タイトル: | 公開特許公報(A)_ポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法 |
出願番号: | 2004047942 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12Q1/02,G01N33/52,G01N21/78 |
古崎 眞也 本間 務 矢野 哲哉 JP 2005237209 公開特許公報(A) 20050908 2004047942 20040224 ポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法 キヤノン株式会社 000001007 宮崎 昭夫 100123788 伊藤 克博 100106297 石橋 政幸 100106138 古崎 眞也 本間 務 矢野 哲哉 7C12Q1/02G01N33/52G01N21/78 JPC12Q1/02G01N33/52 CG01N21/78 C 14 OL 31 2G045 2G054 4B063 2G045BB20 2G045BB24 2G045CB01 2G045CB21 2G045FB12 2G045GC10 2G045GC11 2G045GC15 2G054AA08 2G054BB08 2G054BB13 2G054CA20 2G054CE02 2G054EA04 2G054EA05 2G054GA04 2G054JA06 4B063QA18 4B063QQ06 4B063QQ15 4B063QR66 4B063QS24 4B063QX02 本発明は、細胞によって生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を定量的に比較・評価する方法に関する。また、該評価方法を、ポリヒドロキシアルカノエート生産株及び生産培養条件のスクリーニングに適用する方法に関する。また、該評価方法を、ポリヒドロキシアルカノエート生産培養のモニタリングに応用する方法に関する。 近年、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(以後、PHBと略す場合がある)をはじめとするポリヒドロキシアルカノエート(以後、PHAと略す場合がある)を生産し、菌体内に蓄積するPHA合成能を有する微生物に関して、多くの報告がなされている。これらPHAは、従来の化学合成によるプラスチックと同様に、溶融加工等により各種製品の生産に利用することができ、かつ非石油系資源から生産しうるという点で、脱石油社会におけるポリマー材料として注目を浴びている。 さらに、PHAなどの微生物産生ポリマーは、本来、生分解性物質であるがゆえに、自然界に存在している微生物によって完全分解されるという利点を有している。従って、従来用いられてきた、多くの合成高分子化合物のように、廃棄した際、自然環境に残留して、環境汚染を引き起こす懸念がない。また、微生物産生PHAの多くは、優れた生体適合性による医療用軟質部材等としての応用など、従来の合成高分子材料にはない機能を有する材料としても期待されている。 このようなPHAを合成する微生物は、先ず、種々の炭素源や各種アルカン酸から、生体内の様々な代謝経路(例えば、β酸化系や脂肪酸合成経路)を経て、(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを合成する。次いで、(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質として、PHA合成酵素(PHAポリメラーゼ、PHAシンターゼともいう)による重合反応によってPHAを合成し、菌体内に蓄積することが知られている。 生合成可能なPHAの種類としては、(R−CH(OH)−CH2−COOH)ユニットの側鎖Rの炭素数が、0〜2までの短鎖長(short−chain−length)の3−ヒドロキシアルカン酸ユニットからなるポリヒドロキシアルカノエート(以下、scl−PHAと略す場合がある)や、側鎖Rの炭素数が3〜12程度までの中鎖長(medium−chain−length)の3−ヒドロキシアルカン酸ユニットからなるポリヒドロキシアルカノエート(以下、mcl−PHAと略す場合がある)がある。さらに、アルキル基以外の置換基、例えば、フェニル基,フェノキシ基、シクロヘキシル基、不飽和炭化水素,エステル基,アリル基,シアノ基,ハロゲン化炭化水素,エポキシドなどなどを、側鎖R上に導入したPHA(以下、unusual−PHAと略す場合がある)も生合成することができる。 また、PHA合成能を有する微生物に由来する、PHA合成系に関与する酵素タンパク質の遺伝子を改変して、PHA合成能を高める試み、あるいは、微生物由来のPHA合成系を植物に形質導入し、その形質転換植物を栽培することによってPHAを合成しようとする取り組みもなされている。 従来、このようなPHA合成能を有する細胞をスクリーニングする方法、PHA生産性の有無を評価する方法がいくつか提案されている。 例えば、Arch. Microbiol., 171, 73−80 (1999)では、ナイルブルーAを添加した寒天培地において、スクリーニング評価対象となる微生物を培養し、該寒天培地上に形成したコロニーに紫外光を照射し、コロニーの発する蛍光の有無を観察するによって、コロニーを形成する微生物のPHB生産能の有無を識別している(非特許文献1を参照)。 Appl. Environ. Microbiol., 44, 238−241 (1982)に示されるスクリーニング方法では、微生物懸濁液をスライドグラスに取り、加熱して固定化したのち、ナイルブルーA溶液により染色し、洗浄後、蛍光顕微鏡で蛍光の有無を観察することで、微生物のPHB生産能の有無を識別している(非特許文献2を参照)。 また、特開2002−328093号公報には、培養した細胞を溶解してPHAを分離し、このPHAを分散させた液体にナイルブルーAを添加して、その蛍光を観察または検知することによって、PHAを検出する方法が提案されている(特許文献1を参照)。特開2002−328093号公報Arch. Microbiol., 171, 73−80 (1999)Appl. Environ. Microbiol., 44, 238−241 (1982) 前述のように、細胞を用いて生産されるPHAは、石油化学合成高分子材料の代替、また、環境低負荷、高機能性という点で、非常に優れた高分子材料である。しかしながら、石油化学由来の合成高分子材料の多くは、非常に安価に製造できる現状に較べて、PHAの生産コストは、合成高分子材料の代替を進める上で、一部の用途を除いて、未だ実用レベルには達していない。PHAを広範な用途に活用していくためには、PHAの生産性を向上し、より安価に入手できる生産体系を構築していくことが不可欠の課題となっている。 PHAの生産性を向上するための技術的な取り組みとしては、第一に、自然界からスクリーニングによって、PHA生産性の高い細胞を新たに取得する、さらに、分子生物学的手法、細胞工学的手法を用いて、PHA生産性の高い細胞に改変を施すなど、細胞自体のPHA生産能力の向上を図る検討が挙げられる。加えて、PHA生産時における培養条件、すなわち、培地組成や培地pH、培地中酸素濃度、培地攪拌条件などの培養工学的な検討も、併せて行われている。 PHA生産性向上を目指した研究開発を進めていく上において、PHA生産性を反映する、適切な評価指標が必要である。評価指標の1つとして、細胞のPHA生産量が挙げられる。例えば、複数種類のPHA生産菌が取得されている際、各生産菌が示すPHA生産能力を比較する場合には、各生産菌のPHA生産量を定量的に評価することが必要となる。また、あるPHA生産菌を用いる際、PHA生産性に対する培地組成の最適化を図る場合には、そのPHA生産菌を各種培地で培養した上で、各培地による培養時におけるPHA生産量を定量的に評価し、比較することが必要となる。 その際、指標とするPHA生産量としては、細胞一個あたりのPHA蓄積量を用いることも、また、培養液量あたりのPHA量を用いることもできる。いずれを用いる場合も、そのPHA生産量の評価をいかに迅速・簡便にかつ正確に行い得るかによって、上記研究開発の進展が大きく左右されることになる。 一般的に、PHA生産量を定量的に評価する方法としては、細胞の生産したPHAを回収し、その重量を測定する方法が行われている。例えば、一定量の細胞培養液から遠心分離等によって細胞を回収し、メタノール等の水可溶性溶媒で細胞を洗浄後・乾燥し、その後、クロロホルム等の溶媒によって細胞乾燥物からPHAを抽出し、抽出液から溶媒を留去してPHAのみを取り出し、このPHAの重量を測定するというものである。 この評価方法では、評価に用いる細胞の培養量をある程度多くすることで、PHA生産量評価の確度を高くすることができる。一方、評価に用いる細胞の培養量をある程度多くすると、細胞の乾燥工程や、PHAの抽出工程、さらに溶媒の留去工程等において、培養液量に比例し、多くの処理時間を要する。加えて、多数の培養条件、多種のPHA生産菌について比較検討を進める際、その評価の確度を維持する上では、細胞の培養液量を少なくできないため、装置上の制限から、同時に、多種の評価用培養を併行して行えないなど、簡便、迅速に多検体を評価する目的には、適合する評価手法ではなかった。 また、背景の技術には、PHA生産性の有無の評価方法に関する従来技術を挙げたが、これらは主に、多数種の細胞について、そのPHA生産の有無を定性的に検出するものである。すなわち、個々の細胞毎に、厳密にそのPHA生産量を定量するものではなかった。例えば、複数の微生物間において、相互のPHA生産性の違いを定量的に比較したり、培養条件の違いによるPHA生産性の違いを定量的に比較したりすることは目的としていない。 以上のように、細胞によるPHA生産量を定性的ではなく定量的に評価し、かつ、短時間に評価作業を完了でき、多数の評価対象の評価に適する、効率的な評価方法はこれまで見出されていない。本発明は前記の課題を解決するもので、本発明は、簡便・迅速かつ高い確度で、細胞によるPHA生産量を定量的に評価する方法を提供するものにある。 本発明者らは、まず、細胞によってPHAの生産を行った培養液に対して、従来の方法によって細胞に蓄積されているPHAに蛍光染色を施し、その培養液から発する蛍光強度を測定することによって、細胞の生産したPHA量を評価することを検討した。その検討の結果、従来の方法で観測される蛍光強度と、実際に培養液から回収されるPHA量とを比較すると、細胞の種類や培養条件によっては、両者の相関が著しく低い場合があった。 そこでさらに鋭意検討を進めた結果、蛍光染色工程において、一定濃度以上の有機溶媒存在下、もしくはアルカリ性雰囲気下において、培養液中に含まれる細胞に蓄積されているPHAに蛍光染色を施すことによって、培養液から観測される蛍光強度と、実際に培養液から回収されるPHA量との相関が非常に高いものとなることを見出した。そして、この染色手法と、観測される蛍光強度と細胞内に蓄積されているPHA量との高い相関を有効に用いることにより、染色した細胞からの蛍光強度によって、そのPHA生産量を定量的に評価できることを確認した。従って、本発明は、培養した細胞に対して、有機溶媒存在下もしくはアルカリ性雰囲気下において蛍光試薬により染色を施し、該細胞からの蛍光強度を測定することによって、該細胞のPHA生産量を定量的に評価するものである。 