生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_(メタ)アクリル酸エステルの製造方法
出願番号:2004080725
年次:2005
IPC分類:7,C07C67/08,C07C67/54,C07C69/653,C07B61/00


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矢田 修平 高崎 研二 鈴木 芳郎 小川 寧之 JP 2005263731 公開特許公報(A) 20050929 2004080725 20040319 (メタ)アクリル酸エステルの製造方法 三菱化学株式会社 000005968 岡田 数彦 100097928 矢田 修平 高崎 研二 鈴木 芳郎 小川 寧之 7C07C67/08C07C67/54C07C69/653C07B61/00 JPC07C67/08C07C67/54C07C69/653C07B61/00 300 4 OL 8 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC48 4H006AD11 4H006AD17 4H006BA72 4H006BC51 4H006BD33 4H006BD52 4H006DA64 4H006KA06 4H039CA66 4H039CD10 4H039CD30 4H039CL25 本発明は(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの総称である。 (メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとのエステル化反応による(メタ)アクリル酸エステルの製造触媒としては、強酸性陽イオン交換樹脂触媒が広く使用されている。エステル化反応工程における触媒の使用形態は、一般的には固定床であるが、流動床とする場合もある。また、エステル化反応が平衡反応であるため、工業的な製造においては、反応液から未反応の原料を蒸留分離し、エステル化反応工程に循環する回収工程が採用される(例えば特許文献1及びそ2)。特公平6−86405号公報特公平6−86406号公報 ところで、(メタ)アクリル酸エステルの工業的な製造においては、触媒寿命の長期化は重要課題である。 本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、強酸性陽イオン交換樹脂触媒の寿命の長期化が図られる様に改良された(メタ)アクリル酸エステルの工業的に有利な製造方法を提供することにある。 本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、反応液中にポリマー状重質分や樹脂の微細な破砕物などの微量の固形物が含まれており、この固形物を除去するならば、意外にも、強酸性陽イオン交換樹脂触媒の寿命の長期化が図られるとの知見を得た。 なお、ポリマー状重質分や樹脂の微細な破砕物は次の様にして生成したものと推定される。すなわち、(メタ)アクリル酸は重合禁止剤が添加されて取扱われるが、反応工程や回収工程の蒸留塔における加熱などが原因となり、(メタ)アクリル酸エステルから不可避的に微量のポリマー状重質分が生成する。強酸性陽イオン交換樹脂触媒は、経時的な酸化劣化や膨潤・収縮の繰り返しにより割れを起こし、樹脂の微細な破砕物が発生する。 また、上記の様な固形物による強酸性陽イオン交換樹脂触媒の寿命の短期化は次の様に惹起されるものと推定される。すなわち、ポリマー状重質分により触媒の活性点が覆われて触媒寿命が短くなる。特に固定床の場合は、ポリマー状重質分や樹脂の微細な破砕物の閉塞に起因する偏流によって反応成績が悪化する。 本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとを強酸性陽イオン交換樹脂触媒の存在下にエステル化反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る反応工程と、当該反応工程で得られた反応液から未反応(メタ)アクリル酸を分離する回収工程とを包含し、上記の反応工程に未反応(メタ)アクリル酸を循環することより成る(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、反応工程に循環される未反応(メタ)アクリル酸中の固形物の分離を行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に存する。 本発明によれば、強酸性陽イオン交換樹脂触媒の寿命を延長し、長期間の連続安定運転を可能とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が提供される。 