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タイトル:公開特許公報(A)_樹脂中のゲル分率の測定方法
出願番号:2004199183
年次:2006
IPC分類:G01N 24/08,G01R 33/32,G01N 24/00


特許情報キャッシュ

山田 公美 土田 好進 浅野 哲 JP 2006023104 公開特許公報(A) 20060126 2004199183 20040706 樹脂中のゲル分率の測定方法 住友化学株式会社 000002093 神野 直美 100094477 上代 哲司 100078813 山田 公美 土田 好進 浅野 哲 G01N 24/08 20060101AFI20051222BHJP G01R 33/32 20060101ALI20051222BHJP G01N 24/00 20060101ALI20051222BHJP JPG01N24/08 510DG01N24/02 530MG01N24/00 D 6 OL 12 本発明は、樹脂中のゲルの含有率(ゲル分率)の測定方法に関する。より詳細には、ゲルを含有する樹脂、例えば光学フィルムに塗布される粘着剤の主成分である樹脂のゲル分率を、NMR測定及びその結果の近似により簡便に求めることを特徴とする樹脂中のゲル分率の測定方法に関する。 樹脂中のゲル分率は、樹脂の性能に影響を与える場合が多いので、種々の測定法が提案されている。例えば、特開平11−61055号公報には、エチレンビニルアセテート共重合体シートのゲル分率を測定する方法として、金属メッシュを用いた重量法が開示されている(段落0027〜0033)。 偏光フィルム、位相差フィルム、光散乱フィルム等の光学フィルムに塗布される粘着剤を構成する樹脂のゲル分率も、粘着剤の性能に大きく影響を与えていると考えられており、この樹脂のゲル分率の測定方法としても、特開平11−61055号公報記載の方法と同様な金属メッシュを用いた重量法が採用されている。この方法は、例えば次のような手順からなる。(1)8cm×8cmの面積のノンキャリアフィルム糊(光学フィルムに塗布する前の粘着剤、厚さ25μm)を、既知重量(Wm)のSUS304メッシュの金属メッシュに貼り付ける。(2)メッシュ+糊の重量(Ws)を秤量し、糊を包み込むように4回折りたたんでホチキスで留め、その後、メッシュ+糊+ホチキスの重量(Wb)を秤量する。(3)125mlのガラス容器に(2)で得られたメッシュを入れ、酢酸エチル60mlを加えて浸漬した後、このガラス容器を室温で3日間保持する。(4)糊を包んだメッシュを取り出し、120℃で24時間乾燥し、その後、金属メッシュ+ゲル+ホチキスの重量(Wa)を秤量し、次式に基づいてゲル分率を計算する。ゲル分率=[{Wa−(Wb−Ws)−Wm}/(Ws−Wm)]×100(%) しかし、この金属メッシュを用いた重量法は、測定に数日を要するとともに、誤差が大きいとの問題がある。又その精度の向上のためには、前記のような大量の試料(粘着剤の厚さが25μm程度の一般的な光学フィルムノンキャリアフィルム糊の場合は、8cm×8cm=64cm2に塗布される量に相当)を必要とする。このような大量の試料の採取は、特に、光学フィルムに塗布された後の粘着剤については困難である。すなわち、フィルムに塗布された粘着剤は、かきとるのが難しい性状をしており、測定に必要な大量の粘着剤をフィルムからかきとって採取する必要がある金属メッシュを用いた重量法の適用が、困難である場合がある。 又、分子量の異なるポリマーの混合物である樹脂を、分子量ごとに分離、定量する代表的な方法として、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)が知られている。しかし、樹脂中に、架橋ポリマーのように溶媒不溶な成分(ゲル)が存在する場合は、ゲルがGPCカラムに吸着されてしまい、溶出してこない場合があるので、GPCを用いてのゲル分率の測定も困難である。 このように、従来は、光学フィルムに塗布された粘着剤等のゲルを含有する樹脂について、その性能に大きく影響を与えていると考えられているゲル分率を、簡便に測定できる方法は知られておらず、その開発が望まれていた。特開平11−61055号(段落0027〜0033) 本発明は、光学フィルムに塗布された粘着剤の主成分の樹脂等、ゲルを含有する樹脂中のゲル分率を、少量の試料でより簡便にかつ迅速に測定できる方法を提供することを課題とする。 