生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_食物繊維高含有焙焼デキストリン及びその製造方法
出願番号:2004075032
年次:2005
IPC分類:7,C08B30/18,A61P1/10,A61P3/06,A61P3/10,A61P9/12,A61P35/00,A23L1/308,A61K31/718


特許情報キャッシュ

岡 直樹 加藤 孝治 佐田 洋 阪本 禮一郎 JP 2005263867 公開特許公報(A) 20050929 2004075032 20040316 食物繊維高含有焙焼デキストリン及びその製造方法 王子コーンスターチ株式会社 000122243 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 島村 直己 100101904 岡 直樹 加藤 孝治 佐田 洋 阪本 禮一郎 7C08B30/18A61P1/10A61P3/06A61P3/10A61P9/12A61P35/00A23L1/308A61K31/718 JPC08B30/18A61P1/10A61P3/06A61P3/10A61P9/12A61P35/00A23L1/308A61K31/718 6 OL 8 4B018 4C086 4C090 4B018MD36 4B018MD47 4B018ME01 4C086AA03 4C086EA20 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZA42 4C086ZA72 4C086ZB26 4C086ZC33 4C086ZC35 4C090AA01 4C090AA04 4C090BA07 4C090BB02 4C090BB03 4C090BB12 4C090BB32 4C090BB36 4C090BB38 4C090BB52 4C090BC12 4C090BD01 4C090BD50 4C090CA04 4C090CA31 4C090DA09 4C090DA23 本発明は、食物繊維を55%以上含む食物繊維高含有焙焼デキストリン及びその製造方法に関する。 焙焼デキストリンは澱粉を酸の存在下又は非存在下において、水分1〜5%の低水分下で加熱処理して得られるものであり、人間の消化酵素で分解されない難消化性の食物繊維を含むことが知られている。焙焼デキストリンの製造方法の従来技術としては、非特許文献1に焙焼デキストリンの最新の総説が記載されている。一般に澱粉の加熱条件は、酸を添加して79〜121℃の比較的低温領域で3〜8時間処理して得られるものが白色デキストリンと呼ばれている。同様に酸を添加して150〜220℃の高温度領域で6〜18時間加熱処理されたものが黄色デキストリンと言われている。更に、酸を添加しないで135〜218℃の高温領域で10〜20時間以上加熱されて得られるものがブリティッシュガムと言われている。 このようにして得られる焙焼デキストリンは周知の通り、高温処理により澱粉分子は一度加水分解されて低分子化されるが、更に加熱が進むと、一旦低分子化したぶどう糖やオリゴ糖が再重合を起こし、水溶性になると共に複雑な分子構造を有した難消化性の食物繊維分に相当する画分を多く含んだ糖質に変化する。 焙焼デキストリンをα−アミラーゼ、グルコアミラーゼにより加水分解すると、食物繊維に相当する部分は酵素分解されずに残存する。このように澱粉から製造される焙焼デキストリンで酵素分解を受けない、即ち人間の消化酵素で分解されない多糖部分を難消化性デキストリンと称している。したがって、焙焼デキストリンの食物繊維が多ければ多い程、より多くの難消化性デキストリンが生成することになる。 近年、日本においても生活水準の向上に伴い、和食中心から欧米の食文化を取り入れた食生活に変化してきた。一方、平均寿命が大きく伸びて、急速な高齢化現象が起きており、疾病構造が変化しつつある。糖尿病などの生活習慣病が著しく増加しており、人々の健康志向が益々大きくなってきている。このように健康への関心が高まる中で、生体調節機能を有する食品素材の一つとして、難消化性デキストリンが注目されている。難消化性デキストリン等の食物繊維素材は便秘の改善、糖尿病の予防、大腸癌や結腸癌の予防、コレステロール低下作用、血圧降下作用、血糖値増加の抑制、高脂血症の抑制などの生体調節機能を有することが見出されており、食品や飼料の機能性を高める素材として注目を集めている。 ところで、従来の焙焼デキストリンの食物繊維含有率はいずれも55%未満と低く、焙焼デキストリンから得られる難消化性デキストリンの収率も55%未満とならざるを得ない。55%以上の食物繊維含有率を得ようとすれば加熱処理条件を強化することになる。しかしながら、加熱処理条件を強化すると、食物繊維含有率は増加するものの、焙焼デキストリンの着色物質が増加する。