タイトル: | 公開特許公報(A)_植物病害を防除する微生物およびそれを用いた植物病害防除剤。 |
出願番号: | 2004097932 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N1/14,A01G7/00,A01N63/00 |
諸見里 善一 澤岻 哲也 松崎 克彦 川端 孝博 JP 2005278526 公開特許公報(A) 20051013 2004097932 20040330 植物病害を防除する微生物およびそれを用いた植物病害防除剤。 出光興産株式会社 000183646 川口 嘉之 100100549 松倉 秀実 100090516 遠山 勉 100089244 諸見里 善一 澤岻 哲也 松崎 克彦 川端 孝博 7C12N1/14A01G7/00A01N63/00C12N1/14C12R1:80 JPC12N1/14 AA01G7/00 604ZA01N63/00 FC12N1/14 AC12R1:80 5 OL 11 2B022 4B065 4H011 2B022EA10 4B065AA67X 4B065AC20 4B065BB26 4B065BC03 4B065CA47 4H011AA01 4H011BA01 4H011BA05 4H011BB21 4H011BC07 4H011DA15 4H011DD04 4H011DG05 本発明は、植物病害を防除する微生物およびそれを用いた植物病害防除剤に関する。 植物を病虫害の攻撃から守り、植物の健全な生育および収穫を得るためには、種々の方法がある。最も一般的な方法は、化学剤を用いることである(化学的防除法)。しかし、化学剤を多用または連用すると、その化学剤に抵抗性を示す植物病原菌が出現する場合があり、多大な開発費をかけて開発した化学剤の効果が失われてしまうことがあった。また、化学剤を多用すると、自然環境に対して過大な負荷がかかり、生態系の破壊につながる。そこで、近年は化学剤のみに頼るのではなく、物理的、生物的な方法などの環境負荷の少ない防除法も組み合わせて用いる総合防除の考え方が広がってきた。 特に生物的な防除方法は、自然界の生物間の相互作用を利用するもので、環境に対する負荷が少ない。そのような生物的な防除方法としては、例えば、植物病原菌と拮抗するバチルス属細菌を用いた防除方法(特許文献1参照)や炭疽病菌と拮抗するタラロマイセス属細菌(糸状菌の一種)を用いた防除方法(特許文献2参照)が知られている。 一方、ペニシリウム属菌の一部の菌は、抗生物質であるペニシリンを生産することで知られている。ペニシリウム・ワックスマニ(Penicillium waksmanii)は、古くからその存在が知られているが、ペニシリンを生産しない。 しかし、植物病原菌に対して拮抗し、植物の病害を防除するペニシリウム・ワックスマニが存在するかどうかについては知られていなかった。特開平8−175920号特開平10−229872号 本発明は、上記観点からなされたものであり、植物病原菌に対して拮抗作用を有する微生物、それを含有する植物病害防除剤、およびそれを用いて植物病害を防除する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記の課題を解決するために、植物の表面や土壌等から様々な微生物を分離し、植物病原菌に対して拮抗作用を有する菌株の検索を行った。その結果、本発明者らは、植物葉面から単離したペニシリウム・ワックスマニに属する菌株が植物病原菌に対して拮抗作用を有することを見い出し、これを用いることにより、上記課題を達成した。本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。 すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。(1)植物病原菌に対して拮抗作用を有し、かつ、ペニシリウム・ワックスマニに属する菌株。(2)植物病原菌に対して拮抗作用を有するペニシリウム・ワックスマニFERM P-19592菌株またはその変異体。(3)(1)又は(2)に記載の菌株又は変異体の菌体を含有する植物病害防除剤。(4)前記植物病害が、イチゴうどんこ病、マンゴー炭疽病、イチゴ炭疽病およびチャ炭疽病のいずれか1つ又は2つ以上の病害であることを特徴とする(3)に記載の植物病害防除剤。(5)植物を栽培する土壌または植物体に、(3)又は(4)に記載の植物病害防除剤を施用することを特徴とする、植物病害を防除する方法。 本発明のペニシリウム・ワックスマニは、植物病原菌に対して拮抗作用を有する。