タイトル: | 公開特許公報(A)_ライノウイルス感染症の治療及び予防薬 |
出願番号: | 2004098995 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K31/198,A61P11/00,A61P11/02,A61P11/06,A61P27/16,A61P29/00,A61P31/14 |
安田 浩康 山谷 睦雄 佐々木 英忠 JP 2005281229 公開特許公報(A) 20051013 2004098995 20040330 ライノウイルス感染症の治療及び予防薬 山谷 睦雄 504125506 杏林製薬株式会社 000001395 岸田 正行 100067541 小花 弘路 100108361 水野 勝文 100087398 高野 弘晋 100103506 安田 浩康 山谷 睦雄 佐々木 英忠 7A61K31/198A61P11/00A61P11/02A61P11/06A61P27/16A61P29/00A61P31/14 JPA61K31/198A61P11/00A61P11/02A61P11/06A61P27/16A61P29/00A61P31/14 6 OL 8 特許法第30条第1項適用申請有り 2004年2月25日 「第44回日本呼吸器学会学術講演会のホームページ」に掲載 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206JA26 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA34 4C206ZA59 4C206ZB33 本発明は、ライノウイルス感染症の治療及び予防薬に関し、さらに本発明は、ライノウイルス感染に伴うサイトカイン由来炎症性疾患予防、喘息の悪化予防、慢性閉塞性肺疾患の悪化予防、中耳炎の悪化予防、副鼻腔炎の悪化予防に有効な医薬品に関するものである。 ライノウイルスは風邪症候群の主な原因である。この病気に対する予防・治療法を確立しようとする相当な努力にもかかわらず、現在のところ、安全で有効な療法は未だ確立されていない。 また、ライノウイルスは、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、中耳炎、及び副鼻腔炎の悪化の原因にもなり、より深刻な続発症への進行にも関連する。近年公開された、ウイルス検出を容易にするPCR法を用いた成人における研究からも、喘息の悪化の50〜80%までが上部気道ウイルス感染に関連し、特にライノウイルスがもっとも一般的な原因ウイルスであることが証明された(特許文献1)。また、成人喘息の4割以上が何らかのウイルス感染を起こしており、やはりライノウイルスによる感染が多く見られたとの報告(非特許文献1)や29〜76歳の慢性気管支炎患者で症状の急性増悪時にはその3割の患者からウイルスが検出されるがそこでもライノウイルスが最も多かったという報告(非特許文献2)もある。これら急性増悪は患者のQOLの低下だけでなく、医療経済的にも大きな問題になっている。世界的に患者数が急増しており、WHOが2020年には死因の第3位になると予測しているCOPDにおいては、急性増悪入院時には安定期に比べ医療費が数倍〜数十倍にも膨れ上がる。 気道上皮細胞は呼吸器ウイルス感染の最初の標的になる。ライノウイルス感染は上皮傷害が弱く、反面、上皮刺激作用によりIL-6やIL-8等の炎症性サイトカインや接着分子を合成して気道炎症に関与し、また気道粘液産生を促進することにより炎症の悪循環、細菌の二次感染を助長する。喀痰中IL-8とCOPD急性増悪が相関したとの報告もある(非特許文献3)。特許公表2003-516314号公報Nicholson KG, et al, BMJ, vol. 307, page 982-985, 1993Eadie MB, et al, BMJ, vol. 2, page 671-3, 1996Wedzica JA, et al, Respiratory Care, 48(12), 1204-15, 2003 現在、抗ウイルス薬としては、インフルエンザウイルスを対象にアマンタジン、ザナミビル、オセルタミビルがあるが、ライノウイルスを対象とした抑制薬で実用化されたものはなく、上記のような背景から、ライノウイルス感染抑制薬の開発が望まれている。 