タイトル: | 公開特許公報(A)_精力増強剤 |
出願番号: | 2004106057 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K31/198,A61K35/56,A61P15/10 |
菊地 数晃 渡邊 一浩 又平 芳春 JP 2005289862 公開特許公報(A) 20051020 2004106057 20040331 精力増強剤 焼津水産化学工業株式会社 390033145 松井 茂 100086689 菊地 数晃 渡邊 一浩 又平 芳春 7A61K31/198A61K35/56A61P15/10 JPA61K31/198A61K35/56A61P15/10 8 1 OL 14 4C087 4C206 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB15 4C087BB16 4C087MA52 4C087NA14 4C087ZA81 4C206AA01 4C206AA02 4C206HA32 4C206MA01 4C206MA72 4C206NA14 4C206ZA81 本発明は、魚介類等から抽出して得られるオクトピンを利用した精力増強用組成物に関する。 良好な性生活を維持することは、いつまでも若々しく充実した人生を送る上で重要な意義をもち、いわゆるQOL(quality of life)の向上につながるものである。 しかしながら、ストレスの多い日本の社会では、勃起障害(erectile dysfunction = ED)や性欲減退などの理由により、良好な性生活を維持することが非常に困難となっているのが現状である。 そこで、QOL(quality of life)の向上ために、EDや性欲減退などの身体的心理的症状を招かないための予防・治療の提供が望まれている。また、不妊に悩む人々も多く、妊娠を望む人にそのような予防・治療を提供することは特に実際的な課題となっている。 EDとは、専門的に云えば「性交時に十分な勃起が得られないため、あるいは十分な勃起が維持できないため、満足な性交が行えない状態」と定義されている。およそ10年前の統計ではED患者は420万人であったが、最近では1000万人以上と推定されており、倍増していることが分かる。EDは、心理的ストレスのような心因性、あるいは加齢に伴う男性ホルモンの減少や糖尿病合併症などの身体性の原因で起こると考えられている。 近年、経口投与によりその有効性が証明されたED治療薬として「シルデナフィル」が登場し、注目を集めた。男性が性的な刺激を受けると、陰茎海綿体のNANC(非アドレナリン非コリン作動性)神経と海綿体内皮細胞において、一酸化窒素(NO)が合成される。NOが海綿体細胞内に浸透すると、グアニル酸シクラーゼの活性化が起こり、非活性のGTPから活性のサイクリックGMP(cGMP)に変換する。cGMPは海綿体の弛緩及び内圧の上昇を増大させることにより、勃起が生じる。化合物であるシルデナフィルは、このcGMPを分解するホスホジエステラーゼ(PDE)5の選択的阻害剤である。 医薬品として用いられるシルデナフィルには、一過性であるとはいえ副作用や薬物相互作用が報告されている。例えばニトログリセリンなどの硝酸剤の血圧降下作用に対して、シルデナフィルは促進的に働き、著明に血圧が低下することが臨床薬理試験で証明されており、それらとの併用は禁忌とされている。また、眼に対する作用について、国内の第I相試験から、単回投与(150mg)群で6例中2例に青視症及び複視、赤視症が認められたほか、第II相試験では、244例中、彩視症をはじめとする視覚異常が14件あり、用量依存的な発生頻度の増加が観察されたことが報告されている。従って、特定の疾患を呈する患者(重度の心血管障害を有する者、低血圧患者、網膜色素変性症の患者など)においては、副作用が懸念されるため、シルデナフィルは禁忌とされている。 