生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ナトリウム透過阻害剤とその使用方法
出願番号:2004043818
年次:2005
IPC分類:7,A61K31/4965,A01N43/60,A61P7/10,A61P43/00,C07D241/26


特許情報キャッシュ

冨沢 好太郎 渥美 龍男 吉村 文信 難波 啓一 JP 2005232091 公開特許公報(A) 20050902 2004043818 20040220 ナトリウム透過阻害剤とその使用方法 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 北川 治 100097733 冨沢 好太郎 渥美 龍男 吉村 文信 難波 啓一 7A61K31/4965A01N43/60A61P7/10A61P43/00C07D241/26 JPA61K31/4965A01N43/60A61P7/10A61P43/00 111C07D241/26 6 1 OL 13 4C086 4H011 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC48 4C086MA17 4C086MA44 4C086NA05 4C086ZA83 4C086ZC41 4H011AA02 4H011BB08 本発明は、ナトリウム透過阻害剤と、その使用方法に関する。更に詳しくは、本発明は、アミロライド化合物ファミリーに属する新規なナフタミル化合物からなり、又はこれを有効成分とするナトリウム透過阻害剤であって、そのナトリウム透過阻害効果が高く、かつ従来のアミロライド化合物ファミリーのナトリウム透過阻害剤とは作用機構が異なると推定されるナトリウム透過阻害剤と、その使用方法とに関する。 近年、マイクロマシンやナノマシンとの関係で、微生物のべん毛モータ、例えばナトリウム駆動型べん毛モータの研究が注目されている。又、医療や健康に関連する方面では、ヒトを含む動物細胞におけるイオン透過チャネル、例えばナトリウムイオン透過チャネルの研究は重要な意味を持つし、ヒト又は動物の細胞又は組織におけるナトリウム透過の阻害又は調節に用いられる有効な医薬の提供も望まれている。 このような事情から、従来より種々のナトリウム透過阻害剤が提案されているが、その重要なカテゴリーの一つに、本願発明者らが関わっているアミロライド化合物ファミリーのナトリウム透過阻害剤がある。アミロライド化合物は利尿剤として開発されたものであって、膀胱上皮細胞のナトリウムイオンチャネルを阻害する。このような「アミロライド」とは、周知のように、3,5−ジアミノ−N−(アミノイミノメチル)−6−クロロピラジンカルボキサミド、即ち下記の「化2」に示す化合物において「R1 」、「R2 」部分が共に水素原子であるものを言う。 下記の「非特許文献1」等の幾つかの公知文献においては、好アルカリ性バチルス属細菌のナトリウム駆動型べん毛モータに対するアミロライド化合物ファミリーのナトリウム透過阻害剤(アミロライド化合物、ベンザミル化合物、フェナミル化合物)の効果が報告されている。Shigeru Sugiyama, Edward J. Cragoe Jr., Yasuo Imae"Amiloride, a Specific Inhibitor for the Na + -driven Flagellar Motorsof Alkalophilic Bacillus" The Journal of Biological Chemistry vol.263,No.17, 8215-8219 上記した「ベンザミル型のナトリウム透過阻害剤」とは上記の「化2」に示す化合物における「R1 」部分の水素原子がベンジル基に置換されたものを言い、「フェナミル型のナトリウム透過阻害剤」とは上記の「化2」に示す化合物における「R1 」部分の水素原子がフェニル基に置換されたものを言う。 ところで、アミロライド化合物ファミリーのナトリウム透過阻害剤はナトリウム駆動型べん毛モータに対しても有効な阻害効果を有するが、この内、アミロライド化合物については有効な阻害効果のためにmM(ミリモル)オーダーの濃度が必要である。