タイトル: | 特許公報(B2)_メタノールの高効率合成法及びそのための装置 |
出願番号: | 2004117554 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 29/152,B01J 8/06,C07C 31/04,C07B 61/00 |
藤元 薫 朝見 賢二 黎 暁紅 JP 4487103 特許公報(B2) 20100409 2004117554 20040413 メタノールの高効率合成法及びそのための装置 財団法人北九州産業学術推進機構 802000031 藤元 薫 朝見 賢二 黎 暁紅 20100623 C07C 29/152 20060101AFI20100603BHJP B01J 8/06 20060101ALI20100603BHJP C07C 31/04 20060101ALI20100603BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100603BHJP JPC07C29/152B01J8/06 301C07C31/04C07B61/00 300 C07C 29/152 B01J 8/06 C07C 31/04 特開2001−009265(JP,A) 特開平04−217635(JP,A) 2 2005298413 20051027 8 20070330 水島 英一郎 本発明は、平衡転化率を超える転化率で、水素および酸化炭素を主成分とする原料ガスからメタノールを合成する方法及びそのための装置に関する。 メタノール(メチルアルコール)は、燃料として、また脂肪、樹脂、ワニス等の溶媒として、さらにホルマリンの製造原料、メチル化剤、エチルアルコールの変性などに用いられ、工業的には、水性ガスを原料として200℃〜300℃の温度域で、5MPa〜10MPaといった高圧下に、銅・亜鉛を主成分とする触媒上で反応させて合成される。水素と一酸化炭素を主成分とする原料ガスからメタノールを合成するときの主反応は、次の通りである。 メタノール合成の主反応は分子数減少反応であり、かつ高発熱反応である。メタノール合成の主反応である上記化1式の反応平衡におけるメタノール化率、温度、圧力の関係を図5に示す。図5から明らかなように、メタノール合成反応は低温、高圧であるほど有利であるが、実装置においては、経済的な観点から合成条件として、200℃〜300℃の温度域、5MPa〜10MPaの圧力域が採用されている。水素および一酸化炭素を主成分とする原料ガス中には二酸化炭素も含まれており、下記逆シフト反応により一酸化炭素に転化し、さらに化1式の主反応によってメタノールが合成される。 また、二酸化炭素は下記反応によって直接メタノールに転化される。 メタノール合成反応は大きな発熱反応である処から、熱に弱い特性をもつ銅系触媒を有効に機能させるために、反応触媒層の温度制御がきわめて重要である。而して、従来、反応容器内に形成される触媒充填層内に二重管構造の冷却管を多数配設して、冷却管内管外壁面と外管内壁面との間の環状空間に冷却水を流通・上昇せしめて外管内壁面で熱交換し、水と水蒸気の混合流体を内管上端開口から下降せしめて下部に設けられているチャンバに集め、水蒸気ノズル排出口から流出せしめるようにして触媒層を所望の温度に維持するよう構成したメタノール合成反応器が既知である(たとえば、特許文献1参照)。特開昭61−133136号公報 しかしながら、従来技術において、発熱反応であるメタノール合成によって生じた熱は種々の手段によって系外に取り出されるが、何れも生成するメタノールの蒸気圧の露点以上の冷却温度である。このように従来技術においては、冷却温度が生成するメタノールの蒸気圧の露点以上であるために、平衡転化率を超える転化率の下でのメタノール合成が不可能であり、また転化率が平衡値に近づくと原料濃度が低下するために反応速度が低下し、反応器の効率が著しく低下する問題がある。 本発明は、簡潔、コンパクトな反応器で平衡転化率を超える転化率下に、水素および酸化炭素を原料としてメタノール合成を遂行することができる反応プロセスを提供することを目的とする。 上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、水素と酸化炭素を主成分とする原料ガスを触媒の存在下に反応させてメタノールを合成する方法であって、反応容器の内部に一又は複数の多孔円筒を設け、該多孔円筒外周面と反応容器内壁面間に触媒充填部を形成するとともに、前記多孔円筒内部に、冷却媒体が流通しその外表面が合成されたメタノールの蒸気圧の露点以下の温度に維持されている冷却管を設け、該冷却管の外表面において生成メタノールを液化、滴下させて該液状メタノールを反応系外に抜き出し、平衡転化率を超える転化率の下でメタノール合成を遂行せしめるようにしたメタノールの高効率合成方法である。 