タイトル: | 特許公報(B2)_金属石鹸の製造方法 |
出願番号: | 2004023277 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 51/41,C07C 53/126,C07F 3/04,C07F 3/06 |
前 一廣 長谷部 伸治 野村 秀幸 澤田 公平 JP 4466091 特許公報(B2) 20100305 2004023277 20040130 金属石鹸の製造方法 日油株式会社 000004341 前 一廣 長谷部 伸治 野村 秀幸 澤田 公平 20100526 C07C 51/41 20060101AFI20100428BHJP C07C 53/126 20060101ALI20100428BHJP C07F 3/04 20060101ALI20100428BHJP C07F 3/06 20060101ALI20100428BHJP JPC07C51/41C07C53/126C07F3/04C07F3/06 C07C 51/00 − 53/50 C11D 1/00 − 19/00 特開平01−299247(JP,A) 特開平11−323396(JP,A) 特開2000−198757(JP,A) 特開昭49−094619(JP,A) 特開昭64−071836(JP,A) 特開2004−270091(JP,A) 特開2004−168754(JP,A) 1 2005213217 20050811 8 20070129 (出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構革新的部材産業創出プログラム「マイクロ分析・生産システムプロジェクト」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの) 山本 英一 本発明は、金属石鹸の製造方法に関する。 金属石鹸は、電子印刷分野、粉末冶金分野、化粧品分野、塗料分野、樹脂加工分野など、多くの分野において幅広く用いられている。現在行われている代表的な金属石鹸の製造方法としては、脂肪酸と無機金属酸化物あるいは無機金属水酸化物とを反応する方法(直接法)、あるいは脂肪酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩の溶液と無機金属塩類とを反応する方法(複分解法)が挙げられる。 複分解法は、直接法と比較して、未反応の原料脂肪酸や無機金属化合物の含有量が少なく、高純度で微細粒子の金属石鹸を得やすく、また色相が良好な金属石鹸を得ることができる。複分解法を利用した金属石鹸の製造方法としては、脂肪酸アルカリ塩や脂肪酸アンモニウム塩の水溶液と、無機金属塩類の水溶性とを連続的に反応装置内に供給して反応させ、金属石鹸含有スラリーを得る連続複分解法が知られている。 例えば、オーバーフロー排出口でつながる4つの反応槽を用いて、第1槽に脂肪酸ナトリウム塩水溶液と硫酸アルミニウム水溶液とを供給し混合しながらオーバーフローさせ、第2槽以降で反応を完結しつつ粒子を熟成させることで脂肪酸アルミニウムのスラリーを得る方法(特許文献1参照)が知られている。しかし、この方法では、2つの原料を第1槽で反応させる際、各槽の内部やオーバーフロー排出口付近に金属石鹸が付着し、別槽にスラリーを安定に移動させることが難しい。そのため、原料脂肪酸や無機塩を金属石鹸の中に内包しやすく、金属石鹸の純度を上げることが難しい場合がある。 これらの問題を解決するため、脂肪酸ナトリウム塩またはアンモニウム塩の水溶液と、無機金属塩の水溶液とを、フロージェットミキサー、片吸い込み式渦巻きポンプ、ラインホモミクサーなどの混合機に直接供給して両者を混合後、反応生成物を直ちに混合機から排出して金属石鹸のスラリーを得る方法(特許文献2、特許文献3参照)が知られている。しかし、この方法では、原料水溶液の反応の際に強力な機械的混合力がかけられるため、反応系内に大きな攪拌乱流が生じ、反応装置内の壁に金属石鹸の粒子が接触しやすい。そのため、製造装置内の壁で成長した金属石鹸粒子によって反応装置の内部が閉塞し、反応装置内に原料の水溶液が安定に供給できなくなり、生産効率が低下する場合がある。上述の方法では、いずれも金属石鹸を長時間にわたり連続的に製造することが困難であった。英国特許第693741号公報特開平1−299247号公報特開平11−323396号公報 反応装置内で合成される金属石鹸が反応容器内面へ付着するのを軽減し、反応装置内に原料水溶液の供給を安定に行うことで、長時間の連続製造が可能な金属石鹸の製造方法を提供することを目的とする。 