生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_樹脂の黄変度を評価する方法
出願番号:2004154364
年次:2010
IPC分類:G01N 17/00,G01N 24/10


特許情報キャッシュ

藤井 雄一 米山 保 JP 4429803 特許公報(B2) 20091225 2004154364 20040525 樹脂の黄変度を評価する方法 旭化成ケミカルズ株式会社 303046314 藤井 雄一 米山 保 20100310 G01N 17/00 20060101AFI20100218BHJP G01N 24/10 20060101ALI20100218BHJP JPG01N17/00G01N24/10 510S G01N 17/00 G01N 24/10 特開昭61−073062(JP,A) 特開昭61−270640(JP,A) 特公平01−041216(JP,B2) 特公平01−038258(JP,B2) 特開平09−166542(JP,A) 登録実用新案第3066160(JP,U) 特開平06−194301(JP,A) 特開平08−188762(JP,A) 特開平07−306302(JP,A) 特開平08−231807(JP,A) 特開2003−162029(JP,A) 特開平08−252880(JP,A) 岡本信吾,”塗膜劣化の測定及び評価について”,粉体塗装 Vol.22 No.2,1996年 4月23日,29〜41頁 安藤博美 他,”ニトロセルロース(NC)フィルムの耐光性に及ぼすチタン顔料の影響”,皮革科学 第40巻 第2号,1994年 7月22日,103〜110頁 岡本信吾 他,”ESRおよびFT−IR法によるメタクリル酸樹脂塗膜の光劣化機構の検討”,色材 58〔6〕,1985年 6月20日,323〜333頁 2 2005337783 20051208 11 20070425 福田 裕司 本発明は、簡便にかつ高い精度で極めて迅速に樹脂の耐候性を評価する方法に関する。 樹脂は、あらゆる産業分野で活用されている。例えば透明性と優れた耐候性を有するアクリル系樹脂は、看板、ディスプレイ、自動車用部品、照明材料、建築材料、弱電材料に利用され、さらに近年ではプラスチック光ファイバー、液晶用バックライトなど新しい分野への用途の広がりを見せている。アクリル系樹脂に限らず樹脂は一般的に、時間の経過に従い空気中の酸素および水分、温度変化、機械的な衝撃などの影響により徐々に性能が低下する。これが耐侯劣化であり、材料の光、熱、風雨などの屋外条件下の暴露に対する耐久性が耐候性である。この耐侯劣化が顕在化してくると物性の低下、変色、退色、光沢性の低下など見た目の変化として現れてくる。アクリル系樹脂は透明性を特徴としている樹脂であるため耐侯劣化が生じた場合、変色が特に問題となる。 従来、耐候性を試験する方法としては、長い年月に渡り屋外に検体を放置してその劣化度で評価する屋外暴露試験が用いられてきた。ここでいう劣化度とは機械的強度の低下、変色、退色光沢度の低下、重量の減少など劣化現象の進行の度合いである。しかしながら10年の劣化度を測定するには10年の継続試験が必要であり、結果が判明するまで長い年月が必要であり、問題があった。 この屋外暴露試験に対して自然環境を模し迅速に耐候性を評価できる方法として促進耐侯試験がある。例えばプラスチック建材の促進耐侯試験方法(JIS A 1414)に準じて実施される「サンシャインウエザーメーター試験(S−W−O−M)」、プラスチック−実験室光源による暴露試験方法−(JIS K 7350−4)、塗膜に関してはサンシャインカーボンアークを用いる塗料の一般試験方法(JIS K 5400)およびキセノンランプを用いる方法(JIS K 5600)がある。しかしながらこれら促進耐侯試験においても最低でも数100時間の試験時間が必要とされ検体の耐候性の判断に長い時間が必要とされていた。 極めて迅速に有機材料の劣化度を測定し、有機材料の劣化度将来予測を可能とする方法が特許文献1に開示されている。極めて迅速に有機材料の耐候性を評価する技術であるが実施例に示されている方法はプラズマ発生装置が必要であり大きな電力、圧力調整装置などを必要とする方法であり簡便な方法とは言い難い。また、耐侯劣化に伴う黄変度に関しては具体的な予測評価法についての記載は示されていない。 