タイトル: | 再公表特許(A1)_網膜症のモデル動物 |
出願番号: | 2004002974 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A01K 67/027,G01N 33/15,G01N 33/50 |
松尾 嘉之 岩崎 孝則 JP WO2004080166 20040923 JP2004002974 20040308 網膜症のモデル動物 塩野義製薬株式会社 000001926 山内 秀晃 100108970 杉田 健一 100113789 松尾 嘉之 岩崎 孝則 JP 2003062682 20030310 JP 2003075106 20030319 A01K 67/027 20060101AFI20060512BHJP G01N 33/15 20060101ALI20060512BHJP G01N 33/50 20060101ALI20060512BHJP JPA01K67/027G01N33/15 ZG01N33/50 Z AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20060608 2005503514 14 2G045 2G045AA29 本発明は、網膜血管を傷害することにより作成される網膜症のモデル動物、その作成方法および使用方法に関する。より詳しくは、糖尿病モデル動物に光化学反応による網膜血管傷害を惹起させることにより作製した糖尿病網膜症のモデル動物、その作成方法および使用方法に関する。さらに詳しくは、II型糖尿病モデル動物に光増感物質による網膜血管傷害を惹起させることにより作製したII型糖尿病糖尿病網膜症のモデル動物、その作成方法および使用方法に関する。 網膜症は、その病因、発病様式により様々なものがあり、例えば、網膜神経が障害される疾患として、緑内障、糖尿病網膜症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、黄斑変性症および未熟児網膜症などがある。緑内障は、眼圧の上昇と、眼圧以外の因子「(1)視神経の循環障害、(2)網膜神経節細胞死など」により一時的あるいは永久的な視野障害を本態とする疾患である。緑内障の初期治療として、眼圧を低下させることを基本に、薬物療法、レーザー手術が施行されているが、眼圧低下を目的とした薬物療法のみでの効果には限界がある(イノウエ(Inoue,Y.)ら,“新しい眼科”,1997年,第14巻,729−739頁,表7参照)。 一方、糖尿病網膜症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、黄斑変性症および未熟児網膜症などは、網膜の虚血による関与が考えられており、例えば、N−メチル−D−アスパラギン酸拮抗作用を有する化合物について、網膜虚血による網膜神経細胞死を抑制する試みがなされている(WO97/38691参照)。 糖尿病では腎臓、神経の他、眼組織にもさまざまな合併症が発症し、視力障害と直接関係するという観点から考えると、眼合併症の中で最も重要なものは糖尿病網膜症である(アカギ(Akagi,Y.)ら,“医学と薬学”,1998年、第39巻,663−670頁,表1参照)。糖尿病罹病歴が長期化するに伴って発頻度が増加し、特に血糖コントロール不良群ではしばしば増殖性糖尿病網膜症が発症する。糖尿病病態下で網膜が低酸素状態にさらされると網膜血管の統合性が失調し、網膜浮腫、出血、血管新生などの症状を招くことで増殖性の病態が発症、進展し、最終的に増殖膜の形成、牽引性の網膜剥離によって失明に至ると考えられている。糖尿病網膜症に対して血糖降下剤などを投与するといった、全身疾患に対する原因療法が適用されているが、そのような治療だけで網膜症の病変が軽減することは困難である。現時点での糖尿病網膜症の治療はレーザー光凝固や硝子体手術などの対処療法としての外科的な処置が主体であり、有効な治療薬は未だ存在しない。 