本発明者は、感染に伴う気道炎症の病態や治療法を研究する目的で、気道上皮細胞とヒト肺腺癌継代細胞(A549細胞)を用いたライノウイルス感染システムを確立した。この実験系を用いて、すでに去痰剤としては広く知れ渡っているカルボシステインについてライノウイルス感染への影響を検討したところ、著しい感染抑制効果が認められた。 すなわち、本発明は、化学式(1)で表されるカルボシステインを有効成分とすることを特徴とするライノウイルス感染症の治療及び予防薬に関するものである。 さらに詳しくは本発明は、前記カルボシステインを有効成分とすることを特徴とする、ライノウイルス感染後のヒト上皮細胞からのサイトカイン由来炎症性疾患の予防薬、喘息の悪化予防薬、慢性閉塞性肺疾患の悪化予防薬、中耳炎の悪化予防剤および副鼻腔炎の悪化の予防薬に関するものである。 本発明のカルボシステインは、抗ライノウイルス薬として有効であり、ライノウイルス感染に伴う、ヒト上皮細胞からのサイトカイン由来炎症性疾患の予防、喘息の悪化予防、慢性閉塞性肺疾患の悪化予防、中耳炎の悪化予防および副鼻腔炎の悪化予防に有効である。 本発明のライノウイルス感染症の治療及び予防薬は前記化学式(1)で表されるカルボシステインである。 カルボシステインはシステイン誘導体の去痰剤で、フランスのラボラトリーズ ジュリー(Laboratories Joulie)社により開発され、1965年、販売名「リナチオール(Rhinathiol)」として発売された。その後、イギリスでは1972年にベルク ファーマシューティカルズ(Berk Pharmaceuticals)社が「ムコダイン(Mucodyne)」として発売し、現在では、世界各国で販売されているまでに至った。 日本国内でも、杏林製薬により開発され、1981年に日本国厚生省の製造承認を得て販売名「ムコダイン」として発売、以来、安全性の高い去痰剤として広く臨床で用いられている。 カルボシステインの作用として、喀痰の物性を改善し排出を速やかにする、線毛の修復を促進し輸送能を改善する、細菌感染のファーストステップである細菌の咽頭上皮細胞への付着を抑制することなどが知られているが、ウイルス感染に対する作用については全く知られていない。 本発明により、喘息等の悪化や感冒に伴うライノウイルス感染をカルボシステインが抑制することが見出された。 つまり、そのことは、カルボシステインが、ライノウイルス感染後の諸症状の予防や抑制にも有効であることを示唆している。例えば、ライノウイルス感染後に引き起こされるヒト上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生抑制、喘息の悪化予防、慢性閉塞性肺疾患の悪化予防、中耳炎の悪化予防、副鼻腔炎の悪化予防に、カルボシステインは有効である。 ライノウイルス感染抑制剤としてのカルボシステインは、従来薬学的に良く知られた形態及び投与経路を適用してヒトに投与することができ、例えば、散剤、錠剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤、シロップ剤等により、経口的に使用することができる。ライノウイルス感染抑制剤としてのカルボシステインの投与は、例えば年齢、体重、症状などによっても異なるが、経口投与では、1回250〜2000mg、より好ましくは1回250〜1000mgを1日3回用いることが望ましい。 以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は実施例によりなんら限定されるものではない。 ヒト肺腺癌継代細胞(A549細胞)へのライノウイルスの感染に及ぼすカルボシステインの影響をin vitroにて評価した。1)ライノウイルス感染 A549細胞を培養し、コンフルエントになった後PBSで洗浄後、ライノウイルス14型(105TCID50/mL)を加え、1時間、室温にて感染させた。その後、PBSで再度洗浄し、培養液を加えて培養し、ウイルス感染6, 12, 24, 48時間後に細胞を回収した。2)カルボシステイン処理 細胞がコンフルエントになった後、カルボシステイン(10−5M)を培養液であるDMEMで濃度調整し、ライノウイルス感染48時間前から実験終了まで加えた。