生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_過硫酸塩類濃度の測定方法
出願番号:2004059548
年次:2005
IPC分類:7,G01N31/00,G01N21/78,G01N31/22


特許情報キャッシュ

長谷部 吉昭 JP 2005249552 公開特許公報(A) 20050915 2004059548 20040303 過硫酸塩類濃度の測定方法 オルガノ株式会社 000004400 特許業務法人はるか国際特許事務所 110000154 長谷部 吉昭 7G01N31/00G01N21/78G01N31/22 JPG01N31/00 PG01N21/78 CG01N31/22 122 3 OL 8 2G042 2G054 2G042AA01 2G042BB13 2G042CA02 2G042CA05 2G042CB03 2G042CB06 2G042DA03 2G042DA07 2G042DA08 2G042FA01 2G042FA06 2G042FA11 2G042FB02 2G042GA01 2G042GA05 2G042GA10 2G042HA07 2G054AA02 2G054AA04 2G054AB10 2G054BB01 2G054BB13 2G054CA10 2G054CB02 2G054CB03 2G054CB10 2G054CE01 2G054EA04 2G054EA06 2G054EB01 2G054FB07 2G054GA03 2G054GB01 2G054GB04 2G054JA06 本発明は、過硫酸塩類濃度の測定方法の改良に関するものである。 従来より、過硫酸塩類は、重合触媒(アクリル繊維、SBR等)、写真工業(現像用定着剤)、金属表面処理(プリント配線基盤エッチング剤等)、繊維工業(糊抜剤、硫化染料発色剤)、水処理(廃液処理)等に使用されており、特に近年、環境浄化(土壌・地下水の浄化)等にも幅広く使用されるようになってきた。 これらの過硫酸塩類の濃度分析は、これまでJIS K8253「ペルオキソ二硫酸カリウム」に準拠して行われている。この方法は、0.1mol/Lの硫酸鉄(II)アンモニウム水溶液と過硫酸塩とを反応させた後、0.02mol/L過マンガン酸カリウム溶液で滴定することとなっている。しかし、本方法では固体もしくは濃度の高い過硫酸イオンの濃度を測る際には有効であるものの、比較的濃度の低い過硫酸塩溶液においては十分な感度をもたず、排水中の残留過硫酸イオンや環境浄化で過硫酸塩類を用いた場合のモニタリング等には使用できなかった。 そこで、下記特許文献1には、試料にN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩(DPD)とヨウ化カリウムを添加して測定する方法(DPD法)が開示されている。この測定方法では、低濃度の過硫酸塩類の濃度分析が可能となっている。特開平7−333153号公報 しかし、上記従来の技術(DPD法)においては、発色強度が過硫酸塩類の濃度に直線的に比例する範囲が狭いため、希釈操作が頻雑であること、及び試薬を水に溶解した場合の安定性が低いため、測定時に試薬を調整する、もしくは固体で使用する必要があり、取り扱いが難しいという問題点を有していた。 本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡易に精度よく過硫酸塩類の濃度分析が可能な分析方法を提供することにある。 上記目的を達成するために、本発明は、固体もしくは水溶液中の過硫酸塩類濃度を測定する方法であって、過硫酸塩類を含む試料を水溶液に調整し、N,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩またはN,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,カリウム塩を前記試料の水溶液に添加して反応させ、反応液の比色分析を行う、ことを特徴とする。この測定方法において、前記反応は10℃から40℃の温度条件で実施され、反応時間は反応液の発色強度が増加傾向にある間の時間に設定されるのが好適である。また、前記反応時に酢酸もしくはその塩を添加することが好適である。 本発明によれば、過硫酸イオンとN,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩またはカリウム塩との呈色反応による発色強度が過硫酸塩類の濃度に直線的に比例する範囲が広く、また、上記N,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩またはカリウム塩の水溶液が安定であるので、取扱が容易である。このため、簡易に精度よく過硫酸塩類の濃度分析を行うことができる。 