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タイトル:特許公報(B2)_熱可塑性エラストマーの加工条件設定方法と押出吐出量制御装置および加工管理方法
出願番号:2004011269
年次:2009
IPC分類:B29C 47/00,G01N 11/00,G01N 11/16,G01N 33/44


特許情報キャッシュ

眞中 将一 黒沢 雅和 一戸 澄人 JP 4219824 特許公報(B2) 20081121 2004011269 20040120 熱可塑性エラストマーの加工条件設定方法と押出吐出量制御装置および加工管理方法 鬼怒川ゴム工業株式会社 000158840 橋本 剛 100096459 小林 博通 100086232 富岡 潔 100092613 眞中 将一 黒沢 雅和 一戸 澄人 20090204 B29C 47/00 20060101AFI20090115BHJP G01N 11/00 20060101ALI20090115BHJP G01N 11/16 20060101ALI20090115BHJP G01N 33/44 20060101ALI20090115BHJP JPB29C47/00G01N11/00 CG01N11/16 ZG01N33/44 B29C 47/00−47/96 G01N 11/00,11/16,33/44 国際公開第01/057493(WO,A1) 特開2004−077274(JP,A) 9 2005205599 20050804 23 20060428 鏡 宣宏 本発明は、熱可塑性エラストマー組成物を素材とする成形品の機械的物性および加工性を評価する技術に関し、特に機械的物性および加工性を含む特性評価方法と特性評価装置のほか、それらに付随する熱可塑性エラストマー組成物の加工条件設定方法と押出吐出量制御装置および加工管理方法に関するものである。 自動車部品、建築部材および家電部品をはじめとする多くの分野において、ゴムと同様な軟質部材であって且つ別の加硫成形工程を要せずに熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有する熱可塑性エラストマーが注目を集めている。 このような熱可塑性エラストマーには、スチレン系のほか、塩化ビニル系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系等の多くの種類のものが存在し、いずれの熱可塑性エラストマーを素材とする成形品であっても、その品質、性能および加工性は、コンパウンドの練りばらつきの影響を大きく受けることが知られている。 例えば架橋タイプの熱可塑性エラストマーの特性は、一般的にマトリックス相(樹脂)の分子特性、ドメイン(ゴム粒子)相の分子特性、架橋度合い、ゴム粒子相の粒子径のほかその均一性に大きく支配されていると考えられる。 同一配合および同一加工条件の熱可塑性エラストマーであっても、例えば動的に熱処理する際にいつも適度な架橋が生じ、しかもマトリックス相(樹脂成分)とドメイン相(ゴム成分)が同じ状態で均一に存在しているとは限らない。これは、わずかな加工環境の違いによってコンパウンドの練り状態にばらつきが生じてしまうためである。そして、このコンパウンドの加工ばらつきが次工程での加工性に大きく影響を与え、しかも最終製品に与える影響も大きい。 近年では、熱可塑性エラストマーは加硫ゴムまたは熱可塑性樹脂よりも物性の発現機構、流動機構がそれぞれ複雑であると考えられており、したがって、そのモルフォロジーの評価技術(練り状態の評価技術)および加工性評価方法が必要とされている。 特に熱可塑性エラストマーを素材とする成形加工においては、不良率を減少させて材料歩留まりを高めたいというニーズが益々高く、しかも高物性を維持し、最適な成形条件で質の高い成形品を製造することが課題となるため、素材の物性や加工性を的確に評価できる方法が求められている。 従来の一般的な熱可塑性エラストマーの加工性の評価においては、メルトフローレイト(以下、MFRという)(JIS K7120)が使用されており、例えば特許文献1では、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の成形加工性をMFRにより評価している。特開2003−82023号公報 しかしながら、MFRによる評価では定荷重における吐出量を評価する方法であるため、熱可塑性エラストマー組成物の混練り状態に依存する押出加工性に関する詳細な情報、例えば、材料の混練り状態、押出吐出安定性、吐出量ばらつき性、異形押出しおける断面形状の適否、押出品の表面見栄え等を正確に把握することは困難である。 また、上記MFR値に、硬度、引張永久歪み、引張強度、最大伸び等の測定による物性評価を併用することで混練り状態を代用評価することも行われているが、先に述べたようにMFR値を基本としている以上は成形品物性に大きく関係するする混練り状態を詳細に把握することはできない。 さらに、その他の評価方法として例えばシクロヘキサン不溶解分測定方法によるゲル含有判定や物性評価法もあるが、測定に時間がかかり、即効性が必要な材料評価(検査)方法としては不十分である。 本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、特に熱可塑性エラストマーの機械的物性や成形加工性を高信頼度で、しかも短時間で予測できるとともに、最適な成形加工条件で質の高い押出成形品を製造することができる特性評価方法とその装置、加工条件設定方法、押出吐出量制御装置および加工管理方法を提供しようとするものである。 請求項1に記載の発明は、所定の温度範囲で振動周波数および振動振幅を変化させて、所定の混練り条件で製造された熱可塑性エラストマーにかかるせん断力をコントロールして、そのせん断力に反作用する応力に基づいて、熱可塑性エラストマーの複素粘性率η*(η)と、せん断速度の異なる二つのせん断領域の熱可塑性エラストマーの複素弾性率G*を求める測定工程と、上記測定時における温度および気体定数をそれぞれTおよびR、粘度をη、複素粘性率をη*(η)、見かけの活性化エネルギーをEaとして、粘弾性材料の温度依存性を表すアレニウス型の式(アンドレード(Andrade)の式)(1)に基づいて熱可塑性エラストマーの見かけの活性化エネルギーEaを算出する工程と、先に求めた二つの複素弾性率G*の比に基づいて、粘弾性特性のせん断速度依存性を表す複素弾性率G*の変化率G*r(G*rateの略)を算出する工程と、見かけの活性化エネルギーEaの許容幅と複素弾性率G*の変化率G*rの許容幅との相関を予め定めてある相関データ上において、先に求めた見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rの値をもって実測点位置を指定した場合に、その相関データ上での許容幅の中間点と実測点位置との相対位置関係を動径率Mとして算出する工程とを含んでいる。 