タイトル: | 公開特許公報(A)_パクリタキセル又はドセタキセルの医薬組成物 |
出願番号: | 2004036642 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K31/337,A61K9/107,A61K9/127,A61K47/10,A61K47/24,A61K47/34,A61K47/44,A61P35/00 |
武田 光市 松田 憲治 寺尾 敏光 井上 忠昭 JP 2005225818 公開特許公報(A) 20050825 2004036642 20040213 パクリタキセル又はドセタキセルの医薬組成物 株式会社大塚製薬工場 000149435 岩谷 龍 100077012 武田 光市 松田 憲治 寺尾 敏光 井上 忠昭 7A61K31/337A61K9/107A61K9/127A61K47/10A61K47/24A61K47/34A61K47/44A61P35/00 JPA61K31/337A61K9/107A61K9/127A61K47/10A61K47/24A61K47/34A61K47/44A61P35/00 9 OL 10 4C076 4C086 4C076AA17 4C076AA19 4C076BB17 4C076CC27 4C076DD15F 4C076DD37E 4C076DD63F 4C076EE23E 4C076EE51F 4C076FF12 4C076FF15 4C076FF16 4C076FF34 4C076FF36 4C076FF43 4C076FF67 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA02 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA22 4C086MA24 4C086MA66 4C086NA03 4C086NA06 4C086ZB26 本発明は、パクリタキセル又はドセタキセルを高濃度に溶解する医薬組成物及びその医薬組成物を含有する静脈注射用エマルジョン又はリポソーム製剤に関する。 パクリタキセル又はドセタキセルはタキサンに分類される化合物で、卵巣癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌及び食道癌等に対して有効な抗悪性腫瘍剤として臨床に使用されている。しかしパクリタキセル又はドセタキセルは水にほとんど溶けないため、注射用溶液を得るために種々製剤化が試みられてきた。現在、パクリタキセルは、クレモホールEL(Cremophor EL;ポリオキシエチレンヒマシ油)とエタノールの50:50の混合物に溶解した粘稠性の油液(パクリタキセルを約6mg/mL含有。)として供給されている。パクリタキセル投与時に、パクリタキセル210mg/m2(体表面積)となる量の前記油液が輸液(5%ブドウ糖注射液又は生理食塩液)に混和され、投与用輸液として調製される。また、ドセタキセルは、ポリソルベート80に溶解した製剤(ドセタキセルを約40mg/mL含有。)として供給され、投与時に、添付の溶解液(13%エタノール溶液)と混合してプレミックス液(ドセタキセルを約10mg/mL含有。)とした後、ドセタキセル60mg/m2(体表面積)となるよう、輸液(5%ブドウ糖注射液又は生理食塩液)に混和、調製される。 上記混和、調製後の輸液は、パクリタキセル又はドセタキセルの輸液中での安定性が悪いのでできるだけ速やかに投与する必要がある。 また、上記製剤に使用されているクレモホール及びポリソルベートは界面活性剤であるため、これら界面活性剤に過敏症の既往歴のある患者はアナフィラキシーショック現象が現れる危険性がある。 またパクリタキセルの溶解した油液、及びドセタキセルのプレミックス液にはエタノールが含有されるため、パクリタキセル等を高容量で投与しようとすると、投与製剤中のエタノールの濃度も高くなりアルコール過敏症の患者にはアルコール中毒を引き起こす危険性もある。 このため、パクリタキセルおよびドセタキセルの製剤が種々検討されてきた。例えば実質的にエタノールを含まない製剤として、パクリタキセル等の治療薬、トコール、補助溶剤及び界面活性剤を含むエマルジョンが提案されている(特許文献1参照)。 しかし、上記製剤にも、界面活性剤が使用されている。