生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ウマの屈腱炎の予防および/または治療剤
出願番号:2004098419
年次:2005
IPC分類:7,A61K31/196,A61P21/00,A61P29/00


特許情報キャッシュ

玉木 衞 桑野 昭 JP 2005281211 公開特許公報(A) 20051013 2004098419 20040330 ウマの屈腱炎の予防および/または治療剤 玉木 衞 504125023 明治製菓株式会社 000006091 庄司 隆 100088904 資延 由利子 100124453 古館 久丹子 100129160 玉木 衞 桑野 昭 7A61K31/196A61P21/00A61P29/00 JPA61K31/196A61P21/00A61P29/00 21 OL 11 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206FA44 4C206MA01 4C206MA04 4C206MA86 4C206NA14 4C206ZA94 4C206ZB11 4C206ZC61 本発明は、トラネキサム酸またはその塩を有効成分とするウマの屈腱炎の予防および/または治療剤および予防および/または治療方法に関する。 トラネキサム酸は、公知の化合物であり、動物用薬(非特許文献1)および医薬品(非特許文献2)として既に上市されている。その主要作用は、抗プラスミン作用であり、止血作用、抗アレルギー・抗炎症作用により出血性疾患および下痢に効果を発揮することが知られている。これまで、動物薬としては、手術時の出血防止、血尿症や血乳症等の出血性疾患の治療、下痢治療などで、主に、牛、子牛、犬、豚等に静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、腹腔内注射等の投与方法で使用されてきた。 ウマの屈腱炎は四肢に発生するが後肢よりも前肢の浅指屈筋腱に多く発生する炎症性疾患である(非特許文献3)。この腱は上腕骨と中節骨を繋ぐ腱で、下肢部を支えるとともに、手根関節と指節関節を曲げる重要な役目を担っている。屈腱炎は競走ウマに頻発する疾患であるが、比較的運動負荷が少ない乗馬用のウマも罹患する疾患である。競走ウマの屈腱炎の発病の原因としては長期間にわたる運動荷重による腱の組織疲労および腱の過度の伸展による機械的な腱繊維の破綻が考えられている。また、屈腱炎の前駆病変として腱の組織内における微細血管の変性が認められており、循環障害が原因とする説もある。このように種々の原因説があるが詳細については未解明の状況である。 屈腱炎を発症した場合、症状が重い競走ウマでは引退を余儀なくされるか、または、回復の見込みがある競走ウマでも長期間の休養を要し、レースへの復帰が大幅に遅れる。休養により一旦治癒してレースに復帰した場合であっても再発する可能性が高く、競走ウマにとっては不治の病として恐れられている。 本病の初期治療には炎症を抑える目的で流水、氷、冷却剤または冷却シートにより患部を冷やすことが通常行なわれているが、一度発症した屈腱炎を完全に治す治療法は未だ見出されていない。そのため再発あるいは重症化する場合も多く、屈腱炎を完治できる薬物療法の発明が強く望まれている。最近、ウマ遺伝子組換成長ホルモンによる浅屈腱炎治療が試みられており、損傷の治癒促進が期待されているが、実用においては十分な効果は確認されていない(非特許文献4)。動物用医薬品抗プラスミン剤「バソラミン(登録商標)注」添付文書:第一製薬株式会社発行医薬品抗プラスミン剤「トランサミン(登録商標)注」添付文書:第一製薬株式会社発行日獣会誌 56 12-14(2003)Veterinary Surgery 31: 320-324(2002) 本発明の解決しようとする課題は、ウマの屈腱炎の新規な予防および/または治療方法および新規な予防および/または治療剤を提供することにある。 本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意臨床研究を進めた結果、動物用薬として上市されているトラネキサム酸にはウマの屈腱炎に対する治療薬としての新たな効能があること、特に他の抗炎症剤では無効であるにもかかわらず、ウマの屈腱炎に対して優れた予防・治療効果を見出し、本発明を完成した。 つまり、本発明は以下よりなる;1.トラネキサム酸またはその塩を有効成分とするウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。2.投与対象が以下から選ばれる前項1に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤;1)屈腱炎の初発ウマ2)屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ3)長期間の運動荷重よる腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻の予備軍ウマ。3.投与が以下から選ばれる前項1または2に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤;1)有効成分であるトラネキサム酸またはその塩を、投与量2〜10g/頭で2〜30日間連続投与2)有効成分であるトラネキサム酸またはその塩を、投与量2〜10g/頭で2〜30日間に渡り断続的投与。4.静脈投与される前項1〜3の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。5.投与後、休養期間を設定する治療に用いられる前項1〜4の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。6.冷却療法との併用を行う治療に用いられる、前項1〜5の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。7.治療の程度が以下から選ばれる前項1〜6の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤;1)屈腱炎の治癒2)屈腱炎の進行の停止3)屈腱炎の発症の防止。8.ウマが競走ウマおよび/または乗馬用ウマである前項1〜7に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。9.競走ウマおよび/または乗馬用ウマがサラブレッドである前項8に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。