糖尿病網膜症治療薬もしくは治療法の開発が困難な原因として、薬物評価系もしくは病態解明に有用な糖尿病網膜症病態モデルの作成が難しいことが挙げられる。現在、実験によく用いられているモデルは、膵島をストレプトゾシン(ドラクルッツ(De La Cruz,J.P.)ら,“トロンボーシス リサーチ(Thrombosis Research)”,2000年,第97巻,125−131頁,表1参照)やアロキサン(エンガーマン(Engerman,R.L.)ら,“アーカイブ オブ オフタルモロジー(Arch.Ophthalmol.)”,1965年,第73巻,205−210頁,図5参照)等の薬剤によって破壊することにより作成される糖尿病動物、高ガラクトース血症動物(タカハシ(Takahashi,Y.)ら,“アーカイブ オブ オフタルモロジー(Arch.Ophthalmol.)”,1994年,第110巻,1295−1302頁,図2参照)、先天性糖尿病動物(ゴトウ(Goto,Y.)ら,“プロシーデイング オブ ジャパニーズ アカデミー(Proc.Jap.Acad.)”,1975年,第51巻,80−85頁,表1参照)等である。糖尿病網膜症初期病変に類似した血流および血管の変化を模擬することは比較的短期間で可能であるが(ゴトウ(Goto,Y.)ら,“プロシーデイング オブ ジャパニーズ アカデミー(Proc.Jap.Acad.)”,1975年,第51巻,80−85頁,表1参照)、血管の閉塞、血流異常、網膜浮腫、網膜出血や血管新生が観察できる病態モデルの作成には数年単位の時間が必要である(ヒラタ(Hirata,Y.)ら,“アセロスクレローシス(Atherosclerosis)”,1994年,第107巻,117−124頁,図1参照)。またその症状の再現性に問題があったため、病態の解明および治療薬の開発研究に使用するには困難であった。一方、先天性糖尿病動物としては、GKラット(ゴトウ(Goto,Y.)ら,“プロシーデイング オブ ジャパニーズ アカデミー(Proc.Jap.Acad.)”,1975年,第51巻,80−85頁,表1参照)等が知られているが、網膜症発現はこれまでに報告されていない。 尚、光化学反応の応用例として、血管内に注入した光増感物質に一定の波長の光を照射して生じる1重項酸素で血管を傷害することで内膜肥厚(ヒラタ(Hirata,Y.)ら,“アセロスクレローシス(Atherosclerosis)”,1994年,第107巻,117−124頁,図1参照)や脳卒中の病態モデルなどが作成できることが報告されている(ウメムラ(Umemura,K.)ら,“ジャパン ジャーナル オブ ファルマコロジー(Jpn.J.Pharmacol.)”,1995年,第67巻,253−258頁,表1参照)。しかしながら、光化学反応を応用して作成した網膜症のモデル動物については報告されていない。 網膜症の疾患に対して効果的な薬物療法はほとんどなく、予防剤および/または治療剤の開発が望まれていた。予防剤あるいは治療剤のスクリーニングには網膜症のモデル動物が必要不可欠である。また、網膜症の病態解明および治療法の開発研究のために、ヒトの網膜症を再現性良く模擬するモデル動物を短期間で作成する方法が求められていた。 そこで、本発明者は、上記のような問題点に応え、ヒトの網膜症を再現性良く模擬するモデル動物を短期間で作成することを目的として鋭意研究を行った。その結果、糖尿病モデル動物において、光化学反応を用いて網膜血管を傷害したところ、意外にもヒトの糖尿病網膜症を模擬する網膜浮腫、網膜出血、血流異常の症状を呈するモデル動物の作成が短期間で行えることを見出し、本発明を完成したものである。 