η=Aexp(Ea/RT)‥‥(1) 但し、 Ea:Activation Energyの略でコンパウンド粘度(流動)の見かけの活性化エネルギー(×10-1KJ/mol) その上で、先に算出した見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rおよび動径率Mのそれぞれの値に基づいて熱可塑性エラストマーの押出加工条件を設定することを特徴とする。 なお、上記の同径率Mについては後述する。 この場合、請求項2に記載のように、熱可塑性エラストマーの押出加工条件の設定に先立って、先に算出した見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rの値と、予め設定されている活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rのそれぞれの許容範囲とを個別に比較して、熱可塑性エラストマーを素材とする押出成形品の押出加工性の評価を行う判定工程を含んでいることが望ましい。 ここでの押出加工性は、例えば押出成形時における熱可塑性エラストマーの少なくとも平均押出吐出量、吐出量ばらつき率および押出成形品の外観見栄え、押出成形品の断面形状を交差内のものとすることができる押出機のスクリュー回転数および押出成形品の断面形状の良し悪しのうちのいずれかとする。 また、請求項3に記載のように、同一配合で且つ混練り条件の異なる複数の熱可塑性エラストマーを用いて特定の押出加工条件下で押出成形を行った場合のそれぞれについて、押出成形工程で成形可能な見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rのそれぞれの許容範囲が予め設定されていることが望ましい。 上記の特性評価に適用可能な熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系のほか例えばスチレン系、ウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニル樹脂系、ポリアミド系等のものを挙げることができ、それぞれの単独のもの以外に複数種類のものを組み合わせたものでもよい。さらに、架橋形態としては、架橋タイプ、非架橋タイプ(架橋を行わない単純ブレンドタイプ)、共重合タイプ等の公知の構造をもった熱可塑性エラストマーに適用可能である。 当然のことながら、熱可塑性エラストマーとしてはマトリックス成分以外に各種目的に応じた成分が配合されているものでも適用可能である。各種目的に応じた成分とは、例えば発泡剤(通常使われる発泡剤のほか、熱膨張マイクロカプセルや水含胞マイクロカプセル等の含む)、発泡助剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、粘着付与剤、架橋剤、架橋助剤、金属不活性剤、分子量調整剤、防菌・防黴剤、蛍光増白剤、摺動性向上剤、カーボンブラック、酸化チタンなどの着色剤、フェライトなどの金属粉末、ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの有機繊維、複合繊維、ガラスバルーン、ガラスフレーク、アスベスト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、クレー、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、硫酸バリウム、フッ素樹脂、ポリマービーズなどの充填剤、ポリオレフィンワックス、セルロースパウダー、ゴム粉、再生ゴム、低分子量ポリマー等である。 見かけの活性化エネルギーEaは熱可塑性エラストマーの押出吐出量ばらつきを評価する尺度となる。見かけの活性化エネルギーEaが大きいと吐出量ばらつきが大きく、逆に見かけの活性化エネルギーEaが小さいと吐出量ばらつきが小さいことを示している。 すなわち、押出加工においては、材料がフィードゾーン→シリンダー→ヘッド→口金へと順次移動する過程ではスクリューによって運搬される。その過程で材料の投入から吐出まで様々な温度履歴を受ける。したがって、温度変化による粘度の影響を受けやすい材料(Eaが大きい材料)は流動性が変化しやすいため、押出環境のわずかな違いで押出流動性がばらつきやすい。この現象は架橋タイプおよび非架橋タイプでも同じように起こる。 このことから、押出加工性においては、見かけの活性化エネルギーEaが大きくなると押出吐出量ばらつきが大きくなり、また、見かけの活性化エネルギーEaが小さくなりすぎると架橋反応が局所的に集中していることを示し、押出成形品の表面見栄えが悪化し、いわゆるブツが発生する傾向があることが判明した。したがって、熱可塑性エラストマーの見かけの活性化エネルギーEaを測定することにより、押出加工性が評価できるに至った。 複素弾性率G*の変化率G*rは、複素弾性率G*のせん断速度の依存性を示し、それを数値化したものである。特に電子顕微鏡観察における分散相の形態や相分離の程度と一致していることから、複素弾性率G*の変化率G*rは分散相の形態や相分離の程度に反映していると考えられる。相分離の程度が悪いときは複素弾性率G*の変化率G*rが低くなる傾向を示し、それとの相関によって材料の表面つやが悪くなることから、表面見栄えの管理に有効である。 一般的には、例えば架橋タイプの熱可塑性エラストマーはモルフォロジーの違いにより光沢が変化しやすく、それを制御することは容易ではなかったが、上記見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rに管理範囲を設け、混練りを制御することにより光沢が安定した材料を判定することが可能である。 一方、熱可塑性エラストマー製造時の混練り状態に着目した場合、例えば動的架橋タイプの熱可塑性エラストマーでは、ゴムと樹脂成分がある程度均一に分散した後に架橋反応が進むことが望ましい。ゴムを動的に架橋処理するのは、ゴム自体の特性強化のほかに、ゴムがオレフィン樹脂マトリックス中に微小粒径で高分散した構造を固定化する意味合いがある。このため、ある程度は分散と架橋の間隔をとることによって安定なモルフォロジーを形成させることが、配合設計上、重要な因子となる。 しかしながら、混練り時の加工環境のばらつきにより、分散と架橋のタイミングが必ずしも一定ではなく、同一条件で混練りしたとしても、モルフォロジーにある程度のばらつきが出てしまうのが一般的である。 したがって、動的架橋タイプの熱可塑性エラストマーのマトリックス相(樹脂成分)とドメイン相(ゴム成分)との均一性および架橋度合いにもばらつきが生じるほか、非架橋タイプの熱可塑性エラストマー等に関してもマトリックス相とドメイン相の均一性にばらつきが生じることになる。 そこで、このような熱可塑性エラストマー製造時の混練り状態の評価をもEa値およびG*r値をもって行うものとする。