タイトル: | 公開特許公報(A)_メイラード反応抑制剤及びメイラード反応の抑制方法 |
出願番号: | 2004031950 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K45/00,A61K31/525,A61K31/7084,A61P3/10,A61P9/00,A61P9/10,A61P13/12,A61P19/02,A61P25/00,A61P25/28,A61P27/12,A61P43/00 |
渡辺 寛人 早瀬 文孝 JP 2005220108 公開特許公報(A) 20050818 2004031950 20040209 メイラード反応抑制剤及びメイラード反応の抑制方法 学校法人明治大学 801000027 野口 恭弘 100101719 渡辺 寛人 早瀬 文孝 7A61K45/00A61K31/525A61K31/7084A61P3/10A61P9/00A61P9/10A61P13/12A61P19/02A61P25/00A61P25/28A61P27/12A61P43/00 JPA61K45/00A61K31/525A61K31/7084A61P3/10A61P9/00A61P9/10 101A61P13/12A61P19/02A61P25/00A61P25/28A61P27/12A61P43/00 111 6 OL 8 4C084 4C086 4C084AA17 4C084NA14 4C084ZA01 4C084ZA16 4C084ZA33 4C084ZA36 4C084ZA45 4C084ZA81 4C084ZA96 4C084ZC02 4C084ZC35 4C086AA01 4C086AA02 4C086CB09 4C086EA16 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA01 4C086ZA16 4C086ZA33 4C086ZA36 4C086ZA45 4C086ZA81 4C086ZA96 4C086ZC02 4C086ZC35 本発明は、メイラード反応抑制剤及びメイラード反応の抑制方法に関するものである。 タンパク質やアミノ酸等のアミノ化合物と還元糖との非酵素的反応は一般にメイラード反応(褐変反応)と呼ばれ、例えば、食品の着色や劣化、香気成分の生成等に広く関与していることが知られている(非特許文献1参照)。 また、メイラード反応は生体内においても進行し、タンパク質の糖化は種々の生活習慣病や老化で促進される種々の疾患、例えば、糖尿病合併症、アルツハイマー病、動脈硬化症等の疾患にも関連していることも明らかにされつつある(非特許文献2参照)。 メイラード反応は、大別すると次の2段階の反応、すなわち、(i)還元糖のホルミル基がタンパク質のN末端アミノ基や、リジンのε−アミノ基と反応してシッフ塩基を形成した後、1,2−エナミノールを経てアマドリ転位産物(アマドリ化合物)が生成する前期反応;及び(ii)酸化、脱水、縮合、分子内及び分子間における架橋などの複雑な反応を経て、次第に黄褐色化すると共に、マクロファージ等が持つAGE(advanced glycation end products)受容体によっても認識可能な蛍光をもつ不可逆的なメイラード反応後期段階生成物(AGE)を産生する後期反応;に分けられる。 ここで、メイラード反応の最終産物のAGEは、上記したような前期反応のアマドリ転位産物の酸化、脱水、縮合などの複雑な反応を経て生成した種々の構造体の総称であり、例えば、カルボキシメチルリジン、ピラリン、ペントシジン、クロスリン、イミダゾロン等が分離同定されているが、生体内AGEの多くは未同定である。また、タンパク質の二量体以上の重合体も、AGEとして知られている。 上記したメイラード反応を抑える薬剤(抑制剤/阻害剤)が入手できれば、種々の生活習慣病あるいは老化で促進される種々の疾患の治療薬もしくは予防薬としての利用が期待できる。このような見地から探索されたメイラード反応抑制剤として、従来から、トコフェロール類とアスコルビン酸とをリン酸エステルを介して結合させた化合物(特許文献1参照)や、種々の植物由来の抽出物(特許文献2参照)等が知られている。なお、メイラード反応抑制剤の探索方法は、上記特許文献1ではアマドリ転位産物(アマドリ化合物)の生成自体の阻害を指標として行われており、また、特許文献2では、最終的な後期段階生成物(AGE)生成の阻害を指標として行われている。