すなわち、本発明にかかるポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法は、 ポリヒドロキシアルカノエート生産能を有する細胞を培養して、該細胞により生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価する方法であって、 培養した細胞を有機溶媒存在下で蛍光試薬により染色する工程と、 前記染色した細胞に特定の波長の励起光を照射する工程と、 前記励起光の照射下、得られる蛍光強度を測定する工程と、 前記蛍光強度の測定結果に基づき、前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する工程とを有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法、あるいは、 ポリヒドロキシアルカノエート生産能を有する細胞を培養して、該細胞により生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価する方法であって、 培養した細胞をアルカリ性雰囲気下で蛍光試薬により染色する工程と、 前記染色した細胞に特定の波長の励起光を照射する工程と、 前記励起光の照射下、得られる蛍光強度を測定する工程と、 前記蛍光強度の測定結果に基づき、前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する工程とを有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法である。 本発明の評価方法では、細胞からポリヒドロキシアルカノエートを回収することなく、培養した細胞に各種蛍光試薬などを作用させるだけで、細胞内に存在するポリヒドロキシアルカノエートに蛍光染色を施す簡便な方法を利用している。その結果、本発明の評価方法においては、迅速にかつ正確に細胞のポリヒドロキシアルカノエート蓄積量を測定することが可能となっている。 さらに、本発明の評価方法によれば、評価に必要な培養液量は、蛍光測定の実施に用いる僅かな液量だけあればよいため、培養液の液量が非常に少ない系にも適用することができる。すなわち、本発明の評価方法を利用すると、多数の培養を同時に行う比較試験・検討において、個々の培養液量を非常に少なくすることが可能となるため、よりいっそう試験・検討の効率化を図ることができる。 以上の利点・有用性から、本発明の評価方法は、細胞を利用するポリヒドロキシアルカノエート生産に関する、その生産性向上を目指した研究開発の加速に役立ち、さらには、ポリヒドロキシアルカノエートの利用分野に大きく貢献するものである。 本発明のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法は、培養した細胞からその細胞内に蓄積されているPHAを一旦回収した上で、PHA量を秤量する従来の方法に代えて、細胞内に蓄積されているPHA量を直接定量する方法である。すなわち、生産したPHAを蓄積している細胞に蛍光試薬類を作用させ、蛍光染色を施すだけの簡便な方法を利用し、この蛍光染色された細胞内のPHAから蛍光強度の測定結果から、迅速かつ正確に細胞のPHA生産量を定量することを可能としている。さらに、細胞内に蓄積されているPHAを一旦回収した上で、PHA量を秤量する従来の方法と異なり、本発明の評価方法では、評価に用いる培養液量は、蛍光測定が行える液量だけあればよいため、評価対象の培養液量を非常に少なくすることができる。従って、本発明の評価方法を、多数の培養を同時に行う試験に利用すると、個々の培養の培養液量を僅かなものとすることが可能となるため、よりいっそう試験検討の効率化を図ることができる。 本発明の評価方法は、培養した細胞が分散している液媒体に有機溶媒もしくは塩基と蛍光試薬を加え、該液媒体の蛍光強度を測定することによって、該細胞のPHA生産量を定量的に評価するものである。すなわち、本発明の評価方法は、以下に示す二種の形態を採ることができる。また、その好適な実施の形態として、以下の形態を例示することができる。 本発明にかかる第一形態のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法は、 ポリヒドロキシアルカノエート生産能を有する細胞を培養して、該細胞により生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価する方法であって、 培養した細胞を有機溶媒存在下で蛍光試薬により染色する工程と、 前記染色した細胞に特定の波長の励起光を照射する工程と、 前記励起光の照射下、得られる蛍光強度を測定する工程と、 前記蛍光強度の測定結果に基づき、前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する工程とを有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法である。その際、 前記蛍光試薬により染色する工程に際し、 前記細胞が液媒体に分散されており、 前記液媒体中には、前記有機溶媒と前記蛍光試薬とが含まれており、 前記蛍光強度を測定する工程において、 前記細胞が分散されている液媒体について、蛍光強度の測定を行い、 前記蛍光強度の測定結果に基づき、前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する手順を選択することが好ましい。 例えば、前記液媒体は、前記細胞の培養液であることができる。あるいは、該液媒体として、該細胞を培養した培養液から、一旦細胞を分離し、再度分散させる他の液媒体であってもよい。 一方、前記蛍光試薬は、ポリエステルを染色し、且つ、励起光により蛍光を発する試薬であることが望ましい。例えば、かかる蛍光試薬として、ナイルレッド及びナイルブルーAを利用することができる。また、前記水溶性有機溶媒として、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドのいずれかを選択することが可能である。 加えて、本発明にかかる第一形態のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法では、 前記染色工程に供される培養した細胞について、前記細胞の分散された液媒体の濁度を測定する工程と、 前記濁度の測定結果に基づき、前記細胞の分散された液媒体中の細胞量を定量的に評価する工程と、 前記濁度と前記蛍光強度の測定結果から定量評価される、前記細胞量と前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量に基づき、一定細胞量あたりのポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する工程とを更に有する形態とすることもできる。 本発明にかかる第一形態のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法は、 前記細胞が微生物である場合に、より好適に利用可能である。 また、本発明にかかる第二形態のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法は、 ポリヒドロキシアルカノエート生産能を有する細胞を培養して、該細胞により生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価する方法であって、 培養した細胞をアルカリ性雰囲気下で蛍光試薬により染色する工程と、 前記染色した細胞に特定の波長の励起光を照射する工程と、 前記励起光の照射下、得られる蛍光強度を測定する工程と、 前記蛍光強度の測定結果に基づき、前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する工程とを有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法である。その際、 前記蛍光試薬により染色する工程に際し、 前記細胞が液媒体に分散されており、 前記液媒体中には、前記アルカリ性雰囲気の形成に用いる塩基と前記蛍光試薬とが含まれており、 前記蛍光強度を測定する工程において、 前記細胞が分散されている液媒体について、蛍光強度の測定を行い、 前記蛍光強度の測定結果に基づき、前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する手順を選択することが好ましい。加えて、前記塩基として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いることがより好ましい。 例えば、前記液媒体は、前記細胞の培養液であることができる。あるいは、該液媒体として、該細胞を培養した培養液から、一旦細胞を分離し、再度分散させる他の液媒体であってもよい。 なお、かかるアルカリ性雰囲気下における染色に用いる蛍光試薬も、ポリエステルを染色し、且つ、励起光により蛍光を発する試薬であることが望ましい。例えば、かかる蛍光試薬として、ナイルレッド及びナイルブルーAを利用することができる。一方、前記塩基として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることが好ましい。 加えて、本発明にかかる第二形態のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法でも、 前記染色工程に供される培養した細胞について、前記細胞の分散された液媒体の濁度を測定する工程と、 前記濁度の測定結果に基づき、前記細胞の分散された液媒体中の細胞量を定量的に評価する工程と、 前記濁度と前記蛍光強度の測定結果から定量評価される、前記細胞量と前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量に基づき、一定細胞量あたりのポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する工程とを更に有する形態とすることもできる。 その他、上述する二つの形態を有する本発明のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法においては、細胞の培養では、容量2ml以下の微小容器を用いた培養とすることができる。例えば、該微小容器は、同一支持体に複数配置されている微小容器であってもよい。その際、前記複数の微小容器を利用して、複数の培養を同時に行うことが可能である。例えば、該複数の培養においては、細胞種毎に各微小容器を用いて、複数の細胞種を同時に培養する形態とすることが可能である。また、該複数の培養においては、培地組成毎に各微小容器を用いて、複数の培地組成によって同時に培養する形態とすることが可能である。 また、該蛍光強度の測定に、プレートリーダーを利用する形態とすることができる。あるいは、分散された細胞個々の蛍光強度の測定に、フローサイトメーターを利用する形態とすることができる。さらには、分散された細胞個々の蛍光強度の測定に、セル・ソーターを利用し、所望の蛍光強度以上を示す細胞を分離する形態とすることもできる。 