しかし、このような濃度でアミロライド化合物を投与すると、DNAの生合成の阻害等の副作用が発現すると言う不具合がある。一方、アミロライド化合物ファミリーにおけるそれ以外の化合物は例えば100μM程度の濃度でナトリウム駆動型べん毛モータに対して有効な阻害効果を示し、この濃度では上記のような副作用が発現する恐れが比較的少ない。 従って、更に低濃度、例えば10μM程度の濃度でナトリウム駆動型べん毛モータに対して有効な阻害効果を示す(換言すれば、一般的な意味でのナトリウム透過阻害の高い)新規なナトリウム透過阻害剤が提供されることが望ましい。 又、アミロライド化合物ファミリーに属する既存のナトリウム透過阻害剤の中ではフェナミル型が最も阻害効果が高く、副作用も少ないが、最近になってフェナミル型ナトリウム透過阻害剤の効かない変異株が分離されている。 このようなフェナミル耐性微生物の例示として、好アルカリ性バチルス属細菌( Bacillus firmus RAB)のフェナミル耐性変異株、ビブリオ属の病原性細菌である腸炎ビブリオ( Vibrio parahaemolyticus)のフェナミル耐性変異株、及びその近縁で非病原性のビブリオ・アルギノリティカス(Vibrio alginolyticus)が挙げられる。 そこで本発明は、既知のアミロライド化合物ファミリーのナトリウム透過阻害剤に比較して少なくとも同程度か又はそれ以上の作用効果があり、しかもフェナミル耐性微生物に対しても十分に効果を発現することができる新規なナトリウム透過阻害剤を提供することを、解決すべき技術的課題とする。 (第1発明の構成) 上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、下記の「化3」に示す基本構造を有するナフタミル化合物の1種又は2種以上からなり、又はこれを有効成分とする、ナトリウム透過阻害剤である。(上記「化3」中、R3 は塩素:Cl、フッ素:F、臭素:Br、ヨウ素:I、アスタチン:Atのいずれかである。) (第2発明の構成) 上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係るナフタミル化合物が、そのナフタレン骨格構造部の任意の置換位置に任意の置換基が付加されたものである、ナトリウム透過阻害剤である。 (第3発明の構成) 上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第2発明に係る置換基が疎水性の置換基である、ナトリウム透過阻害剤である。 (第4発明の構成) 上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係るナトリウム透過阻害剤が、ヒト又は動物の細胞又は組織におけるナトリウム透過の阻害又は調節に用いられる医薬である、ナトリウム透過阻害剤である。 (第5発明の構成) 上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、第1発明〜第3発明のいずれかに係るナトリウム透過阻害剤を、ナトリウム駆動型べん毛モータの研究又は動物細胞のナトリウムイオンチャネルの研究に用いる、ナトリウム透過阻害剤の使用方法である。 (第6発明の構成) 上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、第1発明〜第3発明のいずれかに係るナトリウム透過阻害剤を、フェナミル型ナトリウム透過阻害剤の効果が制約される微生物に対して使用する、ナトリウム透過阻害剤の使用方法である。 (第1発明の効果) 第1発明のナトリウム透過阻害剤は、前記した「化3」に示す基本構造を有するナフタミル化合物の1種又は2種以上を含んでいる。 このナフタミル化合物は、既知のアミロライド化合物ファミリーの各種ナトリウム透過阻害剤、例えばアミロライド型やベンザミル型に比較して格段に阻害効果が高い。又、既知のアミロライド化合物ファミリーの中で最も阻害効果が高いフェナミル型との比較において、次の2点の知見が得られている。 即ち、第1点として、通常の微生物への適用においてフェナミル型ナトリウム透過阻害剤とほぼ同程度の阻害効果が認められる。