タイトル: | 公開特許公報(A)_高純度クロルピクリン製造法 |
出願番号: | 2004192646 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 201/12,C07C 201/16,C07C 205/08 |
北島 利雄 吉田 智明 西村 裕二 紙地 信夫 JP 2006016308 公開特許公報(A) 20060119 2004192646 20040630 高純度クロルピクリン製造法 三井化学株式会社 000005887 北島 利雄 吉田 智明 西村 裕二 紙地 信夫 C07C 201/12 20060101AFI20051216BHJP C07C 201/16 20060101ALI20051216BHJP C07C 205/08 20060101ALI20051216BHJP JPC07C201/12C07C201/16C07C205/08 2 OL 6 4H006 4H006AA02 4H006AC30 4H006AD16 4H006BE36 本発明は、土壌薫蒸剤として知られているクロルピクリンの製造法に関する。 クロルピクリンは物質名トリクロロニトロメタンの一般名であり、他にクロロピクリン、クロールピクリンとも呼ばれているが、本発明では、以下、クロルピクリンと記述する。 クロルピクリンの製造法は、減圧下でニトロメタン水溶液を次亜塩素酸カルシウム水溶液で塩素化しながら、クロルピクリンを留出させる方法が知られている。(特許文献1参照) この方法にて、クロルピクリン合成を行ったところ、ニトロメタンに混在する不純物がクロルピクリン中に混入し、品質が悪化するという問題を生じた。 また、ニトロメタンと次亜塩素酸ナトリウム水溶液を常圧下で冷却しながら反応する方法が知られている。 ニトロメタンと次亜塩素酸ナトリウム水溶液を常圧下で反応させる方法では、冷却しながら反応すると記述されており、実際に反応熱を測定してみたところ、クロルピクリン生成1モルあたり360KJと発熱が非常に大きい事が確認された。かかる方法は、反応熱除去のため過大な冷却設備が必要であり、工業的なクロルピクリン製造には経済的に不適当である。(特許文献2参照) この方法にて、クロルピクリン合成を行ったところでも、ニトロメタン中に混在する不純物がクロルピクリン中に混入し、品質が悪化するという問題を生じた。特開2002−051524号公報米国特許3106588号明細書 本発明の課題は、不純物を含むニトロメタンより合成したクロルピクリンは、ニトロメタン中の不純物の影響により品質が悪化する問題があるので、該不純物を除去することに寄り品質改善を行い、高純度クロルピクリンを製造することである。 本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ニトロメタンに混入している不純物がメタノールやアセトニトリルという親水性有機物であることを確認し、ニトロメタンを水溶液とし次亜塩素酸塩水溶液と大気圧未満の圧力下に水溶液中で反応させると同時に、クロルピクリンと水を留出させ、クロルピクリンと水を分離後さらに水で洗浄することで、ニトロメタンに混入する不純物のクロルピクリンへの混入を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下のとおりである。[1]メタノール及び/又はアセトニトリルを不純物として含有するニトロメタンと次亜塩素酸塩を水溶液中で反応させ、共沸したクロルピクリンを水と分離後、得られたクロルピクリンに水を接触させて洗浄すること特徴とする、クロルピクリンの製造方法。[2]次亜塩素酸塩が次亜塩素酸カルシウムである[1]記載の高純度クロルピクリン製造法。 本発明により、親水性有機物を不純物として含むニトロメタン水溶液から合成したクロルピクリンを、水で洗浄することによりを高純度のクロルピクリンを製造することができる。 このように本発明の方法は、工業的に入手可能なニトロメタンより高純度のクロルピクリンを製造できる工業的に極めて価値のある発明である。 本発明ではニトロメタンと次亜塩素酸塩水溶液と反応しながら、クロルピクリンを水と共沸させ、共沸した水と分離したクロルピクリンをさらに水で洗浄することにより、ニトロメタン中に含まれる不純物を除去する特徴とする。ニトロメタンを工業的に製造する方法としては、ジメチル硫酸と亜硝酸ナトリウムから製造される方法及びパラフィン類をニトロ化からせ製造される方法の2種が知られている。 ジメチル硫酸と亜硝酸ナトリウムから製造されるニトロメタンには、メタノール、アセトニトリルが不純物として混入していることが確認され、アセトニトリル、メタノールの含有量は0.1重量%以下であった。このメタノール、アセトニトリルが混入したニトロメタンより合成されたクロルピクリンには、メタノール、アセトニトリルが不純物として混入することが確認された。 