タイトル: | 公開特許公報(A)_ネオマイシン耐性遺伝子及びそれを用いて形質転換株を選択する方法 |
出願番号: | 2004059549 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N15/09,C12N1/19 |
長岡 哲也 JP 2005245289 公開特許公報(A) 20050915 2004059549 20040303 ネオマイシン耐性遺伝子及びそれを用いて形質転換株を選択する方法 株式会社カネカ 000000941 安富 康男 100086586 野田 慎二 100115141 長岡 哲也 7C12N15/09C12N1/19 JPC12N15/00 AC12N1/19 6 OL 10 4B024 4B065 4B024AA03 4B024AA11 4B024AA20 4B024BA10 4B024CA02 4B024CA03 4B024CA20 4B024DA12 4B024EA04 4B024FA02 4B024FA07 4B024FA10 4B024GA14 4B024GA25 4B024GA27 4B024GA30 4B024HA20 4B065AA26Y 4B065AA73X 4B065AB01 4B065AC14 4B065AC20 4B065BA02 4B065BA03 4B065BA16 4B065BA30 4B065CA29 4B065CA46本発明は、同種或いは異種遺伝子を導入して形質転換する際に利用される選択マーカーの一つであるネオマイシン耐性遺伝子、及び、当該遺伝子を用いて形質転換株を選択する方法に関する。遺伝子組換え技術の発展に伴い、微生物を用いて有用蛋白質、有用化学品等の生産が行われてきた。原核生物である大腸菌や枯草菌を用いた遺伝子組換え系の開発が積極的に進められ、その中でも、特に大腸菌の宿主・ベクター系を用いて様々な有用物質の生産が行われている。しかし、大腸菌において生産される蛋白質は菌体内で不溶性顆粒を形成することもあり、また、真核生物において特徴的な糖鎖付加を行うことができないなどの問題もあった。これに対して真核生物である酵母を宿主とした系の開発も進められた。酵母は古くから醸造や製パンに利用されており、またかつて飼料用として生産された経緯もあり、高い安全性が保証されているものもある。また、生産される蛋白質に糖鎖付加を行うことも原核生物とは区別される特徴である。遺伝学的知見が豊富なサッカロマイセス・セレビジェの他、シワニオマイセス属、クルイベロマイセス属、ピキア属、ハンセヌラ属、ヤロウィア属、キャンディダ属において、宿主・ベクター系が開発されている(非特許文献1参照)。これらの酵母の中には、直鎖炭化水素(n−アルカン)が唯一の炭素源であっても生育できるものがある。キャンディダ属のキャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)などや、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)などである。これらの酵母はn−アルカンの末端を酸化する酵素系をもち、酸化によって生じた長鎖カルボン酸を、ペルオキシソームのβ酸化系によってクエン酸回路(TCAサイクル)の基質となるアセチル−補酵素A(アセチル−CoA)にまで分解し、エネルギー源として利用することができる。n−アルカン資化性酵母は直鎖炭化水素を炭素源として生育するばかりでなく、通常は酵母の生育を阻害する疎水性化学物質に耐性であり、疎水性化学物質の変換による有用物質の生産・反応の場を提供する宿主としても有望である。例えばキャンディダ属菌株が、アルカンを資化してジカルボン酸を生産するために用いられている(非特許文献2参照)。したがって、このような酵母における遺伝子発現系を構築することによって、有害な副産物を生み出さず、エネルギーを浪費しない、新たな有用物質生産系を構築することができる。n−アルカン資化性酵母のうちキャンディダ・マルトーサにおいても、外来遺伝子発現系の構築が積極的に行われてきた。