本発明者は、鋭意検討の結果、測定対象であるゲルを含む樹脂の溶液の、パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を、磁場勾配強度等を変化させながら実施し、NMRピーク強度の変化と磁場勾配強度等の変化との関係を測定し、この測定結果に、特定の理論式が最も近似するように、式中の係数を定める方法により、樹脂中のゲル分率が簡便かつ迅速に得られることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、ゲルを含む樹脂試料を、NMR測定試料用溶媒と混合して得られたゲルを含む樹脂溶液の、パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を、 磁場勾配強度、磁場勾配パルス長又は拡散時間を変化させながら実施し、 その測定結果に、逆ラプラス変換に相当する処理を加えて、化学シフトを横軸とし拡散係数を縦軸とするDOSYスペクトルを得て、 このDOSYスペクトル中の、同一の拡散係数に対応する信号を、同一成分に帰属するとして、前記DOSYスペクトルから成分数Nを求め、 N個の成分の全てについて、前記DOSYスペクトルの信号が存在し、かつこの信号の全てが他の化学シフトにおける信号から孤立している化学シフトを選択し この化学シフトにおける、磁場勾配強度、磁場勾配パルス長又は拡散時間の変化に対するNMRピーク強度の減衰に、次式(1)が最も近似するように、式(1)中のP1及びPnを求め(式中、yはNMRピーク強度、Nは成分数、γは核磁気回転比、δは磁場勾配パルス長、Gは磁場勾配強度、Δは拡散時間を表し、かつP1、Pn及びQnは、それぞれ近似により求められる数値を表す。)、 得られたP1及びPnと、式:ゲル分率(%)=(P1/ΣPn)×100に基づいてゲル分率(%)を計算することを特徴とする樹脂中のゲル分率の測定方法を提供するものである(請求項1)。 この本発明の樹脂中のゲル分率の測定方法を工程毎に説明すると、先ず、測定対象であるゲルを含む樹脂の試料は、NMR測定試料用溶媒に溶解される。この樹脂中にはゲルが含まれているので、NMR測定試料用溶媒に溶解されて得られた樹脂溶液は、NMR測定試料用溶媒により膨潤されたゲルを含有している(以下、ゲルを含む場合も樹脂溶液と言う。)。ただし樹脂溶液には、通常5mmφ程度のNMR測定用試料管に装填され該試料管が反転されたときに流動する程度の流動性が求められる。好ましくは、該試料管を90度横倒ししたときにも流動する程度の流動性を有する。NMR測定試料用溶媒は、通常重水素化溶媒であり、用いられる重水素化溶媒としては、重クロロホルム、重ジメチルスルホキシド、重アセトン等が例示される。 得られた樹脂溶液は、NMR測定用試料管内に入れられ、パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定に供せられる。下記のように、試料管の内壁へのゲル成分の付着による誤差を低減するため、内挿管を用い、その中に樹脂溶液を装填する方法が好ましい。 パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定は、高出力のパルスを試料に照射し、その応答である自由誘導減衰(FID)を時間の関数として観測し、その結果からNMRスペクトルを求めるパルスNMR法であって、さらにこのパルスに磁場勾配パルスの照射を組合せることを特徴とする方法である。 パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定に用いられるシーケンスとしては、例えば、先ず90°パルスを照射し、次に磁場勾配パルス長δで磁場勾配強度Gの磁場勾配パルスを印加し、その後180°パルスを照射し、さらにその後磁場勾配パルス長δで磁場勾配強度Gの磁場勾配パルスを再度印加した後、FIDの観測を行う(PFGSE法)が挙げられる。PFGSTE法やPFGLED法等の、パルス数やパルス長を変えた他のシーケンスを用いることもできる。 含有する成分が1つの試料に、パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を実施した場合、最初の磁場勾配パルスと後の磁場勾配パルスの間の時間をΔとすると、Δの間に分子が拡散するので、磁場勾配がない場合のピーク強度I(0)と磁場勾配Gの場合のピーク強度I(G)との間には、次の関係が成り立つ。(式中、δは磁場勾配パルス長、Dは分子の自己拡散係数である。)従って、この測定法により、分子の自己拡散係数Dを求めることができる(「ネットワークポリマー」Vo1.23、No.4(2002年))。 本発明においては、このようなパルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を、磁場勾配強度(前記式中のG)、磁場勾配パルス長(前記式中のδ)又は拡散時間(前記式中のΔ)のいずれか一つを変化させながら複数回実施され、磁場勾配強度、磁場勾配パルス長又は拡散時間の変化に対する、スペクトル(ピーク強度)の変化が測定される。 