タイトル: | 公開特許公報(A)_PVP・フラーレン複合体とその水溶液の製造方法 |
出願番号: | 2004087870 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C08L39/06,A61K9/08,A61K33/44,A61K47/32,A61P31/04,A61P35/00,A61P39/06,C08J3/05,C08K3/04 |
高田 弘弥 松林 賢司 JP 2005272639 公開特許公報(A) 20051006 2004087870 20040324 PVP・フラーレン複合体とその水溶液の製造方法 ビタミンC60バイオリサーチ株式会社 503272483 西澤 利夫 100093230 高田 弘弥 松林 賢司 7C08L39/06A61K9/08A61K33/44A61K47/32A61P31/04A61P35/00A61P39/06C08J3/05C08K3/04 JPC08L39/06A61K9/08A61K33/44A61K47/32A61P31/04A61P35/00A61P39/06C08J3/05C08K3/04 7 OL 8 4C076 4C086 4F070 4J002 4C076AA12 4C076CC27 4C076CC31 4C076EE16E 4C076FF15 4C086AA01 4C086HA06 4C086MA02 4C086MA05 4C086MA17 4C086NA11 4C086ZB26 4C086ZB35 4C086ZC37 4F070AA38 4F070AC04 4F070AE28 4F070CA03 4F070CA20 4F070CB02 4F070CB05 4F070CB12 4J002BJ001 4J002DA016 4J002GB00 4J002HA05 4J002HA06 この出願の発明は、抗酸化活性、抗ガン性、抗菌性等の生理活性を有するものとして注目されているフラーレン類の水溶液と、水溶性のフラーレン類の新しい製造方法に関するものである。 C60、C70、さらにはより高次の炭素球殻構造やチューブ構造を有するフラーレンは、その化学的修飾体や複合体、包接体等を含めたフラーレン類として、抗酸化活性、抗ガン性、抗菌性等の生理活性を有するものとして注目されつつある。 しかしながら、このようなフラーレン類を実際に使用しようとする場合、上記のような生理活性等の優れた特性を発現させるのが可能であって、しかも安定性を良好として利用可能とすることは大変に難しく、また、水溶性のものとすることや、具体的に水溶液を構成することも難しいのが実情であった。 このような状況において、この出願の発明者らは、フラーレン類含有の新しい抗酸化剤や外用組成物、その化粧品用材等をすでに提案し(たとえば特許文献1)、具体的にも、水溶性フラーレン類、フラーレン類の水溶液を提案している。そして、特に、生理活性の発現性と安定性の両面より、フラーレンまたはフラーレン混合物とポリビニルピロリドン(PVP)との複合体が注目されるものとして提案している。特願2004−19081号出願 上記のように注目されるPVP・フラーレン複合体ではあるが、その製造についてはさらなる改善が望まれてもいた。 それと言うのも、これまでの方法によれば、フラーレンやフラーレンの混合物の溶媒として知られているトルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素にはPVP(ポリビニルピロリドン)がほとんど溶解しないことからクロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒(-CHX2基を含む溶剤)を用いることで混合溶液を調製してきているため、このようなハロゲン脂肪族化炭化水素溶媒はその残留の問題や環境への負荷の問題等が懸念されていたからである。このため、ハロゲン脂肪族化炭化水素溶媒を用いることなしに、その特性の発現や安定性が良好で、安全性にも優れたPVP・フラーレン複合体、そしてその水溶液を製造することのできる方法の実現が望まれていた。 そこで、この出願の発明は、以上のような背景から、ハロゲンフリーの条件下での新しいPVP・フラーレン複合体とその水溶液の製造方法を提供することを課題としている。 この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、フラーレンまたはフラーレン混合物の芳香族炭化水素溶液とポリビニルピロリドン(PVP)のエタノール溶液とを混合し、混合溶液への水の添加と溶媒の除去の後にフラーレンまたはフラーレン混合物とポリビニルピロリドン(PVP)との複合体の水溶液を得ることを特徴とするPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法を提供する。 