生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_容器詰カテキン含有飲料
出願番号:2004104736
年次:2009
IPC分類:A23L 1/30,A23L 2/38,A61P 3/04,A61P 3/06,A23L 2/52,A61K 31/353


特許情報キャッシュ

野澤 歩 杉本 明夫 永田 幸三 角田 隆巳 馬場 吉武 溜本 公子 良辺 文久 JP 4317781 特許公報(B2) 20090529 2004104736 20040331 容器詰カテキン含有飲料 株式会社 伊藤園 591014972 竹内 三郎 100072084 市澤 道夫 100110962 野澤 歩 杉本 明夫 永田 幸三 角田 隆巳 馬場 吉武 溜本 公子 良辺 文久 JP 2003097276 20030331 20090819 A23L 1/30 20060101AFI20090730BHJP A23L 2/38 20060101ALI20090730BHJP A61P 3/04 20060101ALI20090730BHJP A61P 3/06 20060101ALI20090730BHJP A23L 2/52 20060101ALN20090730BHJP A61K 31/353 20060101ALN20090730BHJP JPA23L1/30 BA23L2/38 CA23L2/38 ZA61P3/04A61P3/06A23L2/00 FA61K31/353 A23L 1/30 BIOSIS MEDLINE WPIDS JSTPLUS 特開2002− 68992(JP,A) 特開2002−272373(JP,A) 特開2002−326932(JP,A) Biochimca et Biophysica Acta,1992,Vol.1127,pp.141−146 1 2004313189 20041111 20 20050825 2006021579 20060927 特許法第30条第1項適用 平成14年9月30日発行の刊行物「健康・栄養食品研究Vol.5 No.2 2002」において発表 柳 和子 橋本 栄和 坂崎 恵美子 本発明は、お茶等に比べてカテキンを高濃度で含有するカテキン含有飲食物及びその製造方法に関する。 お茶は、水可溶性成分としてタンニン(主にカテキン)、アミノ酸類、カフェイン、糖類、サポニンなどを含んでいる。近年、これら水可溶成分の様々な薬理効果が明らかになり、今やお茶は単なる嗜好品としての飲み物ではなく健康飲料として着目され、お茶の水可溶性成分はそれぞれ薬理活性成分としても利用されている。 中でもカテキンは特に注目されており、カテキンを有効成分とする数多くの薬剤が開示されている。例えば「コレステロ−ル上昇抑制剤(特開昭60−156614号公報)」、「抗腫瘍剤(特開昭60−190719号公報)」、「抗う蝕及び抗歯周病組成物(特開昭64−009922号公報)」、「下痢症ウイルス感染阻害剤(特開平01−265023号公報)」、「う蝕予防剤(特開平02−025413号公報)」、「血小板凝集抑制剤(特開平02−184626号公報)」、「インフルエンザウイルス感染予防剤(特開平03−101623号公報)」、「マイコプラズマ感染予防剤(特開平03−106820号公報)」、「α−アミラ−ゼ活性阻害剤(特開平03−133928号公報)」、「血糖上昇抑制剤(特開平04−253918号公報)」、「大腸癌予防用組成物(特開平04−264027号公報)」、「胃炎、胃または十二指腸潰瘍防止組成物(特開05−139972号公報)」、「抗動脈硬化剤(特開平06−056686号公報)」、「抗変異原活性並びにス−パ−オキシドジムスタ−ゼ様活性を有する茶カテキン類(特開平06−128168号公報)」、「解毒剤(特開平09−059154号公報)」、「抗ガン剤の効力増強方法(特開平10−036260号公報)」、「活性酸素発生抑制剤及び活性酸素起因疾患予防剤(特開平10−175858号公報)」、「テロメレ−ス阻害剤(特開平11−246402号公報)」、「ガストリン分泌抑制剤及び胃酸分泌抑制剤(特開平11−193239号公報)」などを挙げることができる。 ちなみに、カテキンは、フラバン−3−オ−ル骨格を有する化合物であり、(−)−エピガロカテキンガレ−ト(EGCg)、(−)−エピカテキンガレ−ト(ECg)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、(−)−エピカテキン(EC)、(−)−ガロカテキンガレ−ト(GCg)、(−)−カテキンガレ−ト(Cg)、(±)−ガロカテキン(GC)及び(±)−カテキン(C)の8種のカテキンの存在が知られており、ガレート基を有するエステル型カテキンとガレート基を有さない遊離型カテキン、或いは、エピ体と非エピ体などに分類することができる。 他方、上記の水可溶性成分はそれぞれお茶の味成分としても機能している。タンニン(カテキン)は苦味及び渋味に、カフェイン及びサポニンは苦味に、アミノ酸類は旨味及び甘味に、糖類は甘味にそれぞれ関与し、茶の味を構成している。 中でもカテキンに関して更に言えば、全般的には上記の如く苦味及び渋味に関与しているが、カテキンの種類によって味の傾向が異なっている。すなわち、(−)−エピカテキン(EC)及び(−)−エピガロカテキン(EGC)などの遊離型カテキンは渋みが弱く、温和な苦味を有する一方、(−)−エピガロカテキンガレ−ト(EGCg)、(−)−エピカテキンガレ−ト(ECg)などのガレートタイプのエステル型カテキンは強い苦渋味を有している(社団法人静岡県茶業会議所「新茶業全書」p476〜477(昭和63年10月1日))。 薬理作用に優れたカテキンを効率良く摂取するため、従来、カテキンを高濃度で含有するカテキン含有飲食物が開示されている。 例えば特許文献1は、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートの4種類のカテキンの合計濃度が、殺菌後の容器詰の状態において、40mg/100ml以下20mg/100ml以上であり、かつ前記4種類のカテキンの中エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートの合計濃度が前記4種類のカテキンの合計濃度に対して30%〜40%の範囲内にあることを特徴とする常温以下に冷却された状態で販売される容器詰緑茶飲料を開示している。 