磁場勾配強度、磁場勾配パルス長又は拡散時間の変化の中では、磁場勾配強度の変化が、その制御が容易であるので、好ましく採用される。請求項2は、この好ましい態様に該当し、前記の本発明のパルス磁場勾配スピンエコーNMR測定であって、磁場勾配強度を変化させながらパルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を実施することを特徴とする。 前記のように、パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を、磁場勾配強度、磁場勾配パルス長又は拡散時間のいずれか一つを変化させながら複数回実施し、その測定結果より、NMRスペクトル(ピーク強度)と、磁場勾配強度、磁場勾配パルス長又は拡散時間との関係を求めることができるが、本発明では、次に、得られた測定結果に、逆ラプラス変換に相当する処理を加えて、化学シフトを横軸とし拡散係数を縦軸とするDOSYスペクトル(2次元NMRスペクトル)を得る。 ここで、逆ラプラス変換に相当する処理は、相応なアルゴリズムを用いて行うことができる。この処理を行うためのアルゴリズムとしては、多数のものが提案されており、例えば、LSFit、SPLMOD、CONTIN、NLREG等の名称で知られているものが挙げられる。 図1は、このようにして得られた2次元NMRスペクトルを、模式的に示した模式図である。図1の例では、拡散係数D1及びD2に対応する位置に、信号が存在しているが、本発明では、同一の拡散係数に対応する信号を、同一成分に帰属するとし、その成分数Nを求める。すなわち、図1の例では、D1に対応する成分とD2に対応する成分からなり、その成分数Nは2である。なお、微弱な信号を、成分数Nを求めるための信号に含めない方法も採用できる。この方法によれば、測定の精度は低下するが、成分数Nが、この方法によらない場合に比べて減少するので、下記の近似の処理を簡易なものとする。そこで、測定精度及び計算の簡易さを比較考量して、どの程度の微弱な信号まで含めるかが判断される。 次に、N個の成分の全てについて、信号を有する化学シフトを選択する。図1の例では、化学シフトσ1、σ2、σ4は、D1、D2の一方にのみ対応する位置、すなわちいずれか1つの成分についてのみ信号を有するので、選択することはできない。一方、σ5はD1、D2のいずれにも信号を有するので、選択することができる。 選択される化学シフトにおいて、N個の成分に対応する全ての信号は、他の化学シフトの信号から孤立していること、すなわち重なったり、接したりしていないことが望まれる。重なったり、接したりする場合は、他の化学シフトの信号の影響で、NMRピーク強度の測定値が不正確になり、その結果測定の精度も低下する。図1の例においては、σ3は、D1、D2のいずれにも信号を有するが、D2にある信号が、他の化学シフトの信号(図中のA)と接している。一方、σ5は、D1、D2のいずれの位置にある信号も、他の化学シフトの信号から孤立しているので、選択することができる。なお、σ5では、D1とD2の位置にある信号が、接しているが、成分数Nを求めるためには、両者が分離している方が好ましい。 化学シフトを選択した後、この化学シフトについて、NMRピーク強度の、磁場勾配強度、磁場勾配パルス長又は拡散時間の変化に対する減衰の測定値に、次式(1)が最も近似するように、式(1)中の数値、P1、Pn、Qnの値が決められる。「最も近似するように」とは、測定値と式(1)の結果間のずれが最小になるようにとの意味である。このようにして、式中のP1、Pn及びQnを得ることができ、後述のようにこのP1及びPnからゲル分率が計算される。 なお、式(1)中のQnはN個の各成分の拡散係数に対応する。又、式(1)中のyとしては、NMRピーク強度の測定値をそのまま使用することも可能であるが、通常は、規格化されたNMRピーク強度、すなわちNMRピーク強度の測定値を、磁場勾配がない場合のNMRピーク強度の測定値で割った値が、yとして使用される。この場合、P1、Pnは、N個の各成分の存在比率に対応する。又、P1、Pn、Qnの添え字、1、nは、前記のように定義される各成分にそれぞれ対応し、小さい数字程、拡散係数の小さい成分に対応する。すなわち、添え字の1は、拡散係数が最小のゲルに対応するが、本発明で使用する前記式(1)では、溶媒に不溶なゲルについては拡散速度が非常に遅いため、その拡散係数Q1を0と仮定している。本発明者は、ゲルの拡散係数Q1を0と仮定することにより、近似の計算が容易になるとともに、測定精度への影響もほとんどないことを見出したのである。