼くなどが挙げられる。 本発明のみりんシロップを添加する食品、飲料又は調味料には、特に限定はなく、例えば穀物加工品(小麦粉加工品、デンプン類加工品、プレミックス加工品、麺類、マカロニ類、パン類、あん類、そば類、麩、ビーフン、はるさめ、包装餅等)、油脂加工品(可塑性油脂、てんぷら油、サラダ油、マヨネーズ類、ドレッシング等)、大豆加工品(豆腐類、味噌、納豆等)、食肉加工品(ハム、ベーコン、プレスハム、ソーセージ等)、水産製品(冷凍すりみ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、さつま揚げ、つみれ、すじ、魚肉ハム、ソーセージ、かつお節、イワシのみりん干し等の魚介類の干物、魚卵加工品、水産缶詰、つくだ煮等)、乳製品(原料乳、クリーム、ヨーグルト、バター、チーズ、練乳、粉乳、アイスクリーム等)、野菜・果実加工品(ペースト類、ジャム類、漬物類、果実飲料、野菜飲料、ミックス飲料等)、菓子類(チョコレート、ビスケット類、菓子パン類、ケーキ、餅菓子、米菓類、ウイスキーボンボン、錠菓等)、アルコール飲料(日本酒、中国酒、ワイン、ウイスキー、焼酎、ウオッカ、ブランデー、ジン、ラム酒、ビール、チューハイ等のアルコール飲料、果実酒、リキュール等)、嗜好飲料(緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、清涼飲料、乳酸飲料等)、調味料(しょうゆ、ソース、酢、みりん等)、缶詰・瓶詰め・袋詰め食品(牛飯、釜飯、赤飯、カレー、その他の各種調理済み食品)、半乾燥又は濃縮食品(レバーペースト、その他のスプレッド、そば・うどんの汁、濃縮スープ類)、乾燥食品(即席麺類、即席カレー、インスタントコーヒー、粉末ジュース、粉末スープ、即席味噌汁、調理済み食品、調理済み飲料、調理済みスープ等)、冷凍食品(すき焼き、茶碗蒸し、うなぎかば焼き、ハンバーグステーキ、シュウマイ、餃子、各種スティック、フルーツカクテル等)、固形食品、液体食品(スープ等)、香辛料類等の農産・林産加工品、畜産加工品、水産加工品等が挙げられる。 以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。 煮切りみりんをヒトII型糖尿病自然発症ラット(GKラット)に摂食させ、経時的に採血を行い、血糖値の測定を行った。 煮切りみりんは、本みりん〔宝酒造(株)製〕10Lを平底鍋にて中火で加熱し、4.5Lまで煮詰めた後、5Lまで加水し、2倍濃縮としたものを使用した。 8週齢雄性GKラット〔チャールス リバー(Charles River)社製〕を購入後、1週間の予備飼育を行ったものを2つの試験区に分類して以下の試験に供した。対照群(計5匹)は15%マルトース+15%フルクトース溶液を1日当り50mlずつ自由飲水で7週間毎日与えた。煮切りみりん投与群(計4匹)は煮切りみりん1mlを含む15%マルトース+15%フルクトース溶液を1日当り50mlずつ自由飲水で7週間毎日与えた。投与開始前(0日目)及び投与開始後1週間毎、空腹時に採血を実施した後、血糖値の測定を行った。血糖値は、グルコテストPRO(三和化学研究所製)を用いて測定した。 試験期間中の血糖値のデータを表1に示す。 表1の結果より、対照群では、有意な血糖値の上昇が認められたのに対して、煮切りみりん投与群では、対照群と比較して血糖値の上昇が抑制され、低値を示す傾向が見られた。煮切りみりん投与群は、対照群と比較して、一匹当り、一日に0.9gもの糖分を余分に付加しているにもかかわらず、血糖値の上昇が大幅に抑制されており、このことは煮切りみりんが血糖値の上昇を抑制する何らかの因子を有していることが強く示唆された。以上のことより、本発明のみりんシロップは、高血糖状態の発現を抑制して糖尿病にも効果を発揮し得る有望な機能性食品素材であることが明らかとなった。 健常者9名に、煮切りみりんを1日2回朝夕食後、1回につき30mlを7日間摂食させた。 煮切りみりんは、本みりん〔宝酒造(株)製〕10Lを平底鍋にて中火で加熱し、4.5Lまで煮詰めた後、5Lまで加水し、2倍濃縮としたものを使用した。 その結果、血糖値上昇の抑制が確認された。 煮切りみりんの液量が、加熱処理前のみりんの液量に比べて60%のものである煮切りみりんを用い、表2の仕込配合表に基いて原材料を調合し、95℃で殺菌した後、1Lのペットボトルに充填し、飲料(本発明品)を製造した。仕込配合を表2に示す。 煮切りみりんは、本みりん〔宝酒造(株)製〕10Lを平底鍋にて中火で加熱し、5.5Lまで煮詰めた後、6Lまで加水したものを使用した。 本発明品を毎日200g喫食したところ、良好な味とともに血糖値上昇抑制効果が認められた。なお、本発明品の200g中には、100.8g相当の煮切りみりんが含まれている。 本発明のみりんシロップからなる血糖値上昇抑制剤は、そのまま経口摂取・摂食することもできるし、該血糖値上昇抑制剤を食品、飲料又は調味料に添加することもできるので有用である。また、該みりんシロップからなる血糖値上昇抑制剤は、糖尿病にも有効であると期待でき、更に、高血圧予防・改善剤、高脂血症予防・改善剤、高インスリン血症予防・改善剤などとしても期待できる。 みりんシロップからなる血糖値上昇抑制剤。 みりんシロップが、みりんを加熱処理することにより得られる煮切りみりんである請求項1記載の血糖値上昇抑制剤。 請求項1又は2記載の血糖値上昇抑制剤を添加してなることを特徴とする血糖値上昇抑制作用を有する食品、飲料又は調味料。 【課題】 日常手軽に経口摂取・摂食でき、かつ副作用がない安全性の高い食品素材からなる血糖値上昇抑制剤を提供する。【解決手段】 みりんシロップからなる血糖値上昇抑制剤。当該血糖値上昇抑制剤を添加してなることを特徴とする血糖値上昇抑制作用を有する食品、飲料又は調味料。 みりんシロップの代表例としては煮切りみりんがある。【効果】 本発明の血糖値上昇抑制剤は、そのまま経口摂取・摂食することもできるし、該血糖値上昇抑制剤を食品、飲料又は調味料に添加することもできるので有用である。【選択図】 なし