生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_有機変性粘土鉱物及びその製造方法
出願番号:2004177370
年次:2006
IPC分類:C01B 33/42,A61K 8/19


特許情報キャッシュ

高橋 俊 ▲高▼田 素樹 JP 2006001759 公開特許公報(A) 20060105 2004177370 20040615 有機変性粘土鉱物及びその製造方法 株式会社資生堂 000001959 伊東 忠彦 100070150 高橋 俊 ▲高▼田 素樹 C01B 33/42 20060101AFI20051202BHJP A61K 8/19 20060101ALN20051202BHJP JPC01B33/42A61K7/00 B 5 OL 11 4C083 4G073 4C083AA16 4C083BB07 4C083DD41 4C083EE50 4G073AA03 4G073BA04 4G073BA10 4G073BA80 4G073BB37 4G073BC10 4G073CM22 4G073FA02 4G073FD02 4G073FD08 4G073GA01 4G073GA03 4G073UA08 4G073UB31 本発明は、有機変性粘土鉱物及び有機変性粘土鉱物の製造方法に関する。 有機変性粘土鉱物は、粘土鉱物に含まれる無機陽イオンの一部又は全部を有機陽イオンでイオン交換することで得られる物質である。このような有機変性粘土鉱物は、有機陽イオンを有し、有機陽イオンに含まれる疎水基が、油などの疎水性の有機物と親和性を有するため、有機変性粘土鉱物は、疎水性の有機物中に容易に分散することができる。このように有機変性粘土鉱物は、油脂などの疎水性の有機物中に分散することで、疎水性の有機物の粘度を増加させ、疎水性の有機物をゲル化することができる。 このため、有機変性粘土鉱物は、例えば、化粧品などに含まれる油分に対する増粘剤又はゲル化剤などに使用されている。一方、近年では、化学物質の環境に対する影響が注目されており、環境汚染の少ない化学物質の研究開発が活発に進められている。化粧品に関しても、使用済みの化粧品は、最終的には、下水道及び河川等を通じて環境中に放出されるため、環境汚染の少ない化粧品が、開発されてきている。このため、化粧品に添加される増粘剤又はゲル化剤として使用される有機変性粘土鉱物もまた環境を汚染しないことが望ましい。 ここで、有機変性粘土鉱物に用いられる粘土鉱物は、天然にも存在するため、環境を汚染する可能性は低い。よって、環境汚染の少ない有機変性粘土鉱物としては、粘土鉱物の無機イオンをイオン交換する有機陽イオンが、環境汚染の少ない有機陽イオンであることが要求される。すなわち、粘土鉱物の無機イオンをイオン交換する有機陽イオンが、環境中で分解されることが望ましい。 ところで、多くの場合、有機変性粘土鉱物としては、粘土鉱物に、有機アンモニウムイオンなどの有機陽イオンを生じる陽イオン性界面活性剤を反応させて、粘土鉱物に含まれる無機陽イオンを、有機陽イオンでイオン交換して得られる有機変性粘土鉱物が用いられている。 このような粘土鉱物に陽イオン性界面活性剤を反応させて得られる有機変性粘土鉱物の例は、多数存在するが、例えば、スメクタイト型粘土鉱物の層間に存在するカチオンが四級カチオン性窒素を含むカチオン性界面活性剤でカチオン交換されており、且つその結晶端面が親水化処理されている変性粘土鉱物が特許文献1に開示されている。また、特許文献1に開示される変性粘土鉱物は、油剤に対し優れたゲル化能を有し、高い増粘性、チキソトロピー性を付与することができることも開示されている。さらに、特許文献1に開示される上記の変性粘土鉱物を含有する、保存安定性及び使用性に優れた化粧料も開示されている。 しかしながら、陽イオン性界面活性剤は、殺菌性を有し、一般に環境中でほとんど分解されないことが知られている。よって、粘土鉱物に陽イオン性界面活性剤を反応させて得られる有機変性粘土鉱物は、陽イオン界面活性剤から生じる有機陽イオンが環境中で分解されないため、環境中に残留し、環境を汚染する可能性がある。特開平9−2816号公報 そこで、本発明は、環境を汚染する可能性が低減された有機変性粘土鉱物及び該有機変性粘土鉱物の製造方法を提供することを目的とする。 請求項1記載の発明は、有機変性粘土鉱物において、粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つが、生分解性を有する有機陽イオンでイオン交換されていることを特徴とする。 請求項1記載の発明によれば、環境を汚染する可能性が低減された有機変性粘土鉱物を提供することができる。 請求項2記載の発明は、有機変性粘土鉱物において、粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つが、両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンでイオン交換されていることを特徴とする。 請求項2記載の発明によれば、環境を汚染する可能性が低減された有機変性粘土鉱物を提供することができる。 請求項3記載の発明は、有機変性粘土鉱物の製造方法において、粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つを、生分解性を有する有機陽イオンでイオン交換することを特徴とする。 請求項3記載の発明によれば、環境を汚染する可能性が低減された有機変性粘土鉱物の製造方法を提供することができる。 