樹脂の耐候性の迅速な評価法としては高分子材料の超短時間耐候性評価の新方法として非特許文献1に電子スピン共鳴(以下ESRと言う。)装置を用いて短時間に耐候性を予測する技術の開示がある。しかしながら記載されている樹脂がポリカーボネート、ポリアミド、ウレタンのみであり、測定データもラジカルの測定を実施し、比較しているに過ぎず耐候性の予測評価方法については具体的に示されていない。 さらに樹脂のラジカルを補足し、耐候性との関係を論じた文献としては非特許文献2に不安定なラジカルを安定なものに変換して測定することで元の不安定なラジカルの構造や種類を測定するスピントラッピング法の技術が示されている。この技術はスピントラップ剤としてビスフェノールA系エポキシ樹脂を塗膜中に5%程度含有させ、樹脂塗膜から生じた不安定なラジカルを補足し、トラップすることでエポキシ樹脂が安定なフェノキシラジカルに変化して容易に補足でき、このESR信号のフェノキシラジカルの増加量が多い樹脂塗膜ほど耐侯劣化が早いとした文献である。さらに、特許文献2にラジカルトラップ剤を塗膜に加え、紫外線を照射して生じるラジカルをラジカルトラップ剤に補足させ紫外線の照射前後のラジカル変化量から塗膜の劣化を測定する技術の開示がある。しかしながら非特許文献3によればポリメタクリル酸メチルにベンゾフェノンを添加して紫外線照射下ラジカルを測定した例から不純物の添加によりポリマーが軟化し、ラジカル発生に影響を与える記載が有り、数wt%もの不純物を添加するスピントラッピング法は、不純物を添加することで検体の物性に影響を与え、本来のラジカル発生量との差異が生じる恐れがあり精度の観点から問題があった。 また、樹脂に不純物を添加すること無しに紫外線照射下のラジカル発生量を測定し、劣化を測定する方法としては特許文献3にエポキシ樹脂に直接紫外線を照射し、フェノキシラジカルを発生させ、このフェノキシラジカルから劣化を測定する方法が開示されている。しかしながらこの方法は、検体のつや保持率の序列が相対発生フェノキシラジカル量順位と一致したことを示したに過ぎず定量性は論じられていない。さらに、この技術はエポキシ樹脂にのみ適用可能な技術でありアクリル系樹脂等他の樹脂には適用ができず問題があった。 アクリル系樹脂に紫外線を照射し、ESRを用いてラジカルを測定し、耐侯劣化との関係を論じた例としては非特許文献4にメタクリル酸メチルの共重合体塗膜の紫外線照射下でのラジカル発生と塗膜の光沢保持率と色差の関係が示されているが単に傾向が示されているに過ぎずラジカル発生量から光沢保持率の低下、色差の変化を精度良く予測するには至っていない。また、非特許文献5には熱可塑性フッ素樹脂とポリメタクリル酸メチル樹脂の共重合体の紫外線照射下におけるラジカル発生量と屋外暴露における光沢保持率関係を示した例があり、ラジカル発生量と屋外暴露試験における光沢保持率が極めて良い相関関係を示すと結論付けているが定量性との関係は明らかにされておらず耐候性を精度良く予測できる技術ではなかった。 すなわちこれまで不純物等の添加をすることなしにアクリル系樹脂の耐候性を簡便かつ迅速に高い精度で評価する技術は存在しなかった。特開平9−178727号公報特公平1−41216号公報特公平1−38258号公報SAE Technical Paper Series,SAE−900855,(1990)p.1−5色材協会誌、73巻、11号、2000年、p.559−563Polymer Photochemistry,2,(1982)p.297−308色材協会誌、58巻、6号、1985年、p.323−333色材協会誌、63巻、7号、1990年、p.392−398 本発明の目的は、樹脂に紫外線を照射し、発生するラジカル量から耐候性を予測評価することである。 本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意、検討を重ねた結果、同一形態、サイズに成型した樹脂の平面に紫外線を一定の角度から照射し、発生するラジカル量と黄変度が極めて高い相関性を示すことを見出し、本発明を成すに至った。 すなわち、本発明は下記1)、2)の発明である。1)アクリル樹脂の黄変度を評価する方法であって、工程(1)と工程(2)を含み、工程(1)においてアクリル樹脂にヒドロキシペルオキシド、カルボニル基及び/又は不飽和基を持つ有機物を添加すること、工程(1)と(2)の樹脂検体が同一形状であること、及び、工程(1)及び(2)において樹脂の平面に紫外線を垂直から5°以内の角度から照射し、発生するメタクリレートラジカル又はメチルラジカル量を測定することを特徴とする、アクリル樹脂の黄変度の評価方法。