生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_哺乳期家畜用免疫賦活剤およびそれを含有するスターター
出願番号:2004133416
年次:2011
IPC分類:A61K 31/702,A61K 35/74,A61P 37/04,A23K 1/16,C07H 3/06


特許情報キャッシュ

中井 朋一 佐藤 忠 佐渡谷 裕朗 JP 4676715 特許公報(B2) 20110204 2004133416 20040428 哺乳期家畜用免疫賦活剤およびそれを含有するスターター 日本甜菜製糖株式会社 000231981 松本 久紀 100097825 中井 朋一 佐藤 忠 佐渡谷 裕朗 20110427 A61K 31/702 20060101AFI20110407BHJP A61K 35/74 20060101ALI20110407BHJP A61P 37/04 20060101ALI20110407BHJP A23K 1/16 20060101ALI20110407BHJP C07H 3/06 20060101ALN20110407BHJP JPA61K31/702A61K35/74 AA61P37/04A23K1/16C07H3/06 A61K 31/702 A23K 1/16 A61K 35/74 A61P 37/04 C07H 3/06 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII) 特開平10−236956(JP,A) 特開平07−179355(JP,A) 特開2004−026733(JP,A) 特開2004−121073(JP,A) 3 2005314280 20051110 7 20070402 瀬下 浩一 本発明は、哺乳期の家畜において生理的に低下状態にある免疫機能を賦活し、感染症に対する免疫力を活性化させることにより、幼少家畜の損耗を予防する免疫賦活剤に関するものである。詳しくは、ラフィノースを有効成分とする哺乳期家畜用の免疫賦活剤およびそれを含有するスターターに関する。 子牛、子豚、子羊などの家畜に認められる下痢や肺炎は、家畜の生産性を著しく低下させ、多大な経済的損失をもたらす。日本における家畜の事故発生状況によれば、例えば新生子牛における下痢の発生率は13.3%、肺炎は27.4%、両疾病の併発は8.3%に及ぶと報告されている。また、下痢や肺炎による育成中の死亡事故は、そのほとんどが生後2〜3週齢に発生している。特に子牛下痢症は、黒毛和種子牛やフィードロットにおける導入ホルスタイン雄子牛において発生率と死亡率が高く、牛群の収益を左右する重要な問題になっている。 新生子牛にとって出生後まもなく初乳を飲むことは、さまざまな病原菌の感染から身を守る免疫を獲得するための重要な手段である。哺乳期子牛の免疫には、子牛が母牛から受動的に得る移行抗体、すなわち受動免疫と、子牛自身が免疫を産生する能動免疫がある。母牛が初乳に分泌する抗体は、授乳によって新生子牛の腸管の上皮細胞に達し、そこで吸収され、子牛の血液中に取り込まれ、血清抗体として一定期間、感染防御抗体として働く。しかし、移行抗体(受動免疫)は次第に減少して消失し、次に子牛自身が産生した抗体(能動免疫)が増加してくる。例えば、子牛血中への受動抗体の一つである免疫グロブリンG(以下、IgGという場合もある)は直線的に減少し、半減期は16〜32日であり、生後100日齢には消失する。一方、子牛自身の能動抗体IgGは、生後20日齢から徐々に産生され始め、生後3ヵ月齢で成牛レベルに達する。したがって、生後2〜4週齢の時期は、受動抗体の下降期と能動抗体の上昇期との谷間となるため、血中IgG濃度が最も低くなり病原菌の感染を受けやすい。 このように、子牛の受動免疫は初乳によって獲得されるが、子牛の初乳免疫の獲得可能時間が出生後の24時間に限定されている。また、母牛の年齢や健康状態、給与飼料によって、初乳免疫の量と質(IgG濃度)が異なる。ここで、低中品質の初乳に牛血清由来免疫グロブリンを添加すると、何も添加しない高品質初乳を摂取した子牛と比べて、同じかそれ以上の受動免疫を付与できることが明らかになっている。しかし、BSE(狂牛病)に関連した安全対策措置として、日本国内では牛血清由来免疫グロブリンを含む初乳サプリメントの使用が全面的に禁止されている。 子牛は、出生直後でも既にリンパ球が血液中に十分存在しており、病原菌に対する免疫応答性は備わっているが、20日齢まではBリンパ球の抗体生産能がほとんど認められない。