また、特許文献2は、(A)非エピ体カテキン類及び(B)エピ体カテキン類のカテキン類を溶解して含有し、それらの含有重量が容器詰めされた飲料500mL当り、(イ)(A)+(B)=460〜2500mg、(ロ)(A)=160〜2250mg、(ハ)(A)/(B)=0.67〜5.67であり、pHが3〜7である容器詰飲料を開示している。 特許文献3は、(A)非エピ体カテキン類、(B)エピ体カテキン類及び(C)環状デキストリンを含有し、それらの含有重量が容器詰めされた飲料500mLL当り、(イ)(A)+(B)=460〜1300mg、(ロ)(A)=160〜1040mg、(ハ)(A)/(B)=0.54〜4.0、(ニ)(C)=750〜5000mgであって、飲料のヘイズ値が22以下である容器詰飲料を開示している。 特許文献4は、茶抽出物の濃縮物を、水、炭酸水及び茶類の抽出液から選ばれる媒体に溶解させ、非重合体であって水に溶解状態にある成分(A)非エピ体カテキン類及び成分(B)エピ体カテキン類の含有重量を、容器詰めされた飲料500mL当り、(イ)(A)+(B)=460〜2500mg、(ロ)(A)=160〜2250mg、(ハ)(A)/(B)=0.54〜9.0となるように調整してなる容器詰飲料を開示している。 特許文献5は、茶抽出物の濃縮物を、水、炭酸水及び茶類の抽出液から選ばれる媒体に溶解させ、非重合体であって水に溶解状態にある成分(A)非エピ体カテキン類及び成分(B)エピ体カテキン類の含有重量を、容器詰めされた飲料500mL当り、(イ)(A)+(B)=460〜2500mg、(ロ)(A)=160〜2250mg、(ハ)(A)/(B)=0.54〜9.0となるように調整してなる容器詰飲料を開示している。 また、抽出濃度を濃くしてカテキン含有量を増加させると、苦渋味やレトルト臭が問題となるため、これを改善するために二酸化炭素を吹き込んでなる炭酸入り緑茶缶ドリンクなども開示されている(非特許文献1参照)。特開平6−343389号公報特許第3329799号公報(特開2002−142677号)特許第3342698号公報(特開2002−238518号)特許第3338705号公報(特開2002−272373号)特開2002−238519号公報高嶋和彦「新嗜好緑茶缶ドリンクの開発」、宮崎県総合農試だよりNo.136、2000年、p43〜44 本発明は、カテキンを高濃度で含有し、しかも滋味及び香りに優れ、好ましくは製造後において二次オリが発生しないカテキン含有飲食物を、新たな観点から提供せんとするものである。 本発明は、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で、全カテキン合計含有量の70重量%以上含有し、かつ、次の(1)〜(3)の条件を満足することを特徴とするカテキン含有飲食物を提案する。(1) (−)GCg及び(−)Cgの合計含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の40重量%以上である。(2) (−)ECgの含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の20重量%以下である。(3) (−)GCgの含有量が、(−)ECgの含有量以上である。 本発明者がカテキンの薬理活性について鋭意研究したところ、4種類のエステル型カテキンはいずれも血清コレステロール低下効果等に関する優れた薬理活性を備えていることが分ったが、同時に、エステル型カテキン類のみで飲食物中のカテキンを構成すると、風味が不足して飲食物を摂取し難いことも分った。そこで本発明では、全カテキン合計含有量の70重量%以上をエステル型カテキンが占めるように飲食物を構成することとした。 また、エステル型カテキンの中でも非エピ体である(−)GCg及び(−)Cgは、エピ体に比べて血清コレステロール低下効果等に関する優れた薬理活性を備えていることが分った。そこで、非エピ体、中でも特に(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量が、エステル型カテキン類の合計含有量の少なくとも40重量%を占めるように構成することとした。 更に、ECgの血清コレステロール低下効果等に関する薬理活性は、エステル型カテキンの中で最も小さいため、(−)ECgの含有量をエステル型カテキン類の合計含有量の20重量%以下とすることとした。 その一方、(−)GCgの血清コレステロール低下効果等に関する薬理活性はエステル型カテキンの中で最も優れているため、(−)ECgの薬理活性の低さを(−)GCgの効果で補償すべく、(−)GCgの含有量を(−)ECgの含有量以上とすることとした。 以上の条件を満たすカテキン含有飲食物は、カテキンの優れた薬理活性、特に血清コレステロール低下効果等に関する優れた薬理活性を備えており、しかも滋味及び香りにも優れているから、摂取し易い健康飲料或いはダイエット飲料などとして提供することができる。 更に、カテキン含有飲食物、特に飲料中に含まれるストリクチニンの含有量(濃度)を6ppm以下とすれば、二次オリの発生しないカテキン含有飲料とすることができる。 茶飲料などでは、製造後の保管時においてフロック状(綿状)の懸濁・沈殿物(「二次オリ」と言われる。)が発生する問題が長年に渡る課題であったが、本発明者はストリクチニンがその原因物質であることを究明した。すなわち、茶抽出液中の「ストリクチニン」が加熱処理されて「エラグ酸」に分解され、この「エラグ酸」が「タンパク質」等(カテキンも含まれる可能性がある。)と結合して二次オリを形成することを確認し、更に、飲料中のストリクチニン濃度が6ppm以下であれば二次オリが発生しないことを確認している。 本発明のカテキン含有飲食物の製造方法としては、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で500mg/L以上含有するカテキン溶液を作製し、これを80℃以上で加熱処理した後、濃縮及び乾燥することを特徴とする製造方法が好ましい。 また、上記の如く作製したカテキン溶液を80℃以上で加熱処理後、濃縮及び乾燥して得られた濃縮乾燥物を飲食品又は飲食品材料に配合するようにしてもよい。 