請求項2に記載の発明は、水素と酸化炭素を主成分とする原料ガスを、触媒の存在下に反応させてメタノールを合成するメタノール製造装置であって、反応容器と、該反応容器内に一又は複数配置される多孔円筒と、前記反応容器内壁面および多孔円筒外周面間に形成される触媒充填部と、前記多孔円筒内に配設される、冷却媒体の流通によってその外部表面が合成されたメタノールの蒸気圧の露点以下の温度に維持される冷却管と、該冷却管の外表面において液化、滴下するメタノールを反応系外に抜き出し回収するメタノール回収部とを有するメタノール製造装置である。 本発明によれば、簡潔、コンパクトな反応器で平衡転化率を超える転化率下でのメタノール合成を1パスで達成できる。また、反応系において、未反応ガスをリサイクルするシステムが不要となるため、反応装置が著しく単純化される。さらに、小型の装置であっても高い生産性を持ち得る。また、生成メタノールの冷却を水で行えば50℃〜80℃の温水を得ることができる。 以下、本発明をその好ましい実施形態に則して説明する。 本発明は、水素および酸化炭素(CO、CO2)を原料ガスとして、平衡転化率を超える転化率でメタノール合成を行う反応プロセスである。本発明は、触媒層中にそこでのメタノール蒸気圧の露点以下の冷却面を存在させて、この冷却面において生成メタノールを液化させ、この液相のメタノールを反応系外に抜き出すことによって濃度勾配場を生起・維持せしめ、而して、原料濃度を高い水準に維持して反応速度の低下を抑えるようにした点によって特徴づけられる。即ち、本発明においては、反応系内に生成メタノールが凝縮する温度場を設けて生成メタノールを液化・滴下させて系外に抜き出すことによって、反応サイトにメタノール濃度勾配場を生起・維持せしめている点に特徴があり、それによって反応系において、原料濃度が低下する因子を除去し続けるようにしている。 以下、一実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。図1に、本発明を実施するときの反応装置の一例を示す。図1において、1は反応容器であって、たとえば15MPaの圧力に耐え得る金属製たとえばステンレス鋼製の容器である。反応容器1は、この実施例においては図1に示すように、円筒形であり、その横断面中心部に反応容器1と軸心を共有する如く多孔円筒2が配設される。多孔円筒2にはその周壁に多数の孔22が穿設されており、気体はその孔22を通して多孔円筒2壁面を流通できるが、触媒充填層3における触媒は通過できない寸法(直径)とされている。触媒充填層3は、反応容器1内壁面と多孔円筒2外周面間の環状空間であって、トレイ23の上部に形成されている。 4は冷却体であり、この実施例においては、銅製或はステンレス鋼(SUS316)製の冷却管である。冷却体(冷却管)4は多孔円筒内部に配置され、冷却面積を大ならしめるべく螺旋状に形成されている。必要に応じて、冷却面積を拡大するためにフィンを冷却管外周面に形成してもよい。冷却体(冷却管)4内部には、この実施例においては、水が冷媒として流通せしめられる。冷却水(常温)は、反応容器1上部の冷却水入口10から導入され、触媒充填層3において生成したメタノールと冷却体(冷却管)4内壁面において熱交換して昇温し、60℃〜80℃の温水となって冷却水出口11から排出される。この熱交換によって生成メタノールは液化され滴下して反応容器1外に抜き出される。 5はヒータであって、触媒充填層3における触媒の温度を220℃〜240℃といった温度域まで昇温させるときに用いる。6はフランジであり、反応容器1を気密に保つべくフランジ締結用ボルト孔7にボルトを挿通しナットで緊締する。 19はシール材である。 8は原料ガス導入孔であり、ここから水素および酸化炭素を主成分とする原料ガスが反応容器1内上部空間に導入される。9は生成物導出口であって、触媒充填層3で生成し冷却体表面で液化され滴下した液状メタノールおよび未反応ガスからなる気液混合流体が導出される。この気液混合流体はメタノール回収部(気液分離・貯留槽)12内に導入される。メタノール回収部(気液分離・貯留槽)12には、その外周部に冷却ジャケット18が付設されており、その下部の冷却水入口15から冷却水が導入され、上部の冷却水出口16から排出される。メタノール回収部(気液分離・貯留槽)12内の液状メタノール13は、液状メタノール抽出口17から抽出される。14は未反応ガスと気相メタノールの混合気体出口である。 図1に示す反応装置を用いて水素および酸化炭素を主成分とする原料ガスからメタノールを合成した。反応容器(外径:37mm、内径:25mm、高さ:160mm)1内に触媒充填層3を形成し内部のガスを合成(原料)ガスに置換した後、常法に従って触媒を活性化し反応を開始した。触媒として市販のメタノール合成触媒(CuO−ZnO−Al2O3):10gを用いた。反応条件は、次の通りである。 