タイトル: | 公開特許公報(A)_1,6−ヘキサンジオールの製造方法 |
出願番号: | 2004127304 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07C29/149,B01J23/72,B01J23/80,B01J23/86,C07C31/20,C07B61/00 |
河辺 正人 JP 2005035974 公開特許公報(A) 20050210 2004127304 20040422 1,6−ヘキサンジオールの製造方法 ダイセル化学工業株式会社 000002901 三浦 良和 100090491 河辺 正人 JP 2003117485 20030422 JP 2003187529 20030630 7C07C29/149B01J23/72B01J23/80B01J23/86C07C31/20C07B61/00 JPC07C29/149B01J23/72 ZB01J23/80 ZB01J23/86 ZC07C31/20 ZC07B61/00 300 8 OL 10 4G069 4G169 4H006 4H039 4G069AA02 4G069BB06A 4G069BB06B 4G069BC16A 4G069BC16B 4G069BC31A 4G069BC31B 4G069BC35A 4G069BC35B 4G069BC58A 4G069BC58B 4G069BC62B 4G069BC64A 4G069BC66B 4G069BC70A 4G069BD05A 4G069BD05B 4G069CB02 4G069DA03 4G169AA02 4G169BB06A 4G169BB06B 4G169BC16A 4G169BC16B 4G169BC31A 4G169BC31B 4G169BC35A 4G169BC35B 4H006AA03 4H006AC41 4H006BA05 4H006BA09 4H006BA14 4H006BA19 4H006BA30 4H006BA53 4H006BA61 4H006BC10 4H006BC11 4H006BE20 4H006FE11 4H006FG29 4H039CA60 4H039CD90 本発明は有機過酸及び/又はハイドロパーオキサイドとシクロヘキサノンとの反応によりε-カプロラクトンを製造する際、反応工程から得られる粗ε-カプロラクトンフラクション、または同粗ε-カプロラクトンフラクションからε-カプロラクトンを分離した後に得られる副生物フラクションから1,6-ヘキサンジオールを製造する方法に関するものである。 1,6-ヘキサンジオールはポリエステル樹脂、ウレタンフォームやウレタン塗料、接着剤の原料として有用な物質である。1,6-ヘキサンジオールの製造方法については多数知られている。 例えば、化学大辞典[共立出版(株)、昭和37年2月28日]には、アジピン酸ジエチルエステルまたはジメチルエステルをナトリウムとアルコールまたは銅-クロム酸化物の存在下で接触還元する方法が、特開昭62-155231公報には、ε-カプロラクトンを亜クロム酸銅触媒の存在下で接触還元する方法が、特開平10-306047公報には、アジピン酸、オキシカプロン酸およびε-カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種類の化合物を、ルテニウムおよび錫を含む触媒の存在下で接触還元する方法が示されている。 また、特公昭49-27164公報には、シクロヘキサンの分子状酸素による酸化反応で副生するアジピン酸、オキシカプロン酸およびε-カプロラクトンからなる混合物を1,6-ヘキサンジオールでエステル化し、このエステルを接触還元する方法が、特開2000-355562公報には、シクロヘキサノンまたはシクロヘキサノールを酸化してアジピン酸を製造する際に副生するコハク酸、グルタル酸、アジピン酸を含むジカルボン酸の混合物を、ルテニウムおよび錫および白金を炭素質担体に担持した触媒と水の存在下で接触還元する方法が示されている。また、特開平6-345674号(特許3369637号)公報には、銅、鉄、アルミニウムを成分とする複合酸化物触媒の共存下に、液相または気相でラクトン及び水素を反応させることを特徴とするグリコールの製造方法が開示されている。 