タイトル: | 公開特許公報(A)_トリフェニレン化合物の製造方法 |
出願番号: | 2004036391 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07C37/11,C07C39/12,C07B61/00 |
安岡 宏 浦添 大祐 森 英登 JP 2005225812 公開特許公報(A) 20050825 2004036391 20040213 トリフェニレン化合物の製造方法 富士写真フイルム株式会社 000005201 飯田 敏三 100076439 安岡 宏 浦添 大祐 森 英登 7C07C37/11C07C39/12C07B61/00 JPC07C37/11C07C39/12C07B61/00 300 3 OL 7 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AB64 4H006AC28 4H006BA28 4H006BA32 4H006BA36 4H006BA66 4H006FE13 4H039CA41 4H039CH20 本発明はディスコティック液晶の代表的母核であるなど、機能性有機材料およびその中間体原料である2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(以下HHTPと称す)の製造方法に関する。 近年液晶表示素子はワードプロセッサー、パーソナルコンピューター、テレビなどに広く用いられるようになり、それに関連する素材、装置などの開発に関わる産業活動が活発に行なわれている。液晶表示材料の根本をなす素材である液晶化合物についても活発に研究開発が行なわれ、数多くの化合物が開発されてきた。これらの化合物は、表示素子に限らず、種々の用途の開発に向けさらに応用が検討されている。従来からよく知られ、よく利用されている棒状の液晶化合物に加え、最近では円盤状の液晶化合物、いわゆるディスコティック液晶化合物が注目を浴びるようになった。 ディスコティック液晶化合物として代表的なものは、例えばベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体等が挙げられ、一般的にこれらを分子の中心母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその側鎖として放射状に置換された構造を有する。なかでもトリフェニレン誘導体は光学的な機能性素子の形成に有利なディスコティックネマティック相を形成しやすく、魅力のある化合物である。またトリフェニレン誘導体は安定したカチオンラジカル状態を取りうる等の有機化合物としては特異的な性質を持つため、機能性有機材料での使用も期待でき、また、ホスト−ゲスト化学分野においてゲスト分子のテンプレートとして利用することもできる。 HHTPの製造方法としては、1,2‐ジアルコキシベンゼンを出発原料として使用して三量体である2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレンを合成し、次いでこの生成物を三臭化ホウ素(非特許文献1)や臭化水素酸(特許文献1)、ヨウ化水素酸(特許文献2)等の存在下に脱アルキル化する方法が一般的である。しかしながら、脱メチル化剤として使用する三臭化ホウ素は腐食性が大きく、また反応性が非常に高いため空気中の湿気で容易に分解する等の理由で工業スケールでの製造では問題があり、臭化水素酸やヨウ化水素酸を使用する方法では過剰のハロゲン化水素酸を使用するため、反応後処理時に大量の廃酸が発生することが大きな問題である。 またカテコールを3量化し、HHTPを得る方法も知られている。例えば、カテコールと遷移金属化合物を反応せしめて酸化的カップリングを行ってHHTP、HHTPの遷移金属錯体、及びHHTPのキノン体等の混合物を得た後、この混合物を還元する方法(特許文献3)、及びHHTP、HHTPの遷移金属錯体、及びHHTPのキノン体を還元的条件下アシル化し精製を行った後、脱アシル化を行いHHTPを得る方法(特許文献4)が知られているが、得られる生成物がHHTPの鉄錯体であり、純粋なHHTPを得ることが困難なために、還元あるいはアセチル化・脱アセチル化の工程が必要で操作が煩雑である。 一方、近年化学製造プロセスの環境に対する負荷が問題になってきており、反応条件が温和で、廃棄物が少なく、有害な溶剤や反応剤等を可能な限り使用しないクリーンな化学反応が求められており、従来のトリフェニレン誘導体の合成方法では、環境負荷の高い塩化メチレン等の脂肪族有機塩素系溶媒が使用されている場合が多い。 このように従来から知られているHHTPの製造方法は生産性、目的物の分離精製、所要時間、環境への配慮などを考慮すると決して有利な方法とは言えず、煩雑な操作を要することなく、純度の高いHHTPを大量に製造できる技術が強く求められていた。イスラエル特許第70572A1号明細書特開平8−119894号公報特開平9−118642号公報特開平9−301906号公報「ジャーナル・オブ・マテリアル・ケミストリー」(J.Mater.Chem.)、p.1261(1992年) したがって、本発明の目的は、従来の製造方法の問題点を克服し、煩雑な操作を要することなく、工業的規模で経済的に実施可能であり、環境に対して好ましくない化合物を使用することなく、可能な限り廃棄物を削減しつつ、純度の高いHHTPの製造方法を提供することにある。 本発明者は、前述の事情に鑑みHHTPの製造方法について、特に経済的な工業的製造と環境に有害な化合物を極力使用しないこと、および廃棄物量を可能な限り削減することを念頭に置き鋭意研究した結果、カテコールをプロトン酸の存在下に有機酸化剤によって酸化することにより直接HHTPを製造する方法を見出した。本発明はこの知見に基づき完成するに至ったものである。 すなわち、下記手段(1)〜(3)により達成された。(1)カテコールをプロトン酸存在下に有機酸化剤によって酸化することを特徴とする2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの製造方法。(2)前記有機酸化剤が少なくとも1つ以上の電子吸引性置換基を有するベンゾキノン骨格を有する化合物であることを特徴とする(1)に記載の製造方法。