タイトル: | 特許公報(B2)_アミノ酸の精製方法 |
出願番号: | 2004163593 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 227/40,C07C 229/08 |
高松 義和 山本 実 JP 4601332 特許公報(B2) 20101008 2004163593 20040601 アミノ酸の精製方法 旭化成ケミカルズ株式会社 303046314 高松 義和 山本 実 20101222 C07C 227/40 20060101AFI20101202BHJP C07C 229/08 20060101ALI20101202BHJP JPC07C227/40C07C229/08 C07C 227/40 C07C 229/08 特開2002−194025(JP,A) 特開2003−221370(JP,A) 特開2003−212829(JP,A) 特開平08−012632(JP,A) 特開2002−088036(JP,A) 特公昭38−005104(JP,B1) 米国特許第02985589(US,A) 6 2005343812 20051215 17 20070531 品川 陽子 本発明は、食品添加剤や、医薬、農薬などの原料として広く使用されているアミノ酸の製造方法、さらに詳しくはアルカリ金属による加水分解反応により合成されたアミノ酸アルカリ金属塩からアミノ酸を精製、製造する方法に関するものである。 グリシン、アラニンの如きα−アミノ酸の製造方法として、シアンヒドリンとアンモニアを反応させ、得られたα−アミノニトリルを加水分解する方法はストレッカー反応として公知である。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、に記載されている。この際、ストレッカー法で得られるα−アミノ酸は、そのアルカリ金属塩として得られることになる。 得られたアミノ酸アルカリ金属塩水溶液から、アミノ酸を製造する方法としては、該アミノ酸アルカリ金属塩水溶液を硫酸で中和した後、晶析法にてアミノ酸を回収する方法が提案されている。特許文献5、特許文献6に記載されている。しかしながら、上記の方法では、例えば、グリシンナトリウム塩水溶液を精製する際に、生成する硫酸ナトリウムはグリシンと溶解度が酷似しているため一段の晶析では十分回収できず、そのため高温で硫酸ナトリウムの一部を晶析し、次に低温でグリシンを晶析する操作を複数回繰り返す等の煩雑な操作が必要であった。 一方、陽イオン交換樹脂を用いてアミノ酸アルカリ金属塩水溶液のアルカリ金属イオンを陽イオン交換(脱塩)しアミノ酸水溶液を得る方法として弱酸性陽イオン交換樹脂を用いる方法は、特許文献1、特許文献7、特許文献8に記載されていて、強酸性陽イオン交換樹脂を用いる方法が、特許文献9に記載されている。 一般的には、用いるイオン交換樹脂としては、アルカリ金属とアミノ酸のアミノ基との吸着能に選択性のあることが必要であり、樹脂への吸着を極力避けるためにも、弱酸性陽イオン交換樹脂が適当であろう。 また、イオン交換樹脂を用いるイオン交換装置に於いて樹脂を連続的に移動させることにより、固定床式に比べて使用樹脂絶対量の減少、イオン交換及び再生効率の向上を図る提案がなされており、例えば、移動床式を用いイオン交換通液、再生、水洗各塔を有機的に連絡し、通液による塔内圧で樹脂を自動的に排出させて次塔ホッパーに移送し、次に液抜による塔内圧低下で排出した量に相当する樹脂を上部ホッパーより塔内に導入し、それに見合う樹脂量を該ホッパーに他塔より塔内圧で自動的に徐々に移動させるようにし再びもとの通液状態に復させ、これを繰り返して樹脂を連続的に移動させる方法が提案されており、例えば、特許文献10、非特許文献1に記載されている。 しかしながら、アミノ酸アルカリ金属塩水溶液の脱塩精製といった高濃度イオン溶液のイオン交換をこれらの移動床式連続イオン交換装置を用いて行なうといった提案は無く、専ら、希薄なイオン溶液からの回収に利用されている。 グリシン、アラニン等のα−アミノ酸のアルカリ金属塩水溶液の脱塩精製をイオン交換樹脂により実施する場合、アミノ酸の吸着による製品回収効率の低下を考慮すると、H型の弱酸性陽イオン交換樹脂を用いることが有利である。しかしながら、弱酸性陽イオン交換樹脂は膨張することが知られている。一般に、スルフォン酸基を官能基とし、母体がスチレン系樹脂である強酸性陽イオン交換樹脂では、例えば、H型からNa型への交換では全く膨潤しない(逆に収縮)のに対して、カルボン酸基を官能基とし、母体がメタクリル系樹脂である弱酸性陽イオン交換樹脂では、H型からNa型への交換に伴う膨潤率は90%(体積が1.9倍に)、母体がアクリル系樹脂である弱酸性陽イオン交換樹脂では50%(体積が1.5倍)にもなると報告されている。