これはTリンパ球が免疫応答を抑制しているためと考えられている。このように哺乳期子牛は細胞性免疫能はある程度持つが、抗体産生能が低いという免疫機能の特徴があり、感染症に対する感受性を高める要因になっていると考えられている。 免疫賦活物質は、細菌由来の物質を中心に多く報告されているが、哺乳子牛に特徴的な出生後の免疫低下状態を回復させる効果については明らかにされていない。 ラフィノースは、ビフィズス菌・乳酸桿菌に資化されるオリゴ糖の一つで、植物界に広く分布する三糖類である。白色の針状の結晶構造を有しており、ビート(てん菜)からは1885年に初めて分離された。本出願人は、ビート糖蜜からラフィノースを工業的に抽出することに成功したため、現在では食品、化粧品、医薬品等での用途が開発されている。特開平03−173826特開平04−217922特開平07−112939特開平08−157494特開平11−255664動物の免疫学、小沼操・小野寺節・山内一也編、193−199、文永堂、東京、1996ビフィズス菌の研究、光岡知足監修、120−125、(財)日本ビフィズス菌センター、東京、1994臨床獣医、Vol.17、No.13、16−37、1999Journal of Dairy Science、Vol.83、2834−2838、2000 本発明の目的は、哺乳期家畜の出生時の免疫レベルを維持させるか、又は出生後低下状態にある免疫を早期に回復させることにより、免疫機能を高める新規な免疫賦活剤およびそれを含有するスターターを提供することにある。 本発明者らは、哺乳期家畜の疾病を予防するための方法を多方面から検討し、出生後の免疫機能低下を抑制するか、又は低下した免疫機能を早期に回復させることが重要であるという考えに至った。そして、さまざまな物質における効果ついて鋭意研究の結果、数あるオリゴ糖の中でビート糖液から抽出された天然のオリゴ糖であるラフィノースに、子牛など哺乳期家畜の免疫機能を賦活し、免疫低下を抑制する効果を見出し、本発明を完成したものであり、本発明には以下の発明を包含する。(1)ラフィノースを有効成分とする哺乳期家畜用免疫グロブリンG賦活剤。(2)上記(1)に記載の賦活剤を含有し、免疫グロブリンG低下抑制のために用いられるものである旨の表示を付したスターター。(3)ラフィノースと生菌剤を併用したシンバイオティクスである哺乳期家畜用免疫グロブリンG賦活剤。(4)上記(3)に記載の賦活剤を含有し、免疫グロブリンG低下抑制のために用いられるものである旨の表示を付したスターター。 本発明の免疫賦活剤およびスターターは、子牛のほか、子水牛、子羊、子山羊、子豚、子馬、子犬、子猫等といった各種の哺乳期家畜に対して適用することができる。 生菌剤としては、乳酸菌(Lactobacillus acidophilus, L.lactis, L.casei, L.rhamnosus, L.plantarum, L.murinus, L.reuteri, L.brevis, Leuconostoc mesenteroides, Pediococcus cerevisiae, Ped.Acidilactici, Enterococcus faecium, Ec.Faecalis, Streptococcus thermophilus, Str.faecium)、ビフィズス菌(Bifidobacterium pseudolongum, Bifid.thermophilum, Bifid.longum/animalis, Bifid.breve/infantis)、黴・酵母(Saccharomyces cerevisiae, S.fragilis, S.boulardii, Torulopsis spp., Aspergillus oryzae)、胞子菌(Bacillus cereus, Bac.toyoi, Bac.subtilis, Clostridium butyricum)等が挙げられる。 本発明の免疫賦活剤は、ラフィノースと上記生菌剤の併用によりシンバイオティクスとしての相乗効果を発揮することができる。 投与方法は、固形物又は液状物が用いられ、液状物はラフィノース(結晶、顆粒化物、シロップ等)を直接生乳、初乳、代用乳、お湯又は水に混合溶解したもの、又はラフィノースと生菌剤(粉末、顆粒化物、液状物等)を混合した後に直接生乳、初乳、代用乳、お湯又は水に混合溶解したものを経口投与する。双方が液状のものであれば、直接投与が可能である。