M.Kawamuraらは、キャンディダ・マルトーサより高効率形質転換の原因領域(Transformation ability:以下TRAと略す)を見出した(非特許文献3参照)。この領域にはキャンディダ・マルトーサにおいて自律的複製に関わる配列(Autonomously replicating sequence:以下ARSと略す)およびセントロメア配列(以下CENと略す)を含んでいることが判った。現在までに TRA全領域を有する低コピーベクターと、CEN領域を除いた高コピー数ベクターが開発されている(非特許文献4参照)。キャンディダ属酵母の形質転換システムとしては、ウラシル要求性やアデニン要求性等の栄養要求性を形質転換体の選択マーカーとして用いる方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、キャンディダ属酵母は、サッカロマイセス・セレビジェとは異なり有性世代が知られておらず、多くは2倍体ゲノムを有しているため、栄養要求性株を作出するのが難しく、既存の有用物質生産酵母を容易に形質転換できないといった問題点があった。一方、パン酵母をはじめとするいくつかの酵母では、抗生物質耐性を選択マーカーに利用した形質転換が知られている(非特許文献5、6及び特許文献2参照)。抗生物質耐性を選択マーカーとして利用する形質転換方法は、宿主が制限されないといった利点があり、非常に有効且つ簡便な方法である。しかし、例えばサッカロマイセス属酵母で選択マーカーとして用いられる蛋白質合成阻害剤であるシクロヘキシミドは、その作用点であるリボソーマル蛋白質のアミノ酸配列が異なるキャンディダ属酵母においては、抗菌活性を示さないことが知られている(非特許文献7参照)。また、キャンディダ属酵母の中にはその遺伝暗号読みとりに異常があることも報告されている(非特許文献8参照)。例えば、キャンディダ・シリンドラッセ(非特許文献9参照)やキャンディダ・マルトーサ(非特許文献10参照)は、通常ロイシンをコードするCTGコドンをセリンとして読むことが報告されている。このように、キャンディダ属酵母はサッカロマイセス・セレビジェとは大きく異なる性質を有しているといえるため、サッカロマイセス・セレビジェで利用可能な抗生物質耐性遺伝子がキャンディダ属酵母内では正常な機能を示さないことが多い。CTGのロイシンコドンをそれ以外のコドンに改変した遺伝子により、キャンディダ・トロピカリスでハイグロマイシン耐性の形質転換株を選択する方法が示されている(特許文献3参照)。しかしながら、そのハイグロマイシン耐性度は、培地中のハイグロマイシンの濃度が500μg/ml以上の高濃度でしか利用できない。また、形質転換に使用される遺伝子は、操作上からも遺伝子の導入頻度上からもできるだけ短い遺伝子であることが望ましいが、ハイグロマイシン耐性遺伝子は1000塩基以上である。特表平4−505557号公報特開平8−322578号公報特開2000−342263号公報Klaus Wolf著,Nonconventional Yeasts in Biotechnology,Springer出版,1996年植村、発酵と工業、1985年発行、43、436〜441頁M.Kawamura,et al.,Gene,(1983),vol24,157M.Ohkuma,et al.,Mol.Gen.Genet.,(1995),vol249,447Gritz,L.ら,Gene,1983,25,179−188Otero,R C.ら,Appl.Microbiol.Biotechnol.,1996,46,143−148H.Takakuら,Biochem.Biophys.Res.Commun.,(2001),284,194Masseyら,Genome Res.,(2003),13,544Y.Kawaguchi,et al.,Nature,(1989),vol341,164H.Sugiyama,et al.,Yeast,vol11,(1995),43本発明の目的は、酵母でも選択マーカーとして利用できるネオマイシン耐性遺伝子及びその発現によるゲネチシン耐性を利用することにより、酵母の形質転換株を選択する方法を提供することである。