また、本発明のペニシリウム・ワックスマニはそのような拮抗作用を有するので、植物体や土壌に施用した場合に環境に対する負荷をあまりかけることなく植物病害に対する防除効果を持続的に発揮する。 以下、本発明を詳細に説明する。<本発明の菌株> 本発明者らは、後記実施例に詳細に示すように、植物の表面や土壌等を広く検索した結果、植物病原菌に対して拮抗作用を有し、ペニシリウム・ワックスマニに属する新規な菌株を見いだし、その株をRU−15000株と命名した。 本菌株は、麦芽エキス寒天培地上で25℃で7日間培養すると、直径3cmの緑がかったフェルト状のコロニーを形成する。菌糸は無色で裏面はくすんだ色をしており、浸出物はない。また、37℃では生育しない。さらに、ツァペック酵母エキス寒天培地では生育が遅く、形成されるコロニーは表面が灰色がかり、裏面は茶色になって、胞子形成は弱くなる。 分生子柄は、直立、薄膜、平滑、小のう状にはならない。ラミはなく、メトレは2〜5本殆ど輪生し、フィアライドは長さ9μmのフラスコ型で短く先細の首がある。分生子は直径3μmのほぼ球形、滑面で、連鎖状となる。 以上の菌学的性質から、RU−15000株は、ペニシリウム・ワックスマニに属する菌株であると同定された。ペニシリウム・ワックスマニRU−15000菌株は、平成15年11月21日より、独立行政法人産業科学技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に受託番号FERM P-19592で寄託されている。 本発明の菌株は、植物病原菌に対して拮抗作用を有し、かつ、ペニシリウム・ワックスマニに属する菌株である。植物病原菌に対して拮抗作用を有し、かつ、ペニシリウム・ワックスマニに属する菌株である限り、特に制限はないが、ペニシリウム・ワックスマニRU−15000菌株またはその変異体が好ましい。 本発明における「植物病原菌に対して拮抗作用を有する菌株」とは、少なくとも1種の植物病原菌に対して拮抗作用を有することにより、その植物病原菌が引き起こす植物病害を予防又は治癒する効果を有する菌株を意味する。 ここでいう「植物病害を予防する効果を有する菌株」とは、その菌株を施用すること以外は同じ条件で、その植物病害を引き起こす病原菌を含む環境中でそれに感染しうる植物を栽培した場合に、その菌株を施用しなかった植物の発病度(後述の実施例4の式1参照)より、その菌株を施用した植物の発病度が低いことをいい、また、「植物病害を治癒する効果を有する菌株」とは、その菌株を施用すること以外は同じ条件で、その植物病害を引き起こす病原菌に感染した植物を栽培した場合に、その菌株を施用した植物の発病度がその菌株を施用しなかった植物における発病度より低いことをいう。 「植物病原菌が引き起こす植物病害を予防又は治癒する効果を有する菌株」には、具体的には、例えば後述の実施例4と同様の実験を行った場合の防除価が、通常20以上、好ましくは40以上、より好ましくは60以上であるような菌株が含まれる。 本発明における「植物病原菌」とは、ペニシリウム・ワックスマニが拮抗作用を示す植物病原菌であれば特に制限はないが、例えば、イチゴにうどんこ病を引き起こすスフェロテカ・アフィニス バー アフィニス(Sphaerotheca aphanis var. aphanis)、イチゴに炭疽病を引き起こすグロメレラ・シングラータ(Glomerella cingulata)やコレトトリカム・アキュテータム(Colletotrichum acutatum)、チャに炭疽病を引き起こすコレトトリカム・テアエーシネンシス(Colletotrichum theae-sinensis)、マンゴーに炭疽病を引き起こすコレトトリカム・グレオスポリオイデス(Colletotrichum gleosporioides)が挙げられる また、上述の「植物病害」とは、ペニシリウム・ワックスマニが拮抗作用を示す植物病原菌によって引き起こされる植物の病害である限り特に制限はないが、例えば、イチゴうどんこ病(Sphaerotheca aphanis var. aphanis)、ウリ類うどんこ病(Sphaerotheca cucurbitae)、バラうどんこ病(Sphaerotheca rosae)等のうどんこ病、イチゴ炭疽病(Glomerella cingulata)、ウリ類炭疽病(Colletotrichum orbiculare)、チャ炭疽病(Colletotrichum theae-sinensis)、マンゴー炭疽病(Colletotrichum gleosporioides)、カキ炭疽病(Glomerella cingulata)、核果類の炭疽病(Colletotrichum gleosporioidesやColletotrichum acutatum)等の炭疽病、あるいはそれらの植物病原菌と同類、同属または近縁の病原菌によって引き起こされる、ブドウうどんこ病(Uncinula necator)、ナスうどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、ピーマンうどんこ病(Oidiopsis sicula)、ブドウ晩腐病(Glomerella cingulata)、トマト黒点根腐病(Colletotrichum coccodes)等が挙げられる。 