10.年齢が3〜6歳である前項9に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。11.前項1〜10の何れか一に記載の予防および/または治療剤によるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。12.以下のいずれかと診断されたウマに対して、前項1〜10の何れか一に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法;1)軽度の屈腱炎2)中等度の屈腱炎3)腱の組織疲労4)腱の過度の伸展5)初発ウマの屈腱炎。13.病状が浅指屈筋腱部の腫脹の大きさによって軽度、中等度、および重度のいずれかに判定される前項12に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。14.以下;1)浅指屈筋腱部の腫脹2)浅指屈筋腱部の熱感3)浅指屈筋腱部の圧痛4)跛行から選択されるいずれか一の検査項目によって、以下;1)軽度の屈腱炎2)中等度の屈腱炎3)腱の組織疲労4)腱の過度の伸展5)初発ウマの屈腱炎のうちのいずれかと診断されたウマに対して、前項1〜10のいずれか一に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。15.トラネキサム酸および/またはその塩を有効成分とするウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療剤であって、以下から選ばれる投与対象に、トラネキサム酸の約5g/頭を1日1回で3〜21日間の間に2〜9回断続投与する、ウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療剤。1)浅指屈腱炎の初発ウマ2)浅指屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ16.前項15に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療方法。17.ウマの屈腱炎の予防および/または治療のために使用されるトラネキサム酸製剤。18.投与対象が以下から選ばれるウマの屈腱炎を予防および/または治療するために使用されるトラネキサム酸製剤;1)屈腱炎の初発ウマ2)屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ3)長期間の運動荷重による腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻の予備軍ウマ。19.前項17または18に記載のトラネキサム酸製剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。20.ウマの浅指屈腱炎を予防および/または治療するために使用されるトラネキサム酸製剤であって、以下;1)浅指屈腱炎の初発ウマ2)浅指屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマから選ばれる投与対象に、トラネキサム酸の約5g/頭を1日1回で3〜21日間の間に2〜9回断続投与する、トラネキサム酸製剤。21.前項20に記載のトラネキサム酸製剤が投与されるウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療方法。 本発明は、ウマの屈腱炎に対してトラネキサム酸またはその塩を投与することにより、本疾患をほぼ完治できる薬物療法剤の提供に成功した。 本発明のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤の有効成分は、公知のトラネキサム酸またはその塩である。トラネキサム酸は、化学名trans-4-aminomethylcyclohexanecarboxylic acidである。さらに、トラネキサム酸の水和物、エタノール等の溶媒和物や結晶多形の物質もすべて本発明の有効成分として包含される。なお、本発明において、トラネキサム酸自体水に対する溶解性が高いのでそのまま液状製剤として調製することができる。既にトラネキサム酸の注射剤は上市され、第一製薬株式会社によって商品名バソラミン(登録商標)注として使用に供されており、本発明のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤としてはこの製剤をそのまま使用できる。なお、バソラミン(登録商標)注は、1ml中に日本薬局方トラネキサム酸50mgを含有する(100ml中に5g含有)。 本発明の予防および/または治療剤の投与対象は、1)屈腱炎の初発ウマ、2)屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ、3)長期間の運動荷重よる腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻の予備軍ウマから選ばれる。 屈腱炎の診断方法は、ウマにおける、1)浅指屈筋腱部の腫脹、2)浅指屈筋腱部の熱感、3)浅指屈筋腱部の圧痛、4)跛行等の検査によって判定されるが、特に浅指屈筋腱部の病態的変化によって判定される。腫脹とは、いわゆる脹れを意味し、浅指屈筋腱部が異常にふくらむことを意味する。この脹れの大きさによって、腫脹レベルが判定され、例えば軽度、中等度、重度の3段階に分類される。そして、軽度とは、腫脹の大きさとして例えば長径が1cm〜3cm未満であり、中等度とは、腫脹の大きさとして例えば長径が3cm以上〜15cm未満であり、そして重度とは、腫脹の大きさとして例えば長径が15以上であるとして定義づけることができる。このような浅指屈筋腱部の腫脹における変化がもっとも好適な検査項目であるが、加えて、浅指屈筋腱部の熱感や浅指屈筋腱部の圧痛によってより確実な屈腱炎の判定がされる。熱感とは、常温に対する上昇温感を意味し、数度の浅指屈筋腱部での体温上昇で屈腱炎の判定補助が可能となる。圧痛とは、圧迫または接触すると痛みがあることを意味する。浅指屈筋腱部を圧する、例えば浅指屈筋腱部の腫脹を指圧することによって、ウマは即座の痛みによる反応をおこすので屈腱炎の判定補助が可能となる。さらに、屈腱炎を起こしたウマは、走行が困難となり、中等度以上の浅指屈筋腱部腫脹のウマでは、跛行が観察される。跛行とは、びっこをひくことを意味する。このような検査項目のうち最も初期の段階から確認されるのが腫脹である。 本発明の予防および/または治療剤の投与対象は、屈腱炎の初発ウマであることが好ましい。