タイトル: | 公開特許公報(A)_ワックスの結晶構造観察用試料の作成方法 |
出願番号: | 2004044046 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N1/28 |
生田 香織 飯倉 登美雄 伊藤 久代 横塚 暁人 高橋 元次 JP 2005233807 公開特許公報(A) 20050902 2004044046 20040220 ワックスの結晶構造観察用試料の作成方法 株式会社資生堂 000001959 舘野 千惠子 100090527 生田 香織 飯倉 登美雄 伊藤 久代 横塚 暁人 高橋 元次 7G01N1/28 JPG01N1/28 KG01N1/28 F 2 1 OL 6 特許法第30条第1項適用申請有り 2G052 2G052AA08 2G052AD26 2G052AD52 2G052EB05 2G052FD06 2G052GA35 2G052JA04 本発明はワックスの結晶構造観察用試料の作成方法に関し、さらに詳しくは簡便にワックスの結晶構造が形成され、その観察を行うことのできるワックスの結晶構造観察用試料の作成方法に関する。 オイル/ワックス系や、それに水や界面活性剤を混合した系は、化粧料において口紅やファンデーションなどの基剤として用いられている。このうちオイル/ワックス系については、ワックスの結晶構造が安定性や使用性に大きく関与することが知られている。 ワックスは通常、単体では結晶同士が密に接触し、積み重なった状態をとっており、結晶構造を観察することはできない。このため、結晶構造を観察する場合には、ワックスを油分に溶かした後、再結晶させ、ついでアセトンで油分を除去し、走査型電子顕微鏡で観察するということが行われてきた(例えば非特許文献1参照)。 しかしながらこの方法で試料を作製した場合、油分を完全に除去することは困難で、アセトンが試料に及ぼす影響も考慮しなければならなかった。SCCJ研究討論会(第50回)講演要旨集、9〜12頁、吉田健介他「ジシロキサンワックスによるオイルワックスの硬度コントロールと口紅への応用」、2002年6月26日 そこで本発明は、ワックスの結晶構造を簡単な方法で明瞭に観察することの可能なワックスの結晶構造観察用試料の作成方法を提供することを目的とする。 本発明は、ワックスの結晶構造の観察に用いられる結晶構造観察用試料の作成方法であって、中空の渦巻状に形成し、水平断面が渦巻形状となるように配置させたアルミ箔を鋳型として用い、前記中空部に溶融ワックスを流し込み、ワックスを固化させた後、渦巻状のアルミ箔間で固化させたワックス薄片を試料とすることを特徴とするワックスの結晶構造観察用試料の作成方法である。 また本発明によれば、ワックスの結晶構造の観察に用いられる結晶構造観察用試料であって、中空の渦巻状に形成し、水平断面が渦巻形状となるように配置させたアルミ箔を鋳型として用い、前記中空部に溶融ワックスを流し込み、ワックスを固化させた後、渦巻状のアルミ箔間で固化させたワックス薄片からなることを特徴とするワックスの結晶構造観察用試料が提供される。 本発明の方法でなぜ結晶同士が密に接触し、積み重なった状態とならず、明瞭な結晶構造を有する薄片試料が得られるのか、その理由は不明ではあるが、中空部に流し込まれた溶融ワックスが渦巻部のアルミ箔間隙で固化する過程で空気を巻き込みながら結晶が成長していくためであるとも考えられる。 本発明のワックスの結晶構造観察用試料の作成方法によれば、ワックスの結晶構造を簡単な方法で明瞭に観察することが可能な結晶構造観察用試料を得ることができる。またワックスの結晶構造を正確に知ることで、製品に応じて最適なワックスを選択することができるようになる。 以下に、本発明の最良の実施の形態について説明する。 本発明で用いられるワックスとしては、その種類を問わず何でもよく、例えば水素添加ホホバ油、ポリエチレンワックス、カルナウバロウ、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。 本発明においては、中空の渦巻状に形成し、水平断面が渦巻形状となるように配置させたアルミ箔を鋳型として用いる。アルミ箔は、通常の市販されているものでよいが、表裏面ともに光沢面となるように、二つ折にしたものを用いて中空の渦巻状に成型したものがよい。中空部分のサイズは問わないが、例えば、径3〜10mm、高さ5〜20mmとする。渦巻部分は間隙が狭い方がよく、例えば20μm程度の間隙とし、ワックスの薄片が形成され得る程度の間隙を有するようにする。 このように形成された鋳型を用いて、その中空部に溶融ワックスを流し込む。