イオン交換プロセスとして一般的に用いられる固定床装置を工業的に実施する場合、樹脂の急激な体積膨張が生じた際に、液の偏流を起こしイオン交換反応効率の低下を招くこと、また、塔下部の樹脂に膨大な圧力が掛かり、樹脂の損耗が激しくなることが懸念される。従って、イオン交換効率、置換効率が低下し、一方では、頻繁な樹脂の追添が必要となる。また、交換塔が樹脂膨張に伴う圧力により変形、破壊する恐れすらあり、装置設計上、強度的配慮、液供給方法、液回収方法に特殊な構造が要求される。 これら弱酸性陽イオン交換樹脂の膨張に伴う、交換効率、水洗効率の低下、或いは、交換塔設計上、内挿物、強度への対策、又、樹脂の損耗による樹脂追添が必要といった問題は、本発明を工業的に実施する場合に不利であると云わざるを得ない。加えて、本発明は、最終的に固体として製品化するアミノ酸の精製に関するものであり、原料液(被処理液)をなるべく高濃度で交換処理に供し、また、全てのイオン交換基を利用して効率的に精製する必要があり、固定床装置で実施する場合には樹脂膨張挙動が交換塔全域に亘って発生する事になる為、特に、上述の樹脂膨張に伴う諸問題が顕著に現れるものである。 また、固定床イオン交換装置でイオン交換処理を行う際、製品として得られるアミノ酸水溶液中にアルカリ金属が所定の濃度に達した(即ち、イオン交換樹脂の破過点)処で通液を停止する。この時、イオン交換塔内には樹脂同伴液(イオン交換樹脂1m3中には空隙水0.5m3を含んでいる。)として、被処理液(原料)が残存しておりこれを回収する為に、純水を供給して置換(押し出し)、水洗が行われる。この水洗水には有効成分が含有されており、原料として回収される為、結果として原料が希釈されてしまう。また、樹脂再生後には、再生剤である鉱酸、鉱酸アルカリ金属塩を除去するために同様に水洗された後、再度、通液処理を再開するが、この時にH型樹脂が保有する空隙水により(製品アミノ酸が排出され始めるまでは廃棄できるであろうが)製品アミノ酸の水溶液が、原料濃度に対して希釈されてしまうことは不可避である。製品アミノ酸は通常、固体として製品化される為、水は回収される必要があり、多大な希釈は工業的に実施する上で不利である。 また、固定床イオン交換装置でイオン交換処理を行う際、通常は上述の如き運転手法を採用するので、製品アミノ酸の水溶液中にある程度のアルカリ金属の漏洩は避けられず、また、これを抑制しようとすると充填イオン交換樹脂の先端部を有効に利用しない状態で交換処理を終了する事となり、即ち、イオン交換樹脂塔先端部には一部、アミノ酸のアミノ基が交換吸着している事となる。水洗置換を過剰に実施すると上記、希釈の問題もあるため、結果として一部アミノ酸が吸着したまま再生工程に持ち込まれ、有用なアミノ酸のロスに繋がる他、廃棄物による環境負荷の増大にまで影響を与える。この問題を回避する方法として、特許文献8では、破過後もさらにアミノ酸アルカリ金属塩を供給する方法が提案されており、再生処理液中のアミノ酸(グリシン)濃度は110ppm/SO4に抑制されたと報告されている。しかしながらこの方法では、リサイクルされる原料が増加する等の問題があり、また、製品中のアルカリ金属の漏洩については解決できておらず、製品アミノ酸(グリシン)中のナトリウムイオン濃度は、240wtppm/グリシンに相当する。 さて、イオン交換樹脂には、その製法によって基礎母体が微小球の凝集によって一個の球状粒子が形成されているもの、三次元の網目構造を有するが架橋剤含量によって基礎母体が緻密で物理的強度の高いものがある。前者は微小球粒子の集隗により生ずる空間容積を持つため、拡散速度、イオン交換速度が速いが、樹脂強度が弱く、上述の樹脂膨張に伴う欠点を回避できない。後者は、やや樹脂強度では優る為、樹脂膨張に伴う問題は軽減されると予測されるが、基礎母体が緻密である為にイオン交換速度が遅く、アルカリ金属とアミノ酸のアミノ基との吸着能選択性が小さい為に、固定床方式では効率的な製品回収が困難であるので適用できない。 以上の様な事実欠点は、アミノ酸アルカリ金属塩水溶液の脱塩精製を弱酸性陽イオン交換樹脂を用いた固定床イオン交換プロセスで工業的に実施する際の大きな課題であると云わざるを得ない。