さらには、本発明は、上述する、二つの形態を有する本発明のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法を利用する方法の発明をも提供しており、 本発明にかかるポリヒドロキシアルカノエート生産細胞のスクリーニング方法は、 ポリヒドロキシアルカノエート生産細胞をスクリーニングする方法であって、 培養した前記細胞について、上記の構成のいずれかを有する本発明のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法を用いて、該細胞により生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価し、ポリヒドロキシアルカノエート生産細胞をスクリーニングする工程を有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産細胞のスクリーニング方法である。 また、本発明にかかるポリヒドロキシアルカノエート生産条件のスクリーニング方法は、 ポリヒドロキシアルカノエート生産細胞に対する、ポリヒドロキシアルカノエート生産条件をスクリーニングする方法であって、 該ポリヒドロキシアルカノエート生産条件において培養した前記細胞について、上記の構成のいずれかを有する本発明のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法を用いて、該細胞により生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価し、ポリヒドロキシアルカノエート生産条件をスクリーニングする工程を有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産条件のスクリーニング方法である。 さらに、本発明にかかるポリヒドロキシアルカノエート生産培養のモニタリング方法は、 ポリヒドロキシアルカノエート生産細胞を利用するポリヒドロキシアルカノエート生産培養をモニタリングする方法であって、 前記生産培養中、サンプリングされる培養した前記細胞について、上記の構成のいずれかを有する本発明のポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法を用いて、該細胞により生産されているポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価し、ポリヒドロキシアルカノエート生産培養をモニタリングすることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産培養のモニタリング方法である。 以下に、本発明をより詳細に説明する。 <本発明の評価方法が適用可能なPHA> 本発明の評価方法によって評価可能なPHAの種類としては特に限定されず、PHBなどのscl−PHA、さらには、mcl−PHA、unusual−PHAまたはそれらの共重合体など、いかなる種類のPHAかは問わない。 ただし、PHAの種類によって、PHA量と本発明の評価方法において利用する、PHAに施される蛍光試薬による染色に由来する蛍光強度との相関が異なる場合がある。そのため、PHAの種類ごとに、予めPHA量と染色に由来する蛍光強度との相関を評価した上で、本発明の評価方法を適用することが好ましい。特に、側鎖に蛍光性の官能基を有するPHAを評価する場合には、前記PHAに固有の蛍光性の官能基に起因する蛍光と、染色に由来する蛍光とを個別に測定し、予めPHA量と染色に由来する蛍光の蛍光強度との相関を求めることが好ましい。 本発明の評価方法によって定量的評価が可能な液媒体中のPHA濃度としては、PHAの種類、細胞の種類、培地成分の組成、蛍光試薬の種類、蛍光染色時間、蛍光染色の条件、添加する有機溶媒や塩基の種類、蛍光測定装置の能力などによって異なるが、液媒体1Lあたり0.1g以上のPHA濃度において評価することが可能である。ただし、後述するように一度培養した細胞を回収し、別の液媒体に分散する際に細胞量を濃縮し、液媒体中のPHA濃度を高めることによって、培養液中に含まれるPHA濃度としては、その適用限界を低くすることも可能である。なお、逆に、PHA濃度が高い場合には、適宜希釈して蛍光測定装置の測定可能範囲に収まるようにすればよい。 <本発明の評価方法が適用可能な細胞> 本発明の評価方法によって、PHA生産量の評価が可能な細胞としては、特に限定されず、例えば、PHA生産能を有する微生物、植物細胞、動物細胞、さらには、前記PHA生産能を有する細胞の変異株、あるいは、前記PHA生産能を有する細胞由来のPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体などでもよい。 本発明の評価方法が適用可能な、PHA生産能を有する微生物の具体例として、例えば、mcl−PHAやunusual−PHAを生産できる微生物として、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)などの微生物を挙げることができる。さらには、本発明者らにより分離された、mcl−PHAやunusual−PHA生産能を有する微生物菌株である、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91;FERM BP−7373),シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45;FERM BP−7374),シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2;FERM BP−7375),シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161;FERM BP−7376)、バークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp.OK3;FERM P−17370)、バークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp.OK4;FERM P−17371)などの微生物に適用することができる。 また、適用可能な、scl−PHAを生産できる微生物として、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、クロマチウム属(Chromatium sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)などの微生物を挙げることができる。その具体例として、本発明者らにより分離された、バルクホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01;FERM BP−4235)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64;FERM BP−6933)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp. TL2;FERM BP−6913)などを挙げることができる。 なお、本発明者らにより分離された上記菌株のうち、P91株は寄託番号FERM BP−7373として、H45株は寄託番号FERM BP−7374として、YN2株は寄託番号FERM BP−7375として、P161株は寄託番号FERM BP−7376として、KK01株は寄託番号FERM BP−4235として、TB64株は寄託番号FERM BP−6933として、TL2株は寄託番号FERM BP−6913として、OK3株は寄託番号FERM P−17370として、OK4株は寄託番号FERM P−17371として、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づき、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(経済産業省産業技術総合研究所(旧通商産業省工業技術院)生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター)に国際寄託されている。 <細胞の培養方法> 本発明の評価方法を適用する際、対象とする細胞は、予め培養して、該細胞にポリヒドロキシアルカノエートを生産させた状態とする。この細胞の培養方法としては、希望する培養方法に従って任意に設定すればよく、いかなる方法を用いてもよい。また、本発明の評価方法では、評価に要する培養液量は、100μl程度の微量でも高い定量性で評価が可能である。従って、本発明の評価方法においては、数100μl程度の容量の微小容器を培養に用いることも可能である。このような微小容器としては、例えば、一つのプレート上に多数の培養ウェルが設けられているマルチウェルプレートを好適に使用することができる。こうした微小容器を用いることで、多数の培養を同時に行うことができるため、より効率的に、多数の検体について評価を行うことが可能である。また、個々の培養液量を抑制することに伴い、培地コストの低減や廃棄培地の処理も容易に行うことができる。また、本発明の評価方法は、通常の培養容器による培養に使用することも当然可能である。例えば、フラスコやジャーファーメンター等の培養にも適用することができる。こうした容量の大きな培養容器を用いる培養に適用する場合でも、本発明の評価方法に使用する培養液量は微量であるため、同一の培養系から培養液の一部をサンプリングして評価に利用する。従って、大量培養系に対して、経時的に微量な培養液のサンプリングを行って、本発明の評価方法を適用することで、培養のモニタリングをすることも可能である。 培地組成に関しても、本発明の評価方法が利用している蛍光測定に大きく影響するような妨害成分(干渉成分)が培地中に含まれていなければ、いかなる種類を用いてもよい。また、培養細胞がPHAを生産する際に利用する基質、原料、あるいはPHAのモノマー成分として、目的とするPHAに対応したアルカンもしくはアルカン酸を培地に添加することもできる。例えば、目的とするPHAが、unusual−PHAである際には、そのモノマー成分に対応する、種々の置換アルカン酸を培地に添加することもできる。培地中に添加する、前記基質、原料であるアルカンもしくはアルカン酸濃度は、その種類、ならびに培養の目的に合わせて任意に設定することができるが、通常、0.01%〜1%の範囲で、特に0.1%〜0.5%の範囲で好適に選択することができる。 また、培地中に蛍光測定を妨害(干渉)するような成分が含有されている場合であっても、本発明の評価方法における、染色工程を行う前に、予め培養液中から細胞を回収し、回収した細胞を別の好適な液媒体に分散させることによって、本発明の評価方法を適用することが可能である。このような細胞の回収方法としては、遠心分離やフィルトレーション等、どのような方法を用いてもよいが、可能な限り、本発明の評価方法における、作業効率を妨げない方法を用いることが好ましい。例えば、マルチウェルプレートを用いて細胞を培養した場合、マルチウェルプレートを遠心処理する方法や、ウェルの底部にフィルターを備えたマルチウェルプレート(フィルタープレート)を用いて培養液の液体成分のみを除去するなどの方法を用いることができる。また、妨害成分(干渉成分)をより厳密に除去するため、回収した細胞に洗浄液を加えて、妨害成分(干渉成分)のみを洗浄する操作を適正な回数繰り返し、細胞や容器の洗浄を行ってもよい。細胞を分散させる液体としては、蛍光測定に影響しないようなものであれば、どのようなものを用いてもよく、水を好適に用いることができる。また、分散液媒体中に、界面活性剤や分散剤など、細胞の分散性を向上させるような成分を含有させてもよい。