以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)をより詳しく説明する。なお、試料量、試薬量、使用機器、使用器材等については、本明細書に記載したもの以外にも同等の性能を有するものを使用することができる。 近年、土壌、地下水等の環境浄化を行う際に過硫酸塩類が使用されることは既に述べたが、この際に、土壌または地下水等に含まれる過硫酸塩類の濃度を分析する必要がある。このため、本発明者らは、精度よく過硫酸塩類の濃度分析を行うことができる測定方法について鋭意研究を行った結果、N,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩またはN,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,カリウム塩(以後、これら両物質をスルホベンジルトリジンと総称する)と過硫酸イオンとを反応させることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、過硫酸塩類を含む試料を水溶液に調整し、この水溶液にスルホベンジルトリジンを添加して過硫酸イオンと反応させ、反応液の比色分析を行うものである。スルホベンジルトリジンは、過硫酸イオンと反応すると酸化され、青緑色を呈する。このため、比色分析により濃度分析を行うことができる。 より具体的には、まず過硫酸塩類を含む固体もしくは水溶液の試料を以下の手順により測定用の水溶液に調整する。第1に、過硫酸塩類を含む固体もしくは水溶液の試料がアルカリ性または酸性の場合には、酸またはアルカリを用いてpHを7付近に調整する。第2に、過硫酸イオンが高濃度で含まれている場合には、検量線の範囲に合わせて(通常500mg/L以下程度)希釈する。第3に、この試料に酢酸もしくはその塩を含む酢酸緩衝液(pH5.2)を添加してpHを約5.2に調整する。酢酸緩衝液を添加するのは、pHを調整する他、スルホベンジルトリジンと過硫酸イオンとの反応を促進するためである。以上により、過硫酸塩類を含む試料を測定用の水溶液に調整できる。 次に、上記水溶液にキレート剤およびスルホベンジルトリジンを添加する。キレート剤としてはEDTA(エチレンジアミン四酢酸)やCyDTA(トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸,水和物)のような一般的なキレート剤を使用でき、添加量としては1mg/L以上(より望ましくは5〜50mg/L程度)とすることが望ましい。また、スルホベンジルトリジンは水溶液として添加することが可能であり、添加量は0.01〜1.0mM(より望ましくは0.05〜0.5mM)とすることが望ましい(Mはmol/L)。この添加量は、後述するスルホベンジルトリジンと過硫酸イオンとによる呈色反応及び反応液の比色分析の行いやすさの観点から適宜決定することができる。 スルホベンジルトリジンを上記水溶液に添加すると、スルホベンジルトリジンが過硫酸イオンによって酸化されることにより水溶液は徐々に青緑色を呈する。この発色強度は、過硫酸塩類濃度及び反応温度によりその値が異なるが、反応時間の経過とともに当初上昇し、その後下降する。一般の比色分析は、発色強度が安定した時点で実施されるが、過硫酸イオンとスルホベンジルトリジンとの反応では、発色強度が上昇しきった後短時間で下降に転ずるので、発色強度が安定した時点を見つけるのは困難である。また、発色強度が下降する時点では、正確な比色分析ができない。このため本発明では、反応時間を、反応液の発色強度が上昇傾向にある間の時間に設定される。この反応時間を、以後標準反応時間という。なお、ここで、反応時間とは、スルホベンジルトリジンを上記水溶液に添加してから比色分析を行うまでの時間である。 上記標準反応時間としては、分析に要する時間が長くなりすぎないこと等を考慮すると1分〜60分程度(より望ましくは5分から40分程度)の間に設定することが望ましい。このため、上記範囲の時間で反応液の発色強度が上昇傾向を維持するように試料の希釈倍率及び反応温度を適宜調節する。 なお、試料中の過硫酸塩類濃度を測定する場合には、上記標準反応時間に対する誤差を5%以内とするのが正確な濃度測定のために好適である。ただし、屋外で簡易的に過硫酸塩類濃度を測定する場合には、標準反応時間に対する誤差は10%程度以内としてもよい。 また、スルホベンジルトリジンと過硫酸イオンとの反応は温度による影響を受けるため、検量線を作成する際に使用する標準試料の反応時と同じ温度条件で反応を行うか、もしくは測定対象の試料(水溶液)の反応温度と上記標準試料の反応温度との相関関係を求めて、測定対象の試料について得られた値を修正して使用することが望ましい。このような反応温度としては、特に規定はないが、10℃〜40℃の範囲とするのが好適である。