タイトル: | 特許公報(B2)_タンパク質を蛍光画像として検出する方法 |
出願番号: | 2004147824 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 21/64,G01N 27/447 |
三浦 研二 JP 4397273 特許公報(B2) 20091030 2004147824 20040518 タンパク質を蛍光画像として検出する方法 富士フイルム株式会社 306037311 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 三浦 研二 20100113 G01N 21/64 20060101AFI20091217BHJP G01N 27/447 20060101ALI20091217BHJP JPG01N21/64 FG01N27/26 325BG01N27/26 315G G01N 27/447 G01N 21/64 JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開平05−157733(JP,A) 特開平11−094795(JP,A) 特開2004−138596(JP,A) 特開2003−240756(JP,A) 特表2002−521663(JP,A) 国際公開第03/093802(WO,A1) Kenji Miura,Imaging technologies for the detection of multiple stains in proteomics,Proteomics,2003年 7月,Vol.3, No.7,P.1097-1108 Carol L.Ladner, Jing Yang, Raymond J.Turner, and Robert A.Edwards,Visible fluorescent detection of proteins in polyacrylamide gels without staining,Analytical Biochemistry,2004年 3月,Vol.326, No.1,P.13-20 Dmitri Kazmin, Robert A.Edwards, Raymond J.Turner, Eric Larson, and Jean Starkey,Visualization of Proteins in Acrylamide Gels Using Ultraviolet Illumination,Analytical Biochemistry,2002年 2月,Vol.301, No.,P.91-96 山本 佳宏,酵母蛋白質の二次元電気泳動について,酒研会報,1998年 8月,No.3,P.13-17 7 2005331267 20051202 12 20070216 河野 隆一朗 本発明は、タンパク質を解析する方法、具体的には、タンパク質を蛍光画像として検出する方法に関する。より詳細には、本発明は、電気泳動してクーマシーブリリアントブルーで染色したタンパク質を含むゲルに所定の励起波長を有する光を照射することによって、上記タンパク質を蛍光画像として検出する方法に関する。 ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)は、タンパク質の分離、検出及び同定のために汎用され、またタンパク質のサイズを決定する際にも有用である。特に、SDS−PAGE(Sodium Dodesyl Sulfate-PAGE)は、タンパク質が陰イオン界面活性剤であるSDSと結合し、タンパク質の表面が陰電荷を有するようになるため、タンパク質分子の大きさのみが分離因子として作用することを特徴とする方法である。SDS−PAGEは、操作が簡単で、分離度が優れているのでタンパク質の分析技術として広く使用されている。電気泳動に供されるタンパク質は一般に無色であるため、適当な検出手段が必要である。タンパク質の検出方法としては銀染色法、有機染料染色法、及び蛍光染色法などが知られている。 銀染色法は、銀をゲルに沈着させた後、還元する方法であり、非放射性の検出方法としては最も感度の高いものである。しかしながら、この方法は操作が比較的難しく、多段階の工程を要するという問題がある。 有機染料染色法は、アミドブラック10B、ポンセアウスS、ファストグリーンFCF、クーマシーブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue :CBB)等の有機染料でタンパク質バンドを染色する方法である。