(3)前記プロトン酸が硫酸または硫酸誘導体であることを特徴とする(1)または(2)に記載の製造方法。 本発明の製造方法によれば、例えばディスコティック液晶の代表的母核であるなど機能性有機材料およびその中間体原料として有用なHHTPを、煩雑な操作を要することなく、工業的規模で経済的に実施可能であり、環境に対して好ましくない化合物を使用することなく、可能な限り廃棄物を削減しつつ、純度の高いHHTPを製造することができる。 以下に、本発明の製造方法を詳細に説明する。 本発明は、カテコールを原料として、プロトン酸の存在下に有機酸化剤によって酸化カップリングすることにより直接HHTP(2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン)を製造する方法である。 まず、本発明の製造方法における反応条件について詳述する。 本発明において用いることのできる有機酸化剤としては、炭素数2〜8の有機の過酸〔例えば、有機カルボン酸や有機スルホン酸の過酸(好ましくは有機カルボン酸の過酸)が挙げられ、脂肪族化合物であっても芳香族化合物であってもよく、置換基を有していても有していなくてもよく、具体的にはm−クロロ過安息香酸、過酢酸等が挙げられる。〕、あるいは炭素数6〜15のベンゾキノン骨格を有する化合物〔置換基を有してもよい化合物であり、なかでも電子吸引性置換基を少なくとも1つ以上有するベンゾキノン骨格を有する化合物が好ましく、例えば、p−クロラニル(テトラクロロ−p−ベンゾキノン)、o−クロラニル、テトラブロモ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、クロロベンゾキノン、ジクロロベンゾキノン等が挙げられる。〕が挙げられる。有機酸化剤は2種類以上を適当な混合比で併用することも可能である。 ここで、上記置換基としては、炭素数1〜5の脂肪族基(例えば、メチル、エチル基)、炭素数4〜10の芳香族基(ヘテロ環芳香族も含むものであり、例えば、ピロリル、フェニル基)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができ、好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、脂肪族基又は芳香族基である。 特に、電子吸引性置換基としては、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基又はニトロ基であり、ハロゲン原子又はシアノ基がさらに好ましい。 有機酸化剤としては、ベンゾキノン骨格を有する化合物が好ましく、これらの中でもp−クロラニル、o−クロラニル、テトラブロモ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、クロロベンゾキノン、ジクロロベンゾキノンの使用がより好ましく、p−クロラニル、o−クロラニル、テトラブロモ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノンあるいはこれらの酸化剤の併用がさらに好ましい。 使用する有機酸化剤の量は原料であるカテコール1モルに対して、0.05〜2.5モルの範囲であるが、好ましくは0.2〜1.5モル、より好ましくは0.5〜1.2モルである。 本発明の製造方法においては、プロトン酸の存在下に反応を行なう。これにより、反応速度が向上する。プロトン酸としては炭素数1〜10の有機プロトン酸であっても無機プロトン酸のいずれであっても構わないが、好ましくは有機プロトン酸である。上記有機プロトン酸としては、脂肪族化合物であっても芳香族化合物であってもよく、置換基を有していてもいなくてもよく、置換基としては、前述のベンゾキノン骨格を有する化合物についての説明で挙げたものと同様である。 本発明で使用するプロトン酸は、好ましくは硫酸(スルホン酸)誘導体である。具体的な硫酸誘導体としては硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸等を挙げることができ、またアンバーライト等に代表されるスルホン酸系高分子も本発明において好ましく使用することができる。これらの中でも硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸の使用あるいはこれらの併用がより好ましい。最も好ましいプロトン酸は硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸あるいはこれらのプロトン酸の併用系である。 使用するプロトン酸の量は原料であるカテコール1モルに対して、0.01〜100モルの範囲であるが、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは0.2〜5モルである。 本発明の製造方法において用いられる溶媒としては、使用する有機酸化剤に対して安定であり、かつプロトン酸に対して安定であれば一般的に使用されている溶媒を広く使用できる。また液体状のプロトン酸を反応に用いる場合は、該プロトン酸を溶媒にすることも可能である。溶媒としては、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、ヘプタン、デカリン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(例えば、炭酸プロピレン等)、ケトン類(例えば、アセトン、エチルメチルケトン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒(例えば、モノクロルベンゼン等)、スルホン酸系溶媒(例えば、硫酸、メタンスルホン酸等)が挙げられる。好ましくは、上記のうちの非プロトン性疎水性有機溶媒及びスルホン酸系溶媒であり、具体的には、脂肪族炭化水素系溶媒、カルボン酸エステル類、炭酸エステル類、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、スルホン酸系溶媒が挙げられる。