早瀬文孝、化学と生物、31(9)、592(1993)永井竜児、佐野裕之、堀内正公、化学と生物、36(2)、83(1998)特許第2854631号公報特開平11−106336号公報 本発明の課題は、上記特許文献1におけるような、アマドリ転位産物(アマドリ化合物)の生成自体の阻害を指標とするものでもなく、また、上記特許文献2におけるような、最終的な後期段階生成物(AGE)生成の阻害を指標とするものでもない別の機序を指標として探索することによって、従来知られていないメイラード反応抑制剤を新たに提供することである。 上記課題を達成するために、本発明は以下の構成をとった。 すなわち、本発明は、アミノ化合物と還元糖とのあいだの反応中間生成物であるアマドリ化合物の分解を促進する成分を含有するメイラード反応抑制剤を提供するものである。 また、本発明は、アミノ化合物と還元糖とを含むメイラード反応混合物(反応系)に、反応中間生成物であるアマドリ化合物の分解を促進させる成分を共存させることによって、全体として、メイラード反応を遅らせることを特徴とするメイラード反応の抑制方法も提供する。 本発明のメイラード反応抑制剤又は抑制方法では、アミノ化合物と還元糖とのあいだの反応中間生成物であるアマドリ化合物(鍵物質)の分解を促進する成分を含有させるので、in vitro(試験管内)又はin vivo(生体内)で、アマドリ化合物の分解が速やかに起こり、したがって、アマドリ化合物が蓄積せず、後期段階生成物(AGE)の生成も抑制されると推定している。 本発明のメイラード反応抑制剤は、種々の生活習慣病や老化で促進される種々の疾患、例えば、糖尿病合併症(血糖値が高値を示す糖尿病に合併して起こる冠動脈心疾患、脳血管障害、神経障害、白内障、腎障害、網膜症、関節硬化症等の疾患)、アルツハイマー病、動脈硬化症等の疾患の治療薬又は予防薬として、特に有用と思われる。 また、有効成分としてリボフラビン又はその誘導体を用いた場合は、これらはビタミン(又は補酵素)の一種であり、製剤の安全性は極めて高い。 本発明について、更に詳しく説明する。 本発明者等は、アマドリ転位産物(アマドリ化合物)の生成自体の阻害を指標とするものでもなく、また、最終的な後期段階生成物(AGE)生成の阻害を指標とするものでもない別の機序を指標として、メイラード前期反応のアマドリ化合物(鍵物質)の分解の促進を指標とすることに着想し、いくつかの生理活性物質を検討した結果、補酵素型ビタミンB2であるフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)が、in vitro(試験管内)でアマドリ化合物の分解を促進し、また、後期段階生成物(AGE)の生成も抑えることを見出し、先に述べたように、新規なメイラード反応抑制剤を完成することができた。 本発明のメイラード反応抑制剤で、アマドリ化合物の分解を促進する成分として好ましいものは、リボフラビンやその誘導体である。 リボフラビンは、B群ビタミンのうちの耐熱性成長促進因子の一つのビタミンB2で、化学構造は既知であり、イソアロキサジンの誘導体である。水に溶け、水溶液は黄色で、黄色の蛍光を発する。レバー、卵黄、酵母、乾しシイタケ、緑黄野菜、チーズ、肉類、牛乳、納豆等に多く含まれている。 リボフラビン誘導体としては、補酵素型リボフラビンがあり、好ましいものは、フラビンアデニンモノヌクレオチド(FMN;リボフラビン−5’−リン酸)やフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)であり、特に好ましいものは、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)である。 リボフラビンやその誘導体を使用する場合の濃度は、アマドリ化合物の分解を促進する範囲で用いる。FADを使用する場合は、好ましくは0.1mM以上、更に好ましくは0.1mM〜2.0mMである。 なお、動物やヒトでは、摂取されたリボフラビン(ビタミンB2、遊離型)は、生体内では、補酵素型(活性型)リボフラビンであるフラビンアデニンモノヌクレオチド(FMN)やフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)へと変化して、その生理的機能が発揮される。そのために、後述のin vitroの実験では、メイラード反応抑制剤として補酵素型リボフラビン(ここでは、FAD)を用いている。なお、in vivoの実験では、通常は、補酵素型ばかりではなく遊離型リボフラビンを用いることができる。