初発ウマであれば、早期治療により完治可能であるが、再発ウマにおいては病状の進行停止に終わることが多い。初発ウマとは、屈腱炎と診断されるのが初めてのウマを意味する。再発ウマとは、間欠期また緩解の後に再び屈腱炎の症状が現れたウマを意味する。本発明の予防および/または治療剤の投与対象は、早期の屈腱炎であることが好ましく、その程度が低いほど治癒効果も完全である。つまり屈腱炎の軽度または中等度の初または再発ウマであることが、より有利な治療効果を達成できる。本発明の予防および/または治療剤の投与対象は、屈腱炎になる可能性が高い、例えば前記浅指屈筋腱部の腫脹の軽度判定以下のレベルであっても、長期間の運動荷重よる腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻が懸念される場合、予防のために投与することができる。このような予防投与の対象を予備軍ウマと定義した。 本発明の予防および/または治療剤の投与量は、その屈腱炎の程度によって異なるが、一般的には、トラネキサム酸またはその塩の約2〜約10g/頭/一回で投与することが好適である。これ以上多くても特に障害はないが、対費用効果を考えれば、この範囲で必要十分である。より、一般的な投与量は、約5g/頭/一回である。投与期間は、その屈腱炎の治癒程度によって異なるが、一般的には約2〜約30日間程度投与される。早期に腫脹が治癒されれば、3日というような短期間投与でも十分である。また、投与は毎日連続投与でも、隔日でも、不連続でもよい。具体的には、例えば15日間の治療で、6回の投与を行い、完全治癒で再発なしという結果を得た。なお、予防剤として投与する場合は、投与量および投与頻度は、適宜減少させることが当然に可能である。例えば、上記一般的な投与量の半分量を数日毎に数ヶ月投与することが可能である。トラネキサム酸製剤とは、トラネキサム酸を有効成分とするあらゆる種類の製剤を意味し、ウマの屈腱炎を治療するために製造されたトラネキサム酸製剤に限定されない。 本発明の予防および/または治療剤の投与方法は、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内のいずれでも良いが、早期の効果を期待する場合、静脈投与が好適である。静脈投与は、速度が速すぎるとまれに振戦または嘔吐などがおこることもあり、投与速度は遅いほうが好ましい。 本発明の予防および/または治療剤の投与後、治療効果が腫脹の消失等で完治が確認されれば、直ちにレース等に復帰しても良いが、より好ましい態様としては一定期間例えば数日から数ヶ月の休養期間をとることが好ましい。休養とは、競走ウマの場合、レースへの復帰を控えることなどが該当する。一般的には、治癒後4〜10日程度をへた後にレースへの復帰が好適である。 併用療法としては、患部の冷却を同時に行うことは好適である。冷却は、これまでも屈腱炎の治療のためにおこなわれており、自体公知の汎用方法によっておこなえばよい。たとえば、流水とクラッシュアイスによる患部の冷却が行える。あるいはアイスノン冷却でもよい。 かくして、本発明の予防および/または治療剤による効果は、1)屈腱炎の治癒、2)屈腱炎の進行の停止、3)屈腱炎の発症の防止が達成される。屈腱炎の治癒とは、前記屈腱炎の検査項目の完全マイナスを意味し、屈腱炎の進行の停止とは、本発明の予防および/または治療剤投与後も各検査項目の全て或は少なくとも一つはマイナスにはならないが、その程度は投薬前と同じレベルにあることを意味する。屈腱炎の発症の防止とは、発症予備軍と認められるウマにおいて、投薬によって、発症が完全に防止されることを意味する。 本発明の予防および/または治療剤の投与対象はウマであり、好ましくは競走ウマおよび/または乗馬用ウマであり、より好ましくは特に屈腱炎の問題が多い競走ウマにおいて格別の効果が期待される。そして、競走ウマのうち、特殊化された繁殖継代がなされるサラブレッドの屈腱炎の予防および/または治療剤として好適である。さらに、本発明の予防および/または治療剤の投与対象のウマの年齢が3〜6歳である場合に好適な効果が確認でき、これ以上年を経た場合には治癒は困難となり、病状進行停止が最大効果である。 以上説明したように本発明の予防および/または治療剤は、従来にない優れたウマの屈腱炎の予防および/または治療剤になることから、本発明の予防および/または治療剤を使ったウマの屈腱炎の予防治療方法は極めて優れた新規な治療方法を提供する。そして、この治療方法においては、1)初発ウマの屈腱炎、2)軽度の屈腱炎、3)中等度の屈腱炎、4)腱の組織疲労、および5)腱の過度の伸展等が診断されたウマに対して、上記した投与量、投与方法によって従来ない優れた効果を達成する。この治療方法に際して、屈腱炎の判定は、病状が浅指屈筋腱部の腫脹の大きさによっておこなわれ、その大きさの程度で前記定義のように軽度、中等度、および重度等と判定され、治療方法が適用される。さらに、屈腱炎の検査項目は、上記のように1)浅指屈筋腱部の腫脹、2)浅指屈筋腱部の熱感、3)浅指屈筋腱部の圧痛、および4)跛行等が行われ、この結果をマーカーにして本発明の予防および/または治療剤によるウマの屈腱炎の予防治療方法が達成される。 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらは本発明の予防および/または治療剤としての好適な一例を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。実施例1 トラネキサム酸の投与によるウマ屈腱炎への治療効果を検討した。対照群には、解熱鎮痛消炎剤であるフルニキシンおよび/またはケトプロフェンを使用した。 ウマ屈腱炎の試験群の症例は、川崎競馬場(神奈川県川崎市)にて初期の浅指屈腱炎と診断されたサラブレッド種(体重438〜487kg)(年齢3〜6歳)を使用し7例をえた。試験群にはトラネキサム酸注射剤を、100mL/頭、1日1回投与で、3〜21日間にわたり2〜9回、頚静脈内に注射投与でおこなった。トラネキサム酸注射剤は、製品名:バソラミン注(発売元:第一製薬株式会社)(成分分量:100mL中トラネキサム酸5gを含有)を用いた。 ウマ屈腱炎の対照群の症例は、川崎競馬場(神奈川県川崎市)にて初期の浅指屈腱炎と診断されたサラブレッド種(体重451〜474kg)(年齢4または5歳)を使用し3例をえた。対照群には、フルニキシン注射剤を、10または50mL/頭、1日1回投与で、14〜45日間にわたり2〜3回、頚静脈内に注射した。フルニキシン注射剤は、製品名:バナミン注(発売元:大日本製薬)(成分分量:1mL中にフルニキシン50mgを含有)を用いた。