しかし、前述の化学大辞典や特開昭62-155231号公報、特開平10-306047号公報、特開平6-345674号(特許3369637号)公報に記載されている方法では、比較的高価な原料であるアジピン酸エステル、アジピン酸、オキシカプロン酸または精製されたε-カプロラクトンを使用するため、製品である1,6-ヘキサンジオールも高価となる。 そこで、前述の特公昭49-27164号公報や特開2000-355562号公報の方法のように、シクロヘキサンの酸化反応やシクロヘキサノンまたはシクロヘキサノールの酸化反応で副生する、本来廃棄物となるべき安価なカルボン酸成分を原料として1,6-ヘキサンジオールを製造する方法が提案された。 ところが、シクロヘキサンの酸化反応やシクロヘキサノンまたはシクロヘキサノールの酸化反応で副生するカルボン酸成分を原料として1,6-ヘキサンジオールを製造する方法では、原料中に多くの不純物を含むため、純度の高い製品を得るためには複雑な精製工程を経なければならず、多くの設備費と精製のためのエネルギーを必要し、その結果、製品である1,6-ヘキサンジオールが高価となるという問題点がある。 例えば、特公昭49-27164号公報の実施例によると、シクロヘキサンの酸化反応工程から分離される1,6-ヘキサンジオールの原料は、アジピン酸15.5重量%、オキシカプロン酸18.8重量%以外にグルタル酸2.7重量%、水63.0重量%を含み、従って、1,6-ヘキサンジオールの原料となる炭素数6のカルボン酸成分は34.3重量%しか含まれない。 また、特開2000-355562号公報の実施例によると、アジピン酸製造工程から分離される1,6-ヘキサンジオールの原料は、アジピン酸17重量%以外にコハク酸23重量%、グルタル酸60重量%を含む。 また、該特開2000-355562号公報によると、アジピン酸製造工程から分離される1,6-ヘキサンジオールの原料は、硝酸、銅、バナジウム、イオウなどの不純物を含むため、前処理なしに接触還元反応の原料として使用すると、触媒の活性低下が著しい。従って、これらの不純物を除去するために、複雑な原料の前処理を行なう必要がある。 さらに、特開平11-236342号公報には、ジカルボン酸をジオールでオリゴエステル化し、このオリゴエステルを、銅、マンガン、アルミニウム、元素周期律表(メンデレーフ)VI亜族金属からなる酸化物と水素とからジオール化合物を得る製造方法が示されている。上記先行技術に記載されている接触還元用触媒は、ε-カプロラクトン、オキシカプロン酸、アジピン酸、および、これらのオリゴマーを主成分とするカルボン酸成分をエステル化した後、生成したエステル化物を接触還元して1,6-ヘキサンジオールを得る際には、満足な反応活性が得られないことが判明した。 さらに、又、特開2003-277306号公報には、銅、亜鉛、アルミニウムの各酸化物を一定量含む複合触媒存在下でアジピン酸のような二塩基酸と1,6-ヘキサンジオールのようなジオールとのエステル化物を接触還元してジオールを得る製造方法が開示されている。しかしながら、この公報には、有機過酸及び/又はハイドロパーオキサイドとシクロヘキサノンとの反応生成物、またはそれからε−カプロラクトンを分離した副生物フラクションを接触還元することは、示唆されていない。特開昭62-155231号公報特開平10-306047号公報特公昭49-27164号公報(特許請求の範囲、実施例)特開2000-355562号公報(請求項1、段落0019以下)特開平6-345674号公報特開平11-236342号公報特開2003-277306号公報(特許請求の範囲) 上記先行技術に記載されている原料は、原料段階で更なる精製工程を経るか、または、接触還元反応の後に多くの精製工程を経て、製品となる1,6-ヘキサンジオールを得なければならず、その結果、得られる製品も高価となる。 そこで、本発明は、安価でかつ純度が高い、1,6-ヘキサンジオールの原料混合物およびこの原料混合物を用いて1,6-ヘキサンジオールを製造する方法を提供するものである。 