界面活性剤は、上記した例えばアナフィラキシーショックの出現等、副作用の一因となることが知られており、安全性に未だ問題がある(特許文献2参照)。 また、アルコール溶液中にパクリタキセルを溶解し、当量の油に加えられ、透明になるまで混合された後、アルコールを回転蒸発又は窒素流下の蒸発により除去して製造されるエマルジョンが記載されている(特許文献2参照。) しかし、パクリタキセルは大豆油に対する溶解度も低いため(非特許文献1参照)、長期的には、結晶析出などの安定性における問題が懸念される。 このような状況下、パクリタキセル又はドセタキセルの所望量の可溶化が可能で、かつ副作用等安全性の面でも問題のないパクリタキセル又はドセタキセル製剤の開発が望まれている。特表2003−500368号公報特表平10−502921号公報アダム・ジェイ・ディー(Adam,J.D)ら、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート・モノグラフ(Journal of the National Cancer Institute Monographs)、1993年、第15巻、p.141−147 本発明の目的は、パクリタキセル又はドセタキセルを高濃度に溶解する技術、及びパクリタキセル又はドセタキセルを安定に可溶化又は分散化できる医薬製剤を確立、提供することにある。 本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、パクリタキセル又はドセタキセルは、エタノール及びポリエチレングリコールの混合溶液中で高濃度に溶解しうること、さらにこの溶解溶液を、エマルジョンと混和することにより、パクリタキセルが容易にエマルジョン中で均一に可溶化又は分散化するということを見出した。本発明は、これらの知見を基礎として更に種々研究を重ね完成されたものである。 すなわち本発明は、(1) パクリタキセル又はドセタキセル、エタノール及びポリエチレングリコールを含有し、エタノールとポリエチレングリコールの比が1:4〜4:1(w/w)である医薬組成物、(2) 医薬組成物中のパクリタキセル又はドセタキセルの濃度が100〜400mg/mLである上記(1)記載の医薬組成物、(3) ポリエチレングリコールの平均分子量が100〜4000である上記(1)又は(2)記載の医薬組成物、(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物、油脂及びリン脂質を含有するエマルジョン製剤である静脈注射用医薬組成物、(5)) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物及びリン脂質を含有するリポソーム製剤である静脈注射用医薬組成物、(6) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物の、静脈注射用医薬組成物に対する含有割合が0.1〜5.0v/v%である上記(4)又は(5)記載の静脈注射用医薬組成物、(7) パクリタキセルの濃度が0.01〜0.5w/v%である上記(6)記載の静脈注射用医薬組成物、(8) ドセタキセルの濃度が0.01〜0.5w/v%%である上記(6)記載の静脈注射用医薬組成物、(9) 上記(1)〜(8)のいずれかに記載の医薬組成物を製造するための、エタノールとポリエチレングリコールの比が1:4〜4:1(w/w)であるエタノール−ポリエチレングリコール混液の使用、に関する。 本発明のパクリタキセル又はドセタキセル、エタノール及びポリエチレングリコールを含有する医薬組成物(以下、単に本発明の医薬組成物ということもある。)は、パクリタキセル又はドセタキセルが高濃度に溶解されている。このため、本発明の医薬組成物は、患者に投与するために輸液(エマルジョン製剤又はリポソーム製剤)と混合する医薬組成物の割合を、少なくとも従来品の1/10以下にすることができる。これにより、本発明の医薬組成物に含有するエタノールの割合も非常に少なくなるため、患者の体内に入るエタノールが非常に少なくなるので、アルコール感受性の高い患者に対しても安心して用いることができる。 また、本発明の医薬組成物は、アレルゲンとなる界面活性剤を使用しないため、アナフィラキシーの心配もなく患者に用いることができる。 本発明の医薬組成物に使用するポリエチレングリコールの平均分子量は100〜4000、好ましくは200〜1000が選ばれる。