対照群の症例2では、解熱鎮痛消炎剤であるケトプロフェン注射剤(製品名:ケトフェン注、発売元:日本全薬工業、100mL中に1gのケトプロフェンを含有)を、5mL/頭、1日1回、2回で併用した。 屈腱炎の検査は、腫脹、熱感、圧痛、跛行について、投薬前と投薬治療終了後に検査した。なお、併用療法として、流水およびクラッシュアイスによる屈腱炎患部の冷却、アイスノン冷却、鉛糖湿布等を適宜選択して行った。 結果は、試験群については表1に、対照群については表2に示した。 試験群の症例中6症例は治癒してレースに復帰するとともに、その後においても再発は認められず、本剤の有効性が認められた。残りの1症例(症例4)は、再発症例であって、トラネキサム酸の注射によって臨床症状の完全消失は認められなかったが、病状の進行停止が認められレースに出走できるまで復帰した。本症例はその後、乗馬用に用途変更したが、浅指屈腱炎の進行は停止し、再発は認められていない。表1。表中の「+」は、各検査項目においてその所見・臨床症状が陽性である場合を意味し、「-」は、各検査項目においてその所見・臨床症状が陰性である場合を意味する。以下表2も同意である。 対照群では、3症例ともに症状の改善は認められず、治療を打ち切るとともに、その日のレースに出走させた後、2頭は廃用し、残りの1症例は休養させた。休養させた症例1では浅指屈腱炎が治癒せず結果的にはレースに復帰することなく廃用となった。表2。 以上の結果、トラネキサム酸のウマ屈腱炎への投与は、解熱鎮痛消炎剤では見られない明確な治癒効果を発揮するものであり、当該用途におけるトラネキサム酸の有用性および優位性が確認された。トラネキサム酸またはその塩を有効成分とするウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。投与対象が以下から選ばれる請求項1に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤;1)屈腱炎の初発ウマ2)屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ3)長期間の運動荷重よる腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻の予備軍ウマ。投与が以下から選ばれる請求項1または2に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤;1)有効成分であるトラネキサム酸またはその塩を、投与量2〜10g/頭で2〜30日間連続投与2)有効成分であるトラネキサム酸またはその塩を、投与量2〜10g/頭で2〜30日間に渡り断続的投与。静脈投与される請求項1〜3の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。投与後、休養期間を設定する治療に用いられる請求項1〜4の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。冷却療法との併用を行う治療に用いられる、請求項1〜5の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。治療の程度が以下から選ばれる請求項1〜6の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤;1)屈腱炎の治癒2)屈腱炎の進行の停止3)屈腱炎の発症の防止。ウマが競走ウマおよび/または乗馬用ウマである請求項1〜7に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。競走ウマおよび/または乗馬用ウマがサラブレッドである請求項8に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。年齢が3〜6歳である請求項9に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。請求項1〜10の何れか一に記載の予防および/または治療剤によるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。以下のいずれかと診断されたウマに対して、請求項1〜10の何れか一に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法;1)軽度の屈腱炎2)中等度の屈腱炎3)腱の組織疲労4)腱の過度の伸展5)初発ウマの屈腱炎。病状が浅指屈筋腱部の腫脹の大きさによって軽度、中等度、および重度のいずれかに判定される請求項12に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。以下;1)浅指屈筋腱部の腫脹2)浅指屈筋腱部の熱感3)浅指屈筋腱部の圧痛4)跛行から選択されるいずれか一の検査項目によって、以下;1)軽度の屈腱炎2)中等度の屈腱炎3)腱の組織疲労4)腱の過度の伸展5)初発ウマの屈腱炎のうちのいずれかと診断されたウマに対して、請求項1〜10のいずれか一に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。トラネキサム酸および/またはその塩を有効成分とするウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療剤であって、以下から選ばれる投与対象に、トラネキサム酸の約5g/頭を1日1回で3〜21日間の間に2〜9回断続投与する、ウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療剤。1)浅指屈腱炎の初発ウマ2)浅指屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ請求項15に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療方法。ウマの屈腱炎の予防および/または治療のために使用されるトラネキサム酸製剤。投与対象が以下から選ばれるウマの屈腱炎を予防および/または治療するために使用されるトラネキサム酸製剤;1)屈腱炎の初発ウマ2)屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ3)長期間の運動荷重による腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻の予備軍ウマ。請求項17または18に記載のトラネキサム酸製剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。