パラフィン類をニトロ化する方法から製造されるニトロメタンには、プロピオニトリル、ニトロエタン、2−ニトロプロパン等が不純物として混入しているが確認された。これらの不純物を含むニトロメタンより合成されたクロルピクリンには、プロピオニトリルは変化せずプロピオニトリルとして、ニトロエタン及び2−ニトロプロパンは塩素化され、1,1−ジクロロ−1−ニトロエタン及び2−クロロ−2−ニトロプロパンとなりクロルピクリンに混入することが確認された。 ジメチル硫酸と亜硝酸ナトリウムから製造されるニトロメタンに由来する不純物はクロルピクリンを水で洗浄することで除去できるが、パラフィン類をニトロ化して得られるニトロメタンに由来する不純物は、水洗浄では除去できないことが確認された。従って、パラフィン類をニトロ化して得られるニトロメタンは簡便な方法でクロロピクリン中のニトロメタン由来不純物が除去できないので原料としては不適当であり、ジメチル硫酸と亜硝酸ナトリウムから製造されるニトロメタンがクロロピクリンの製造には適している。 本発明に使用されるメタノール及び/又はアセトニトリルを不純物として含有するニトロメタンとは、不純物程度の濃度にメタノール及び/又はアセトニトリルを含有するニトロメタンを指し、好ましくはメタノールを0.01〜1重量%及び/又はアセトニトリルを0.01〜0.5重量%含有するニトロメタンであり、例えばそれはジメチル硫酸と亜硝酸ナトリウムから製造されるニトロメタンである。 洗浄に使用する水の量は多いほど好ましいが、経済的な面から好ましくは洗浄されるクロルピクリンの0.5〜5重量倍である。洗浄に使用する水の温度は2〜40℃、好ましくは10〜20℃である。洗浄時間は、長時間ではクロルピクリンが分解するので短時間が好ましい。水洗操作は槽によるバッチ式、スタティックミキサーによる連続式のいずれでも良い。 次亜塩素酸塩としては次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウムが知られているが、次亜塩素酸カルシウムが好ましく、次亜塩素酸カルシウム水溶液中の次亜塩素酸カルシウム濃度はいかなる濃度であっても良いが、好ましくは5〜15重量%である。 本反応は発熱反応であり、反応速度が非常に速いため瞬時に反応し反応熱が生成する。留出物の蒸発潜熱で反応温度上昇を防止するためニトロメタンまたはニトロメタン水溶液と次亜塩素酸カルシウム水溶液は、反応液中に連続的に供給しなが反応させるのが望ましい。 また、本反応は化学量論的にはニトロメタン1モルに対し次亜塩素酸分が3モル必要であるが、反応収率向上の点から過剰の次亜塩素酸分を用いる。過剰に用いる次亜塩素酸分の量は任意でよいが、経済的な面から過剰量は0.1モルから2.0モルが好ましい。 またこの反応液中の次亜塩素酸塩濃度は任意で良いが、反応機の容積効率及び製品への着色防止のため0.1重量%〜3.0重量%が好ましい。 反応は大気圧未満の減圧下、は20kpa以下の圧力で実施するのが好ましい。この圧力下では反応液は沸騰し、反応液中の水、クロルピクリンが蒸発し、その蒸発潜熱により反応液の温度上昇は防止される。 この減圧下で、反応温度はその反応液組成での蒸気圧で規定されるので、本発明では70℃未満の温度である。反応熱の加熱は、外部加熱、反応槽への飽和水蒸気または加熱水蒸気のいずれでも良い。 加熱に用いる熱量は、生成して留出するクロルピクリン蒸気に同伴される水蒸気潜熱量と、生成クロルピクリンを蒸発させるための潜熱量に不足する熱量を補う量あればよい。これよりも多い場合は水の蒸発が増えるだけとなり無駄に熱が消費されることとなる。また、これよりも少ないとクロルピクリンが反応液中に残り収率が低下する。 反応は撹拌装置を有する槽型反応装機を用いバッチ式あるいは連続式のいずれでも良い。また連続式の場合には反応機は1槽のみ、あるいは2槽以上のいずれでも良く、その滞留時間は任意の時間でよい。 なお、ニトロメタン及びクロルピクリンのガスクロマトグラフィーによる分析条件は以下のとおりであり、純度は面積%で表す。カラム:J&W DB−624(Agilent Technologies社)キャリアガス:ヘリウムキャリアガス流量:2ml/分温度:90℃検出器:FID 直径13cm、深さ25cmの3リットル容ガラス製反応器に直径8mm、深さ24cmのディップ管をとりつけた反応器1と反応器2(5リットル)をガラス管で連結した。反応器1に1%次亜塩素酸カルシウム水溶液3.0リットル(0.47モル)を入れ、40℃に温水浴中で昇温し、8kpaに減圧した。そこにアセトニトリル0.20%を含むニトロメタン49.0g(0.8モル)を水溶液550gとし、該液を深さ24cmのディップ管から、8%次亜塩素酸カルシウム水溶液3000g(3.38モル)を深さ10cmのディップ管から、それぞれ定量的に60分間かけて反応器1に連続供給し、連続供給中は、反応液を温水浴で加温し40℃に、圧力は8kpaに保った。