本発明者は上記課題を解決する1,6-ヘキサンジオールの原料として、シクロヘキサノンを有機過酸及び/又はハイドロパーオキサイドで酸化してε-カプロラクトンを製造する際、反応工程から得られる粗ε-カプロラクトンフラクション、または同粗ε-カプロラクトンフラクションからε-カプロラクトンを分離した後に得られる残存ε-カプロラクトン、副生したオキシカプロン酸、アジピン酸、および、これらのオリゴマーを主成分とする副生物フラクションが1,6-ヘキサンジオールを安価に製造するための原料として優れていることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明の第1は、有機過酸及び/又はハイドロパーオキサイドとシクロヘキサノンとの反応工程から得られる粗ε-カプロラクトンフラクションを、または同粗ε-カプロラクトンフラクションからε-カプロラクトンを分離した後に得られる残存ε-カプロラクトン、副生したオキシカプロン酸、アジピン酸、および、これらのオリゴマーを主成分とする副生物フラクションを、そのまま、またはアルコールでエステル化した後に、水素化触媒の存在下、接触還元反応により1,6-ヘキサンジオールを得ることを特徴とする1,6-ヘキサンジオールの製造方法である。 本発明の第2は、有機過酸が過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸、または、過フタル酸である上記発明1記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法である。 本発明の第3は、ハイドロパーオキサイドが過酸化水素、ターシャリブチルハイドロパーオキサイド、または、クメンハイドロパーオキサイドである上記発明1記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法である。 本発明の第4は、アルコールが炭素数1〜8個を有する1価アルコール、または、炭素数2〜8個を有する2価アルコールである上記発明1記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法である。 本発明の第5は、2価アルコールが1,6-ヘキサンジオールである上記発明4記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法である。 本発明の第6は、該エステル化物を接触還元反応するに際し、(1)該エステル化物の酸価が10mg-KOH/g以下のエステル化物を、(2)水素圧力0.5〜40MPa、(3)反応温度50〜400℃、で接触還元反応を行なう上記本発明1から5のいずれかに記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法である。 本発明の第7は、水素化触媒がCu、Ru、Reのうち、少なくとも1種類の元素を含有する水素化触媒である上記本発明1から6のいずれかに記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法である。 本発明の第8は、水素化触媒がCu-Cr系、Cu-Zn系、Cu-Fe-Al系、Cu-Al系、またはCu-Si系である上記発明1から6のいずれかに記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法である。 本発明は、1,6−ヘキサンジオールを製造するに好適な、安価でかつ純度が高い原料を提供し、また、この原料を用いて1,6−ヘキサンジオールを製造する方法を提供するものである。 以下、本発明を詳細に説明する。 シクロヘキサノンを有機過酸及び/又はハイドロパーオキサイドで酸化してε-カプロラクトンを製造する際には、主生成物のε-カプロラクトンに加えて、副生物としてオキシカプロン酸、アジピン酸、およびこれらのオリゴマーが生成する。 使用し得る有機過酸としては、有機過カルボン酸、より具体的には、過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸、または、過フタル酸等があるが、中でも、工業的に大量に使用されている過酢酸を使用することが好ましい。 ハイドロパーオキサイドとしては、過酸化水素、ターシャリブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等を用いることができる。 有機過酸またはハイドロパーオキサイドの使用量は出発原料であるシクロヘキサノンに対してモル比で0.2〜3.0、好ましくは、0.3〜2.0である。有機過酸またはハイドロパーオキサイドのシクロヘキサノンに対するモル比が3.0より大きいとシクロヘキサノンの転化率は高くなるが、アジピン酸の生成量が増加してε-カプロラクトンへの選択率が低下したり、また、有機過酸またはハイドロパーオキサイドのロスが多くなり経済的に好ましくない。逆に0.2より小さいとシクロヘキサノンの変化率が低くなり、シクロヘキサノンのリサイクルに要する費用が高くなり経済的に好ましくない。 