焙焼デキストリンから難消化性デキストリンを得るには、酵素分解、濾過・脱色・脱塩、ぶどう糖分離の精製工程を経る。着色物質の多い難消化性デキストリンは前記の精製工程が著しく困難となり、製造コストの上昇、排水負荷の増加の問題が生じる。したがって、精製負荷が少なく、難消化性デキストリンの生産に適した焙焼デキストリンの製造法が期待されている。Tomasik, P. & Wiejak, S., Advance in Carbohydrate Chemistry, Vol.47, 279-343 (1990) 本発明の課題は、食物繊維含有率が55%以上、好ましくは60%以上であり、かつ白度が60%以上である焙焼デキストリンを提供することであり、精製負荷が少なく、より安価な難消化性デキストリンの製造に寄与することである。 本発明は以下の発明を包含する。(1)100kg以上の澱粉を加熱処理する工業的規模における焙焼デキストリンの製造において、食物繊維含有率が55%以上であり、かつ白度が60%以上である焙焼デキストリンの製造方法。(2)食物繊維含有率が60%以上である前記(1)に記載の焙焼デキストリンの製造方法。(3)澱粉を酸の存在下、130〜170℃で処理した後、30分以内に120℃以下に冷却することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の焙焼デキストリンの製造方法。(4)流動層加熱機を用いて加熱処理することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の焙焼デキストリンの製造方法。(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法により得られ、食物繊維含有率が55%以上であり、かつ白度が60%以上である焙焼デキストリン。(6)食物繊維含有率が60%以上である前記(5)に記載の焙焼デキストリン。 本発明によれば、食物繊維含有率が55%以上、好ましくは60%以上であり、かつ白度が60%以上である焙焼デキストリンを提供することができる。本発明の焙焼デキストリンを原料とすれば、難消化性デキストリンの生産性が高められ、精製負荷が少なく、より安価な難消化性デキストリンの生産につながる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明において原料として使用される澱粉は、特に限定されず、例えば馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ハイアミロース・コーンスターチ、ワキシー・コーンスターチ、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉等が使用され、更にはこれらを物理的又は化学的に処理した澱粉も使用できる。 使用される酸としては、通常塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硫酸などの鉱酸が用いられ、好ましくは塩酸が用いられる。塩酸の添加率は澱粉に対し、100〜3000ppmが好ましい。添加方法としては、均一に酸が分散して添加・撹拌される方法を選択すべきである。塩酸は0.1〜10重量%の水溶液として、より小さい水滴で散布又は噴霧により添加され、必要に応じてミキサー等により混合する必要がある。次いで、80〜100℃で予備乾燥を行い、澱粉の水分が3〜7%となるまで乾燥してから加熱処理を行うことが好ましい。 加熱条件は酸の種類や添加量によって大きく異なるため、それぞれの添加条件によって最適な条件が設定され得る。例えば塩酸を用いた場合、130〜170℃、好ましくは140〜160℃で焙焼を行う。通常昇温に10〜60分を要し、昇温した後、通常10〜60分、好ましくは20〜40分と短時間で加熱することにより、食物繊維含有率が55%以上の焙焼デキストリンが得られる。 100g程度の澱粉を焙焼する実験室の小型加熱装置を用いて焙焼すると、白度を60%以上に維持しながら食物繊維含有率を55%以上に高くすることは比較的容易であった。しかしながら、100kg以上の澱粉を一度に加熱処理する工業的な焙焼デキストリンの生産においては、食物繊維含有率を55%以上に高くすることはできても、白度を60%以上に維持することは、極めて困難であることが判明した。 本発明の目的は、食物繊維含有率が55%以上、好ましくは60%以上であり、かつ白度が60%以上である焙焼デキストリンの工業規模における製造法を提供することにある。前述のように、工業的な生産においては加熱条件だけでは、食物繊維含有率を55%以上に高められても、白度を60%以上に維持することは困難である。そこで、加熱装置の選択が問題となる。例えば、従来のリボン型加熱混合装置のような間接加熱型の装置では、加熱媒体面の温度は必要な澱粉の加熱温度より高温にしなければ、澱粉は設定の温度に達しない。