すなわち、Ea値およびG*r値の双方が所定の管理範囲(設定範囲)内に入っていれば、品質が優れ、しかも押出加工性に優れた材料であることが判定できることは先に述べた。これは、Ea値およびG*r値の双方により熱可塑性エラストマーのモルフォロジーが評価でき、その結果として材料物性、押出加工性の評価や管理が可能であることにほかならず、間接的には先に述べた混練り状態の詳細な評価をも同時に行えることになる。 より望ましくは、請求項4に記載のように、上記判定工程での成形加工性の評価結果が良好であることを条件に、見かけの活性化エネルギーEaの許容幅と複素弾性率G*の変化率G*rの許容幅との相関を予め定めてある相関データ上において、先に算出した見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rの値をもって実測点位置を指定した場合に、その相関データ上での許容幅の中間点と実測点位置との相対位置関係を動径率Mとして算出する工程と、この動径率Mに基づいて、特定の押出成形品を押出成形するのに適した熱可塑性エラストマーの押出吐出量を算出する吐出量算出工程と、上記判定手段により押出加工性が良好であると判定された押出成形品について、先に吐出量算出工程にて算出された押出吐出量に基づいて当該押出成形品の押出加工条件を設定する工程とを含んでいることが望ましい。 この場合、請求項5に記載のように、押出加工条件を設定する工程では、予め設定されている動径率Mと押出機のスクリュー回転数との相関データと、先に算出した動径率Mとを照合して、その算出した動径率Mに見合ったスクリュー回転数を算出するものとする。 請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の技術を熱可塑性エラストマーの押出吐出量制御装置として捉えたものであって、下記(a3)〜(h3)の手段を備えているものである。 (a3)所定の温度範囲で振動周波数および振動振幅を変化させて、所定の混練り条件で混練された熱可塑性エラストマーにかかるせん断力をコントロールして、そのせん断力に反作用する応力に基づいて、熱可塑性エラストマーの複素粘性率η*(η)と、せん断速度の異なる二つのせん断領域の熱可塑性エラストマーの複素弾性率G*を求める測定手段。 (b3)上記測定時における温度および気体定数をそれぞれTおよびR、粘度をη、複素粘性率をη*(η)、見かけの活性化エネルギーをEaとして、粘弾性材料の温度依存性を表す式(1)に基づいて熱可塑性エラストマーの見かけの活性化エネルギーEaを算出する第1の演算手段。 (c3)先に求めた二つの複素弾性率G*の比に基づいて、粘弾性特性のせん断速度依存性を表す複素弾性率G*の変化率G*rを算出する第2の演算手段。 (d3)見かけの活性化エネルギーEaの許容幅と複素弾性率G*の変化率G*rの許容幅との相関を予め定めてある相関データ上において、先に算出した見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rの値をもって実測点位置を指定した場合に、その相関データ上での許容幅の中間点と実測点位置との相対位置関係を動径率Mとして算出する第3の演算手段。 (e3)同一配合で且つ混練り条件の異なる複数の熱可塑性エラストマーを用いて特定の押出加工条件下で押出成形を行った場合のそれぞれについて、押出成形工程で成形可能な見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rのそれぞれの許容範囲が予め設定されている記憶手段。 (f3)上記第1,第2の演算手段で算出された見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rの値と、上記記憶手段に記憶された活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rのそれぞれの許容範囲とを個別に比較して、熱可塑性エラストマーを素材とする押出成形品の押出加工性の評価を行う判定手段。 (g3)上記第3の演算手段で算出された動径率Mに基づいて、特定の押出成形品を押出成形するのに適した熱可塑性エラストマーの押出吐出量を算出する吐出量算出手段。 (h3)上記判定手段により押出加工性が良好であると判定された押出成形品について、吐出量演算手段で算出された押出吐出量に基づいて当該押出成形品の押出加工条件を設定する条件設定手段。 この場合、請求項7に記載のように、上記吐出量算出手段は、予め設定されている動径率Mと押出機のスクリュー回転数との相関データと、先に算出した動径率Mとを照合して、その算出した動径率Mに見合ったスクリュー回転数を算出する一方、上記条件設定手段は、押出機による押出成形開始に先立って先に算出したスクリュー回転数を押出機に付与するものであることとする。 さらに請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の技術を熱可塑性エラストマーの加工管理方法として捉えたものであって、下記(a4)〜(f4)の工程を含んでいるものである。 (a4)所定の温度範囲で振動周波数および振動振幅を変化させて、所定の混練り条件で混練された熱可塑性エラストマーにかかるせん断力をコントロールして、そのせん断力に反作用する応力に基づいて、熱可塑性エラストマーの複素粘性率η*(η)と、せん断速度の異なる二つのせん断領域の熱可塑性エラストマーの複素弾性率G*を求める測定工程。 (b4)上記測定時における温度および気体定数をそれぞれTおよびR、粘度をη、複素粘性率をη*(η)、見かけの活性化エネルギーをEaとして、粘弾性材料の温度依存性を表す式(1)に基づいて熱可塑性エラストマーの見かけの活性化エネルギーEaを算出する工程。 (c4)先に求めた二つの複素弾性率G*の比に基づいて、粘弾性特性のせん断速度依存性を表す複素弾性率G*の変化率G*rを算出する工程。 (d4)先に算出した見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rの値と、予め設定されている活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rのそれぞれの許容範囲とを個別に比較して、熱可塑性エラストマーを素材とする押出成形品の押出加工性の評価を行う判定工程。 (e4)上記判定工程での押出加工性の評価結果が良好であることを条件に、見かけの活性化エネルギーEaの許容幅と複素弾性率G*の変化率G*rの許容幅との相関を予め定めてある相関データ上において、先に求めた見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rの値をもって実測点位置を指定した場合に、その相関データ上での許容幅の中間点と実測点位置との相対位置関係を動径率Mとして算出する工程。 (f4)この動径率Mに基づいて、特定の押出成形品を押出成形するのに適した熱可塑性エラストマーの押出吐出量を算出する吐出量算出工程。 