生体内では、遊離型リボフラビンは補酵素型リボフラビンへと変化するからである。 本発明のメイラード反応抑制剤は、治療薬、予防薬、保健薬(保健食品を含む)などのほかに、動物薬や試薬としても利用できる。 治療薬、予防薬、保健薬、動物薬などとする場合の製剤の形態(剤形)は特に限定されない。日本薬局方等に記載された製剤の形態(注射剤、錠剤、顆粒剤、散剤、坐薬、軟膏等)の中から適宜選ぶことができる。また、投与ルートとしては、有効成分が遊離型リボフラビンか補酵素型リボフラビンのどちらであるかも考え合わせて、経口的投与か、非経口的投与(例えば、静脈注射、点滴、筋肉注射、皮下注射、大腸内投与、経皮)かを、適宜に選ぶ。 製剤の品質を確保し、あるいは有効成分の安定性や吸収性を高めるために、種々の添加剤を加えることができる。添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤などがある(日本医薬品添加剤協会編集、医薬品添加物辞典、薬事日報社(1994年))。 次に、メイラード反応の抑制方法について説明する。本発明の抑制方法は、上で述べたように、アミノ化合物と還元糖とを含むメイラード反応混合物に、反応中間生成物であるアマドリ化合物の分解を促進させる成分を共存させることによって、メイラード反応を遅らせることを特徴とする。 ここで、アマドリ化合物の分解を促進させる成分については、先のメイラード反応抑制剤で述べた説明と同様なので省略する。 メイラード反応の一方の基質として用いるアミノ化合物は、生体中に存在する各種のアミノ酸、ペプチド又はポリペプチド(タンパク質を含む)等である。 メイラード反応の他方の基質として用いる還元糖は、アルドースの1位、又はケトースの2位の炭素原子が置換を受けていない単糖及びオリゴ糖であり、アルカリ性条件下で還元性を示すものである。例えば、単糖では、グルコース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、フラクトース等のヘキソース、アラビノース、キシロース、リボース等のペントース等があり、オリゴ糖では、シュクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース等がある。 上記アミノ化合物と還元糖とを含むメイラード反応混合物(メイラード反応系)には、pH緩衝剤、防腐剤等の添加剤を加えることができる。また、反応系の媒体は、基質であるアミノ化合物や還元糖、及びリボフラビンやその誘導体が容易に溶ける水が好ましく用いられる。 以下、実施例によって、本発明をさらに具体的に説明する。実施例1〜3(1)アマドリ化合物の調製 検出・定量の容易なアマドリ化合物を得るため、アミノ化合物としてp−トルイジン、還元糖としてD−グルコースを選び、下記反応式(化1)に示すようにしてフルクトーストルイジン(式(II)のアマドリ化合物;単に「アマドリ化合物」又は「基質」ともいう)を調製した。調製方法は、J.E. Hodge and B.E. Fisher “Amadori Rearrangement Products” in Methods in Carbohydrate Chemistry (R.L. Whistler and M.L. Wolfrom eds.), pp.99-107, Academic Press, New York 1963に従がった。 具体的には、2.5mlの水に10gのD−グルコースと8gのp−トルイジンとを溶解し、これに0.5mlの2N酢酸を添加し、30分煮沸還流した。次に、100mlのエタノールを加えて、生成物を結晶化した。これを24時間低温に放置した後に、濾過して結晶を回収した。更に、エタノール−ジエチルエーテル(容量比で2:3)混液で洗浄し、脱水・乾燥し、精製品とした。以下は、この精製品(アマドリ化合物)を用いた。(2)FADによるアマドリ化合物分解の促進 100μMの基質(アマドリ化合物)に対して、FAD(酸化型、Sigma社製)を各々、100μM、1mM及び10mM加え、20mMリン酸緩衝液(pH7.4)中、37℃で反応させ、経時的にサンプリングし、反応開始時の基質量を100%としてその残存量を測定し、FAD無添加(対照)と比較した。なお、基質(アマドリ化合物)の分析は、波長240nmの吸収を指標とする逆相高速液体クロマトグラフィー(カラム:センシュー科学のODS−1251−N(4.6φ×250mm)、溶出液:50容量%エタノール、溶出速度:0.5ml/min)で行なった。