タイトル: | 公開特許公報(A)_柿タンニンの抽出方法、及びこの方法で抽出された柿タンニン |
出願番号: | 2004086351 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,B01D11/02,A23L1/212,C07G17/00,C12N5/04,C12P7/22 |
濱崎貞弘 JP 2005270766 公開特許公報(A) 20051006 2004086351 20040324 柿タンニンの抽出方法、及びこの方法で抽出された柿タンニン 奈良県 000225142 濱崎貞弘 7B01D11/02A23L1/212C07G17/00C12N5/04C12P7/22 JPB01D11/02 AA23L1/212 AC07G17/00 AC12P7/22C12N5/00 F 10 1 OL 7 4B016 4B064 4B065 4D056 4H055 4B016LG01 4B016LK18 4B016LP01 4B016LP02 4B016LP13 4B064AC19 4B064CA21 4B064CB07 4B064CE03 4B064DA10 4B065AA88X 4B065AC20 4B065BA30 4B065BD08 4B065BD14 4B065BD44 4B065BD45 4B065CA05 4B065CA41 4D056AB12 4D056AB17 4D056AC22 4D056BA03 4D056BA09 4D056CA01 4D056CA06 4D056CA14 4D056CA17 4D056CA22 4D056CA23 4D056CA31 4D056CA39 4D056DA01 4H055AA01 4H055AA02 4H055AB10 4H055AC50 4H055AD10 4H055AD70 4H055BA01 4H055CA60本発明は、柿のタンニン抽出方法に関する。現在、柿のタンニンを抽出する方法として用いられている技術は、柿渋の製造方法である。柿渋の製造は、数百年前から続く伝統産業である。これは、タンニン成分に富んだ柿渋専用品種の未成熟な果実を破砕し、適量の水をくわえた後発酵させることを特徴とする技術であり、破砕時にタンニンと強固に吸着する糖、ペクチンなどの果実成分を発酵酵母により分解することで、タンニンを精製する。しかし、柿渋には、3つの欠点がある。一つは、その製造に非常に時間がかかる点である。柿渋の製造工程は、破砕した柿果実から発酵と沈殿によって共雑成分を取り除き、タンニンを高濃度に含有した溶液を作る。この工程で充分な品質のものを得るまで、一年〜三年以上かかるため、効率が悪い。また、柿渋は原材料としてタンニン成分に富んだ専用品種の、8月中旬の未熟な果実しか使用することができない。収穫後の果実は直ちに劣化するため、製造できる期間が著しく限定される。さらに、柿渋は柿果実を発酵させて製造するものなので、独特の不快感を催す強い発酵臭が生じるため、使用する場面が限定されやすい。柿のタンニン抽出方法は、例えば松尾らが「Matsuo,T.and Ito,S. 1981 A simple and rapid purification method of condensed tannins from several young fruits.Agric Biol Chem 45:1885-1887」において、アルコール、リン酸二カリウム、アルカロイドによって分別・沈殿させて高濃度のタンニン成分を回収する方法について報告している。しかし、有機溶媒や化学薬品を多量に用いてタンニン成分を収集する技術であるため、処理が煩雑で危険であり、食品等に応用する場合でも、安全性の面で問題が残る。また、特開平10−15358号に、搾汁した柿渋原液を加熱しながら限外濾過膜を利用して低分子成分を除去し、柿タンニンを精製する方法が記載されている。しかし、専用品種を必要とすることは従来法と同じであり、果実を破砕する際に生じる糖、ペクチン、蛋白等とタンニンの吸着を防ぐことが出来ない問題がある。さらに発酵酵母の選別・改良やクロマトグラムを用いる方法などが検討されているが、発酵法は従来技術の欠点である時間のかかる点が改善できず、クロマトグラムを用いる方法では、回収効率が悪く、コスト高になる欠点がある。解決しようとする課題の第一は、従来技術の欠点である時間のかかる点を解決し、速やかにタンニンの抽出を行うことである。第二に、柿渋専用品種以外の品種の果実からもタンニン抽出を容易に行うことである。第三に、どの成熟段階の柿果実でも、タンニンの抽出を容易に行うことである。第四に、化学薬品等の使用を最小限にとどめ、簡便・安価にタンニンの抽出を行うことである。特開平10−15358号本発明における柿タンニンの抽出方法は、柿がタンニンを果実中に散在するタンニン細胞にのみ特異的に集積する性質を活用し、品種・果実熟度を問わず、極めて簡便かつ迅速に、タンニンを高濃度に抽出する技術である。