そして、上記吐出量算出工程で算出された押出吐出量となるように押出機を制御するとともに、上記判定工程で成形加工不可能と判定された場合に熱可塑性エラストマーの混練り条件を変更することを特徴とする。 この場合、請求項9に記載のように、上記吐出量算出工程では、予め設定されている動径率Mと押出機のスクリュー回転数との相関データと、先に算出した動径率Mとを照合して、その算出した動径率Mに見合ったスクリュー回転数を算出するものとする。 これらの請求項1〜9に記載の発明における動系率Mとは、より具体的には次のように定義する。すなわち、例えば見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rの値のうち一方の値の許容幅を横軸に、他方の値の許容幅を横軸にそれぞれ指定したEa−G*r特性図上において任意の点をプロットした場合に、Ea−G*r特性図上の許容領域の中間点と原点とのなす距離と、上記任意の点と原点とのなす距離との割合を動系率Mと定義するものとする。 熱可塑性エラストマーの内部構造は、見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rの双方から位置付けることができることは先に述べた。このことから、内部構造と相関のあるEa値とG*r値の双方の関係から押出吐出量をも予測し得ると考えて、Ea値とG*r値の双方から算出される動径率Mという指標を定義した。その結果として、Ea値とG*r値の双方から導かれる動径率Mをもって、押出成形時に押出成形品の断面形状が精度良く押し出せるかどうか判定でき、また、Ea値とM値とにより押出成形時の押出吐出量ばらつき性、押出成形品の表面見栄えおよび押出吐出量の予測が可能である。同時に、動径率であるM値は押出吐出量と相関があることから、押出機のスクリュー回転数の予測に有効であることが判明した。 このように、Ea、G*rおよびMの各々の値を熱可塑性エラストマーの押出加工性の予測値として利用することで最適な成形条件で、質の高い押出成形品を製造することが可能となる。 請求項1〜9に記載の発明によれば、熱可塑性エラストマーを素材とする押出成形品を押出成形する際の押出加工条件、すなわち押出吐出量や押出機のスクリュー回転数を最適な値に設定することができるため、生産性の向上および押出成形品の品質向上に寄与することができる。 同一配合でありながら混練り条件の異なる熱可塑性エラストマーの複数のサンプルa〜jについてその特性評価、すなわち成形加工性である押出加工性および機械的物性の評価を行った結果を表1,2に示す。 表1の各サンプルa〜jの材料配合は下記の割合で全て共通とした。 (1)オレフィン系エラストマーであるEPDM(エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三次元共重合体) :100phr (2)PP(ポリプロピレン) :70phr (3)ステアリン酸亜鉛 :5phr (4)パラフィン系鉱物油 :60phr (5)カーボンブラック(FEF) :10phr (6)架橋剤である2.5ジメチル−2.5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン :3phr (7)架橋助剤であるジビニルベンゼン:1phr サンプル調整は、上記(1)〜(5)の配合資材を0.6Lバンバリーミキサーに入れて、表3に示すように回転数50〜100rpm、温度190℃で混練りした後、最も大きな一辺を3〜5mmとするサイコロ状にペレット化した。次いで、これらのペレットに上記(6),(7)の資材を配合、すなわち(6)の架橋剤と(7)の架橋助剤を溶融分散させた溶液を添加した上で、同方向回転型二軸押出機で表3に示すスクリュー回転数および温度で動的熱処理を行った。さらに得られたコンパウンドをペレット化して熱可塑性エラストマーサンプルa〜jを得た。なお、サンプルa〜jは十分に乾燥させた上で押出成形評価を行った。 上記の動的熱処理とは、せん断力を加えながら加熱処理を行う方法であり、バッチ式あるいは連続式等の溶融タイプの混練装置を使うことができる。例えば、解放型ミキシングロール、密閉式のミキサー、ニーダー等のバッチ式の溶融タイプの混練り装置、一軸押出機、同方向回転型連続式二軸押出機、異方向回転型連続式二軸押出機等がその代表的なものである。 表1,2の各サンプルa〜jの粘弾性の欄には、本発明方法により求めた測定結果として見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rおよび動径率Mの値が、それらの目標値や従来からの流動性の指標であるMFR値とともに示されている。 表1,2における見かけの活性化エネルギーEaの値の算出は、粘弾性測定機として「アルファーテクノロジーズ社製 RPA2000」を使用し、押出し時に使用する温度範囲およびせん断速度にて評価することが望ましいため、下記の条件にて測定および算出を行った。 測定条件 温度: 180℃−200℃−220℃ せん断速度: 6.98 1/s (歪率14%、周波数50rad/s) 算出方法: アレニウス型(アンドレードの式) η=Aexp(Ea/RT)‥‥(1) 但し、 η:粘度 Ea:(流動の)見かけの活性化エネルギー T:温度 R:気体定数 とする。 上記の測定条件から180℃−200℃−220℃の複素粘性率η*(η)を算出し、これらを上記(1)式にプロットしてEaを算出する。 また、複素弾性率G*のせん断速度依存性であるその変化率G*rは、粘弾性測定機として「アルファーテクノロジーズ社製 RPA2000」を使用し、押出し時に使用する温度にて評価するのが望ましいため、下記の条件にて測定および算出を行った。 測定条件 温度: 200℃ せん断速度: (a)10.0 1/s (周波数100rad/s、歪率10.04%) (b)19.8 1/s (周波数100rad/s、歪率19.95%) そして、せん断速度(a),(b)の時の複素弾性率G*rをそれぞれ下記(2)式にプロットしてその変化率G*rを算出した。 G*r(%)={(b)のG*}/{(a)のG*r}×100‥‥(2) さらに、表1,2におけるMは、Ea−G*r特性上における動径率(%)と定義され、次のように算出した。すなわち、図6に示すように、仮に材料Aをもって押出成形された押出成形品をB部品とした場合に、EaおよびG*rのそれぞれの値の目標幅がEa1〜Ea2およびG*r1〜G*r2のように決まった場合、EaおよびG*rの値によって決まる目標幅領域の中間点をM0とする。中間点M0から原点までの距離をD0とした場合、任意の点M1(EaM1,G*rM1)の動径率Mは次式(3)により算出される。 M=D1/D0×100(%)‥‥(3) 但し、 D1={(G*rM1)2+(EaM1)2}1/2 D0=[{(Ea2+Ea1)/2}2+ (G*r2+G*r1)/2}2]1/2 表1,2には、上記の粘弾性特性や流動性(MFR値)とともに機械的特性、引張永久歪率および押出性(押出加工性)評価結果が示されている。 