さらにまた、エステル型カテキン類(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で500〜6000mg/L含有するカテキン溶液を作製し、これを80℃以上で加熱処理するように製造してもよい。 (−)GCg及び(−)Cgは、(−)EGCg及び(−)ECgのエピマー、すなわち(−)EGCg及び(−)ECgの一つの不斉炭素原子が反転した立体配置を持つジアステレオマー(鏡像異性体以外のすべての立体異性体)である。これら(−)GCg及び(−)Cgは、天然物(例えば茶葉)中に僅かに含まれるのみであるが、天然物(例えば茶葉)中に多く含まれている(−)EGCgや(−)ECgを熱異性化して得ることができる。 したがって、上記のいずれの製造方法も、エステル型カテキン類を所定値以上含有するカテキン溶液を作製し、これを加熱処理することによって(−)EGCg及び(−)ECgの熱異性化を促すことにより(−)GCg及び(−)Cgの含有量を高めることができる。 なお、本明細書において「飲食物」とは、食品乃至飲料、すなわち食品及び飲料をまとめた総称の意であり、食品及び飲料を包含する。 「飲食品」とは、製品としての飲料又は食品を意味し、「飲食品材料」とは該飲食品の構成材料を意味する。 「エステル型カテキン類」とは、(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgのガレート基を有する4種類のカテキンを包含し、ガレート基を有しない遊離型カテキン類と区別することができる。 「エピ体」とは、(−)EC、(−)EGC、(−)ECg及び(−)EGCgを意味し、「非エピ体」とは(−)C、(−)GC、(−)Cg及び(−)GCgを意味する。 「全カテキン」とは(−)EC、(−)EGC、(−)ECg及び(−)EGCg、(−)C、(−)GC、(−)Cg及び(−)GCgの8種類を包含するカテキンの意である。 「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を有効成分とする」の「有効成分とする」とは、(−)GCg又は(−)Cgの血清コレステロール低下作用が阻害されなければ、その他の成分、例えば(−)EC、(−)ECg、(−)EGCgなどの成分を含んでいてもよいという意を包含する。 また、(−)GCgの重合体、(−)GCgと他のカテキンとの共重合体、(−)Cgの重合体、或いは(−)Cgと他のカテキンとの共重合体は、「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」の均等物であると考えることができる。 また、本発明が特定する数値範囲は、その上限値及び下限値から外れる場合であっても、当該数値範囲内と同一の作用効果を備えている限り、当該数値範囲と均等として本発明の範囲に含ませる意を包含する。 次に本発明の実施の形態について説明する。(第一の実施形態) 「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」を最終的に所望濃度となるようにその量を調整して、任意の飲食品(水を含む)或いは飲食品材料(水を含む)に配合することにより本発明のカテキン含有飲食物を製造することができる。その他の成分を配合したり、その他の処理を施すことは適宜可能である。 (−)GCg及び(−)Cgは、従来公知の方法或いは今後公知となる方法によって得ることができる。 (−)GCg及び(−)Cgは、茶葉を含めて天然植物中にほとんど存在しないが、例えば「(−)EGCg、(−)ECg或いはこれらの混合物」を80℃以上で加熱処理して熱異性化(エピマ−化)させることにより得ることができる。 よって、「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」は、例えば精製した(−)EGCg或いは(−)ECg或いはこれらの混合物、又は、茶の抽出液或いは浸出液などの「(−)EGCg及び(−)ECgを含有するカテキン溶液」を、80℃以上で加熱処理してカテキンの熱異性化を促すことにより(−)GCg又は(−)Cgの含有濃度を高めることができ、この加熱処理物から(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物、或いはこれらを高濃度で含有する混合物を分離・精製することにより得ることができる。 この際、カテキン溶液をpH5〜6に調製した上で加熱処理するのが好ましい。pH4.5以下ではカテキンはほとんど熱異性化しない可能性がある(Seto et al.:Biosci.Biotech.Biochem.61(9),1434(1997))。 「(−)EGCg及び(−)ECgを含有するカテキン溶液カテキン溶液」の組成としては、エステル型カテキン類を合計で500mg/L以上含有するように調製するのが好ましい。例えば、(−)EGCg及び(−)ECgを200〜6000mg/L、より好ましくは(−)EGCg及び(−)ECgを300〜3000mg/Lで含有するように調製するのが好ましい。 また、「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」を分離・精製する方法としては、従来公知の方法或いは今後公知となる方法を採用することができる。一例を挙げれば、被処理液(例えば茶の抽出液)を例えば水−アセトニトリル−リン酸の混合液を移動相とした逆相HPLCにかけ、アセトニトリル濃度でグラジエントをかけることによって(−)GCg及び(−)Cgをそれぞれ分離することができる。 「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」は、それぞれ単独の有効成分として配合することもできるが、他のカテキン、例えば(−)EC、(−)ECg、(−)EGCgのいずれか一或いはこれら二種類以上の組合せからなる混合物などと混合した状態で、任意の飲食品(水を含む)或いは飲食品材料(水を含む)に配合することができる。 配合する「飲食品材料」としては、水、炭酸、賦形剤(造粒剤含む)、希釈剤、或いは更に甘味剤、フレーバー、小麦粉、でんぷん、糖、油脂類等の各種タンパク質、糖質原料やビタミン、ミネラルなどの飲食品材料群から選ばれた一種或いは二種以上を挙げることができる。例えば、精製水や生理食塩水などに所望濃度となるように溶解してカテキン含有飲料としてもよい。 