シルデナフィルを有効成分とする医薬品の場合、使用に際して医師の処方箋が必要であり、安易に使用されるべきものではなく、特に循環器系の疾患をもつ者にはその使用が制限されている。 一般に精力増強剤は、日常生活において嗜好的欲求を充たすために服用されることも多く、そのような目的のためには、簡便に安心して利用できるものであることが望まれる。 バイアグラの例のように、純化された化合物を有効成分とする医薬品等には、その効果が著しい一方で、好ましくない副作用、ときには身体に悪影響を及ぼすほどの副作用を有するものが多い。 以上のような背景から、より手軽に且つ副作用を気にせずに安心して服用できるものであって、特に性欲減退や不妊に有効な精力増強剤が求められている。 上記の目的で、例えば、特許文献1には、天然物であるにんにくからの抽出物を利用した経口用の精力増強剤が開示されている。 また、特許文献2には、特に顕著な副作用が報告されていない、アミノ酸のL−アルギニンを利用して、哺乳動物の雌におけるインビトロ受精後の着床率の改善する方法が開示されている。特開平10−306032号公報特表2000−510462号公報 上記特許文献1では、にんにくからの抽出物の精力増強剤としての有効性を検定するために、雄のラットに経口投与後、精巣中のテストステロンの量を測定しているが、交尾回数や妊娠率を検定しておらず、性欲減退や不妊に有効であるかどうかは明らかとされていない。 上記特許文献2では、雌のラットの血中L−アルギニン濃度を有効濃度以上に維持することによって、受精後の着床率を改善する方法が開示されているが、雄のラットでのL−アルギニンの効果は検討されておらず、また、性欲減退の改善を目的とするものではないため、交尾回数も検定されていない。 このように、いくつかの試みを挙げることはできるものの、実際の妊娠率の向上に寄与できる精力増強剤は、あまり知られていない。 したがって、本発明の目的は、より手軽に且つ副作用を気にせずに安心して服用できる精力増強用組成物であって、性欲減退や不妊に有効であるものを提供することにある。 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、オクトピンを有意に高濃度に含有する水産生物から抽出される組成物に、優れた精力増強作用を見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、オクトピンを有効成分として含有することを特徴とする精力増強用組成物を提供するものである。 本発明の精力増強用組成物は、特に性行為への意欲の向上や、妊娠率の向上に有用である。 また、本発明の精力増強用組成物は、経口摂取用に剤形調製されたものであることが好ましい。 更に、本発明の精力増強用組成物は、前記オクトピンが、二枚貝類又は頭足類である魚介類中より選ばれた1種又は2種以上の水産生物から抽出された抽出物として含有されているものであってもよい。 この場合、前記二枚貝類又は頭足類である魚介類が、ホタテ貝、はまぐり、あさり、いかの中より選ばれた1種又は2種以上の水産生物であることが好ましい。 更に、前記抽出物中のオクトピン含量が0.1〜50,000mg/100gであり、当該抽出物を0.001〜100質量%含有することが好ましい。 更にまた、前記抽出物は、ホタテ貝柱から抽出されたものであることが最も好ましい。 オクトピンは、化学構造上、D−アラニンとL−アルギニンがアミノ基を共有する形で結合した構造を有するイミノ化合物であり、自然界では海産無脊椎動物の体内中に広範に見出されるものの、これを有意に含有する他の天然物は見出されておらず、海産無脊椎動物の体内中に特異に存在する天然成分であるということができる。オクトピンは細胞内でピルビン酸とL−アルギニンからオクトピンデヒドロゲナーゼによる還元的脱水縮合により合成される。無酸素もしくは低酸素環境下での筋肉運動時にその体内産生量が増加することが知られており、オクトピンを合成する反応は、細胞のエネルギー産生に伴う嫌気的解糖の結果生じる補酵素NADHをNAD+に再酸化して継続的に供給するための共役反応の一つと考えられている。 