以下、本発明を詳細に説明する。原料として使用するアルコールは、炭素数が1〜4のアルコールであり、その具体例としては、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。また、後述の回収工程で分離された未反応アルコールを循環再使用することも出来る。本発明の製造方法で得られる(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。これらの中では、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルが特に好適である。 触媒の強酸性陽イオン交換樹脂としては多孔質型またはゲル型の何れであってもよい。架橋度は通常2〜16%であり、好適な市販品としては、例えば、三菱化学製の多孔質型強酸性陽イオン交換樹脂、「PK−208」、「PK−216」、「PK−228」等が挙げられる。 図1は、本発明の製造方法の一例の要部の説明図であるが、本発明の製造方法は、従来公知の方法と同様に、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとを強酸性陽イオン交換樹脂触媒の存在下にエステル化反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る反応工程と、当該反応工程で得られた反応液から未反応(メタ)アクリル酸を分離する回収工程とを包含し、上記の反応工程に未反応(メタ)アクリル酸を循環することより成る。 反応工程は、具体的には、強酸性陽イオン交換樹脂触媒が収容された反応器(1)に、ライン(L1)から(メタ)アクリル酸、ライン(L2)からアルコールを供給して行われる。符号(L3)は、後述の回収(メタ)アクリル酸の循環ラインであり、符号(L4)は、後述の回収アルコールの循環ラインである。 反応条件は、使用する原料により適宜選択されるが、(メタ)アクリル酸に対するアルコールのモル比は、通常0.5〜2.0、反応温度は通常50〜90℃、反応時間(滞留時間)は、通常1〜5時間である。エステル化反応により、(メタ)アクリル酸エステルと水が副生する。従って、反応液は、これらの生成物と未反応(メタ)アクリル酸とアルコールとの混合物である。なお、図示した反応工程は、固定床の連続式であるが、流動床であっても回分式であってもよい。 回収工程は、具体的には、反応器(1)からライン(L5)を通して反応液を抜出し、蒸留塔(2)で処理することによって行われる。炭素数1〜4のアルコールの場合は、水−アルコール、水−(メタ)アクリル酸エステル、アルコール−(メタ)アクリル酸エステル、水−アルコール−(メタ)アクリル酸エステル等が共沸混合物を形成する場合が殆どであるため、これらの共沸や(メタ)アクリル酸エステルとの沸点差を利用し、(メタ)アクリル酸とその他の3成分が分離される場合が多い。 蒸留塔としては、多孔板塔、泡鐘塔、充填塔、これらの組合せ型(例えば、多孔板塔と充填塔との組合せ)等があり、また、溢流堰やダウンカマーの有無は区別されず、何れも使用できる。 蒸留塔に使用されるトレイとしては、ダウンカマーのある泡鐘トレイ、多孔版トレイ、バルブトレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラクストレイ、ダウンカマーの無いデユアルトレイ等が挙げられる。 蒸留塔に使用される充填物としては、円柱状、円筒状、サドル型、球状、立方体状、角錐体状など従来から使用されている充填物の他に、近年、高性能充填物として注目されている特殊形状を有する規則的または不規則的充填物が挙げられる。 規則充填物としては、スルザー・ブラザース(株)製のスルザーパック、住友重機械工業(株)製の住友スルザーパッキング、三井物産(株)製のテクノパック等のガーゼ型規則充填物、住友重機械工業(株)製のメラパック、三菱化学エンジニアリング(株)製のエムシーパック等のシート型規則充填物、コーク(株)製のフレキシグリッド等のグリッド型規則充填物などが挙げられる。また、グリッチ(株)製のジェムパック、モンツ(株)製のモンツパック、東京特殊金網(株)製のグッドロールパッキング、日本ガイシ(株)製のハニカムパック、ナガオカ(株)製のインパルスパッキング等があげられる。 不規則充填物としては、BASF(株)製のラシヒリング、ポーリング、マストランスファー(株)製のカスケード・ミニ・リング、ノートン(株)製のIMTP、インタロックスサドル、日鉄化工機(株)製のテラレット、日揮(株)製のフレキシリング等が挙げられる。 上述の充填物は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、従来使用されているトレイと組み合わせて使用してもよい。 