特公昭29−8677号公報特公昭59−28543号公報特公昭51−24481号公報特公昭57−53775号公報特公昭58−8383号公報特公昭36−21315号公報特開2003−221370号公報特公平7−68191号公報特公昭38−5104号公報宮原昭三、大曲隆昭、酒井重男共著(1972):実用イオン交換,p72(化学工業社) 本発明の方法の課題は、上記従来技術の欠点を解決し、アミノ酸アルカリ金属塩のイオン交換樹脂による脱塩精製を実施する場合に、弱酸性陽イオン交換樹脂の特性である樹脂膨張に伴う、樹脂の損耗、交換効率の低下、洗浄効率の低下といった問題を回避し、製品液の希釈を大幅に抑制できて完全な脱塩を達成し、加えて、アミノ酸のロスが殆ど無く、再生に用いた鉱酸のアルカリ金属塩水溶液中のアミノ酸混入量を大きく抑制し、さらに、物理的強度には優れるものの吸着選択性が低い為に通常の固定床方式では効率的な精製が不可能である様なイオン交換樹脂を用いても上記の効果が発現できる為、樹脂損耗をさらに抑制することを目的課題とする。 本発明者らは、上記の課題を解決する為に、鋭意検討を重ねた結果、アミノ酸アルカリ金属塩水溶液のイオン交換樹脂による脱塩処理を移動床式連続イオン交換法で行なう事により、樹脂膨張に伴う問題を回避できること、また、製品液の希釈を大幅に抑制できること、完全な脱塩が達成できること、アミノ酸のロスが殆ど無く、再生に用いた鉱酸のアルカリ金属塩水溶液中のアミノ酸混入量を大きく抑制できること、物理的強度には優れるものの吸着選択性が低い為に通常の固定床方式では効率的な精製が不可能である様なイオン交換樹脂を用いても上記の効果が発現できることを見い出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、アミノ酸アルカリ金属塩水溶液のイオン交換樹脂による脱塩処理を移動床式連続イオン交換法で行なう事を特徴とする、アミノ酸アルカリ金属塩の精製方法である。すなわち、本発明は、下記1)から6)の発明である。 1) アミノ酸アルカリ金属塩水溶液のイオン交換樹脂による脱塩精製処理を移動床式連続イオン交換装置を用いて行なう事を特徴とするアミノ酸の精製方法。 2) 精製処理されるアミノ酸アルカリ金属塩水溶液が、グリシン、アラニンの如きα−アミノ酸アルカリ金属塩水溶液であることを特徴とする前記1)に記載のアミノ酸の精製方法。 3) 用いるカチオン性イオン交換樹脂が弱酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とする前記1)に記載のアミノ酸の精製方法。 4) 用いる弱酸性陽イオン交換樹脂が、Na交換型における圧潰強度が200g/粒以上の弱酸性陽イオン交換樹脂である事を特徴とする前記3)に記載のアミノ酸の精製方法。 5) 移動床式連続イオン交換プロセスが少なくとも、1:イオン交換反応を行なう交換(吸着)塔、2:イオン交換樹脂の同伴液を置換する置換塔、3:鉱酸水溶液を供給し、アルカリ金属イオンで交換された樹脂をH型に再生する再生塔の3塔を含む構成からなることを特徴とする前記1)に記載のアミノ酸の精製方法。 6) イオン交換反応を行なう交換(吸着)塔への供給被処理液のアルカリ金属イオン濃度が、0.5〜3.0eq/Lの範囲であることを特徴とする前記1)に記載のアミノ酸の精製方法。 本発明によれば、アミノ酸アルカリ金属塩のイオン交換樹脂による脱塩精製を実施する場合に、弱酸性陽イオン交換樹脂の特性である樹脂膨張に伴う、樹脂の損耗、交換効率の低下、洗浄効率の低下といった問題を回避できる。また、製品液の希釈を大幅に抑制できる。また、完全な脱塩が達成できる。加えて、アミノ酸のロスが殆ど無く、再生に用いた鉱酸のアルカリ金属塩水溶液中のアミノ酸混入量を大きく抑制できる。さらに、物理的強度には優れるものの吸着選択性が低い為に通常の固定床方式では効率的な精製が不可能である様なイオン交換樹脂を用いても上記の効果が発現できる為、樹脂損耗をさらに抑制することが可能である。 以下、本発明について詳細に説明する。 本願は、”移動床式連続イオン交換プロセス(装置)”を用いたアミノ酸(例グリシン)アルカリ金属塩の脱塩を行う方法であります。1例を示すと下記式になります。 NH2-CH2-COONa + H-Resin → NH2-CH2-COOH + Na-Resin (脱塩精製) グリシンソーダ塩 グリシン Na-Resin + 1/2 H2SO4 → H-Resin + 1/2 Na2SO4 (樹脂の再生工程)用いられたイオン交換樹脂は各塔を移動しながら、液置換され(原料の回収)、再生され(硫酸処理されH型に戻る)再度、液置換され(ボイドの水で製品アミノ酸が希釈される事を防止する。)、交換塔(上記、交換反応が行われる。)へ戻ってきます。 本発明に用いるイオン交換装置は、好ましくは、特許文献10に記載されている様な、即ち、移動床式を用いイオン交換通液、再生、水洗各槽を有機的に連絡し、通液による槽内圧で樹脂を自動的に排出させて次槽ホッパーに移送し、次に液抜による槽内圧低下で排出した量に相当する樹脂を上部ホッパーより槽内に導入し、それに見合う樹脂量を該ホッパーに他槽より槽内圧で自動的に徐々に移動させるようにし再びもとの通液状態に復させこれを繰り返して樹脂を連続的移動させる事を特徴とする移動床式連続イオン交換装置である。 