合成(原料)ガス流量:200ml/分、圧力:10atm〜40atm(1MPa〜4MPa)、温度:220℃および240℃、合成(原料)ガスの組成:Ar=2.98%、CO=31.09%、CO2=5.05%、H2=残部冷却体(冷却管)4における冷却水入口温度=30℃であり、出口温度は冷却水流量(125ml/分程度)により60℃〜80℃の間で変動した。生成物導出口9の気相メタノールをガスクロマトグラフィー分析によってCO、CO2の転化率を算出した。220℃で行った反応における結果を、図2に示す。図2において、横軸は圧力(atm)、縦軸はCO転化率である。圧力:40atm(4MPa)で、冷却体(冷却管)4に冷却水を通した反応におけるメタノールの純度は96.9%であった。 図2から明らかなように、冷却体(冷却管)4に冷却水を通さない反応(■印)は平衡反応に満たないが、冷却体(冷却管)4に冷却水を通した反応(◆印)は、25atm(2.5MPa)以上の圧力域での反応で平衡転化率を超え、40atm(4MPa)の圧力下の反応では、CO転化率が75%に達している。 図3に、220℃で行った反応での生成物導出口9におけるCO2とArの比を示す。図3において、横軸は圧力(atm)、縦軸は生成物導出口9におけるCO2とArの比である。図3から明らかなように、冷却体(冷却管)4に冷却水を通さない反応(■印)は平衡反応とほぼ同程度であるが、冷却体(冷却管)4に冷却水を通した反応(◆印)は、圧力:20atm(2MPa)以上の圧力域で、CO2の比率が大きく減少しており、CO2の転化率が向上していることが分かる。 合成(原料)ガス流量:200ml/分、圧力:10atm〜40atm(1MPa〜4MPa)、温度:220℃、冷却体(冷却管)4における冷却水流量:125ml/分、合成(原料)ガスの組成は実施例2におけると同一組成である。この実施例においては、冷却体(冷却管)4の材質を銅およびSUS316としたものについて、合成(原料)ガスからのメタノール合成を行った。その結果を図4に示す。図4に示すように、冷却体(冷却管)4の材質が銅である場合よりもSUS316である場合の方が、高い転化率下にメタノールの合成反応が進行している。 本発明は、天然ガスの改質或は石炭やバイオマスをガス化して得られるガスを原料としてメタノールを製造するプロセスとして好適に用いることができる。また、原料である合成ガスの50%〜70%をメタノールとし、残余の未反応ガスを燃料とする複合システムを構築するときのメタノール合成プロセスとして利用可能である。さらに、小、中規模のメタノール製造プラントとして好適に用いることができる。本発明のメタノール製造装置を示す模式図本発明の高効率メタノール合成法による場合と、冷却によるメタノールの液化を行わない従来プロセスによる場合のCO転化率を、平衡反応の場合と併せ対比して示すグラフ生成物導出口におけるCO2とArの比を、本発明の高効率メタノール合成法による場合と、冷却によるメタノールの液化を行わない従来プロセスによる場合のCO転化率を、平衡反応の場合と併せ対比して示すグラフ本発明において、冷却体(冷却管)の材質を銅およびSUS316としたときのCO転化率を、平衡反応の場合と併せ対比して示すグラフメタノール合成での反応平衡におけるメタノール化率、温度、圧力の関係を示すグラフ 1 反応容器 2 多孔円筒 3 触媒充填層 4 冷却体(冷却管) 5 ヒータ 6 フランジ 7 ボルト孔 8 原料ガス導入口 9 生成物導出口 10 冷却水入口 11 冷却水出口 12 メタノール回収部(気液分離・貯留槽) 13 液状メタノール 14 未反応ガス+気相メタノール出口 15 冷却水入口 16 冷却水出口 17 液状メタノール抽出口 18 ウォータジャケット 19 シール材 22 孔 23 トレイ 水素と酸化炭素を主成分とする原料ガスを触媒の存在下に反応させてメタノールを合成する方法であって、反応容器の内部に一又は複数の多孔円筒を設け、該多孔円筒外周面と反応容器内壁面間に触媒充填部を形成するとともに、前記多孔円筒内部に、冷却媒体が流通しその外表面が合成されたメタノールの蒸気圧の露点以下の温度に維持されている冷却管を設け、該冷却管の外表面において生成メタノールを液化、滴下させて該液状メタノールを反応系外に抜き出し、平衡転化率を超える転化率の下でメタノール合成を遂行せしめるようにしたことを特徴とするメタノールの高効率合成方法。 水素と酸化炭素を主成分とする原料ガスを、触媒の存在下に反応させてメタノールを合成するメタノール製造装置であって、反応容器と、該反応容器内に一又は複数配置される多孔円筒と、前記反応容器内壁面および多孔円筒外周面間に形成される触媒充填部と、前記多孔円筒内に配設される、冷却媒体の流通によってその外部表面が合成されたメタノールの蒸気圧の露点以下の温度に維持される冷却管と、該冷却管における外表面において液化、滴下するメタノールを反応系外に抜き出し回収するメタノール回収部とを有することを特徴とするメタノール製造装置。