なお、上記のような細胞の回収、洗浄、分散の各工程において、細胞を乾燥させないことが望ましい。細胞を乾燥させると細胞同士が固着し、液体に分散させた際、個々の細胞を完全、均一に分散させることが困難になり、分散の不均一さのため、測定される蛍光強度が変化してしまうことを防ぐためである。 本発明の評価方法の適用に必要な培養液量は、蛍光測定を行う装置の種類や、培養液中に存在するPHA量によっても異なるが、例えば、蛍光プレートリーダーを用いる場合、100μl以上であれば特に問題ない。また、培養液中の細胞密度にもよるが、後述するフローサイトメーターを用いる場合には、さらに微量とすることも可能である。 <蛍光試薬による染色工程> 本発明の評価方法では、PHAに対して、蛍光試薬を用いて定量的に染色を施し、かかる蛍光試薬による染色量を、蛍光強度を測定することで評価している。そのため、本発明の評価方法における染色工程は、培養した細胞に有機溶媒存在下もしくはアルカリ性雰囲気下で蛍光試薬を加えることにより、細胞内に蓄積されているPHAに染色を施している。 染色工程時、細胞の存在形態としては、細胞が液媒体に分散された状態であればよく、細胞を培養した培養液をそのまま用いても、細胞を回収した後、別の液媒体に分散させたものを用いてもよい。 本発明の評価方法で利用する染色方法の一つである、有機溶媒存在下で染色を行う方法においては、細胞の分散した液媒体に有機溶媒を加え、所定の有機溶媒濃度とした状態で細胞に蛍光試薬を接触させればよい。例えば、細胞の分散した液媒体に予め有機溶媒を添加し、その後、蛍光試薬を添加する手法や、また逆に、細胞の分散した液媒体に蛍光試薬を添加した後、有機溶媒を添加する手法を用いればよい。さらに、予め有機溶媒と蛍光試薬を混合し、細胞の分散した液媒体にその混合液を添加する手法を用いてもよい。このように有機溶媒存在下で蛍光試薬を添加することにより、細胞の種類や状態に影響されずに、細胞内のPHAを前記蛍光試薬によって染色することができる。 この染色工程において使用する有機溶媒の種類としては、水可溶性のものが好ましく、例えば、ケトン類、アルコール類などを用いることができる。より具体的には、アセトンやメタノール、エタノール、2−プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドを用いることができ、特に、アセトン及びメタノールを好適に用いることができる。また、染色工程時における、有機溶媒の液媒体中での終濃度としては、細胞の種類やPHA量、蛍光測定装置の測定範囲、蛍光試薬の染色性などを考慮した上で、適宜設定するものであるが、好ましくは、1%(v/v)〜75%(v/v)の範囲、特に好ましくは、10%(v/v)〜50%(v/v)の範囲内に選択するとよい。 本発明の評価方法で利用する染色方法の一つである、アルカリ性雰囲気下で染色を行う方法においては、細胞の分散した液媒体に塩基を加え、所定の高pHとした状態で細胞に蛍光試薬を接触させればよい。例えば、細胞の分散した液媒体に塩基を添加し、その後、蛍光試薬を添加する手法、また逆に、細胞の分散した液媒体に蛍光試薬を添加した後、塩基を添加する手法を用いればよい。さらに、予め塩基と蛍光試薬を混合し、細胞の分散した液媒体にその混合液を添加する手法を用いてもよい。このようにアルカリ性雰囲気下で蛍光試薬を添加することにより、細胞の種類や状態に影響されずに、細胞内のPHAを前記蛍光試薬によって染色することができる。 この染色工程に使用する塩基の種類としては、液媒体のpHを調整可能であれば特に限定されないが、少量の添加量で効率良く、所定の高pHにできるような強塩基を使用することが好ましい。例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどを用いることができる。また、利用する塩基を水溶液として調製しておくことも、使用上の利便性から好ましい。また、この染色工程における、液媒体中のpHは、細胞の種類やPHA量、蛍光測定装置の測定範囲、蛍光試薬の染色性などを考慮した上で、適宜設定するものであるが、好ましくは、pH9以上、さらには、pH9〜pH12の範囲内に選択するとよい。 一方、染色工程に使用する蛍光試薬としては、PHAを特異的に蛍光染色できるものであればいかなるものでもよいが、特に、下記化学式[1]で表されるナイルレッドや下記化学式[2]で表されるナイルブルーAは好適に使用することができる。 なお、ナイルブルーAはジエチルアミノナフトフェナゾンの塩酸塩、酸性硫酸塩、中性硫酸塩のいずれかを総称したものであり、いずれの種類の塩も用いることができる。 染色工程において、評価する培養細胞を含む試料中に添加するナイルレッドもしくはナイルブルーの終濃度は、試料中のPHA量、蛍光測定装置の測定範囲、ナイルレッドもしくはナイルブルーの溶解性などを考慮した上で、適宜設定するものである。好ましくは、ナイルレッドもしくはナイルブルーの終濃度を、0.001%(w/v)から0.1%(w/v)の範囲内、例えば、0.01%(w/v)程度に選択するとよい。また、有機溶媒や塩基との混合等の調製に便利なように、予め他の溶媒に溶解させておくことも可能である。そうした溶媒としては、蛍光染色や蛍光測定の妨げにならない限り、どのようなものでもかまわないが、例えば、DMSOなどに溶解して使用することも可能である。 染色時間に関しては、特に制限はないが、細胞内に蛍光試薬が十分浸透する必要があるため、1分間以上、より好ましくは5分間以上に選択することが好ましい。また、時間経過に伴う蛍光の退光を防ぐため、染色時間の上限は1時間以内とすることが好ましい。 染色時の操作としては、共存させる有機溶媒もしくは塩基と、蛍光試薬が十分混合されれば静置でもよいが、染色のムラをなくすため、染色時において攪拌することも好ましい。攪拌強度に関しては、容器の形態や容量、液媒体量等を考慮して適宜設定すればよい。 染色時の温度は、液媒体の凍結や、細胞の変性に伴う沈澱の発生が回避でき、あるいは蒸発による液量の変化が少なく、さらに細胞内へ蛍光試薬が浸透しやすい温度範囲に設定すればよい。一般に、4℃〜50℃の範囲内、さらに15℃〜35℃の範囲内で設定することが好ましい。 また、時間経過に伴う蛍光の退光を防ぐため、特に長時間染色する場合には、遮光した状態で染色を行うことが好ましい。例えば、染色を行う容器を遮光性のシールで被覆する、あるいは、暗所で染色を行う手法などを挙げることができる。 さらに、染色時の蒸発による液量の変化を防ぐため、例えば、密閉容器を用いる、あるいは、開口部をシールするなどの手段を用いることが好ましい。 また、多数の試料を同時に染色する場合には、マルチウェルプレートを用いることで効率よく、同一の染色条件で染色を施すことができる。 <蛍光測定> 本発明の評価方法における蛍光の測定は、染色工程後、細胞を分散した液媒体に特定の波長の励起光を照射し、かかる励起光によって発光される蛍光の強度を測定することによって行うことができる。 励起光の波長としては、使用する蛍光試薬、ならびに溶液の組成に応じて適宜設定すればよいが、例えば、ナイルレッドやナイルブルーAを蛍光試薬として用いる場合には、400nm〜600nmの範囲内に、特に、500nm〜550nmの範囲に設定するとよい。 測定する蛍光波長としては、利用した蛍光試薬に応じて、また、照射する励起光を考慮した上で、適宜設定すればよい。すなわち、励起光の散乱を排除し、染色に起因する蛍光を選択的に観測する条件を選択するとよい。例えば、ナイルレッドを蛍光試薬として用い、メタノールを10%添加した場合では、500nm〜550nmの範囲の励起光によって、550nm〜600nmの範囲における蛍光強度を好適に測定することができる。その際、蛍光強度は、吸収フィルターを用いることによって、蛍光のみを測定可能な、特定の波長域に限定して測定することができる。 蛍光を測定する装置としては、上記の染色による蛍光強度の測定を行うことができればどのようなものでもよいが、蛍光光度計や蛍光プレートリーダー、フローサイトメーター等を用いることができる。 蛍光プレートリーダーは、マルチウェルプレートを使用して多検体の蛍光強度を同時に測定できる装置であり、本発明の評価方法に好適に使用することができる。 フローサイトメーターは、フローサイトメトリー(flow cytometry;FCM)法による計測を行う装置である。フローサイトメトリー法は、粒子を分散している液体試料を光学セル中にフローさせ、そこにレーザー光を照射することにより、散乱光(前方散乱光や側方散乱光)や蛍光を測定し、試料中に分散されている個々の粒子の信号を検出し統計・計数処理する方法である。フローサイトメトリー法を利用することで、試料中の粒子の数、形態、性質、大きさおよびその分布等を迅速かつ正確に計測することができる。また、少ない試料でも測定が可能であるため、本発明の評価方法において、特に評価する液媒体の量が少ないときに有用である。 このフローサイトメーターと、細胞分取装置と組み合わせた装置をセル・ソーターといい、フローサイトメトリー法によって検知される情報に基づき、所望の細胞を分取することができる。この機能を利用して、本発明の評価方法を利用した、PHA生産細胞のスクリーニング方法において、非常に効果的に使用することができる。例えば、環境中から採取した土壌等の試料中に存在する多数の野生株や、変異処理によって遺伝子にランダムに変異の生じた多数の変異株を同時に含む液媒体を、本発明の評価方法によって、染色した後、セル・ソーターに流入させ、蛍光強度の高い菌株を分取するように分取条件を制御することによって、多数の野生株や変異株の中から、PHA生産能の高い菌株を分離することが可能となる。 なお、PHA生産能の高い菌株のスクリーニングにおいては、分取する菌はその後の培養によって増殖可能であることが必要であるため、生菌のみを蛍光染色できる試薬を用いることで、生菌・死菌を区別して分取することも有用である。そのような生菌のみを識別できる試薬として、CFDA(carboxyfluorescein acetoxymethyl ester)やCFDA−AM(carboxyfuoresceindiacetate acetoxymethyl ester)等を用いることができる。 上記各種の蛍光測定装置により蛍光強度を測定することができるが、液媒体中の細胞が何らかの理由によって凝集してしまうと、細胞が均一に分散された状態よりも、見かけ上蛍光強度が増幅されてしまうため、正確なPHA量の評価ができない場合がある。そのため、細胞が凝集するような場合には、蛍光強度測定前に予め細胞を分散しておく方が好ましい。細胞の分散方法としては、超音波や攪拌などの機械的手段を用いればよく、こうした機械的手段のみでは不十分な場合には、必要に応じて、界面活性剤等の分散剤を添加してもよい。 <本発明の評価方法によるPHA生産性評価> 本発明の評価方法によって、測定される蛍光強度と、細胞の分散した液媒体中のPHA量との間には高い相関が認められる。そのため、測定される蛍光強度を比較すれば、各種試料のPHA量の相対的な比較が可能となる。これの利点を用いて、例えば、複数種類の微生物を培養し、その培養液の蛍光強度を本発明の評価方法によって測定し、それを比較すれば、どの微生物が最も高いPHA生産性を有するかを評価することが可能である。 また、従来の方法によって厳密に測定したPHA量と、本発明の評価方法による蛍光強度の相関から、標準曲線(検量線)を作成すれば、PHA量未知の試料に関して、本発明の評価方法で測定した蛍光強度に基づき、PHA量を定量することができる。