本発明におけるイオン交換装置の好ましい塔構成は、少なくとも、1:イオン交換反応を行なう交換(吸着)塔、2:イオン交換樹脂の同伴液を置換する置換塔、3:鉱酸水溶液を供給し、アルカリ金属イオンで交換された樹脂をH型に再生する再生塔の3塔を含む構成からなる。好ましい一例としては、図2に示す様に、1:イオン交換反応を行なう交換(吸着)塔、2:交換されたイオン交換樹脂の同伴液を水置換し、被処理液(原料)を回収する第二置換塔、3:鉱酸水溶液を供給して、アルカリ金属イオンで交換された樹脂をH型に再生し、かつ、再生樹脂の同伴液を水置換する再生塔、4:再生されたH型イオン交換樹脂の同伴液を製品アミノ酸水溶液で置換し、製品液の希釈を抑制する第一置換塔の構成とするイオン交換装置が用いられる。図2では、再生塔は再生剤を中段より供給するとともに、純水を塔下段より供給し、イオン交換樹脂の再生と再生樹脂の液置換を一塔で行っているが、勿論、再生塔、置換塔の二塔としても良い。同様に、交換塔と第二置換塔を一塔としても構わない。また、製品アミノ酸水溶液の希釈が容認できるのであれば、第一置換塔を省略するといった構成も可能である。 以下、本発明を工業的に実施する場合の一例を図面に従って詳細に説明する。尚、本願のいう移動床式とは槽内で樹脂がベッド状に存在しその樹脂がベッド状を保持したまま移動する方式を指すものである。図1または、図2において、1は被処理液の交換(吸着)塔、2、4は置換塔、3は再生塔を示す。交換塔において通液ポンプ5により原料流入口6から導入された原液は交換塔内部を上昇する間に塔内部にベッド状に存在するイオン交換樹脂10と接触し、イオン交換反応が行なわれた後、処理液(アミノ酸水溶液)は、処理液排出口7からフィルター11を通して排出される。 この際、ポンプによって送入される原液によって塔内は一定の加圧状態にあり、その内圧によってイオン交換に用いられた樹脂は塔下部にある樹脂排出口9から塔内の液と同伴して第二置換塔の上部にあるホッパー19に自動的に圧送される。或る適当時間、上述の運転が継続された後、サイクルタイマーの作動によって通液用の電磁弁15が閉じると同時に抜液用の電磁弁16が開いて塔内の液の一部が内圧およびヘッドによりフィルター12を通して液抜き口8から自動的に排出される。かくして塔内の液圧が低下するので第二置換塔への樹脂の圧送が止まり、且つ、塔上部のホッパー13に貯えられた再生、液置換(第一置換塔にて樹脂同伴液は製品アミノ酸水溶液に置換されている)の終了した樹脂17がヘッド差によってボールバルブまたはバタフライバルブの如き逆止弁18を通して交換塔内部に導入されることになる。 或る適当時間後、再びタイマーの作動によって液抜き用の電磁弁16が閉じると同時に通液用の電磁弁15が開き、通液が開始されるので塔内の圧が上昇して逆止弁が閉じる結果、ホッパーからの樹脂流入が止まり、塔下部の樹脂は再び、第二置換塔へ漸次圧送される。同様に、ホッパーから交換塔内へ導入された樹脂量に見合う再生、置換が終了した樹脂は、第一置換塔の下部樹脂排出口24から第一置換塔通液中にその塔内圧によって自動的に徐々に排出され圧送されてくる。ホッパー上部には液のみを通すフィルター14が設けられており、第一置換塔から交換塔ホッパー内に圧送されてくる樹脂はホッパー上部のフィルターまで樹脂が満杯になるとそれ以上は入らないから、内圧がバランスして自動的にその流入が止まる。 この関係は、交換塔から第二置換塔へ、第二置換塔から再生塔へ、再生塔から第一置換塔への樹脂移動も同じである。各塔の液と樹脂の移動は上述の交換塔におけるそれと全く同じ機構で行なわれるが、各々、再生効率、置換効率、交換速度など各塔固有の条件により、塔の大きさは適宜、設定されている。この様な樹脂移動の方法によれば、樹脂は単なるヘッド或いは液圧によって移送され、特に機械的な移送装置を必要としないので樹脂の損耗への影響は殆んど無い。 本発明の方法のイオン交換装置を用いると原理的には液を移動させずに、樹脂のみを下部へ移動させる事ができるので、液の置換効率は極めて高い。 本発明の方法におけるイオン交換装置の第一置換塔では、塔上部ホッパーから塔内へ再生処理されたH型樹脂が水をボイドとして投入される。一方、塔下部からは、製品アミノ酸水溶液を供給し、樹脂層ボイド液を製品アミノ酸水溶液で置換する。従って、再生樹脂のボイド液(水)が交換塔内に導入され、製品アミノ酸水溶液濃度が希釈される事を防止する事ができる。実質的には、アミノ酸のアミノ基により、塔下部にてアミノ酸がH型樹脂に吸着する為、塔下部より交換塔へ移送される樹脂層のボイド液と樹脂吸着分を併せたアミノ酸濃度(吸着したアミノ酸は交換塔でアルカリ金属イオンと交換し脱離する。)