栄養源として日常的に食されるホタテ貝、はまぐり、あさり又はいか等の生物は海産無脊椎動物に分類され、上記に説明した化合物のオクトピンはそれらの筋肉組織中に多く含まれる。しかしながら、オクトピンが精力増強作用を有することは、本発明者らが知る限り、これまでに報告されていない。 本発明の精力増強用組成物のオクトピンは、例えばホタテ貝、はまぐり、あさり、いか等の二枚貝類あるいは頭足類の水産生物の筋肉組織から抽出することができ、天然物からの抽出物であるから副作用がなく、日常簡便にかつ安全に摂取することができる。 また、本発明の精力増強用組成物は、オクトピンを上記抽出物として含有するものでもよく、上記抽出組成物中のオクトピン含量は、典型的には10〜10,000mg/100gであり、後述する実施例のごとく、性欲減退症状の改善や妊娠率の向上に有意な効果のあるオクトピンの有効摂取量を、1日当り0.01〜200mg/kg体重であることを前提とすれば、有効量をその素抽出物を摂取することにより充足することができる。 本発明によれば、副作用等の予期しない作用を心配することなく日常簡便にかつ安全に摂取でき、性欲減退症状の改善や妊娠率の向上に有意な効果のある精力増強用組成物を提供することができる。 本発明の精力増強用組成物は、オクトピンを精力増強作用がもたらすのに十分な量で含有する組成物であればよく、精製単離されたオクトピンを配合したものに限らず、二枚貝や頭足類などのオクトピンを有意に高濃度に含有する水産生物から抽出された濃縮エキスなどの抽出物であってもよい。 オクトピンを抽出するための水産生物としては、二枚貝類又は頭足類である魚介類が好ましく、特にホタテ貝、はまぐり、あさり、いかの中より選ばれた1種又は2種以上が好ましく用いられる。また、特にはそれらの筋肉組織が好ましく、最も好ましくはホタテ貝柱が用いられる。 抽出方法は特に限定されず、例えば、魚介原料に水を加えて、60〜100℃で0.5〜3時間加熱抽出すればよい。また、加圧加熱抽出する場合は、110〜120℃で0.5〜3時間加熱抽出すればよい。 また、出発原料として一般の食品濃縮エキスを利用してもよく、例えば、調味料エキスとして用いられるホタテエキス(商品名:「ホタテエキスY」)、アサリエキス(商品名:「アサリエキスNo.626BF」)、スルメエキス(商品名:「スルメエキスNo.50BF」)等の市販されている魚介濃縮エキス(いずれも焼津水産化学工業株式会社製)を用いてもよい。 これらの濃縮エキスは、その他の成分として、アルギニン、タウリン、グリコーゲン、亜鉛などを含み、これらも精力増強作用向上に寄与すると考えられる。 本発明の精力増強用組成物においては、上記のオクトピン含有抽出物をそのまま使用してもよく、膜分離若しくはカラム精製等により有効成分を濃縮したものを使用してもよい。またその有効性を向上せしめる目的で、単離したオクトピンを配合することもできる。 本発明の精力増強用組成物は、膜分離若しくはカラム精製等により有効成分を濃縮したものを使用する場合、下記の方法を用いる分子分画処理を施すことによってオクトピンを濃縮・精製することにより得ることができる。なお、濃縮・精製工程の前処理として、上記魚介抽出物を適宜濃縮又は希釈して、Brix1〜40%に調整することが好ましく、操作性及び効率性の点から、Brix5〜15%に調整することがより好ましい。(1)膜分離による濃縮・精製 逆浸透膜又は限外濾過膜は、溶質成分をその大きさで分けることができるサイズ分離膜であり、それを分子分画手段として用いることによって上記魚介抽出物から夾雑物を除去し、オクトピンの含量を有意に高めることができる。 本発明において用いられる逆浸透膜は、オクトピンが透過する食塩阻止率5〜50%のものが好ましく、限外濾過膜を用いる場合には、高分子夾雑物の透過が少ない分画分子量10,000以下のものが好ましい。