ポリエチレングリコールは、上記平均分子量範囲であれば、1つの平均分子量のものを用いてもよく、2以上の平均分子量のものを混和して用いてもよい。 エタノールとポリエチレングリコールの重量比は、通常約1:4〜約4:1、好ましくは、約2:3〜約3:2の範囲から適宜選択される。 本発明の医薬組成物中のパクリタキセル又はドセタキセルの濃度は、約50〜400mg/mL、好ましくは100〜400mg/mLの濃度範囲で適宜調整できる。 パクリタキセル又はドセタキセルは、上記比率で混和されたエタノール−ポリエチレングリコール混液に添加後、攪拌、振とう等の通常の操作を行うことにより溶解できる。所望により、60〜70℃に加温して溶解してもよい。 製薬工場で製造され、流通市場に供給された本発明の医薬組成物を用いて病院の臨床において、本発明の静脈注射用医薬組成物を調製して患者に投与するのがよい。 本発明の静脈注射用医薬組成物は、エマルジョン製剤として製剤化できる。エマルジョン製剤に使用できる油脂としては、医薬分野において使用される油脂であればいずれも用いることができるが、通常植物油及びトリグリセリドが好ましい。該植物油としては、例えば大豆油、綿実油、菜種油、胡麻油、コーン油、落花生油、サフラワー油、オリーブ油、ヒマシ油、ヤシ油、シソ油、エゴマ油等が挙げられる。トリグリセリドとしては、例えば中鎖脂肪酸トリグリセリド[例えば、パナセート(商品名;日本油脂株式会社製)、ODO(商品名;日清製油株式会社製)、ココナードMT(商品名;花王株式会社製)等]、化学合成トリグリセリド類(例えば、2−リノレオイル−1,3−ジオクタノイルグリセロール、2−リノレオイル−1,3−ジデカノイルグリセロール等)が挙げられる。上記植物油及びトリグリセリドから選ばれた1種又は2種以上の油脂が好適に用いられる。 更に、油脂は、上記植物油及びトリグリセリドに限定されることなく、例えば、動物油、鉱油、合成油、精油等1種又は2種以上の油脂を使用することもできる。また、これら動物油等を、前記植物油及び/又はトリグリセリドと混合して用いることもできる。 エマルジョン製剤に使用できるリン脂質としては、天然及び合成のリン脂質のいずれも用いることができる。天然のリン脂質としては、レシチン(ホスファチジルコリン)、例えば卵黄レシチン、精製卵黄ホスファチジルコリン、大豆レシチン、精製大豆ホスファチジルコリン等、並びにそれらの部分的又は完全に水素添加された水素添加卵黄レシチン、水素添加精製卵黄ホスファチジルコリン、水素添加大豆レシチン、水素添加精製大豆ホスファチジルコリン等を挙げることができる。また、合成のリン脂質としては、(1)ホスファチジルコリンのアシル基を化学変換したもの:例えばジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル2−オレオイルホスファチジルコリン等;(2)ホスファチジルエタノールアミン及びポリアルキレングリコールで修飾されたホスファチジルエタノールアミン:例えば卵由来L−α−ホスファチジルエタノールアミン、大豆由来L−α−ホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール5000等;(3)ホスファチジルグリセロール:例えばジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、1−パルミトイル2−オレオイルホスファチジルグリセロール等;(4)ホスファチジン酸:例えばジパルミトイルホスファチジン酸、ジミリストイルホスファチジン酸等;(5)ホスファチジルイノシトール及び(6)ホスファチジルセリン等が挙げられる。 これらリン脂質は、その1種を単独で又は2種以上を混合して利用することができる。これらの内、好ましいリン脂質は卵黄レシチン、大豆レシチン、精製卵黄ホスファチジルコリン及び精製大豆ホスファチジルコリンである。 エマルジョン製剤の調製方法は、例えば油脂とリン脂質を水性溶媒に乳化し、まずエマルジョンを調製する。このエマルジョンに、本発明の医薬組成物を例えば攪拌により混和をすることによりエマルジョン製剤が調製できる。前記乳化は、自体公知の方法に従って実施することができる。例えば油脂、リン脂質の混合物に、注射用水を加えて粗乳化後、適当な高圧乳化機等を利用して精乳化(本乳化)する方法を採用することができる。 