発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する反応装置に2つの原料水溶液を供給することで、装置内面に金属石鹸が滞留し付着することなく金属石鹸を製造可能であることを見出した。そして、この反応方法を用いることで、反応装置内に閉塞を生じることなく、金属石鹸を長時間にわたり連続製造できることを見出し本発明に至った。 すなわち本発明は、(1)脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の水溶液と、無機金属塩の水溶液とを反応させて金属石鹸を製造する製造方法であって、外筒の中に内筒を配置した内外筒間に環状空間を有する共軸筒型反応装置を用いて、a)炭素数4〜30の脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を0.001〜20重量%含有する水溶液と、b)無機金属塩を0.001〜20重量%含有する水溶液とを、b成分中の無機金属塩に対する、a成分中の脂肪酸塩の当量比(a/b)が0.5〜1.1となるよう、異なる供給口からそれぞれ供給する金属石鹸の製造方法である。 本発明の金属石鹸の製造方法を用いることにより、図1のような特定の構造を有する反応装置を用いる事により、反応装置内で合成される金属石鹸の反応容器内面への付着を大幅に軽減することができる。そして、反応装置内に供給される原料水溶液の反応比の変動を抑え、金属石鹸を長時間にわたり連続製造することができる。 本発明の金属石鹸の製造方法において用いる原料成分としては、a)脂肪酸塩水溶液とb)無機金属塩の水溶液が用いられる。 a成分の脂肪酸塩水溶液の調整に用いる脂肪酸塩としては、炭素数4〜30の脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が挙げられる。該脂肪酸は飽和、不飽和のいずれであってもよく、また、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。このような脂肪酸塩の例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、リシノレイン酸、リノレイン酸、ベヘニン酸やエルカ酸などに代表される単体脂肪酸のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、あるいは、牛脂脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸などに代表される動植物油脂由来の脂肪酸のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が挙げられる。 これらの中で、特に炭素数12〜22を有する脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が好ましい。これらの脂肪酸塩は単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。炭素数3以下の脂肪酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩を用いた場合、得られる金属石鹸の水に対する溶解度が高いので、収率が低下する。一方、炭素数31以上の脂肪酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩を用いた場合、水に対する溶解度が低すぎて、水溶液濃度が低くなり、生産効率が低下する。 本発明の製造方法に用いるa成分の脂肪酸塩水溶液において、脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の含有量は、0.001〜20重量%の範囲である。含有量が0.001重量%未満では、得られる金属石鹸量が反応液量に対して著しく低く生産効率が悪い。また、20重量%を超えると、反応後の金属石鹸分散液の濃度が高すぎ、反応装置内の金属石鹸の付着が生じやすくなる。反応装置内の金属石鹸の付着が少なく、より効率的に連続して金属石鹸を製造する場合、水溶液中の上記脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の好ましい含有量は、0.01〜10重量%の範囲である。 本発明の製造方法に用いるb成分の無機金属塩の水溶液の調整に用いる無機金属塩の例としては、カルシウム、バリウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、燐酸塩など、あるいは、チタン、亜鉛、銅、マンガン、カドミウム、水銀、ジルコニウム、鉛、鉄、アルミニウム、コバルト、ニッケル、銀などの金属の塩化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、燐酸塩などが挙げられる。