上述の蒸留塔の操作条件は、蒸留原料の組成、回収率などにより異なる。しかしながら、(メタ)アクリル酸エステルは易重合性化合物であるため、蒸留温度および圧力は、それぞれ極力低温で低圧に設定することが好ましい。具体的には、塔底温度は、通常60〜100℃、塔頂圧力は、通常1.33〜26.7kPaである。なお、塔頂から回収された、(メタ)アクリル酸エステル、水、未反応アルコールを含む塔頂成分は、ライン(L6)を通し、他の蒸留塔にて処理され、未反応アルコールが回収される。 なお、反応時および蒸留時における(メタ)アクリル酸や対応するエステルの好ましくない重合による損失を抑制するため、重合防止剤や重合禁止剤としての酸素含有ガス等が反応器や蒸留塔などに添加される。 また、反応液から未反応(メタ)アクリル酸を分離する手段としては、蒸留手段に限定されず、アルカリ等の各種の抽剤による抽出手段、蒸留手段と抽出手段との組合せ等を採用することが出来る。 本発明の特徴は、反応工程に循環される未反応(メタ)アクリル酸中の固形物の分離を行う点にある。図示した例では、回収(メタ)アクリル酸の循環ライン(L3)の途中に固形物分離手段(3)を設けている。なお、符号(4)は循環ライン(L3)の途中に設けられた循環用のポンプであり、符号(7)は蒸留塔(2)の塔底液の抜出しラインである。 固形物分離手段(3)としては、微量の固形物の分離が可能である限りその種類は限定されないが、操作性およびコストの観点から、一般的には、ストレイナー、フィルター、遠心濾過器などの濾過手段が採用される。特に、連続運転が可能なこと、設置コストが安価であること、操作性が良いこと等の理由で、カートリッジフィルター式のフィルターが最も好適である。フィルターの透過粒径としては、分離対象固形物の粒径が殆どカバー出来る1〜10μmが好ましい。フィルターの材質としては、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリアミド等が挙げられるが、強度、耐酸性、価格などの面からポリプロピレンが好ましい。 分離対象固形物は、前述の様にポリマー状重質分や樹脂の微細な破砕物などである。ポリマー状重質分としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ミカエル付加型高分子ポリエステル等である。また、固形物としては鉄錆などのスラッジ類も含まれる。固形物を分離する際の温度は、上記の様なポリマー状重質分の固体状態の維持を図る観点から、通常50〜90℃である。 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。 実施例1: 図1に示した方法に従ってアクリル酸メチルエステルを連続的に製造した。触媒としては三菱化学製の強酸性陽イオン交換樹脂「PK−216」を固定床として使用した。また、固形物分離手段(3)には透過粒径3μmのカートリッジフィルターを使用した。 触媒が収容された反応器(1)に、ライン(L1)からアクリル酸、ライン(L2)からメタノール、ライン(L3)から回収アクリル酸、循環ライン(L4)から回収メタノールを供給した。アクリル酸:メタノールのモル比が約1.25:1となる様にフレッシュ原料および回収原料の流量を調節し、反応温度は約75℃の一定とした。 エステル化反応器の出口組成は、水:12.2重量%、メタノール:4.1重量%、アクリル酸メチル:38.4重量%、アクリル酸:23.3重量%、その他:22.0重量%であり、平均流量は7.5トン/時間で殆ど変動は無かった。 一方、反応器(1)から反応液を抜出し、蒸留塔(2)で処理した。この際、蒸留塔(2)にハイドロキノン(重合禁止剤)5重量%を溶解したメタノール溶液を35.4Kg/時間で供給した。塔頂圧力は26kPa、還流比は1とした。塔底の温度は平均値で80℃であった。塔頂成分の組成は、水:16重量%、メタノール:8.3重量%、アクリル酸メチル:70.2重量%、その他:5.2重量%であり、平均流量は4.1トン/時間で殆ど変動は無かった。また、塔底成分の組成は、水:7.5重量%、アクリル酸メチル:0.1重量%、アクリル酸:50.5重量%、その他:41.8重量%であり、平均流量は3.4トン/時間で殆ど変動は無かった。 そして、循環ライン(L3)により上記の塔底成分を前記の反応器(1)に循環した。この際、固形物分離手段(3)(カートリッジフィルター)の温度は約80℃の一定温度に保った。なお、別の蒸留塔により、前記の塔頂成分から未反応メタノールを分離して回収し、反応器(1)に循環した。 上記の連続運転を2年間に亘って実施した。2年後の反応器(1)出口でのアクリル酸の転化率は、運転開始当初と比較して平均値で1%未満の低下に過ぎなかった。 