他方、配合する「飲食品」としては、現在公知の飲食品、例えばスポーツ飲料、果実飲料、乳飲料、茶飲料、野菜ジュース、乳性飲料、アルコール飲料、ゼリー、ゼリー飲料、炭酸飲料、チューインガム、チョコレート、キャンディ、ビスケット、スナック、パン、乳製品、魚肉練り製品、畜肉製品、冷菓、乾燥食品、サプリメントなどを挙げることができる。中でも、脂肪を多く含んだ飲食品に(−)GCg、(−)Cg、或いはこれらの混合物、或いはこの混合物を含むカテキン溶液などを加えて飲食物として調製すれば、含有脂肪量の割にコレステロールの上昇を抑制することができるから、低コレステロール飲食物或いはダイエット飲食物などとして提供することができる。(第二の実施形態) 次に、茶から本発明のカテキン含有飲料を製造する方法について説明する。 上述のように、(−)GCg及び(−)Cgは、天然の茶中にほとんど存在しないが、天然の茶に多く含まれている(−)EGCg、(−)ECg或いはこれらの混合物を所定温度以上で加熱処理することにより得ることができる。 よって、(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを所望量含有する(これら以外を含んでいてもよい。)「カテキン溶液」を作製し、これを所望温度で加熱処理することにより(−)GCg及び(−)Cgを所望量含有するカテキン含有飲料を製造することができる。 例えば、茶を抽出して得られる茶抽出物((−)EGCg及び(−)ECg含有)を水等に所定量添加して、(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgをそれぞれ所望量含有する(これら以外を含んでいてもよい。)「カテキン溶液」を作製し、これを所望温度で加熱処理することにより(−)GCg及び(−)Cgを所望量含有する所望組成の茶由来のカテキン含有飲料を製造することができる。 この際、原料とする「茶」としては、(−)EGCg及び(−)ECgを含有していれば特に種類、部位などには制限されない。例えば茶生葉、紅茶やプアール茶等の発酵茶、ウーロン茶や包種茶等の半発酵茶、緑茶や釜煎り緑茶、ほうじ茶等の不発酵茶のいずれか(単独)、又は、これらの2種類以上の混合物を抽出して得られるもの、或いはそれぞれを抽出して得られたものの混合物を用いることができる。 茶の抽出は、茶を水、温水または熱水、好ましくは40℃〜100℃の温熱水、中でも90〜100℃の熱水、或いは人体に無害なエタノール水溶液またはエタノールなどの有機溶媒で抽出して茶抽出物を得ればよい。更にこの茶抽出物を溶媒抽出法、樹脂吸着法、限外濾過・逆浸透濾過等の濾過などの精製手段によって、カテキン、中でも(−)EGC及び(−)ECgの含有量を高める方向に精製して茶抽出物を得ることもできる。抽出の際、(−)EGC及び(−)ECgの含有量を高めるべく塩酸等を添加して酸性条件下で抽出を行ってもよい。 また、市販の茶抽出物を用いることもできる。例えば、テアフラン30A(商品名;伊藤園社製)或いはテアフラン90S(商品名;伊藤園社製)などを好ましく用いることができる。テアフラン30Aは、緑茶を熱水抽出処理し、この抽出物を乾燥させてカテキン濃度を30%とした緑茶抽出物であり、テアフラン90Sは、緑茶を熱水抽出処理して得た抽出物を、水と低・高濃度アルコールを使って吸着カラムにて分離し乾燥させ、茶ポリフェノール濃度を85〜99.5%とした緑茶抽出物である。その他、市販の茶抽出物として三井農林(株)製「ポリフェノン」、太陽化学(株)製「サンフェノン」、サントリー(株)製「サンウーロン」等も用いることができる。 「カテキン溶液」の組成としては、エステル型カテキン類を合計で500mg/L以上含有するように調製するのが好ましい。例えば、(−)EGCg及び(−)ECgを200〜6000mg/L、より好ましくは(−)EGCg及び(−)ECgを300〜3000mg/Lで含有するように調製するのが好ましい。 カテキン溶液のエステル型カテキン類濃度が500mg/L未満では、途中で濃縮工程が必要となるため生産コストが過大となる可能性がある。 カテキン溶液の加熱処理は、80℃以上で加熱処理するのが好ましい。試験結果を見ると、例えば100℃×15分加熱、115℃×20分加熱、120℃×3〜30分加熱、123℃×10分加熱、131℃×30秒加熱、133℃×45秒のいずれにおいても、カテキンの熱異性化が認められている。 カテキン溶液の加熱処理が80℃未満では、エステル型カテキン類のエピ体から非エピ体への変換(熱異性化)が容易に起こらず、平衡がエピ体リッチの方向にシフトするため好ましくない。 また、好ましくは、カテキン溶液をpH5〜6に調製した上で加熱処理するのが好ましい。pH4.5以下ではカテキンはほとんど熱異性化しない可能性がある旨が報告されている(Seto et al.:Biosci.Biotech.Biochem.61(9),1434(1997))。 上記のようにして得られたカテキン溶液の加熱処理液をそのままカテキン含有飲料製品とすることもできるが、風味改善のため適宜緑茶抽出液やその他の物質を添加して調製して製品とすることもできる。 なお、上記のようにして得られたカテキン溶液の加熱処理液をさらに濃縮・乾燥し、得られた固形物を配合して本発明のカテキン含有飲料を製造することもできる。この際の濃縮・乾燥工程は、減圧濃縮や凍結乾燥など通常の濃縮・乾燥方法により行うことができる。 上記のようにして得られたカテキン飲食物は、主原料が、天然物、特に日常多量に引用している茶から得た成分を用いているので、安心して日常的に摂取できる保健飲料或いは保健飲食物として提供することができる。(組成) 本発明のカテキン飲食物の好ましい組成としては、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で、全カテキン合計含有量の70重量%以上含有し、かつ、次の(1)〜(3)の条件を満足する。(1)(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の40重量%以上である。(2)(−)ECgの含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の20重量%以下である。(3)(−)GCgの含有量が、(−)ECgの含有量以上である。 本発明者の検討の結果、4種類のエステル型カテキンに血清コレステロール低下作用があることが明らかになった。