溶融ワックスは溶融していればよく、ワックスの融点によっても異なるが、通常、70〜90℃の温度で溶融したものを用いる。 次いで、そのまま放置してワックスを固化させた後、渦巻状のアルミ箔を押し広げ、アルミ箔間で固化したワックス薄片を取り出して試料とする。 次に本発明の実施例について説明する。実施例1 図1は、本発明によるワックスの結晶構造観察用試料の作成方法を示す工程図である。 2cm×20cmの短冊状のアルミ箔を準備する。このアルミ箔を、光沢面が外側になるように短手方向に2等分して折曲し、5mm径程度のガラス棒を用いて渦巻状に固く巻く。巻き終わったら、ガラス棒を外して図1(a)に示すように静置し、鋳型を形成する。次いで80℃に溶融した水素添加ホホバ油を鋳型の中空部に流し入れ(図1(b))、常温で固化させる。 得られた渦巻状のアルミ箔を剥がして、アルミ箔間で固化したワックス薄片を取り出し(図1(c))、グロー放電型のイオンスパッターを用いて観察表面に金属蒸着(白金−パラジウム)を施し、試料に導電性をもたせた後、日立社製汎用走査電子顕微鏡を用いて観察したところ、図2に示すようにフレーム状の結晶構造(カードハウス構造)が確認された。図3は、上記と同じものを拡大して観察したものである。 比較のためにアルミ箔の中空部における固化ワックスを走査型電子顕微鏡で観察した。その横断面を図4に示し、側面を図5に示す。図4においてはカードハウス構造は確認されず、図5においてもごく一部の箇所を除いてカードハウス構造ではないことが分かる。比較例1 比較例として、次の方法でアルミ箔を用いた固化ワックス薄片を作成し、その構造を観察した。(作成方法)(1)アルミ箔を平滑な台の上に広げる。(2)加熱溶解したワックスをアルミ箔の上に適当量垂らし、迅速にドクターブレードを用いて厚さ約20μmの薄片を作成する。(3)ワックスが固化した後、薄片状に形成されたワックスをアルミ箔から剥がし取り、表面にイオンスパッターで金属蒸着を施し、SEM観察する。(結果) アルミ箔と接触している面の構造は一つ一つの結晶構造が密になっており、アルミ箔と接触していない面(ドクターブレード接触面)においては部分的にしか結晶構造を確認することができなかった。このように、実施例1で作成した薄片のような整ったカードハウス構造は確認できなかった。実施例2 上記と同様の方法でポリエチレンワックス、カルナウバロウ、セレシンおよびマイクロクリスタリンワックスについても結晶観察用試料を作製した。得られた試料を金属蒸着後、走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれも結晶構造(カードハウス構造)が観察された。本発明によるワックスの結晶構造観察用試料の作成方法を示す工程図である。本発明の方法で作成された水素添加ホホバ油の結晶構造観察用試料の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。本発明の方法で作成された水素添加ホホバ油の結晶構造観察用試料の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。比較用の水素添加ホホバ油の結晶構造観察用試料の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。比較用の水素添加ホホバ油の結晶構造観察用試料の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 ワックスの結晶構造の観察に用いられる結晶構造観察用試料の作成方法であって、 中空の渦巻状に形成し、水平断面が渦巻形状となるように位置させたアルミ箔を鋳型として用い、前記中空部に溶融ワックスを流し込み、ワックスを固化させた後、渦巻状のアルミ箔間で固化させたワックス薄片を試料とすることを特徴とするワックスの結晶構造観察用試料の作成方法。 ワックスの結晶構造の観察に用いられる結晶構造観察用試料であって、 中空の渦巻状に形成し、水平断面が渦巻形状となるように位置させたアルミ箔を鋳型として用い、前記中空部に溶融ワックスを流し込み、ワックスを固化させた後、渦巻状のアルミ箔間で固化させたワックス薄片からなることを特徴とするワックスの結晶構造観察用試料。 【課題】 ワックスの結晶構造を簡単な方法で明瞭に観察することの可能なワックスの結晶構造観察用試料の作成方法を提供する。【解決手段】 中空の渦巻状に形成し、水平断面が渦巻形状となるように位置させたアルミ箔を鋳型として用い、前記中空部に溶融ワックスを流し込み、ワックスを固化させた後、渦巻状のアルミ箔間で固化させたワックス薄片を試料として用いる。【選択図】 図1