このようなサイズ分離膜としては、例えば、商品名「NTR−7410HG」(食塩阻止率約10%)又は商品名「NTR−7450HG」(食塩阻止率約50%)(いずれも日東電工株式会社製)などが挙げられる。 上記サイズ分離膜を用いて、Brix0.1〜20%になる様に予め適宜希釈、若しくは濃縮された魚介抽出物の濃縮を行い、その透過液を回収することにより、オクトピンの含量が有意に高められた画分を得ることができる。なお、サイズ分離膜の選択は原料となる魚介抽出物の濃度、pH、温度、若しくは含まれる夾雑物等の条件により適宜設定すればよい。(2)イオン交換樹脂による濃縮・精製 イオン交換樹脂は、イオン性物質の樹脂への吸着特性の差異を利用する分離精製用樹脂であり、それを分子分画手段として用いることによって上記魚介抽出物から夾雑物を除去し、オクトピンの含量を有意に高めることができる。 本発明において用いられるイオン交換樹脂は、分離能力、回収効率、樹脂の取り扱いやすさの面から強酸性イオン交換樹脂が好ましい。このようなイオン交換樹脂としては、強酸性イオン交換樹脂(商品名「アンバーライト252」;オルガノ株式会社製)などが挙げられる。 上記イオン交換樹脂を用いて、塩分1%以下、Brix0.1〜20%になる様に予め適宜希釈、若しくは濃縮、及び必要に応じて脱塩された魚介抽出物を、予めプロトン型とした強酸性イオン交換樹脂に吸着させ、樹脂を水洗した後、溶出液を用いて吸着成分の溶出を行い、その溶出液を回収することにより、オクトピンの含量が有意に高められた画分を得ることができる。 ここでの樹脂の水洗は樹脂量に対して1から3倍量あれば十分である。また、溶出液はオクトピンが溶出できるだけのイオン強度を有していれば特に大きな制限は無いが、例えば0.5〜2N塩酸、若しくは0.5〜2N食塩水であれば作業的又は食品的にも安全であり、安心して用いることができる。溶出液量は樹脂量に対して1から3倍量あれば十分である。また、本発明におけるイオン交換樹脂による精製は樹脂をカラムに充填するカラム式、樹脂を魚介抽出物に添加するバッチ式のどちらを用いても良い。 上記(1)、(2)の濃縮・精製方法は魚介抽出物に含まれる夾雑物等の条件、若しくは目標とする精製度他の目的により適宜選択し、組み合わせることができる。 上記のようにして得られたオクトピンの高含有画分は、その製品化のために、必要に応じて脱塩、脱臭・脱色、濃縮、乾燥等の工程を適宜施されたものであってもよい。その手法としては、脱塩方法であれば、樹脂脱塩、膜脱塩、電気脱塩等、脱臭・脱色方法であれば活性炭処理等、濃縮方法であれば膜濃縮、減圧濃縮等、乾燥方法であれば、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等が挙げられ、特に制限されるものではない。製品形態は液状、ペースト状、固形状、粉末状等でよく、特に制限されるものではない。 本発明の精力増強用組成物は、有効成分であるオクトピンを0.1〜100,000mg/100g含有することが好ましく、100〜100,000mg/100g含有することがより好ましい。 本発明の精力増強用組成物を医薬品、機能性食品等として利用する場合、上記基本的成分の他に、賦形剤、ミネラル類、ビタミン類、糖類、香料等を適宜配合することができ、製品形態は、錠剤、粉末、顆粒、溶液、カプセル剤等が挙げられるが、特に制限されない。 本発明の精力増強用組成物には、オクトピンの効果を損なわない範囲内で、他の成分を併用して配合してもよい。例えば、アミノ酸として、アルギニン、タウリン、グルタミン酸、ヒスチジン、分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)などが使用される。また、ヒスチジン、1−メチルヒスチジン、3―メチルヒスチジン、アンセリン、カルノシン、ホモカルノシン、バレニンのようなイミダゾール化合物も併用することができる。