タイトル: | 公開特許公報(A)_N−イソプロピルアクリルアミドの精製方法 |
出願番号: | 2004103736 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07C231/24,C07C233/09 |
山田 雅生 原口 和敏 JP 2005289840 公開特許公報(A) 20051020 2004103736 20040331 N−イソプロピルアクリルアミドの精製方法 大日本インキ化学工業株式会社 000002886 高橋 勝利 100088764 山田 雅生 原口 和敏 7C07C231/24C07C233/09 JPC07C231/24C07C233/09 C 6 OL 7 4H006 4H006AA02 4H006AD17 4H006BB31 4H006BV34 本発明は、感温性ヒドロゲル重合体原料として有用なN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製方法に関し、特に安定剤として含まれる重合禁止剤の簡便な除去方法に関する。 N−イソプロピルアクリルアミドは、感温性ヒドロゲル重合体などの原料として用いられる有用な水溶性有機モノマーの一つである。この重合体は、一般的にN−イソプロピルアクリルアミドと架橋剤を水溶媒中でラジカル重合開始剤を用いて重合反応によって得られる。市販のN−イソプロピルアクリルアミドは、蒸留精製時や保存中の重合反応を抑制するために、安定剤としてフェノール系重合禁止剤が添加されている。この重合禁止剤の含有により、保存安定性は増すものの、重合反応を行う際、ラジカル重合開始剤の一部が不活性化するため、より多くの開始剤を必要とし、結果として重合体に含まれる触媒残査などの不純物が多くなり、重合体の純度を低下させてしまう。これを防ぐために、予め原料のN−イソプロピルアクリルアミド中に含まれる重合禁止剤の除去が行われている。 従来、N−イソプロピルアクリルアミドの精製方法としては、種々の方法が公知であり、例えば、蒸留による方法(例えば特許文献1参照)、適当な溶媒を添加した後、冷却あるいは貧溶媒の添加により結晶化させ、濾過分取する方法などが知られている。 しかし、例えば蒸留法による精製では、N−イソプロピルアクリルアミドの融点が61℃であることから、これ以上の温度で留出させる必要があり、操作中に重合してしまう危険性が高い。これを防ぐために、蒸留中に重合禁止剤を添加しながら操作を行う方法が提案されているが、この操作では、本来の目的である重合禁止剤の除去が出来ない。また、適当な溶媒を添加した後、冷却あるいは貧溶媒の添加により結晶化させ、濾過分取する方法では、比較的低温で操作が出来るが、N−イソプロピルアクリルアミドを溶解するために多量の溶媒を必要とする。また、冷却により結晶化させて濾過分取する場合は、N−イソプロピルアクリルアミドの回収率が低く、貧溶媒の添加により結晶化させて濾過分取する場合は、さらに多量の溶媒が必要となり、この溶媒の廃棄や回収処理に複雑な工程が必須となってしまい、工業的にN−イソプロピルアクリルアミドを精製することは極めて困難であった。特開平9−255642号公報 本発明は、N−イソプロピルアクリルアミドに含有する重合禁止剤を効率よく、除去することができるN−イソプロピルアクリルアミドの精製方法を提供することを目的とし、加えて純度が高く、例えば感温性ヒドロゲル重合体原料として有用であるN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液を製造することができる精製方法を提供する。 本発明者は、これら公知のN−イソプロピルアクリルアミドの精製方法における課題を鑑み、鋭意研究を進めた結果、簡便にN−イソプロピルアクリルアミドを精製することが出来ることを見出し、本発明に至った。 即ち、本発明は、重合禁止剤を含有するN−イソプロピルアクリルアミドを水に溶解し、次いで該水性溶液を吸着剤で処理することを特徴とするN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製方法を提供するものである。 本発明は、操作が簡便で、エネルギー効率がよくN−イソプロピルアクリルアミドに含有する重合禁止剤を除去でき、しかも有機溶媒を使用しないため、廃液処理の煩雑さもなく、環境に良好であるN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製方法であり、また、得られるN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の純度が高いことにより応用した場合に物性に優れた重合物をもたらすことができる。 本発明で用いられるN−イソプロピルアクリルアミドは、通常アクリロニトリルとイソプロピルアルコールとから製造され、前記するように蒸留時に重合を抑えるために重合禁止剤が添加されている。