これらの物質は単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。 本発明の製造方法に用いるb成分の無機金属塩の水溶液において、無機金属塩の含有量は0.001〜20重量%の範囲である。含有量が0.001重量%未満では、得られる金属石鹸量が反応液量に対して著しく低く、生産効率が悪い。また、20重量%を超えると、得られる金属石鹸粒子の凝集が進みやすく、反応装置内面への金属石鹸の付着が促進され、連続的な製造が困難な場合がある。反応装置内の金属石鹸の付着が少なく、より効率的に連続して金属石鹸を製造する場合、水溶液中の無機金属塩の好ましい含有量は、0.01〜10重量%の範囲である。 a成分およびb成分の調整に用いられる水としては特に制限はなく、一般的に使用されるものを用いても良いが、イオン交換水、精製水、または蒸留水などのように、金属イオンなどの不純物の少ないものが好ましい。また、水溶性金属イオン等の不純物を含有する水を用いる場合は、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)などの水溶性キレート剤を添加して水中の金属イオンを水溶性錯塩としてから反応させることが好ましい。このように処理された水を用いた場合、脂肪酸アルカリ塩やアンモニウム塩に対して水中の不純金属イオンが反応しにくくなり、反応時における金属石鹸の凝集が発生し難くなり、その結果、応装置内での金属石鹸の付着が生じにくい。また、水洗により金属石鹸から水溶性の不純金属錯体を除去することができるため、不純分の少ない金属石鹸が得られる。 本発明には、外筒の中に内筒が配置された、内外筒間に環状空間を有する図1に示す共軸筒型反応装置を用いる。図1において、1は内筒、2は外筒をそれぞれ表し、3および4は各原料水溶液の供給口であり、5はa成分とb成分を反応して得られる金属石鹸スラリーの吐出口であり、R1は外筒の内径であり、R2は内筒の内径を示し、nは外筒において内筒が挿入されていない、a成分とb成分が接触する外筒部分である。 本発明では、この反応装置を用いて、内外筒間の環状空間3および内筒内の空間4から、a成分とb成分をそれぞれ流し、外筒のnの領域にてa成分とb成分を接触させ、その結果、5から金属石鹸スラリーを得る。a成分とb成分は、反応装置内にポンプを用いて3と4からそれぞれ反応装置内に圧入しても良く、または5から反応装置を減圧し、a成分とb成分を3と4からそれぞれ反応装置内に吸引しても良い。また本発明に用いられる反応装置は、均一にa成分とb成分を接触させ反応させる上で円筒管であることが好ましいが、各原料の反応状態や所望の粒子径の金属石鹸を調整するために、管断面を楕円や多角形など、形状を円筒形以外のものに変更することができる。 本発明の製造方法においては、a成分とb成分は、3および4のいずれから供給してもよく、例えば、a成分を3から供給する場合にはb成分を4から供給し、a成分を4から供給する場合にはb成分を3から供給するといった方法が用いられる。その中でも、特にa成分を3から供給し、b成分を4から供給することが好ましい。このような送液方法を用いた場合、反応装置内面に金属石鹸がより付着しにくくなり、各原料をより均一に反応させることができる。その結果、反応装置内に閉塞がより生じ難く、また均一な粒子形状の金属石鹸を連続して製造できる。 本発明の製造方法に用いる反応装置は何れの材質で構成されても良く、例えば高圧にてa成分とb成分とを反応する場合には耐久性のある金属や硬質樹脂などの材質を用いることが好ましい。 外筒の内径(図1におけるR1)、内筒の内径(図1におけるR2)および外筒において内筒が挿入されていない部分(図1におけるn)は、原料の送液能力、各原料の反応状態や所望の粒子径の金属石鹸を調整するために適宜選定すればよい。また、本装置の内筒において、吐出口に段差を有さないよう鋭角に加工されていることが好ましい。このような形状を有する内筒を用いた場合、内筒の吐出口付近における原料の乱流が生じ難くなり、より均一にa成分とb成分とが会合分散し、反応装置内面に金属石鹸が滞留し付着することなく反応することができる。その結果、反応装置内の閉塞がより生じ難く、均一な粒子形状の金属石鹸を連続して製造できる。 また、反応装置の具体例としては、例えば、R1およびR2がそれぞれ1〜5mmと0.1mm〜2mmであり、かつ、R1/R2の値が2〜20であり、nの部分の長さが15mm以上のものを用いることができる。