前記の方法により、P1、Pn及びQnを得ることができるので、ゲル分率と同時に、各成分の拡散係数Qn、及びゲル以外の成分の存在比率Pn(1<n)も同時に求めることができる。 磁場勾配強度等の変化に対するNMRピーク強度の減衰の測定値に、次式(1)が最も近似するように、数値、P1、Pn、Qnの値を決めるための具体的な方法としては、例えば、非線形最小二乗フィットが挙げられる。請求項3は、この態様に該当し、前記の本発明のパルス磁場勾配スピンエコーNMR測定であって、近似が、非線形最小二乗フィットにより行われることを特徴とする。非線形最小二乗フィットに使用できるアルゴリズムとしては、例えば、レーベンベルグ・マルカート(LM:Levenberg−Marquardt)を挙げることができる。 このようにして、近似によりP1及びPnが得られた後、このP1及びPnから次式に基づいてゲル分率(%)が計算される。 ゲル分率(%)=(P1/ΣPn)×100 ここで、ΣPnとは、1〜Nまでの全ての成分の存在比率の和である。本発明においては、この計算値を、ゲル分率(%)の測定値とする。 本発明における、パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定は、通常1H NMR測定により行われるが、13Cや19F等、他の核種のNMR測定により行うことも可能である。又、測定条件は、前記した事項以外については、通常のNMR測定と同様の方法、条件にて行われる。NMR分光計等も通常のものを使用することができる。通常、磁場勾配強度の変化の範囲は、0〜0.3T/m程度の範囲であり、磁場勾配パルス長の変化の範囲は1〜10m秒程度の範囲であり、拡散時間の変化の範囲は、0.1〜0.5秒の程度の範囲である。S/N比を向上させるため、同じ測定を10秒程度の間隔で繰り返し、積算してもよい。 NMR試料管についても、一般的に使用されているガラス製のNMRチューブを用いることも可能であるが、この場合、ガラスの内壁にゲル成分が付着し、算出されるゲル分率に誤差を与える可能性がある。そこで、NMR試料管の内径より小さい外径を有し、その長さがNMR試料管より短い内挿管に、樹脂試料を装填し、この内挿管を、さらにNMR測定用試料管内に装填して、前記パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を実施する方法が好ましい。試料を、NMR試料管より短い内挿管に装填することにより、ゲル成分が付着する試料管(内挿管)内壁の面積が小さくなるので、ゲル成分の付着を減らすことができ、ゲル分率に与える誤差も低減することができる。 請求項4は、この態様に該当し、前記の本発明のパルス磁場勾配スピンエコーNMR測定であって、NMR測定試料用溶媒に溶解せずかつNMR観測核(種)を含まない材質からなり、その長さがNMR測定用試料管より短く、NMR測定用試料管内にその位置が固定されるように挿入可能な内挿管に、前記樹脂溶液を装填し、その後この内挿管を、NMR測定用試料管内に挿入してこの試料管下部に固定し、前記パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を実施することを特徴とする樹脂中のゲル分率の測定方法を提供するものである。 本発明は、請求項6により、この請求項4の測定方法に用いられる内挿管を提供する。すなわち、NMR測定試料用溶媒に溶解せずかつNMR観測核(種)を含まない材質からなり、その長さがNMR測定用試料管より短く、NMR測定用試料管内にその位置が固定されるように挿入可能な内挿管である。 ここで、測定が1HNMRによる場合は、NMR観測核(種)とは水素原子である。従って、測定が1HNMRによる場合、内挿管の材質は、重水素化溶媒に溶解しないでかつ水素原子を含まない材料から選択されるが、このような材料としては、PTFE等のフッ素樹脂、ガラス等が挙げられる。中でも、ゲルとの付着性が小さいフッ素樹脂、特にPTFEが、ゲルの付着による測定誤差を減らすためには好ましい。 内挿管の長さは、樹脂試料を装填できる長さが必要であるが、一方、その範囲内では、短い方が、ゲルが付着する面積が小さくなるので好ましい。又、NMR測定用試料管内にその位置が固定されるように挿入可能とは、内挿管の外径が、NMR測定用試料管の内径よりわずかに小さく、従って、試料管内に挿入可能であるとともに、挿入後は、内挿管の外周と試料管の内周間にほとんど隙間がなく、測定時に試料管内で内挿管が振動しない様に固定されることを意味する。 