その他、オクタコサノール、クエン酸、酢酸、キチンダイマー、キチンペンタマー、キトサンヘキサマー、グルコサミン、オリゴグルコサミン、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ホマリン、スッポンエキス、マムシエキス、オットセイエキス、トナカイの角、マカエキス、ガラナエキス、トウガラシ、高麗人参、亜鉛、セレンなどが挙げられる。 本発明の精力増強用組成物の投与形態は特に制限されないが、例えば、錠剤、粉末、顆粒、溶液、カプセル剤等の剤形としたものを、経口的に服用することができる。その際、配合する食品、医薬品により異なるが、一日当たりの摂取量が、体重1kg当りオクトピンに換算して0.01〜5,000mgであることが好ましく、0.1〜200mgであることがより好ましい。 以下、本発明を実施例により具体的に説明する。しかし、これらの実施例は本発明の実施態様を具体的に説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。(ホタテ貝柱からのホタテ貝抽出物の調製) 北海道オホーツク海産のホタテ貝柱(500g)を5,000mlの脱イオン水に投入し、ミキサーでホモジナイズした。70℃で30分間加熱して冷却後、100gのろ過助剤を用いて不溶物を除去した。次いで、このろ液を食塩阻止率約10%の逆浸透膜(商品名「NTR−7410HG」;日東電工株式会社製)に供し、適宜加水しながら透過液側(計15L)を回収した。この透過液を加熱減圧濃縮し、ペースト状のオクトピン高含有魚介抽出物61gを得た。(ホタテ貝抽出物の分析) 実施例1で調製したホタテ貝柱抽出物のペーストに含有するオクトピン濃度を測定するために、Kai, M. at al.の方法[J.Chromatography, 268, 417-424 (1983)]に準じてHPLC分析を行なった。 すなわち、ペースト中のオクトピンを誘導体化するために、適宜、希釈したホタテ貝柱抽出物のペースト試料0.2mlをスクリューキャップ付ガラス製試験管にとり、0.1mlの4.0mMベンゾイン(メチルセロソルブ溶液)、0.1mlの還元剤(0.1Mβ-メルカプトエタノール、0.2M亜硫酸ナトリウム)、及び0.2mlの2M水酸化カリウムを加え、キャップを閉めて100℃、5分間加熱した。次いで、氷中で2分間冷却後、0.2mlの2M塩酸(0.5Mトリス塩酸緩衝液、pH8.5を含有)を加えて中和した。 誘導体化されたオクトピンを含むこの中和液を孔径0.45μmのメンブレンでろ過して、表1の条件でHPLC分析に供した。 HPLC分析の結果、実施例1で調製したホタテ貝柱由来のオクトピン高含有魚介抽出物には10.0質量%のオクトピンが含まれる事が明らかとなった。 このオクトピン高含有魚介抽出物に含有するオクトピン以外の成分を分析した結果、固形分75質量%、総窒素4.4質量%、水分18.2質量%、灰分6.8質量%の組成であることが明らかとなった。またアミノ酸分析計により、遊離成分を分析した結果、タウリンを3.3質量%、アルギニンを0.83質量%、分岐鎖アミノ酸を0.3質量%の濃度でそれぞれ含有している事が明らかとなった。原子吸光度計で分析した亜鉛含量は、28ppmであった(貝類に含まれるオクトピンの分析) ホタテ貝柱、はまぐり、あさり、あるいは生かき(養殖)の肉8.0gに対して、24mlの1N過塩素酸を加えてホモジナイズした。遠心分離(10,000×g、20分間)して得られた上清を5N水酸化カリウムで中和した。再び、遠心分離(10,000×g、20分間)を繰り返して上清を回収した。上清中のオクトピンをKai, M. at al.の方法[J.Chromatography, 268, 417-424 (1983)]に準じて実施例2の方法で定量した。 分析の結果、原料の重量当りのオクトピン含量は、それぞれ、ホタテ貝柱で964mg/100g、はまぐりで16mg/100g、あさりで11mg/100gであった。生かき(養殖)には、オクトピンは検出されなかった。