3)ライノウイルス価への影響 RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法でライノウイルスのmRNAを測定した。4)結果 ライノウイルス14型のmRNAは、感染24, 48時間後において、カルボシステイン処理により抑制された。 ヒト剖検気管へのライノウイルスの感染に及ぼすカルボシステインの影響をin vitroにて評価した。1)ライノウイルス感染 ヒト剖検気管を培養し、コンフルエントになった後PBSで洗浄後、ライノウイルス14型(105TCID50/mL)を加え、1時間、室温にて感染させた。その後、PBSで再度洗浄し、培養液を加えて培養し、ウイルス感染24, 48時間後に細胞を回収した。2)カルボシステイン処理 細胞がコンフルエントになった後、カルボシステイン(10−5M)を培養液で濃度調整し、ライノウイルス感染48時間前から実験終了まで加えた。3)ライノウイルス価への影響 RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法でライノウイルスのmRNAを測定した。4)結果 ライノウイルス14型のmRNAは、感染24, 48時間後において、カルボシステイン処理により抑制された。ヒト剖検気管を用いて、ライノウイルスのレセプターであるICAM-1発現に及ぼすカルボシステインの影響をin vitroにて評価した。1)カルボシステイン処理 ヒト剖検気管を培養し、コンフルエントになった後、カルボシステイン(10−5M)を添加し、48時間後に細胞を回収した。2)ICAM-1への影響 リアルタイムRT-PCR法で、ICAM-1のmRNAを測定した。3)結果 ライノウイルス感染前のICAM-1 mRNA発現は、カルボシステイン処理により抑制された。 ライノウイルス感染によるA549細胞からのサイトカイン(IL-6, IL-8)産生に対するカルボシステインの影響をin vitroで評価した。1)ライノウイルス感染 A549細胞を培養し、コンフルエントになった後PBSで洗浄後、ライノウイルス14型(105 TCID50/mL)を加え、1時間、室温にて感染させた。その後、PBSで再度洗浄し、培養液を加えて培養し、ウイルス感染6, 12, 24時間後に培養液を回収した。2)カルボシステイン処理 細胞がコンフルエントになった後、カルボシステイン(10-5 M)を培養液であるDMEMで濃度調整し、ライノウイルス感染48時間前から実験終了まで加えた。3)サイトカイン産生への影響 培養液中のサイトカインをELISA法で測定した。各種サイトカインmRNAをRT-PCR法で測定した。4)結果 IL-8 mRNAは、カルボシステイン処理により抑制された。また、感染24時間後の培養液上清中のIL-6蛋白、IL-8蛋白もカルボシステイン処理により抑制された。 本発明のカルボシステインは、ライノウイルス感染症の治療及び予防薬として有用であり、さらにライノウイルス感染後の諸症状の治療にも有用である。実施例1の試験結果を示すグラフである。実施例2の試験結果を示すグラフである。実施例3の試験結果を示すグラフである。実施例4の試験結果を示すグラフである。 化学式(1)で表されるカルボシステインを有効成分とすることを特徴とするライノウイルス感染症の治療及び予防薬。 化学式(1)で表されるカルボシステインを有効成分とすることを特徴とするライノウイルス感染後のヒト上皮細胞からのサイトカイン由来炎症性疾患の予防薬。 化学式(1)で表されるカルボシステインを有効成分とすることを特徴とするライノウイルス感染により引き起こされる喘息の悪化予防薬。 化学式(1)で表されるカルボシステインを有効成分とすることを特徴とするライノウイルス感染により引き起こされる慢性閉塞性肺疾患の悪化予防薬。 化学式(1)で表されるカルボシステインを有効成分とすることを特徴とするライノウイルス感染により引き起こされる中耳炎の悪化予防薬。 化学式(1)で表されるカルボシステインを有効成分とすることを特徴とするライノウイルス感染により引き起こされる副鼻腔炎の悪化予防薬。 【課題】 ライノウイルス感染症の治療及び予防薬を提供する。 【解決手段】 化学式(1)【化1】で表されるカルボシステインを有効成分とすることを特徴とするライノウイルス感染症の治療及び予防薬。【選択図】 なし