生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_酵母の形質転換法
出願番号:2004084330
年次:2005
IPC分類:7,C12N15/09,C12N1/19


特許情報キャッシュ

赤田 倫治 星田 尚司 柿原 嘉人 河原 央明 JP 2005269920 公開特許公報(A) 20051006 2004084330 20040323 酵母の形質転換法 有限会社山口ティー・エル・オー 800000013 高木 義輝 100080539 赤田 倫治 星田 尚司 柿原 嘉人 河原 央明 7C12N15/09C12N1/19 JPC12N15/00 AC12N1/19 6 OL 6 特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月1日 山口大学主催の「平成15年度卒業論文発表会」において文書をもって発表 4B024 4B065 4B024AA20 4B024CA01 4B024CA11 4B024DA12 4B024GA11 4B024HA19 4B065AA26Y 4B065AA72X 4B065AB01 4B065BA01 形質転換技術は、バイオテクノロジーの根幹をなす技術であり、本発明により開発された酵母細胞の形質転換技術は、バイオテクノロジー分野の発展に多大な影響をもたらすと考えられる。 従来、酵母菌体内にDNAを導入する方法として、(1)プロトプラスト法(2)金属処理法、(3)エレクトロポレーション法が利用されてきている。以下に各方法とその問題点について述べる。 (1)プロトプラスト法:酵母細胞壁を細胞壁溶解酵素により溶解させ、プロトプラスト化した後、浸透圧調整を施してDNAを導入する方法である(非特許文献1)。この方法はプロトプラスト細胞が不安定であることから、取扱操作が容易ではないこと、形質転換効率が低いこと、プロトプラスト化した細胞が融合し、倍数体化した形質転換体が得られてしまうという欠点がある。 (2)金属処理法:酵母細胞をアルカリ一価カチオンで処理した後、ポリエチレングリコール存在下で酵母細胞にDNAを導入する方法である(非特許文献2)。この方法により高い形質転換効率が得られるようになったが、形質転換前にアルカリ一価カチオン処理が要求され、かつ操作回数が多く長時間を要するという問題点がある。 (3)エレクトロポレーション法:プロトプラスト化した酵母細胞に電圧をかけてDNAを導入する方法である(非特許文献3)。この方法は、形質転換効率が低く、操作も煩雑であり、電圧をかける装置を準備しなければならないといった問題点を有している。 (1)対数増殖期の酵母細胞を、該酵母細胞に導入する遺伝子およびポリエチレングリコールを含有する溶液中で維持する工程を具備することを特徴とする酵母の形質転換方法、(2)対数増殖期の酵母細胞を、該酵母細胞に導入する遺伝子およびグルタチオンを含有する溶液中で維持する工程を具備することを特徴とする酵母の形質転換方法、並びに(3)対数増殖期の酵母細胞を、該酵母細胞に導入する遺伝子および酵母細胞成分を含有する溶液中で維持する工程を具備することを特徴とする酵母の形質転換方法が報告されている(特許文献1)。 また、酵母菌体をアルカリ金属イオン処理し、この処理菌体に導入するDNAを接触させる酵母の形質転換法において、酵母菌体を30℃又は20〜25℃で培養後、同温度でアルカリ金属イオンにて懸濁処理し、次いで酵母へDNAを導入する処理において、43〜47℃、1〜15分間の熱処理を施すことを特徴とする酵母の形質転換法が報告されている(特許文献2)。特開2003−250542特開平5−137577Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75: 1929 (1978)J. Bacteriol., 153: 163 (1983)Nature, 319: 791 (1986) バイオテクノロジー分野は、ハイスループット時代を迎え、より簡便かつ時間を要さない形質転換技術が求められている。このような課題に対して本発明は、従来の方法に代わり得る形質転換技術を開発し、提供することを目的とする。 本発明は、以下に記載の手段により達成される。 (1)酵母菌培養液に直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオンおよびポリエチレングリコールを含有する溶液を混合することを特徴とする酵母の形質転換法、(2)酵母菌培養液に直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオン、ポリエチレングリコールおよびジチオスレイトールを含有する溶液を混合することを特徴とする酵母の形質転換法、(3)酵母菌培養液に直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオン、ポリエチレングリコールおよびキャリアRNAを含有する溶液を混合することを特徴とする酵母の形質転換法、(4)酵母菌培養液に直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオン、ポリエチレングリコール、ジチオスレイトールおよびキャリアRNAを含有する溶液を混合することを特徴とする酵母の形質転換法、(5)前記混合溶液に、40〜50℃、1〜180分間の熱処理を行う工程を更に具備することを特徴とする酵母の形質転換法、(6)対数増殖期の細胞を用いる必要がないことを特徴とする(1)〜(6)の何れか1つに記載の酵母の形質転換法である。 従来の酵母菌の形質転換法は、形質転換前に酵母菌体を培養液から集菌し、次いで何らかの細胞処理を施すという操作が必須であり、時間を要していた。本発明による形質転換法は、酵母菌培養液から菌体を集菌することなく、また、形質転換前の細胞処理を一切施さずとも高効率な形質転換を行うことを可能にした画期的な技術である。本発明により、従来法に比して、簡便かつ時間を要さない酵母菌の形質転換が、高い効率で達成される。 以下、本発明の酵母菌の形質転換法について説明する。 <酵母について>本発明に用いる酵母細胞は、酵母と称される細胞であれば特に限定されない。代表的な酵母としては、サッカロミセス科(Saccharomycetaceae)、シゾサッカロミセス科(Schizosaccharomycetaceae)に属するものが挙げられる。また、本発明による形質転換法は、酵母菌培養液から菌体を集菌する必要はなく、培養液をそのまま用いれば良い。 <酵母細胞に導入する遺伝子について>本発明において、酵母細胞に導入する遺伝子は、酵母の形質転換に一般に用いられるプラスミドDNAやマーカー遺伝子を使用したものであれば良く、特に限定されない。 <アルカリ金属イオンについて>本発明において使用するアルカリ金属イオンは、特に限定されるものではないが、具体例としては、Li+、Na+、K+、Cs+、Rb+ 等がある。好ましくは、Li+ が用いられる。また化合物としては、塩化物、硫化物、硝化物等があるが、酢酸化合物がより好ましい。 <ポリエチレングリコールについて>本発明において使用するポリエチレングリコールは、平均分子量600(PEG600)〜3350(PEG3350)のものが好ましいが、特に限定されるものではない。 <キャリアRNA又はキャリアDNAについて>形質転換反応に加えるキャリアRNA又はキャリアDNAは、特に限定されるものではないが、例えば、キャリアRNAとして大腸菌から抽出されたRNAや酵母菌から抽出したRNAを使用することができる。またキャリアDNAとして、鮭精子由来の一本鎖DNAなどを用いることができる。 <形質転換法について>まず、酵母菌を栄養培地、例えばYPD培地(1%酵母エキス、2%ポリペプトン、2%グルコース)で28℃〜33℃において12〜24時間培養する。この培養液に対して直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオン、ポリエチレングリコール、ジチオスレイトールおよびキャリアRNAの混合液を加え、よく混合する。高い形質転換率を達成するためには、予めそれぞれの成分の適切な濃度を検討しておくと良い。例えば、本発明の方法では、40mM酢酸リチウム、35%ポリエチレングリコール600、100mMジチオスレイトール、1μg/μlキャリアRNAの組成において形質転換効率は好適であったが、これに限定されるものではない。次いで、プラスチック容器等に上記菌体溶液を入れた状態で熱処理を行っても良い。熱処理を行う場合、40〜50℃、1〜180分間の処理が好ましい。このように熱処理した菌体溶液は、形質転換体の選択培地へ撒いた後、30℃にて2〜5日培養してコロニーを形成させる。上述のように、本発明による形質転換法では、酵母菌培養液に直接、DNAを導入することを可能にした技術であり、従来の形質転換法に比べ、格段に操作回数が少なく、簡便であるという特徴を有しており、画期的である。 以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するものではない。 形質転換反応液組成の検討を行なった。YPD液体培地 2 mlの入った試験管に吸光度OD600 = 10の酵母溶液を20μl植菌し,28℃,24時間回転振とう培養を行った。