本発明において、NMR測定されるゲルを含む樹脂試料としては、例えば、直鎖状あるいは分岐状高分子に架橋剤を反応させて、一部をゲル化させたもの、ビニル基等の結合部位を一つ有するモノマーに、結合部位を複数有するモノマーを加えて共重合させて得られる一部がゲル化した高分子が例示される。 前者の具体例としては、例えば、ノボラック樹脂の一部をポリアミンで架橋したもの、エポキシ樹脂の一部をポリアミンや酸無水物等で架橋したもの、ポリビニルアルコールやセルロース等を、そのOH基の一部とアルデヒドを反応させ、架橋したもの、ビニルポリマーを放射線、過酸化物、硫黄等により架橋したもの、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどのOH基を有する(メタ)アクリル樹脂を、イソシアネートにより架橋したもの等が挙げられる。 後者の具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸エステルなどの多官能ビニル化合物とスチレン、酢酸ビニルなどのビニル化合物の共重合体などが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどのOH基を有する(メタ)アクリル樹脂を、イソシアネートにより架橋したものに、本発明は好ましく適用される。 本発明の樹脂中のゲル分率の測定方法は、特に、光学フィルムに塗布された粘着剤を構成する樹脂のゲル分率の測定に、好ましく適用される。請求項5は、この態様に該当するものであり、前記の樹脂中のゲル分率の測定方法であって、樹脂試料が、光学フィルムに塗布された粘着剤であることを特徴とする樹脂中のゲル分率の測定方法を提供するものである。 前記のように、光学フィルムに塗布された後の樹脂を、大量にサンプリングすることは困難であるが、本発明によれば、測定に必要な試料の量は、従来の金属メッシュを用いた重量法に比べてはるかに少なくて良いのでサンプリングが容易である。このサンプリング法は、特に限定されるものではないが、通常は、光学フィルムの所定面積を、重水素化溶媒に浸して樹脂を膨潤させた後、スパチュラ等で膨潤した樹脂をかきとる方法による。かきとられた試料に、さらに重水素化溶媒を加えて溶解し、測定対象の樹脂溶液とし、測定に供せられる。 本発明の樹脂中のゲル分率の測定方法によれば、ゲルを含有する樹脂中のゲル分率、例えば光学フィルムに塗布された粘着剤の主成分である樹脂中のゲル分率を、少量の試料で、簡便にかつ迅速に測定することができる。 すなわち、本発明によれば、樹脂試料のサンプリング量は少なくてよく、従ってサンプリングは容易である。通常の光学フィルムに塗布された粘着剤(厚さ25μm程度)についてのゲル分率の測定を例にとると、従来の金属メッシュを用いた重量法では、8cm×8cm程度のフィルム面積に塗布された粘着剤をサンプリングする必要があったが、本発明によれば、1cm×1cm程度でよく、前記従来法と比べると1/64程度のサンプリング量でよい。 又、従来の金属メッシュを用いた重量法では、測定に約3日間かかるのに対して、本発明によれば2時間程度で充分測定可能であり、大幅に測定に要する時間を短縮できる。さらに下記の実施例の結果より明らかなように、各種の化学構造の樹脂について、従来の金属メッシュを用いた重量法の測定結果と同傾向の測定結果が得られ、精度の点でも優れた測定方法である。 このように、本発明は、光学フィルムに塗布された粘着剤に対して、少量の試料で、簡便で定量的なゲル分率の測定が可能であるので、粘着剤の性能とゲル分率との関係の調査に使用することができ、粘着剤開発に寄与することができる。 次に本発明を実施するための最良の形態を実施例として説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り、他の形態への変更も可能である。製造例1[粘着剤用の樹脂の製造] ブチルアクリレート/4−ヒドロキシブチルアクリレートの99/1(モル比)を酢酸エチルに添加し、さらに重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルを添加して混合した後、昇温して重合し、樹脂溶液を得た。製造例2〜7[粘着剤用の樹脂の製造] ブチルアクリレート/4−ヒドロキシブチルアクリレートの99/1(モル比)を、表1に示す種類及び組成(モル比)の原料モノマー(混合物)に代えた以外は、製造例1と同様の条件で重合を行い、それぞれ樹脂2〜7を得た。実施例1[光学フィルムの製造] 製造例1及び製造例2でそれぞれ得られた樹脂1及び樹脂2を、70:30の重量比で混合した後、得られた樹脂混合物に、架橋剤であるポリイソシアネート系化合物(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業製)を、樹脂の不揮発分100重量部に対し、不揮発分で0.13重量部を混合して樹脂を架橋した。