タイトル: | 公開特許公報(A)_パロアッスルを有効成分とするα−グルコシダーゼ阻害剤 |
出願番号: | 2004073672 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K35/78,A61P3/04,A61P3/10,C12N9/99,A23L1/30 |
長谷川 秀夫 JP 2005263629 公開特許公報(A) 20050929 2004073672 20040316 パロアッスルを有効成分とするα−グルコシダーゼ阻害剤 長谷川 秀夫 399031104 株式会社HBLジャパン 500220692 長谷川 秀夫 7A61K35/78A61P3/04A61P3/10C12N9/99A23L1/30 JPA61K35/78 TA61P3/04A61P3/10C12N9/99A23L1/30 B 2 1 OL 7 4B018 4C088 4B018MD94 4B018ME03 4B018ME04 4C088AB26 4C088AC05 4C088AC13 4C088BA07 4C088BA10 4C088CA05 4C088CA06 4C088MA43 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZC35本発明は、α−グルコシダーゼ(二糖類加水分解酵素)の活性を阻害し、蔗糖あるいは澱粉より生じるオリゴ糖類の消化を不活発にし、その結果、肥満症・高血糖症の予防ならびに改善作用を有するパロアッスル(Palo azul:学名Cyclolepis genistoides Don.キク科)に関する。より詳細には、該植物の粉末及び/又は抽出エキスを有効成分として含有してなることを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤並びにその製造法に関する。炭水化物のうちで蔗糖と澱粉は人体に摂取される割合が最も多く、全体の80%になるといわれている。人体に摂取された蔗糖は、途中の消化器官で分解されずに小腸に達し、一方、澱粉は唾液や膵液中のα−アミラーゼによりマルトース(麦芽糖)およびイソマルトースに加水分解されて小腸に達する。蔗糖やマルトース、イソマルトースなどの二糖類もしくはその他のオリゴ糖類は、小腸粘膜刷子縁に存在するα−グルコシダーゼの作用により単糖類に加水分解され、小腸壁で吸収される。前記α−グルコシダーゼは、多糖類を構成する糖類の非還元末端のα−グルコシド結合を加水分解する酵素の総称であり、マルトースやマルトオリゴ糖類を単糖類に加水分解するマルターゼや、蔗糖およびイソマルトースを単糖類に加水分解するスクラーゼ−イソマルターゼ複合体などを含む。α−グルコシダーゼ阻害剤は、小腸粘膜刷子縁に存在するマルターゼやスクラーゼなどの活性を阻害し、食後の血糖値の急激な上昇およびそれに続くインスリン値の急激な上昇を抑制することが知られている(例えば、特開昭52-122342号公報、特開昭57-200335号公報、特開昭57-59813号公報参照)。近年、先進諸国において栄養過多等の原因によると思われる種々の成人病が増加している。これら成人病の中には、デンプン等の過剰摂取による血糖上昇が誘因となって起こるものが多くあり、糖尿病や肥満症等を挙げることができる。一般にこのような疾患の治療は、食餌療法が主体となるが、患者にとっては精神的にかなり負担となり、加えてカロリー計算等にも配慮しなければならず大変である。以上のような問題点を解決すべく、日本人の食生活の中心である米・うどん等のデンプン食品を食べる際に、前述のα−グリコシダーゼ阻害物質を利用して澱粉の消化を阻害し、体内への糖質の供給を抑制しようとする方法が考えられている。上述のα−グリコシダーゼ阻害物質は過剰なエネルギーの供給を抑制するので糖尿病や肥満症の予防、治療に有効である。α−グルコシダーゼ阻害物質に関する研究は古くから行われ、放線菌より分離した疑似単糖系物質または疑似オリゴ糖系物質が数多く報告されている。一例として、アカルボースならびにボグリボースが挙げられる(Progress in Clinical Biochemistry and Medicine,77-99,1988)。ところで、パロアッスルは、南米大陸の内陸部にあるパラグアイ共和国で、チャコと呼ばれる人里離れた奥地に自生している多年生の植物である。パロアッスルは、現地語で「青い枝」を意味する。現地で「青い枝」と呼ばれている植物に、もう1種分類学的に異なるHaemotoxylon campechanum L.(マメ科)が存在する。パロアッスルはもともとは原住民バラニー族の伝承薬である。近年、本発明者によって糖尿病に効果があることが確認された(特願2003−428523)。しかし、パロアッスルがα−グルコシダーゼ阻害活性を有することは、未だ報告されていない。