本発明者は、動植物細胞における形質転換の選択マーカーとして広く利用されているネオマイシン耐性遺伝子をキャンディダ属酵母の形質転換時の選択マーカーとして利用することを検討したが、キャンディダ・マルトーサではその機能を発現させることが出来なかった。上記課題を解決するための手段としての本発明は、CTGコドンをCTG以外のロイシンコドンに改変したネオマイシン耐性遺伝子、前記ネオマイシン耐性遺伝子発現カセット、及び、同発現カセットを含有する発現ベクターに関するものである。すなわち本発明は、配列番号1に記載の配列の内、少なくとも1つ以上のCTGコドンをCTG以外のロイシンコドンに改変したネオマイシン耐性遺伝子である。本発明は、また、配列番号2に記載のネオマイシン耐性遺伝子である。本発明は、また、上記遺伝子の発現カセットを含有する発現ベクターである。本発明は、また、上記遺伝子の発現カセットを用いて酵母を形質転換した後に、ネオマイシン、ゲネチシン及び/又はG418を添加した培地を用いて形質転換後の菌体を培養することにより、酵母の形質転換株を選択する方法である。以下に本発明を詳細に説明する。本発明にいうネオマイシン耐性遺伝子とは、ネオマイシン、ゲネチシン或いはG418をリン酸化して無毒化するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Neomycin Phosphotransferase)酵素をコードしている遺伝子であるため、この酵素が機能するとアミノグリコシド系抗生物質であるネオマイシン、ゲネチシン及びG418に対して耐性が発現する。ネオマイシン耐性遺伝子としては、特には、大腸菌由来のものが好適である。大腸菌由来のネオマイシン耐性遺伝子の塩基配列を、配列番号1に示す。この塩基配列には、11カ所にCTGコドンが存在しており、本発明の遺伝子は、配列番号1に記載の配列の内、少なくとも1つ以上のCTGコドンを他のロイシンコドン、すなわち、TTA、TTG、CTT、CTC又はCTAのいずれかで改変したものである。好ましくは全てのCTGコドンを改変したものである。また、配列番号1に記載のアミノ酸配列のみを、配列番号5に示す。これらのコドン変換は、いずれを用いても全く支障はないが、例えば宿主がキャンディダ・マルトーサの場合、コドンの使用頻度からTTA、TTGが好ましく、TTAコドンが特に好ましい。キャンディダ・マルトーサにおける各コドンの使用頻度はKlaus Wolf著のNonconventional Yeasts in Biotechnology(Springer出版、1996年)に記載されている。本発明のネオマイシン耐性遺伝子は、配列番号1に記載の配列の内、少なくとも1つ以上のCTGコドンを他のロイシンコドンに改変したものであれば、CTG以外のコドンを改変していないものであってもよいし、CTG以外のコドンをそのコドンと同じアミノ酸をコードするコドンに改変したものであってもよい。後述の実施例2で得られる配列番号2に示す塩基配列は、本発明の遺伝子の一つである。本発明のネオマイシン耐性遺伝子は、発現することによりネオマイシン、ゲネチシン及びG418への耐性が機能する。従って、本発明のネオマイシン耐性遺伝子を含むベクターを用いて形質転換された酵母のみがネオマイシン、ゲネチシン及び/又はG418を含む培地中で生育するので、形質転換されていない酵母と選別することができる。上記ネオマイシン耐性遺伝子は、ベクター上のプロモーターとターミネーターとの間に挿入し、得られたベクターをキャンディダ属等の酵母に導入して酵母を形質転換させる。この場合のベクターとしては、通常用いられているベクターでも特に支障なく用いることができる。特には、自律複製可能なキャンディダ属酵母用のpUTA1等のプラスミドを改変して(特開2002−209574号公報に記載)用いると良い。