特に、クーマシーブリリアントブルー(CBB)染色は電気泳動後のタンパク質を目視により検出することができるため、広く使用されている。例えば、非特許文献1には、SDS−PAGE用緩衝液を用いてタンパク質やペプチドをクーマシーブリリアントブルー染色により検出できることが記載されている。特に、ゲル電気泳動後のサンプルをゲルから切り出して、MALDI−TOF型質量分析装置などにより解析するプロテオミクスの分野においては、CBB染色は質量分析を妨害しないため、優れた染色方法である。しかし、CBB染色法は、検出感度が低いことが欠点で、一般的には少量のタンパク質は検出することができない。 CBB染色よりもさらに感度の高いタンパク質の検出方法として、各種の蛍光染色法が開発されてきた。蛍光染色法は分析対象のタンパク質を蛍光染料で標識して検出する方法であり、高い感度を示す方法である。例えば、電気泳動した蛋白質を、モレキュラー・プローブ社のSYPRO Orange やSYPRO Redなどのような、440ないし500nmに励起光の波長のピークを有し、560ないし620nmに蛍光の波長のピークを有する主にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−タンパク質複合体に作用して、染色するタンパク質染色用蛍光色素や、510ないし580nmに励起光の波長のピークを有し、600ないし660nmに蛍光の波長のピークを有するタンパク質染色用蛍光色素を用いて、タンパク質を染色し、励起光を照射し、生じた蛍光を光電的に検出することによって、タンパク質のの蛍光画像を生成し、タンパク質の位置情報を検出する方法が知られている。しかしながら、上記したような蛍光試薬は透明なため、目視により確認することができないという問題がある。Jens Wiltfang他、Electrophoresis 1991, 12, 352-366 本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、タンパク質の目視による確認が可能なCBB染色において、目視では確認できない電気泳動ゲル中の微量のタンパク質を検出することを可能とし、サンプルを切り出す際に目視確認との併用を可能とすることで、質量分析装置などによる解析の信頼性を向上させることができる方法を提供することを解決すべき課題とした。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゲル上を電気泳動させたタンパク質をクーマシーブリリアントブルーで染色し、次いで該タンパク質に600nm以上の波長を有する励起光を照射することにより発する蛍光を検出することにより、微量のタンパク質でも蛍光画像として検出することができることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明によれば、ゲル上を電気泳動させたタンパク質をクーマシーブリリアントブルーで染色し、次いで該タンパク質に600nm以上の波長を有する励起光を照射することを含む、タンパク質を蛍光画像として検出する方法が提供される。 好ましくは、タンパク質に600nm以上の波長を有する励起光を照射し、生じた蛍光を光電的に検出し、該タンパク質の蛍光画像を生成することができる。 好ましくは、600nm以上700nm以下の波長を有する励起光を照射することができ、さらに好ましくは、650nm以上700nm以下の波長を有する励起光を照射することができる。 使用するゲルとして具体的には、アガロースゲル、等電点ゲル、ポリアクリルアミドゲルが挙げられ、好ましくは、ポリアクリルアミドゲルである。 好ましくは、タンパク質をクーマシーブリリアントブルーで染色した後に脱色液を用いて脱色し、次いで該タンパク質に600nm以上の波長を有する励起光を照射することができる。 好ましくは、ゲル上のタンパク質を目視により検出すると同時に、蛍光画像として検出することができる。 二次元電気泳動後のタンパク質のスポットをゲルから切り出して、質量分析装置に供してタンパク質の同定を行うことが行われている。このときに高感度な蛍光法であるSYPRO Rubyを用いた場合は、タンパク質のスポットが目に見えないために正しい位置から切り出していることを確認するために、実寸大にプリントアウトした紙を下敷きにする方法が採用されている。しかし、ゲル自身は無色透明であるため、正しい位置から切り出されていることを確認するためには、事後に再度画像を読み取ることが必要となる。 