請求項4記載の発明は、有機変性粘土鉱物の製造方法において、酸性の液体において両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤を粘土鉱物と反応させて、前記粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つを、前記両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンでイオン交換することを特徴とする。 請求項4記載の発明によれば、環境を汚染する可能性が低減された有機変性粘土鉱物の製造方法を提供することができる。 請求項5記載の発明は、請求項4記載の有機変性粘土鉱物の製造方法において、前記酸性の液体のpHは、2以上4以下であることを特徴とする。 請求項5記載の発明によれば、環境を汚染する可能性が低減された有機変性粘土鉱物をより容易に及びより効率良く提供することが可能な有機変性粘土鉱物の製造方法を提供することができる。 本発明によれば、環境を汚染する可能性が低減された有機変性粘土鉱物及び該有機変性粘土鉱物の製造方法を提供することができる。 次に、本発明の実施の形態について説明する。 まず、本発明による有機変性粘土鉱物について説明する。本発明による有機変性粘土鉱物においては、粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つが、生分解性を有する有機陽イオンでイオン交換されているか、又は両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンでイオン交換されている。 本発明による有機変性粘土鉱物に使用される粘土鉱物は、特に制限されないが、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、及びフッ素マイカなどの天然又は合成のスメクタイト型の粘土鉱物を挙げることができる。ここで、本発明に使用される粘土鉱物には、上記のスメクタイト型の粘土鉱物を単独又は組み合わせで用いることができる。 また、本発明に使用される粘土鉱物は、一般に、無機陽イオンを含む。例えば、上記のスメクタイト型の粘土鉱物は、層状の結晶構造を有し、粘土鉱物の層間には、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、及びAl3+などの無機陽イオンが存在する。これら粘土鉱物の無機陽イオンの一部又は全部は、粘土鉱物のSi−O−基の酸素原子にイオン結合しているか、又は遊離の無機陽イオンとして粘土鉱物の層間に存在する。本発明による有機変性粘土鉱物においては、これらの無機陽イオンの少なくとも一つ(一部又は全部)が、有機陽イオンでイオン交換される。このような有機陽イオンも、本発明による有機変性粘土鉱物においては、粘土鉱物のSi−O−基の酸素原子にイオン結合しているか、又は遊離の有機陽イオンとして粘土鉱物の層間に存在する。 次に、本発明に使用される粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つをイオン交換する有機陽イオンは、生分解性を有する有機陽イオンである。生分解性を有する有機陽イオンとしては、両性界面活性剤から生じる有機陽イオン及び半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンが挙げられる。よって、本発明による有機変性粘土鉱物において、粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つをイオン交換する有機陽イオンは、両性界面活性剤から生じる有機陽イオン及び半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンの一方又は両方であってもよい。 ここで、両性界面活性剤は、陽イオンを生ずる基及び陰イオンを生ずる基の両方を有する界面活性剤である。このため、両性界面活性剤が溶解する溶液又は分散する分散系のpHにより、両性界面活性剤は、陽イオン、陰イオン、又は中性分子となる。すなわち、上記のpHが等電点より酸性側にあるときには、両性界面活性剤は、水素イオンが陽イオンを生ずる基に配位することによって陽イオン性界面活性剤となり、逆に上記のpHが等電点より塩基性側にあるときには、両性界面活性剤は、水素イオンが陰イオンを生ずる基から電離することによって陰イオン性界面活性剤として作用する。 また、半極性界面活性剤は、半極性結合(無極性結合及び極性結合の中間の性質を有する結合)を有する界面活性剤である。半極性結合は、小さい双極子モーメントを有し、半極性結合を構成する原子のうち弱い正電荷を帯びた原子には、水酸化物イオンのような陰イオンが配位し、半極性結合を構成する原子のうち弱い負電荷を帯びた原子には、水素イオンのような陽イオンが配位する。その結果、半極性界面活性剤が溶解する溶液又は分散する分散系のpHにより、半極性界面活性剤は、陽イオン、陰イオン、又は中性分子となる。すなわち、上記のpHが酸性側にあるときには、半極性界面活性剤は、水素イオンが負電荷を帯びた原子に配位することによって陽イオン性界面活性剤となり、逆に上記のpHが塩基性側にあるときには、半極性界面活性剤は、水酸化物イオンが正電荷を帯びた原子に配位することによって陰イオン性界面活性剤として作用する。 本発明に使用される両性界面活性剤及び半極性界面活性剤は、特に限定されない。本発明で用いられる両性界面活性剤及び半極性界面活性剤しては、例えば、一般式1で表される、アミドベタイン型両性界面活性剤、一般式2で表される、アミドスルホベタイン型両性界面活性剤、一般式3で表される、アルキルベタイン型両性界面活性剤、一般式4で表される、スルホベタイン型両性界面活性剤、一般式5で表される、イミダゾリニウム型両性界面活性剤等、一般式6で表される、三級アミンオキシド型半極性界面活性剤が挙げられる。 