しかし、エステル型カテキン類のみで構成しようとすると、風味が不足するため摂取しにくいものとなる。そこで、緑茶抽出物を添加して飲食物中の(−)GCの濃度を市販の緑茶飲料の2倍程度までの値とすることにより摂取の困難さを改善しようとすると、緑茶抽出物の必要添加量は最大当該飲食物の全カテキン含有量と等量程度となる。したがって、本発明の血清コレステロール低下食品乃至飲料中の4種類のエステル型カテキン類の合計含有量は、8種類の全カテキンの合計含有量の70重量%以上であるのが好ましい。 更に、非エピ体の血清コレステロール低減効果はエピ体(それなりに効果がある)のそれより優れているため、非エピ体、特に(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量が、エピ体を含めたエステル型カテキン類の合計含有量の少なくとも40重量%を占めるのが好ましい。 また、ECgの血清コレステロール低減効果は、エステル型カテキン中もっとも小さいため、(−)ECgの含有量は、エステル型カテキン類の合計含有量の20重量%以下とするのが好ましい。 さらに、ECgの血清コレステロール低減効果の低さを最も低減効果の優れているGCgで補償するため、(−)GCgの含有量を(−)ECgの含有量以上とするのが好ましい。 以上の条件を満たす本発明の血清コレステロール低下飲食物は、そのエステル型カテキンの合計量と同量のEGCgを含有する飲食物と同等若しくはそれ以上の血清コレステロール低下作用を発揮する。 更に、飲食物、詳しくは飲料中のストリクチニン濃度を6ppm以下とするのが好ましい。 「ストリクチニン(1-O-galloyl-4,6-O -(S)-hexahydroxydiphenoyl-β-D-glucose)」は、茶から抽出されるタンニン、詳しくはエラジタンニン(ellagitannins)の一種である(「Casuariin, Stachyurin and Strictinin, new Ellagitannins from Casuarina Stricta and Stachyurus Praecox」、Chem.Pharm.Bull.30(2)766-769(1982))。 本発明者は、液中のストリクチニン濃度と二次オリとの間に密接な相関があることを見出すと共に、液中の「ストリクチニン」が加熱殺菌によって「エラグ酸」に分解され、この「エラグ酸」が「タンパク質」等と結合して二次オリを形成することを見出している。また、ストリクチニン濃度(含有量)は、原料茶葉の産地、摘採時期、摘採方法などによって異なることも見出しており、カテキン溶液の配合量とは関係なく、飲料中のストリクチニン濃度(含有量)を低下させるためには、適切な原料(茶)を選定すること方法が現在最も確実な方法であると考えられる。 なお、液中のストリクチニン量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等で測定することができる。(必要摂取量及び含有量) 本発明のカテキン含有飲食物におけるエステル型カテキン類の必要摂取量は、1日当たり300〜2100mg程度が好ましいと考えられる。 使用方法によっても異なるが、(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を、乾燥重量換算で大人一日に120〜2100mg、好ましくは250〜1500mg程度摂取するのが好ましい。 上記の必要摂取量から考えると、本発明のカテキン含有飲食物が固形形態の場合は、エステル型カテキン類を0.1〜100重量%含有させるようにするのが好ましく、中でも(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を、0.04〜100重量%、特に0.1〜40重量%配合するのが好ましい。 エステル型カテキン類0.1重量%未満では、摂取すべき固形物の量が1日当たり2kgを超えることがあるため好ましくない。 他方、本発明のカテキン含有飲食物が飲料形態の場合は、エステル型カテキン類を500〜6000mg/L程度の濃度で含有させるのが好ましく、中でも(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を200〜6000mg/L、特に300〜3000mg/L程度の濃度で含有させるのが好ましい。 エステル型カテキン類濃度が500mg/L未満では、摂取すべき飲料の体積が1日当たり4Lを超えることがあるため好ましくない。6000mg/Lを超えると、カテキンが高濃度となり渋味が強すぎるため好ましくない。より好ましくは、エステル型カテキン類濃度750〜3750mg/L程度である。<試験1> カテキンのコレステロール吸収阻害能を測定し、異性化カテキンのコレステロール吸収阻害能を比較検討した。 茶カテキンのうち、エステル型カテキンとして(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cg、遊離型カテキンとして(−)EGC、(−)EC、(−)GC及び(−)Cの合計8種のカテキンを試料として以下の試験を行った。(試験方法) 15mM リン酸緩衝液(pH6.8)に0.5mMコレステロール、6.6mMタウロコ−ル酸Na、0.6mM卵黄レシチン、132mM Naclを添加し、超音波処理により胆汁酸混合ミセルを調製した。 この胆汁酸ミセルをアルゴンガス封入し、37℃で24時間保持してミセルを安定化させた後、脱イオン水に溶解させて上記8種類のカテキンをそれぞれ最終濃度1000μM或いは2000μMとなるようにミセルに添加し、1時間インキュベートした。この際、いくつかのカテキン添加群においてミセル溶液は白濁し、沈殿した。なお、カテキン無添加群には、脱イオン水のみを添加した。 インキュベート開始から1時間後、この溶液を220nmのフィルターでろ過し、清澄なミセル溶液を得、この溶液中のコレステロール濃度を測定した。結果を、図1及び図2に示す。(結果) 図1を見ると、エステル型カテキンである(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの胆汁酸ミセルへの添加は、ミセル中のコレステロール濃度を添加量依存的に減少させた。その作用は、1000μM添加では、(−)EGCg、(−)GCg、(−)Cgは、(−)ECgに比較して強い低下作用を示した(P<0.05)。 