第2点として、フェナミル型ナトリウム透過阻害剤の効果が制約されるフェナミル耐性微生物、例えば前記した好アルカリ性バチルス属細菌( Bacillus firmus RAB)のフェナミル耐性変異株等に対しても十分に効果を発現することができ、ビブリオ属の病原性細菌である腸炎ビブリオ( Vibrio parahaemolyticus)のフェナミル耐性変異株、及びその近縁で非病原性のビブリオ・アルギノリティカス(Vibrio alginolyticus)等に対しても同様であると推定することができる。 以上の2点の知見は、第1発明のナフタミル型ナトリウム透過阻害剤が非常に有用な新規化合物であることを示すと共に、ナフタミル型ナトリウム透過阻害剤がフェナミル型ナトリウム透過阻害剤とは異なる作用機序を持つことを示唆するものでもある。 なお、「化3」において「R3 」は前記のように塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)のいずれかであるが、この内、R3 が臭素である場合には、紫外線の照射によりタンパク質を共有結合を形成し、従ってタンパク質をラベルすることが可能であると考えられる。 (第2発明の効果) 上記した第1発明に係るナトリウム透過阻害剤としては、「化3」に示す基本構造におけるナフタレン骨格構造部に置換基が付加されていないものが代表的であるが、第2発明のように、そのナフタレン骨格構造部の任意の置換位置に任意の置換基が付加されたものも有効であり得る、と考えることができる。 (第3発明の効果) 上記した第2発明に係るナトリウム透過阻害剤において、前記置換基が疎水性の置換基であることが、特に好ましいと考えられる。疎水性の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等が例示される。 (第4発明の効果) 上記した第1発明〜第3発明に係るナトリウム透過阻害剤の用途もしくは使用方法は限定されないが、特に好ましい用途の一つが、第4発明のように、ヒト又は動物の細胞又は組織におけるナトリウム透過の阻害又は調節に用いられる医薬である。 (第5発明の効果) 第1発明〜第3発明に係るナトリウム透過阻害剤の好ましい使用方法の一つが、第5発明のように、ナトリウム駆動型べん毛モータの研究又は動物細胞のナトリウムイオンチャネルの研究に用いることである。 なお、ナトリウム駆動型べん毛モータは、その駆動原理やナトリウム透過の仕組みあるいは構成が十分に解明された訳ではないが、アミロライド化合物ファミリーのナトリウム透過阻害剤によって駆動が阻害される(即ち、遊泳速度が低下する)ことから、その駆動機構がナトリウムイオンチャネルに関連していると考えられている。 従って、ナトリウム駆動型べん毛モータによってべん毛運動を行う細菌は、ナトリウム透過阻害剤の作用により遊泳速度が低下し、このことがナトリウム透過阻害剤を評価するための有効な指標となる。 (第6発明の効果) 第1発明〜第3発明に係るナトリウム透過阻害剤を用いるに当たり、第6発明のように、フェナミル型ナトリウム透過阻害剤の効果が制約される微生物に対して使用することが、とりわけ好ましい。 次に、本願の第1発明〜第6発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。以下において単に「本発明」と言う時は、本願の各発明を一括して指している。 〔ナトリウム透過阻害剤〕 本発明に係るナトリウム透過阻害剤は、前記した「化3」に示す基本構造を有するナフタミル化合物を有効成分とする。これらのナフタミル化合物の一つの代表例は、「化3」に示す基本構造そのままのナフタミル化合物である。もう一つの代表例は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、そのナフタレン骨格構造部の任意の置換位置に任意の置換基が付加されたものである。置換基としては、疎水性の置換基が好ましく、例えばメチル基、エチル基等を例示できる。 ナトリウム透過阻害剤は、上記のナフタミル化合物の少なくとも1種を含む。