また、製造されたN−イソプロピルアクリルアミドの保存安定性を向上するために重合禁止剤が添加される。かかる重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−メトキシフェノール(慣用名メトキノン)、p−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、t−ブチルハイドロキノン、2−5−ジ−t−ブチルハイドロキノンなどが挙げられる。N−イソプロピルアクリルアミド中の重合禁止剤の含有量は、製造法により異なるが、通常10〜1000ppmであり、勿論かかる量よりも多くても差し支えない。 上記N−イソプロピルアクリルアミドは、水に溶解される。その際水含有量が好ましくは2〜20質量%、より好ましくは8〜12質量%であれば、均一な水性溶液となっており、また、水含有量が20質量%を越えると、2相分離液となり、下層がN−イソプロピルアクリルアミドの濃度の高い水性溶液で、上層がN−イソプロピルアクリルアミドの濃度の低い水性溶液となる。本発明では、後処理の容易さから、水含有量を2〜20質量%にするのが好ましい。 本発明でいう吸着剤とは、実質的に市販N−イソプルピルアクリルアミド中に含まれる不純物を吸着する物質であればよく、精製後の分離操作のしやすさから固形物が特に好ましい。この吸着剤としては、例えば、粉末活性炭、粒状活性炭、ペレット状活性炭、球状活性炭、繊維状活性炭、イオン交換樹脂、合成樹脂吸着剤、活性アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、モレキュラシーブ、合成粘土、活性白土などが挙げられ、これらの吸着剤は、単独あるいは混合しても用いることができる。処理後の吸着剤は、使用する吸着剤に適した再生処理を行うことによって、再利用することができる。 本発明で用いる吸着剤の量は、N−イソプルピルアクリルアミド水溶液中に含まれる不純物を吸着するのに足りる量であれば、特に限定されないが、通常、該水溶液に対し、5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。 本発明においてN−イソプルピルアクリルアミド水溶液を吸着剤で処理するには、該水溶液中に吸着剤を加え、不純物を吸着処理した後、吸着剤を分離する方法や、予め吸着剤を充填したカラムに該水溶液を連続的に通過させる方法などが挙げられる。 本発明で精製処理したN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液は、実質的に重合開始剤を含有していないため、例えば貧溶媒を用いて再結晶し、純度の高いN−イソプロピルアクリルアミドを製造することができる。また、該水溶液は、それに水膨潤性粘土鉱物を添加して重合することにより高分子ヒドロゲルを製造することもできる。 精製処理したN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液を用いて得られる高分子ヒドロゲルについて言及する。 使用される水膨潤性粘土鉱物とは、粘土鉱物のうち水に膨潤し均一分散可能なものであり、特に好ましくは水中で分子状(単一層)又はそれに近いレベルで均一分散可能な層状粘土鉱物である。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。 かかる水膨潤性粘土鉱物は、N−イソプロピルアクリルアミドを添加する前に予め水に均一に分散されており、目視的には水溶液に溶解している状態である。ここで均一に分散とは、該粘土鉱物の沈殿もしくは濁った水溶液となるような大きな粘土鉱物凝集体が無い状態を意味し、好ましくは1〜10層程度のナノメートルレベルの厚みで分散し、より好ましくは1又は2層程度の厚みで分散している。 水膨潤性粘土鉱物とN−イソプルピルアクリルアミドとの割合は、ゲル合成が容易であることや均一性に優れることなどから、得られる高分子ヒドロゲルを構成する固形分の1〜90質量%が水膨潤性粘土鉱物であることが好ましく、より好ましくは3〜70質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。 上記N−イソプルピルアクリルアミド水性溶液に水膨潤性粘土鉱物を通常常温で均一に混合されるが、場合により加温して混合してもよい。その際、重合開始剤および触媒を添加するのが好ましい。重合開始剤および触媒の添加量は、N−イソプルピルアクリルアミドに対して重合開始剤が好ましくは0.001〜5質量%で、触媒が好ましくは0.01〜1質量%である。 上記重合開始剤としては、好ましくは水に分散性を有し、系全体に均一に含まれるものが用いられる。特に好ましくは層状に剥離した粘土鉱物と強い相互作用を有するカチオン系ラジカル重合開始剤である。