上記の一般式1〜6において、R1 は、炭素原子数9〜17のアルキル基又はアルケニル基、R2 は、炭素原子数10〜18のアルキル基又はアルケニル基、xは、2〜4の整数、yは、0〜3の整数、zは、1〜2の整数である。また、本発明においては、これらの両性界面活性剤及び半極性界面活性剤の一種又は二種以上を任意に用いることができる。 上記のアミドベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルベタイン等が挙げられる。 上記のアミドスルホベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。 上記のアルキルベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルベタイン等が挙げられる。 上記のスルホベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、N−ラウリルスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、ラウリルアミドアルキレンジメチルアミノスルホベタイン等が挙げられる。 上記のイミダゾリニウム型両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルアミドヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−ココイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。 上記の三級アミンオキシド型半極性界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキシド、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。 なお、アミドベタイン型両性界面活性剤の市販品としては、レボン2000(登録商標)(三洋化成社製)、アノンBDF(登録商標)(日本油脂社製)等が挙げられる。アミドスルホベタイン型両性界面活性剤の市販品としては、ロンザイン−CS(登録商標)(ロンザ社製)、ミラタインCBS(登録商標)(ミラノール社製)等が挙げられる。アルキルベタイン型両性界面活性剤の市販品としては、アノンBL(登録商標)(日本油脂社製)、デハイントンAB−30(登録商標)(ヘンケル社製)等が挙げられる。スルホベタイン型両性界面活性剤の市販品としては、ロンザイン12CS(登録商標)(ロンザ社製)等が挙げられる、イミダゾリニウム型両性界面活性剤の市販品としては、オバゾリン662−N(登録商標)(東邦化学社製)、スワノールAM−101(登録商標)、スワノールAM−102EX(登録商標)(日光ケミカルズ社製)、アノンGLM(登録商標)(日本油脂社製)等が挙げられる。三級アミンオキシド型半極性界面活性剤の市販品としては、ユニセーフA−LM(日本油脂株式会社製)、ワンダミンOX−100(新日本株式会社製)、カチナールAOC(東邦化学株式会社製)、BARLOX 12(ロンザ社製)等が挙げられる。 本発明によれば、粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つを、生分解性を有する有機陽イオン又は両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンでイオン交換することで、環境を汚染する可能性が低減された有機変性粘土鉱物を提供することができる。すなわち、本発明による有機変性粘土鉱物においては、生分解性を有する有機陽イオン又は両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンが、従来の有機変性粘土鉱物に使用される陽イオン性界面活性剤と比較して殺菌性が低く、微生物により分解され得る。なお、陽イオン性界面活性剤の殺菌性が高く、陽イオン性界面活性剤は、微生物を殺菌するため、生分解性を有さないのに対して、両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤の殺菌性は低く、両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤は、微生物により分解されることは、一般的に知られており、例えば、1991年9月13日に開催された国際化粧品技術者会連盟のヘルシンキ大会で、Dr.Andreas Domschによって発表された論文RAW MATERIALS FOR COSMETIC PRODUCTS AS VIEWED FROM ENVIRONMENTALASPECTS − BIODEGRABILITY,ECOTOXICITY,ANIMAL TESTINGにも記載されている。また、粘土鉱物は、天然に存在するため、粘土鉱物は、分解する必要がない。よって、本発明による有機変性粘土鉱物は、環境を汚染する可能性が低減することができる。さらに、本発明による有機変性粘土鉱物を化粧品などに配合されるときには、従来の有機変性粘土鉱物と比較して本発明による有機変性粘土鉱物の皮膚に対する刺激性は低減される。 次に、本発明による有機変性粘土鉱物の製造方法について説明する。