反応温度が上記範囲より低くなると、反応速度が遅くなり、測定に時間がかかりすぎてしまう。また、反応温度が上記範囲より高くなると、過硫酸イオンが自己分解し、硫酸ラジカルを生成するため、正確な過硫酸イオンの測定が困難になる。 以上の条件でスルホベンジルトリジンと過硫酸イオンとを反応させた後、色見本によって発色を比較するか若しくは分光光度計により吸光度(675nm付近)を測定する。この測定結果から、あらかじめ過硫酸イオンの標準液を用いて同条件で作成した検量線を使用し、調整時に行った希釈の倍率を考慮して試料中の過硫酸塩類濃度を求めることができる。 次に、上述した本発明の実施例を説明する。 以下の手順で標準反応時間の決定を行った。 測定対象の試料として、純水中に過硫酸ナトリウムを100mg/Lと10mg/Lの2種類の水溶液を調整し、この水溶液5mLに対して以下に示すような溶液A(60μL)および溶液B(30μL)をこの順序で添加した後、30℃の恒温槽中で反応を行った。この場合、反応時間すなわちスルホベンジルトリジンを上記水溶液に添加してから吸光度を測定するまでの時間を変化させて反応後の溶液について分光光度計を用いて675nmの吸光度を測定した。<使用試薬>溶液A:3M酢酸緩衝液(pH5.2)溶液B:0.25%CyDTAおよび20mMスルホベンジルトリジン<スルホベンジルトリジン>ナトリウム塩型の構造式を以下に示す。なお、前述の通り、本発明にはカリウム塩も使用することができる。 本物質は、例えば株式会社同仁化学研究所等から市販されている。また、その合成方法は、例えばANALYTICAL SCIENCES OCTOBER 2003,VOL.19(The Japan Society for Analytical Chemistry)に記載されている。<分光光度計>株式会社日立製作所製 U−2000Aを使用した。 以下の表1及び表2には、各反応時間毎に測定した吸光度が示されている。また、図1及び図2には、表1及び表2をグラフに表した図が示されており、縦軸は吸光度、横軸は反応時間となっている。 以上の結果から、水溶液中の過硫酸塩類濃度及び反応時間に応じて呈色反応の発色強度が大きく異なっているのが分かる。 表1及び図1に示された過硫酸ナトリウム濃度が100mg/Lの場合には、反応時間が1分から15分まで発色強度が上昇傾向にあるので、この間に標準反応時間を設定することができる。一方、表2及び図2に示された過硫酸ナトリウム濃度が10mg/Lの場合には、反応時間が3分から70分までは発色強度が上昇傾向にあるが、それ以降では下降している。このため、本実施例では、標準反応時間を3分から70分の間に設定可能であるが、分析に要する時間が長くなりすぎないようにするため、3分から60分の間とするのが好適である。なお、過硫酸ナトリウム濃度が上記値と異なる場合にも、発色強度が上昇傾向にある時点で比色分析が行えるよう適宜上記反応時間を修正して標準反応時間を決定すればよい。 以下の手順で、検量線を作成した。 純水中に過硫酸ナトリウムを1000mg/Lとなるように溶解させて標準液を作製した。この溶液を適宜希釈して、0〜400mg/Lの過硫酸ナトリウム水溶液を作製した。 測定は試料5mLに対して上記溶液A(60μL)および溶液B(30μL)をこの順序で添加した後、30℃の恒温槽中で正確に5分間反応を行った。この反応後の溶液に対して分光光度計を用いて675nmの吸光度を測定し、その値から検量線の作成を行った。この検量線が図3に示される。図3から分かるように、本発明の方法では、発色強度が過硫酸塩類の濃度に直線的に比例する範囲が広いので、試料の希釈操作も簡単にでき、簡易に高精度の濃度測定が可能となる。 以下の手順で、本発明とJIS法及びDPD法による過硫酸ナトリウム水溶液の濃度測定を行い、測定精度を比較した。 まず、1000mg/Lの過硫酸ナトリウム水溶液を作製した。(本発明) 上記水溶液を100mg/Lに希釈して測定用水溶液とした。この測定用水溶液5mLに対して上記溶液A(60μL)および溶液B(30μL)をこの順序で添加した後、30℃の恒温槽中で正確に5分間反応を行った。この反応後の溶液に対して分光光度計を用いて675nmの吸光度を測定した。得られた吸光度から図3に示した検量線を使用して測定用の水溶液の過硫酸ナトリウム濃度を求め、希釈倍率(10倍)を考慮して988mg/Lの測定値を得た。(JIS法) JIS K 8253の「ペルオキソ二硫酸カリウム」の6.1に従い、上記水溶液につき濃度測定を行った。 上記水溶液50mLと0.1mol/L硫酸アンモニウム鉄(II)溶液50mLとりん酸5mLを加えて反応させ、反応液を0.02mol/L過マンガン酸カリウム溶液で逆滴定した。別に同条件で空試験を行い、測定データを補正した上で975mg/Lの測定値を得た。