本発明における柿タンニンの抽出方法は、柿果実中のタンニン細胞に集積したタンニンを、自然及び/または人工的方法で脱渋することで水不溶性にする脱渋工程と、果実が持つ細胞骨格分解酵素を働かせて果実を軟化させ、タンニン細胞の収集を容易にする軟化工程と、軟化した果実を粉砕する粉砕工程と、粉砕した果実を遠心分離してタンニン細胞のみ回収するタンニン細胞分離工程と、回収したタンニン細胞を酵素処理して不溶性タンニンとその他の細胞成分を分離する酵素処理工程と、分離した不溶性タンニンを酸性水または水中に分散させ、加熱および/または超音波を作用させる事で再び可溶性にする可溶化工程とから構成されたものである。このような構成を採用することにより、まず脱渋工程でタンニンを水不溶性にすることで、抽出時の夾雑物との反応を抑制することができるので、抽出操作を極めて簡略化することができる。また、軟化工程で果実が持つ細胞骨格分解酵素の働きを促進してタンニン細胞の分離を容易にし、タンニン細胞分離工程で他の果実細胞とタンニン細胞の重量差を利用して、遠心分離によりタンニン細胞のみを選別回収する。さらに酵素処理工程で酵素処理によってタンニン細胞の構成成分を分解・除去する事で不溶性タンニンのみを分離し、その不溶性タンニンを可溶化工程で再び可溶化することで、抽出溶媒等を用いることなく、抽出効率の向上と処理時間の短縮化を図ることができる。また、タンニン細胞のみを収集する方法のため、タンニン細胞を持つあらゆる品種およびあらゆる成熟度の柿果実からタンニンを抽出することが可能である。本発明の柿タンニンの抽出方法は、柿果実中のタンニン細胞に集積したタンニンを自然及び/または人工的方法で脱渋することで水不溶性にする脱渋工程と、果実が持つ細胞骨格分解酵素を働かせて果実を軟化させ、タンニン細胞の収集を容易にする軟化工程と、軟化した果実を粉砕する粉砕工程と、粉砕した果実を遠心分離してタンニン細胞のみ回収するタンニン細胞分離工程と、回収したタンニン細胞を酵素処理して不溶性タンニンとその他の細胞成分を分離する酵素処理工程と、分離した不溶性タンニンを酸性水または水中に分散させ、加熱および/または超音波を作用させる事で再び可溶性にする可溶化工程とから構成されたものであるので、柿タンニンの抽出効率を著しく上げることができる。以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明の基本方法について図1に基づいて説明する。この柿タンニンの抽出方法は、不溶化工程S1、軟化工程S2、粉砕工程S3、細胞分離工程S4、酵素処理工程S5、可溶化工程S6の6工程により構成される。不溶化工程S1は、柿果実1の果実細胞3中に散在するタンニン細胞2に集積するタンニンを、自然及び/または人工的方法で脱渋して水不溶性にする工程である。軟化工程S2は、果実が内在する酵素の働きにより、細胞骨格を分解して細胞同士の結合を解き、軟化果実4の状態にしてタンニン細胞の収集を容易にする工程である。粉砕工程S3は、軟化果実4を粉砕し、ジュース状にして細胞同士の結合をほぼ完全に解離させる工程である。細胞分離工程S4は、遠心分離により、タンニン細胞画分6とその他の細胞等果実構成成分を分離する工程である。酵素処理工程S5は、回収したタンニン細胞を細胞分解酵素液7で処理し、タンニン細胞内のタンニン8を分離する工程である。可溶化工程S6は、水9中にタンニン8を分散させ、加熱および/または超音波を作用させる事で再び水可溶性タンニン10にする工程である。不溶化工程柿果実1は、脱渋の形態から完全渋柿、不完全渋柿、不完全甘柿、完全甘柿の4種に分類される。このうち、充分に成熟した完全甘柿と一部の不完全甘柿については、自然状態でタンニンが不溶化する。また、成熟した完全渋柿、不完全渋柿、不完全甘柿の一部、及び全ての柿の未成熟果実は、本工程においてタンニンの不溶化を行う。公知の脱渋方法としては、高濃度の炭酸ガスに果実を暴露する方法とエタノールを用いる方法があるが、次の軟化工程を速やかに行うため、エタノールを用いるのが望ましい。エタノールを用いる場合は、果実を密閉できる容器、袋等に収容し、果実重量1kg当たり、1〜4ミリリットルのエタノールを処方して密封し、果実温が15℃〜40℃になるよう温度を調整するのが良い。なお、脱渋の完了は公知のタンニンプリント法などで確認するとよい。軟化工程通常、脱渋工程でエタノール処理を選択すると、果実の軟化も同時並行的に進行することが多い。従って、脱渋工程終了後も軟化が充分でない場合にのみ、本工程を適用する。本工程では、脱渋工程における密封状態を維持したまま果実温が15℃〜40℃になるよう温度を調整し、1、2日程度静置すると果実1が果実4のように軟熟化する。軟化の完了は外観でも表皮が弛み、全体に透明感が増す等で確認でき、また、指で果実を押した時の窪みが復元しない等で確認できる。