これまでインスリン非依存型糖尿病(略語:NIDDM)用の経口糖尿病治療薬としてアカルボースやボグリボースが従来から用いられてきた。しかし、医薬品として用いられるアカルボースやボグリボースは阻害作用が強いため、その投与量は極めて少量でかつ厳密性が要求される。上述した阻害剤の具体的な投与量は例えば経口投与の場合には1回当たり50〜150mg、また食品素材に添加して使用する場合には全炭水化物含量の約0.005%である。投与量が多いと阻害剤の作用によって小腸で分解吸収されなかった糖類が大腸で発酵し、腹部膨満、放屁の増加、軟便、下痢などの副作用を引き起こすことが多くなり、特にアカルボースは肝機能障害を起こしたり、劇症肝炎で死亡者も出ているという副作用の報告もあり、安全性にかなり問題がある。したがって、アカルボースやボグリボースは極めて少ない投与量でα−グルコシダーゼの活性を阻害するので、投与量を厳密に管理できる医薬品としての価値は高いが、その反面、使用量にさほど厳密さが要求されない食品への添加は前記副作用の恐れがあることから適当ではない。以上のように、α−グルコシダーゼ阻害剤は炭水化物(特に、澱粉由来のオリゴ糖、ショ糖等)の代謝を抑制するため、血糖上昇抑制作用を示し、過血糖症状及び過血糖に由来する肥満症など種々の疾患の改善に有用である。また、α−グルコシダーゼ阻害剤を添加して製造した飲食物は、代謝異常の患者食として、さらに代謝異常予防食として健康な人にも適している。従って、本発明の目的は、毎日飲食することにより肥満症・高血糖症の予防及び改善が可能となり、かつ、生体に安全なα−グルコシダーゼ阻害剤を提供することにある。本発明者は、上記課題を解決すべく、人体への安全性が高く、飲食後などにおける高血糖状態におけるインシュリン過剰分泌の繰り返しによる障害の発生を避けるため、資源的に豊富に存在する植物を基源とする天然薬物についてα−グルコシダーゼ阻害剤を鋭意検索した。その過程において、パロアッスル抽出エキス中に安全性及び有効性に優れ、肥満症・高血糖症の予防及び改善に有用なα−グルコシダーゼ阻害物質を見いだし、本発明を完成した。すなわち、本発明は、パロアッスルの粉末及び/又は抽出エキスを有効成分として含有してなることを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤並びにその製造法を提供するものである。本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、パロアッスルの粉末及び/又は抽出エキスを有効成分として含有してなることを特徴とする。本発明におけるパロアッスルは、パラグアイ共和国では地上部(葉および枝等)を乾燥させたものがお茶として飲まれている。現地では、伐採したパロアッスルの地上部を細断して天日乾燥させたものを約1〜1.5リットルの水に6〜12gを入れ、10分程度煮出す形で飲まれている。しかし、本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤に使用するパロアッスルは、根茎などの地下部ならびに葉および枝などの地上部等、すべての部位を利用することができる。当該植物を粉末として用いる場合は、採取したパロアッスルを、洗浄後生のまま、あるいは乾燥・焙煎してから粉砕機等で粉砕することにより、100〜1000メッシュ、好ましくは200〜500メッシュの粉末として調製することができる。また、抽出エキスとして用いる場合は、パロアッスルを、洗浄後生のまま、あるいは・焙煎してから粉砕して、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、ブタノール等)又はこれらの混合物などの溶媒により加熱又は冷浸して得ることができる。溶媒は、植物に対して2〜10重量倍程度、好ましくは2〜5重量倍程度で使用することが適当である。また、40〜100℃程度に、1〜10時間程度加熱するか、10〜35℃程度の冷浸温度にて、振盪下又は非振盪下に、植物を1〜10日間程度浸漬することによって抽出エキスを調製することができる。得られた抽出エキスは、濃縮して用いてもよい。濃縮は、低温減圧下で行うことが好ましい。また、この濃縮は乾固するまで行ってもよい。この場合、凍結乾燥あるいは減圧噴霧乾燥がより好ましい。なお、濃縮する前に濾過し、濾液を濃縮してもよい。また、得られた抽出エキスは、精製処理に付してもよい。精製処理方法としては、クロマトグラフ法、イオン交換樹脂を使用する溶離法等を単独又は組み合わせて使用する方法が挙げられる。例えば、クロマトグラフ法としては、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、遠心液体クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等のいずれか又はそれらを組み合わせて使用する方法が挙げられる。