(水産エキスのオクトピン含量の分析) 下記調味料エキス(いずれも焼津水産化学工業株式会社製)のオクトピン含量について、実施例2と同様の方法でHPLC分析した。その結果、原料エキスの重量当りのオクトピン含量は、それぞれ、ホタテエキス(商品名「ホタテエキスY」)には178mg/100g、アサリエキス(商品名「アサリエキスNo.626 BF」)には154mg/100g、スルメエキス(商品名「スルメエキスNo.50 BF」)には197mg/100gであった。(ラットの総交尾回数と妊娠率に対するオクトピン及びホタテ貝抽出物の影響試験) 動物は飼育期間を通じ、温度23±1℃、湿度70±10%、12時間の明暗サイクルで少なくとも1週間予備飼育を行なった。飲料水及び標準飼料は自由摂取とした。 36匹の16週齢の雄ウィスターラット(平均体重460g)を4グループ(n=9)に分けた。各グループのラットに対して注射用水、アルギニン(シグマ社製)、オクトピン(シグマ社製)、あるいは実施例1で調製したホタテ貝抽出物を1日当りの投与量が40mg/kg体重となるように1日2回、14日間、連続で経口投与し、それぞれ対照群、アルギニン投与群、オクトピン投与群、またはホタテ貝抽出物投与群とした。投与は、午前10時から午後5時の時間帯に行なった。経口投与を開始してから8日目から14日目までは、対照群または投与群の雄ラット1匹に対して雌ラット6匹を一緒にし、午後5時から午前10時の時間帯に、透明のプレキシグラス製チャンバー内に隔離して飼育した。5ワットの赤色ランプを照明として用いて、ラットの行動をビデオカメラにより録画し、この時間帯に行なわれた交尾回数を観察した。交尾回数の測定は、8日目から14日目まで毎日行ない、この7日間に行なわれた雄ラット1匹当りの交尾回数の総計を総交尾回数と定義した。 被験物質の経口投与終了の翌日(15日目)から、雌ラットの妊娠率の測定を開始した。1週間に2回の割合で2週間、熟練した検査員が触診により妊娠の有無を判定した。雄1匹と交尾をした雌6匹のうち、何匹が妊娠したかを割合で表し、妊娠率(%)と定義した。 雄ラットの交尾回数に及ぼす被験物質(アルギニン、オクトピン及びホタテ貝抽出物)の影響についての結果を図1に示す。データは雄ラット9匹の平均値±S.E.として表した。対照群の交尾回数は212±59回、アルギニン投与群は183±46回であり、両群の間に差異は認められず、アルギニンはラットの交尾回数に影響を与えないことが明らかとなった。一方、オクトピン投与群の交尾回数は、243±31回であり、対照群と比較して1.15倍に増加した。さらにホタテ貝抽出物投与群では、285±47回であり、対照群と比較して1.34倍に増加した。この結果より、オクトピン及びホタテ貝抽出物は、交尾回数を増加させる作用を有することが明らかとなった。特にホタテ貝抽出物投与群に有意な効果がみられた。 図2には、雌ラットの妊娠率に及ぼす被験物質(アルギニン、オクトピン及びホタテ貝抽出物)の影響を図示する。データは雄ラット9匹の平均値±S.E.として表した。対照群の妊娠率は45.8±7.7%、アルギニン投与群は52.1±4.6%であり、両群の間に差異は認められず、雄ラットへのアルギニン投与は雌ラットの妊娠率にに影響を与えないことが明らかとなった。一方、オクトピン投与群の妊娠率は、68.8±4.6%であり、対照群と比較して1.50倍と有意に増加した。さらにホタテ貝抽出物投与群では、妊娠率は75.0±5.9%となり、対照群と比較して1.64倍にまで有意に増加した。この結果より、雄ラットへのオクトピンあるいはホタテ貝抽出物の投与は、妊娠率を有意に増加させることが明らかとなった。特にホタテ貝抽出物投与群に有意な効果がみられた。 以上より明らかなように、アルギニン投与群では有意な効果は認められないのに対し、化学構造上アルギニン部分を含むオクトピンには、交尾回数、妊娠率ともに有意な効果が認められた。