2種以上のナフタミル化合物を含んでいても良い。又、ナトリウム透過阻害剤は、製剤上必要又は有益なナフタミル化合物以外の1種又は2種以上成分を任意に含むことができる。又、このナトリウム透過阻害剤は、使用時には一般的に水溶液や緩衝液溶液等の剤型で用いられるが、保存・流通時においては保存安定性の見地から粉末形態で冷暗所などに保存することが好ましい。 〔ナトリウム透過阻害剤の用途又は使用方法〕 本発明に係るナトリウム透過阻害剤の用途、使用方法は限定されない。ナトリウム透過阻害剤の好ましい用途の一つが、ヒト又は動物の細胞又は組織におけるナトリウム透過の阻害又は調節に用いられる医薬である。 又、ナトリウム透過阻害剤の好ましい使用方法の一つが、ナトリウム駆動型べん毛モータの研究又は動物細胞のナトリウムイオンチャネルの研究に用いることである。 ナトリウム透過阻害剤の他の好ましい使用方法の一つが、フェナミル型ナトリウム透過阻害剤の効果が制約される微生物に対して上記のような医薬として用い、あるいは研究目的に使用することである。 (実施例1:ナフタミル化合物の合成) 本実施例に係るナフタミル化合物の合成スキームを図1に示す。このナフタミル化合物は、前記「化3」においてR3 が塩素のものである。 まず、無水条件下でメタノールにナトリウムを加え、CH3 ONaを生成させた。次にこのメタノール溶液をナフチルグアニジン塩酸塩に加え、Freeナフチルグアニジンを調製した。この時に生じたNaClを無水条件下で濾過して除き、ナフチルグアニジン−メタノール溶液を濃縮した。 次に、濃縮したナフチルグアニジン−メタノール溶液に図1の「1」の化合物を加えた。そして結晶が析出するまで18時間還流し、その後に冷却、濾過して、得られた固体をDMF−イソプロパノルを用いて再結晶させた。再結晶により得られた化合物の構造確認を13C NMRにより常法に従って行い、再結晶物が目的とするナフタミル化合物であることを確認した。構造確認時の13C NMRのデータの提示は省略する。 (実施例2:検体細菌の準備) 実施例で使用した検体細菌は、ナトリウム駆動型べん毛モータを持つ好アルカリ性細菌 Bacillus firmus RAB株のストレプトマイシン耐性株である RA-1 株と、この RA-1 株のフェナミル耐性変異株である RA-30株である。 菌株の生育は、下記の組成の AB-5 培地(pH9.5、トータルナトリウム濃度5mM)に上記の菌株を植菌して35°Cで振とうし、対数増殖の後期に菌体を遠心分離により回収した後、下記の組成のTG培地(トリスグルコース培地)に懸濁することにより行った。 AB-5 培地の組成: 0.5% ポリペプトン 0.75% 酵母粉末エキス 0.5% ブドウ糖 0.75% リン酸二水素カリウム 0.01% 塩化マグネシウム 0.5mM 塩化ナトリウム 23mM 炭酸カリウム TG培地の組成: 25mM トリス−塩酸緩衝液(pH9.5) 5mM ブドウ糖 5mM 塩化ナトリウム (実施例3:阻害効果の測定) 本実施例では、実施例1で調製したナフタミル化合物、及び既存のアミロライド化合物とフェナミル化合物を用いて検体細菌の遊泳速度の測定を行うことにより、各化合物のナトリウム透過阻害効果を対比した。 即ち、ナトリウムイオンの濃度を5mMとした上記の各化合物の各種濃度の溶液であって、塩化コリン又は塩化カリウムの添加により塩強度を50mMに合わせた遊泳培地(TG培地をベースにしている)を調製し、実施例2に係る2種類の検体細菌の懸濁液をこの遊泳培地でそれぞれ200倍に希釈した。次に、その希釈液をスライドグラス上に1滴垂らし、暗視野顕微鏡で観察した。その際、顕微鏡に接続したCCDカメラで検体細菌の遊泳の様子をビデオに録画し、又、別途に対物マイクロメーターの像を録画した。 上記の録画したビデオを再生し、暗室でモニター画面を1秒間露光により写真撮影するか、又はモニター画面を電子的に積算して、検体細菌の遊泳軌跡画像を得た。そして遊泳軌跡長を対物マイクロメーターの像を基準にして測定することにより、検体細菌の遊泳速度を求めた。 次に、こうして求めた検体細菌の遊泳速度と、その遊泳培地における各化合物の濃度との関係から、各化合物についてID50を求めた。