本発明における「変異体」には、上述したようなペニシリウム・ワックスマニFERM P-19592(RU−15000)菌株の菌学的性質を有し、かつ、植物病原菌に対して拮抗作用を有する菌株である限り、ペニシリウム・ワックスマニFERM P-19592菌株から誘導されたいかなる変異体も含まれる。変異には、自然変異または化学的変異剤や紫外線等による人工変異を含む。 なお、以下の明細書の記載における「菌株」の語は、「菌株またはその変異体」の意味で用いる場合がある。<本発明の防除剤> 本発明の防除剤は、植物病原菌に対して拮抗作用を有し、かつ、ペニシリウム・ワックスマニに属する菌株の菌体を含有する植物病害防除剤である。本発明の防除剤は、植物病原菌に対して拮抗作用を有し、ペニシリウム・ワックスマニに属する菌株の菌体を含有するものであれば特に制限はなく、そのような菌株の一種のみの菌体を含有するものであってもよいし、そのような菌株の複数種の菌体を含有するものであってもよい。 本発明の防除剤に用いる菌株としては、ペニシリウム・ワックスマニFERM P-19592菌株又はその変異体が好ましく、ペニシリウム・ワックスマニFERM P-19592菌株がより好ましく挙げられる。 本発明に用いる菌株は、通常の微生物の培養方法と同様の方法により培養することができる。培養方法は、菌体が増殖する方法であれば、培地の種類や培養条件等を問わず、いずれの方法でもよいが、固体培養の場合は、ポテトデキストロース寒天培地、ツァペックドックス寒天培地、麦芽寒天培地等を用いて25℃で静置培養することができ、液体培養の場合は、ポテトデキストロース液体培地、ツァペックドックス液体培地、麦芽液体培地等を用いて25℃で振とう培養することができ、さらに、大量培養する場合は、フスマ、コムギ、オオムギ、大豆粉等を用いて25℃で静置培養することができる。 本発明に用いる菌株を酵母エキス・麦芽エキス液体培地で7日間25℃で培養すると、胞子菌濃度に換算して例えば1×106〜1×108cfu/mlの培養液を得ることができる。 培養で得られた培養物は、そのまま用いることもできるが、培養物を遠心分離するなどして菌体を分離して用いてもよい。すなわち、本発明の防除剤に用いる菌体は、菌体自体のほか、その懸濁液、培養液又はこれらの濃縮物、ペースト状物、乾燥物、希釈物のいずれの形態でもよい。ただし、防除剤の製品の保存性の観点からは、菌体を自然乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥などにより乾燥粉末とするのが好ましく、特に水分含有量が10重量%以下、好ましくは5重量%以下である乾燥粉末とするのが好ましい。 本発明の防除剤に用いる菌株またはその変異体の菌体は、生菌である。また、本発明の防除剤に用いる菌株の生菌は、胞子でなくてもよいが、防除剤の製品としての保存性の観点から胞子であることが好ましい。 したがって、胞子を形成させるため、培養の終期において、培地の組成、培地のpH、培養温度、培養湿度、培養する際の酸素濃度などの培養条件を、その胞子形成条件に適合させるように調製することが好ましい。また、本発明において胞子を用いる場合は、防除剤の保存性の観点から、胞子の水分含有量を10重量%以下、好ましくは5重量%以下とするのが好ましい。 本発明の防除剤に含まれるペニシリウム菌の濃度は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、500〜2000倍に希釈した際に、胞子菌濃度に換算して、好ましくは1×103〜1×1010 cfu/ml、より好ましくは1×104〜1×108 cfu/mlとすることができる。 本発明の防除剤組成物は、本発明の効果を妨げない限り、本発明の菌体、胞子以外に、担体、界面活性剤、分散剤、補助剤等の任意の物質を含んでいてもよい。 上記の担体としては、クレー、タルク、ベントナイト、珪藻土、ホワイトカーボン、カオリン、バーミキュライト、消石灰、珪砂、硫安、尿素、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム等の固体担体を挙げることができる。 