本発明による有機変性粘土鉱物は、上記のように、粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つを、生分解性を有する有機陽イオンでイオン交換することで製造される。また、本発明による有機変性粘土鉱物は、粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つを、両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンでイオン交換することで製造される。この場合には、酸性の液体において両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤を粘土鉱物と反応させる。このように、酸性の液体において両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤を粘土鉱物と反応させることで、両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンを生成させることができる。具体的には、上述したように、両性界面活性剤は、水素イオンが陽イオンを生ずる基に配位することによって有機陽イオンとなり、半極性界面活性剤は、水素イオンが負電荷を帯びた原子に配位することによって有機陽イオンとなる。そして、このように生成した両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生成した有機陽イオンが、粘土鉱物の酸素原子にイオン結合した有機変性粘土鉱物を得ることができる。 酸性の液体において両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤を粘土鉱物と反応させる場合において、酸性の液体のpHは、使用する両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤によって異なるが、好ましくは、2以上4以下である。上記の酸性の液体のpHが、2より小さい場合には、液体における水素イオンの濃度が高すぎて、粘土鉱物の無機イオンが、両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンではなく、水素イオンでイオン交換され、本発明による有機変性粘土鉱物を得ることが困難になる。また、pHが2よりも小さい液体を調製することは、実際には、容易ではなく、pHが2よりも小さい液体は、反応器を腐食するなどの作業性が良好でない。また、上記の酸性の液体のpHが、4より大きい場合には、両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から十分な濃度の有機陽イオンを生成せず、よって、粘土鉱物の無機イオンを有機陽イオンで十分にイオン交換することができず、本発明による有機変性粘土鉱物を得ることが困難になる。従って、本発明による有機変性粘土鉱物は、好ましくは、2以上4以下であるpHの液体中で両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤を粘土鉱物と反応させることで、より容易に及び効率良く得られる。 本発明による有機変性粘土鉱物は、有機陽イオンを有するため、例えば油脂などの疎水性の有機物において容易に分散することができる。このため、本発明による有機変性粘土鉱物を、疎水性の有機物中に分散させることで、疎水性の有機物の粘土を増加させることができる。その結果、本発明による有機変性粘土鉱物を、疎水性の有機物に対する増粘剤又はゲル化剤などに利用することがきる。例えば、本発明による有機変性粘土鉱物を化粧料に含まれる油分の増粘剤又はゲル化剤として使用することができる。 また、本発明による有機変性粘土鉱物の増粘剤又はゲル化剤は、両性界面活性剤又は半極性界面活性剤から生ずる有機陽イオンを含むので、陽イオン界面活性剤から生ずる有機陽イオンを含む有機変性粘土鉱物からなる増粘剤又はゲル化剤よりも環境を汚染する可能性が低減され、好ましい。 [実施例] 両性界面活性剤であるドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン(商品名:アノンBL(登録商標))に塩酸を添加し、pH=3の塩酸水溶液を調整した。この塩酸水溶液におけるドデシルジメチルアミノ酢酸ベタインの濃度は、0.05mol/lであった。次に、この塩酸水溶液に、粘土鉱物である1gの合成マイカ(組成:Na0.66Mg2.63(Si3.98Al0.02)O10.02F1.96)(コープケミカルより入手可能なフッ素マイカ、商品名ME100)を分散させて、室温で2時間攪拌した。このようにして合成マイカにドデシルジメチルアミノ酢酸ベタインを反応させ、合成マイカの無機イオンを、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタインから生ずる有機陽イオンでイオン交換した。イオン交換の反応後の液体を濾過し、得られた固体を、水/エタノール=1/1溶液で洗浄した後、乾燥させて、両性界面活性剤から生じる有機陽イオンを含む目的の有機変性粘土鉱物を得た。 次に、得られた有機変性粘土鉱物及び粘土鉱物の両方に対してX線回折の測定を行った。図1は、得られた有機変性粘土鉱物のX線回折の測定結果を説明する図であり、(a)は、有機変性粘土鉱物のX線回折パターンを示す図であり、(b)は、粘土鉱物のX線回折パターンを示す図である。なお、図1(a)及び(b)において、横軸は、有機変性粘土鉱物又は粘土鉱物の試料に入射するX線と有機変性粘土鉱物又は粘土鉱物の試料によって回折されるX線とのなす角2θ(度)を示し、縦軸は、有機変性粘土鉱物又は粘土鉱物の試料によって回折されたX線の相対強度(任意単位)を示す。