タイトル: | 特許公報(B2)_β−エンドルフィン産生促進剤 |
出願番号: | 2004018627 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 36/73,A61K 8/97,A61P 17/00,A61P 43/00,A61Q 19/00,A23L 1/30 |
奥村 秀信 奥村 由美子 JP 5294530 特許公報(B2) 20130621 2004018627 20040127 β−エンドルフィン産生促進剤 株式会社ノエビア 000135324 奥村 秀信 奥村 由美子 20130918 A61K 36/73 20060101AFI20130829BHJP A61K 8/97 20060101ALI20130829BHJP A61P 17/00 20060101ALI20130829BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130829BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20130829BHJP A23L 1/30 20060101ALN20130829BHJP JPA61K35/78 HA61K8/97A61P17/00A61P43/00 111A61Q19/00A23L1/30 B CAPLUS,MEDLINE,EMBASE,BIOSIS(STN) A61K 36/738, A61K 8/97 特開2002−29959(JP,A) 特開2003−194809(JP,A) 特開2001−302525(JP,A) 1 2005213152 20050811 6 20061106 2010022723 20101008 内田 淳子 渕野 留香 岩下 直人 本発明は、β−エンドルフィンの産生を促進するβ−エンドルフィン産生促進剤に関する。さらに詳しくは、ローズウォーターを含有するβ−エンドルフィン産生促進剤に関する。 β−エンドルフィンは、脳下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)及びメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)と共通の前駆体タンパク質であるプレプロオピオメラノコルチン(POMC)から生合成される内因性モルヒネ様ペプチド(オピオタイドペプチド)の一種であり、鎮痛作用や抗ストレス作用を有することから脳内快楽物質として知られている。β−エンドルフィンは、脳下垂体中葉・後葉に多く含まれ、ストレスなどの侵害要因によって血中にも分泌されることが知られているが、近年の研究によって、皮膚においてもPOMCが合成され、表皮ケラチノサイトよりβ−エンドルフィンが遊離することが明らかとされている(非特許文献1,2参照)。 しかし、β−エンドルフィンの皮膚における生理的作用については、未だ不明な点も多く、詳細な検討はなされていない現状であった。そこで、本発明者らは、ストレスによって分泌されるβ−エンドルフィンが皮膚に対して何らかの有利な作用を発揮しているのではないかとの仮説のもとに種々の検討を行った。 これらの検討の結果、本発明者らは、β−エンドルフィンが皮膚において細胞賦活作用と美白作用を発揮することを見出した。Zenello S.B.,Jackson D.M.,Holick M.F. et.al.,An immunocytochemical approach to the study of beta-endorphin production in human keratinocytes using confocal microscopy,Annals New York Academy of Sciences,1999,885(20),85-99Wintzen M.,Zanello S.B.,Holick M.F.,Wiegant V.M.,Burbach J.P.,Vermeer B.J.,Condition-dependent presence of beta-lipotropin-like peptide in human keratinocytes,Peptides,2000,21(5),691-697 β−エンドルフィンが皮膚において細胞賦活作用と美白作用を発揮することが明らかとなったことから、β−エンドルフィンの産生を促進することにより、細胞賦活作用や美白作用による皮膚症状の予防や改善が可能であることが示された。このため、本発明者らはβ−エンドルフィンの産生を促進する成分を見出し、種々の皮膚症状に応用することが可能なβ−エンドルフィン産生促進剤を提供することを目的に種々の検討を行った。 したがって、本発明の目的は、β−エンドルフィンの産生を促進する成分を見出し、種々の皮膚症状に応用することが可能なβ−エンドルフィン産生促進剤を提供することにある。 