なお、有機過カルボン酸の中でも対応するアルデヒドの空気または酸素による酸化で得られるものは水分含有率が低く、具体的には、水分含有率0.8重量%以下であり、本発明の製造方法において、特に好ましく用いられる。 酸化反応の際には必要に応じて触媒を用いることもできる。 例えば、有機過酸の場合、炭酸ソーダなどのアルカリや硫酸などの酸を触媒として用い得る。 また、ハイドロパーオキサイドの場合、タングステン酸と苛性ソーダの混合物を過酸化水素と、あるいは、有機酸または無機酸またはゼオライト等の固体酸を過酸化水素と、あるいは、モリブデンヘキサカルボニルをターシャリブチルハイドロパーオキサイドと使用して触媒効果を得ることができる。 酸化反応は、触媒、溶媒使用の有無や反応温度を調整して行なう。 用いる酸化剤の反応性によって使用できる反応温度域は定まる。 好ましい酸化剤である過酢酸についていえば20〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。20℃以下では反応が遅く、100℃以上では過酢酸の分解が起きるので好ましくない。 また、ハイドロパーオキサイドの1例である過酸化水素についていえば、同じ理由で20℃〜150℃、好ましくは、40〜100℃である。 上記の酸化反応は連続でも回分でもよい。 上記の酸化反応工程より、ε-カプロラクトンを主生成物とし、オキシカプロン酸、アジピン酸、および、これらのオリゴマーのような副生物を含む粗ε-カプロラクトンフラクションが得られる。 さらに、粗ε-カプロラクトンフラクションから大部分のε-カプロラクトンを分離した後に残る副生物フラクションは、従来は、廃液として焼却されていた。 本発明では、上記粗ε-カプロラクトンフラクションをそのまま、またはε-カプロラクトンを分離した後に得られる残存ε-カプロラクトン、副生したオキシカプロン酸、アジピン酸、および、これらのオリゴマーを主成分とする副生物フラクションを1,6-ヘキサンジオール製造の原料として使用するところに特徴がある。 例えば、酸化剤として、上記のような水分含有率が低い有機過カルボン酸の有機溶剤溶液を使用する場合、反応液から、有機溶剤、未反応の有機過カルボン酸、有機過カルボン酸に対応する有機カルボン酸、未反応のシクロヘキサノン、および、主生成物であるε-カプロラクトン等を分離して得られる副生物フラクションは、通常、ε-カプロラクトンとして数重量%、オキシカプロン酸として約60重量%、アジピン酸として約30重量%からなり、1,6-ヘキサンジオールの原料となる炭素数6のカルボン酸成分を合計90重量%以上含む。有機過酸またはハイドロパーオキサイドのシクロヘキサノンに対するモル比が小さいと、オキシカプロン酸成分が多くなり、また、有機過酸またはハイドロパーオキサイドのシクロヘキサノンに対するモル比が大きいと、アジピン酸酸成分が多くなる傾向がある。この有機溶剤やε-カプロラクトン等を分離した後の接触還元反応に供給される副生物フラクションは、炭素数6のカルボン酸成分の純度が高いため、特別な精製処理を必要とせず、直接1,6-ヘキサンジオール製造の原料として使用することができる。 本発明では、粗ε-カプロラクトンフラクションまたは副生物フラクションをアルコールでエステル化してから接触還元反応を行ない、原料の炭素数6のカルボン酸成分を1,6-ヘキサンジオールに変換しても、また、粗ε-カプロラクトンフラクションまたは副生物フラクションをアルコールでエステル化せず、そのまま接触還元反応して、原料の炭素数6のカルボン酸成分を1,6-ヘキサンジオールに変換してもよい。 粗ε-カプロラクトンフラクションまたは副生物フラクションをアルコールでエステル化する場合、アルコールとしては炭素数1〜8個を有する1価アルコール、または、炭素数2〜8個を有する2価アルコールである。 炭素数1〜8個を有する1価アルコールとしては、例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどが挙げられる。 また、炭素数2〜8個を有する2価アルコールとしては、例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。分離精製プロセスを少しでもシンプルにするという観点から、目的化合物である1,6-ヘキサンジオールをエステル化用のアルコールとして用いることが好ましい。 