は、第一置換塔供給アミノ酸水溶液濃度より希釈される事は無い。 本発明の方法におけるイオン交換装置の第二置換塔では、塔上部ホッパーから塔内へ交換反応に供されたアルカリ金属イオン交換型樹脂が原料であるアミノ酸アルカリ金属塩水溶液をボイドとして投入され、塔下部より、水洗塔へアルカリ金属イオン交換型樹脂が水をボイド液として移送される。原理的にはホッパーよりの樹脂同伴液量に見合う量の純水を供給することで、液を移動させずに樹脂のみを移動させて樹脂層ボイド液を置換することが可能であるが、置換塔出口での、アルカリ金属イオン交換樹脂ボイド液中のアミノ酸アルカリ金属塩濃度をより低下させるには、若干の置換水量を過剰に供給すると良く、具体的には置換水量は、樹脂循環量に対して、0.1〜0.5倍量の範囲であり、好ましくは、樹脂循環量の0.15〜0.25倍量の範囲である。結果として、樹脂再生処理に伴い発生する鉱酸アルカリ金属塩水溶液中へのアミノ酸の量を著しく抑制することが出来るので有用なアミノ酸のロスを軽減できる他、環境への負荷を軽減できる。 本発明の方法におけるイオン交換装置の交換塔(吸着塔)では、第一置換塔から移送されてきたアミノ酸水溶液をボイド液とするH型樹脂がホッパーから塔内へ導入され、塔下部よりアミノ酸アルカリ金属塩水溶液を供給し、塔内でイオン交換反応が行われ、塔頂より、脱塩されたアミノ酸水溶液(製品)が回収され、塔下部からは交換反応に用いられたイオン交換樹脂が、原料であるアミノ酸アルカリ金属塩水溶液をボイド液として、第二置換塔へ移送される。イオン交換反応を完遂せしめる(脱塩精製を完遂せしめる)為には、プロセスに供給される単位時間当たりのアルカリ金属カチオン量に対して、単位時間当たりのイオン交換樹脂総交換容量が少なくとも等量以上となる様にイオン交換樹脂循環量を設定する。 交換塔へ供給されるアミノ酸アルカリ金属塩水溶液の濃度は、製品アミノ酸の結晶析出の観点、また、イオン交換反応(中和反応熱)による発熱の為、樹脂移送への悪影響、イオン交換樹脂耐熱性の観点からあまりに高濃度は相応しく無く、一方、低濃度ではアミノ酸の製品化工程への負荷が大きくなるので、通常は、アルカリ金属イオン濃度として0.5〜3eq/Lの範囲であり、好ましくは、1.0〜2.5eq/Lの範囲であり、より好ましくは1.5〜2eq/Lの範囲である。 本発明におけるアミノ酸アルカリ金属塩の脱塩精製処理とは、上記、交換塔へアミノ酸アルカリ金属塩水溶液を供給し、塔内でイオン交換反応を行わせて、塔頂より、アミノ酸水溶液(製品)を回収する事を示す。製品中のアルカリ金属濃度としては、次工程での副生有機酸と製品アミノ酸の分離効率を高める為、即ち、製品アミノ酸純度を高める為にも、製品アミノ酸当たりのアルカリ金属重量濃度として200wtppm以下であり、好ましくは、100wtppm以下であり、より好ましくは、50wtppm以下まで除去(精製)される。 本発明においてイオン交換樹脂再生剤に使用される鉱酸は、硫酸、塩酸または硝酸を用いることができる。アミノ酸製品中に塩化物イオンの混入が好ましくは無いこと、また硝酸は加熱により酸素を発生する問題があり、好ましくは、硫酸が用いられる。 本発明の方法におけるイオン交換装置の再生塔では、イオン交換反応に供され、第二置換塔で原料アミノ酸アルカリ金属塩水溶液を回収し、ボイド液を純水と置換されたアルカリ金属イオン交換型樹脂が導入され、中央部より再生剤である鉱酸水溶液を供給し、イオン交換樹脂の再生が行われ、塔下部から純水を供給することで再生されたH型樹脂のボイド液置換が行われる。従って、塔下部からは再生されたH型樹脂が水をボイド液として第一置換塔へ移送され、塔頂からは、鉱酸のアルカリ金属塩水溶液が回収される。この時、先述のように、回収される鉱酸アルカリ金属塩水溶液中のアミノ酸濃度は極めて微量である。 本発明において使用されるイオン交換樹脂はアルカリ金属とアミノ酸のアミノ基との吸着能に選択性のあることが好ましく、樹脂への吸着を極力避けるためにも、弱酸性陽イオン交換樹脂が用いられる。ここで、一般に弱酸性陽イオン交換樹脂は、H型からNa型への交換に伴い、カルボン酸基を官能基とし、母体がメタクリル系樹脂である弱酸性陽イオン交換樹脂では、膨潤率90%(体積が1.9倍に)、母体がアクリル系樹脂である弱酸性陽イオン交換樹脂では50%(体積が1.5倍)にもなる。先述の様に、固定床装置を工業的に実施する場合、樹脂の急激な体積膨張が生じる際に、液の偏流によるイオン交換反応効率、液置換効率の低下を招くこと、また、塔下部の樹脂に膨大な圧力が掛かり、樹脂の損耗が激しくなることが懸念され、しかも、樹脂塔に充填された全樹脂を有効に利用することが前提となるので即ち、樹脂膨張が樹脂塔全域に及ぶ事となる。