第2には、上記方法において、ポリビニルピロリドン(PVP)の重量平均分子量が6,000〜1,500、000の範囲であることを特徴とするPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法を、第3には、ポリビニルピロリドン(PVP)のエタノール溶液におけるポリビニルピロリドン(PVP)とエタノール(E)との重量比(PVP/E)を0.01〜0.5の範囲とすることを特徴とするPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法を、第4には、フラーレンまたはフラーレン混合物の芳香族炭化水素溶媒溶液(F・A)とポリビニルピロリドンのエタノール溶液(PVP・E)との混合に際しての重量比(F・A/PVP・E)を1.0〜3.0の範囲とすることを特徴とするPVP・フラーレン複合体の製造方法を、第5にはPVP・フラーレン複合体の濃度を5〜20重量%の範囲とすることを特徴とするPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法を提供する。 第6には、上記のいずれかの発明の方法により製造したPVP・フラーレン複合体の水溶液から水を蒸発除去することを特徴とするPVP・フラーレン複合体の製造方法を提供する。 そして、第7には、上記第6の発明の方法により製造したPVP・フラーレン複合体を水と混合することを特徴とするPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法を提供する。 上記のとおりのこの出願の発明によって、残留による人体への影響やその処分の環境負荷の増大が懸念されるハロゲン脂肪族化炭化水素溶媒を使用することなしに、ハロゲンフリーの条件下に、医薬品許容溶媒としてのエタノールを用いてPVP・フラーレン複合体とその水溶液の製造が可能とされる。そして製造されたPVP・フラーレン複合体は、その生理活性等の特性の発現とともに、安定性、安全性に優れたものとなる。 この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下、その実施の形態について説明する。 この出願の第1の発明においては、PVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法が提供されるが、この方法においては、まず、フラーレンまたはフラーレン混合物の芳香族炭化水素溶媒溶液が準備される。ここで、原料物質としてのフラーレンまたはフラーレン混合物には、これまでにも知られているC60、C70、さらにはより高次の炭素球殻構造をもつものや、カーボンナノチューブ、フラーレンチューブ等のチューブ構造をもつものの各種のフラーレンやそれらの2種以上のものの混合物が含まれる。そして、これらのフラーレンは、この出願の発明方法の目的、効果を阻害しないものであれば、水酸化フラーレンのような水酸基を有するもの、そのエーテルあるいはアシル化フラーレン、その金属塩をはじめ、アミノ基、炭化水素基、置換炭化水素基等の各種の置換基によって修飾されたフラーレンであってもよい。このようなフラーレンあるいはフラーレン混合物の溶媒としての芳香族炭化水素としては、各種のものであってよいが、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼンあるいはそれらの2種以上の混合物が好適なものとして例示される。なかでもトルエンが溶媒として良好である。 この出願の発明のPVP・フラーレン複合体そしてその水溶液の製造においては、フラーレンまたはフラーレン混合物(F)と芳香族炭化水素溶媒(A)との割合は、一般的には重量比(F/A)として、0.0005〜0.0032 (max,; 最大溶解度)の範囲とすることが考慮される。より好適には、その範囲は、0.00075〜0.00095である。0.0032を超えるフラーレンまたはフラーレン混合物が過剰な場合には、均一溶液の生成が難しく、PVPエタノール溶液との混合による均一溶液の生成が困難になる。一方、0.0005未満の過少な場合には経済的ではない。 フラーレンあるいはフラーレン混合物の芳香族炭化水素溶媒溶液は、この出願の発明においてはポリビニルピロリドン(PVP)のエタノール溶液と混合される。このPVPは、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒にはほとんど溶解しない。そこでこれまではクロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン脂肪族化炭化水素溶媒に溶解させていたが、この出願の発明では、このようなクロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン脂肪族化炭化水素溶媒(-CHX2基を含む溶剤)は一切使用することはない。これに代わるものとして、医薬品許容溶媒として安全性に優れたエタノールを使用する。 PVP(ポリビニルピロリドン)は、次式で表わされるものであって、この出願の発明においては、その重量平均分子量(Mw)が3,00〜3,000,000程度の範囲のもの、さらには6,000〜1,500,000程度のものが好適なものとして考慮される。PVPは、合成したものでもよいし、市販品であってもよい。このようなPVPとエタノール(E)との使用割合としては、重量比(PVP/E)として、0.01〜0.5の範囲が通常考慮される。より好ましくは、0.125〜0.25の範囲である。この重量比(PVP/E)が0.01未満の場合には反応の際に極めて高い撹拌効率を維持することが必要のため好ましくなく、一方、0.5を超える場合には高い溶液粘度のため反応効率が著しく減少し好ましくない。なお、フラーレンまたはフラーレン混合物の芳香族炭化水素溶媒溶液との混合により均一溶液を得るためには、溶媒エタノール(E)の含水率は約0.5重量%以下に抑えることが望ましい。 フラーレンまたはフラーレン混合物の芳香族炭化水素溶液(F・A)とPVPエタノール溶液(PVP・E)との混合は、通常、その割合が重量比(F・A/PVP・E)として1.0〜3.0の範囲が考慮される。さらには、1.5〜2.0の範囲が好適である。この重量比が1.0未満の場合には反応効率の減少の理由によって好ましくなく、一方、3.0を超える場合には溶媒留去の非効率性の理由によって好ましくない。 両者の混合は、通常、15℃〜25℃の温度範囲において攪拌して行うことが望ましい。この際の攪拌は、たとえば羽根型プロペラによる回転速度約400rpmの条件では、12〜15時間程度行うことが考慮される。 以上のような両者の混合によって均一な混合溶液が生成されることになる。 次いで、この出願の発明においては、混合溶液への水の添加と溶媒の除去の工程を実行することでPVP・フラーレン複合体の水溶液とするが、これらの工程には様々な手段と手順が採用されてよい。 たとえば混合溶液を蒸発処理して乾固させ、水を添加して懸濁液を調製し、その後蒸発処理して共沸によりトルエン等の溶媒を留去して乾固させ、これに再度水を添加して水溶液とするとの工程が実施される。あるいは、上記混合溶液に水を添加し、その後蒸発処理して共沸させ、再度水を添加するようにしてもよい。 いずれの工程においても水の添加量は、最終的なPVP・フラーレン複合体水溶液におけるPVP・フラーレン複合体の濃度が5〜20重量%の範囲になるように調整することが考慮される。より好ましい水溶液濃度は6.5〜14.5重量%の範囲である。 水溶液濃度が5重量%未満では蒸発乾固の非効率性の理由から好ましくなく、一方、20重量%を超える場合には高い水溶液粘度のため濾過の際に加熱し溶解度を増加させなければならない必要性の理由によって好ましくない。 もちろん、このような範囲の濃度は、水溶液の用途に応じての、最終的な水分添加によって調整されてもよい。 また、添加する水の温度は20℃〜35℃程度の範囲とすることが望ましい。 たとえば以上の方法によって製造されたこの出願の発明のPVP・フラーレン複合体の水溶液は、これを蒸発乾固することで固体状のPVP・フラーレン複合体とすることができ、さらには、このものを水に溶解して水溶液とし、様々な用途に使用することができる。 そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。<A>C60フラーレンとC70フラーレンとを含むMIX(混合)フラーレン(平均分子量744:粉体)の16.0mgをトルエン(20ml)の溶液と、重量平均分子量60,000のPVP2.0gのエタノール(10ml)溶液とを各々調製し、両者を室温で混合して12時間攪拌した。これによって均一な混合溶液を得た。 次いで、この均一混合溶液を蒸発処理して乾固させた後に30mlの水を添加し、懸濁液とした。 この懸濁液を蒸発処理し、共沸によりトルエンを留去し、乾固させた。その後30mlの水を加え、15分間のソニケーションを行った。これによってPVP・フラーレン複合体水溶液を得た。濾過(0.80マイクロメートルフィルター)して、最終的なPVP・フラーレン複合体水溶液とした。 