ここで「ID50」とは、「ナトリウム透過阻害剤を含まない遊泳培地において測定された検体細菌の遊泳速度と比較して、遊泳速度が半分となるような各化合物の濃度」を言う。 更に、各化合物の阻害作用がナトリウムイオンに対して拮抗的であるか否かを確認した。その確認方法は、検体細菌の遊泳速度からべん毛モータを通るナトリウムの流入速度を推定し、両逆数プロットと呼ばれる反応速度論的解析を行う方法によった。 より具体的に言うと、ナフタミル化合物、アミロライド化合物、フェナミル化合物を無添加又はID50の濃度に加えた遊泳培地において、その培地のナトリウム濃度を0mMから50mMの範囲内で幾通りかに変化させた系列の遊泳培地を調製し、前記の方法で各遊泳培地中の検体細菌の遊泳速度を測定する。 次に、ナトリウムの流入速度は、遊泳速度の2乗を細菌の細胞膜を介して出来ているナトリウムの電気化学的勾配で除したものに比例すると仮定して求め、ナフタミル化合物、アミロライド化合物、フェナミル化合物の各濃度(0mMの場合を含む)の場合の測定値について、それぞれ、遊泳培地のナトリウム濃度の逆数を横軸に、ナトリウムの流入速度の逆数を縦軸にとってプロットを行い、直線近似して、それを外挿した2本の直線が交差する場所により、拮抗、非拮抗の阻害様式を判断する。 ここで、ナトリウムの電気化学的勾配は、文献値より求めた膜電位及び菌体内ナトリウム濃度を使って、常法により計算して求めた。2本の直線の交点が縦軸(y軸)上であれば拮抗阻害、2本の直線の交点が横軸(x軸)上であれば非拮抗阻害、2本の直線の交点が第2象限であれば拮抗阻害と非拮抗阻害の両方の性質を持つ阻害であると判断される。 化合物の阻害作用がナトリウムイオンと「拮抗的である」とは、ナトリウムイオンの濃度が高いと阻害が抑制されること、即ち、見かけ上、ナトリウムイオンと阻害剤の結合部位が同じであることを意味し、「非拮抗的である」とは、ナトリウムイオンの濃度が阻害に無関係であること、即ち、見かけ上、ナトリウムイオンと阻害剤の結合部位が異なることを意味する。 以上の結果、比較例たるアミロライド化合物の場合、そのID50は RA-1 株及び RA-30株の両者に対して1mMであり、その阻害作用は RA-1 株及び RA-30株の両者においてナトリウムイオンと拮抗的であった。比較例たるフェナミル化合物の場合、そのID50は RA-1 株に対しては5μM、 RA-30株に対しては75μMであり、その阻害作用は RA-1 株においては非拮抗的であり、 RA-30株においては拮抗阻害と非拮抗阻害の両方の性質を持つ阻害であった。 これらに対して、実施例たるナフタミル化合物の場合、そのID50は RA-1 株及び RA-30株の両者に対して20μMであり、阻害作用は RA-1 株及び RA-30株の両者においてナトリウムイオンと非拮抗的であった。 (阻害効果の評価) 実施例3の結果から、本発明に係るナフタミル化合物に関して次のイ)〜ハ)のような評価を行うことができる。 イ) RA-1 株及び RA-30株に対するID50は、アミロライド化合物では1mMであるのに対して、フェナミル化合物及びナフタミル化合物では100μM以下のオーダーである。従って、フェナミル化合物及びナフタミル化合物は、アミロライド化合物に比較して、格段に優れたナトリウム透過阻害剤である。 ロ)フェナミル化合物とナフタミル化合物との対比において、 RA-1 株に対するID50はほぼ同等(5μMと20μM)であるが、 RA-30株に対するID50においてはナフタミル化合物が著しく優れ、しかもナフタミル化合物では RA-1 株に対するID50と同じである。即ち、本発明に係るナフタミル化合物は、フェナミル型ナトリウム透過阻害剤の効かない変異株に対しても十分に有効である。 ハ)フェナミル化合物のID50が大きく異なる RA-1 株及び RA-30株に対して、ナフタミル化合物のID50は共に20μMである。このことは、使用上のメリットの面からは、極めて低濃度で投与目的を達成できるために細菌や動物細胞等に過剰量投与による副作用を与え難いことを意味し、作用メカニズムの面からはナフタミル化合物がフェナミル化合物とは異なる結合部位に作用することを示唆している。 