しかしながら、本発明の方法では、連続的にイオン交換樹脂を移動させながらイオン交換反応に供する為、実際にイオン交換反応が行われる樹脂層は、交換塔の一部分(多くの場合10〜20%)が膨張挙動を示すのみであるので、樹脂膨張に伴う交換効率の低下、圧損による樹脂破砕などの不具合は全く生じない。 本発明に用いられる弱酸性陽イオン交換樹脂の例としては、商品名でアンバーライトIRC−76(オルガノ(株)製)、ダイヤイオンWK10、WK20(三菱化学(株)製)、レバチッドCNP80、レバチッドCNP−C(バイエル(株)製)等が列挙される。なお、レバチッドTP207、TP208(バイエル(株)製)のようなキレート樹脂も使用できる。 本発明に用いられるイオン交換樹脂は、移動床連続方式における樹脂移送に耐える強度を持つものが用いられ、具体的にはそのNa型での圧潰強度が200g/粒以上の弱酸性陽イオン交換樹脂である。一般的に圧潰強度は、樹脂の粒子径に相関するものであるので、本願のいう樹脂圧潰強度とは、樹脂粒子直径が600μmの樹脂のNa交換型での圧潰強度であって、レオメーターにて2cm/分の速度で測定された一粒あたりの押し付け破壊強度で示すものである。好ましくは、上記、測定指標で300g/粒以上の弱酸性陽イオン交換樹脂であり、より好ましくは、500g/粒以上を有する弱酸性陽イオン交換樹脂が用いられる。 一般にイオン交換樹脂は、その製法によって基礎母体が微小球の凝集によって一個の球状粒子が形成されているもの、三次元の網目構造を有するが架橋剤含量によって基礎母体が緻密で物理的強度の高いものがある。前者は微小球粒子の集隗により生ずる空間容積を持つため、拡散速度、イオン交換速度が速いが、樹脂強度が弱い。従って、固定床方式にてイオン交換反応を実施する場合には先述した樹脂膨張に伴う欠点を回避し難くなる。対して、後者は、やや樹脂強度では優る為、樹脂膨張に伴う問題は軽減されると予測されるが、基礎母体が緻密である為にイオン交換速度が遅く、アルカリ金属とアミノ酸のアミノ基との吸着能選択性が小さい為に、固定床方式では効率的な製品回収が困難であるので適用できない。しかしながら、本発明の方法に依れば、樹脂を移動させながらイオン交換反応に供する為、交換塔へ順次、再生樹脂が投入されてくる為、然るべき塔長を確保できておれば、イオン交換反応の効率には全く問題が無い。従って、強度に優る樹脂を有効に活用できるので、さらに、樹脂破砕を抑制し得る。これらの事実は、本発明を工業的に実施する場合極めて有利である。 本発明に用いられるアミノ酸アルカリ金属塩水溶液は、ストレッカー法を代表とする化学合成法で得られたものが好ましく、より好ましくは、グリシン、アラニンのアルカリ金属塩である。特に好ましくは、グリシンのナトリウム塩が挙げられる。これらのアミノ酸アルカリ金属塩は公知のストレッカー反応(アルカリ加水分解反応)で得ることが出来、通常、アミノ酸アルカリ金属塩水溶液中のアルカリ金属とカルボキシル基のモル比は1/1〜1.2/1の範囲である。ストレッカー法では、例えば、グリシンの合成の場合、イミノジ酢酸やグリコール酸、蟻酸等が副生する事が知られているが、これらの有機酸類は、引き続き、アニオン交換樹脂で処理する事で吸着除去が可能である。 以下、実施例を挙げて本発明を説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものでは無く、その要旨を越えない限り、様々な変更、修飾などが可能である。 (実施例1) 交換塔想定実験 移動床式連続イオン交換装置を模した、内径26mmのアクリル樹脂製カラムを用いてイオン交換実験(交換塔を想定)を行なった。[図3]は、用いた実験装置図であり、バルブ1〜5は空気作動式樹脂製ボールバルブであり、タイマーサイクル制御により開閉できるものである。V−2,3,5取り付け口には、各々、フィルター(ステンレス製タタミ織金網)が設置されており、液体のみが通る様にした。交換塔カラム高さ(通液口から液回収口までの高さ)は2m、計量管高さ(1サイクルあたりの樹脂移動長さに相当)は34cmである。予め、グリシン液に浸漬させたH型の弱酸型陽イオン交換樹脂(バイエル社レバチッドCNP−80WS)を樹脂投入ホッパーに仕込んだ。しかる後、V−1,4を開とし、カラム、計量管内にイオン交換樹脂を充填した。表1に示す組成のグリシンソーダ塩水溶液を原料タンク、樹脂押し出し液用タンクに仕込んだ。イオン交換実験操作は以下の通りである。通液と抜液はサイクルタイマーの設定にて自動的に切り替える。通液時:V−3,V−2が開となり、通液ポンプP−1が稼動し、カラム内にグリシンソーダ液を供給し、イオン交換反応させながらV−11出口より製品グリシン水溶液として回収する。