粉砕工程果実が軟化したら果実のヘタを取り除いてから粉砕し、ジュース5の状態にする。充分に軟化した果実はほぼ細胞骨格が崩れ、果実を構成する細胞がバラバラにほぐれた状態になっているので、ジューサー等で簡単に攪拌するだけで粉砕できる。細胞分離工程ジュース5を遠心分離し、タンニン細胞画分6を得る。タンニン細胞はその他の果実細胞よりも重いので、遠心分離容器の底部に集積する。その上部に分離する果汁と果実細胞等を除き、タンニン細胞画分6を回収する。酵素処理工程タンニン細胞画分6を細胞分解酵素液7に分散させ、タンニン細胞中のタンニン8を分離する。酵素はセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼを用いる。具体的には、例えばヤクルト薬品工業株式会社製のペクチナーゼSS、ペクチナーゼ3S、ペクチナーゼHL、または同社のセルラーゼオノヅカ3S、セルラーゼYーNC、マセロチームAを、単独、もしくは複数の組み合わせでタンニン細胞重量の0.001〜0.5%加え、pH3.0〜6.0、温度40〜60℃に調整し、30分〜24時間置けばよい。処理終了後、タンニン8を含む酵素液7を遠心分離し、タンニン8を回収する。可溶化工程タンニン8を水9に分散させ、加熱および/または超音波を作用させる。水の酸度は中性で良いが、より確実には酸性の方が溶解効率がよく、望ましい。加熱は70℃以上でタンニン8が不溶性から可溶性に変化しうるが、より確実には80℃以上が良い。また、200℃以上ではタンニン成分が分解してしまうので、それ以上の高温にはしないようにする。以上本発明について説明してきたが、本発明の柿タンニン抽出方法は図1に示す工程で行われるものに限定されるものではなく、他の装置でも適用可能である。刀根早生の軟化果実のヘタを除去し、粉砕後、水を等量加えたジュース200gを3000rpmで10分間遠心分離して得られたタンニン細胞画分を測定した。その結果を表1に示す。実施例1で得られたタンニン細胞0.1gを0.9mlの蒸留水に分散させ、密封後、10分間沸騰水中に浸けて加熱した。常温に冷却後、4mlの蒸留水を加えて濾過し、DPPHラジカル消去活性法により、濾液の抗酸化活性を測定した。その結果を表1に示す。(比較例1)京都府木津産の柿渋(三年物)の抗酸化活性をDPPHラジカル消去活性法により測定した。その結果を表1に示す。表1*抗酸化活性はDPPHラジカル消去活性法により、指標物質のtrolox当量で示した。表1で明らかな通り、タンニン細胞を容易に分離し、活性を有するポリフェノールを回収できることが確認された。本発明の柿タンニン抽出方法を示す概略図である。符号の説明1 柿果実2 タンニン細胞3 果実細胞4 軟化した柿果実5 柿果実粉砕ジュース6 タンニン細胞画分7 酵素処理液8 タンニン9 タンニン入り水10 タンニン溶液柿果実中のタンニン細胞に集積したタンニンを、自然及び/または人工的方法で脱渋することで水不溶性にする脱渋工程と、果実が持つ細胞骨格分解酵素を働かせて果実を軟化させ、タンニン細胞の収集を容易にする軟化工程と、軟化した果実を粉砕する粉砕工程と、粉砕した果実を遠心分離してタンニン細胞のみ回収するタンニン細胞分離工程と、回収したタンニン細胞を酵素処理して不溶性タンニンとその他の細胞成分を分離する酵素処理工程と、分離した不溶性タンニンを酸性水または水中に分散させ、加熱および/または超音波を作用させる事で再び可溶性にする可溶化工程により、抽出することを特徴とする柿タンニン抽出方法柿果実のタンニンを水不溶性にする脱渋工程を特徴とする請求項1記載の方法タンニン細胞の収集のため、果実を軟化させる軟化工程を特徴とする請求項2記載の方法タンニン細胞の収集のため、果実を粉砕する粉砕工程を特徴とする請求項3記載の方法粉砕した果実を遠心分離してタンニン細胞画分を得るタンニン細胞分離工程を特徴とする請求項4記載の方法酵素処理工程における細胞分解酵素が、セルラーゼ及び/またはヘミセルラーゼ及び/またはペクチナーゼである請求項5記載の方法可溶化工程における不溶化したタンニンを可溶性にするための加熱が、70〜200℃であることを特徴とする請求項6記載の方法請求項1ないし5のいずれかに記載の方法により製造されたタンニン細胞請求項1ないし6のいずれかに記載の方法により製造されたタンニン請求項1ないし7のいずれかに記載の方法により製造された水溶性タンニン 【課題】柿がタンニン細胞に特異的にタンニンを集積する性質を利用して、柿タンニンを簡便かつ効率的に抽出する方法を提供する。【解決手段】柿果実中のタンニン細胞に集積したタンニンを、自然及び/または人工的方法で水不溶性にしてからタンニン細胞を収集し、果実が持つ細胞骨格分解酵素を働かせて果実を軟化させ粉砕して、タンニン細胞のみ回収し、細胞分解酵素によりタンニン成分のみを分離し、加熱及び/または超音波処理することで再び水に可溶性にして抽出することを特徴とする柿タンニン抽出方法【選択図】 図1