前者の3種のカテキンのうちでは、(−)GCgが最も低下作用が強く、(−)EGCgに対して有意に低下(P<0.05)し、次いで(−)Cg、(−)EGCgの順であった。 他方、図2を見ると、遊離型カテキンである(−)EGC、(−)EC、(−)GC及び(−)Cgは、胆汁酸ミセル中のコレステロール濃度はほとんど低下しなかった。(考察) 以上の結果、カテキンのガレートエステルはエピ体だけでなく、異性体も胆汁酸混合ミセル中のコレステロールを沈殿させ、ミセルから脱離させていることが明らかとなった。 さらに、異性体である(−)GCg及び(−)Cgは、エピ体である(−)EGCg及び(−)ECgよりも作用が強いと考えることができる。<試験2> 異性化カテキン混合物による相乗効果を検討すべく、試験1と同じ方法を用いて、(−)GCg及び(−)Cgを含むエステル型カテキン混合物(実施例1の飲料)、含まないエステル型カテキン混合物(テアフラン90S)、EGCgの三者のコレステロール吸収阻害効果を図3に示し、比較検討した。 なお、(−)GCg及び(−)Cgを含むエステル型カテキン混合物として下記実施例1の飲料を用い、この実施例飲料から試験1同様に胆汁酸混合ミセルを調製した。 また、(−)GCg及び(−)Cgを含まないエステル型カテキン混合物としてテアフラン90S(伊藤園製緑茶抽出物、組成は表1参照)を用い、この実施例飲料から試験1同様に胆汁酸混合ミセルを調製した。 この結果、EGCgに比べて、エステル型カテキンの混合物すなわち(−)GCg及び(−)Cgを含む混合物の方が高い活性を示すことが分かった。<試験3> テアフラン90S(伊藤園製カテキンエキス、組成は表1参照)を1450mg/Lの濃度となるように60℃の温水に溶解させ、35℃に冷却後ビタミンCを300mg/L添加し、次いでサイクロデキストリンを1重量%、緑茶エキスを0.2重量%、重曹を300mg/Lを加え、蒸留水で最終的に1kgに調製してカテキン溶液を得た。この際、1缶当たりポリフェノールは250mg含有していた。 このようにして得られたカテキン溶液を、95℃に加熱した後、缶に充填して123℃・10分間の加熱処理を行うか、或いは、95℃に加熱した後、133.5度・45秒の加熱処理を行ってPETボトルに充填し、各工程におけるカテキンの含有量を測定し、それぞれの含有量(mg/L)を表2に示し、カテキンの異性化率(変化率%)を表3に示した。 ここで、飲料中における(−)EGCg、(−)GCg、(−)ECg及び(−)Cgのコレステロール低下作用に関する寄与率を求めると、試験1より、(−)EGCg、(−)GCg、(−)ECg及び(−)Cgは100μMにおけるミセル中の残存コレステロール濃度は272、244、337、262であるから、沈殿させたコレステロールは、初期値425μMとの差をとって153、181、88、163となり、1μM当たりのコレステロール沈殿能は、1.53、1.81、0.88、1.63となる。 他方、本試験飲料190mL中に含まれるカテキン組成を、(−)EGCg:(−)GCg:(−)ECg:(−)Cg=51.3mg(589.5μM):62.7mg(720.5μM):19.0mg(226.2μM):17.0mg(202.4μM)とすると、上記の1μM当たりのコレステロール沈殿能より、本試験飲料190mL中に含まれるカテキンのコレステロール低下作用に関する寄与率は、(−)EGCg:(−)GCg:(−)ECg:(−)Cg=33.0:47.7:7.3:12.0(%)と算出できる。<試験4>1)対象者 本試験は、健常な生活を営む20歳以上の男性のうち、血清総コレステロールが200mg/dL以上280mg/dL以下の境界領域及び軽度高血清コレステロール値にある被験者42名を、試験に直接参加しない医師により抽出した。 対象者は病院での加療を受けていない者であることを条件とし、入院や通院による脂質降下剤や降圧剤等の薬剤の服用者、重篤な肝機能障害、腎障害、呼吸器障害、内分泌障害、心血管障害のある者は対象から除外した。 試験開始にあたっては、42名の被験者をA群、B群、C群の3群にわけ、各群14名とした。開始時の各群の血圧や総コレステロール値に差はなかった。2)試験飲料 本試験には、茶カテキンを1本当たり150mg(茶ポリフェノールとして250mg:(株)伊藤園製商品名テアフラン90S)となるよう配合した飲料190gを用いた。試験飲料中の茶カテキン組成を表4に示す。 試験飲料には茶カテキンのほか、茶カテキンを含まない緑茶抽出液、サイクロデキストリン、ビタミンCを加えた。 また、プラセボ飲料として茶カテキン以外同成分の飲料を用いた。3)試験スケジュール 試験は二重盲検法により実施した。試験スケジュールを図4に示す。いずれの群も各期間の開始時及び終了時に血液検査を行った。 A群には対照飲料を1日3本摂取させ、B群には試験飲料を1日2本、C群には試験飲料を1日3本摂取させた。各群とも食事とともに1本ずつ摂取させた。 なおB群においては、茶カテキン以外の1日当たりの総摂取量をA群、C群と合わせるため、昼食時のみ対照飲料を1本摂取させた。4)観察項目 全被験者に対し、血清脂質として総コレステロール(TC)、HDL−コレステロール(HDL-C)、LDL−コレステロール(LDL-C)、中性脂肪(TG)を測定した。 TC,HDL−C及びTGについては酵素法にて測定した。LDL−CについてはFriedewa1dらの式(LDL-C=TC-HDL-C-TG/5)によって算出した。 また健康状態を確認するため、BUN、尿酸、総タンパク、ALP、GOT、GPT、LDH、γ−GTP、CPK、Na、K、Ca、Cl、Fe、UIBC、フェリチン、HbA1c、ヘモグロビン、赤血球数、白血球数、血小板数及びヘマトクリットを測定した。さらに各採血前3日間、食事調査及び運動量調査を行った。食事については被験者に食事調査票に記入させ、「五訂日本食品標準成分表」に準拠して栄養計算を行った。運動量については全被験者に万歩計(登録商標)を配布し、1日の総歩数を記入させた。 なお、採血は早朝空腹時に行った。各採血日には医師による診察を行い、体調の変化について観察を行った。5)統計解析 各測定値は平均値±標準偏差で示した。有意差検定はSAS統計解析プログラムを用い、危険率を5%未満として解析を行った。 各測定値の検定は、正規性が認められた場合、多重比較検定(Dunnett法)を行った。