表1,2の流動性の指標であるMFR値はJIS K7120に準拠して、230℃×2.16kg荷重時の値(g/10min)を示してある。 機械的特性のうち硬度(デュロメーターA硬度)はJIS K6253に準拠したものを、引張強度(MPa)および最高伸び(%)についてはJIS K6251に準拠した値をそれぞれ示している。 引張永久歪率については、JIS 3号型ダンベル(厚み2mmのシート状のもの)を用い、70℃×100Hの条件下で20%伸長時の永久歪率(%)を測定したものである。 また、表1,2の押出性評価項目の平均押出吐出量は、φ65の一軸押出機でスクリュー回転数70rpm、吐出温度が200℃となるように調整した上で押し出した時の1分間の平均吐出量(サンプル数n=50)を求めたものである。 同様に、表1,2の押出性評価項目の吐出量ばらつき率(%)は、上記押出条件での1分間の吐出重量(サンプル数n=50)の重量ばらつきを次式(4)式により求めたものである。 吐出量ばらつき率(%)={(最大吐出量(g)−最小吐出量(g))/平均吐出量(g)}×100‥‥(4) 表1,2の押出性評価項目の断面形状評価は次のようにして実施した。まずサンプルaにてスクリュー回転数70rpmの時(φ65の押出機)に、図7の形状に一致するような押出口形状の口金を作製しておく。そして、任意のサンプル(コンパウンド状のもの)をフィード部から入れ、押出物が押し出されてから15分後からサンプル採取を行った。 その場合、サンプル数nはn=50として、1分毎に吐出量ばらつき率評価用のサンプルを採取し、その50個のサンプルの中から押出断面形状評価用のサンプルを採取(10個目、25個目、50個目)する。断面形状評価方法としては、押出し後、急冷硬化させて裁断し、断面形状を測定した。そして、図7の寸法公差a〜h(±0.2mm)以内に三断面全て入ったとき形状判定をOKとする(なお、図7の各辺の寸法は、例えばa=6mm,b=2mm,c=11mm,d=11mm,e=3mm,f=7mm,g=7mm,h=4mmである)。 また、表1,2の押出性評価項目の調整スクリュー回転数は、断面形状が寸法公差内で押出可能なスクリュー回転数が存在するか否かを表し、存在する場合はその回転数を、存在しない場合は「調整難」と表示している。 同様に、表1,2の押出性評価項目の押出成形品の表面見栄え評価は、先の断面形状評価のために押し出した押出成形品の表面見栄えについて目視にて観察を行ったものである。 表1,2の見かけの活性化エネルギーEaに関連する機械的物性および押出成形性の評価項目は、先に述べたように硬度、引張強度、最高伸びのほか、平均押出吐出量、吐出量ばらつき率および押出成形品の表面見栄え評価である。 また、表1,2の複素弾性率の変化率G*rに関連する機械的物性および押出成形性の評価項目は、同様に硬度、引張強度、最高伸びのほか、平均押出吐出量、調整スクリュー回転数および断面形状評価である。 さらに、表1,2の動径率Mに関連する押出成形性の評価項目は、平均押出吐出量、調整スクリュー回転数および断面形状評価である。 表1,2から明らかなように、本発明方法により求めた見かけの活性化エネルギーEa、複素弾性率の変化率G*rおよび動径率Mのいずれもが目標値を満たしているサンプルa〜eは総合評価が全て「○(良好)」となり、その一方、Ea値、G*r値およびM値のうち少なくともいずれか一つが目標値を外れているサンプルf〜jは総合評価が全て「×(不良)」となった。 このことから、少なくともEaおよびG*rの値が共に管理範囲内に入っていれば、品質が優れ、しかも押出成形性の良い材料であることを判定できる。これは、EaおよびG*rの双方の値によってコンパウンドのモルフォロジーが評価できることにほかならず、その結果として材料の機械的物性、押出成形性評価およびそれらの管理が可能でることを意味している。 例えば、サンプルgでは従来の判定法であるMFR値が目標範囲内に入っているにもかかわらず、Eaの値が目標範囲内に入っていないので、押出成形品の外観見栄えが悪化する蓋然性が高いと判定することができる。また、サンプルiのようにMFR値が目標範囲内に入っていてもG*rの値が目標値を満たしていないので、材料の機械的物性が悪くなり、品質が低下するものと判定できる。 その上、Ea値とG*r値の相関から導かれるMをもって、断面形状が精度良く押し出せるかどうか判定することができ、またM値はスクリュー回転数と相関がある故にスクリュー回転数の評価指標としても利用可能となる。これは、表1,2の調整スクリュー回転数と動径率Mの値とをプロットした場合に図8のような密接な相関があることからも容易に理解できる。 このように本発明の見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率の変化率G*rによる評価は、押出成形品の機械的物性および押出加工性(押出成形性)に関する正確な情報を得ることができ、実際の製品形状で押出さなくても、Ea値およびG*r値を求めることで、短時間のうちに高精度に特性評価を行うことができる。特にEa値とG*r値と相関のある動径率Mを併用するとその効果が一段と顕著となる。 図1には、本発明の方法を実施するためのより具体的な粘弾性試験装置の一例を示す。図1において1は粘弾性測定機であり、この粘弾性測定機1は、測定すべき熱可塑性エラストマーの試料を収容する温度調節された試料室と、試料に振動周波数と振動振幅をコントロールしてせん断力を与える駆動機構と、反作用トルクを検出して電気信号に変換する変換器とを備えている。 2は、粘弾性測定機1から出力される反作用トルクに相当するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器である。3は、A/D変換器2からの信号を記憶し、測定終了後、記憶したデータを読み出して処理を行う情報処理装置である。 情報処理装置3のなかの4はEa演算装置であり、A/D変換器2の出力を記憶したデータ(反作用トルクに相当するデータ)に基づいて複素粘性率η*(η)を求め、このη*(η)から前述した式(1)に基づいて見かけの活性化エネルギーEaの値を演算する機能を有する。 5は、各材料毎の成形可能なEa値の範囲(例えば表1,2に示す目標値の範囲)を設定範囲として予め記憶しておく記憶装置である。6は、Ea演算装置4で演算されたEa値と記憶装置5に記憶されたEa値の設定範囲を比較し、吐出量ばらつき性や外観見栄え等の材料の機械的物性や押出成形性の適否判定を行う演算装置である。 7は、演算装置6の演算結果をEa演算装置4での演算結果とともに記憶する記憶装置である。8は、A/D変換器2の出力を記憶したデータ(反作用トルクに相当するデータ)から、前述した式(2)に基づいて複素弾性率G*の変化率G*rを演算するG*r演算装置である。9は、G*r演算装置8の演算結果を記憶する記憶装置である。 