本発明の発現ベクターは、配列番号1に記載の配列の内、少なくとも1つ以上のCTGコドンをCTG以外のロイシンコドンに改変したネオマイシン耐性遺伝子、又は、配列番号2に記載のネオマイシン耐性遺伝子の発現カセットを含有することを特徴とするものである。本発明において、上記発現カセットは、プロモーター、ネオマイシン耐性遺伝子、ターミネーター等からなるものを意味する。本発明のネオマイシン耐性遺伝子は、酵母内でプラスミドとして存在させず、相同的組換えを利用して染色体DNA(gDNA)に組み込む事も可能である。その場合には、塩基配列が既知の適当な配列、特にはADE1遺伝子やURA3遺伝子等の配列内部にプロモーター及びターミネーターを連結したネオマイシン耐性遺伝子を用いればよい。転写活性の低いプロモーター或いは酵素活性を低下させたネオマイシン耐性遺伝子を用いれば、選択するゲネチシン濃度により、gDNAに多コピー数で組み込まれた形質転換株を選択することも可能である。本発明の酵母の形質転換株を選択する方法は、配列番号1に記載の配列の内、少なくとも1つ以上のCTGコドンをCTG以外のロイシンコドンに改変したネオマイシン耐性遺伝子、又は、配列番号2に記載のネオマイシン耐性遺伝子の発現カセットを用いて酵母を形質転換した後に、ネオマイシン、ゲネチシン及び/又はG418を添加した培地を用いて形質転換後の菌体を培養することを特徴とするものである。次に、酵母としてキャンディダ属酵母を用いる場合を例に挙げ、本発明によるCTGコドンを改変することにより、キャンディダ属酵母でも発現するようになったネオマイシン耐性遺伝子と、そのネオマイシン耐性遺伝子を利用したキャンディダ属酵母の形質転換株取得方法の実施態様を説明する。ネオマイシン耐性遺伝子の改変は、polymerase chain reaction(PCR)法によってもコドンの改変を行うことができるが、その改変した配列の遺伝子を全合成することも可能である。このコドンの改変がうまく行われたかどうかは、シークエンスを行って確認するとよい。キャンディダ属酵母でネオマイシン耐性遺伝子を発現させるための発現カセットは、次のように作製することができる。ネオマイシン耐性遺伝子は、酵母以外の細菌由来の遺伝子であり、そのままでは酵母細胞で発現しないことが多い。このためキャンディダ属酵母由来のプロモーターとターミネーター領域を利用することが好ましい。キャンディダ属酵母由来のプロモーターとしては、例えば、L41P1b遺伝子プロモーター、アクチン遺伝子プロモーター、Alk1遺伝子プロモーター等が挙げられ、キャンディダ属酵母由来のターミネーターとしては、例えば、Alk1遺伝子ターミネーター、GCN4遺伝子ターミネーター等が挙げられる。一例としてL41P1b遺伝子プロモーターの使用例を示す。リボソーマル蛋白L41P1b遺伝子のプロモーターは、炭素源の種類にかかわらず構成的に転写する強力なプロモーターであることが知られている。L41P1b遺伝子は、パン酵母やキャンディダ・マルトーサで既にクローニングされているので、そのプロモーター領域もこれらの配列をもとにPCR法でクローニングすることができる(Kawai,S.ら、J.Bacteriol,174(1),254−262,1992)。PCR法で増幅されたL41P1b遺伝子は、ベクターにサブクローニング後、シークエンスし、L41P1bプロモーター領域遺伝子かどうか確認する。次に、制限酵素部位へネオマイシン耐性遺伝子断片を挿入し、キャンディダ属酵母用の選択マーカーとしてネオマイシン耐性遺伝子発現カセットを作製することができる。このようにして作製したネオマイシン耐性遺伝子発現カセットを、キャンディダ属酵母用のベクターに導入する。作製したベクターは、大腸菌に導入後、大量調製して、キャンディダ属酵母の形質転換に用いる。キャンディダ属酵母の形質転換法として、一般に用いられているリチウム法、スフェロプラスト法、電気導入法等を本発明でも用いることができる。