その後この樹脂を、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるように塗布した。塗布はアプリケーターを使用して行い、塗布後90℃で1分間乾燥させシート状にした。次いで、偏光フィルム上に、前記の樹脂を有する面をラミネーターによって貼り合せた後、1〜2週間熟成させた。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離してゲル化した樹脂と偏光フィルムとの積層体を得た。[パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定] このようにして得られた積層体の樹脂側に、重クロロホルムを数滴垂らし、ゲル化した樹脂を膨潤させた。偏光フィルムの1cm×1cm(1cm2)上にある膨潤した樹脂を、金属スパチュラでかきとり、下記のようにして作製されたPTFE製内挿管(図2a)に入れ、約3mlの重クロロホルムを加えて攪拌した。この内挿管を5mmφガラス製NMR試料管(シゲミ社製)に挿入し(図2b)、室温でパルス磁場勾配スピンエコーNMR測定(PFGSE−NMR測定)を実施した。装置は日本電子社製ECA−500を使用した。 PFGSE−NMR測定のパルスシーケンスとしては、bpp−ste−ledとした。主な測定条件は、1H核90度パルス長は12.5μs、繰り返し時間は9.8秒、磁場勾配パルス長δは10ms、拡散時間Δは0.2秒として、磁場勾配強度Gを30mTから290mTまで16段階に変化させて測定した。積算回数は16回とした。全測定時間は1時間であった。 このPFGSE−NMR測定から得られたデータを、アルゴリズムとしてCONTINを使用して、逆ラプラス変換に相当する処理を行い、化学シフトを横軸とし拡散係数を縦軸とする2次元スペクトル(DOSYスペクトル)を得た。この2次元スペクトルは、低い拡散係数D1とより高い拡散係数D2の、2つの拡散係数に対応する位置に信号を有する。すなわち、成分数Nは2であり、拡散係数D2に対応する信号を、溶媒(重クロロホルム)可溶部の信号と帰属し、拡散係数D1に対応する信号を不溶部(ゲル)の信号と帰属した。 可溶部と不溶部両方に信号が存在しており、それぞれの信号が互いに孤立している化学シフトとして、4.0ppmを選択した。この化学シフトのピークは、ブチルアクリレートに由来する構造単位を有するアクリル樹脂において、ブチルアクリレートのエステル基のプロトンの中で最も酸素原子に近いプロトンのピークに該当する。この化学シフト4.0ppmにおけるピーク強度の、磁場勾配強度に対する減衰を、次式(3)で近似することにより、各成分の拡散係数と存在比率を求めた。(P1及びP2は、それぞれ不溶部(ゲル)及び可溶部の存在比率、Q1は可溶部の拡散係数、yはピーク強度、γは核磁気回転比、δは磁場勾配パルス長、Gは磁場勾配強度、Δは拡散時間を表す。) 近似には、非線形最小二乗フィット法を用いた。非線形最小二乗フィットのアルゴリズムとしては、レーベンベルグ・マルカート(LM:Levenberg−Marquardt)のアルゴリズムに基づき、既約χ2が最小になるように10回以上反復計算を行った。計算の初期値はP1=P2=1、Q1=1.0×10−10m2/sとし、P1、P2およびQ1を可変として非線形最小二乗フィット(カーブフィティング)を行った。得られたP1値を(P1+P2)で割った数に100をかけたものを、ゲル分率(%)とした。その結果を表2に示す。実施例2〜5 樹脂1及び樹脂2を、表2に示す種類及び組成の樹脂又は樹脂混合物に代え、かつ架橋剤の種類及び添加量(樹脂の不揮発分100重量部に対する不揮発分の重量部)を表2に示すように代えた(一部の製造例で、コロネートLの代りに、ポリイソシアネート系化合物である三井武田ケミカル製の架橋剤:商品名タケネートD160Nを用い、その添加量を変えた)以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムの製造及びパルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を行い、ゲル分率(%)を求めた。その結果を表2に示す。比較例1〜5 実施例1〜5でNMR測定に供された各積層体の樹脂について、金属メッシュを用いた重量法(以下及び図中ではメッシュ法と言う。)により、ゲル分率を測定し、その結果を表2に示した。メッシュ法は、前記と同様な方法、条件にて行った。[内挿管の作製] 前記の実施例のNMR測定に用いた内挿管は、図2aに示す形状であり、PTFE製のチューブを約8cmの長さに切断し、片方の切断面を、半田ごてを用いて融解させ、封じて作成した。