具体的には、重合開始剤として水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸カリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウム、水溶性のアゾ化合物、例えば、和光純薬工業株式会社製のVA−044、V−50、V−501などが好ましく用いられる。その他、ポリエチレンオキシド鎖を有する水溶性のラジカル開始剤なども用いられる。 また、触媒としては、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやβ−ジメチルアミノプロピオニトリルなどが好ましく用いられる。 また、N−イソプルピルアクリルアミド系ヒドロゲルの製造の際に、水膨潤性粘土鉱物とN−イソプルピルアクリルアミドとの均一な水性液に上記の重合開始剤及び/又は触媒の他にN,N’―メチレンビスアクリルアミドなどの有機架橋剤を添加することができる。 水膨潤性粘土鉱物とN−イソプルピルアクリルアミドとの均一な水性液は、重合触媒および開始剤の種類などに合わせて0℃〜100℃の範囲の重合温度に設定され、また重合時間も触媒、開始剤、重合温度、モノマー量などの重合条件によって異なり、一概に規定できないが、一般に数十秒〜十数時間の間で行う。 上記による高分子ヒドロゲルは、感温性を有するため、医療材料、調光材料、吸排水材料、土壌改良材料などに有用である。 特に、本発明で得られる高分子ヒドロゲルには、強靱でタフネスのあるヒドロゲルや、透明又は均一白色のヒドロゲルや低温側で透明及び/又は体積膨潤状態にあり、高温側で不透明及び/又は体積収縮状態に可逆的に変化する臨界温度(Tc)を有するものが含まれ、当該ヒドロゲルのゲル乾燥体は、水に浸漬することにより可逆的にヒドロゲルに戻すことができるものであり、生活用品、医薬・医療、農業、土木、工業分野等の広い分野で有効である。 以下に実施例を挙げ本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。(実施例1〜4&比較例1) 市販N−イソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製)のメトキノン含有量をガスクロマトグラフ(測定限界:5ppm)で測定したところ386ppmであった。この市販N−イソプロピルアクリルアミド45gと蒸留水5gを三角フラスコに計り取り、35℃の水浴中に浸けて完全に溶解させた。このN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液に表1に挙げる吸着剤20gを加え、緩やかに攪拌した後、濾過により吸着剤を除去して、精製N−イソプロピルアクリルアミド水性溶液を得た。この溶液中に含まれるN−イソプロピルアクリルアミドに対するメトキノン含有量を前記のガスクロマトグラフで測定し、併せてN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の回収率を測定した。結果を表1に示す。(実施例4〜5) 表2に示す通り、水濃度を変えた市販N−イソプロピルアクリルアミドの水性溶液を調製し、それぞれ50gを三角フラスコに計り取った。このN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液に粉末活性炭20gを加え、緩やかに攪拌した後、濾過により吸着剤を除去して、精製N−イソプロピルアクリルアミド水性溶液を得た。この溶液のメトキノン含有量を同様に測定した。結果を表2に示す。(実施例6) 内径20mm、長さ200mmのコック付きガラス製カラムに粒状活性炭(実施例2と同じ)10gを充填した。このカラムを40℃に保持し、市販のN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液(N−イソプロピルアクリルアミド90重量部、水10重量部)をカラム上部から1.0g/分の速度で注入した。 下部コックから流出するN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液を20gごとに採取し、その溶液に含まれるメトキノン量を測定した。その結果を図1に示す。(実施例7) 実施例6で使用した粒状活性炭充填カラムをN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の供給を止めた後、再生処理を行った。すなわち、80℃のイオン交換水をカラム下部から1.0g/分の速度で1時間注入し、残存するN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液を抜き出した。次いで、カラム上部から1質量%の水酸化ナトリウム水溶液をカラム下部から1.0g/分の速度で1時間注入し、さらに80℃のイオン交換水をカラム下部から1.0g/分の速度で1.5時間注入した。