本発明の方法によれば、目に見えるCBB染色のスポットと目には見えないが高感度に検出できたスポットが混在するために、周辺の目に見えるスポットを手がかりにして目に見えないタンパク質のスポットを切り出すことが可能となる。即ち、本発明の方法によれば、微量のタンパク質であっても迅速かつ簡便に検出及び解析することが可能である。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。(1)タンパク質溶液の調製 本発明においては、任意のタンパク質を電気泳動させることができる。タンパク質を電気泳動する際には、タンパク質を含む溶液を調製し、これをゲルにアプライすることが好ましい。タンパク質溶液を調製するためのバッファーは当業者に公知の通常のバッファーを使用することができ、例えば、Tris-HCl、SDS、β−メルカプトエタノール 、グリセロールなどを含むバッファーを使用することができる。また、バッファーには電気泳動の進行状況を確認するための指示薬(例えば、ブロムフェノールブルー等)を添加してもよい。 タンパク質溶液に含まれるタンパク質は、生体由来の天然タンパク質、化学合成したタンパク質、遺伝子組み換え技術により作製した組み換えタンパク質の何れでもよく、既知のタンパク質でも未知のタンパク質でもよい。タンパク質溶液に含まれるタンパク質は1種類でもよいし、2種類以上の複数でもよい。あるいは、生体由来の体液又はその処理物、あるいは細胞培養物などのようにタンパク質以外の成分が含まれる液体をタンパク質溶液として使用することもできる。(2)電気泳動 タンパク質の電気泳動は当業者に公知の方法により行うことができる。ゲルの種類は特に限定されないが、好ましくはポリアクリルアミドゲル、等電点ゲルまたはアガロースゲルであり、特に好ましくはポリアクリルアミドゲルである。ポリアクリルアミド濃度は特に限定されず、泳動するタンパク質の分子量などを考慮して適宜設定することができ、一般的には3%から25%程度であり、好ましくは3〜20%程度である。またポリアクリルアミド濃度はゲル全体で均一でもよいし、勾配を設けてもよい。勾配を設ける場合には、例えば、3〜25%又は3〜20%などのような濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲルを用いることができる。電気泳動に用いる緩衝液としては、通常使用される緩衝液を使用することができ、例えば、Tris、グリシン、及びSDSを含む緩衝液を使用することができる。電気泳動は、適当な電流で所定の時間だけ行うことができる。(3)染色及び脱色 電気泳動したゲルは、クーマシーブリリアントブルーを含有する染色液に所定の時間だけ浸すことによって染色することができる。染色中、ゲルは振盪してもよい。本発明で使用するクーマシーブリリアントブルーとしては、クーマシーブリリアントブルーR又はクーマシーブリリアントブルーGの何れでもよい。染色液としては、例えば、1〜5(W/V)%のクーマシーブリリアントブルー、1〜70(V/V)%のメタノールまたはエタノール、及び1〜10(V/V)%の酢酸を含む水溶液などを使用することができる。ゲルと染色液を接触させる時間は特に限定されないが、例えば、1分〜10時間程度行うことができ、好ましくは10分〜10時間程度、より好ましくは30分〜2時間程度である。 染色後のゲルは、所望により脱色液を用いて脱色することができる。脱色液としては、1〜20(V/V)%のメタノールまたはエタノール、及び1〜20(V/V)%の酢酸を含む水溶液などを使用することができる。脱色は、脱色液は時々交換しながら行うことができる。ゲルと脱色液を接触させる時間は特に限定されないが、例えば、1分以上であればよく、1日程度行うこともできる。(4)面像解析 クーマシーブリリアントブルーで染色したタンパク質の蛍光検出は、通常のイメージアナライザーなどの標準的な蛍光スキャナーを用いて行うことができる。例えば、富士写真フイルム株式会社が販売するFLA-5000画像解析システムを用いて、クーマシーブリリアントブルーで染色したタンパク質の蛍光画像を取得することができる。 この場合、染色したタンパク質には、例えば、高輝度水銀灯又はレーザーなどの照射手段によって励起光が照射される。励起光の波長は600nm以上700nm以下が好ましく、例えば635nm又は670nmなどは挙げられる。