ウマの浅指屈腱炎を予防および/または治療するために使用されるトラネキサム酸製剤であって、以下;1)浅指屈腱炎の初発ウマ2)浅指屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマから選ばれる投与対象に、トラネキサム酸の約5g/頭を1日1回で3〜21日間の間に2〜9回断続投与する、トラネキサム酸製剤。請求項20に記載のトラネキサム酸製剤が投与されるウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療方法。 【課題】 ウマの屈腱炎の新規な予防および/または治療方法および新規な予防および/または治療剤を提供すること。 【解決手段】 動物用薬として上市されているトラネキサム酸にはウマの屈腱炎に対する予防・治療薬としての新たな効能があること、特に他の抗炎症剤では無効であるにもかかわらず、ウマの屈腱炎に対して優れた予防・治療効果を見出し、本発明を完成した。本発明の予防治療薬は以下の用途に有効である。1)屈腱炎の初発ウマ2)屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ3)長期間の運動荷重よる腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻の予備軍ウマ


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特許公報(B2)_ウマの屈腱炎の予防および/または治療剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ウマの屈腱炎の予防および/または治療剤
出願番号:2004098419
年次:2008
IPC分類:A61K 31/196,A61P 19/04,A61P 29/00


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玉木 衞 桑野 昭 JP 4146816 特許公報(B2) 20080627 2004098419 20040330 ウマの屈腱炎の予防および/または治療剤 明治製菓株式会社 000006091 玉木 衞 504125023 庄司 隆 100088904 玉木 衞 桑野 昭 20080910 A61K 31/196 20060101AFI20080821BHJP A61P 19/04 20060101ALI20080821BHJP A61P 29/00 20060101ALI20080821BHJP JPA61K31/196A61P19/04A61P29/00 A61K 31/196 BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) 特開2002−212072(JP,A) 13 2005281211 20051013 9 20040330 清野 千秋 本発明は、トラネキサム酸またはその塩を有効成分とするウマの屈腱炎の予防および/または治療剤および予防および/または治療方法に関する。 トラネキサム酸は、公知の化合物であり、動物用薬(非特許文献1)および医薬品(非特許文献2)として既に上市されている。その主要作用は、抗プラスミン作用であり、止血作用、抗アレルギー・抗炎症作用により出血性疾患および下痢に効果を発揮することが知られている。これまで、動物薬としては、手術時の出血防止、血尿症や血乳症等の出血性疾患の治療、下痢治療などで、主に、牛、子牛、犬、豚等に静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、腹腔内注射等の投与方法で使用されてきた。 ウマの屈腱炎は四肢に発生するが後肢よりも前肢の浅指屈筋腱に多く発生する炎症性疾患である(非特許文献3)。この腱は上腕骨と中節骨を繋ぐ腱で、下肢部を支えるとともに、手根関節と指節関節を曲げる重要な役目を担っている。屈腱炎は競走ウマに頻発する疾患であるが、比較的運動負荷が少ない乗馬用のウマも罹患する疾患である。競走ウマの屈腱炎の発病の原因としては長期間にわたる運動荷重による腱の組織疲労および腱の過度の伸展による機械的な腱繊維の破綻が考えられている。また、屈腱炎の前駆病変として腱の組織内における微細血管の変性が認められており、循環障害が原因とする説もある。このように種々の原因説があるが詳細については未解明の状況である。 屈腱炎を発症した場合、症状が重い競走ウマでは引退を余儀なくされるか、または、回復の見込みがある競走ウマでも長期間の休養を要し、レースへの復帰が大幅に遅れる。休養により一旦治癒してレースに復帰した場合であっても再発する可能性が高く、競走ウマにとっては不治の病として恐れられている。 本病の初期治療には炎症を抑える目的で流水、氷、冷却剤または冷却シートにより患部を冷やすことが通常行なわれているが、一度発症した屈腱炎を完全に治す治療法は未だ見出されていない。そのため再発あるいは重症化する場合も多く、屈腱炎を完治できる薬物療法の発明が強く望まれている。最近、ウマ遺伝子組換成長ホルモンによる浅屈腱炎治療が試みられており、損傷の治癒促進が期待されているが、実用においては十分な効果は確認されていない(非特許文献4)。動物用医薬品抗プラスミン剤「バソラミン(登録商標)注」添付文書:第一製薬株式会社発行医薬品抗プラスミン剤「トランサミン(登録商標)注」添付文書:第一製薬株式会社発行日獣会誌 56 12-14(2003)Veterinary Surgery 31: 320-324(2002) 本発明の解決しようとする課題は、ウマの屈腱炎の新規な予防および/または治療方法および新規な予防および/または治療剤を提供することにある。 本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意臨床研究を進めた結果、動物用薬として上市されているトラネキサム酸にはウマの屈腱炎に対する治療薬としての新たな効能があること、特に他の抗炎症剤では無効であるにもかかわらず、ウマの屈腱炎に対して優れた予防・治療効果を見出し、本発明を完成した。 つまり、本発明は以下よりなる;1.トラネキサム酸またはその塩を有効成分とするウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。2.投与対象が以下から選ばれる前項1に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤;1)屈腱炎の初発ウマ2)屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ3)長期間の運動荷重よる腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻の予備軍ウマ。