アルコールの使用量は、粗ε-カプロラクトンフラクションまたは副生物フラクションの酸価(単位:mg-KOH/g)に対して、1.0〜10.0モル倍当量の使用が好ましい。 エステル化は、減圧または常圧または加圧下、無触媒で、100〜250℃の比較的高温で、生成する水を系外に除去しながら行うか、または、触媒の存在下、さらに低温で実施することができる。 本発明で用いる水素化触媒は、アルコールでエステル化した副生物フラクションを接触還元する場合には、Cu含有水素化触媒を用いることが好ましい。 Cu含有水素化触媒としては、Cu-Cr系、Cu-Zn系、Cu-Fe-Al系、Cu-Al系、Cu-Si系が好ましく、中でも高い反応率を達成できるCu-Cr系、Cu-Fe-Al系、Cu-Al系が特に好ましい。なお、これらの触媒は通常、金属酸化物からなっている。 これらの触媒系は各金属酸化物成分を主成分(10重量%以上含有)とするが、10重量%未満の他の金属酸化物成分を含んでいてもよい。主成分以外の他の金属酸化物成分の例としてはMn、Ba、Zn、Fe、Al、Siなどの酸化物が挙げられる。ここで言う「他の金属酸化物成分」とは、触媒系が例えば、Cu-Cr-Mn系の場合は主成分であるCu、Cr及びMnの酸化物以外の上記金属Ba、Zn、Al等の酸化物成分を意味し、Cu-Al系の場合は主成分であるCu及びAlの酸化物以外の上記金属Mn、Ba、Zn、Fe、Si等の酸化物成分を意味する。 また、副生物フラクションをそのまま接触還元する場合には、水素化触媒として、RuまたはRe含有水素化触媒を用いることが好ましい。 水素化触媒の形状は、粉末状のもの、成型したもの、担持したもののいずれでもよい。 接触還元反応は無溶媒で行なっても良いが、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒としては、例として、水、アルコール類、エーテル類が挙げられる。 接触還元反応の温度は、50〜400℃が好ましく、さらに好ましくは100〜300℃である。水素圧力は0.5〜40MPa、さらに好ましくは1MPa〜30MPaである。 接触還元反応は連続でも回分でもよく、また、反応形式は液相懸濁反応でも固定床流通反応でもよい。 接触還元反応後、水素化触媒を分離して得られた反応液中の目的生成物である1,6-ヘキサンジオールは以下のような条件下で蒸留により精製される。 すなわち、1.33〜26.6kPa(10〜200torr)の減圧下、還流比0.1〜30で低沸物を留去し、次いで、0.133〜13.3kPa(1〜100torr)にして、還流比0.1〜5で1,6-ヘキサンジオールを主成分とする主留分を留出させる。この主留分は、1-ヘキサノールを0.01〜5重量%、ε-カプロラクトンを0.1〜10重量%、1,6-ヘキサンジオールを80〜99.9重量%、その他を0.01〜5重量%含む。 このように、接触還元反応で得られた反応液中の1,6-ヘキサンジオールは、原料である副生物フラクション中の炭素数6のカルボン酸成分の濃度が高いため、不純物が少なく、この主留分をさらに蒸留等公知の方法で精製することにより高い純度を有する製品として容易に分離される。例えば、0.133〜13.3kPa(1〜100torr)の減圧下、還流比0.1〜30で低沸物を留去し、次いで、0.133〜13.3kPa(1〜100torr)の減圧下、還流比0.1〜5で蒸留することによって、塔頂より純度99%以上の1,6-ヘキサンジオールを得ることができる。また、接触還元反応で未反応のカルボン酸成分およびその1,6-ヘキサンジオールエステル等を含む低沸物や塔底液は、接触還元反応のための原料としてリサイクルすることができる。 以下、本発明を実施例を用いて更に詳細に説明する。 なお、酸価および鹸化価はJIS K0070に従って測定し、カルボン酸成分の組成は、サンプルを鹸化後、液体クロマトグラフィーで分析し、その他はガスクロマトグラフィーで分析した。[実施例1]《副生物フラクション》 ε-カプロラクトン製造プロセスにおいて、内容積1リットルの流通式反応器にシクロヘキサノンと過酢酸(30重量%過酢酸酢酸エチル溶液)を過酢酸/シクロヘキサノンモル比が1.1になるように導入し、温度66℃、常圧で反応させ、酢酸エチル46.5重量%、酢酸21.3重量%、未反応過酢酸2.0重量%、未反応シクロヘキサノン1.0重量%、ε−カプロラクトン28.6重量%、副生アジピン酸0.6重量%の割合で含む反応液が得られた。