(DPD法) DPD法により上記水溶液につき濃度測定を行った。 上記水溶液を10mg/Lに希釈して測定用水溶液とした。この測定用水溶液25mL中にDPD試薬1袋を添加し、30℃、100rpmで20分間正確に反応させる。20分経過後に530nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線を使用して測定用の水溶液の過硫酸ナトリウム濃度を求め、希釈倍率(100倍)を考慮して942mg/Lの測定値を得た。 なお、DPD試薬(N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩)としては、HACH社製の遊離残留塩素用試薬を使用した。 以上より、本発明にかかる過硫酸塩類濃度の測定方法が最も高い測定精度であることが分かる。過硫酸ナトリウムとスルホベンジルトリジンとを反応させた場合の反応時間と吸高度との関係を示す図である。過硫酸ナトリウムとスルホベンジルトリジンとを反応させた場合の反応時間と吸高度との関係を示す図である。過硫酸ナトリウムの検量線を示す図である。 固体もしくは水溶液中の過硫酸塩類濃度を測定する方法であって、 過硫酸塩類を含む試料を水溶液に調整し、 N,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩またはN,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,カリウム塩を前記試料の水溶液に添加して反応させ、 反応液の比色分析を行う、ことを特徴とする過硫酸塩類濃度の測定方法。 請求項1記載の過硫酸塩類濃度の測定方法において、前記反応は10℃から40℃の温度条件で実施され、反応時間は反応液の発色強度が上昇傾向にある間の時間に設定されることを特徴とする過硫酸塩類濃度の測定方法。 請求項1または請求項2記載の過硫酸塩類濃度の測定方法において、前記反応時に酢酸もしくはその塩を添加することを特徴とする過硫酸塩類濃度の測定方法。 【課題】 簡易に精度よく過硫酸塩類の濃度分析が可能な分析方法を提供する。【解決手段】 過硫酸塩類を含む固体もしくは水溶液の試料を、所定の水溶液に調整し、これにN,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩(スルホベンジルトリジン)を添加し、過硫酸イオンとスルホベンジルトリジンとを反応させる。この反応により過硫酸イオン濃度に応じて反応液が呈色するので、反応液の比色分析を行い、過硫酸塩類濃度を測定する。【選択図】 なし


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特許公報(B2)_過硫酸塩類濃度の測定方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_過硫酸塩類濃度の測定方法
出願番号:2004059548
年次:2009
IPC分類:G01N 31/00,G01N 21/78,G01N 31/22


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長谷部 吉昭 JP 4299696 特許公報(B2) 20090424 2004059548 20040303 過硫酸塩類濃度の測定方法 オルガノ株式会社 000004400 特許業務法人はるか国際特許事務所 110000154 長谷部 吉昭 20090722 G01N 31/00 20060101AFI20090702BHJP G01N 21/78 20060101ALI20090702BHJP G01N 31/22 20060101ALI20090702BHJP JPG01N31/00 PG01N21/78 CG01N31/22 122 G01N 31/00−G01N 31/22 G01N 21/78 特開平07−333153(JP,A) 特開平11−108916(JP,A) 特開昭54−071694(JP,A) 特開平02−245664(JP,A) Sakamoto, R., et al.,A new water-soluble chromogenic indicator:an application to the determination of chlorine in aqueous solutions,Anal. Sci.,2003年10月,Vol.19,p.1445-1447 2 2005249552 20050915 8 20070110 白形 由美子 本発明は、過硫酸塩類濃度の測定方法の改良に関するものである。 従来より、過硫酸塩類は、重合触媒(アクリル繊維、SBR等)、写真工業(現像用定着剤)、金属表面処理(プリント配線基盤エッチング剤等)、繊維工業(糊抜剤、硫化染料発色剤)、水処理(廃液処理)等に使用されており、特に近年、環境浄化(土壌・地下水の浄化)等にも幅広く使用されるようになってきた。 