優れた効果を発揮するβ−エンドルフィン産生促進剤を見出すために、本発明者らは、天然由来の種々の成分に関して、β−エンドルフィンの産生促進作用についての検討を行った。その結果、ローズウォーターに優れたβ−エンドルフィン産生促進作用を見出し、さらに種々の検討を行い、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、ローズウォーターを含有するβ−エンドルフィン産生促進剤に関する。 本発明によれば、優れた効果を発揮するβ−エンドルフィン産生促進剤を得ることができる。得られたβ−エンドルフィン産生促進剤は、皮膚におけるβ−エンドルフィンの産生を促進することにより、皮膚にリラックス効果を与えるとともに、ストレスに起因する種々の皮膚症状を予防あるいは改善することが可能である。特に、細胞賦活作用や美白作用に基づく皮膚症状の予防や改善を図ることができる。本発明により予防や改善が図られる皮膚症状の例としては、しわ,たるみ,しみ,くすみ,乾燥,肌荒れなどを挙げることができる。 本発明の原料として用いられるローズウォーターは、ローザダマセナ(Rosa damascena Mill.)又は、ローザセンティフォリア(Rosa Centifolia L.)の花を蒸留して得られる芳香成分を含む水である。 ローズウォーターは、優れたβ−エンドルフィン産生促進作用を有し、β−エンドルフィン産生促進剤として利用することができる。 ローズウォーターを有効成分とするβ−エンドルフィン産生促進剤は、単独でも使用することが出来るが、β−エンドルフィン産生促進剤として医薬品,医薬部外品,飲食品,化粧品などの種々の組成物に配合することにより、β−エンドルフィン産生促進作用を有する組成物を得ることが出来る。 ローズウォーターを有効成分とするβ−エンドルフィン産生促進剤を配合する組成物の剤型は任意であるが、組成物が皮膚外用剤,洗浄剤,浴用剤などの場合には、ローションなどの可溶化系,乳液などの乳化系,カラミンローションなどの分散系,噴射剤と共に充填したエアゾール,軟膏剤,粉末,顆粒などの種々の剤型として提供することができる。また、組成物が経口用医薬品や飲食品の場合には、ドリンク剤・点滴剤などの液剤,ガム・飴のような固形剤,カプセル,粉末,顆粒,錠剤などの一般的な剤型とすることができる。 ローズウォーターを有効成分とするβ−エンドルフィン産生促進剤を配合する組成物には、これらの他に、必要に応じて、通常医薬品,医薬部外品,皮膚化粧料,浴用剤,洗浄剤,食品などに配合される油性成分,保湿剤,粉体,色素,乳化剤,可溶化剤,洗浄剤,紫外線吸収剤,増粘剤,薬剤,香料,樹脂,アルコール類,栄養強化物質,調味料などを適宜配合することができ、さらに他のβ−エンドルフィン産生促進剤との併用も可能である。 ローズウォーターを有効成分とするβ−エンドルフィン産生促進剤の種々の組成物への配合量は、組成物の種類や目的等によって調整することができるが、有効性や使用性などの点から、組成物の全量に対して0.0001〜75重量%が好ましく、より好ましくは0.001〜50重量%であり、最も好ましくは0.01〜25重量である。 ローズウォーターを有効成分とするβ−エンドルフィン産生促進剤、あるいは該β−エンドルフィン産生促進剤を配合したβ−エンドルフィン産生促進用組成物は、ストレスに起因する種々の皮膚症状を予防あるいは改善することが可能である。特に、細胞賦活作用や美白作用に基づく皮膚症状の予防や改善を図ることができ、その例としては、しわ,たるみ,しみ,くすみ,乾燥,肌荒れなどの皮膚症状を挙げることができる。 以下に、抽出物の製造例、作用を評価するための試験について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれによってなんら限定されるものではない。 [製造例1] ローズウォーターの調製早朝の開花直前のローザセンティフォリア(Rosa Centifolia L.)の花1kgを水蒸気蒸留法により香料成分と水溶性成分に分離し、このうちの水溶性成分を分取後、濾過を行い、ローズウォーターを得た。 [β−エンドルフィン産生促進作用の評価]試料には、製造例1にて調製したローズウォーターを用いた。評価は、以下の手順で行った。ヒト表皮細胞を1ウェル当たり2.0×104個となるように96穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、市販のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に5%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。