エマルジョンを構成する油脂とリン脂質の濃度は特に限定されないが、好ましい例としては、油脂0.1〜30w/v%(以下、特別な明示のない限り、%はw/v%を示す)程度、好ましくは1〜20%程度、より好ましくは2〜10%程度、リン脂質0.1〜20%程度、好ましくは0.5〜10%程度、より好ましくは2〜5%程度が挙げられる。リン脂質の割合は、油脂1重量に対し、リン脂質は約0.1〜10重量比、好ましくは約0.2〜5重量比、さらに好ましくは約0.5〜2重量比の範囲から適宜選択される。 エマルジョンの脂肪粒子は約10〜1000nm、好ましくは約10〜500nm、更に好ましくは約10〜300nmの範囲内に調製されるのが好ましい。 上記エマルジョン製剤には、安定化剤を配合することができる。安定化剤としては、例えば上記したリン脂質のうち、(a)ポリアルキレングリコールで修飾されたホスファチジルエタノールアミンであって、グリセロール部分にエステル化している脂肪酸が、炭素数10〜22の直鎖状もしくは分枝鎖状の飽和もしくは不飽和脂肪酸、好ましくは炭素数が14〜18の直鎖状もしくは分枝鎖状の飽和もしくは不飽和脂肪酸であるリン脂質誘導体、(b)ホスファチジルグリセロール、(c)ホスファチジン酸、(d)ホスファチジルイノシトール又は(e)ホスファチジルセリンを用いることができる。これらリン脂質をエマルジョン製剤の安定化剤として用いる場合には、エマルジョンの調製に用いるリン脂質は、これら安定化剤自身をリン脂質として用いてもよく、また異なるリン脂質を選択してもよい。 また、上記リン脂質の他、炭素数10〜22の直鎖状もしくは分枝鎖状の飽和もしくは不飽和脂肪酸、好ましくは炭素数が10〜20の直鎖状もしくは分枝鎖状の飽和もしくは不飽和脂肪酸(例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、α−リノレン酸等)又はその塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)などもエマルジョン製剤の安定化剤として用いることができる。 これら安定化剤は1種又は2種以上を併用することもできる。 また、本発明の静脈注射用医薬組成物は、リポソーム製剤として製剤化できる。リポソーム製剤に使用できるリン脂質としては、上記エマルジョンで使用されるリン脂質であればいずれも有利に使用できる。好ましいリン脂質は卵黄レシチン、大豆レシチン、精製卵黄ホスファチジルコリン及び精製大豆ホスファチジルコリンである。 リポソーム製剤には、上記エマルジョンで使用される安定化剤を同様に用いることができる。 また、リポソーム膜を物理的又は化学的に安定化し、膜の流動性を調節するために、コレステロール,コレステロールエステル(例えばコレステロールパルミチン酸エステル、コレステロールステアリン酸エステル、コレステロールオレイン酸エステル等),ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸ジグリセリル、ジオレイン酸ジグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル等)などを添加してもよい。これらの膜添加物の配合量は、特に限定されないが、好ましくはリポソームを形成する総脂質に対して、約0.1〜20%(w/w)である。 リポソーム液は、リン脂質を水性溶媒に乳化することにより調製できる。この乳化方法は、当業者によく知られている。該方法としては、乳化液が得られる限り特に制限されず、一般的方法に従って調製することができる。例えば、リン脂質、安定化剤等の混合物に、注射用水を加えて粗乳化後、適当な高圧乳化機、エクストルーダ等を利用して精乳化(本乳化)する方法を採用することができる。 上記リポソーム液に、本発明の医薬組成物を例えば攪拌により混和をすることにより本発明の静脈注射用医薬組成物としてのリポソーム製剤が調製できる。 本発明の静脈注射用医薬組成物(エマルジョン製剤及びリポソーム製剤)には、所望により、製薬上許容できるその他の添加剤を更に配合することができる。該添加剤としては、この種の注射投与することができるエマルジョン製剤及びリポソーム製剤に配合できることが知られている酸化防止剤、抗菌剤、pH調整剤、等張化剤等を挙げることができる。