工程(1):濃度を変えて有機物をアクリル樹脂に添加し、それぞれの樹脂検体の黄変度及び紫外線照射時のメタクリレートラジカル又はメチルラジカル発生量を測定し、黄変度とラジカル発生量の関係の検量線を作成する工程。工程(2):測定対象の成形品の一部である樹脂検体に紫外線を照射し、発生したメタクリレートラジカル又はメチルラジカル量を測定して、工程(1)の検量線から該樹脂検体の黄変度を評価する工程。2)前記有機物が、メタクロレイン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルイソプロピルケトン、α−メチルスチレン、ベンゾフェノン、及び/又はメチルビニルケトンである前記1)に記載の方法。 本発明によれば、樹脂成型品の耐候性を簡便にかつ高い精度で極めて迅速に予測評価することができる。 本発明について以下、具体的に説明する。 測定に用いる樹脂の形状としては同一形態、サイズに成型した樹脂であればいずれの形状も使用できる。例えば塗膜の場合、ラジカルを測定する装置に組み込む目的で特別な塗膜過程を与えた場合、実製品との性能に差異が生じ、測定精度が低くなる可能性がある。一方、成型品の場合、製品の一部がそのまま測定に用いられるため好ましく用いられる。 本発明で用いられる紫外線は、照射する電磁波に紫外線が含まれれば良く、光源の性質等から可視部、赤外部の電磁波が存在しても差し支えない。用いられる紫外線の波長としては200nmから390nmの範囲が含まれることが好ましく、地球表面で観測される太陽光に含まれる波長と同等の280nmから390nmの範囲の波長が含まれる紫外線がさらに好ましく用いられる。 紫外線を発生させる光源としては低圧、中圧、高圧及び超高圧の水銀ランプ、キセノンランプ、サンシャインカーボンアーク、紫外線カーボンアーク、紫外線蛍光灯などが用いられる。照射する際の出力は、樹脂検体にラジカルが発生し、ラジカル量の測定が可能であれば十分であり、1Wから5kWの範囲で用いられ、好ましくは100Wから2kWの範囲で用いられる。 樹脂検体が受ける紫外線量は各種光量測定器、光電流測定器で測定することができる。樹脂検体が受ける紫外線量としては例えば320nmから390nmの波長範囲で光電流測定器を用いて測定した場合、0.1mW/cm2から100mW/cm2に相当する範囲で用いることができ、好ましくは0.5mW/cm2から50mW/cm2に相当する範囲で用いることができる。樹脂検体が受ける紫外線量が十分でない場合は発生するラジカルの量が少なくなり精度が低下し、受ける紫外線量が多すぎる場合はラジカルの発生が飽和に達する現象が生じたり、または樹脂検体への輻射熱等の影響により精度が低下する可能性があり、好ましくない。 紫外線の照射時間は迅速な測定のためには短い方が好ましいが測定精度向上のためには紫外線の照射時間とラジカル発生量に直線性が得られる範囲であれば長くしても構わない。好ましくは10分から3時間の範囲で用いられる。 樹脂検体への紫外線照射の方向としては成型片の平面が紫外線光源の光軸と垂直の関係であることが好ましく、垂直からのずれは5°以内が好ましい。 発生するラジカルの測定は、一般的なラジカル分析方法が用いられる。例えばIRスペクトル法、UV−VISスペクトル法、ESRスペクトル法、発光スペクトル法などの分光学的手法によりラジカルを直接的あるいは間接的に測定する方法が用いられる。好ましくは直接ラジカルを測定することが可能なESRスペクトル法が用いられる。 具体的に例えばESRを用いて測定する場合、ESR測定用試験管に挿入可能な成型品を作製し、ESR測定用試験管に挿入後、キャビティ内部に組み込み測定する。ESR測定用試験管としては石英製が好ましく用いられる。 本発明ではラジカルの発生量と耐候性の関係を示す検量線を作成する目的で検量線用樹脂検体の耐候性を評価する必要がある。 樹脂検体の耐候性の試験方法としては屋外暴露法、促進耐侯試験等が用いられるが屋外暴露法は試験に時間がかかりすぎること、試験を実施する地点の違いによる差異が大きいこと、測定期間の気象条件等に差異が生じた場合、測定誤差が大きくなる点から促進耐侯試験が好ましく用いられる。