ただし、毎回の染色条件によって、染色効率が変化し、結果的に、測定される蛍光強度が変化する場合がある。そのため、より正確な定量を行う場合には、PHA量既知の標準試料を用いて、数点濃度変えた対照用試料を作製し、それを同一条件で染色し、蛍光強度を測定して、PHA濃度対測定される蛍光強度のプロットによって、標準曲線(検量線)を作成することが好ましい。 なお、標準曲線(検量線)の作成に利用する、PHA量の厳密な定量方法としては、従来用いられているどのような方法を用いてもよい。例えば、一定量の細胞培養液から遠心分離等によって細胞を回収し、メタノール等の水可溶性溶媒でそれを洗浄後・乾燥し、クロロホルム等の溶媒によって細胞からPHAを抽出し、抽出液から溶媒を留去してPHAのみを取り出し、このPHAの重量を測定する方法を用いることができる。なお、この方法によるPHA量は、一定培養液あたりのポリマー重量(PDW)として一般に呼称されている。 また、本発明の評価方法においては、染色工程に利用する、細胞懸濁液について、その液媒体中に分散されている細胞の濁度を別途求め、その濁度に基づき算定される細胞量と、本発明の評価方法によって、測定される蛍光強度に基づき、定量されるPHA量とを用いて、一定細胞量あたりのPHA蓄積量を求めることもできる。従って、一定細胞量あたりのPHA蓄積量を指標として、各種培養間でPHA生産性の定量的な比較を行うこともできる。その際、細胞量(細胞密度)の定量に利用する、濁度は、波長500〜700nmの吸光度を測定するなど、通常の方法を用いればよい。また、測定試料が多数の場合には、本発明の評価方法における、蛍光強度の測定と同様に、濁度の測定においても、蛍光プレートリーダー等を好適に利用できる。 <本発明の評価方法の利用例> 本発明の評価方法は、細胞によって生産されたPHA量を定量的に評価する用途、ならびにそのPHA生産性の比較を行ういかなる用途にも利用することができる。特に、本発明の評価方法では、測定に使用する培養液量は微量でよいこと、その利点に伴い、微小容器を用いた培養に対しても適用することが可能である。従って、マルチウェルプレートなどの微小容器を利用して、多数の培養を同時に行う対比試験、検討に好適に適用することができる。例えば、複数の野生株や変異株のPHA生産性を比較し、PHA高生産株を選抜するようなスクリーニングに好適に利用することができる。また、同様に、培地組成等、複数の培養条件によるPHA生産性を比較する際にも、本発明の評価方法を利用することで、培養条件の最適化を効率的に進めることができる。また、測定に使用する培養液量が微量であることに加え、評価に要する一連の作業も数分から数十分間という短時間で完了する。この二つの利点のため、例えば、フラスコやジャーファーメンター等の通常の培養において、その培養経過に伴うPHA生産量を経時的にモニタリングする用途に利用することができる。 なお、本発明の評価方法の適用範囲は、上記の利用方法に限定されるものではない。 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、以下に述べる実施例は本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるが、本発明の技術的範囲は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「%」は、特に表記する場合以外は、質量基準である。 <実施例1> ポリペプトン0.5%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地10mlに、YN2株を保存寒天培地のコロニーから植菌し、試験管にて30℃、125ストローク/分で8時間振盪し、前培養を行った。なお、M9培地及びミネラル溶液の組成は以下に示す。 [M9培地] Na2HPO4:6.2g、KH2PO4:3.0g、NaCl:0.5g、NH4Cl:1.0g (培地1リットル中、pH7.0) [ミネラル溶液] ニトリロ三酢酸:1.5 g、MgSO4:3.0 g、MnSO4:0.5 g、 NaCl:1.0 g、FeSO4:0.1 g、CaCl2:0.1 g、 CoCl2:0.1 g、ZnSO4:0.1 g、CuSO4:0.1 g、 AlK(SO4)2:0.1 g、H3BO3:0.1 g、 Na2MoO4:0.1 g、NiCl2:0.1 g (1リットル中、pH7.0) 次に、ポリペプトン0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地を、1N塩酸と1N水酸化ナトリウムを用いて、pH6,6.5,7,7.5,8,8.5に調製した(培地[1])。また、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地を同様にpH6,6.5,7,7.5,8,8.5に調製した(培地[2])。これら各培地50mlに先の前培養溶液0.5mlを植菌し、500ml容坂口フラスコにて30℃、125ストローク/分で振盪培養した。 72時間培養後、各培地から培養液1mlをサンプリングし、それぞれ0.15mlずつをディープウェルプレート(ナルジェ・ヌンク・インターナショナル社製;PP製、96穴、ウェル容量2ml)のウェルに分注した。 次に、蛍光試薬ナイルレッド(ポリサイエンス社製)を0.05%含有するDMSO溶液1mlを10mlのアセトンに溶解し、この溶液を先のサンプリング培養液を分注した各ウェルに0.05mlずつ分注した。直ちにディープウェルプレートの上面をシーリングテープ(ポリオレフィン・マイクロシーリングテープ;スリーエム・ヘルスケア社製)で密閉し、30℃の恒温槽内に設置したマイクロプレートシェーカー(トーホー社製;LD−452)により800rpmにて30分間攪拌し、菌体内PHAの染色を行った。染色終了後、シールをはずし、各ウェル内の液をマイクロタータープレート(サンプラテック社製;平底型)のウェルに0.1mlずつ分注した。このプレートを蛍光マイクロプレートリーダー(マルチラベルカウンタ Wallac 1420 ARVOsx;パーキンエルマー・ライフサイエンス社製)に設置し、各ウェルの蛍光強度を励起波長540nm、蛍光測定波長590nmで測定した。 以上、培養液のサンプリングから蛍光強度測定までの一連の作業は、1時間以内に終了した。 また、菌体量あたりのPHA量を比較するため、PHA量に加えて、サンプリング培養液中の菌の濁度を求めた。各サンプリング培養液の残りから、マイクロタータープレートのウェルに0.1mlずつ分注した。このプレートを前述の蛍光マイクロプレートリーダーに設置し、各ウェルについて、540nmにおける吸光度を測定した。 次に、対比のため、残った培養液を用いて、各培地のPDW(1L培養液あたりのポリマー重量(g))の測定を行った。 前述の蛍光測定用に培養液のサンプリングを行った後、培養液を遠心分離処理(8,000×g、4℃、10分間)し、上清を除いた。沈澱した菌体を100mlのメタノールに懸濁し、再び遠心分離処理して上清を除いた。このメタノールによる洗浄をさらに2回繰り返し、採取した菌体沈澱に残留する水をメタノールに置換した。回収した菌体を耐圧デシケーター内に設置し、真空ポンプで8時間減圧することによって菌体を乾燥させた。次に、得られた乾燥菌体を密閉容器内にて50mlのクロロホルムに浸漬し、35℃で20時間攪拌して菌体からPHAを抽出した。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、濾液を小型容器内に採取した。この濾液を、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した後、更に耐圧デシケーター内で8時間減圧することによって、抽出されたPHAを単離・乾燥した。 回収されたPHAの重量を測定し、1L培養液あたりに換算することによって、PDWを求めた。以上に示す手順によるPDWの測定には、2日間を要した。 また、各培地において得られたPHAに関して、1H−NMR分析(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))を行った結果、いずれも3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。 このPDWの重量測定結果と、先に測定した蛍光強度との相関を求めたところ、図1に示すように、両者の間に非常に高い相関が認められ、蛍光強度の測定結果に基づき、PDW生産量を定量できることが判った。 また、各培地の培養液に対して、図2は、PDWの重量を、図3は、蛍光強度をそれぞれ対比して示すグラフであるが、図2と図3に示す結果は、全く同様の傾向を示している。従って、蛍光強度の測定結果だけで、各培地のPDW重量の比較、すなわち、各培地のPHA生産量の比較を簡便に行えることが確認された。 加えて、各培地における、菌体量あたりのPHA量を比較するため、図4に、蛍光強度を菌の濁度で除した結果を示す。菌体量あたりのPHA量が最も高いpH条件は、PHA生産量と同じく、pH7の条件であった。 以上に示す結果より、本発明の評価方法によって、蛍光強度の測定結果に基づき、PHA生産量を簡便かつ迅速に定量でき、また、異なる培養間におけるPHA生産量、菌体量あたりのPHA量の比較を迅速に行うことが可能であることが示された。 <実施例2> 培地中に添加する基質として、5−フェニル吉草酸の代わりにオクタン酸を、また、蛍光染色時に用いる有機溶媒として、アセトンの代わりにメタノールを用いる他は、実施例1と同様の条件として、各培地で培養を行い、培養液について蛍光強度とPDW重量を測定した。 各培地において得られたPHAに関して、1H−NMR分析を実施例1と同様に行った結果、いずれも3−ヒドロキシ−オクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。 実施例1と同様に、測定された蛍光強度とPDWの重量の間における相関を求めたところ、図5に示すように、両者の間に高い相関が認められた。 以上に示す結果より、本発明の評価方法を適用することにより、実施例1と同様に本例のPHAに対しても、蛍光強度の測定結果に基づき、PHA生産量を簡便かつ迅速に定量でき、また、異なる培養間におけるPHA生産量の比較を迅速に行うことが可能であることが示された。 <実施例3> 水酸化ナトリウム 培地中に添加する基質として、5−フェニル吉草酸の代わりに5−フェノキシ吉草酸を、また、蛍光染色時に用いる有機溶媒アセトンの代わりに、1N水酸化ナトリウム水溶液を用いる他は、実施例1と同様の条件として、各培地で培養を行い、培養液について蛍光強度とPDW重量を測定した。 各培地において得られたPHAに関して、1H−NMR分析を実施例1と同様に行った結果、いずれも3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。 実施例1と同様に、測定された蛍光強度とPDWの重量の間における相関を求めたところ、図6に示すように、両者の間に高い相関が認められた。 以上に示す結果より、本発明の評価方法を適用することにより、実施例1と同様に本例のPHAに対しても、蛍光強度の測定結果に基づき、PHA生産量を簡便かつ迅速に定量でき、また、異なる培養間におけるPHA生産量の比較を迅速に行うことが可能であることが示された。 <実施例4> 実施例1の12種類の培地をディープウェルプレートのウェルに0.8mlずつ分注した。