正規性が認められなかった場合Stea1法にて検定を行った。6)結果 (1)栄養摂取量・運動量 試験期間中の1日当たりの栄養摂取量及び運動量を表5に示す。食事調査・運動量調査は各採血日前、平日3日間の平均値として示した。全体を通して摂取エネルギーの平均値が1638〜1846kcal/dayと低かったが、医師による聞き取りの結果、すべての被験者が有職者であり、食習慣として平日朝・昼食は極めて簡単な食事で済まし、平日夜及び休日にアルコールとともに多食する傾向があったためと判断された。 各群間のエネルギー摂取量には有意な差は認められなかった。また摂取開始4週時に、C群(106.1±95.6mg/d1)においてA群(198.O±69.3mg/d1)に比してコレステロール摂取量が有意に低かったが、一般的に一時的なコレステロール摂取の多寡が即時に血清コレステロール値に反映されることはなく、実際この時点において各群の血清脂質濃度に差が認められていないことから、特に影響はないものと考えられた。その他の各被験者の栄養摂取量及び運動量に差は認められなかった。 (2)血清脂質 試験期間中の血清脂質関連検査値の推移を表6に示す。C群(3本/day)では、TC値が226.9±20.2mg/dl(摂取開始時)から203.0±22.7mg/dl(8週後)と摂取開始時に比べて有意(ρ<O.05 by Dunnett-test)に低下した。 開始8週後のA群(対照飲料群)のTC値236.O±19.1mg/dlに対しても有意(ρ<O.01)に低かった。同様にLDL−C値も141.6±22.3mg/dl(摂取開始時)から116.9±14.4mg/dl(8週後)と摂取開始時に比べて有意(ρ<O.01)に低下し、開始8週後のA群(対照飲料群)のLDL−C値147.3±22.3mg/d1に対しても有意(ρ<0.01)に低かった。 B群(2本/day)においてもTC値が236.O±25.8mg/d1(摂取開始時)から219.1±21.Omg/d1(8週後)と推移し、摂取開始8週後において、A群(対照飲料群)のTC値236.O±19.1mg/d1に対して低い傾向(ρ<0.1)にあった。一方、HDL−C、TG、HbA1cの各数値にはB群、C群とも摂取開始時に比べて有意な差は認められなかった。またA群(対照飲料群)に対しても有意な差は認められなかった。 (3)血液成分・ミネラル及びその他の所見 被験者の血液成分及びミネラルの推移を表7に示す。摂取期問中、B群、C群ともに開始時と比較して、赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、フェリチン及びFe、Ca、K、Cl、Naの各数値に有意な変化は認められなかった。 また各群間にも有意な差は認められなかった。 後経過観察期間後に、摂取開始時に比してC群でNaの有意(ρ<0.01)な増加(141.7±1.3mg/d1→143.4±1.3mg/d1)が、B群でCaの有意(ρ<0.05)な増加(4.7±O.2mg/d1→4.9±O.1mg/d1)が認められたが、ともに正常範囲内であり、医師により医学的に問題ないと判断された。 試験期間中、γ−GTP、GOT、GPTにも有意な変化は認められず、医師の診察時に有害事象と思われる所見も一切観察されなかった。7)考察 本試験では、被験者に1本当たり茶ポリフェノール250mg、うち茶カテキンとして150mg(EGCg51.3mg,GCg62.7mg,ECg19.Omg,Cg17.0mg)を含む飲料を、1日2本または3本を8週間摂取させた。したがって1日当たりの摂取量は、B群で茶ポリフェノール500mg、茶カテキンとして300mg(EGCg102.6mg,GCg125.4mg,ECg38.Omg,Cg34.Omg)、C群で茶ポリフェノール750mg、茶カテキンとして450mg(EGCg153.9mg,GCg188.1mg,ECg57.Omg,Cg51.Omg)となる。このC群の1日当たり450mgの茶カテキン摂取量は、通常の緑茶8〜9杯分の茶カテキン量に相当する。 摂取されたカテキンが食事由来コレステロール、腸管に排泄された内因性のコレメテロール及び胆汁酸ミセル中のコレステロールと不溶性沈殿を形成することによって、小腸からのコレステロール吸収が阻害され、糞便中に胆汁酸ならびにコレステロールが排泄される。特にエステル型カテキンは胆汁酸ミセルからのコレステロール脱離能が他のカテキン種に比べて高いことから、エステル型カテキンを主として配合している本飲料の効果は、腸管からのコレステロール吸収阻害によるものであると推察される。 また、茶カテキンは腸内乳酸菌を増殖させるなど腸内細菌叢を変化させることが知られている。食事由来の食物繊維は乳酸菌等により容易に資化され、その結果、産生されるプロピオン酸が増加する。産生されたプロピオン酸は肝臓のHMG-CoA synthase活性を阻害し、コレステロール合成を抑制することが報告されていることから、本試験の後経過観察期間後の血清コレステロール値の推移には、この機序の寄与も考えられる。すなわち茶カテキン摂取期間中は、1)腸管に排出された内因性コレステロールの再取り込み阻害、2)乳酸菌増殖に起因するコレステロール合成阻害、3)胆汁酸が腸管循環阻害を受けたことに起因するコレステロールから胆汁酸への合成の亢進によって、内因性コレステロールプールが低下するとともに胆汁中のコレステロール飽和度も低下すると考えられる。茶カテキン摂取終了後は、内因性コレステロールプールが回復して胆汁酸合成が低下した後、余剰の内因性コレステロールが血中に流出し血清コレステロール値の増加に至ると考えられる。しかしながら茶カテキン摂取開始後、血清コレステロール値の低下が顕著になるまでに4週を要していることを考慮すれば、被験者の血清コレステロール値が摂取開始前に復帰するためには若干の時間的遅延があったものと推察される。 一方、本試験においては茶カテキンによる血清ミネラル値の低下は認められなかった。加えて血清鉄やUIBC、ヘモグロビン、ヘマトクリットの各数値にも有意な変化が認められなかった。 この結果は、茶の摂取は微量金属元素の吸収に影響を与えないとするRecordらの報告と一致する。したがって今回の検討は8週間であったが、茶カテキンを配合した茶飲料の摂取は、血清ミネラルの各数値を低下させることなく、長期にわたって摂取可能であることが確認された。