例えばプラスチック建材の促進耐侯試験方法(JIS A 1415)に準じて実施される「サンシャインウエザーメーター試験(S−W−O−M)」、プラスチック−実験室光源による暴露試験方法−(JIS K 7350−4)、サンシャインカーボンアークを用いる塗料の一般試験方法(JIS K 5400)、キセノンランプを用いる方法(JIS K 5600)が用いられるが好ましくはプラスチック建材の促進耐侯試験方法(JIS A 1415)、プラスチック−実験室光源による暴露試験方法−(JIS K 7350−4)が用いられる。 耐候性の評価は、機械的強度の低下、変色、退色、光沢度の低下、重量の低下、有機・無機ガスの発生等で評価することができるが変色、退色、光沢度による評価が好ましく用いられ、変色の中でも黄変度が最も好ましく用いられる。 黄変度の評価にはUV−VISスペクトルなどの分光学的手法も用いることができるが初期の黄色度と暴露後の黄色度の差により表示される黄変度を評価する方法、例えばプラスチックの黄色度及び黄変度試験法(JIS K 7103)が好ましく用いられる。 本発明のアクリル系樹脂とは、アクリル樹脂を含む樹脂を指し、アクリル樹脂がポリマー構造中に取り込まれていても単純に混合されたものでも構わない。アクリル樹脂はアクリル酸エステル類またはメタクリル酸エステル類の重合体を指す。アクリル酸エステル類としてはアクリル酸エステル構造であればいずれでも用いられるがメチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、または2−エチルヘキシルエステルが好ましく用いられる。メタクリル酸エステル類としてはメタクリル酸エステル構造であればいずれも用いられるがメチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、ラウリルエステル、ステアリルエステルが好ましく用いられる。 本発明で測定するラジカル種としては紫外線を照射して発生するラジカル種であれば特に限定しない。アクリル系樹脂に紫外線を照射して発生するラジカル種としてはポリメタクリル酸メチル共重合体に紫外線を照射して生成するラジカル種を測定した例があり、メタクリレートラジカル、メチルラジカルが主として生成するとされている。メタクリレートラジカルは主鎖開裂の過程から生成し、ESR測定において超微細構造で9本のスペクトルで現れ、分光学的分離定数g値2.0033、分離定数a=11.25Gで観測される。一方、メチルラジカルは側鎖脱離により生成するとされ、ESR測定において超微細構造で4本のスペクトルで現れ、分離定数a=22.5Gで観測される(例えば色材協会誌、58巻、6号、1985年、p.323−333および色材協会誌、63巻、7号、1990年、p.392−398を参照)。いずれのラジカル種の発生も劣化前兆を示すラジカル種と考えられるため測定の対象として好ましく用いられる。メタクリレートラジカル Rは任意CH3・メチルラジカル 本発明では、あらかじめ耐候性への影響が判明している物質を樹脂に低濃度で濃度を変えて含有させ、それぞれの樹脂検体の耐候性を評価した後、ラジカル量を測定し、耐候性と発生したラジカル量の関係から検量線を作成する。ついで耐候性の判明していない樹脂検体のラジカル量を測定し、先の検量線との比較から該樹脂検体の耐候性を予測評価する。 ここであらかじめ耐候性への影響が判明している物質の選択が必要であるが耐候性へ影響を与える物質に関して例えば耐候性低下の主たる原因である光劣化についての記述が大沢善治郎著、「高分子の光劣化と安定化」、第1刷、(株)シーエムシー、1986年、p.47にある。該文献によれば高分子中に微量に存在するヒドロペルオキシド、カルボニル基、不飽和基、などの異種構造を持つ分子等が発色団となり高分子の光劣化を開始し、290nm以上の長波長の光を吸収する発色団を持たない高分子においても光により劣化する記載がある。よって添加する物質としては例えば上記記載に相当する物質が好ましく用いられる。例えばメタクロレイン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルイソプロピルケトン、α−メチルスチレン、ベンゾフェノンが用いられ、メチルビニルケトンが好ましく用いられる。 本発明を実施例に基づいて説明する。[実施例1] 検量線の作成検量線用検体Aの作製: モノマーとしてメタクリル酸メチル97wt%、アクリル酸メチル3wt%、添加剤としてチヌビンpを0.01重量部含む原料から懸濁重合により重合体ビーズを得た。