各ウェル中に実施例1と同様に調製した前培養溶液を0.008mlずつ添加し、30℃の恒温槽内に設置したマイクロプレートシェーカーにより800rpmの攪拌強度で培養した。 また、別途、検量線作成用にフラスコ培養を行った。ポリペプトン0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地50mlに、前記実施例1と同様に調製した前培養溶液0.5mlを植菌し、500ml容坂口フラスコにて30℃、125ストローク/分で振盪培養した。 72時間後、各培養を終了し、フラスコ培養の培養液から、各1倍、2倍、4倍、8倍に希釈した希釈液4種を調製した。 ディープウェルプレートの各ウェル、ならびにフラスコ培養の希釈液4種から、各々0.15mlずつ採取し別のディープウェルプレートに分注し、実施例1と同様に染色し、蛍光強度を測定した。 また、実施例1と同様にして、フラスコ培養の培養液について、PDW重量を求め、各希釈段階4種のPDW量を計算した。 ディープウェルプレートで培養した、各培地の培養液について測定された蛍光強度を図7に示した。実施例1で求めたフラスコ培養におけるPDW量の結果(図2)、蛍光強度の結果(図3)と比較すると、図2、図3と図7は同様の傾向を示している。従って、ディープウェルプレート培養においても、蛍光強度だけで各培地におけるPDW量の比較、すなわち、各培地におけるPHA生産性を簡便に比較できることが判った。また、本実施例で測定及び計算したフラスコ培養の各希釈段階のPDW量と各蛍光強度から検量線を作成した。この検量線に基づき、ディープウェルプレートで培養した培養液の蛍光強度をPDW量に換算した結果を図8に示す。図8を図2と比較すると、ほぼ同様の値であることが判った。これより、フラスコ培養とディープウェルプレート培養と、培養方法が異なっていても、蛍光強度によって各培地のPHA生産性を定量できることが判った。 以上の結果より、微小容器を用いても、フラスコ培養の培養条件と同様の培養と、PDW生産量の評価を実現し得ること、従って、微小容器を利用することで、多種類の培養を同時に行い、簡便かつ迅速に比較評価できることが判った。また、別途、蛍光強度からPDW量へと換算する検量線を作成することによって、微小容器を用いた培養においても、そのPHA生産量を定量し、定量的に比較することが可能であることが判った。 <実施例5> ポリペプトン0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%、粉末寒天1.2%を含むM9培地をオートクレーブ滅菌し、50℃に冷却後、前記ナイルレッド溶液を0.1%添加し、滅菌シャーレに15mlずつ分注し、寒天を固化させて寒天培地を作製した。 次に、野外から採取した土壌試料5gを10mlの滅菌蒸留水に添加し、1分間攪拌した。この土壌懸濁液0.5mlを4.5mlの滅菌水に添加・攪拌し、10倍希釈液を作製した。同様の希釈操作を繰り返し、100倍希釈液、1000倍希釈液、10000倍希釈液を順次作製した。 10倍〜10000倍希釈液4種を先に作製した寒天培地に各0.1mlずつ分注し、寒天表面に均一になるように広げた。これを培養器に移し、30℃で5日間培養した。培養後、PHAを合成したと思われる赤色のコロニーのうち、形態の異なる株を分離した。こうして、PHA生産性を示す野生株を十数株取得した。 次に、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地10mlに、上記野生株から選んだ11種の株、ならびにYN2株を保存寒天培地のコロニーから植菌し、試験管にて30℃、125ストローク/分で8時間振盪し、前培養を行った。 ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地をディープウェルプレートの12個のウェルに0.8mlずつ分注した。この12個のウェル中に、先の菌株12種の前培養溶液を0.008mlずつ添加し、30℃の恒温槽内に設置したマイクロプレートシェーカーにより800rpmの攪拌強度で培養した。 72時間後、各ウェルの培養液0.15mlずつ採取し、別のディープウェルプレートのウェルに分注し、実施例1と同様に染色し、蛍光強度を測定した。 また、比較のため、別途、各菌株について、坂口フラスコによって培養した培養液のPDW量を測定した。 先の前培養溶液0.5mlをポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコにて30℃、125ストローク/分で振盪培養した。 72時間後、各培養液のPDW量を実施例1と同様に測定した。 また、各菌株の培養によって得られたPHAについて、1H−NMR分析を実施例1と同様に行った結果、いずれも3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。 ディープウェルプレート培養における蛍光強度と、フラスコ培養におけるPDW量との相関を求めたところ、図9に示すように、両者の間に相関が認められた。 以上の結果により、本発明の評価方法を適用することによって、実施例1に示す既知の菌株と同様に、野生株によるPHA生産量を定量し、複数の野生株によるPHA生産量を定量的に比較することが可能であることが示された。 <実施例6> 10種類の土壌試料から、実施例5と同様にして、PHA生産性を示す野生株を100株程度取得した。 ポリペプトン0.5%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地をディープウェルプレートの96個のウェルに0.5mlずつ分注した。この96個のウェル中に、上記野生株から選んだ95株及びYN2株を保存寒天培地のコロニーから植菌し、30℃の恒温槽内に設置したマイクロプレートシェーカーにより800rpmの攪拌強度で8時間前培養を行った。 次にポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地をディープウェルプレートの96個のウェルに0.8mlずつ分注した。これに、先の前培養溶液96種を0.008mlずつ添加し、30℃の恒温槽内に設置したマイクロプレートシェーカーにより800rpmの攪拌強度で培養した。 72時間後、各ウェルの培養液0.15mlずつ採取し、別のディープウェルプレートのウェルに分注し、実施例1と同様に染色した後、蛍光マイクロプレートリーダーにより各ウェルの蛍光強度を測定した。 その結果、図10に示すように、YN2株より有意に高いPHA生産性を有する野生株が、2株(NO.17株、NO.53株)確認された。 次に、この野生株のPHA生産性をフラスコ培養において確認した。 前記野生株2株(NO.17株、NO.53株)とYN2株をそれぞれ、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコにて30℃、125ストローク/分で振盪培養した。 72時間後、実施例1と同様に、各菌株について、フラスコ培養の培養液のPDW量を測定したところ、YN2株は1.06、NO.17株は1.21、NO.53株は1.32であった。これより、NO.17株とNO.53株は、YN2株より高いPHA生産性を有することが確認された。 以上の結果より、本発明の評価方法を利用することによって、多数の野生株に対しても、微小容器を用いることで、PHA生産性について、定量的且つ簡便に野生株のスクリーニングができることが示された。 <実施例7> ポリペプトン0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%、粉末寒天1.2%を含むM9培地をオートクレーブ滅菌し、50℃に冷却後、前記ナイルレッド溶液を0.1%添加し、滅菌シャーレに15mlずつ分注し、寒天を固化させて寒天培地を作製した。 次に、ポリペプトン0.5%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地40mlに、YN2株を保存寒天培地のコロニーから植菌し、試験管にて30℃、125ストローク/分で振盪培養した。この培養液の550nmの吸光度を経時的に測定し、吸光度が0.2に到達した時点で培養液を遠心分離処理(8,000×g、4℃、10分間)し、上清を除いた。沈澱した菌体をトリス・マレイン酸緩衝液2mlに懸濁し、変異剤であるNTG(N−methyl−N’−nitro−N−nitrosoguanidine)500μg/ml溶液2mlを添加した。これを30℃で静置し、3時間後、遠心分離処理(8,000×g、4℃、10分間)して上清を除いた。沈澱した菌体をトリス・マレイン酸緩衝液2mlに懸濁し、遠心集菌・洗浄を2回繰り返した。最後に、滅菌水2mlに懸濁し、この懸濁液0.5mlを4.5mlの滅菌水に添加・攪拌し、10倍希釈液を作製した。同様の希釈操作を繰り返し、100倍希釈液、1000倍希釈液、10000倍希釈液を作製した。 10倍〜10000倍希釈液4種を先に作製した寒天培地に各0.1mlずつ分注し、寒天表面に均一になるように広げた。これを培養器に移し、30℃で5日間培養した。培養後、PHAを合成したと思われる赤色のコロニーを分離した。こうして、PHA生産性を保持する変異株を100株程度取得した。 ポリペプトン0.5%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地をディープウェルプレートの96個のウェルに0.5mlずつ分注し、上記変異株から選んだ95株及びYN2株を保存寒天培地のコロニーから植菌し、30℃の恒温槽内に設置したマイクロプレートシェーカーにより800rpmの攪拌強度で前培養を行った。 次に、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地をディープウェルプレートの96個のウェルに0.8mlずつ分注した。これに先の前培養液96種を0.008mlずつ添加し、30℃の恒温槽内に設置したマイクロプレートシェーカーにより800rpmの攪拌強度で培養した。 72時間後、各ウェルの培養液0.15mlずつ採取し、別のディープウェルプレートのウェルに分注し、実施例1と同様に染色した後、蛍光マイクロプレートリーダーにより各ウェルの蛍光強度を測定した。 その結果、図11に示すように、YN2株より有意に高いPHA生産性を示す変異株が1株(m27株)確認された。 次に、この変異株のPHA生産性をフラスコ培養において確認した。 前記変異株(m27株)とYN2株をそれぞれ、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコにて30℃、125ストローク/分で振盪培養した。 72時間後、実施例1と同様に、各菌株について、フラスコ培養の培養液のPDW量を測定したところ、YN2株は1.02、m27株は1.38であった。これより、m27株は、YN2株より高いPHA生産性を有することが確認された。 以上の結果より、本発明の評価方法を利用することによって、多数の変異株に対しても、微小容器を用いることで、PHA生産性について、定量的且つ簡便に変異株のスクリーニングができることが示された。 <実施例8> 本実施例では、蛍光測定に影響する成分を有する培地を用いた場合にも、前記干渉成分を除去する付加的な工程を設けることで、本発明によるスクリーニング方法の利用が可能であることを検証した。 