その後20℃のイオン交換水をカラム上部から1.0g/分の速度で1.5時間注入し、次いで、1質量%の塩酸水溶液をカラム上部から1.0g/分の速度で1.5時間注入した。さらに20℃のイオン交換水をカラム上部から1.0g/分の速度で1.5時間注入した。 再生処理を行った粒状活性炭カラムを用いた以外は、実施例6と同様にN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製を行った。その結果を図2に示す。(応用例1)感温性有機・無機複合ヒドロゲルの合成 50mlのバイアルビンに100℃で2時間真空乾燥した水膨潤性合成ヘクトライト(英国ロックウッドアディティブス製「Laponite XLG」)0.80gを20℃イオン交換水18.67g中に攪拌しながら少量ずつ加え、無色透明の溶液を調製した。 この溶液を脱酸素をした後、実施例1で得られた精製N−イソプロピルアクリルアミド水性溶液2.51gを攪拌しながら加えた。完全に溶解してから、さらに5分間攪拌した。次いで、この溶液を攪拌したまま、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン16μlと2%過硫酸カリウム水溶液1.0gをそれぞれ同様加え、30秒攪拌を継続したのち、20℃の水浴中で15時間重合を行った。 重合後、得られた感温性有機・無機複合ヒドロゲルを50℃の恒温槽で1時間保持したところ、収縮により14.93gの水が排出された。これに含まれる未反応のN−イソプロピルアクリルアミドをガスクロマトグラフで測定したところ、100ppmであった。(比較応用例1) 比較例1で得られたN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液を用いた以外は、応用例1と同様の操作で感温性有機・無機複合ヒドロゲルの合成を行った。同様の収縮操作により14.36gの水が排出され、これには未反応のN−イソプロピルアクリルアミドが500ppmとメトキノンが10ppmを含有していた。実施例6で精製されるN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の処理液についてその中のメトキノン含有量の変化をガスクロマトグラフィーで測定したグラフである。実施例7で精製されるN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の処理液についてその中のメトキノン含有量の変化をガスクロマトグラフィーで測定したグラフである。重合禁止剤を含有するN−イソプロピルアクリルアミドを水に溶解し、次いで該水性溶液を吸着剤で処理することを特徴とするN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製方法。吸着剤で処理する前のN−イソプロピルアクリルアミドの均一水性溶液が、その水含有量が2〜20質量%であり、且つ均一溶液である請求項1記載のN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製方法。吸着剤で処理する前のN−イソプロピルアクリルアミドの水性溶液が、その水含有量が20質量%を越え、且つ2相分離液である請求項1記載のN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製方法。吸着剤が、重合禁止剤を吸着する請求項1〜3のいずれかに記載のN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製方法。吸着剤が、活性炭、活性炭素繊維およびイオン交換樹脂から選ばれる1つ以上である請求項1〜4のいずれかに記載のN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製方法。吸着剤を充填した円筒状カラム内にN−イソプロピルアクリルアミドの水性溶液を連続的に注入して処理する請求項1〜5のいずれかに記載のN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製方法。 【課題】 N−イソプロピルアクリルアミドに含有する重合禁止剤を効率よく、除去することができるN−イソプロピルアクリルアミドの精製方法を提供することを目的とし、加えて純度が高く、例えば感温性ヒドロゲル重合体原料として有用であるN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液を製造することができる精製方法を提供する。 【解決手段】 重合禁止剤を含有するN−イソプロピルアクリルアミドを水に溶解し、次いで該水性溶液を吸着剤で処理することを特徴とするN−イソプロピルアクリルアミド水性溶液の精製方法。 【選択図】 なし