10は、記憶装置7,9に記憶されたデータに基づいて押出機の押出吐出量を制御する吐出量制御装置である。この吐出量制御装置10は例えば図2のように構成されている。 図2において、11は、各材料の押出条件と押出成形品毎の材料のG*rの範囲(例えば表1,2に示すような目標値の範囲)を設定範囲として予め記憶する記憶装置である。12は、押出成形品毎の情報により成形可能なG*rの範囲(設定範囲)と上記記憶装置9に記憶されたG*rの演算値との比較判定を行う演算装置である。なお、先に述べたEa値に関する記憶装置5では、各材料毎の成形可能なEa値の範囲(設定範囲)が記憶されているのに対して、記憶装置11では、各材料毎の押出条件とともに押出成形品毎の材料に関する成形可能なG*r値の設定範囲が予め記憶されている。 また、13は、それぞれの記憶装置7,9に記憶されているEaとG*rの演算値をもとに先の式(3)に基づいて動径率Mを演算する演算装置である。14は、押出成形品毎の情報により上記動径率Mに基づいて押出吐出量を算出する演算装置である。15は、使用する材料に応じ押出成形品毎の押出成形に際して各種の条件設定を行う演算装置である。16は、演算装置15で設定された条件に見合った押出スクリュー回転数、押出温度、口金種類を決定し、押出機20を制御する押出条件制御装置である。 ここで、先に述べた見かけの活性化エネルギーEaの値を判定するフローチャートは、例えば図3のとおりである。このフローチャートは、図1,2に示す粘弾性試験装置のCPUのプログラムとして実行されるものである。 図3において、まず準備段階として特定の試料(ここでは、例えば試料Aとする)を試験機(図1の粘弾性測定機1)にセットし(ステップS1)、試料Aおよび粘弾性測定機1を予熱した後(ステップS2)、試験を開始する(ステップS3)。 試験開始後、フローチャートの右側に記載された試験機制御(ステップS4,S5)と、左側に記載されたデータ記憶(ステップS6,S7)とが並行して行われる。 ステップS4においては、図1の粘弾性測定機1が、試料Aに対して任意の温度、振動周波数、振動振幅におけるせん断力を入力し、反作用の出力トルクを検出する。これは所定のデータ採取が終了するまで行われる(ステップS5)。また、ステップS6においては試験の採取データをA/D変換し記憶装置に記憶する。これは所定のデータ採取が終了するまで行われる(ステップS7)。 データ採取が終了すると、ステップS8において、記憶したデータを読出し、出力トルクから複素粘性率η*(η)を算出する。そして、次のステップS9において先に述べた式(1)に基づいて演算を行って見かけの活性化エネルギーEaを算出する。 一方、ステップS10において各材料の押出成形品(成形対象となる部品)毎に予め記憶されている成形可能なEa値の範囲(設定範囲)を呼び出し、ステップS11において、試料AについてのEaの演算値と試料Aについての成形可能なEa値の設定範囲とを照合し、試料Aについての押出加工性の評価判定を行う。 その結果、Eaの演算値が、予め記憶されている成形可能なEa値の設定範囲内のものであれば、Ea値による試料Aの押出加工性はOKと判定され(ステップS12)、他方、Eaの演算値が成形可能な設定範囲外のものであれば、Ea値による試料Aの押出加工性はNGと判定される(ステップS13)。この場合、先に表1,2のデータに基づいて述べたように、特定の熱可塑性エラストマーのEa値とその熱可塑性エラストマーを素材とする押出成形品の機械的物性、すなわち硬度や引張強度および最高伸びとの間には密接な相関があり、同時予測が可能であることから、ステップS11〜S13では試料Aの押出加工性の評価と同時に機械的物性の適否判定が同時に行われることになる。 一方、上記複素弾性率G*の変化率G*rの値を判定するフローチャートは、例えば図4のとおりである。このフローチャートは、上記と同様に図1,2に示す粘弾性試験装置のCPUのプログラムとして実行されるものである。 図4において、まず準備段階として試料Aを試験機(図1の粘弾性測定機1)にセットし(ステップS1)、試料A及び試験機を予熱した後(ステップS2)、試験を開始する(ステップS3)。 試験開始後、フローチャートの右側に記載された試験機制御(ステップS4,S5)と、左側に記載されたデータ記憶(ステップS6,S7)とが並行して行われる。 ステップS4においては、図1の粘弾性測定機1が、試料Aに対して任意の温度、振動周波数、振動振幅におけるせん断力を入力し、反作用の出力トルクを検出する。これは所定のデータ採取が終了するまで行われる(ステップS5)。またステップS6においては試験データをA/D変換して記憶装置に記憶する。これは所定のデータ採取が終了するまで行われる(ステップS7)。 データ採取が終了すると、ステップS8において、記憶したデータを読出し、出力トルクから複素弾性率G*を算出する。そして、次のステップS9において、先に述べた式(2)に基づいて複素弾性率G*の変化率G*rを演算する。 一方、ステップS10にて各材料の押出成形品(成形対象となる部品)の成形条件(断面形状)毎に予め記憶されている成形可能なG*r値の設定範囲を呼び出し、ステップS11において、試料AについてのG*rの演算値と、試料Aを素材とする特定の押出成形品例えば押出成形品(部品)TについてのG*r値の設定範囲とを照合し、押出加工性の評価判定を行う。 その結果、G*rの演算値が、予め記憶されているG*r値の設定範囲内のものであれば、G*r値による試料A、押出成形品(部品)Tの押出加工性はOKと判定され(ステップS12)、他方、予め記憶されているG*r値の設定範囲外のものであればG*r値による試料A、押出成形品(部品)Tの押出加工性はNGと判定される(ステップS13)。この場合、先に表1,2のデータに基づいて述べたように、特定の熱可塑性エラストマーのG*r値とその熱可塑性エラストマーを素材とする押出成形品の機械的物性、すなわち硬度や引張強度および最高伸びとの間には密接な相関があり、同時予測が可能であることから、ステップS11〜S13では試料A、押出成形品Tの押出加工性の評価と同時に機械的物性の適否判定が同時に行われることになる。 図5には本発明を適用した生産管理フローチャートを示す。 先ず、ステップS1において、設定された混練り条件にて材料の混練りを行い、混練り後の材料(ここでは試料Aとする)を得る(ステップS2)。そして、例えば図1の粘弾性測定機1によって図3,4と同様の粘弾性測定を行い、Ea値およびG*r値の演算に必要なデータを採取する(ステップS3)。次いで、ステップS4において先の式(1)に基づき見かけの活性化エネルギーEaを演算する。 ステップS5では、ステップS4で求めたEaの演算値と予め記憶しておいた試料AのEa値の設定範囲とを照合して、試料Aに関する押出加工性の適否判定を行う。その結果、Eaの演算値が、予め設定されているEa値の設定範囲内のものであれば試料Aの押出加工性はOKであると判定し(ステップS6)、次のステップS7において複素弾性率G*の変化率G*rの演算に移行する。 