比較例1: 実施例1において、フィルターを設置しないこと以外は、実施例1と全く同一条件で連続運転を実施した。その結果、1.1ケ月経過時点でアクリル酸の転化率は運転開始当初より3.7%低下しており、精製系の能力の限界に近づいたため、定期修理時に触媒を交換した。本発明の製造方法の一例の要部の説明図符号の説明 1:反応器 2:蒸留塔 3:固形物分離手段 (メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとを強酸性陽イオン交換樹脂触媒の存在下にエステル化反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る反応工程と、当該反応工程で得られた反応液から未反応(メタ)アクリル酸を分離する回収工程とを包含し、上記の反応工程に未反応(メタ)アクリル酸を循環することより成る(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、反応工程に循環される未反応(メタ)アクリル酸中の固形物の分離を行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。 固形物分離手段が濾過器である請求項1に記載の製造方法。 固形物を分離する際の温度が50〜90℃である請求項1又は2に記載の製造方法。 (メタ)アクリル酸エステルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル又はメタクリル酸メチルである請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。 【課題】強酸性陽イオン交換樹脂触媒の寿命の長期化が図られる様に改良された(メタ)アクリル酸エステルの工業的に有利な製造方法を提供する。【解決手段】(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとを強酸性陽イオン交換樹脂触媒の存在下にエステル化反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る反応工程と、当該反応工程で得られた反応液から未反応(メタ)アクリル酸を分離する回収工程とを包含し、上記の反応工程に未反応(メタ)アクリル酸を循環することより成る(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、反応工程に循環される未反応(メタ)アクリル酸中の固形物の分離を行う。【選択図】 なし


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特許公報(B2)_(メタ)アクリル酸エステルの製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_(メタ)アクリル酸エステルの製造方法
出願番号:2004080725
年次:2010
IPC分類:C07C 67/08,C07C 67/54,C07C 69/54,C07B 61/00


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矢田 修平 高崎 研二 鈴木 芳郎 小川 寧之 JP 4561137 特許公報(B2) 20100806 2004080725 20040319 (メタ)アクリル酸エステルの製造方法 三菱化学株式会社 000005968 岡田 数彦 100097928 矢田 修平 高崎 研二 鈴木 芳郎 小川 寧之 20101013 C07C 67/08 20060101AFI20100922BHJP C07C 67/54 20060101ALI20100922BHJP C07C 69/54 20060101ALI20100922BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100922BHJP JPC07C67/08C07C67/54C07C69/54 ZC07B61/00 300 C07C 67/08 C07C 67/54 C07C 67/56 C07C 69/54 特開平03−240753(JP,A) 3 2005263731 20050929 8 20060928 水島 英一郎 本発明は(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの総称である。 (メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとのエステル化反応による(メタ)アクリル酸エステルの製造触媒としては、強酸性陽イオン交換樹脂触媒が広く使用されている。