ポリペプトン0.5%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地をディープウェルプレートの96個のウェルに0.5mlずつ分注し、実施例6で用いた野生株95株を保存寒天培地のコロニーから植菌し、30℃の恒温槽内に設置したマイクロプレートシェーカーにより800rpmの攪拌強度で前培養を行った。 次に、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、ミネラル溶液0.3%、Tween20 0.1%を含むM9培地をディープウェルプレートの96個のウェルに0.7mlずつ分注し、さらに、各ウェルに炭素数16及び18の脂肪酸を約6%含有する、植物油由来の廃油0.1mlを添加した。次いで、先の前培養溶液を0.008mlずつ95個のウェルに添加した。また、残りの1個のウェルには植菌しなかった。このプレートを30℃の恒温槽内に設置したマイクロプレートシェーカーにより800rpmの攪拌強度で120時間培養した。 培養後、植菌しなかったウェルから、廃油を含有する培地0.15mlを別のディープウェルプレートのウェルに分注し、実施例1と同様に染色し、蛍光強度を測定した。また、対照として、廃油を含有しない培地である、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、ミネラル溶液0.3%、Tween20 0.1%を含むM9培地0.15mlを分注し、染色後、蛍光強度を測定した。その結果、廃油を含有する培地における蛍光強度は12749、含有しない培地における蛍光強度は4132であり、添加されている廃油成分に由来する余剰な蛍光が発せられていることが確認された。 そこで、染色に先立ち、培養液を洗浄し、含まれる廃油成分を培養液から除去することを検討した。各ウェルから培養液を0.15mlずつフィルタープレート(ポール社製;アクロウェル5020)のウェルに分注し、メタノールを0.5ml添加した後、バキュームマニホールド(ミリポア社製)によって吸引濾過した。各ウェルに再びメタノール0.8mlを添加し、超音波発生装置の水槽内に浮かべ、1分間超音波処理した後、同様に吸引濾過した。この洗浄操作をもう一度繰り返した後、純水0.15mlを添加し、同様に超音波処理を行った。以上の洗浄工程によって、染色に先立ち培養液中に含まれる廃油成分を洗浄・除去した。その後、実施例1と同様に染色した後、同様に蛍光マイクロプレートリーダーにより各ウェルの蛍光強度を測定した。 その結果、洗浄工程後、植菌をしなかったウェルの蛍光強度は4528となり、ほぼ廃油成分の影響を除くことができた。また、染色に先立ち、この洗浄工程を設けることにより、廃油成分の影響を排除することができ、その後、本発明の評価方法を適用することで、培地からPHAを比較的良く生産する野生株4株を確認できた。 以上の結果より、蛍光測定に対する妨害物質(干渉成分)が培養液中に存在する場合であっても、染色に先立ち、洗浄工程を加えることによって、妨害物質(干渉成分)の影響を除くことが可能であり、本発明の評価方法を定量的なスクリーニングに利用し得ることが示された。 <実施例9> 本実施例では、大量培養におけるモニタリングに、本発明の評価方法を適用できることを検証した。 ポリペプトン0.5%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地200mlに、YN2株を保存寒天培地のコロニーから植菌し、500ml容量の坂口フラスコにて30℃、125ストローク/分で8時間振盪し、種母培養を行った。 次に、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地25Lを50L容量のジャーファーメンター(ミツワバイオシステム(株)製)に仕込み、滅菌後30℃に冷却し、先の種菌を全量接種した。そして、培養温度30℃、攪拌速度80 rpm、通気量2.5L/分の条件で大量培養を開始した。 培養開始後、2時間おきに培養液を1mlずつ採取し、直ちに、実施例1と同様の方法により染色し、蛍光強度を測定した。また、手作業によるサンプリング作業可能な時間帯以外(例えば、夜間)では、オートサンプラーにより培養液を採取し、4℃に保存したサンプルを翌日同様にして染色し、蛍光強度を測定した。 前記大量培養時、経時的にPHA生産量をモニタリングした結果、32時間でサンプル液における蛍光強度の上昇が停止し、36時間までほぼ一定であった。そこで、この段階(40時間経過時)でPHA生産量が一定に達したと判断し、通常より8時間早く培養を終了した。この40時間培養後、菌体を回収してPHAの抽出を行った。その結果、通常の48時間培養後とほぼ同じPHA収量が得られていた。 以上の検討により、本発明の評価方法を利用することにより、少量の培養液サンプルを用いて、短時間でPHA生産量を定量でき、ほぼリアルタイムでの生産培養(大量培養)のモニタリングが可能であることが示された。 <実施例10> 本実施例では、変異株のスクリーニングにおいて、セル・ソーターを利用する際にも、本発明の評価方法が適用可能であることを検証した。 ポリペプトン0.5%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地40mlに、YN2株を保存寒天培地のコロニーから植菌し、試験管にて30℃、125ストローク/分で振盪培養した。この培養液の550nmの吸光度を経時的に測定し、吸光度が0.2に到達した時点で培養液を遠心分離処理(8,000×g、4℃、10分間)し、上清を除いた。沈澱した菌体をトリス・マレイン酸緩衝液2mlに懸濁し、変異剤であるNTG(N−methyl−N’−nitro−N−nitrosoguanidine)500μg/ml溶液2mlを添加した。これを30℃で静置し、3時間後、遠心分離処理(8,000×g、4℃、10分間)して上清を除いた。沈澱した菌体をトリス・マレイン酸緩衝液2mlに懸濁し、遠心集菌・洗浄を2回繰り返した。最後に、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地50mlに懸濁し、500ml容量の坂口フラスコにて30℃、125ストローク/分で72時間振盪し、培養を行った。培養液を遠心分離処理(8,000×g、4℃、10分間)し、上清を除いた後、沈澱した菌体を50mlの滅菌水に懸濁した。 次に、PHAを生産し、菌体内に蓄積している変異株に染色を施すため、前記ナイルレッド溶液0.5mlを5mlのメタノールに溶解し、これを先の菌懸濁液に添加した。容器を遮光して30℃の恒温振とう器で10分間振とうした後、450mlの純水を加えて希釈した。 前記染色を終え、希釈した菌懸濁液を孔径40μmのセル・ストライナーに通過させ、凝集塊を除いた。その後、セル・ソーター(ベックマン・コールター社製;EPICS ALTRA)に10μl/minの流速で30秒間フローさせ、含まれる菌体(細胞)について、前方散乱光と蛍光強度(励起波長540nm、蛍光測定波長590nm)のドットプロットを作製した。このプロットにおいて、全粒子のうち、蛍光強度の高い10%にゲートをかけ、この特性を有する菌株をソーティングするように設定して菌懸濁液を10分間フローさせた。このフローを10回繰り返し、有意な蛍光強度を示す、分離された菌液を集めた。 分離された菌液をポリペプトン0.5%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地10mlに植菌し、30℃、125ストローク/分で24時間前培養した。この前培養液0.5mlをポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、5−フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地50mlに植菌し、500ml容量の坂口フラスコにて30℃、125ストローク/分で35時間振盪し、培養した。この培養液に含まれる菌体を、前述と同様に集菌・洗浄し、ナイルレッドで染色後、希釈した。この菌懸濁液を再びセル・ソーターにフローさせ、同様のドットプロットを作製した。次いで、全粒子のうち、蛍光強度の高い10%にゲートをかけ、この特性を有する菌株をソーティングするように設定して懸濁液を10分間フローさせた。このフローを10回繰り返し、分離された菌液を集めた。以上の二段階セル・ソート操作によって、蛍光強度の高い変異菌株をセル・ソーターによって分離した。 次に、この分離菌液0.5mlを4.5mlの滅菌水に添加・攪拌し、10倍希釈液を作製した。同様の希釈操作を繰り返し、100倍希釈液、1000倍希釈液、10000倍希釈液を作製した。 10倍〜10000倍希釈液4種を実施例5で作製した寒天培地に各0.1mlずつ分注し、寒天表面に均一になるように広げた。これを培養器に移し、30℃で5日間培養した。培養後、PHAを合成したと思われる赤色のコロニーのうち、形態の異なる変異株を100株程度分離した。こうして、PHA生産性を保持する変異株を100株程度取得した。 上記変異株から選んだ95株とYN2株について、実施例7と同様に本発明の評価方法によりPHAの生産性を評価したところ、YN2株より2割以上PHA生産性の高い変異株を27株確認した。これより、本発明の評価方法に加えて、セル・ソーターを利用することにより、非常に高い確率で、PHA高生産性の変異株を取得できることが判った。 以上の結果により、セル・ソーターを利用する際、本発明の評価方法が適用可能であり、その際、非常に効率よく変異株をスクリーニングできることが示された。 <実施例11> 蛍光試薬としてナイルレッドの代わりにナイルブルーを用いた他は実施例1と同様にして、蛍光強度とPDW量を測定し、両者の相関を求めた。その結果、図12に示すように、両者の間に高い相関が認められた。 以上の結果により、蛍光試薬として、ナイルレッドを用いる実施例1と同様に、ナイルブルーを用いる際にも、本発明の評価方法によってPHA生産量を定量でき、また、定量的な比較も可能であることが示された。 <実施例12> 蛍光試薬として、ナイルレッドの代わりにナイルブルーを、蛍光染色時に用いる有機溶媒として、アセトンの代わりにメタノール用いた他は実施例1と同様にして、蛍光強度とPDW量を測定し、両者の相関を求めた。その結果、図13に示すように、両者の間に高い相関が認められた。 以上の結果により、蛍光試薬として、ナイルレッドを用いる実施例1と同様に、ナイルブルーを用いる際にも、種々の有機溶媒が蛍光染色時に利用でき、本発明の評価方法によってPHA生産量を定量でき、また、定量的な比較も可能であることが示された。 <実施例13> 蛍光試薬として、ナイルレッドの代わりにナイルブルーを、蛍光染色の際、有機溶媒アセトンに代えて、1N水酸化ナトリウム水溶液を用いた他は実施例1と同様にして、蛍光強度とPDW量を測定し、両者の相関を求めた。その結果、図14に示すように、両者の間に高い相関が認められた。 以上の結果により、蛍光試薬として、ナイルレッドを用いる実施例3と同様に、ナイルブルーを用いる際にも、蛍光染色時、種々の有機溶媒以外に、アルカリ性雰囲気、例えば、1N水酸化ナトリウム水溶液が利用でき、本発明の評価方法によってPHA生産量を定量でき、また、定量的な比較も可能であることが示された。 <実施例14> 蛍光染色時に用いる有機溶媒として、アセトンの代わりにエタノールを用いた他は実施例1と同様にして、蛍光強度とPDW量を測定し、両者の相関を求めた。その結果、図15に示すように、両者の間に高い相関が認められた。 