酸化防止剤としては、例えばメタ重亜硫酸ナトリウム(抗菌剤としても作用する)、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム等を例示できる。抗菌剤としては、例えばカプリル酸ナトリウム、安息香酸メチル、メタ重亜硫酸ナトリウム(酸化防止剤としても作用する)、エデト酸ナトリウム等が挙げられる。pH調整剤としては、例えば水酸化ナトリウム、塩酸等を使用できる。等張化剤としては例えばグリセリン;ブドウ糖、果糖、マルトース等の糖類;ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール類等を使用できる。これらの内で油溶性のものは、エマルジョンを構成する油脂等に予め混合して使用することができる。水溶性の添加剤は、水溶性溶媒(例えば注射用水、精製水等)に予め溶解するか又は得られる乳化液の水相中に添加配合することができる。これらの添加配合量は、当業者にとり自明であり、従来知られているそれらの添加配合量と特に異ならない。 また、本発明の静脈注射用医薬組成物には、所望に応じて、シクロデキストリン類を添加配合することもできる。 本発明の静脈注射用医薬組成物における、本発明の医薬組成物の混和量は、患者の身長、体重などから換算される体表面積から算出されるパクリタキセル又はドセタキセルの量で決定される。例えばタキソール注(パクリタキセル30mg/5mL;ブリストル製薬株式会社)では、成人には、パクリタキセルとして、1日1回210mg/m2である。例えば体表面積1m2の患者に投与する場合、タキソール注35mLを500mLの輸液(5%ブドウ糖注射液又は生理食塩液)に混和することになる。一方、例えば本発明のパクリタキセル100mg/mLを含有する医薬組成物では、その2.1mLを輸液(エマルジョン又はリポソーム液)500mLに混和すればよいことになる。従って、本発明の医薬組成物は、静脈注射用医薬組成物に対し、通常約0.1〜5v/v%、好ましくは約0.1〜2v/v%の範囲内となる割合で混和される。この含有割合であれば、パクリタキセル又はドセタキセルを溶解する溶媒のエタノール及びポリエチレングリコール量も患者に投与される量として非常に低く抑えることができ、これら溶媒による影響も非常に低く抑制することが可能となる。 また、上記割合で本発明の医薬組成物と混和された本発明の静脈注射用医薬組成物においては、パクリタキセル又はドセタキセルの濃度は、通常約0.01〜0.5w/v%、好ましくは約0.01〜0.2w/v%に調製されうる。 本発明の静脈注射用医薬組成物(エマルジョン製剤及びリポソーム製剤)と、本発明の医薬組成物との混合は、通常の溶解混合操作(例えば灌注)によって実施することができる。この操作によっても、脂肪粒子又はリポソームの安定性は損なわれず、特に脂肪粒子径又はリポソームが実質的に変化しない特徴を有している。 本発明の静脈注射用医薬組成物は、従来のパクリタキセルやドセタキセルと同様に、例えばパクリタキセルであれば3時間以上、ドセタキセルであれば1時間以上かけて点滴静注される。その投与の間、エマルジョン製剤又はリポソーム製剤は安定であり、エマルジョン製剤が油層と水層の二層に分離したり、脂肪粒子が巨大化したり、あるいはリポソームが壊れたりするおそれはない。 以下に本発明において好ましい試験例について述べるが、本発明は以下の試験例に限定されるものではない。 尚、各成分は特に記載しない場合、次のものを使用した。 ポリエチレングリコール400(日本油脂社) 大豆油(精製大豆油;日清製油社) 卵黄レシチン(精製卵黄レシチン;キューピー社) 試験例1 ポリエチレングリコール400とエタノールの混合割合を変化させた混合溶媒を用い、パクリタキセルの溶解度について検討した。パクリタキセルを該混合溶媒に添加し、60℃に加温攪拌し、パクリタキセルを溶解させた。これを室温に放置し、結晶を析出させた後、上清を遠心(10000g、60分間)し、この上清につき、高速液体クロマトグラフ(class LC−10、島津製作所)によりパクリタキセル濃度を測定し、溶解度(mg/mL)とした。その結果を図1に示す。 比較例1 試験例1において、ポリエチレングリコールをプロピレングリコールに変更する以外は同様にして、パクリタキセル濃度を測定し、溶解度(mg/mL)とした。結果を図2に示す。 エタノールとポリエチレングリコール400の比が1:4〜4:1(w/w)の範囲の混合溶媒におけるパクリタキセルの溶解度は、約300〜400mg/mLであった。