反応器1をオーバーフローした液は反応器2に流入させた。ニトロメタン水溶液及び次亜塩素酸カルシウム水溶液の供給中及び供給後に留出する液を冷却管にて凝縮させ、得られた液を分液した。下層の一部を採り純度及びアセトニトリル含有量をガスクロマトグラフィーで測定した。更に、下層と温度20℃の水250gとを分液ロートに入れ、激しく振とうした後に分液し無色液体としてクロルピクリンを得た。純度及びアセトニトリル含有量はガスクロマトグラフィーにて測定した。1.水洗浄後のクロルピクリンの分析結果収量 127g(0.77モル)純度 99.9%収率 96.5%アセトニトリル 0.01%2.水洗浄前のクロルピクリンの分析結果純度 99.7%収率 96.5%アセトニトリル 0.20% 直径13cm、深さ25cmの3リットル容ガラス製反応器に直径8mm、深さ24cmのディップ管をとりつけた反応器1と反応器2(5リットル)をガラス管で連結した。反応器1に1%次亜塩素酸カルシウム水溶液3.0リットル(0.47モル)を入れ、40℃に温水浴中で昇温し、8kpaに減圧した。そこにメタノール0.39%を含むニトロメタン49.0g(0.8モル)を水溶液550gとし、該液を深さ24cmのディップ管から、8%次亜塩素酸カルシウム水溶液2900g(3.27モル)を深さ10cmのディップ管から、それぞれ定量的に60分間かけて反応器1に供給し、供給中、反応液は温水浴で加温し40℃に、圧力は8kpaに保った。反応器1をオーバーフローした液は反応器2に流入させた。ニトロメタン水溶液及び次亜塩素酸カルシウム水溶液の供給中及び供給後に留出する液を冷却管にて凝縮させ、得られた液を分液し、下層と温度18℃の水120gとを分液ロートに入れ、激しく振とうした後に分液し無色液体としてクロルピクリンを得た。純度及びメタノール含有量はガスクロマトグラフィーにて測定した。1.水洗浄後のクロルピクリンの分析結果収量 126g(0.76モル)純度 99.9%収率 95.8%メタノール 検出下限以下(検出下限 0.001%)2.水洗浄前のクロルピクリンの分析結果純度 99.8%収率 95.8%メタノール 0.1%[参考例1] 直径13cm、深さ25cmの3リットル容ガラス製反応器に直径8mm、深さ24cmのディップ管をとりつけた反応器1と反応器2(5リットル)をガラス管で連結した。反応器1に1%次亜塩素酸カルシウム水溶液3.0リットル(0.47モル)を装入し、40℃に温水浴中で昇温し、8kpaに減圧した。そこにプロピオニトリル0.63%、ジクロロエタン0.19%、2−ニトロプロパン0.07%を含むニトロメタン49.0g(0.8モル)を水溶液550gとし、該液を深さ24cmのディップ管から、8%次亜塩素酸カルシウム水溶液3200g(3.61モル)を深さ10cmのディップ管から、それぞれ定量的に60分間かけて反応器1にフィードし、フィード中、反応液は温水浴で加温し40℃に、圧力は8kpaに保った。反応器1をオーバーフローした液は反応器2に流入させた。ニトロメタン水溶液及び次亜塩素酸カルシウム水溶液のフィード中及びフィード後に留出する液を冷却管にて凝縮させ、得られた液を分液し、下層と温度18℃の水400gとを分液ロートに入れ、激しく振とうした後に分液し無色液体としてクロルピクリンを得た。純度及び不純物含有量はガスクロマトグラフィーにて測定した。収量 127g(0.77モル)純度 98.1%収率 96.5%プロピオニトリル 0.95%1,1−ジクロロニトロエタン 0.41%2−クロロ−2−ニトロプロパン 0.14% 工業的に入手可能なニトロメタンより高純度のクロルピクリンを工業的に製造することに適用できる。 メタノール及び/又はアセトニトリルを不純物として含有するニトロメタンと次亜塩素酸塩を水溶液中で反応させ、共沸したクロルピクリンを水と分離後、得られたクロルピクリンに水を接触させて洗浄すること特徴とする、クロルピクリンの製造方法。 次亜塩素酸塩が次亜塩素酸カルシウムである請求項1記載の高純度クロルピクリン製造法。 【課題】 工業的に入手可能なニトロメタンには不純物を混在している。当該ニトロメタンを原料として次亜塩素酸塩と水中で反応させて得られるクロルピクリン中に化混入するニトロメタン由来の不純物を低減して高純度なクロルピクリンを得る。【解決手段】 ニトロメタンと次亜塩素酸塩との反応後に原料ニトロメタンに由来するメタノール、アセトニトリルなどの親水性不純物を含むクロルピクリンを水で洗浄し当該不純物を除去する。【効果】 本発明の製造方法により得られるクロルピクリンはニトロメタン由来の不純物の混入が低減されており、本発明の製造法は工業的な高純度クロルピクリンの製造法として有用である。【選択図】 なし