最も好ましい溶剤は、カルボン酸エステル類、炭酸エステル類、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、スルホン酸系溶媒、あるいはこれらの中から選択される2〜3種の溶媒の併用系である。なかでも、これらの上記()内に具体的に例示した溶媒が好ましい。 使用する溶媒の量は反応基質1.0モルに対して通常0.4〜5.0リットル、好ましくは0.4〜3.0リットル、更に好ましくは0.4〜2.0リットルである。 本発明の反応温度は、通常−20〜120℃の範囲であるが、好ましくは−20〜60℃、より好ましくは−15〜35℃の範囲である。 反応時間は使用する原料の量や反応温度により異なるが、通常0.5〜20時間である。 なお、本反応工程では生成物であるHHTPが酸化されることを防ぐため、不活性な雰囲気下、具体的にはアルゴンまたは窒素気流下で反応を行うことが好ましい。 また、前述のように説明した本発明の製造方法は、ディスコティック液晶として有用な化合物又はその中間体等の製造にも適用することができる。 具体的には、トリヒドロキシ−トリメトキシトリフェニレンを製造する場合には、基質をカテコールからo−メトキシフェノールに変更する以外はHHTPを製造する方法と同様の操作により製造することができ、トリヒドロキシ−トリメチルトリフェニレンを製造する場合には、基質をカテコールからo−クレゾールに変更する以外はHHTPを製造する方法と同様の操作により製造することができる。 具体的な製造方法の代表例を挙げれば、カテコールのトルエン懸濁液にメタンスルホン酸を加え、この反応混合物にp−クロラニルを20℃以下で分割添加し、25℃程度で反応を行う。反応終了を確認後、反応混合物を濾過し、HHTPと2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ハイドロキノンの混合物を得る。このものを適当な溶媒(アルコール系溶媒、又はケトン系溶媒)に懸濁させ、濾過により不溶解物を除去し、濾液に水を加えて析出した結晶を濾取、洗浄、乾燥して目的とするHHTPを単離することができる。以上のようにして得られる生成物は通常これ以上の精製を行うことなく以降の工程に進めるほどの高い純度(例えば、90%以上)を有するが、必要に応じて精製することも可能である。 以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1 カテコールから出発する本発明の方法 カテコール20gとメタンスルホン酸8.73gのトルエン懸濁液にp−クロラニル35.7gを20℃以下で分割添加し、添加終了後25℃で4時間反応を行った。この反応混合物を濾過することによりHHTPと2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ハイドロキノンの混合物を得た。この混合物をイソプロパノール(IPA)150mLに懸濁、攪拌した後、濾過して不溶解物を除去し、濾液に水を加えて析出し、得られた結晶を濾過、アセトニトリルで洗浄、乾燥して目的とするHHTPの結晶(融点は300℃以上)を得た。収量5.1g(収率 32.5%:p−クロラニル基準)であった。比較例1 (濃硫酸を用いる1,2−ジメトキシベンゼンの3量体化反応を経由する方法) 45%塩化第二鉄水溶液822gおよび1,2−ジメトキシベンゼン90gからなる混合物に、激しく攪拌しながら濃硫酸1306gを3時間かけて添加した。滴下終了後、内温28〜32℃で攪拌を5時間継続した後、反応混合物を水2.7Lにあけ、析出した結晶をグラスフィルターで濾取し(ろ過性は極めて悪かった)、アセトニトリルで洗浄、乾燥して2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレンを73g(収率 83%:1,2−ジメトキシベンゼン基準)得た。 得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレン73gを57%ヨウ化水素酸水溶液706gと酢酸331gからなる混合溶液に懸濁し、無水酢酸540gを70℃以下で滴下した。反応混合物を内温110℃に昇温し、4時間反応を行った。水600mLを滴下後、内温10℃まで冷却し、1時間攪拌後、析出した結晶を濾過、アセトニトリルで洗浄、乾燥して目的とするHHTPを49.2g得た(融点は300℃以上)。 1,2−ジメトキシベンゼンからのトータル収率は71%(2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレンからの収率は86%)であった。 以上説明した実施例および比較例より、比較例1の製造方法は、カテコールから直接合成する本発明の方法に比べて、操作が煩雑であること、濃硫酸を溶媒量使用するため大量の廃酸が発生すること、高価なヨウ化水素酸を大量に使用すること、メチル基除去工程で有害なヨウ化メチルが必ず副生すること等の理由で、環境配慮の観点、安全、コストの点に明らかに不利である。 一方、本発明の製造方法は発生する酸性廃液や有害な副生物も少く、環境に対する負荷が低減されている。また、製造工程も煩雑な操作を要することなく、経済的にも有利である。 カテコールをプロトン酸存在下に有機酸化剤によって酸化することを特徴とする2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの製造方法。 前記有機酸化剤が少なくとも1つ以上の電子吸引性置換基を有するベンゾキノン骨格を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。 前記プロトン酸が硫酸または硫酸誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。 【課題】 煩雑な操作を要することなく、工業的規模で経済的に実施可能であり、環境に対して好ましくない化合物を使用することなく、可能な限り廃棄物を削減しつつ、純度の高いHHTPの製造方法を提供する。【解決手段】 カテコールをプロトン酸存在下に有機酸化剤によって酸化することを特徴とする2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの製造方法。【選択図】 なし