この培養液20μlに対して直接、ポリエチレングリコール(PEG)、酢酸リチウム、ジチオスレイトール(DTT)、プラスミドDNA pRS316(URA3)、大腸菌由来RNAおよび滅菌水の混合液80μlを加え、よく混合した。ポリエチレングリコール(PEG)は、最終濃度が35%になるように調製し、PEG400(平均分子量400)、PEG600(平均分子量600)、PEG1000(平均分子量1000)、PEG1540(平均分子量1540)、PEG3350(平均分子量3350)を用いて比較した。酢酸リチウムは、最終濃度が0、40、80、120、160、200、240、280、320mMになるようにそれぞれ調製し、比較した。ジチオスレイトール(DTT)は、最終濃度100mMになるように調製した。プラスミドDNA pRS316(URA3)は、それぞれの形質転換反応当たり1μgを使用した。また、キャリアRNAとしては、大腸菌由来RNAを用い、最終濃度1μg/μlになるように加えた。 次に、それぞれの組成の形質転換反応液を、恒温槽42℃で2時間熱処理を行った。その後、滅菌水900μlを加え、よく懸濁した後、200μlをウラシルの無い最小寒天培地(0.17%イーストナイトロジェンベース、2%グルコース、0.5%硫酸アンモニウム、20μg/ml L-アデニン、100μg/ml L-ヒスチジン、100μg/ml L-リジン、200μg/ml L-ロイシン、100μg/ml L-メチオニン、100μg/ml L-トリプトファン)に28℃で3日間静置培養し、生えたコロニー数を計測し,その値をプラスミドDNA 1μgあたりに換算した。その結果を表1に示した。 表1の結果より、平均分子量400〜3350のすべてのポリエチレングリコールにおいて、酵母菌培養液に直接、プラスミドDNAを形質転換することが可能であることが示された。また、本発明の形質転換法において、ポリエチレングリコール600(PEG600)を用いた場合、より形質転換効率が高く、さらに40mM酢酸リチウムの場合において最も形質転換効率が高かった。従来の形質転換法では、一般的に、ポリエチレングリコール4000などの平均分子量の高いポリエチレングリコールが用いられるが、本発明による形質転換法では、平均分子量600のポリエチレングリコールが好適であった。これは、本発明の大きな特徴の一つである。また、平均分子量600のポリエチレングリコールは、粘性が低いという特徴もあり、実験操作がし易いという点においても優れている。 酵母菌培養液に直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオンおよびポリエチレングリコールを含有する溶液を混合して、形質転換を行なうことを特徴とする酵母の形質転換法。 酵母菌培養液に直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオン、ポリエチレングリコールおよびジチオスレイトールを含有する溶液を混合して、形質転換を行なうことを特徴とする酵母の形質転換法。 酵母菌培養液に直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオン、ポリエチレングリコールおよびキャリアRNA又はキャリアDNAを含有する溶液を混合して、形質転換を行なうことを特徴とする酵母の形質転換法。 酵母菌培養液に直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオン、ポリエチレングリコール、ジチオスレイトールおよびキャリアRNA又はキャリアDNAを含有する溶液を混合して、形質転換を行なうことを特徴とする酵母の形質転換法。 請求項1〜4の何れか1項に記載の混合溶液に、40〜50℃、1〜180分間の熱処理を行うことを特徴とする酵母の形質転換法。 対数増殖期の細胞を用いる必要がないことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の酵母の形質転換法。 【課題】酵母細胞にDNAを簡便かつ短時間に導入する形質転換法を提供する。【解決手段】形質転換の前に酵母菌体を培養液から集菌し、次いで何らかの細胞処理を施すような形質転換方法と異なり、酵母菌培養液に直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオン、ポリエチレングリコール、ジチオスレイトールおよびキャリアRNAを含有する溶液と混合する酵母の形質転換法である。【選択図】なし


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