これらの方法は、形質転換効率や操作の煩雑さ等に若干の違いがあるが、いずれの方法でも効率よく形質転換できる。ネオマイシン、ゲネチシン及び/又はG418による形質転換株の選択は、本発明の遺伝子の発現カセットを用いて酵母を形質転換した後に、通常酵母の培養で用いられるYPDプレート(1w/v%酵母エキス、2w/v%ペプトン、2w/v%グルコース、2w/v%寒天)にネオマイシン、ゲネチシン及び/又はG418を添加した培地を用いて形質転換後の菌体を培養することにより、直接行うことができる。ゲネチシンを用いる場合、培地中のゲネチシンの濃度は、200μg/ml〜20mg/mlが好ましい。培養温度は、20〜40℃が好ましく、培養時間は、24〜96時間が好ましい。また、ベクターとしてpUTA1を用いた場合には、アデニン要求性を一次選択マーカーとしてYNBプレート(0.67w/v%アミノ酸不含の窒素ベースの酵母、2w/v%グルコース、2w/v%寒天)で形質転換株を選択し、次に得られた形質転換株をゲネチシン含有YPDプレートに引き延ばし、ネオマイシン耐性遺伝子の発現を確認することもできる。ネオマイシン耐性遺伝子は、その長さが800塩基以下と比較的短く、ハイグロマイシン耐性遺伝子が1000塩基以上あるのに対し、操作上、遺伝子の導入頻度上等から有利である。また、ハイグロマイシン耐性を利用した場合は、ハイグロマイシン濃度が500μg/ml以上と高濃度でしか形質転換株を選択できないが、ネオマイシン耐性を利用した本発明の方法では、キャンディダ・マルトーサにおいては200μg/mlの濃度で選択可能であるので、この点でも有利である。本発明の方法において、酵母の種類としては特に限定されないが、キャンディダ属が好ましい。上記キャンディダ属のなかでも、キャンディダ・シリンドラッセ、キャンディダ・トロピカリス、キャンディダ・マルトーサ、キャンディダ・アルビカンス、キャンディダ・ルシタニエ、キャンディダ・メリビオシカが好ましく、キャンディダ・マルトーサがより好ましい。本発明により、宿主側に予め何ら栄養要求性などを付与せずに形質転換を行うこと、すなわち形質転換株を選択することが可能になり、野生株や有用物質生産株に対しても遺伝子組換えによる育種を容易に行うことが可能になる。以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、これら実施例にその技術範囲を限定するものではない。(実施例1)ゲネチシン感受性の確認YPD液体培地で一晩培養した、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託されているキャンディダ・マルトーサAC16(アデニン要求性)株(受託日:平成12年11月15日、受託番号:FERM BP−7366、特開2002−209574号公報)の培養液を、同培地で10万分の1に希釈後、その0.1mlをそれぞれ、ゲネチシン不含、ゲネチシン濃度100μg/ml、ゲネチシン濃度200μg/mlの3種のYPDプレートにまいた。30℃で3日間培養後、観察したところ、ゲネチシンが入ってないプレートには、約454個のコロニーが出現した。また、100μg/mlの濃度でゲネチシンを含むプレートには、約100個のコロニーが出現した。それに対し、200μg/mlのゲネチシンを含むプレートでは、コロニーは観察されず、完全にコロニー形成が抑制された。これにより、ゲネチシンがキャンディダ・マルトーサの生育を抑制し、ゲネチシン耐性を発現する遺伝子がキャンディダ属酵母の形質転換の選択マーカーとして利用できる可能性が明らかとなった。(実施例2)キャンディダ属酵母用ネオマイシン耐性遺伝子の全合成配列番号1に示した大腸菌由来のネオマイシン(Neo)耐性遺伝子のアミノ酸配列が変化しないように、キャンディダ・マルトーサ細胞内でネオマイシンホスホトランスフェラーゼ蛋白質が機能するようにその塩基配列を設計し、全合成を行った。