この反応液を脱低沸塔に仕込んで塔頂温度35℃、塔底温度174℃、塔頂圧力9.33kPa(70Torr)、還流比0.5で酢酸エチル、酢酸、シクロヘキサノン等の低沸分を分離し、塔底より粗ε-カプロラクトンを得、これを脱高沸塔に仕込んで塔頂温度100℃、塔底温度147℃、塔頂圧力1.33kPa(10Torr)、還流比1.0で蒸留し、塔頂より純度約99.9%のε-カプロラクトンが得られ、塔底よりオキシカプロン酸として63重量%、アジピン酸として27重量%からなる副生物フラクション(酸価241mg-KOH/g)を得た。《エステル化反応》 この副生物フラクション1446gと1,6-ヘキサンジオール554gを2リットルのフラスコに仕込み、12.0kPa(90torr)の減圧下、生成する水を留去しながら200℃まで昇温し、酸価が3mg-KOH/g、鹸化価が446mg-KOH/gのエステル化物1823gを得た。《接触還元反応》 このエステル化物500gとCu-Cr系複合酸化物触媒[日揮化学社製 N203(CuO 45重量%、Cr2O3 43重量%、Mn2O3 4.2重量%含有)]7.5gをステンレス製オートクレーブに仕込み、290℃にて圧力が29MPaになるように水素を補給しながら5時間接触還元反応を行ない、反応後、触媒を濾過して497gの濾過液を得た。濾過液は、鹸化価が45mg-KOH/g(反応率90%)であった。《1,6-ヘキサンジオールの精製》 この濾過液412gを50φガラス製充填塔(充填物:スルーザーパック27段相当)のボトムに取り付けた500mlフラスコに仕込み、4.00kPa(30torr)の減圧下、還流比3で低沸物42gを留去し、さらに1.33kPa(10torr)にして、還流比1.0で1,6-ヘキサンジオールを主成分とする主留分281gと塔底液89gを得た。 主留分は、1-ヘキサノールを0.14重量%、ε-カプロラクトンを1.72重量%、1,6-ヘキサンジオールを95.86重量%、その他を2.28重量%を含んでいた。 この主留分を蒸留することによって、ガスクロマトグラフィー純度99%以上の1,6-ヘキサンジオールを得ることができた。 塔底液89gは、1,6-ヘキサンジオール、オキシカプロン酸と1,6-ヘキサンジオールのエステル、および、アジピン酸と1,6-ヘキサンジオールのエステルを含み、従って、エステル化反応または接触還元反応の原料としてリサイクルが可能である。[実施例2]《接触還元反応》 実施例1のエステル化物500gとAl酸化物を含むCu-Zn系複合酸化物触媒[日揮化学社製 E01X(CuO 44重量%、ZnO 44重量%、Al2O3 5.5重量%含有)]7.5gをステンレス製オートクレーブに仕込み、290℃にて圧力が29MPaになるように水素を補給しながら5時間接触還元反応を行ない、反応後、触媒を濾過して497gの濾過液を得た。濾過液は、鹸化価が27mg-KOH/g(反応率94%)であった。《1,6-ヘキサンジオールの精製》 この濾過液412gを50φガラス製充填塔(充填物:スルーザーパック27段相当)のボトムに取り付けた500mlフラスコに仕込み、4.00kPa(30torr)の減圧下、還流比3で低沸物43gを留去し、さらに1.33kPa(10torr)にして、還流比1.0で1,6-ヘキサンジオールを主成分とする主留分284gと塔底液85gを得た。 主留分は、1-ヘキサノールを0.13重量%、ε-カプロラクトンを1.75重量%、1,6-ヘキサンジオールを95.90重量%、その他を2.22重量%を含んでいた。 この主留分を蒸留することによって、ガスクロマトグラフィー純度99%以上の1,6-ヘキサンジオールを得ることができた。 塔底液85gは、1,6-ヘキサンジオール、オキシカプロン酸と1,6-ヘキサンジオールのエステル、および、アジピン酸と1,6-ヘキサンジオールのエステルを含み、従って、エステル化反応または接触還元反応の原料としてリサイクルが可能である。[実施例3] 実施例1のエステル化物500gとCu-Fe-Al-Zn系複合酸化物触媒[日揮化学社製 N2A3(CuO 30重量%、Fe2O3 30重量%、Al2O3 35重量%、ZnO 1.5重量%含有)]7.5gをステンレス製オートクレーブに仕込み、290℃にて圧力が29MPaになるように水素を補給しながら5時間接触還元反応を行ない、反応後、触媒を濾過して濾過液を得た。濾過液は、鹸化価が40mg-KOH/g(反応率91%)であった。