これらの過硫酸塩類の濃度分析は、これまでJIS K8253「ペルオキソ二硫酸カリウム」に準拠して行われている。この方法は、0.1mol/Lの硫酸鉄(II)アンモニウム水溶液と過硫酸塩とを反応させた後、0.02mol/L過マンガン酸カリウム溶液で滴定することとなっている。しかし、本方法では固体もしくは濃度の高い過硫酸イオンの濃度を測る際には有効であるものの、比較的濃度の低い過硫酸塩溶液においては十分な感度をもたず、排水中の残留過硫酸イオンや環境浄化で過硫酸塩類を用いた場合のモニタリング等には使用できなかった。 そこで、下記特許文献1には、試料にN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩(DPD)とヨウ化カリウムを添加して測定する方法(DPD法)が開示されている。この測定方法では、低濃度の過硫酸塩類の濃度分析が可能となっている。特開平7−333153号公報 しかし、上記従来の技術(DPD法)においては、発色強度が過硫酸塩類の濃度に直線的に比例する範囲が狭いため、希釈操作が頻雑であること、及び試薬を水に溶解した場合の安定性が低いため、測定時に試薬を調整する、もしくは固体で使用する必要があり、取り扱いが難しいという問題点を有していた。 本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡易に精度よく過硫酸塩類の濃度分析が可能な分析方法を提供することにある。 上記目的を達成するために、本発明は、固体もしくは水溶液中の過硫酸塩類濃度を測定する方法であって、過硫酸塩類を含む試料を水溶液に調整し、N,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩またはN,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,カリウム塩を前記試料の水溶液に添加して反応させ、反応液の比色分析を行う、ことを特徴とする。この測定方法において、前記反応は10℃から40℃の温度条件で実施され、反応時間は反応液の発色強度が増加傾向にある間の時間に設定されるのが好適である。また、前記反応時に酢酸もしくはその塩を添加することが好適である。 本発明によれば、過硫酸イオンとN,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩またはカリウム塩との呈色反応による発色強度が過硫酸塩類の濃度に直線的に比例する範囲が広く、また、上記N,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩またはカリウム塩の水溶液が安定であるので、取扱が容易である。このため、簡易に精度よく過硫酸塩類の濃度分析を行うことができる。 以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)をより詳しく説明する。なお、試料量、試薬量、使用機器、使用器材等については、本明細書に記載したもの以外にも同等の性能を有するものを使用することができる。 近年、土壌、地下水等の環境浄化を行う際に過硫酸塩類が使用されることは既に述べたが、この際に、土壌または地下水等に含まれる過硫酸塩類の濃度を分析する必要がある。このため、本発明者らは、精度よく過硫酸塩類の濃度分析を行うことができる測定方法について鋭意研究を行った結果、N,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩またはN,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,カリウム塩(以後、これら両物質をスルホベンジルトリジンと総称する)と過硫酸イオンとを反応させることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、過硫酸塩類を含む試料を水溶液に調整し、この水溶液にスルホベンジルトリジンを添加して過硫酸イオンと反応させ、反応液の比色分析を行うものである。スルホベンジルトリジンは、過硫酸イオンと反応すると酸化され、青緑色を呈する。このため、比色分析により濃度分析を行うことができる。 より具体的には、まず過硫酸塩類を含む固体もしくは水溶液の試料を以下の手順により測定用の水溶液に調整する。第1に、過硫酸塩類を含む固体もしくは水溶液の試料がアルカリ性または酸性の場合には、酸またはアルカリを用いてpHを7付近に調整する。第2に、過硫酸イオンが高濃度で含まれている場合には、検量線の範囲に合わせて(通常500mg/L以下程度)希釈する。第3に、この試料に酢酸もしくはその塩を含む酢酸緩衝液(pH5.2)を添加してpHを約5.2に調整する。