24時間培養後、任意の濃度の試料を添加した試験培地に交換し、さらに48時間培養した。培養後に培養上清中に分泌されたβ−エンドルフィン産生量をELISA法により定量した。また、同時に細胞数を計測し、細胞当たりのβ−エンドルフィン産生量を算出した。各試料の評価結果を、ブランクの細胞当りのβ−エンドルフィン産生量を100とした場合の相対値にて表1に示す。なお、表中の**は、t検定における有意確率P値に対し、有意確率1%未満の危険率(P<0.01)で有意差が認められたものを表したものである。 表1より、試料を添加した培地において、有意なβ−エンドルフィン産生促進作用が認められた。特に、試料を1.25〜2.5%培地に添加した場合には、ブランクと比較して、危険率5%未満で、また試料を5.0%培地に添加した場合には、危険率1%未満で有意なβ−エンドルフィン産生促進作用が認められた。このことから、ローズウォーターは、優れたβ−エンドルフィン産生促進作用を有することが明らかとなった。 上記の検討により、ローズウォーターは、β−エンドルフィン産生促進剤として優れていることが明らかとなり、このβ−エンドルフィン産生促進作用により、β−エンドルフィンの有する細胞賦活作用や美白作用を増強し、しわ,たるみ,しみ,くすみ,乾燥,肌荒れなど皮膚症状の予防や改善が可能であることが明らかとなった。 最後に、ローズウォーターを有効成分とするβ−エンドルフィン産生促進剤を含有する組成物の処方例として、皮膚外用剤及び食品の処方例を示すが、本発明のβ−エンドルフィン産生促進剤を配合する組成物は、これらに限定されるものではない。なお、各処方例に配合したβ−エンドルフィン産生促進剤には、製造例1にて製造したローズウォーターを用いた。 [処方例1]ローション(1)エタノール 5.0(重量%)(2)パラオキシ安息香酸メチル 0.1(3)フェノキシエタノール 0.05(4)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3(5)香料 0.1(6)β−エンドルフィン産生促進剤 5.0(7)精製水 100とする残余(8)クエン酸 0.02(9)クエン酸ナトリウム 0.1(10)ヒドロキシエチルセルロース 0.15製法:(1)に(2)〜(5)を溶解する。溶解後、(6)〜(9)を順次添加した後、十分に攪拌し、(10)を加え、均一に混合し、ローションを得た。 [処方例2]水性ジェル(1)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 17.5(重量%)(2)アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液) 15.0(3)β−エンドルフィン産生促進剤 15.0(4)ショ糖脂肪酸エステル 1.3(5)エタノール 10.0(6)モノラウリン酸ポリグリセリル 1.0(7)精製水 100とする残余(8)スクワラン 2.0(9)ベヘニルアルコール 0.75(10)ホホバ油 1.0(11)L−アルギニン(10重量%水溶液) 2.0(12)香料 0.1製法:(1)〜(7)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(8)〜(10)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。乳化終了後に冷却を開始し、50℃にて(11)を加える。さらに40℃まで冷却し、(12)を加え、均一に混合し、水性ジェルを得た。 [処方例3]クリーム(1)スクワラン 10.0(重量%)(2)ステアリン酸 2.0(3)水素添加パーム核油 0.5(4)水素添加大豆リン脂質 0.1(5)セタノール 3.6(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0(7)グリセリン 10.0(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1(9)アルギニン(20重量%水溶液) 15.0(10)精製水 100とする残余(11)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 15.0(12)β−エンドルフィン産生促進剤 1.0製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。乳化終了後、(11)を加え、冷却を開始し、40℃にて(12)を加え、均一に混合する。 [処方例4]内服液(1)β−エンドルフィン産生促進剤 3.0(重量%)(2)クエン酸 0.1(3)ステビア 0.01(4)精製水 93.89(5)エリスリトール 3.0製法:(1)〜(5)を均一に混合する。 ローズウォーターを含有することを特徴とするβ−エンドルフィン産生促進剤(美白用途を除く)。