次に、G*rの演算値と、予め記憶しておいた試料Aを素材とする特定の押出成形品(ここでは部品Bとする)のG*r値の設定範囲とを照合して、試料Aを素材とする部品Bについての押出加工性の適否判定を行う(ステップS8)。すなわち、G*rの演算値が予め設定されているG*r値の設定範囲内のものであれば試料Aを素材とする部品Bについての押出加工性はOKであると判定する(ステップS9)。 そして、続くステップS10において、EaおよびG*rの演算値をもとに先に述べた式(3)に基づいて動径率Mを算出する。さらに、ステップS20にて予め記憶しておいた試料A、部品BのM値−スクリュー回転数の相関データを参照して、試料Aを素材とする部品Bを押出成形するのに最適な押出機のスクリュー回転数(押出吐出量)を演算する(ステップS11)。そして、演算されたスクリュー回転数を押出機に入力し(ステップS12)、押出成形を開始する(ステップS13)。なお、上記のM値−スクリュー回転数の相関データとは図8に示したものである。 先のステップS8において、試料Aを素材とする部品BのG*rの演算値が予め設定されているG*r値の設定範囲外のものであると判定された場合は、実質的に試料Aを素材とする部品Bの押出加工性は不適と判定されたことにほかならないことから、ステップS14において、その試料Aを素材とする他の押出成形品(部品)のG*r値の設定範囲との照合を行う。その結果、試料Aに関するG*rの演算値がその試料Aを素材とする他の部品のG*r値の設定範囲内のものであれば、試料Aを他の部品の押出しに起用するべくその判定結果を記録する(ステップS15)。 なお、ステップS5において、試料AのEaの演算値が設定範囲外のものであると判定された場合や、ステップS14においてG*rの演算値が設定範囲外のものであると判定された場合は、試料Aそのものの性状が不適と判定され、混練り条件の変更の指示が出されることになる。 このように、正確な押出加工性の評価が可能となる見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rおよび動径率Mの値を利用して、熱可塑性エラストマーを素材とする押出成形品を押出成形する際の生産管理を行うことができる。 また、ステップS20のように、動径率Mとスクリュー回転数の相関データを予め作成しておくことにより、スクリュー回転数をその都度演算する手間が省け、実際の押出成形を開始するまでに要する段取り時間が大幅に短縮される。 なお、図1の粘弾性測定機1は、例えば室温〜230℃における複素粘性率及び複素弾性率のデータが採取できるものである。粘弾性試験によって見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rを算出するためのブロック図。図1の要部構成を示すブロック図。見かけの活性化エネルギーEaにより押出加工性の評価を行う際の処理の一例を示すフローチャート。複素弾性率G*の変化率G*rにより押出加工性の評価を行う際の処理の一例を示すフローチャート。見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rおよび動径率Mにより押出加工性の評価を行って生産を管理する際の処理の一例を示すフローチャート。見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rとの相関によって定義される動径率Mの説明図。押出加工性評価の一つとして押出断面形状評価のための断面形状を示す説明図。動径率Mとスクリュー回転数との相関を示すグラフ。符号の説明 1…粘弾性測定機 2…A/D変換器 3…情報処理装置 4…Ea演算装置 5,7,9,11…記憶装置 6,12,13,14,15…演算装置 8…G*r演算装置 10…吐出量制御装置 16…押出条件制御装置 20…押出機 所定の温度範囲で振動周波数および振動振幅を変化させて、所定の混練り条件で製造された熱可塑性エラストマーにかかるせん断力をコントロールして、そのせん断力に反作用する応力に基づいて、熱可塑性エラストマーの複素粘性率η*(η)と、せん断速度の異なる二つのせん断領域の熱可塑性エラストマーの複素弾性率G*を求める測定工程と、 上記測定時における温度および気体定数をそれぞれTおよびR、粘度をη、複素粘性率をη*(η)、見かけの活性化エネルギーをEaとして、粘弾性材料の温度依存性を表すアレニウス型の式(アンドレード(Andrade)の式)(1)に基づいて熱可塑性エラストマーの見かけの活性化エネルギーEaを算出する工程と、 η=Aexp(Ea/RT)‥‥(1) 但し、 Ea:Activation Energyの略でコンパウンド粘度(流動)の見かけの活性化エネルギー(×10-1KJ/mol) 先に求めた二つの複素弾性率G*の比に基づいて、粘弾性特性のせん断速度依存性を表す複素弾性率G*の変化率G*r(G*rateの略)を算出する工程と、 見かけの活性化エネルギーEaの許容幅と複素弾性率G*の変化率G*rの許容幅との相関を予め定めてある相関データ上において、先に求めた見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rの値をもって実測点位置を指定した場合に、その相関データ上での許容幅の中間点と実測点位置との相対位置関係を動径率Mとして算出する工程と、 を含み、 先に算出した見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rおよび動径率Mのそれぞれの値に基づいて熱可塑性エラストマーの押出加工条件を設定することを特徴とする熱可塑性エラストマーの加工条件設定方法。 熱可塑性エラストマーの押出加工条件の設定に先立って、 先に算出した見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rの値と、予め設定されている活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rのそれぞれの許容範囲とを個別に比較して、熱可塑性エラストマーを素材とする押出成形品の押出加工性の評価を行う判定工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマーの加工条件設定方法。 同一配合で且つ混練り条件の異なる複数の熱可塑性エラストマーを用いて特定の押出加工条件下で押出成形を行った場合のそれぞれについて、押出成形工程で成形可能な見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rのそれぞれの許容範囲が予め設定されていることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性エラストマーの加工条件設定方法。 