上記の界面活性剤及び分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸の共重合体等のイオン性界面活性剤や分散剤を挙げることができる。 また、上記の補助剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、澱粉、乳糖等が挙げられる。 本発明の防除剤の剤型は特に制限はなく、例えば粉剤、水和剤、乳剤、フロアブル剤、粒剤等の、通常の農薬がとり得る形態をとることができる。 本発明の防除剤を乳剤として製造する方法は特に制限はないが、界面活性剤を含有する有機溶剤中に、採取・乾燥したペニシリウム菌の胞子を混入させ、懸濁液を調製することにより製造することができる。 かかる界面活性剤としては、胞子の発芽・生長を阻害しない性状のものであれば特に制限はないが、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールモノオレエートのいずれか1種、または2種以上を混合して用いることができる。また、かかる有機溶剤としては、例えば、大豆油、ナタネ油、ひまし油、綿実油、パーム油、サフラワー油等の植物油、スピンドル油、ヘビーホワイトオイル、ライトホワイトオイル、ミネラルスピリット、ミネラルターペン、ナフテン油、パラフィン油、農薬用マシン油等の鉱物油、エチレンやイソブテン等からの重合物、シリコーンオイル等のいずれか1種、または2種以上を混合して用いることができる。 本発明の植物病害を防除する方法は、植物を栽培する土壌または植物体に、本発明の防除剤を施用する方法であれば特に制限はなく、例えば、本発明の防除剤を、植物を栽培する土壌に混和、散布または潅注等を行うことにより、本発明の防除剤を施用してもよく、あるいは、本発明の防除剤を植物体に直接塗布または散布等することにより、本発明の防除剤を施用してもよい。ここで、土壌に施用する場合は、本発明の防除剤を土壌に施用してから植物を植えてもよく、また、植物を土壌に植えた後でその土壌に施用してもよい。 本発明の防除剤を散布処理する場合は、本発明の防除剤を適当量の水等で希釈して使用することができる。 なお、本発明の防除剤および農薬組成物の施用量は、本発明の効果を発揮する限り特に制限はないが、土壌に散布処理する場合は、10aの土壌当たり、ペニシリウム菌の胞子濃度に換算して通常1×103〜1×1010 cfu/mlの防除剤溶液を50〜700L、好ましくは100〜300L散布することができる。 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。(ペニシリウム・ワックスマニRU−15000菌株の単離) 沖縄県各地のマンゴー栽培圃場からマンゴーの葉を採集し、葉面上に生息していた糸状菌を後述のローズベンガル培地で分離した。分離した糸状菌はPDA培地に保存した。得られた菌株からマンゴー炭疽病菌(Colletotrichum gleosporioides)に対して拮抗作用を有する菌株を以下の方法で選別した。すなわち、分離した菌をPDA培地上で25℃、4日間培養し、菌叢最先端部を培地ごと直径5mmの滅菌したコルクボーラーで打ち抜き、その打ち抜いた菌叢と、同様に培養して打ち抜いたマンゴー炭疽病菌の菌叢とをPDA培地上で対峙培養した。それから5日後に炭疽病菌の菌叢半径を測定し、マンゴー炭疽病菌の生育を抑制した菌株を選別した。このようにしてペニシリウム・ワックスマニRU−15000菌株が得られた。(ローズベンガル培地の組成)ペプトン:5g; リン酸一カリウム:0.5g; リン酸二カリウム:0.5g; 硫酸マグネシウム七水塩:0.5g; グルコース:10g; イーストエキス:0.5g; ローズベンガル:0.05g; ストレプトマイシン硫酸塩:0.03g; 寒天:20g; 蒸留水:1000ml(ペニシリウム・ワックスマニの培養)(1)固体培養 ペニシリウム・ワックスマニRU−15000菌株の胞子をPDA培地で5日間25℃で静置培養した後、白金耳で一部をPDブロスに接種し、25℃で一晩振とう培養した。次に、水分含量を50重量%に調製した滅菌済みのフスマにPDブロス培養液の一部を接種し、混合した後、25℃で固体静置培養を開始した。7日間培養した後、胞子数を計測したところ、フスマ1g当たり1×1010個の胞子が形成されていた。フスマを乾燥した後、フルイ機にかけることによりRU−15000菌株の胞子が大量に得られた。