得られた水溶液は透明度が高く、クロロホルムを溶媒とした場合において一昼夜室温下に放置すると生じる微量の黒色沈殿の生成は全く観察されなかった。 そしてまた、上記の水溶液を蒸発乾固処理し、粉砕、減圧乾燥(12時間)してPVP・フラーレン複合体粉末を得た.<B>得られたPVP・フラーレン複合体水溶液(S1)についてその活性酸素消去効果をESR(スピントラッピング法)によって測定した。クロロホルム溶媒を用いて調製した水溶液(S2)との比較を図1に例示した。図1のように、同等以上の活性酸素消去効果が得られることが確認された。 スピントラッピング剤を用いたESR分析法(スピントラッピング法)は、非常に反応性の高い不安定なフリーラジカルをスピントラップ剤と反応させ、生成する安定なスピン付加体のESRスペクトルを室温で測定するもので、フリーラジカルを検出するには有力な方法である。この方法では、過酸化水素と硫酸第一鉄の反応(Fenton反応)により生成するヒドロキシルラジカルを、5,5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシド(DMPO)をスピントラップ剤として用い、DMPOとヒドロキシルラジカルが反応して生成するDMPO-OHのシグナルを観測する(Control)。図1の縦軸はDMPO-OHと内部標準(MnO)との相対値、横軸はPVP・フラーレン複合体投与濃度を示している。Controlは生じたDMPO-OHの最大値(26.5)で、下限値(12.5)はジメチルスルホキシド(DMSO)によりヒドロキシルラジカル(活性酸素)を完全に補足(消去)した場合の値である。図1のように、PVP・フラーレン複合体水溶液(S1)、クロロホルム溶媒を用いて調製した水溶液(S2)については、いずれの濃度でもヒドロキシルラジカル(活性酸素)の消去効果が同等に得られることが確認された。とくに12.5-25μMの濃度で、顕著な活性酸素消去効果が観測された。ESR(スピントラッピング法)により測定した活性酸素消去効果を例示した図である。 フラーレンまたはフラーレン混合物の芳香族炭化水素溶液とポリビニルピロリドン(PVP)のエタノール溶液とを混合し、混合溶液への水の添加と溶媒の除去の後にフラーレンまたはフラーレン混合物とポリビニルピロリドン(PVP)との複合体の水溶液を得ることを特徴とするPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法。 ポリビニルピロリドン(PVP)の重量平均分子量が6,000〜1,500,000の範囲であることを特徴とする請求項1のPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法。 ポリビニルピロリドン(PVP)のエタノール溶液におけるポリビニルピロリドン(PVP)とエタノール(E)との重量比(PVP/E)を0.01〜0.5の範囲とすることを特徴とする請求項1または2のPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法。 フラーレンまたはフラーレン混合物の芳香族炭化水素溶媒溶液(F・A)とポリビニルピロリドンのエタノール溶液(PVP・E)との混合に際しての重量比(F・A/PVP・E)を1.0〜3.0の範囲とすることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれかのPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法。 PVP・フラーレン複合体の濃度を5〜20重量%の範囲とすることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれかのPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法。 請求項1から5のうちのいずれかの方法により製造したPVP・フラーレン複合体の水溶液から水を蒸発除去することを特徴とするPVP・フラーレン複合体の製造方法。 請求項6の方法により製造したPVP・フラーレン複合体を水と混合することを特徴とするPVP・フラーレン複合体水溶液の製造方法。 【課題】 ノンハロゲンの条件下で、フラーレン特性の発現性、安定性、安全性に優れたPVP・フラーレン複合体とその水溶液を提供する。【解決手段】 フラーレンまたはフラーレン混合物の芳香族炭化水素溶液とポリビニルピロリドン(PVP)のエタノール溶液とを混合し、混合溶液への水の添加と溶媒の除去の後にフラーレンまたはフラーレン混合物とポリビニルピロリドン(PVP)との複合体の水溶液を得る。【選択図】 なし