また、X線回折の測定に用いたX線は、CuKα線である。図1(a)に示す有機変性粘土鉱物のX線回折パターンを、図1(b)に示す粘土鉱物のX線回折パターンと比較すると、有機変性粘土鉱物の試料に入射するX線と有機変性粘土鉱物の試料によって回折されるX線とのなす角は、粘土鉱物の試料に入射するX線と粘土鉱物の試料によって回折されるX線とのなす角よりも小さい。これより、有機変性粘土鉱物の試料によって回折されるX線の回折角θは、粘土鉱物の試料によって回折されるX線の回折角よりも小さく、有機変性粘土鉱物の層間の間隔は、粘土鉱物の層間の間隔よりも大きいことがわかる。よって、粘土鉱物の合成マイカの無機イオンが、両性界面活性剤であるドデシルジメチルアミノ酢酸ベタインから生じる有機陽イオンでイオン交換された有機変性粘土鉱物が得られたことを確認することができた。 次に、得られた有機変性粘土鉱物に対して、炭素、水素、及び窒素に関する元素分析を行った。得られた有機変性粘土鉱物に関する元素分析の結果は、炭素24.25%、水素4.73%、及び窒素1.94%であった。この元素分析の結果より、得られた有機変性粘土鉱物に炭素、水素、及び窒素が含まれており、粘土鉱物の合成マイカの無機イオンが、両性界面活性剤であるドデシルジメチルアミノ酢酸ベタインから生じる有機陽イオンでイオン交換された有機変性粘土鉱物が得られたことを確認することができた。また、粘土鉱物の合成マイカに添加した両性界面活性剤であるドデシルジメチルアミノ酢酸ベタインの量に対する、合成マイカの無機イオンをイオン交換した有機陽イオンを生成したデシルジメチルアミノ酢酸ベタインの量の比は、0.21mol%であった。この結果は、粘土鉱物の合成マイカの層間に0.21mol%の両性界面活性剤であるドデシルジメチルアミノ酢酸ベタインが挿入されたことを示す。 このようにして、粘土鉱物の無機陽イオンを、生分解性を有する有機陽イオンでイオン交換した有機変性粘土鉱物を得ることができた。 従って、本発明によれば、従来の陽イオン性界面活性剤から生ずる有機陽イオンを含む有機変性粘土鉱物と比較して、環境を汚染する可能性が低減された、両性界面活性剤から生ずる有機陽イオンを含む有機変性粘土鉱物を得ることができる。 以上、本発明の実施の形態及び実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態及び実施例を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。 本発明は、環境を汚染する可能性が低減された有機変性粘土鉱物及び該有機変性粘土鉱物の製造方法に適用することができる。本発明は、有機変性粘土鉱物及び有機変性粘土鉱物を用いる様々な技術分野に応用することができる。例えば、本発明による有機変性粘土鉱物及びその製造方法は、化粧品などに含まれる油分に対する増粘剤又はゲル化剤など及びそれら増粘剤又はゲル化剤の製造方法に用いることができる。実施例1に示す有機変性粘土鉱物のX線回折の測定結果を説明する図であり、(a)は、有機変性粘土鉱物のX線回折パターンを示す図であり、(b)は、粘土鉱物のX線回折パターンを示す図である。符号の説明 なし 粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つが、生分解性を有する有機陽イオンでイオン交換されていることを特徴とする有機変性粘土鉱物。 粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つが、両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンでイオン交換されていることを特徴とする有機変性粘土鉱物。 粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つを、生分解性を有する有機陽イオンでイオン交換することを特徴とする有機変性粘土鉱物の製造方法。 酸性の液体において両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤を粘土鉱物と反応させて、前記粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つを、前記両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンでイオン交換することを特徴とする有機変性粘土鉱物の製造方法。 前記酸性の液体のpHは、2以上4以下であることを特徴とする請求項4記載の有機変性粘土鉱物の製造方法。 【課題】 環境を汚染する可能性が低減された有機変性粘土鉱物及び該有機変性粘土鉱物の製造方法を提供する。【解決手段】 有機変性粘土鉱物においては、粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つが、生分解性を有する有機陽イオン又は両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンでイオン交換されている。有機変性粘土鉱物の製造方法においては、粘土鉱物の無機陽イオンの少なくとも一つを、生分解性を有する有機陽イオンでイオン交換するか、又は酸性の液体において両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤から生じる有機陽イオンでイオン交換する。【選択図】 なし


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