酢酸緩衝液を添加するのは、pHを調整する他、スルホベンジルトリジンと過硫酸イオンとの反応を促進するためである。以上により、過硫酸塩類を含む試料を測定用の水溶液に調整できる。 次に、上記水溶液にキレート剤およびスルホベンジルトリジンを添加する。キレート剤としてはEDTA(エチレンジアミン四酢酸)やCyDTA(トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸,水和物)のような一般的なキレート剤を使用でき、添加量としては1mg/L以上(より望ましくは5〜50mg/L程度)とすることが望ましい。また、スルホベンジルトリジンは水溶液として添加することが可能であり、添加量は0.01〜1.0mM(より望ましくは0.05〜0.5mM)とすることが望ましい(Mはmol/L)。この添加量は、後述するスルホベンジルトリジンと過硫酸イオンとによる呈色反応及び反応液の比色分析の行いやすさの観点から適宜決定することができる。 スルホベンジルトリジンを上記水溶液に添加すると、スルホベンジルトリジンが過硫酸イオンによって酸化されることにより水溶液は徐々に青緑色を呈する。この発色強度は、過硫酸塩類濃度及び反応温度によりその値が異なるが、反応時間の経過とともに当初上昇し、その後下降する。一般の比色分析は、発色強度が安定した時点で実施されるが、過硫酸イオンとスルホベンジルトリジンとの反応では、発色強度が上昇しきった後短時間で下降に転ずるので、発色強度が安定した時点を見つけるのは困難である。また、発色強度が下降する時点では、正確な比色分析ができない。このため本発明では、反応時間を、反応液の発色強度が上昇傾向にある間の時間に設定される。この反応時間を、以後標準反応時間という。なお、ここで、反応時間とは、スルホベンジルトリジンを上記水溶液に添加してから比色分析を行うまでの時間である。 上記標準反応時間としては、分析に要する時間が長くなりすぎないこと等を考慮すると1分〜60分程度(より望ましくは5分から40分程度)の間に設定することが望ましい。このため、上記範囲の時間で反応液の発色強度が上昇傾向を維持するように試料の希釈倍率及び反応温度を適宜調節する。 なお、試料中の過硫酸塩類濃度を測定する場合には、上記標準反応時間に対する誤差を5%以内とするのが正確な濃度測定のために好適である。ただし、屋外で簡易的に過硫酸塩類濃度を測定する場合には、標準反応時間に対する誤差は10%程度以内としてもよい。 また、スルホベンジルトリジンと過硫酸イオンとの反応は温度による影響を受けるため、検量線を作成する際に使用する標準試料の反応時と同じ温度条件で反応を行うか、もしくは測定対象の試料(水溶液)の反応温度と上記標準試料の反応温度との相関関係を求めて、測定対象の試料について得られた値を修正して使用することが望ましい。このような反応温度としては、特に規定はないが、10℃〜40℃の範囲とするのが好適である。反応温度が上記範囲より低くなると、反応速度が遅くなり、測定に時間がかかりすぎてしまう。また、反応温度が上記範囲より高くなると、過硫酸イオンが自己分解し、硫酸ラジカルを生成するため、正確な過硫酸イオンの測定が困難になる。 以上の条件でスルホベンジルトリジンと過硫酸イオンとを反応させた後、色見本によって発色を比較するか若しくは分光光度計により吸光度(675nm付近)を測定する。この測定結果から、あらかじめ過硫酸イオンの標準液を用いて同条件で作成した検量線を使用し、調整時に行った希釈の倍率を考慮して試料中の過硫酸塩類濃度を求めることができる。 次に、上述した本発明の実施例を説明する。 以下の手順で標準反応時間の決定を行った。 測定対象の試料として、純水中に過硫酸ナトリウムを100mg/Lと10mg/Lの2種類の水溶液を調整し、この水溶液5mLに対して以下に示すような溶液A(60μL)および溶液B(30μL)をこの順序で添加した後、30℃の恒温槽中で反応を行った。この場合、反応時間すなわちスルホベンジルトリジンを上記水溶液に添加してから吸光度を測定するまでの時間を変化させて反応後の溶液について分光光度計を用いて675nmの吸光度を測定した。<使用試薬>溶液A:3M酢酸緩衝液(pH5.2)溶液B:0.25%CyDTAおよび20mMスルホベンジルトリジン<スルホベンジルトリジン>ナトリウム塩型の構造式を以下に示す。なお、前述の通り、本発明にはカリウム塩も使用することができる。 本物質は、例えば株式会社同仁化学研究所等から市販されている。また、その合成方法は、例えばANALYTICAL SCIENCES OCTOBER 2003,VOL.19(The Japan Society for Analytical Chemistry)に記載されている。<分光光度計>株式会社日立製作所製 U−2000Aを使用した。 以下の表1及び表2には、各反応時間毎に測定した吸光度が示されている。