以上の結果により、蛍光染色時に、アセトン以外に、メタノール、エタノールなど水溶性有機溶媒を含む、種々の有機溶媒が利用でき、本発明の評価方法によってPHA生産量を定量でき、また、定量的な比較も可能であることが示された。 <実施例15> 蛍光染色時に用いる有機溶媒として、アセトンの代わりに2−プロパノールを用いた他は実施例1と同様にして、蛍光強度とPDW量を測定し、両者の相関を求めた。その結果、図16に示すように、両者の間に高い相関が認められた。 以上の結果により、蛍光染色時に、アセトン以外に、メタノール、エタノール、2−プロパノールなど水溶性有機溶媒を含む、種々の有機溶媒が利用でき、本発明の評価方法によってPHA生産量を定量でき、また、定量的な比較も可能であることが示された。 <実施例16> 蛍光染色時に用いる有機溶媒として、アセトンの代わりにジメチルスルホキシドを用いた他は実施例1と同様にして、蛍光強度とPDW量を測定し、両者の相関を求めた。その結果、図17に示すように、両者の間に高い相関が認められた。 以上の結果により、蛍光染色時に、アセトンやアルコール類以外に、ジメチルスルホキシドなど水溶性有機溶媒を含む、種々の有機溶媒が利用でき、本発明の評価方法によってPHA生産量を定量でき、また、定量的な比較も可能であることが示された。 <実施例17> 蛍光染色時に用いる有機溶媒として、アセトンの代わりにジメチルホルムアミドを用いた他は実施例1と同様にして、蛍光強度とPDW量を測定し、両者の相関を求めた。その結果、図18に示すように、両者の間に高い相関が認められた。 以上の結果により、蛍光染色時に、アセトンやアルコール類以外に、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミドなど水溶性有機溶媒を含む、種々の有機溶媒が利用でき、本発明の評価方法によってPHA生産量を定量でき、また、定量的な比較も可能であることが示された。 <実施例18> 蛍光染色の際、有機溶媒アセトンに代えて、1N水酸化カリウム水溶液を用いた他は実施例1と同様にして、蛍光強度とPDW量を測定し、両者の相関を求めた。その結果、図19に示すように、両者の間に高い相関が認められた。 以上の結果により、蛍光染色時、種々の有機溶媒以外に、アルカリ性雰囲気、例えば、1N水酸化ナトリウム水溶液、1N水酸化カリウム水溶液が利用でき、本発明の評価方法によってPHA生産量を定量でき、また、定量的な比較も可能であることが示された。 本発明の評価方法は、細胞を利用するポリヒドロキシアルカノエート生産に関する、その生産性向上を目指した研究開発の加速に役立ち、さらには、ポリヒドロキシアルカノエートの利用分野に大きく貢献するものである。実施例1における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例1における各培地を用いた培養で生産されるPDW量を示した図である。実施例1における各培地を用いた培養で測定される蛍光強度を示した図である。実施例1における各培地を用いた培養で生産される、菌体量あたりのPHA量を示した図である。実施例2における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例3における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例4における各培地を用いたウェル培養で測定される蛍光強度を示した図である。実施例4における各培地を用いたウェル培養で測定されるの蛍光強度から、検量線に基づきPDW量を定量した図である。実施例5における、各種野生株の培養で測定される蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例6における、取得された各野生株の培養で測定される蛍光強度を示した図である。実施例7における、取得された各変異株の培養で測定される蛍光強度を示した図である。実施例11における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例12における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例13における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例14における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例15における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例16における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例17における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。実施例18における、染色条件による蛍光強度とPDW量の相関を示した図である。 ポリヒドロキシアルカノエート生産能を有する細胞を培養して、該細胞により生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価する方法であって、 培養した細胞を有機溶媒存在下で蛍光試薬により染色する工程と、 前記染色した細胞に特定の波長の励起光を照射する工程と、 前記励起光の照射下、得られる蛍光強度を測定する工程と、 前記蛍光強度の測定結果に基づき、前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する工程とを有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法。 前記蛍光試薬により染色する工程に際し、 前記細胞が液媒体に分散されており、 前記液媒体中には、前記有機溶媒と前記蛍光試薬とが含まれており、 前記蛍光強度を測定する工程において、 前記細胞が分散されている液媒体について、蛍光強度の測定を行い、 前記蛍光強度の測定結果に基づき、前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価することを特徴とする請求項1に記載の評価方法。 前記液媒体は、前記細胞の培養液であることを特徴とする請求項2に記載の評価方法。 前記液媒体は、前記細胞を培養した培養液から分離された細胞を、他の媒体に分散した分散液であることを特徴とする請求項2に記載の評価方法。 前記蛍光試薬は、ポリエステルを染色し、且つ、励起光により蛍光を発する試薬であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の評価方法。 前記試薬は、ナイルレッドまたはナイルブルーAの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の評価方法。 前記染色工程に供される培養した細胞について、前記細胞の分散された液媒体の濁度を測定する工程と、 前記濁度の測定結果に基づき、前記細胞の分散された液媒体中の細胞量を定量的に評価する工程と、 前記濁度と前記蛍光強度の測定結果から定量評価される、前記細胞量と前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量に基づき、一定細胞量あたりのポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する工程とを更に有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の評価方法。 前記細胞が微生物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の評価方法。 ポリヒドロキシアルカノエート生産能を有する細胞を培養して、該細胞により生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価する方法であって、 培養した細胞をアルカリ性雰囲気下で蛍光試薬により染色する工程と、 前記染色した細胞に特定の波長の励起光を照射する工程と、 前記励起光の照射下、得られる蛍光強度を測定する工程と、 前記蛍光強度の測定結果に基づき、前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価する工程とを有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産量評価方法。 前記蛍光試薬により染色する工程に際し、 前記細胞が液媒体に分散されており、 前記液媒体中には、前記アルカリ性雰囲気の形成に用いる塩基と前記蛍光試薬とが含まれており、 前記蛍光強度を測定する工程において、 前記細胞が分散されている液媒体について、蛍光強度の測定を行い、 前記蛍光強度の測定結果に基づき、前記細胞内のポリヒドロキシアルカノエート生産量を定量的に評価することを特徴とする請求項9に記載の評価方法。 前記塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであることを特徴とする請求項9または10に記載の評価方法。 ポリヒドロキシアルカノエート生産細胞をスクリーニングする方法であって、 培養した前記細胞について、請求項1〜11のいずれか一項に記載の評価方法を用いて、該細胞により生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価し、ポリヒドロキシアルカノエート生産細胞をスクリーニングする工程を有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産細胞のスクリーニング方法。 ポリヒドロキシアルカノエート生産細胞に対する、ポリヒドロキシアルカノエート生産条件をスクリーニングする方法であって、 該ポリヒドロキシアルカノエート生産条件において培養した前記細胞について、請求項1〜11のいずれか一項に記載の評価方法を用いて、該細胞により生産されるポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価し、ポリヒドロキシアルカノエート生産条件をスクリーニングする工程を有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産条件のスクリーニング方法。 ポリヒドロキシアルカノエート生産細胞を利用するポリヒドロキシアルカノエート生産培養をモニタリングする方法であって、 前記生産培養中、サンプリングされる培養した前記細胞について、請求項1〜11のいずれか一項に記載の評価方法を用いて、該細胞により生産されているポリヒドロキシアルカノエートの生産量を評価し、ポリヒドロキシアルカノエート生産培養をモニタリングすることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート生産培養のモニタリング方法。 【課題】 微生物を利用するポリヒドロキシアルカノエート生産に際し、個々の微生物培養物中に蓄積されるポリヒドロキシアルカノエート産生量を、簡便、迅速、かつ確度高く、定量的に評価する方法の提供。【解決手段】 ポリヒドロキシアルカノエートを産生し、菌体内に蓄積する微生物培養物に対して、有機溶媒存在下、あるいは、液性をアルカリ性とする媒体中において、該培養微生物細胞に蛍光試薬による染色を施し、該細胞からの蛍光強度を測定することで、ポリヒドロキシアルカノエートの蓄積量を定量的に評価することが可能となる。【選択図】 なし