また、固形物はラフィノース又は生菌剤をそれぞれ単独に、又は双方を混合し、例えば、末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、ドロップ剤、舌下剤、その他の製剤形にして直接投与を行うことができる。 また、哺乳期家畜に与えられる離乳用の飼料を特にスターターと呼ぶが、このスターターに本免疫賦活剤を混合して与える場合には、別途前記固形物を混合することが好ましく、また生菌剤を併用した本免疫賦活剤を長期間保存する場合、特に貯蔵安定性の良い生菌剤を用いる必要がある。 なお、固形物の製剤は常法に従って製造したものが使用できる。 本発明の免疫賦活剤の施用配合量は、使用目的に応じて適宜選択できるが、通常、免疫賦活剤およびそれを含有するスターターともにラフィノースとして0.01〜10%の配合量を選択するとよい。 本発明によれば、哺乳期家畜が本来備わっている免疫力を早期に発揮させることができる。その結果、哺乳期家畜が罹りやすい感染性の下痢や肺炎などを効率的に予防することができ、幼牛等家畜の損耗を減少させることにより、畜産経営に利益をもたらすことができる。 以下、本発明の実施例について述べる。 ホルスタイン種の哺乳子牛(生後1週齢)12頭を対象とし、6頭には市販の代用乳15%溶液2Lのみ(対照区)を、他6頭には前記代用乳にラフィノース(日本甜菜製糖製)5%溶液100mlを混合したもの(給与区)をそれぞれ1日あたり2回給与して、生後6週齢まで飼育した。1週齢ごとに子牛の頸静脈より採血し、血清IgG濃度を一元放射免疫拡散法(ウシIgGプレート、メタボリックエコシステム研究所製)で測定した結果を図1に示す。 図1に示した通り、対照区(代用乳のみ)では生後2週齢において血清IgG濃度が低下したが、給与区(ラフィノース給与)では低下が認められず、ラフィノース給与により血清IgGの低下が防止されたと考えられる。 ホルスタイン種の哺乳子牛(生後1週齢)16頭を対象とし、8頭にはスターター(日本甜菜製糖製、商品名ヨーデルスタート)のみ(対照区)を、他8頭には前記スターターにラフィノース(日本甜菜製糖製)1.0%を添加混合したもの(給与区)をそれぞれ自由摂取させて、生後6週齢まで飼育した。その間における下痢の発生率を表1に示す。 表1に示した通り、生後6週齢までの下痢の発生率は、給与区で12.5%、対照区で37.5%であり、ラフィノース給与により下痢の発症が抑制されたと考えられる。 ホルスタイン種の哺乳子牛(生後1週齢)12頭を対象とし、6頭にはスターター(日本甜菜製糖製、商品名ヨーデルスタート)のみ(対照区)を、他6頭には前記スターターにラフィノース(日本甜菜製糖製)1.0%および市販の生菌剤(L.acidophilus, Str.faecium, Bifid.thermophilum およびBifid.longumを各4×106個/g含有)0.25%を添加混合したもの(給与区)をそれぞれ自由摂取させて、生後6週齢まで飼育した。その間における下痢の発生率と1日当たりの平均増体重を表2に示す。 表2に示した通り、生後6週齢までの1日当たりの平均増体量は、給与区で0.74kg、対照区で0.69kgとなり、給与区が高い傾向を示した。また、下痢の発生率は、給与区で0%、対照区で33.3%となり、ラフィノースおよび生菌剤の給与により下痢の発症が抑制されたと考えられる。 以上の実施例から明らかなように、ラフィノースは、生理的に低下状態にある免疫機能を賦活し、血中IgG濃度の低下を抑えることにより、下痢を予防する効果を持つ。また、生菌剤との併用により、シンバイオティクスとしての相乗効果を持つことができる。 ラフィノースは、数あるオリゴ糖の中で非吸湿性という特徴を持っている。ほとんどのオリゴ糖が吸湿性を有することから取扱いが困難であり、例えば特開平10−179041公報に開示されているように改善策を必要とするが、ラフィノースは非吸湿性であり、取扱いが容易で保存性に優れている。生後6週齢までの子牛の血清IgG濃度の推移を示すグラフである。 スターターにラフィノースを混合して哺乳期子牛に与えることを特徴とする、哺乳期子牛の下痢予防方法。 スターターにラフィノース及び生菌剤を混合して哺乳期子牛に与えることを特徴とする、哺乳期子牛の下痢予防方法。 生後6週齢まで与えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。


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