これをシリンダー温度220℃の条件で射出成型し、220mm×20mm×3mmの成型検体を得、検量線用検体Aとした。検量線用検体Bの作製: 検量線用検体Aの作製条件と比較してモノマーの総量に対してメチルビニルケトンを260ppm添加したこと以外は同じ条件で重合及び成型を行い、検量線用検体Bを得た。検量線用検体Cの作製: 検量線用検体Aの作製条件と比較してモノマーの総量に対してメチルビニルケトンを500ppm添加したこと以外は同じ条件で重合及び成型を行い、検量線用検体Cを得た。検量線用検体の耐候性試験: 耐候性試験はJIS K 7350−4の方法に従って実施した。光源フィルターのタイプはI形、ブラックパネル温度は63℃、水噴霧は120分中18分のサイクルの条件で240時間の耐侯促進試験を実施した。検量線用検体の黄変度測定: 黄変度はプラスチックの黄色度および黄変度測定方法(JIS K 7103)に基づいて実施し、透過法で試験片の220mm長光路を測定した。耐侯試験前後の黄色度の差から黄変度(ΔYI)を求めた。紫外線量の測定: 紫外線照射装置としてはウシオ電機(株)USH−1005D 超高圧水銀ランプを用い、出力は1120Wで照射した。樹脂検体が紫外線を受ける位置での紫外線量をウシオ電機(株)UIT−100光電流測定器で受光器にウシオ電機(株)UVD−365Pを用いて320nmから390nmの範囲において測定したところ4.5mW/cm2であった。検量線用検体のラジカル量測定: 先に作製した検量線用検体Aの同じロット成型品から1.5mm×3.0mm×50mmの試験片を切り出し、石英製ESR用試験管に入れ、ESRキャビティに組み込んだ。樹脂検体の方向は切削面と反対の3mmの成型面を紫外線の照射方向に向け成型面が光源の光軸と垂直となるように調整した。紫外線はESR装置キャビティの真横から入射するように設計されており、紫外線光源ランプ中心からESR試験管中心軸までの距離は650mmである。直径50mmの導入管から入射した紫外線はESR試験管中心軸から250mmの位置に設置した集光レンズにより集光され、ESR試験管中心軸の位置では直径10mmの範囲に紫外線が照射される。ついで紫外線を30分照射し、消灯直後にESR装置によりラジカル発生量を測定した。 ESRの測定には日本電子社製の形式−JES−FES2XGの装置を用いた。測定条件としてはマイクロ波:1.0mW、フィールド:3380±250G、磁場補正の内標としてはMn(マンガン)マーカーを用いた。 ESR測定から得られたスペクトルは9本線スペクトルで分光学的分離定数g値は、2.0034、a値は11.1Gであることからメチルメタクリレートラジカルであると同定した。結果を図1に示す。 次に得られたESRスペクトルの微分形を3300Gから3450Gの範囲で2回積分を行い、樹脂検体のESR強度をラジカル量既知のDPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)溶液(ベンゼン溶液l×10−4mol/l)のESR強度と比較して樹脂検体のラジカル発生の絶対量を求め、この数値を樹脂検体の紫外線を受ける面積で除し、単位面積当たりのラジカル発生量を求めた。同様の測定法を用い検量線用検体B及びCの紫外線照射後のラジカル発生量を求めた。結果を表1に示す。 次いで検量線用検体A,B,Cの耐侯試験後の黄変度yと単位面積当たりのラジカル発生量xから最小二乗法により検量線を求め、以下のような結果となった。y=1.10×x−0.0486黄変度y:ΔYI、x:発生ラジカル量(×10−11mol/mm2)[実施例2] 実施例1記載の検量線用検体Aの作製条件と比較してモノマーの総量に対してメタクロレインを20ppm添加したこと以外は同じ条件で重合及び成型を行い、樹脂検体Aを得た。 実施例1記載の方法で樹脂検体Aのラジカル発生量を測定した結果41.0×10−11mol/mm2であった。このラジカル発生量を実施例1で求めた検量線と比較した結果、ラジカル発生量から予測される240時間耐侯促進試験後の黄変度の評価予測値がΔYI=45.1となった。[実施例3] メタクロレインをフェニルビニルケトンに変えること以外は実施例2と同じ条件で重合及び成型を行い樹脂検体Bを得た。 実施例1記載の方法で樹脂検体Bのラジカル発生量を測定した結果40.5×10−11mol/mm2であった。