励起光の波長は650nm以上700nm以下がさらに好ましく、例えば670nmなどが挙げられる。好ましくは、照射手段は、600nm以上の波長の照射ビームを有するレーザーである。例えば、タンパク質には、He−Neガスレーザーまたは固体状態のダイオードレーザーによって発生したレーザー光を照射することができる。次いで、この蛍光は光感知検出器(例えば、光電子増倍管、帯電した結合デバイスなど)によって検出される。 光感知検出器は、目的の波長を選択的に透過する光学ファイルタと光電変換素子とから構成されており、タンパク質からの蛍光を検出して電気信号に変換する。電気信号に変換された蛍光のパターンは、電気泳動により分離されたタンパク質の電気泳動パターンを示している。 以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。(1)タンパク質溶液の調製 以下の表1に示す組成を有するサンプルバッファーを用いて、以下の表2に示すタンパク質を同時に含むタンパク質溶液を作製した。(2)電気泳動 濃度10%のポリアクリルアミドゲル(10×10cm)を用いて、上記(1)で調製したタンパク質溶液を、5μl(レーン1及び2)、2.5μl(レーン3及び4)、1.25μl(レーン5及び6)、0.625μl(レーン7及び8)、及び0.313μl(レーン9及び10)の量で、ゲルの各レーン上にアプライした。泳動バッファー(Tris 15.15g、グリシン72.05g、精製水5リットル、SDS 5g)を用いて、40mA(定電流)にて約60分間、サンプルバッファーに含まれるブロムフェノールブルー色素の先端がゲルの下端にくるまで泳動を実施した。(3)染色及び脱色 電気泳動を実施後、染色液(クーマシーブリリアントブルーR250 25g、メタノール500m1、酢酸50ml、及び精製水 450ml)にゲルを浸して1時間ゆっくり振とうしながら染色した。染色後、脱色液(メタノール50m1、酢酸70m、精製水880ml)を時々交換しながら、オーバーナイトで脱色を行った。(4)面像解析 富士写真フイルム株式会社が販売するFLA-5000画像解析システムを用いて下記の条件でCBB染色ゲルの各種画像を取得した。(5)画像のプリントアウト FLA-5000で取得した画像を富士写真フイルム株式会社が販売するScienceLabの中のMultiGaugeソフトで開き、コントラスト調整は画線間比較ができるように、同じ方法(Exponential変換)で表示させて、プリントアウトした。(6)プリントアウトされた画像の説明 図1では、デジタイズモードでCBS染色ゲルの目視観察と同じ画像を得た。最も低濃度のレーンで最下端のインスリンがほとんど見えていない。 図2(比較例)は、532nmで励起、LPGフィルター、600HV、Chl PMTを示す。画像全体のノイズが高く、最低濃度のインスリンバンドはわずかに見えている。 図3(本発明)は、635nmで励起、LPRフィルター、600HV、Chl PMTを示す。画像全体のバックグラウンドノイズはややあるが、最低濃度のインスリンのバンドははっきりと見えている。 図4(本発明)は、670nmで励起、LPFRフィルター、600HV、Ch2 PMTを示す。画面全体のバックグラウンドノイズは最も低く、滑らかな画像が得られている。最低濃度のインスリンのバンドははっきりと見えていて、画像としてもっとも高く評価できる。図1は、デジタイズ画像を示す。図2は、532nmで励起した蛍光画像(比較例)を示す。図3は、635nmで励起した蛍光画像(本発明)を示す。図4は、670nmで励起した蛍光画像(本発明)を示す。ゲル上を電気泳動させたタンパク質をクーマシーブリリアントブルーで染色し、次いで該タンパク質に600nm以上の波長を有する励起光を照射することを含む、タンパク質を蛍光画像として検出する方法。タンパク質に600nm以上の波長を有する励起光を照射し、生じた蛍光を光電的に検出し、該タンパク質の蛍光画像を生成する、請求項1に記載の方法。600nm以上700nm以下の波長を有する励起光を照射する、請求項1又は2に記載の方法。650nm以上700nm以下の波長を有する励起光を照射する、請求項1から3の何れかに記載の方法。ゲルがポリアクリルアミドゲルである、請求項1から4の何れかに記載の方法。タンパク質をクーマシーブリリアントブルーで染色した後に脱色液を用いて脱色する、請求項1から5の何れかに記載の方法。ゲル上のタンパク質を目視により検出すると同時に、蛍光画像として検出する、請求項1から6の何れかに記載の方法。