また、図1及び図2には、表1及び表2をグラフに表した図が示されており、縦軸は吸光度、横軸は反応時間となっている。 以上の結果から、水溶液中の過硫酸塩類濃度及び反応時間に応じて呈色反応の発色強度が大きく異なっているのが分かる。 表1及び図1に示された過硫酸ナトリウム濃度が100mg/Lの場合には、反応時間が1分から15分まで発色強度が上昇傾向にあるので、この間に標準反応時間を設定することができる。一方、表2及び図2に示された過硫酸ナトリウム濃度が10mg/Lの場合には、反応時間が3分から70分までは発色強度が上昇傾向にあるが、それ以降では下降している。このため、本実施例では、標準反応時間を3分から70分の間に設定可能であるが、分析に要する時間が長くなりすぎないようにするため、3分から60分の間とするのが好適である。なお、過硫酸ナトリウム濃度が上記値と異なる場合にも、発色強度が上昇傾向にある時点で比色分析が行えるよう適宜上記反応時間を修正して標準反応時間を決定すればよい。 以下の手順で、検量線を作成した。 純水中に過硫酸ナトリウムを1000mg/Lとなるように溶解させて標準液を作製した。この溶液を適宜希釈して、0〜400mg/Lの過硫酸ナトリウム水溶液を作製した。 測定は試料5mLに対して上記溶液A(60μL)および溶液B(30μL)をこの順序で添加した後、30℃の恒温槽中で正確に5分間反応を行った。この反応後の溶液に対して分光光度計を用いて675nmの吸光度を測定し、その値から検量線の作成を行った。この検量線が図3に示される。図3から分かるように、本発明の方法では、発色強度が過硫酸塩類の濃度に直線的に比例する範囲が広いので、試料の希釈操作も簡単にでき、簡易に高精度の濃度測定が可能となる。 以下の手順で、本発明とJIS法及びDPD法による過硫酸ナトリウム水溶液の濃度測定を行い、測定精度を比較した。 まず、1000mg/Lの過硫酸ナトリウム水溶液を作製した。(本発明) 上記水溶液を100mg/Lに希釈して測定用水溶液とした。この測定用水溶液5mLに対して上記溶液A(60μL)および溶液B(30μL)をこの順序で添加した後、30℃の恒温槽中で正確に5分間反応を行った。この反応後の溶液に対して分光光度計を用いて675nmの吸光度を測定した。得られた吸光度から図3に示した検量線を使用して測定用の水溶液の過硫酸ナトリウム濃度を求め、希釈倍率(10倍)を考慮して988mg/Lの測定値を得た。(JIS法) JIS K 8253の「ペルオキソ二硫酸カリウム」の6.1に従い、上記水溶液につき濃度測定を行った。 上記水溶液50mLと0.1mol/L硫酸アンモニウム鉄(II)溶液50mLとりん酸5mLを加えて反応させ、反応液を0.02mol/L過マンガン酸カリウム溶液で逆滴定した。別に同条件で空試験を行い、測定データを補正した上で975mg/Lの測定値を得た。(DPD法) DPD法により上記水溶液につき濃度測定を行った。 上記水溶液を10mg/Lに希釈して測定用水溶液とした。この測定用水溶液25mL中にDPD試薬1袋を添加し、30℃、100rpmで20分間正確に反応させる。20分経過後に530nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線を使用して測定用の水溶液の過硫酸ナトリウム濃度を求め、希釈倍率(100倍)を考慮して942mg/Lの測定値を得た。 なお、DPD試薬(N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩)としては、HACH社製の遊離残留塩素用試薬を使用した。 以上より、本発明にかかる過硫酸塩類濃度の測定方法が最も高い測定精度であることが分かる。過硫酸ナトリウムとスルホベンジルトリジンとを反応させた場合の反応時間と吸高度との関係を示す図である。過硫酸ナトリウムとスルホベンジルトリジンとを反応させた場合の反応時間と吸高度との関係を示す図である。過硫酸ナトリウムの検量線を示す図である。 固体もしくは水溶液中の過硫酸塩類濃度を測定する方法であって、過硫酸塩類を含む試料を水溶液に調整し、N,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,ナトリウム塩またはN,N’−ビス(2,4−ジ−スルホベンジル)トリジン,カリウム塩を前記試料の水溶液に添加し、10℃から40℃の温度条件で、反応液の発色強度が上昇傾向にある間の時間に設定された反応時間にて反応させ、反応液の比色分析を行う、 ことを特徴とする過硫酸塩類濃度の測定方法。 請求項1記載の過硫酸塩類濃度の測定方法において、前記反応時に酢酸もしくはその塩を添加することを特徴とする過硫酸塩類濃度の測定方法。


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