<試験5:官能テスト> 官能テストは、株式会社伊藤園のパネルにおいて、茶の渋味、収斂味を予め識別できるかどうかの予備テストを行った後、男女各10名を選抜し、次の各飲料を、直前に水色による影響を避けるため赤色グラスに注いでパネルに与え、1〜5点(高い方が嗜好性に優れる)の評点法で評価させた。 カテキン含有飲料:温水にテアフラン90Sと茶抽出エキスとを溶解して得られた飲料を缶充填後123℃で10分間レトルト処理し、10℃で冷蔵したものをパネルに供試した。 飲料A:前述のテアフラン90Sを温水に溶解して得られたカテキン溶液を200mL缶に充填し10℃で冷蔵したものと、缶充填後123℃で10分間レトルト処理後60℃に冷却しさらに10℃で冷蔵したものとを供試した。 飲料B:前述のテアフラン90Sとポリフェノン60(三井農林(株)製)とを、エステル型カテキン類が全カテキンの70重量%となるように、温水に溶解して得られたカテキン溶液を200mL缶に充填し10℃で冷蔵したものと、缶充填後123℃で10分間レトルト処理後60℃に冷却しさらに10℃で冷蔵したものとを供試した。 飲料C:前述のテアフラン90Sとポリフェノン60(三井農林(株)製)とを、エステル型カテキン類が全カテキンの50重量%となるように、温水に溶解して得られたカテキン溶液を200mL缶に充填し10℃で冷蔵したものと、缶充填後123℃で10分間レトルト処理後60℃に冷却しさらに10℃で冷蔵したものとを供試した。 これらの分析値を表8に示す。また、パネルテストの結果を表9に示す。 パネルテストの結果、飲みやすさと渋味とを総合した評価では、全カテキンに対するエステル型カテキン類の割合が低下するにつれてやや評価が低下したが、レトルト処理したものについてはエステル型カテキン類の割合が70重量%以上のものはすべて良好との評価が得られた。<試験6 ストリクチニンに関する試験> 飲料中のストリクチニン含有量とオリ発生の相関を観察するために本試験を行った。1. 飲料調製1) 試験1のサンプルNo.5と同様の原料茶葉の製造方法において、調湿及び揉捻の条件を調節し、得られた原料茶葉を用いて茶飲料のストリクチニン濃度と二次オリの発生状況を確認した。 即ち、各原料茶葉サンプル20gを70℃の蒸留水(pH5.9)800mlにて3.5分間抽出し、メッシュ(150メッシュ)にて残渣を除去した。室温まで急冷し、さらに遠心分離(7000rpm、10分)処理を行って不溶性画分を除去した後、L−アスコルビン酸を調合メスアップ量に対して300ppm加え、重曹にてpH6.0に調整し、蒸留水にて全体を2000mlにメスアップした。2) 得られた調合液を133℃〜135℃にて30秒間UHT殺菌後、PETボトルに充填し急冷して容器詰茶飲料とした。2.各項目の測定及び分析1)ストリクチニン含有量 4種類の原料茶葉を熱水に抽出して調製した煎茶A〜D及び前述のテアフラン90Sの水溶液のストリクチニン含有量を測定した。調製した煎茶及びテアフラン水溶液を撹拌して0.45μMフィルターで処理した後、下記条件(HPLC条件・表10)の下で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にてストリクチニン濃度を測定した。測定結果を下記表11に示す。(HPLC条件)装置:日立D−7000アドバンストHPLC、D−7000型アドバンストHPLCシステムマネージャーカラム:Wakosil−II5C18HG φ4.6×(30+250)mmカラム温度:40℃流速:0.6ml/min検出:UV280移動相A:15%MetOH(0.1%リン酸)移動相B:45%MetOH(0.1%リン酸)2)オリの発生状況 37℃にて保管し、1日後、6日後、8日後、12日後及び15日後に目視確認した。結果を表11に示す。(実施例1) テアフラン90S(伊藤園製緑茶抽出物、組成は表1参照)を1450mg/Lの濃度となるように60℃の温水に溶解させ、35℃に冷却後ビタミンCを300mg/L添加し、次いでサイクロデキストリンを1重量%、重曹を300mg/Lを加え、蒸留水で最終的に1kgに調製してカテキン溶液を得た。得られたカテキン溶液を、95℃に加熱した後、缶に充填して123℃・10分間の加熱処理を行い、下記組成のカテキン含有飲料を作製した。 カテキン 150mg (−) GCg 62.7mg (−)EGCg 51.3mg (−) ECg 19.0mg (−) Cg 17.0mg ビタミンC 50mg サイクロデキストリン 500mg 水 全体を190mLに調製 このカテキン含有飲料は、含有するカテキンがすべてエステル型カテキン類であり(すなわち100重量%)、エステル型カテキン類の濃度は789mg/L、エステル型カテキン類中の「(−)GCg+(−)Cg」の割合は53.1重量%、また、(−)ECgの割合は12.7重量%である。試験1において、エステル型カテキン(EGCg、GCg、ECg、Cg)のコレステロール吸収阻害作用を比較したグラフである。試験1において、遊離型カテキン(EGC、GC、EC、C)のコレステロール吸収阻害作用を比較したグラフである。試験2において、異性化カテキン混合物、エステル型カテキン混合物、EGCgのコレステロール吸収阻害作用を比較したグラフである。試験4の試験スケジュールを示したグラフである。試験4における総コレステロール濃度の経時変化を示したグラフである。試験4におけるLDL−コレステロール濃度の経時変化を示したグラフである。 エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で、全カテキン合計含有量の70重量%以上含有し、かつ、次の(1)〜(4)の条件を満足することを特徴とする容器詰カテキン含有飲料。(1)(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の40重量%以上である。(2)(−)ECgの含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の20重量%以下である。(3)(−)GCgの含有量が、(−)ECgの含有量以上である。(4)エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で、0.04096〜0.1251重量%含有する。


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