設計にあたり、キャンディダ・マルトーサにおける各コドンの使用頻度はKlaus Wolf著のNonconventional Yeasts in Biotechnology(Springer出版、1996年)に記載されているので、それを参考にCTGコドンをTTA或いはTTGを中心に改変して設計した。改変したネオマイシン耐性遺伝子(以下CmNeoと略す)の5‘末端側は開始コドンATGが含まれるように制限酵素NdeI部位とし、3’側は停止コドンTAAの下流が制限酵素PstI部位となるようにした。その塩基配列を配列番号2に示した。また、配列番号2に記載のアミノ酸配列のみを、配列番号6に示した。(実施例3)L41P1b遺伝子プロモーター領域のクローニングCmNeo遺伝子の発現に用いるキャンディダ・マルトーサ由来のL41P1b遺伝子(GenBank D10577)プロモーター領域は以下のようにしてクローニングした。キャンディダ・マルトーサの染色体DNAは市販のE.Z.N.A.Yeast DNA Kits(OMEGA BIOTEK社製)を用いて調製した。調製方法は、同Kitに付属する説明書に従った。分離した染色体DNAをPCRの鋳型とし、配列番号3及び配列番号4のDNAをプライマーとしてPCRを行った。酵素はTaKaRa Ex Taq ポリメラーゼ(宝酒造製)を用いた。その条件は、同Kitに付属する説明書に従ったが、詳しくは、鋳型DNA1μg、それぞれ終濃度1μMの2種類のプライマー、2.5UのEx Taq ポリメラーゼ、付属するBufferを0.01ml、付属するdNTP混合液0.008mlに水を加えて0.1mlとした。これを、98℃15秒−55℃1分−72℃1分を1サイクルとして25サイクルのPCRを行って、約0.8kbのL41P1b遺伝子プロモーター領域断片を増幅させた。この断片のシークエンスを行い、L41P1b遺伝子プロモーター領域断片であることを確認した。(実施例4)CmNeo耐性遺伝子発現カセット及びそれを含む発現ベクターの構築キャンディダ・マルトーサで機能するCmNeo耐性遺伝子発現カセットを構築するため、5‘上流側にプロモーターとして実施例3でクローニングしたL41P1bプロモーターを、3’下流側にターミネーターとしてキャンディダ・マルトーサ由来のAlk1遺伝子(GenBank D00481)ターミネーター(以下Alk1tと略す)を連結した。キャンディダ・マルトーサ由来のAlk1遺伝子プロモーター及びターミネーターが挿入されたpUAL1(WO01/88144)をEcoRIで切断後、平滑末端化しライゲーションを行うことによりEcoRI切断部位を除去したpUAL2を作成した。pUAL2をPvuII/PvuIで切断し、pSTV28(宝酒造社製)のSmaI/PvuIサイトに結合させpSTV―ALK1を作成した。このpSTV―ALK1をEcoRI/NdeIで切断し、先に述べたL41P1b遺伝子プロモーターと結合させ、pSTV−L41を作成した。その構築方法の模式図を図1に示した。次に実施例2で示したCmNeo遺伝子をNdeI/PstIで切り出してpSTV−L41のNdeI/PstIに挿入してpSTV−L41−CmNeoを構築した。最終的にCmNeo遺伝子を発現させるベクターにはpUTA1(WO01/88144に記載)を使用した。pSTV−L41−CmNeoより、SalI/XhoIでCmNeo遺伝子発現カセットを切り出し、pUTA1のSalIサイトに挿入しpUTA−L41−CmNeoを構築した。その構築方法の模式図を図2に示した。(実施例5)キャンディダ・マルトーサAC16株の形質転換酵母菌の培養用に使用した試薬は、特に断らない限り和光純薬から販売されているものを用いた。宿主には、ADE1遺伝子破壊株であるキャンディダ・マルトーサAC16株(FERM BP−7366)を使用し、上記の本発明の遺伝子発現カセットを含むpUTA−L41−CmNeo発現ベクターを導入した。宿主に構築したプラスミドを導入する方法は、電気導入法で行った。遺伝子導入装置はBTX社製のELECTRO CELL MANIPULATOR 600を用いた。