一方、エタノールとプロピレングリコールとの混合溶媒では、エタノールとプロピレングリコールの比が1:4〜4:1(w/w)の範囲で、パクリタキセルの溶解度は、20〜60mg/mLであった。試験例2 (1)表1に示す各成分からなるエマルジョン(全量100mL)を、以下の通り調製した。 即ち、表1に記載の各成分中、大豆油に卵黄レシチンを混合した後、更にこのものに最終濃度が2.21w/v%となる量のグリセリンを注射用水に溶解した液を加え、ポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA社製)を用いて窒素気流下、加温下に、25000回転/分で10分間を要して粗乳化した。 次いで、得られた粗乳化液を、高圧ホモジナイザー(APV社)を用いて、平均粒子径が0.3μm以下となるまで、窒素気流下、乳化温度40−80℃、乳化圧550kg/cm2で精乳化した。 得られたエマルジョンのpHを塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpH8に調整後、10mL容のガラスバイアルに10mLずつ充填し、密封した後、高圧蒸気滅菌を施し、エマルジョンを得た。 (2)ポリエチレングリコールとエタノールの混合溶媒〔50:50(w/w)〕にパクリタキセルを10w/v%の濃度となるよう溶解し、パクリタキセル溶液を調製した。パクリタキセル溶液を、上記(1)で得られたエマルジョンに、パクリタキセルの最終濃度が0.08w/v%になるように添加し、室温に放置したところ、1週間放置後も結晶の析出は認められず,脂肪粒子も安定であった(表2)。 本発明の医薬組成物は、アナフィラキシー等の心配のない、パクリタキセル又はドセタキセルの点滴静注用の製剤として安全に利用できる。図1はパクリタキセルのポリエチレングリコール400/エタノール(EtOH)混合溶媒系における溶解度を示す図である。但し、EtOHの割合%=EtOH/(ポリエチレングリコール+EtOH)(w/w)×100である。図2はパクリタキセルのプロプレングリコール/エタノール(EtOH)混合溶媒系における溶解度を示す図である。但し、EtOHの割合%=EtOH/(プロプレングリコール+EtOH)(w/w)×100である。 パクリタキセル又はドセタキセル、エタノール及びポリエチレングリコールを含有し、エタノールとポリエチレングリコールの比が1:4〜4:1(w/w)である医薬組成物。 医薬組成物中のパクリタキセル又はドセタキセルの濃度が100〜400mg/mLである請求項1記載の医薬組成物。 ポリエチレングリコールの平均分子量が100〜4000である請求項1又は2記載の医薬組成物。 請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物、油脂及びリン脂質を含有するエマルジョン製剤である静脈注射用医薬組成物。 請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物及びリン脂質を含有するリポソーム製剤である静脈注射用医薬組成物。 請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物の、静脈注射用医薬組成物に対する含有割合が0.1〜5.0v/v%である請求項4又は5記載の静脈注射用医薬組成物。 パクリタキセルの濃度が0.01〜0.5w/v%である請求項6記載の静脈注射用医薬組成物。 ドセタキセルの濃度が0.01〜0.5w/v%である請求項6記載の静脈注射用医薬組成物。 請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物を製造するための、エタノールとポリエチレングリコールの比が1:4〜4:1(w/w)であるエタノール−ポリエチレングリコール混液の使用。 【課 題】 本発明の医薬組成物は、アナフィラキシー等の心配のない、パクリタキセル又はドセタキセルの点滴静注用の医薬組成物を提供することを目的とする。 【解決手段】) パクリタキセル又はドセタキセル、エタノール及びポリエチレングリコールを含有し、エタノールとポリエチレングリコールの比が1:4〜4:1(w/w)である医薬組成物を輸液(エマルジョン又はリポソーム液)に混和する。【選択図】 なし。