ニ)ナフタミル化合物は、 RA-1 株と RA-30株のいずれに対してもナトリウムイオンと非拮抗的に作用することから、ナトリウム濃度のより高い条件(例えば、50mM〜500mM)で遊泳するビブリオ菌の野性株ナトリウム駆動型べん毛モータに対しても極めて有効であり、又、ビブリオ菌のフェナミル耐性変異株に対しても有効でると予測することができる。 ナフタミル化合物を用いたナトリウム透過阻害剤は、極めて低濃度で有効であり、かつフェナミル耐性変異株にも有効であるため、ナトリウム駆動型べん毛モータの研究や動物細胞のナトリウムイオンチャネルの研究、あるいはナトリウム透過阻害を目的とする各種の医療用途に好ましく用いることができる。とりわけ、フェナミル耐性変異株を用いた研究に好ましく用いることができる。実施例に係るナフタミル化合物の合成スキームを示す図である。下記の「化1」に示す基本構造を有するナフタミル化合物の1種又は2種以上からなり、又はこれを有効成分とすることを特徴とするナトリウム透過阻害剤。(上記「化1」中、R3 は塩素:Cl、フッ素:F、臭素:Br、ヨウ素:I、アスタチン:Atのいずれかである。)前記ナフタミル化合物が、そのナフタレン骨格構造部の任意の置換位置に任意の置換基が付加されたものであることを特徴とする請求項1に記載のナトリウム透過阻害剤。前記置換基が疎水性の置換基であることを特徴とする請求項2に記載のナトリウム透過阻害剤。前記ナトリウム透過阻害剤が、ヒト又は動物の細胞又は組織におけるナトリウム透過の阻害又は調節に用いられる医薬であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のナトリウム透過阻害剤。請求項1〜請求項3のいずれかに記載のナトリウム透過阻害剤を、ナトリウム駆動型べん毛モータの研究又は動物細胞のナトリウムイオンチャネルの研究に用いることを特徴とするナトリウム透過阻害剤の使用方法。請求項1〜請求項3のいずれかに記載のナトリウム透過阻害剤を、フェナミル型ナトリウム透過阻害剤の効果が制約される微生物に対して使用することを特徴とするナトリウム透過阻害剤の使用方法。 【課題】 既知のアミロライド化合物ファミリーのナトリウム透過阻害剤に比較して同程度以上の効果があり、フェナミル耐性微生物に対しても十分に有効な、新規ナトリウム透過阻害剤を提供する。【解決手段】 アミロライド化合物誘導体であるナフタミル化合物を有効成分とするナトリウム透過阻害剤。ナトリウム透過の阻害又は調節を目的とする、その医療上の利用。ナトリウム駆動型べん毛モータ又は動物細胞のナトリウムイオンチャネルの研究への上記ナトリウム透過阻害剤の利用。特に、フェナミル型ナトリウム透過阻害剤の効果が制約される微生物に対する利用。【選択図】 図1 20040622A1633000053Shigeru Sugiyama, Edward J. Cragoe Jr., Yasuo Imae"Amiloride, a Specific Inhibitor for the Na+ -driven Flagellar Motors of Alkalophilic Bacillus" The Journal of Biological Chemistry vol.263,No.17, 8215-8219 上記した「ベンザミル型のナトリウム透過阻害剤」とは上記の「化2」に示す化合物における「R1 」部分の水素原子がベンジル基に置換されたものを言い、「フェナミル型のナトリウム透過阻害剤」とは上記の「化2」に示す化合物における「R1 」部分の水素原子がフェニル基に置換されたものを言う。A1633000213 なお、「化3」において「R3 」は前記のように塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)のいずれかであるが、この内、R3 がヨウ素である場合には、紫外線の照射によりタンパク質と共有結合を形成し、従ってタンパク質をラベルすることが可能であると考えられる。A16331全図3


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