キュベットはBIO MEDICAL CORPORATION製のBM6200を用いた。コンピテント細胞100μlにプラスミド1μlに加え、調製したコンピテント細胞/プラスミド溶液を100μl取りキュベットに注入し、パルス装置にセットした。続いて、静電容量40μF、抵抗値246ohm、電圧1.9KVの条件で電気パルスをかけた。パルス後、キュベットに1Mソルビトールを1ml加え、穏やかに混合し、室温で1時間放置した。プラスミドを導入後、YNB選択プレート(0.67w/v%Yeast Nitrogen base without amino acid(Difco社製)、2w/v%グルコース、2w/v%寒天)にて30℃で3日間培養し、形質転換株を取得した。(実施例6)形質転換株のゲネチシン耐性の確認実施例5で得た形質転換株を種々の濃度のゲネチシン含有YPDプレートに蒔き、ゲネチシン耐性の発現を確認した。0.2mg/ml、2mg/ml、5mg/ml、10mg/mlの濃度のゲネチシン含有YPDプレートに形質転換株を植継ぎ、30℃で3日間培養した。その結果、全てのゲネチシン濃度において形質転換株の生育が認められ、キャンディダ・マルトーサAC16株の細胞内で導入したCmNeo耐性遺伝子が発現し、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼが機能していることが確認された。(比較例1)比較のため、CmNeo耐性遺伝子の代わりに、コドンを改変していないNeo耐性遺伝子を用いる以外は実施例4と同様にしてpUTA−L41−Neo発現ベクターを作製し、実施例5と同様にしてキャンディダ・マルトーサAC16株に形質転換し、まずアデニン要求性で選択した。得られた形質転換株をゲネチシンプレート(ゲネチシン濃度0.2mg/ml)に引き延ばし、ゲネチシン耐性の発現を調べた。その結果、コドンを改変しなかったNeo耐性遺伝子を導入した形質転換株では生育が認められず、ゲネチシン耐性は発現しなかった。このことから、コドン改変がゲネチシン耐性の発現に必須であることが確認された。本発明により、宿主側に予め何ら栄養要求性などを付与せずに形質転換を行うこと、すなわち形質転換株を選択することが可能になり、野生株や有用物質生産株に対しても遺伝子組換えによる育種を容易に行うことが可能になる。実施例4で作製したpSTV−L41の構築模式図である。実施例4で作製したpUTA−L41−CmNeoの構築模式図である。配列番号1に記載の配列の内、少なくとも1つ以上のCTGコドンをCTG以外のロイシンコドンに改変したネオマイシン耐性遺伝子。配列番号2に記載のネオマイシン耐性遺伝子。請求項1又は2に記載の遺伝子の発現カセットを含有する発現ベクター。請求項1又は2に記載の遺伝子の発現カセットを用いて酵母を形質転換した後に、ネオマイシン、ゲネチシン及び/又はG418を添加した培地を用いて形質転換後の菌体を培養することにより、酵母の形質転換株を選択する方法。酵母がキャンディダ・シリンドラッセ、キャンディダ・トロピカリス、キャンディダ・マルトーサ、キャンディダ・アルビカンス、キャンディダ・ルシタニエ又はキャンディダ・メリビオシカである請求項4に記載の方法。酵母がキャンディダ・マルトーサである請求項4に記載の方法。 【課題】 酵母でも選択マーカーとして利用できるネオマイシン耐性遺伝子、及び、その発現によるネオマイシン耐性、ゲネチシン耐性、及び/又は、G418耐性を利用することにより、酵母の形質転換株を選択する方法を提供する。【解決手段】 本発明では、大腸菌由来のネオマイシン耐性遺伝子のCTGコドンをそれ以外のロイシンコドンに変換することにより、同遺伝子がキャンディダ属酵母で選択マーカーとして機能する事を見出した。この遺伝子の利用により、ネオマイシン、ゲネチシン及びG418耐性菌として野生株や既存の有用物質生産キャンディダ属酵母においても遺伝子組換え株を容易に取得することが可能になり、その遺伝子組換え株を用いた有用物質生産系での菌株の新たな育種方法を提供した。【選択図】 なし配列表