このラジカル発生量を実施例1で求めた検量線と比較した結果、ラジカル発生量から予測される240時間耐侯促進試験後の黄変度の評価予測値がΔYI=44.5となった。[実施例4] メタクロレインをメチルイソプロピルケトンに変えること以外は実施例2と同じ条件で重合及び成型を行い樹脂検体Cを得た。 実施例1記載の方法で樹脂検体Cのラジカル発生量を測定した結果43.5×10−11mol/mm2であった。このラジカル発生量を実施例1で求めた検量線と比較した結果、ラジカル発生量から予測される240時間耐侯促進試験後の黄変度の評価予測値がΔYI=47.8となった。[実施例5] メタクロレインをα−メチルスチレンに変えること以外は実施例2と同じ条件で重合及び成型を行い樹脂検体Dを得た。 実施例1記載の方法で樹脂検体Dのラジカル発生量を測定した結果45.7×10−11mol/mm2であった。このラジカル発生量を実施例1で求めた検量線と比較した結果、ラジカル発生量から予測される240時間耐侯促進試験後の黄変度の評価予測値がΔYI=50.2という結果が得られた。[実施例6] メタクロレインをベンゾフェノンに変えること以外は実施例2と同じ条件で重合及び成型を行い樹脂検体Eを得た。 実施例1記載の方法で樹脂検体Eのラジカル発生量を測定した結果44.0×10−11mol/mm2であった。このラジカル発生量を実施例1で求めた検量線と比較した結果、ラジカル発生量から予測される240時間耐侯促進試験後の黄変度の評価予測値がΔYI=48.4となった。[比較例1] 実施例2で得られた樹脂検体Aと同じロットのメタクロレインを含有する成型体を、実施例1に記載した方法で促進耐侯試験を240時間実施した結果、黄変度はΔYI=42.8であり、実施例2の評価予測値とのΔYIの差は2.3であった。[比較例2] 実施例3で得られた樹脂検体Bと同じロットのフェニルビニルケトンを含有する成型体を実施例1に記載した方法で促進耐侯試験を240時間実施した結果、黄変度はΔYI=45.0であり、実施例3の評価予測値とのΔYIの差は0.5であった。[比較例3] 実施例4で得られた樹脂検体Cと同じロットのメチルイソプロピルケトンを含有する成型体を実施例1に記載した方法で促進耐侯試験を240時間実施した結果、黄変度はΔYI=47.5であり、実施例4の評価予測値とのΔYIの差は0.3であった。[比較例4] 実施例5で得られた樹脂検体Dと同じロットのα−メチルスチレンを含有する成型体を実施例1に記載した方法で促進耐侯試験を240時間実施した結果、黄変度はΔYI=48.5であり、実施例5の評価予測値との差は1.7であった。[比較例5] 実施例6で得られた樹脂検体Eと同じロットのベンゾフェノンを含有する成型体を実施例1に記載した方法で促進耐侯試験を240時間実施した結果、黄変度はΔYI=49.1であり、実施例6の評価予測値とのΔYIの差は0.7であった。 実施例、比較例の結果を表2にまとめる。 本発明の方法は、これまで樹脂の耐侯試験を必要としていた分野で好適に利用できる。実施例1で得られたESRスペクトル(Mnマーカーなし)アクリル樹脂の黄変度を評価する方法であって、工程(1)と工程(2)を含み、工程(1)においてアクリル樹脂にヒドロキシペルオキシド、カルボニル基及び/又は不飽和基を持つ有機物を添加すること、工程(1)と(2)の樹脂検体が同一形状であること、及び、工程(1)及び(2)において樹脂の平面に紫外線を垂直から5°以内の角度から照射し、発生するメタクリレートラジカル又はメチルラジカル量を測定することを特徴とする、アクリル樹脂の黄変度の評価方法。工程(1):濃度を変えて有機物をアクリル樹脂に添加し、それぞれの樹脂検体の黄変度及び紫外線照射時のメタクリレートラジカル又はメチルラジカル発生量を測定し、黄変度とラジカル発生量の関係の検量線を作成する工程。工程(2):測定対象の成形品の一部である樹脂検体に紫外線を照射し、発生したメタクリレートラジカル又はメチルラジカル量を測定して、工程(1)の検量線から該樹脂検体の黄変度を評価する工程。前記有機物が、メタクロレイン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルイソプロピルケトン、α−メチルスチレン、ベンゾフェノン、及び/又はメチルビニルケトンである請求項1に記載の方法。


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