この際の担体、溶出溶媒等の精製条件は、各種クロマトグラフィーに対応して適宜選択することができる。例えば、順相クロマトグラフィーの場合にはクロロホルムーメタノール系の溶媒、逆相クロマトグラフィーの場合には、水ーメタノール系の溶媒を使用することができる。また、イオン交換樹脂を使用する溶離法としては、得られた抽出液を、水又は低級アルコールに希釈/溶解させ、この溶液をイオン交換樹脂に接触させて吸着させた後、低級アルコール又は水で溶離する方法が挙げられる。この際に使用される低級アルコールは、上述した通りであり、なかでもメタノールが好ましい。イオン交換樹脂としては、通常、当該分野の精製処理に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、巨大網状構造で多孔性の架橋されたポリスチレン系樹脂、アーバンライト、セルローズ等が挙げられる。本発明におけるパロアッスルの粉末及び/又は抽出エキスは、医薬的に受容な塩、賦形剤、保存剤、着色剤、矯味剤等とともに、医薬品又は食品の製造分野において公知の方法によって、顆粒、錠剤、カプセル剤等の種々の形態で使用することができる。また、本発明におけるパロアッスルの粉末及び/又は抽出エキスは、健康食品に利用することができる。健康食品とは、通常の食品よりも積極的な意味で、保健、健康維持・増進等の目的とした食品を意味し、例えば、液体又は半固形、固形の製品、具体的には、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、栄養飲料、スープ等が挙げられる。また、そのまま煎じて茶剤としてもよい。これらの食品の製造工程において、あるいは最終製品に、上記の粉末あるいは抽出エキスを混合又は塗布、噴霧などして添加して、健康食品とすることができる。本発明におけるパロアッスルの粉末及び/又は抽出エキスの使用量は、年齢、症状等によって異なるが、例えば、予防のために用いるには、成人1回につき粉末では1500〜2500mg程度、抽出エキスでは精製の度合いや水分含量等に応じて200〜500mg程度が挙げられ、食前30分位に1日3回服用するのが望ましい。また、健康食品としての使用時には、食品の味や外観に悪影響を及ぼさない量、例えば、対象となる食品1kgに対し、粉末及び抽出エキスの形態で、1〜10g程度の範囲で用いることが適当である。次に実施例および参考例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。(パロアッスルエキス末の製造1)パロアッスルの地上部を前記先行文献(特許文献4)記載の製造法に従って遠赤外焙煎茶とした。該焙煎茶1.0kgを95℃の熱水で2時間抽出した後、品温50℃以下で凍結乾燥した(収量175g,収率17.5%)。さらに該凍結乾燥物を粉砕し、84メッシュの篩を通過させてエキス末170gを得た。このエキス末は、黄褐色の粉体で特有の匂いがあり、味は塩気があった。その成分内訳は、財団法人日本分析センターによる分析の結果(第103061789-001号)、水分(2.3g/100g)、タンニン(7.29g/100g)であった。(パロアッスルエキス末の製造2)パロアッスルの地上部10.0kgを95℃の熱水で2時間3回抽出した。該抽出液を濾過した後、液温50〜55℃で減圧濃縮し、濃縮物4.100kgを得た(そのうち固形分1.667kg,収率16.8%)。さらに該濃縮物4.100kgにデキストリン0.419kgおよび水2.431kgを添加し、減圧噴霧乾燥してエキス末1.985kgを得た。このエキス末は、薄黄色の粉体で特有の匂いがあり、味は塩気があった。その成分内訳は、財団法人日本分析センターによる分析の結果(第104030573-001号)、タンニン(6.45g/100g)、ナトリウム(5.95g/100g)であった。(パロアッスルエキス末のα−グルコシダーゼ阻害活性)実施例1で製造したエキス末を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、4mg/mLのサンプル原液を調製した。適宜に希釈したサンプル溶液0.05mLにリン酸緩衝液で調製した麦芽糖あるいは蔗糖溶液(1g/dL)を0.1mL加え温浴(37℃)で3分間予備加温した。そこに酵素液(7U/mL)を0.05mL添加し、温浴(37℃)で2時間反応した。加熱失活後、生成したグルコース量をトーセンサー(松下寿電子工業株式会社製)で測定した。酵素阻害率は、パロアッスルエキス末無添加の反応における生成グルコース量をコントロール(C)とし、パロアッスルエキス末添加反応における生成グルコース量をサンプル(S)とし、計算式:酵素阻害率(%)=(C−S)/C×100で求めた。