抜液時:ポンプ停止、V−3,2は閉となり、同時にV−1,4,5が開となる。従って、V−5から計量管、カラム内の液を抜きながら、ヘッドによりカラム内の樹脂が計量管に抜き出されると同時に、相当量分がホッパーからカラム内へ追添される。 実機では、通液中に塔内圧によって抜液時に落下した樹脂を次工程へ移送するが、本実験では、計量管に回収されたイオン交換使用後の樹脂は、通液中にマニュアル操作にてV−6から被処理液を導入しながらV−7より回収する方式としている。本実施例に於いては、1サイクルあたりの原料通液量からホッパーから樹脂と同伴してカラム内に導入されるグリシン液量(樹脂見かけ容積の50%+抜液時にカラム内から回収される液量)を差し引いた量が、1サイクルあたりのグリシンソーダ処理液量であり、1サイクルあたりの導入樹脂が持つ交換容量との比(樹脂有効使用率)を95%として運転された。 以上の操作を100サイクル連続して実施し、約40Lの製品グリシン水溶液を得た。各サイクル毎の回収製品液の分析は液体クロマトグラフィーにより行ない、また、導入樹脂、回収樹脂はそれぞれ、硫酸水溶液で再生処理し、再生液の分析から樹脂吸着量を求めた。液バランス、及び、実験結果を[表1]に示す。 本実施例実験の間、26mm*2000mmと高L/D(L/D=77)の交換カラムを用い、しかも、イオン交換樹脂が1.4倍にも膨張している状況にありながら、樹脂移送挙動には全く問題なく、かつ、極めて効率的に脱Naが達成され、同時に、樹脂膨張による圧損による樹脂の破砕、カラムの変形は全く観察されなかった。また、樹脂層内最高到達温度は65℃であり、樹脂耐熱上、問題のない温度に制御されていた。 本実施例より、本発明の方法に拠れば、イオン交換樹脂の膨張は、交換塔の一部でのみ起こるため、偏流などイオン交換効率へ全く影響なく交換反応を完結可能となり、結果、アルカリ金属の製品アミノ酸水溶液への漏洩を抑制、極めて高品位のアミノ酸水溶液を得る事ができる。製品液グリシンに対するナトリウム量は、14wtppm/グリシンであった。 (実施例2) 第二置換塔想定実験 実施例1に用いた実験装置(アクリル樹脂製カラム)を用いて移動床式連続イオン交換装置を模した置換実験(第二置換塔を想定)を行なった。置換塔カラム高さ(通液口から液回収口までの高さ)は3m、計量管高さ(1サイクルあたりの樹脂移動長さに相当)は40cmである。実施例1に用い、グリシンソーダ液に浸漬させたNa型の弱酸型陽イオン交換樹脂(バイエル社レバチッドCNP−80WS)を樹脂投入ホッパーに仕込んだ。樹脂交換率は表2に示す。しかる後、V−1,4を開とし、カラム、計量管内にイオン交換樹脂を充填した。イオン交換水を原料タンク、樹脂押し出し液用タンクに仕込んだ。置換実験操作は実施例1と同様の操作100サイクル連続して実施した。条件、および結果を[表2]に示す。樹脂循環量に対して、0.26倍量の置換水(この水量分、原料が希釈される。)を過剰供給するだけで、回収された樹脂には全くグリシンは吸着しておらず、また、回収樹脂ボイド液、及び同伴液中のグリシン濃度は18wtppmまで液置換されている。 本実施例より、本発明の方法に拠れば、極わずかの水を過剰に供給するだけで、液置換が効率的に達成できるので、交換反応後のNa型樹脂のボイド液である原料グリシンソーダを過剰に希釈する事無く回収でき、一方、再生工程に持ち込まれるNa型樹脂にはグリシンは殆ど吸着しておらず、グリシンのロスを抑制できると同時に、再生工程で発生する鉱酸アルカリ金属塩水溶液中のグリシン濃度を著しく低下できるのでプロセスの環境負荷を著しく低減できる。例えば、再生剤としてNa交換量の1.05倍当量の硫酸を用いたと想定した場合、再生処理液(硫酸ナトリウム水溶液)中のグリシン濃度は、110ppmグリシン/SO4となる。 (比較例1) 固定床イオン交換実験 内径65mmで高さ1500mmの透明塩ビ製の樹脂塔(樹脂層高825mm)を用い、固定床方式イオン交換実験を実施した。塔上部には通液口を設け、ダイアフラムポンプを介して被処理液が通液される。塔下部フランジにはフィルターを設置し、液体のみが流通できる様にした。液出口流出液はダイアフラムポンプにて流量調節しながら回収される。カラムには弱酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIRC76(オルガノ(株)製)H型の2750mlを充填した。樹脂層高さは82cmである。実施例1に用いたのと同様の方法でグリシンソーダ塩水溶液(Na6.3重量%、グリシン16重量%、イミノジ酢酸1.0重量%を含む)を得た。(Na濃度3.1eq/L)この水溶液をダウンフローで通液し、グリシン水溶液を得た。原料供給温度は40℃、通液の体積基準液空間速度(LHSV)は抜き出しポンプの流量調節により、3.0(L/L/Hr)とした。