エステル化反応工程における触媒の使用形態は、一般的には固定床であるが、流動床とする場合もある。また、エステル化反応が平衡反応であるため、工業的な製造においては、反応液から未反応の原料を蒸留分離し、エステル化反応工程に循環する回収工程が採用される(例えば特許文献1及びそ2)。特公平6−86405号公報特公平6−86406号公報 ところで、(メタ)アクリル酸エステルの工業的な製造においては、触媒寿命の長期化は重要課題である。 本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、強酸性陽イオン交換樹脂触媒の寿命の長期化が図られる様に改良された(メタ)アクリル酸エステルの工業的に有利な製造方法を提供することにある。 本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、反応液中にポリマー状重質分や樹脂の微細な破砕物などの微量の固形物が含まれており、この固形物を除去するならば、意外にも、強酸性陽イオン交換樹脂触媒の寿命の長期化が図られるとの知見を得た。 なお、ポリマー状重質分や樹脂の微細な破砕物は次の様にして生成したものと推定される。すなわち、(メタ)アクリル酸は重合禁止剤が添加されて取扱われるが、反応工程や回収工程の蒸留塔における加熱などが原因となり、(メタ)アクリル酸エステルから不可避的に微量のポリマー状重質分が生成する。強酸性陽イオン交換樹脂触媒は、経時的な酸化劣化や膨潤・収縮の繰り返しにより割れを起こし、樹脂の微細な破砕物が発生する。 また、上記の様な固形物による強酸性陽イオン交換樹脂触媒の寿命の短期化は次の様に惹起されるものと推定される。すなわち、ポリマー状重質分により触媒の活性点が覆われて触媒寿命が短くなる。特に固定床の場合は、ポリマー状重質分や樹脂の微細な破砕物の閉塞に起因する偏流によって反応成績が悪化する。 本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとを強酸性陽イオン交換樹脂触媒の存在下にエステル化反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る反応工程と、当該反応工程で得られた反応液から未反応(メタ)アクリル酸を分離する回収工程とを包含し、上記の反応工程に未反応(メタ)アクリル酸を循環することより成る(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、反応工程に循環される未反応(メタ)アクリル酸中の、ポリマー状重質分および樹脂破砕物を含む固形物の分離を、透過粒径が1〜10μmの濾過器により50〜90℃の温度で行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に存する。 本発明によれば、強酸性陽イオン交換樹脂触媒の寿命を延長し、長期間の連続安定運転を可能とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が提供される。 以下、本発明を詳細に説明する。原料として使用するアルコールは、炭素数が1〜4のアルコールであり、その具体例としては、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。また、後述の回収工程で分離された未反応アルコールを循環再使用することも出来る。本発明の製造方法で得られる(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。これらの中では、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルが特に好適である。 触媒の強酸性陽イオン交換樹脂としては多孔質型またはゲル型の何れであってもよい。架橋度は通常2〜16%であり、好適な市販品としては、例えば、三菱化学製の多孔質型強酸性陽イオン交換樹脂、「PK−208」、「PK−216」、「PK−228」等が挙げられる。 図1は、本発明の製造方法の一例の要部の説明図であるが、本発明の製造方法は、従来公知の方法と同様に、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとを強酸性陽イオン交換樹脂触媒の存在下にエステル化反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る反応工程と、当該反応工程で得られた反応液から未反応(メタ)アクリル酸を分離する回収工程とを包含し、上記の反応工程に未反応(メタ)アクリル酸を循環することより成る。 反応工程は、具体的には、強酸性陽イオン交換樹脂触媒が収容された反応器(1)に、ライン(L1)から(メタ)アクリル酸、ライン(L2)からアルコールを供給して行われる。