そして、この条件を満たす装置に、0.1〜5重量%の濃度を有するa成分とb成分を1〜500ml/minの速度で供給することで、反応装置内壁への金属石鹸粒子の付着を抑えたまま、連続的に金属石鹸を反応させることができる。加えて、内筒の先端を鋭角に削ることで、内筒におけるa成分とb成分との接触状態をスムーズにし、さらに反応装置の内壁に金属石鹸が付着しにくくすることができる。 本発明の製造方法では、共軸筒型反応装置にする供給するa成分とb成分との混合割合において、b成分中の無機金属塩に対する、a成分中の脂肪酸塩の当量比(a/b)は0.5〜1.1の範囲である。この条件を満たすために、a成分とb成分の濃度や送液量、内筒と外筒の内径の比率を調整することが必要である。当量比(a/b)が1.1よりも大きい場合、反応後の金属石鹸スラリー中に未反応の脂肪酸可溶塩が多量に存在するようになり、金属石鹸の水に対する親和性が上がる。そのため、金属石鹸スラリーを濾過して金属石鹸を単離する際に、著しく濾過効率が低下する。一方、当量比(a/b)が0.5よりも小さい場合、反応中に反応装置の外筒内部に金属石鹸が付着しやすくなる。そのため、各原料を安定に反応させることができなくなることがある。残存不純物を少なくし、生成する金属石鹸スラリーの濾過工程と洗浄工程をより効率的に行うためには、該当量比は0.95〜1.05の範囲が特に好ましい。 本発明の製造方法においては、a成分が反応装置中のnの部分を移動する線速度(m/s)と、b成分が反応装置中のnの部分を移動する線速度(m/s)との比率は、前述した当量比を満たすことができれば特に制約はない。 本発明の製造方法において、共軸二重筒型反応装置を用いてa成分とb成分を反応することにより得られた金属石鹸スラリーは、一般的な濾過装置を使用して金属石鹸ケーキと濾液に分離することができる。この金属石鹸ケーキは、水溶性無機塩などの不純物量を低下させるために、温水などで充分に洗浄した後、乾燥処理することにより、金属石鹸微粒子が得られる。なお、濾過水洗により水溶性無機塩などの不純物を除去することが困難な場合は、浸透膜などを用いて金属石鹸スラリーや金属石鹸ケーキから不純物を除去するなどの方法を用いてもよい。 この操作により得られた金属石鹸スラリーや金属石鹸ケーキを乾燥処理して、金属石鹸の粉体を得ることができる。また、乾燥後の金属石鹸の凝集が高い場合は、通常の粉砕機を用いて所望の粒子径にまで解砕することができる。乾燥は常圧で行ってもよいが、より効率的に乾燥するために、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥を行ってもよい。また、低沸点溶剤などで金属石鹸ケーキを洗浄処理した後、得られた金属石鹸ケーキを乾燥してもよい。この際用いられる低沸点溶剤としては、金属石鹸から水を効率よく除去しうるものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、アセトン、塩化メチレンなどが挙げられる。 本発明の製造方法は、平均粒子径が3〜100μmである金属石鹸を安定に連続製造できるほか、特に平均粒子径が0.01μm〜3μmの微細な金属石鹸をも効率的に連続製造できる。0.01μm〜3μmの微細な金属石鹸は表面積が大きいため反応装置内への付着性が高く、かつ凝集性が特に高い。そのため反応装置内へ付着した金属石鹸粒子の周辺に、粒子が更に付着蓄積しやすい。そのため、既知の製造方法を用いて0.01μm〜3μmの微細な金属石鹸を製造した場合、長時間にわたる安定製造が困難な場合がある。このような微細な金属石鹸を製造するにあたり本発明の製造方法は有効であり、平均粒子径が0.01μm〜3μmの微細な金属石鹸を連続製造する際に、反応装置内に金属石鹸が凝集し付着しにくい。 0.01μm〜3μmの微細な金属石鹸を製造する場合、a成分とb成分は、生成する金属石鹸の結晶転移開始温度以下で反応することが必要である。実際の反応時の温度は、得られる金属石鹸の脂肪酸鎖および金属の種類により異なるが、例えばカルシウムステアレートの微細粒子を製造する場合、94℃以下の温度で製造することが好ましい。94℃を超える温度で反応を行うと、金属石鹸の微細粒子同士の凝集が起こり、平均粒子径が大きくなることがある。また、平均粒子径が0.01μm〜1μmである微細な金属石鹸粒子を得るためには、70℃以下のできる限り低い温度条件にて反応から乾燥までを行うことが好ましい。 以下、実施例および比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例などにより何ら限定されるものではない。 実施例1 a成分として70℃に調整したステアリン酸カリウムの0.5重量%水溶液、b成分として70℃に調整した硫酸亜鉛の0.12重量%水溶液をそれぞれ用意した。