そのため、媒体面付近の澱粉は設定以上の高温にさらされ、装置内での澱粉の品温は不均一状態になる。また、水分の除去効率が悪いため、装置内に水蒸気がこもり、水分の多い条件で加熱される。水分の多い条件は澱粉の加水分解には好都合な条件であるが、分解物の再重合には不都合な条件である。したがって、食物繊維含量の増加に伴い、焙焼デキストリンの着色が激しくなるという欠点がある。 焙焼方法について種々検討を行った結果、本発明者らは加熱装置として流動層加熱機を用いることに着目した。本発明に用いる流動層加熱機は澱粉量に対し多量の熱風を加熱装置下部より送り込み、澱粉を均一に混合しつつ加熱、焙焼できる装置である。装置内では、熱風による加熱、混合のため、澱粉の品温は均一な温度で速やかに上昇し、低水分の状態にすることが可能である。 更には、酸として塩酸等の揮発性の酸を用いた場合、流動層加熱機では酸が流失するが、排気ガスを再循環することで触媒となる酸の流失を防ぎ、酸の使用量を低減できる利点がある。 流動層加熱機としては、王子コーンスターチ(株)にて設計、建設されたものを使用した。この装置は熱風を装置下部より送り込み、加熱、混合を行うと同時に、排気を循環又は開放に切り替えることができる。仕込み量は澱粉として通常風乾500〜750kgであり、15〜25分で澱粉の品温が150℃に達する。 加熱条件は酸の種類や添加量によって大きく異なるため、それぞれの添加条件によって最適な条件が設定され得る。例えば塩酸を用いた場合、その濃度を0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜2重量%、より好ましくは1重量%程度として、原料澱粉に対し3〜10重量%添加する。1段処理加熱の場合、昇温に15〜30分を要して、通常品温が130〜170℃、好ましくは140〜160℃となるまで加熱し、通常10〜60分焙焼する。加熱処理後、通常5〜30分、好ましくは10〜20分で速やかに品温を低下させることで、白度が60%以上と着色が少なく、食物繊維含有率が55%以上、好ましくは60%以上の焙焼デキストリンが得られた。 本発明においては、その加熱条件を2段処理化することにより更に効率よく所定の焙焼デキストリンを得ることができる。1段目の低温処理では加水分解を進め、2段目の高温処理で重合反応を促進させる方法である。 即ち、加熱処理工程での1段目として80〜110℃での低温領域において、澱粉の酸加水分解を進め再重合に関与する低分子糖をより多く生成させる。次に2段目として130〜170℃での高温領域で、加熱による再重合を生起させる。このようにして白度が60%以上と着色が少なく、かつ食物繊維含有率が55%以上、好ましくは60%以上である焙焼デキストリンを製造することができる。 更に、高温加熱領域では加熱時間の経過に伴い、焙焼デキストリンの着色が増加するため、所定の加熱処理時間終了後は、速やかに品温を低下させることが望まれる。冷却に要する時間は短ければ短い方が着色の増加を防ぐことになるが、実機では装置上の制約が大きい。加熱終了後、品温を30分以内、より好ましくは10〜20分で、120℃以下に冷却することにより着色の増加を防ぐことを見出した。その方法は、流動層加熱機で熱風の代わりに冷風を送風すると同時に排気循環ラインを開放に切り替えることで、速やかに120℃以下に品温を下げることができる。また、空送配管移送にて品温を下げることも可能であり、これらの方法には限られるものではない。 製造時に生成する着色物質は得られる焙焼デキストリンの白度と関連があり、白度が低いほど着色物質が多いことを意味する。以下の実施例では、着色の度合いを焙焼デキストリンの白度で表すこととした。 本発明の製造方法により得られる焙焼デキストリンは、食物繊維含有率が55%以上、好ましくは60%以上であり、白度が60%以上である。本発明の製造方法により得られる焙焼デキストリンは、難消化性デキストリンの原料として有用である。 以下、参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また以下の参考例、実施例及び比較例において、(a)食物繊維含有率の測定、(b)白度の測定、(c)水分の測定は以下の方法で行った。(a)食物繊維含有率の測定 「難消化性成分の定量法」(澱粉科学、第37巻、第2号、107頁、平成2年)の改良法により測定した。 サンプル1gを精秤し、水50mlを加えpH6.0とした後、α−アミラーゼ(ターマミル120L,ノボ社製)0.1mlを添加し、95℃で30分反応させた。次に、冷却後、pH4.5に調整し、アミログルコシダーゼ(シグマ社製)0.1mlを添加し50℃で60分反応させた後、90℃まで加熱し反応を終了させた。反応終了液は、ろ過後、グルコースオキシダーゼ法(和光純薬社製測定キット「グルコースCII−テストワコー」使用)にて生成グルコース量を測定した。次の式より食物繊維含有率を求めた。