また、ホタテ貝抽出物にはオクトピンが10.0質量%の高濃度で含まれることを考慮すれば、ホタテ貝抽出物の作用は含有オクトピンに起因するものであることが強く示唆された。 ここで、実施例2に明らかにしたように、ホタテ貝抽出物の組成には分岐鎖アミノ酸、亜鉛などのオクトピン以外の成分が含まれている。よって、オクトピンを含有するホタテ貝抽出物の投与が、単離されたオクトピンの投与に比べさらに有意な効果を示す本実施例によって、ホタテ貝抽出物中に含まれるオクトピン以外のいずれかの成分が、性欲減退の症状や妊娠率の改善の目的で用いられるオクトピンを主な有効成分とするの精力増強用組成物の補助的有効成分として有用であることもあわせて示唆された。 アルギニンやオクトピンは一酸化窒素(NO)を生成する一酸化窒素合成酵素の基質となることが知られている。上記「シルデナフィル」の例での勃起不全の治療や、特許文献2に開示されている例での雌動物におけるインビトロ受精後の着床率の向上に有用な方法においては、ともにその効果の作用機序として、体内または細胞内の一酸化窒素(NO)が主要な要素であることが明らかとなっている。そこで、本発明実施例での性欲減退の症状や妊娠率の改善においても、オクトピン投与による体内または細胞内の一酸化窒素(NO)濃度変化が寄与していることが推察できる。アルギニンは体内あるいは細胞内においては、速やかに代謝や生合成経路に移行し、分解され、もしくは、タンパク質に取り込まれるため、一酸化窒素(NO)等の有効物質を産生するための基質として長く滞留することは期待できない。一方、本発明におけるオクトピンはアルギニンの誘導体であるため、その代謝や生合成経路に移行しにくく、その体内有効濃度が高く維持され、顕著な効果をもたらしたものと考えられる。 本発明のオクトピンを有効成分とする精力増強用組成物は、性欲減退の症状を改善し、妊娠率を向上させるための精力増強効果を有する医薬品、機能性食品等として利用することができる。雄ラットの交尾回数に及ぼすアルギニン、オクトピン、ホタテ貝抽出物の経口投与の影響を調べた結果を示す図である。雌ラットの妊娠率に及ぼすアルギニン、オクトピン、ホタテ貝抽出物の経口投与の影響を調べた結果を示す図である。 オクトピンを有効成分として含有することを特徴とする精力増強用組成物。 性行為への意欲の向上に有用な請求項1に記載の精力増強用組成物。 妊娠率の向上に有用な請求項1に記載の精力増強用組成物。 経口摂取用に剤形調製された請求項1〜3のいずれか1つに記載の精力増強用組成物。 前記オクトピンが、二枚貝類又は頭足類である魚介類中より選ばれた1種又は2種以上の水産生物から抽出された抽出物として含有されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の精力増強用組成物。 前記二枚貝類又は頭足類である魚介類が、ホタテ貝、はまぐり、あさり、いかの中より選ばれた1種又は2種以上の水産生物である請求項5に記載の精力増強用組成物。 前記抽出物中のオクトピン含量が0.1〜50,000mg/100gであり、当該抽出物を0.001〜100質量%含有する請求項5又は6に記載の精力増強用組成物。 前記抽出物が、ホタテ貝柱から抽出されたものである請求項5〜7のいずれか1つに記載の精力増強用組成物。 【課題】 より手軽に且つ副作用を気にせずに安心して服用できる精力増強用組成物であって、性欲減退や不妊に有効であるものを提供する。【解決手段】 この精力増強用組成物は、オクトピンを有効成分として含有する。特に性行為への意欲の向上や、妊娠率の向上に有用である。また、精力増強用組成物は、経口摂取用に剤形調製されたものであることが好ましい。前記オクトピンは、二枚貝類又は頭足類である魚介類中より選ばれた1種又は2種以上の水産生物から抽出された抽出物として含有されていてもよい。前記二枚貝類又は頭足類である魚介類は、ホタテ貝、はまぐり、あさり、いかの中より選ばれた1種又は2種以上の水産生物であることが好ましい。【選択図】 図1