実験一回当たりのグリシンソーダ塩水溶液処理量は、4155gとした。即ち、本実験での処理ナトリウム量は、充填されたイオン交換樹脂の総交換容量の1.06倍に相当する。グリシンソーダ塩水溶液の通液終了後は、直ちに、純水に切り替え、さらに通液を続けた。カラム出口では製品液を250g毎のフラクションとして回収、各々、分析を行ない、グリシンが観測され始めたフラクションからを製品グリシン液として回収し、製品液中Na濃度が50ppmとなるまでを製品グリシン液とした。同様の操作を2回実施した。結果を表3に示す。 本比較例においては、通液処理時には樹脂層高は880mmに膨張するのみであり、純水に切り替え後、さらに樹脂層高は膨張したが、最終的には1000mmとなった。当該イオン交換樹脂のNa型へ交換時の膨張率は1.6倍であるが、カラム内では1.2倍にしか膨張しなかったことがわかる。また、実験中に、カラム下部液回収の状況を観察すると、被処理液通液末期に塔下部樹脂層での液流(樹脂層の濡れ)が不均一になっていることが確認され、同時に、出口液回収ポンプのサクションラインへの気泡混入が観察された。また、塔最下部フランジ溶接部では塩ビ樹脂製カラムの変形が確認された。 本比較例から、2回の実験での交換効率に再現性が無い事、塩ビ製カラムが膨張変形した事、下部樹脂層の液流が不均一であった事から、固定床方式では樹脂が自由に膨張できず、樹脂層に過大な圧力が掛かり、また、それによって偏流が生じてイオン交換効率低下を及ぼしている事が分かる。 (比較例2) 固定床イオン交換実験−2 使用する樹脂を、レバチッドCNP−80WS(バイエル社製)とし、樹脂充填量を2495mlとした他は、比較例1と同様の実験を行なった。結果を表3に示す。CNP0−WSでは、固定床方式イオン交換によるワンパスのグリシン製品回収率が、約30%と低い。 一方、実施例及び比較例に用いた弱酸性型陽イオン交換樹脂を別途、Na交換、硫酸再生のサイクルを繰り返した後、そのNa型樹脂の圧潰強度を不動工業製レオメーター(NRM2005−J)にて2cm/分の速度での押し付け破壊試験により測定した結果を表4に示す。IRC−76では、100回の交換−再生リサイクル試験品で、樹脂圧潰強度は新品の約1/2に低下していたのに対して、CNP−80WSでは、1200回のリサイクルテスト後でも全く、樹脂圧潰強度に変化がなかった。 本比較例から、レバチッドCNP−80WSは、交換−再生の繰り返しによる樹脂強度劣化には優れているが、Naカチオンとグリシンのアミノ基との吸着能選択性がIRC−76に比べて小さく、固定床方式では効率的な製品回収が困難と考えられる。一方、IRC−76は、イオン交換性能には優れているが、樹脂強度の点で問題があり、比較例の様な固定床イオン交換方式では樹脂膨張に伴う樹脂破砕、効率低下が問題となる。 本発明の方法は、食品添加剤や、医薬、農薬などの原料として広く使用されている アミノ酸の製造方法、さらに詳しくはアルカリ金属による加水分解反応により合成されたアミノ酸アルカリ金属塩からアミノ酸を精製、製造する分野に好適に利用可能である。本発明を工業的に実施する場合の各塔の構造の一例を示す。本発明を工業的に実施する場合のプロセスフローの一例を示す。[実施例1][実施例2]に用いた移動床式連続イオン交換装置を模した実験装置図を示す。 アミノ酸アルカリ金属塩水溶液のイオン交換樹脂による脱塩精製処理を移動床式連続イオン交換装置を用いて行なう事を特徴とするアミノ酸の精製方法。 精製処理されるアミノ酸アルカリ金属塩水溶液が、グリシン又はアラニンのアルカリ金属塩水溶液であることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸の精製方法。 用いるカチオン性イオン交換樹脂が弱酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸の精製方法。 用いる弱酸性陽イオン交換樹脂が、Na交換型における圧潰強度が200g/粒以上の弱酸性陽イオン交換樹脂である事を特徴とする請求項3に記載のアミノ酸の精製方法。 移動床式連続イオン交換装置が少なくとも、1:イオン交換反応を行なう交換(吸着)塔、2:イオン交換樹脂の同伴液を置換する置換塔、3:鉱酸水溶液を供給し、アルカリ金属イオンで交換された樹脂をH型に再生する再生塔の3塔を含む構成からなることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸の精製方法。 イオン交換反応を行なう交換(吸着)塔への供給被処理液のアルカリ金属イオン濃度が、0.5〜3.0eq/Lの範囲であることを特徴とする請求項5に記載のアミノ酸の精製方法。