符号(L3)は、後述の回収(メタ)アクリル酸の循環ラインであり、符号(L4)は、後述の回収アルコールの循環ラインである。 反応条件は、使用する原料により適宜選択されるが、(メタ)アクリル酸に対するアルコールのモル比は、通常0.5〜2.0、反応温度は通常50〜90℃、反応時間(滞留時間)は、通常1〜5時間である。エステル化反応により、(メタ)アクリル酸エステルと水が副生する。従って、反応液は、これらの生成物と未反応(メタ)アクリル酸とアルコールとの混合物である。なお、図示した反応工程は、固定床の連続式であるが、流動床であっても回分式であってもよい。 回収工程は、具体的には、反応器(1)からライン(L5)を通して反応液を抜出し、蒸留塔(2)で処理することによって行われる。炭素数1〜4のアルコールの場合は、水−アルコール、水−(メタ)アクリル酸エステル、アルコール−(メタ)アクリル酸エステル、水−アルコール−(メタ)アクリル酸エステル等が共沸混合物を形成する場合が殆どであるため、これらの共沸や(メタ)アクリル酸エステルとの沸点差を利用し、(メタ)アクリル酸とその他の3成分が分離される場合が多い。 蒸留塔としては、多孔板塔、泡鐘塔、充填塔、これらの組合せ型(例えば、多孔板塔と充填塔との組合せ)等があり、また、溢流堰やダウンカマーの有無は区別されず、何れも使用できる。 蒸留塔に使用されるトレイとしては、ダウンカマーのある泡鐘トレイ、多孔版トレイ、バルブトレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラクストレイ、ダウンカマーの無いデユアルトレイ等が挙げられる。 蒸留塔に使用される充填物としては、円柱状、円筒状、サドル型、球状、立方体状、角錐体状など従来から使用されている充填物の他に、近年、高性能充填物として注目されている特殊形状を有する規則的または不規則的充填物が挙げられる。 規則充填物としては、スルザー・ブラザース(株)製のスルザーパック、住友重機械工業(株)製の住友スルザーパッキング、三井物産(株)製のテクノパック等のガーゼ型規則充填物、住友重機械工業(株)製のメラパック、三菱化学エンジニアリング(株)製のエムシーパック等のシート型規則充填物、コーク(株)製のフレキシグリッド等のグリッド型規則充填物などが挙げられる。また、グリッチ(株)製のジェムパック、モンツ(株)製のモンツパック、東京特殊金網(株)製のグッドロールパッキング、日本ガイシ(株)製のハニカムパック、ナガオカ(株)製のインパルスパッキング等があげられる。 不規則充填物としては、BASF(株)製のラシヒリング、ポーリング、マストランスファー(株)製のカスケード・ミニ・リング、ノートン(株)製のIMTP、インタロックスサドル、日鉄化工機(株)製のテラレット、日揮(株)製のフレキシリング等が挙げられる。 上述の充填物は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、従来使用されているトレイと組み合わせて使用してもよい。 上述の蒸留塔の操作条件は、蒸留原料の組成、回収率などにより異なる。しかしながら、(メタ)アクリル酸エステルは易重合性化合物であるため、蒸留温度および圧力は、それぞれ極力低温で低圧に設定することが好ましい。具体的には、塔底温度は、通常60〜100℃、塔頂圧力は、通常1.33〜26.7kPaである。なお、塔頂から回収された、(メタ)アクリル酸エステル、水、未反応アルコールを含む塔頂成分は、ライン(L6)を通し、他の蒸留塔にて処理され、未反応アルコールが回収される。 なお、反応時および蒸留時における(メタ)アクリル酸や対応するエステルの好ましくない重合による損失を抑制するため、重合防止剤や重合禁止剤としての酸素含有ガス等が反応器や蒸留塔などに添加される。 また、反応液から未反応(メタ)アクリル酸を分離する手段としては、蒸留手段に限定されず、アルカリ等の各種の抽剤による抽出手段、蒸留手段と抽出手段との組合せ等を採用することが出来る。 本発明の特徴は、反応工程に循環される未反応(メタ)アクリル酸中の固形物の分離を行う点にある。図示した例では、回収(メタ)アクリル酸の循環ライン(L3)の途中に固形物分離手段(3)を設けている。なお、符号(4)は循環ライン(L3)の途中に設けられた循環用のポンプであり、符号(7)は蒸留塔(2)の塔底液の抜出しラインである。 固形物分離手段(3)としては、微量の固形物の分離が可能である限りその種類は限定されないが、操作性およびコストの観点から、一般的には、ストレイナー、フィルター、遠心濾過器などの濾過手段が採用される。特に、連続運転が可能なこと、設置コストが安価であること、操作性が良いこと等の理由で、カートリッジフィルター式のフィルターが最も好適である。