3.投与が以下から選ばれる前項1または2に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤;1)有効成分であるトラネキサム酸またはその塩を、投与量2〜10g/頭で2〜30日間連続投与2)有効成分であるトラネキサム酸またはその塩を、投与量2〜10g/頭で2〜30日間に渡り断続的投与。4.静脈投与される前項1〜3の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。5.投与後、休養期間を設定する治療に用いられる前項1〜4の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。6.冷却療法との併用を行う治療に用いられる、前項1〜5の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。7.治療の程度が以下から選ばれる前項1〜6の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤;1)屈腱炎の治癒2)屈腱炎の進行の停止3)屈腱炎の発症の防止。8.ウマが競走ウマおよび/または乗馬用ウマである前項1〜7に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。9.競走ウマおよび/または乗馬用ウマがサラブレッドである前項8に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。10.年齢が3〜6歳である前項9に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。11.前項1〜10の何れか一に記載の予防および/または治療剤によるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。12.以下のいずれかと診断されたウマに対して、前項1〜10の何れか一に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法;1)軽度の屈腱炎2)中等度の屈腱炎3)腱の組織疲労4)腱の過度の伸展5)初発ウマの屈腱炎。13.病状が浅指屈筋腱部の腫脹の大きさによって軽度、中等度、および重度のいずれかに判定される前項12に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。14.以下;1)浅指屈筋腱部の腫脹2)浅指屈筋腱部の熱感3)浅指屈筋腱部の圧痛4)跛行から選択されるいずれか一の検査項目によって、以下;1)軽度の屈腱炎2)中等度の屈腱炎3)腱の組織疲労4)腱の過度の伸展5)初発ウマの屈腱炎のうちのいずれかと診断されたウマに対して、前項1〜10のいずれか一に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。15.トラネキサム酸および/またはその塩を有効成分とするウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療剤であって、以下から選ばれる投与対象に、トラネキサム酸の約5g/頭を1日1回で3〜21日間の間に2〜9回断続投与する、ウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療剤。1)浅指屈腱炎の初発ウマ2)浅指屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ16.前項15に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療方法。17.ウマの屈腱炎の予防および/または治療のために使用されるトラネキサム酸製剤。18.投与対象が以下から選ばれるウマの屈腱炎を予防および/または治療するために使用されるトラネキサム酸製剤;1)屈腱炎の初発ウマ2)屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ3)長期間の運動荷重による腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻の予備軍ウマ。19.前項17または18に記載のトラネキサム酸製剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。20.ウマの浅指屈腱炎を予防および/または治療するために使用されるトラネキサム酸製剤であって、以下;1)浅指屈腱炎の初発ウマ2)浅指屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマから選ばれる投与対象に、トラネキサム酸の約5g/頭を1日1回で3〜21日間の間に2〜9回断続投与する、トラネキサム酸製剤。21.前項20に記載のトラネキサム酸製剤が投与されるウマの浅指屈腱炎の予防および/または治療方法。 本発明は、ウマの屈腱炎に対してトラネキサム酸またはその塩を投与することにより、本疾患をほぼ完治できる薬物療法剤の提供に成功した。 本発明のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤の有効成分は、公知のトラネキサム酸またはその塩である。トラネキサム酸は、化学名trans-4-aminomethylcyclohexanecarboxylic acidである。さらに、トラネキサム酸の水和物、エタノール等の溶媒和物や結晶多形の物質もすべて本発明の有効成分として包含される。なお、本発明において、トラネキサム酸自体水に対する溶解性が高いのでそのまま液状製剤として調製することができる。既にトラネキサム酸の注射剤は上市され、第一製薬株式会社によって商品名バソラミン(登録商標)注として使用に供されており、本発明のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤としてはこの製剤をそのまま使用できる。なお、バソラミン(登録商標)注は、1ml中に日本薬局方トラネキサム酸50mgを含有する(100ml中に5g含有)。 本発明の予防および/または治療剤の投与対象は、1)屈腱炎の初発ウマ、2)屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ、3)長期間の運動荷重よる腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻の予備軍ウマから選ばれる。 