(2)液体培養 ペニシリウム・ワックスマニRU−15000菌株をPDA培地で5日間25℃で静置培養した後、白金耳で一部を麦芽エキス(DIFCO社製)を用いた液体培地に接種し、25℃で振とう培養を行った。7日間培養後、培養液中の胞子数を計測したところ、培養液1ml当たり1×108個の胞子が形成されていた。この培養液をガーゼでろ過し、遠心分離することによりRU−15000菌株の胞子が大量に得られた。(製剤例1) 前述の実施例2(1)における固体培養で得られたペニシリウム・ワックスマニRU−15000菌株の粉砕物10gに、界面活性剤として、アルキルナフテンスルホネート5gを加え、担体として粘度鉱物(勝光山鉱業所社製:Kクレー)85gを配合して、水和剤を調製した。この水和剤の胞子濃度は、1×109cfu/gであった。(イチゴうどんこ病に対する防除効果の確認) イチゴの親株2株(品種:さちのか)を20×60cmのプランターに植え、ランナーを発生させた。これを、土を詰めた直径9cmの黒いビニールポットで順次受け苗を育成した。 試験は上記のようなプランターを6つ用意して行った。この時点では、いずれのイチゴにもうどんこ病の発生はなかった。用意したプランターのうち3つのプランターのイチゴには無処理区の3連制として水道水を散布した。残りの3つのプランターのイチゴには、製剤例1の防除剤を水道水で1000倍に希釈したものを7日間隔で6回、十分に散布した。最終散布から1週間後、自然発病で発生したうどんこ病の発病度合いを調査した。まず、イチゴ苗の上位3複葉の各小葉毎に、表1に示すような発病の程度に照らし合わせて発病指数をつけた。 そのデータを基にして発病小葉率、および下記の式1により定義される発病度を算出した。 但し、Nは調査した総小葉数、n0〜n4は発病指数0〜4のそれぞれに属する小葉数 さらに、この発病度のデータを基に、下記の式2により定義されるような無処理区に対する防除価を算出した。 その結果を表2に示す。 表2の結果から明らかなように、無処理区に比べてRU−15000菌株散布区では、イチゴうどんこ病の発病が抑制された。(イチゴ炭疽病に対する防除効果の確認) 実施例4のイチゴうどんこ病の発病度合いを調査した時に、それらのイチゴのランナー、葉柄、葉におけるイチゴ炭疽病の発病痕を調査し、イチゴ炭疽病の発病が認められた株数を数えて発病株率を算出した。さらに、この発病株率のデータを基に、下記の式3に定義されるような防除価を算出した。 その結果を表3に示す。 表3の結果から明らかなように、無処理区に比べてRU−15000菌株散布区では、イチゴ炭疽病の発病が抑制された。(チャ炭疽病に対する防除効果の確認) やぶきた10年生の茶を用い、1区30m2、反復なしで、3番茶を対象とした。2番茶を6月23日に摘採し、100%萌芽した7月14日から7日毎に4回、製剤例1の防除剤を水道水で1000倍希釈したものを300L/a散布した。無処理区には防除剤の希釈液の代わりに水道水を散布した。最終散布から1週間後の8月11日と3週間後の8月25日に、茶の栽培面積1m2中にある茶の病葉数を、無処理区および散布区のそれぞれで3箇所ずつ調べた。発病葉は調査毎に除去した。 この病葉数のデータを基に、下記の式4により定義されるような無処理区に対する防除価を算出した。 その結果を表4に示す。 表4の結果から明らかなように、無処理区に比べてRU−15000菌株散布区では、チャ炭疽病の発病が抑制された。また、表4の結果から、最終散布から約1ヶ月経過しても、本発明の防除剤の防除効果が持続していることが分かった。植物病原菌に対して拮抗作用を有し、かつ、ペニシリウム・ワックスマニに属する菌株。植物病原菌に対して拮抗作用を有するペニシリウム・ワックスマニFERM P-19592菌株またはその変異体。請求項1又は2に記載の菌株又は変異体の菌体を含有する植物病害防除剤。前記植物病害が、イチゴうどんこ病、マンゴー炭疽病、イチゴ炭疽病およびチャ炭疽病のいずれか1つ又は2つ以上の病害であることを特徴とする請求項3に記載の植物病害防除剤。植物を栽培する土壌または植物体に、請求項3又は4に記載の植物病害防除剤を施用することを特徴とする、植物病害を防除する方法。 【課題】 植物病原菌に対して拮抗作用を有する微生物、それを含有する植物病害防除剤、およびそれを用いて植物病害を防除する方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 植物病原菌に対して拮抗作用を有し、かつ、ペニシリウム・ワックスマニに属する菌株、その菌株の菌体を含有する植物病害の防除剤、およびその防除剤を用いた植物の病害の防除法。 【選択図】 なし