上記判定工程での押出加工性の評価結果が良好であることを条件に、見かけの活性化エネルギーEaの許容幅と複素弾性率G*の変化率G*rの許容幅との相関を予め定めてある相関データ上において、先に算出した見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rの値をもって実測点位置を指定した場合に、その相関データ上での許容幅の中間点と実測点位置との相対位置関係を動径率Mとして算出する工程と、 この動径率Mに基づいて、特定の押出成形品を押出成形するのに適した熱可塑性エラストマーの押出吐出量を算出する吐出量算出工程と、 上記判定手段により押出加工性が良好であると判定された押出成形品について、先に吐出量算出工程にて算出された押出吐出量に基づいて当該押出成形品の押出加工条件を設定する工程と、 を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の熱可塑性エラストマーの加工条件設定方法。 押出加工条件を設定する工程では、予め設定されている動径率Mと押出機のスクリュー回転数との相関データと、先に算出した動径率Mとを照合して、その算出した動径率Mに見合ったスクリュー回転数を算出することを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性エラストマーの加工条件設定方法。 所定の温度範囲で振動周波数および振動振幅を変化させて、所定の混練り条件で製造された熱可塑性エラストマーにかかるせん断力をコントロールして、そのせん断力に反作用する応力に基づいて、熱可塑性エラストマーの複素粘性率η*(η)と、せん断速度の異なる二つのせん断領域の熱可塑性エラストマーの複素弾性率G*を求める測定手段と、 上記測定時における温度および気体定数をそれぞれTおよびR、粘度をη、複素粘性率をη*(η)、見かけの活性化エネルギーをEaとして、粘弾性材料の温度依存性を表す式(1)に基づいて熱可塑性エラストマーの見かけの活性化エネルギーEaを算出する第1の演算手段と、 先に求めた二つの複素弾性率G*の比に基づいて、粘弾性特性のせん断速度依存性を表す複素弾性率G*の変化率G*rを算出する第2の演算手段と、 見かけの活性化エネルギーEaの許容幅と複素弾性率G*の変化率G*rの許容幅との相関を予め定めてある相関データ上において、先に算出した見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rの値をもって実測点位置を指定した場合に、その相関データ上での許容幅の中間点と実測点位置との相対位置関係を動径率Mとして算出する第3の演算手段と、 同一配合で且つ混練り条件の異なる複数の熱可塑性エラストマーを用いて特定の押出加工条件下で押出成形を行った場合のそれぞれについて、押出成形工程で成形可能な見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rのそれぞれの許容範囲が予め設定されている記憶手段と、 上記第1,2の演算手段で算出された見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rの値と、上記記憶手段に記憶された活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rのそれぞれの許容範囲とを個別に比較して、熱可塑性エラストマーを素材とする押出成形品の押出加工性の評価を行う判定手段と、 上記第3の演算手段で算出された動径率Mに基づいて、特定の押出成形品を押出成形するのに適した熱可塑性エラストマーの押出吐出量を算出する吐出量算出手段と、 上記判定手段により押出加工性が良好であると判定された押出成形品について、吐出量演算手段で算出された押出吐出量に基づいて当該押出成形品の押出加工条件を設定する条件設定手段と、 を備えたことを特徴とする熱可塑性エラストマーの押出吐出量制御装置。 上記吐出量算出手段は、予め設定されている動径率Mと押出機のスクリュー回転数との相関データと、先に算出した動径率Mとを照合して、その算出した動径率Mに見合ったスクリュー回転数を算出する一方、 上記条件設定手段は、押出機による押出成形開始に先立って先に算出したスクリュー回転数を押出機に付与するものであることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性エラストマーの押出吐出量制御装置。 所定の温度範囲で振動周波数および振動振幅を変化させて、所定の混練り条件で製造された熱可塑性エラストマーにかかるせん断力をコントロールして、そのせん断力に反作用する応力に基づいて、熱可塑性エラストマーの複素粘性率η*(η)と、せん断速度の異なる二つのせん断領域の熱可塑性エラストマーの複素弾性率G*を求める測定工程と、 上記測定時における温度および気体定数をそれぞれTおよびR、粘度をη、複素粘性率をη*(η)、見かけの活性化エネルギーをEaとして、粘弾性材料の温度依存性を表す式(1)に基づいて熱可塑性エラストマーの見かけの活性化エネルギーEaを算出する工程と、 先に求めた二つの複素弾性率G*の比に基づいて、粘弾性特性のせん断速度依存性を表す複素弾性率G*の変化率G*rを算出する工程と、 先に算出した見かけの活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rの値と、予め設定されている活性化エネルギーEaおよび複素弾性率G*の変化率G*rのそれぞれの許容範囲とを個別に比較して、熱可塑性エラストマーを素材とする押出成形品の押出加工性の評価を行う判定工程と、 上記判定工程での押出加工性の評価結果が良好であることを条件に、見かけの活性化エネルギーEaの許容幅と複素弾性率G*の変化率G*rの許容幅との相関を予め定めてある相関データ上において、先に求めた見かけの活性化エネルギーEaと複素弾性率G*の変化率G*rの値をもって実測点位置を指定した場合に、その相関データ上での許容幅の中間点と実測点位置との相対位置関係を動径率Mとして算出する工程と、 この動径率Mに基づいて、特定の押出成形品を押出成形するのに適した熱可塑性エラストマーの押出吐出量を算出する吐出量算出工程と、 を含み、 上記吐出量算出工程で算出された押出吐出量となるように押出機を制御するとともに、上記判定工程で成形加工不可能と判定された場合に熱可塑性エラストマーの混練り条件を変更することを特徴とする熱可塑性エラストマーの加工管理方法。 上記吐出量算出工程では、予め設定されている動径率Mと押出機のスクリュー回転数との相関データと、先に算出した動径率Mとを照合して、その算出した動径率Mに見合ったスクリュー回転数を算出することを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性エラストマーの加工管理方法。


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