[実施例4] 実施例1のエステル化物500gとCu-Zn系複合酸化物触媒[日揮化学社製 X213(CuO 48重量%、ZnO 45重量%含有)]7.5gをステンレス製オートクレーブに仕込み、290℃にて圧力が29MPaになるように水素を補給しながら5時間接触還元反応を行ない、反応後、触媒を濾過して濾過液を得た。濾過液は、鹸化価が196mg-KOH/g(反応率56%)であった。[実施例5] 実施例1のエステル化物500gとCu-Al系複合酸化物触媒[日揮化学社製 F51A(CuO 50重量%、Al2O3 35重量%含有)]7.5gをステンレス製オートクレーブに仕込み、290℃にて圧力が29MPaになるように水素を補給しながら5時間接触還元反応を行ない、反応後、触媒を濾過して濾過液を得た。濾過液は、鹸化価が49mg-KOH/g(反応率89%)であった。[実施例6] 実施例1のエステル化物500gとCu-Si系複合酸化物触媒[日揮化学社製 F01B(CuO 67重量%、SiO2 27重量%含有)]7.5gをステンレス製オートクレーブに仕込み、290℃にて圧力が29MPaになるように水素を補給しながら5時間接触還元反応を行ない、反応後、触媒を濾過して濾過液を得た。濾過液は、鹸化価が178mg-KOH/g(反応率60%)であった。 有機過酸及び/又はハイドロパーオキサイドとシクロヘキサノンとの反応工程から得られる粗ε-カプロラクトンフラクションを、または同粗ε-カプロラクトンフラクションからε-カプロラクトンを分離した後に得られる残存ε-カプロラクトン、副生したオキシカプロン酸、アジピン酸、および、これらのオリゴマーを主成分とする副生物フラクションを、そのまま、またはアルコールでエステル化した後に、水素化触媒の存在下、接触還元反応により1,6-ヘキサンジオールを得ることを特徴とする1,6-ヘキサンジオールの製造方法。 有機過酸が過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸、または、過フタル酸である請求項1記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法。 ハイドロパーオキサイドが過酸化水素、ターシャリブチルハイドロパーオキサイド、または、クメンハイドロパーオキサイドである請求項1記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法。 アルコールが炭素数1〜8個を有する1価アルコール、または、炭素数2〜8個を有する2価アルコールである請求項1記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法。 2価アルコールが1,6-ヘキサンジオールである請求項4記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法。 該エステル化物を接触還元反応するに際し、(1)該エステル化物の酸価が10mg-KOH/g以下のエステル化物を、(2)水素圧力0.5〜40MPa、(3)反応温度50〜400℃、で接触還元反応を行なう請求項1から5のいずれかに記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法。 水素化触媒がCu、Ru、Reのうち、少なくとも1種類の元素を含有する水素化触媒である請求項1から6のいずれかに記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法。 水素化触媒がCu-Cr系、Cu-Zn系、Cu-Fe-Al系、Cu-Al系、またはCu-Si系である請求項1から6のいずれかに記載の1,6-ヘキサンジオールの製造方法。 【課題】 シクロヘキサノンを出発原料として使用し、1,6-ヘキサンジオールを安価に製造する技術を提供すること。 【解決手段】 有機過酸及び/又はハイドロパーオキサイドとシクロヘキサノンとの反応工程から得られる粗ε-カプロラクトンフラクションを、または同粗ε-カプロラクトンフラクションからε-カプロラクトンを分離した後に得られる残存ε-カプロラクトン、副生したオキシカプロン酸、アジピン酸、および、これらのオリゴマーを主成分とする副生物フラクションを、そのまま、またはアルコールでエステル化した後に、水素化触媒の存在下、接触還元反応により1,6-ヘキサンジオールを得る1,6-ヘキサンジオールの製造方法。【選択図】 なし