食物繊維含有率(%)=[1−(生成グルコース量×0.9)/サンプル採取量]×100(%)(b)白度の測定 白度は、ケット白度計(ケット科学製)にて測定した。(c)水分の測定 水分は試料約5gを105℃で4時間乾燥し、乾燥前後の試料重量より水分を算出する常圧加熱乾燥法により測定した。参考例1 コーンスターチ(王子コーンスターチ社製)100gに1%塩酸水溶液5mlを噴霧添加し、ヘンシェル型混合機にて20分均一に混ぜ、気流乾燥機で100℃水分5%に乾燥した。次いで、回転するガラス製なす型フラスコに外部から赤外線ヒーターで加熱する焙焼装置(王子コーンスターチ社製)を用いて、150℃で30分加熱反応させ焙焼デキストリンを得た。得られた焙焼デキストリンの食物繊維含有率は65%、白度は62%であった。実施例1 コーンスターチ(王子コーンスターチ社製)750kgに1%塩酸水溶液75Lをフロージェットミキサーにて均一に添加混合し、これをフラッシュドライヤーによって80℃で水分5%となるように乾燥した。次いで、流動層加熱機(王子コーンスターチ社製)を用いて送風循環しながら18分で150℃まで昇温し、150℃で30分加熱反応させた。加熱反応終了後、送風を冷風に切り替えて、更に送風循環を排気に切り替えることにより、10分で120℃まで品温を下げ、焙焼デキストリンを得た。得られた焙焼デキストリンの食物繊維含有率は66%、白度は63%であった。比較例1 実施例1と同条件にて、加熱機としてリボンミキサーを使用した以外は同条件で加熱反応を実施した。加熱反応後、自然冷却にて品温が120℃に下がるまで60分を要し、焙焼デキストリンを得た。その食物繊維含有率は48%、白度は60%であった。 参考例1、比較例1から明らかなように、100g程度の澱粉を焙焼する実験室の小型加熱装置を用いた焙焼では、白度を60%以上に維持しながら食物繊維含有率を55%以上に高くすることは比較的容易であるが、100kg以上の澱粉を一度に加熱処理する工業的な焙焼デキストリンの生産においては、食物繊維含有率を55%以上に高くすることはできても、白度を60%以上に維持することは、極めて困難であることを確認した。実施例2 コーンスターチ(王子コーンスターチ社製)750kgに0.5%塩酸水溶液45Lをフロージェットミキサーにて均一に添加混合し、これをフラッシュドライヤーによって80℃で水分5%となるように乾燥した。次いで、流動層加熱機(王子コーンスターチ社製)を用いて送風循環しながら18分で155℃まで昇温し、155℃で40分加熱反応させた。加熱反応後、送風を冷風に切り替えて、更に送風循環を排気に切り替えることにより、10分で120℃まで品温を下げ、焙焼デキストリンを得た。得られた焙焼デキストリンの食物繊維含有率は55%、白度は75%であった。実施例3 タピオカ澱粉500kgに1%塩酸水溶液30Lをフロージェットミキサーにて均一に添加混合し、これをフラッシュドライヤーによって80℃で水分5%となるように乾燥した。次いで、流動層加熱機(王子コーンスターチ社製)を用いて送風循環しながら18分で150℃まで昇温し、150℃で40分加熱反応させた。加熱反応後、送風を冷風に切り替えて、更に送風循環を排気に切り替えることにより、10分で120℃まで品温を下げ、焙焼デキストリンを得た。得られた焙焼デキストリンの食物繊維含有率は56%、白度は67%であった。 100kg以上の澱粉を加熱処理する工業的規模における焙焼デキストリンの製造において、食物繊維含有率が55%以上であり、かつ白度が60%以上である焙焼デキストリンの製造方法。 食物繊維含有率が60%以上である請求項1記載の焙焼デキストリンの製造方法。 澱粉を酸の存在下、130〜170℃で処理した後、30分以内に120℃以下に冷却することを特徴とする請求項1又は2記載の焙焼デキストリンの製造方法。 流動層加熱機を用いて加熱処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の焙焼デキストリンの製造方法。 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により得られ、食物繊維含有率が55%以上であり、かつ白度が60%以上である焙焼デキストリン。 食物繊維含有率が60%以上である請求項5記載の焙焼デキストリン。 【課題】 食物繊維含有率が55%以上、好ましくは60%以上であり、かつ白度が60%以上である焙焼デキストリンを提供する。【解決手段】 澱粉を加熱処理して得られる焙焼デキストリンにおいて、食物繊維含有率が55%以上であり、かつ白度が60%以上である焙焼デキストリン;及び澱粉を酸の存在下、130〜170℃で処理した後、30分以内に120℃以下に冷却することを含む焙焼デキストリンの製造方法。【選択図】 なし


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