また、外円筒の内径(R1)が2mm、内円筒の内径(R2)が0.3mm、および内円筒の外径が1.6mmであり(R1/R2が6.7であり)、外円筒のnの部分の長さが80mmである図1の反応装置を用意した。次に、定容ポンプを用いて、供給口3からb成分、供給口4からからa成分をそれぞれ供給した。反応装置に供給する際のa成分とb成分の供給速度は10ml/minとした。このような条件で各液を供給すると、b成分中の硫酸亜鉛に対する、a成分中のステアリン酸カリウムの当量比が1.0、またnの部分において、4から供給されたa成分と3から供給されたb成分の線速度比は16:1であった。 この条件で30分間製造を続けたところ、反応装置の内壁に金属石鹸は付着せず、a成分とb成分は詰まることなく安定に反応装置に供給できた。また、平均粒子径が0.27μmのステアリン酸亜鉛粒子が得られた。 実施例2 実施例1と同じ装置を用い、a成分として75℃に調整したミリスチン酸アンモニウムの1重量%水溶液、b成分として75℃に調整した塩化カルシウムの0.024重量%の水溶液をそれぞれ用意し、定容ポンプを用いて、供給口3からb成分、供給口4からからa成分をそれぞれ供給した。反応装置に供給する際のa成分の4への供給速度は1ml/minとし、b成分の3への供給速度は10ml/minとした。このような条件にて各液を供給すると、b成分中の塩化カルシウムに対する、a成分中のミリスチン酸アンモニウムの当量比が0.99〜1.00、またnの部分において、4から供給されたa成分と3から供給されたb成分の線速度比は5:3であった。 この条件で30分間製造を続けたところ、反応装置の内壁に金属石鹸が付着せず、a成分とb成分は詰まることなく安定に反応装置に供給できた。また、平均流子径が0.5μmのミリスチン酸カルシウム粒子が得られた。 実施例3 実施例1と同じ濃度と成分を含有する、60℃に液温を調整したa成分とb成分を用意した。一方、実施例1と同じ外円筒と内円筒の内径、内円筒の外径、およびnの部分長を有し、かつ内円筒におけるb成分の吐出口を鋭角に加工し、内円筒の先端における外径を0.7mmとした装置を用意した。そして定容ポンプにて供給口3からa成分、供給口4からからb成分をそれぞれ供給した。反応装置に供給する際のa成分とb成分の供給速度は10ml/minとした。このような条件にて各液を供給すると、b成分中の硫酸亜鉛に対する、a成分中のステアリン酸カリウムの当量比が1.0、またnの部分において、3から供給されたa成分と4から供給されたb成分の線速度比は1:31であった。 この条件で30分間製造を続けたところ、反応装置の内壁に金属石鹸が付着せず、a成分とb成分を詰まることなく安定に反応装置に供給することができた。また、平均粒子径が0.09μmのステアリン酸亜鉛粒子が得られた。 比較例1 実施例1と同じ条件で調整したa成分、b成分を用意した。そして、a成分とb成分の2つの液を同時に吸入し吐出できるラインホモミクサーを用い、a成分とb成分を同時にミキサーから吸入した。反応装置に吸入する際のa成分の供給速度は10ml/min、b成分の供給速度は25ml/min、このときのb成分中の硫酸亜鉛に対する、a成分中のステアリン酸カリウムの当量比は0.4であった。そしてa成分とb成分とを反応して得られた金属石鹸スラリーをラインホモミクサーから連続的に吐出した。このような製造方法を30分間続けたところ、ラインホモミクサーの内部とスラリーの吐出口付近にステアリン酸亜鉛が多量に付着し、a成分とb成分を安定して反応装置に供給できなかった。その結果、ステアリン酸亜鉛粒子を連続して製造することができなかった。本発明に用いる共軸筒型反応装置の概略図符号の説明1:内筒、2:外筒、3:原料水溶液a成分またはb成分の供給口、4:原料水溶液a成分またはb成分の供給口、5:a成分およびb成分が反応した金属石鹸スラリーの吐出口、R1:外筒の内径、R2:内筒の内径、n:外筒において内筒が挿入されていない部分 脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の水溶液と、無機金属塩の水溶液とを反応させて金属石鹸を製造する製造方法であって、外筒の中に内筒を配置した内外筒間に環状空間を有する共軸筒型反応装置を用いて、a)炭素数4〜30の脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を0.001〜20重量%含有する水溶液と、b)無機金属塩を0.001〜20重量%含有する水溶液とを、b成分中の無機金属塩に対する、a成分中の脂肪酸塩の当量比(a/b)が0.5〜1.1となるよう、異なる供給口からそれぞれ供給する金属石鹸の製造方法。