内挿管の上部にネジ式ドライバーで直径1mm程度の穴を空けた。この穴に、針金などの細い棒の先を90度に曲げたものを引っ掛けることによって、内挿管の出し入れが容易にできる。 図3は、メッシュ法と本発明法の測定値の相関を示すグラフ図である。すなわち、横軸にメッシュ法で得られたゲル分率をとり、縦軸に本発明法(NMR法)で得られたゲル分率をとって、表2に示す測定値をプロットした図である。図3から明らかなように、ゲル分率(メッシュ法)20%以上の範囲で両者の間に良い相関が得られており、本発明法により、精度の高い樹脂中のゲル分率の測定が可能であることが示されている。2次元NMRスペクトル(DOSYスペクトル)の模式図である。本発明に用いるNMR試料管を示す概略断面図である。メッシュ法と本発明法の測定結果の相関を示すグラフ図である。 ゲルを含む樹脂試料を、NMR測定試料用溶媒と混合して得られたゲルを含む樹脂溶液の、パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を、 磁場勾配強度、磁場勾配パルス長又は拡散時間を変化させながら実施し、 その測定結果に、逆ラプラス変換に相当する処理を加えて、化学シフトを横軸とし拡散係数を縦軸とするDOSYスペクトルを得て、 このDOSYスペクトル中の、同一の拡散係数に対応する信号を、同一成分に帰属するとして、前記DOSYスペクトルから成分数Nを求め、 N個の成分の全てについて、前記DOSYスペクトルの信号が存在し、かつこの信号の全てが他の化学シフトにおける信号から孤立している化学シフトを選択し この化学シフトにおける、磁場勾配強度、磁場勾配パルス長又は拡散時間の変化に対するNMRピーク強度の減衰に、次式(1)が最も近似するように、式(1)中のP1及びPnを求め(式中、yはNMRピーク強度、Nは成分数、γは核磁気回転比、δは磁場勾配パルス長、Gは磁場勾配強度、Δは拡散時間を表し、かつP1、Pn及びQnは、それぞれ近似により求められる数値を表す。)、 得られたP1及びPnと、式:ゲル分率(%)=(P1/ΣPn)×100に基づいてゲル分率(%)を計算することを特徴とする樹脂中のゲル分率の測定方法。 パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を、磁場勾配強度を変化させながら実施することを特徴とする請求項1に記載の樹脂中のゲル分率の測定方法。 近似が、非線形最小二乗フィットにより行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂中のゲル分率の測定方法。 NMR測定試料用溶媒に溶解せずかつNMR観測核を含まない材質からなり、その長さがNMR測定用試料管より短く、NMR測定用試料管内にその位置が固定されるように挿入可能な内挿管に、前記樹脂溶液を装填し、その後この内挿管を、NMR測定用試料管内に挿入してこの試料管下部に固定し、前記パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を実施することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の樹脂中のゲル分率の測定方法。 樹脂試料が、光学フィルムに塗布された粘着剤であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の樹脂中のゲル分率の測定方法。 NMR測定試料用溶媒に溶解せずかつNMR観測核を含まない材質からなり、その長さがNMR測定用試料管より短く、NMR測定用試料管内にその位置が固定されるように挿入可能な内挿管。 【課題】 光学フィルム等に塗布された粘着剤の主成分の樹脂等、ゲルを含有する樹脂中のゲル分率を、少量の試料で、より簡便にかつ迅速に測定できる方法を提供する。【解決手段】 ゲルを含む樹脂試料の溶液の、パルス磁場勾配スピンエコーNMR測定を、磁場勾配強度等を変化させながら実施し、その測定結果に、逆ラプラス変換に相当する処理を加えて、化学シフトを横軸とし拡散係数を縦軸とする2次元NMRスペクトルを得て、この2次元NMRスペクトルから成分数Nを求め、N個の成分の全てについて、信号を有する化学シフトにおけるNMRピーク強度の、磁場勾配強度、磁場勾配パルス長又は拡散時間の変化に対する減衰に、理論式が近似するようにその係数を求め、得られた係数に基づいてゲル分率(%)を計算することを特徴とする樹脂中のゲル分率の測定方法。【選択図】 なし


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