この条件では、基質(アマドリ化合物)の保持時間は約10minである。反応時間が1hのときの基質(アマドリ化合物)残存量の結果を表1に示す。FAD無添加区(対照)では、基質はそのまま残存していたが、FAD添加区では、その添加濃度に呼応するように基質の分解が促進された。 なお、FAD添加区では、分解反応の進行とともに、分解産物の一つであるp−トルイジン(保持時間が約16分)の生成量の増加が観察された。実施例4〜6 FADは、水溶液中で活性酸素種を生成することが知られている。そこで、次に、活性酸素種がFADによるアマドリ化合物の分解促進作用に関与しているかどうかを調べた。 試験は、FAD(1mM)が存在する上記反応系で、各種の活性酸素種消去剤の共存下に24h反応させ、基質(アマドリ化合物)の分解促進が阻害されるかどうかを調べた。なお、活性酸素種消去剤としては、スーパーオキシド消去酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD;Sigma社製)、過酸化水素消去酵素であるカタラーゼ(Sigma社製)、及びヒドロキシラジカル消去剤である5,5’−Dimethyl−1−pyrroline N−oxide(DMPO;同仁化学製)を各々用いた。活性酸素消去剤の添加濃度は、SODが300u/ml、カタラーゼが0.3mg/ml、DMPOが25mMで行った。試験結果を表2に示した。いずれの活性酸素種消去剤も、FADによるアマドリ化合物の分解促進作用を殆ど阻害していないことが分かる。したがって、FADによる上記分解促進作用は、活性酸素種の生成とは無関係な機序で起こると考えている。実施例7 タンパク質としてリゾチームを選び、還元糖としてはD−グルコースを選んだ。リン酸緩衝液(pH7.4)中、50℃で、リゾチーム(最終濃度10mg/ml)を200mMのD−グルコースと、1〜4日間反応させ、反応物をSDS−ポリアクリルアミド電気泳動で分析した。 FAD無添加区(対照)では、反応1日目で、二量体のバンドが現れ、反応2日目で、二量体のほかに三量体のバンドも現れた。これらの二量体や三量体のバンドは、反応の経過と共に増加した。一方、FAD(100mM)添加区では、反応1日目で、二量体のバンドが現れたが、FAD無添加区(対照)に比べて少なかった。また、反応2日目で、二量体のほかに三量体のバンドも現れたが、これらの量もFAD無添加区(対照)に比べて少なかった。実施例8 反応温度を37℃、反応時間を6日としたほかは、上記実施例7と同様に試験を行い、FAD無添加区(対照)における二量体の生成量と、FAD添加区(100mM)における二量体の生成量とを比較した。FAD添加区における二量体の生成量は、FAD無添加区(対照)における二量体生成量の40%(すなわち、二量体生成の抑制率は60%)であった。 アマドリ化合物の分解を促進する成分を含有することを特徴とするメイラード反応抑制剤。 アマドリ化合物の分解を促進する成分は、リボフラビン又はその誘導体である、請求項1記載のメイラード反応抑制剤。 リボフラビン又はその誘導体は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)である、請求項2記載のメイラード反応抑制剤。 アミノ化合物と還元糖とを含むメイラード反応混合物に、アマドリ化合物の分解を促進させる成分を共存させることによって、メイラード反応を遅らせることを特徴とするメイラード反応の抑制方法。 アマドリ化合物の分解を促進する成分として、リボフラビン又はその誘導体を用いる、請求項4記載の抑制方法。 リボフラビン又はその誘導体として、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を用いる、請求項5記載の抑制方法。 【課題】アマドリ転位産物(アマドリ化合物)の生成自体の阻害を指標とするものでもなく、また、最終的な後期段階生成物(AGE)生成の阻害を指標とするものでもない別の機序を指標とする方法、すなわち、メイラード前期反応のアマドリ化合物(鍵物質)の分解を促進する薬剤を探索することによって、従来知られていないメイラード反応抑制剤を新たに提供する。【解決手段】アミノ化合物と還元糖とを含むメイラード反応系に、リボフラビン又はその誘導体を共存させることによって、全体として、メイラード反応を遅らせることができる。リボフラビン又はその誘導体が、メイラード反応中間生成物のアマドリ化合物の分解を促進させる作用を有するからである。【選択図】なし