屈腱炎の診断方法は、ウマにおける、1)浅指屈筋腱部の腫脹、2)浅指屈筋腱部の熱感、3)浅指屈筋腱部の圧痛、4)跛行等の検査によって判定されるが、特に浅指屈筋腱部の病態的変化によって判定される。腫脹とは、いわゆる脹れを意味し、浅指屈筋腱部が異常にふくらむことを意味する。この脹れの大きさによって、腫脹レベルが判定され、例えば軽度、中等度、重度の3段階に分類される。そして、軽度とは、腫脹の大きさとして例えば長径が1cm〜3cm未満であり、中等度とは、腫脹の大きさとして例えば長径が3cm以上〜15cm未満であり、そして重度とは、腫脹の大きさとして例えば長径が15以上であるとして定義づけることができる。このような浅指屈筋腱部の腫脹における変化がもっとも好適な検査項目であるが、加えて、浅指屈筋腱部の熱感や浅指屈筋腱部の圧痛によってより確実な屈腱炎の判定がされる。熱感とは、常温に対する上昇温感を意味し、数度の浅指屈筋腱部での体温上昇で屈腱炎の判定補助が可能となる。圧痛とは、圧迫または接触すると痛みがあることを意味する。浅指屈筋腱部を圧する、例えば浅指屈筋腱部の腫脹を指圧することによって、ウマは即座の痛みによる反応をおこすので屈腱炎の判定補助が可能となる。さらに、屈腱炎を起こしたウマは、走行が困難となり、中等度以上の浅指屈筋腱部腫脹のウマでは、跛行が観察される。跛行とは、びっこをひくことを意味する。このような検査項目のうち最も初期の段階から確認されるのが腫脹である。 本発明の予防および/または治療剤の投与対象は、屈腱炎の初発ウマであることが好ましい。初発ウマであれば、早期治療により完治可能であるが、再発ウマにおいては病状の進行停止に終わることが多い。初発ウマとは、屈腱炎と診断されるのが初めてのウマを意味する。再発ウマとは、間欠期また緩解の後に再び屈腱炎の症状が現れたウマを意味する。本発明の予防および/または治療剤の投与対象は、早期の屈腱炎であることが好ましく、その程度が低いほど治癒効果も完全である。つまり屈腱炎の軽度または中等度の初または再発ウマであることが、より有利な治療効果を達成できる。本発明の予防および/または治療剤の投与対象は、屈腱炎になる可能性が高い、例えば前記浅指屈筋腱部の腫脹の軽度判定以下のレベルであっても、長期間の運動荷重よる腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻が懸念される場合、予防のために投与することができる。このような予防投与の対象を予備軍ウマと定義した。 本発明の予防および/または治療剤の投与量は、その屈腱炎の程度によって異なるが、一般的には、トラネキサム酸またはその塩の約2〜約10g/頭/一回で投与することが好適である。これ以上多くても特に障害はないが、対費用効果を考えれば、この範囲で必要十分である。より、一般的な投与量は、約5g/頭/一回である。投与期間は、その屈腱炎の治癒程度によって異なるが、一般的には約2〜約30日間程度投与される。早期に腫脹が治癒されれば、3日というような短期間投与でも十分である。また、投与は毎日連続投与でも、隔日でも、不連続でもよい。具体的には、例えば15日間の治療で、6回の投与を行い、完全治癒で再発なしという結果を得た。なお、予防剤として投与する場合は、投与量および投与頻度は、適宜減少させることが当然に可能である。例えば、上記一般的な投与量の半分量を数日毎に数ヶ月投与することが可能である。トラネキサム酸製剤とは、トラネキサム酸を有効成分とするあらゆる種類の製剤を意味し、ウマの屈腱炎を治療するために製造されたトラネキサム酸製剤に限定されない。 本発明の予防および/または治療剤の投与方法は、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内のいずれでも良いが、早期の効果を期待する場合、静脈投与が好適である。静脈投与は、速度が速すぎるとまれに振戦または嘔吐などがおこることもあり、投与速度は遅いほうが好ましい。 本発明の予防および/または治療剤の投与後、治療効果が腫脹の消失等で完治が確認されれば、直ちにレース等に復帰しても良いが、より好ましい態様としては一定期間例えば数日から数ヶ月の休養期間をとることが好ましい。休養とは、競走ウマの場合、レースへの復帰を控えることなどが該当する。一般的には、治癒後4〜10日程度をへた後にレースへの復帰が好適である。 併用療法としては、患部の冷却を同時に行うことは好適である。冷却は、これまでも屈腱炎の治療のためにおこなわれており、自体公知の汎用方法によっておこなえばよい。たとえば、流水とクラッシュアイスによる患部の冷却が行える。あるいはアイスノン冷却でもよい。 かくして、本発明の予防および/または治療剤による効果は、1)屈腱炎の治癒、2)屈腱炎の進行の停止、3)屈腱炎の発症の防止が達成される。屈腱炎の治癒とは、前記屈腱炎の検査項目の完全マイナスを意味し、屈腱炎の進行の停止とは、本発明の予防および/または治療剤投与後も各検査項目の全て或は少なくとも一つはマイナスにはならないが、その程度は投薬前と同じレベルにあることを意味する。屈腱炎の発症の防止とは、発症予備軍と認められるウマにおいて、投薬によって、発症が完全に防止されることを意味する。 本発明の予防および/または治療剤の投与対象はウマであり、好ましくは競走ウマおよび/または乗馬用ウマであり、より好ましくは特に屈腱炎の問題が多い競走ウマにおいて格別の効果が期待される。そして、競走ウマのうち、特殊化された繁殖継代がなされるサラブレッドの屈腱炎の予防および/または治療剤として好適である。さらに、本発明の予防および/または治療剤の投与対象のウマの年齢が3〜6歳である場合に好適な効果が確認でき、これ以上年を経た場合には治癒は困難となり、病状進行停止が最大効果である。 以上説明したように本発明の予防および/または治療剤は、従来にない優れたウマの屈腱炎の予防および/または治療剤になることから、本発明の予防および/または治療剤を使ったウマの屈腱炎の予防治療方法は極めて優れた新規な治療方法を提供する。そして、この治療方法においては、1)初発ウマの屈腱炎、2)軽度の屈腱炎、3)中等度の屈腱炎、4)腱の組織疲労、および5)腱の過度の伸展等が診断されたウマに対して、上記した投与量、投与方法によって従来ない優れた効果を達成する。この治療方法に際して、屈腱炎の判定は、病状が浅指屈筋腱部の腫脹の大きさによっておこなわれ、その大きさの程度で前記定義のように軽度、中等度、および重度等と判定され、治療方法が適用される。