フィルターの透過粒径としては、分離対象固形物の粒径が殆どカバー出来る1〜10μmが好ましい。フィルターの材質としては、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリアミド等が挙げられるが、強度、耐酸性、価格などの面からポリプロピレンが好ましい。 分離対象固形物は、前述の様にポリマー状重質分や樹脂の微細な破砕物などである。ポリマー状重質分としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ミカエル付加型高分子ポリエステル等である。また、固形物としては鉄錆などのスラッジ類も含まれる。固形物を分離する際の温度は、上記の様なポリマー状重質分の固体状態の維持を図る観点から、通常50〜90℃である。 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。 実施例1: 図1に示した方法に従ってアクリル酸メチルエステルを連続的に製造した。触媒としては三菱化学製の強酸性陽イオン交換樹脂「PK−216」を固定床として使用した。また、固形物分離手段(3)には透過粒径3μmのカートリッジフィルターを使用した。 触媒が収容された反応器(1)に、ライン(L1)からアクリル酸、ライン(L2)からメタノール、ライン(L3)から回収アクリル酸、循環ライン(L4)から回収メタノールを供給した。アクリル酸:メタノールのモル比が約1.25:1となる様にフレッシュ原料および回収原料の流量を調節し、反応温度は約75℃の一定とした。 エステル化反応器の出口組成は、水:12.2重量%、メタノール:4.1重量%、アクリル酸メチル:38.4重量%、アクリル酸:23.3重量%、その他:22.0重量%であり、平均流量は7.5トン/時間で殆ど変動は無かった。 一方、反応器(1)から反応液を抜出し、蒸留塔(2)で処理した。この際、蒸留塔(2)にハイドロキノン(重合禁止剤)5重量%を溶解したメタノール溶液を35.4Kg/時間で供給した。塔頂圧力は26kPa、還流比は1とした。塔底の温度は平均値で80℃であった。塔頂成分の組成は、水:16重量%、メタノール:8.3重量%、アクリル酸メチル:70.2重量%、その他:5.2重量%であり、平均流量は4.1トン/時間で殆ど変動は無かった。また、塔底成分の組成は、水:7.5重量%、アクリル酸メチル:0.1重量%、アクリル酸:50.5重量%、その他:41.8重量%であり、平均流量は3.4トン/時間で殆ど変動は無かった。 そして、循環ライン(L3)により上記の塔底成分を前記の反応器(1)に循環した。この際、固形物分離手段(3)(カートリッジフィルター)の温度は約80℃の一定温度に保った。なお、別の蒸留塔により、前記の塔頂成分から未反応メタノールを分離して回収し、反応器(1)に循環した。 上記の連続運転を2年間に亘って実施した。2年後の反応器(1)出口でのアクリル酸の転化率は、運転開始当初と比較して平均値で1%未満の低下に過ぎなかった。 比較例1: 実施例1において、フィルターを設置しないこと以外は、実施例1と全く同一条件で連続運転を実施した。その結果、1.1ケ月経過時点でアクリル酸の転化率は運転開始当初より3.7%低下しており、精製系の能力の限界に近づいたため、定期修理時に触媒を交換した。本発明の製造方法の一例の要部の説明図符号の説明 1:反応器 2:蒸留塔 3:固形物分離手段 (メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとを強酸性陽イオン交換樹脂触媒の存在下にエステル化反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る反応工程と、当該反応工程で得られた反応液から未反応(メタ)アクリル酸を分離する回収工程とを包含し、上記の反応工程に未反応(メタ)アクリル酸を循環することより成る(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、反応工程に循環される未反応(メタ)アクリル酸中の、ポリマー状重質分および樹脂破砕物を含む固形物の分離を、透過粒径が1〜10μmの濾過器により50〜90℃の温度で行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。 濾過器がフィルターである請求項1に記載の製造方法。 (メタ)アクリル酸エステルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル又はメタクリル酸メチルである請求項1又は2に記載の製造方法。


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