その結果、実施例1で製造したパロアッスルエキス末は図1に示すように濃度依存的にマルターゼおよびスクラーゼ活性を阻害した(50%阻害濃度はそれぞれ0.20mg/mLおよび0.71mg/mL)。パロアッスルエキス末の1日摂取量は1200mgである。これを3回に分けて1回熱水200mLに溶かして飲用とする場合の濃度は2000μg/mLとなり、マルターゼおよびスクラーゼ活性を阻害するのに十分な濃度といえる。(α−グルコシダーゼ阻害剤の製造)日常生活での簡便性を考慮し、パロアッスルエキス末の錠剤を製造した。錠剤は1錠300mgとし、その製剤処方は実施例1で製造したパロアッスルエキス末170.0mg、乳糖114.0mg、ナタネ硬化油7.5mg、ショ糖エステル7.5mg、セラック1.0mgとした。このようにして得られたパロアッスルエキス末錠は、パロアッスルを煎じて茶剤として飲用とするよりはるかに飲みやすいものになった。実施例4で製造したα−グルコシダーゼ阻害剤の成分内訳は、財団法人日本分析センターによる分析の結果(第103120903-001および第103120903-002号)、水分(4.2g/100g)、たんばく質(3.9g/100g)、脂質(5.5g/100g)、灰分(14.2g/100g)、炭水化物(67.9g/100g)、食物繊維(9.9g/100g)、エネルギー(337kcal/100g)、タンニン(4.33g/100g)、ナトリウム(2.71g/100g)、リン(167mg/100g)、鉄(61.7mg/100g)、カルシウム(735mg/100g)、カリウム(1.07g/100g)、マグネシウム(161mg/100g)、銅(844μg/100g)、亜鉛(1.63mg/100g)、マンガン(2.18mg/100g)であった。(参考例1:α−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用)インスリン非依存型糖尿病患者12名に対する本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤の血糖降下作用を検討した。この際の用量は、実施例4で製造したパロアッスルエキス末錠を1日7錠(パロアッスルエキス末換算で1190mg)服用してもらう形で行った。2ヶ月間服用の結果、図2に示すように12名全員に対して血糖値(健常者:空腹時110mg/dL以下)の低下が統計学的に有意差(p<0.02)をもって認められ、その平均値は服用の前後で74mg/dL減少した。(参考例2:α−グルコシダーゼ阻害剤による体重減量効果)肥満症4名に対する本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤の体重減量効果を検討した。この際の用量は、実施例4で製造したパロアッスルエキス末錠を1日7錠(パロアッスルエキス末換算で1190mg)服用してもらう形で行った。2ヶ月間服用の結果、図3に示すように4名全員に対して体重の減量が認められ、服用の前後で最大7kgの減量が観察された。本発明によれば、パロアッスルが有するα−グルコシダーゼ阻害作用によって、高血糖症および肥満症の顕著な改善が観察された。このように、本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、毎日安全に摂取するが可能で、肥満症・高血糖症の予防及び改善に極めて有用である。パロアッスルエキス末のα−グルコシダーゼ阻害活性を示した説明図である(実施例3)。本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤による血糖降下作用を示した説明図である(参考例1)。本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤による体重減量効果を示した説明図である(参考例2)。パロアッスル(Palo azul:学名Cyclolepis genistoides Don.キク科)の粉末及び/又は抽出エキスを有効成分として含有してなることを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤。請求項1に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤の製造法。 【課題】α−グルコシダーゼ(二糖類加水分解酵素)活性に対する優れた阻害作用を示し、かつ安全に食品素材に用いることができる天然の食品成分であるα−グルコシダーゼ阻害剤を提供する。【解決手段】パロアッスル(Palo azul:学名Cyclolepis genistoides Don.キク科)の粉末及び/又は抽出エキスを有効成分として含有してなることを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤。【選択図】図1