さらに、屈腱炎の検査項目は、上記のように1)浅指屈筋腱部の腫脹、2)浅指屈筋腱部の熱感、3)浅指屈筋腱部の圧痛、および4)跛行等が行われ、この結果をマーカーにして本発明の予防および/または治療剤によるウマの屈腱炎の予防治療方法が達成される。 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらは本発明の予防および/または治療剤としての好適な一例を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。実施例1 トラネキサム酸の投与によるウマ屈腱炎への治療効果を検討した。対照群には、解熱鎮痛消炎剤であるフルニキシンおよび/またはケトプロフェンを使用した。 ウマ屈腱炎の試験群の症例は、川崎競馬場(神奈川県川崎市)にて初期の浅指屈腱炎と診断されたサラブレッド種(体重438〜487kg)(年齢3〜6歳)を使用し7例をえた。試験群にはトラネキサム酸注射剤を、100mL/頭、1日1回投与で、3〜21日間にわたり2〜9回、頚静脈内に注射投与でおこなった。トラネキサム酸注射剤は、製品名:バソラミン注(発売元:第一製薬株式会社)(成分分量:100mL中トラネキサム酸5gを含有)を用いた。 ウマ屈腱炎の対照群の症例は、川崎競馬場(神奈川県川崎市)にて初期の浅指屈腱炎と診断されたサラブレッド種(体重451〜474kg)(年齢4または5歳)を使用し3例をえた。対照群には、フルニキシン注射剤を、10または50mL/頭、1日1回投与で、14〜45日間にわたり2〜3回、頚静脈内に注射した。フルニキシン注射剤は、製品名:バナミン注(発売元:大日本製薬)(成分分量:1mL中にフルニキシン50mgを含有)を用いた。対照群の症例2では、解熱鎮痛消炎剤であるケトプロフェン注射剤(製品名:ケトフェン注、発売元:日本全薬工業、100mL中に1gのケトプロフェンを含有)を、5mL/頭、1日1回、2回で併用した。 屈腱炎の検査は、腫脹、熱感、圧痛、跛行について、投薬前と投薬治療終了後に検査した。なお、併用療法として、流水およびクラッシュアイスによる屈腱炎患部の冷却、アイスノン冷却、鉛糖湿布等を適宜選択して行った。 結果は、試験群については表1に、対照群については表2に示した。 試験群の症例中6症例は治癒してレースに復帰するとともに、その後においても再発は認められず、本剤の有効性が認められた。残りの1症例(症例4)は、再発症例であって、トラネキサム酸の注射によって臨床症状の完全消失は認められなかったが、病状の進行停止が認められレースに出走できるまで復帰した。本症例はその後、乗馬用に用途変更したが、浅指屈腱炎の進行は停止し、再発は認められていない。表1。表中の「+」は、各検査項目においてその所見・臨床症状が陽性である場合を意味し、「-」は、各検査項目においてその所見・臨床症状が陰性である場合を意味する。以下表2も同意である。 対照群では、3症例ともに症状の改善は認められず、治療を打ち切るとともに、その日のレースに出走させた後、2頭は廃用し、残りの1症例は休養させた。休養させた症例1では浅指屈腱炎が治癒せず結果的にはレースに復帰することなく廃用となった。表2。 以上の結果、トラネキサム酸のウマ屈腱炎への投与は、解熱鎮痛消炎剤では見られない明確な治癒効果を発揮するものであり、当該用途におけるトラネキサム酸の有用性および優位性が確認された。有効成分であるトラネキサム酸またはその塩を、投与量約5g/頭で1日1回で3〜21日間の間に2〜9回断続投与する、ウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。投与対象が以下から選ばれる請求項1に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤; 1)屈腱炎の初発ウマ 2)屈腱炎の軽度または中等度の再発ウマ 3)長期間の運動荷重よる腱の組織疲労および/または腱の過度の伸展による機械的腱繊維の破綻の予備軍ウマ。静脈投与される請求項1又は2に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。投与後、休養期間を設定する治療に用いられる請求項1〜3の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。冷却療法との併用を行う治療に用いられる、請求項1〜4の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。治療の程度が以下から選ばれる請求項1〜5の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤; 1)屈腱炎の治癒 2)屈腱炎の進行の停止 3)屈腱炎の発症の防止。ウマが競走ウマまたは乗馬用ウマである請求項1〜6の何れか一に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。競走ウマまたは乗馬用ウマがサラブレッドである請求項7に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。年齢が3〜6歳である請求項8に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療剤。請求項1〜9の何れか一に記載の予防および/または治療剤によるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。以下のいずれかと診断されたウマに対して、請求項1〜9の何れか一に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法; 1)軽度の屈腱炎 2)中等度の屈腱炎 3)腱の組織疲労 4)腱の過度の伸展 5)初発ウマの屈腱炎。病状が浅指屈筋腱部の腫脹の大きさによって軽度、中等度、および重度のいずれかに判定される請求項11に記載のウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。以下; 1)浅指屈筋腱部の腫脹 2)浅指屈筋腱部の熱感 3)浅指屈筋腱部の圧痛 4)跛行から選択されるいずれか一の検査項目によって、以下; 1)軽度の屈腱炎 2)中等度の屈腱炎 3)腱の組織疲労 4)腱の過度の伸展 5)初発ウマの屈腱炎のうちのいずれかと診断されたウマに対して、請求項1〜9のいずれか一に記載の予防および/または治療剤が投与されるウマの屈腱炎の予防および/または治療方法。


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