すなわち、本発明は、(1)光化学反応によって誘発された網膜血管傷害を有する網膜症のモデル動物;(2)光化学反応が光増感物質を用いるものである(1)に記載の網膜症のモデル動物;(3)光増感物質がローズベンガルである、(2)に記載の網膜症のモデル動物;(4)糖尿病モデル動物において光化学反応によって誘発された網膜血管傷害を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の糖尿病網膜症のモデル動物;(5)糖尿病モデル動物がII型糖尿病モデル動物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の糖尿病網膜症のモデル動物;(6)II型糖尿病モデル動物がGKラットである、(1)〜(5)のいずれかに記載の糖尿病網膜症のモデル動物;(7)網膜の形態学的異常を伴う、(1)〜(6)のいずれかに記載の網膜症のモデル動物;(8)網膜血管閉塞、網膜血管異常、網膜浮腫、網膜出血および網膜血管新生の少なくとも一つの症状を呈する、(1)〜(7)のいずれかに記載の網膜症のモデル動物;(9)網膜症のモデル動物の作成方法であり、 1)動物の血管に光増感物質を注入し、 2)一定の波長の光を網膜に照射し、 3)網膜症の症状を呈する個体を選択する、工程を含む(1)から(8)のいずれかに記載の網膜症のモデル動物の作成方法;(10)網膜症を改善するための化合物のスクリーニング方法であり、 1)(1)から(8)のいずれかに記載の網膜症のモデル動物に化合物を投与し、 2)網膜症の症状を検出し、 3)化合物非投与群と比較する工程を含む、網膜症を改善するための化合物のスクリーニング方法;(11)網膜症を改善または治療方法であり、 1)(1)から(8)のいずれかに記載の網膜症のモデル動物に治療を施し、 2)網膜症の症状を検出し、 3)非治療群と比較する工程を含む、網膜症を改善または治療方法;(12)網膜症を改善するための化合物をスクリーニングするための(1)から(8)のいずれかに記載の網膜症モデル動物の使用、を提供する。 第1図は、光化学反応処置後に眼底像を経時的に観察した結果を示す図である。 第2図は、光化学反応処置後の網膜血管透過性の測定結果を示す図である。 第3図は、光化学反応処置3日後の網膜出血の指標となる眼内ヘモグロビンの測定結果を示す図である。 本発明の網膜症のモデル動物の種類は特に限定されないが、好ましくは糖尿病網膜症のモデル動物、より好ましくはII型糖尿病網膜症のモデル動物、特に好ましくは網膜症を併発したGKラットである。 「網膜症」とは、網膜において細動脈の狭細化、血管閉塞、血管蛇行等の血管異常の増加、銅・銀線様外観、鞘形成等の症状を呈する疾患であり、例えば、網膜神経が障害される疾患として、眼圧の上昇に起因する緑内障と網膜虚血に起因する糖尿病網膜症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、黄斑変性症、網膜周辺部血管閉塞症、脈絡膜血管閉塞症および未熟児網膜症等に類別される。虚血性網膜症は、全身疾患に起因する網膜血管の障害と網膜局所の疾患とに大別され、前者の具体例としては糖尿病網膜症が、また、後者の具体例としては、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、黄斑変性症、網膜周辺部血管閉塞症、脈絡膜血管閉塞症および未熟児網膜症等を挙げることができる。 「網膜症のモデル動物」とは、網膜の形態学的異常を伴うモデル動物であり、詳しくは前記「網膜症」の症状のうち少なくとも一つの症状を呈する動物である。 「糖尿病網膜症」とは、糖尿病による高血糖を主体とした代謝異常が長期間持続するか、あるいは反復して生じるために網膜血管に異常をきたす疾患である。この疾患では、長期糖尿病により、脆弱な新生血管からの血液漏出が最初に起こり、黄斑浮腫を生じ、増殖性、瘢痕性また、時に網膜剥離を生じる。毛細血管瘤、網膜血管閉塞、網膜出血、網膜浮腫、硬性白斑または軟性白斑、細動脈の狭細化または静脈の怒張等の網膜血管異常の臨床所見が認められ、進行すると硝子体中に新生血管を含んだ増殖組織が出現し、最終的には失明に至る。 「糖尿病網膜症のモデル動物」とは、前記「糖尿病網膜症」の症状のうち少なくとも一つの症状を呈する動物である。好ましくは、視神経乳頭部周囲の細小血管閉塞、主幹動脈の狭細化、網膜部位の浮腫、網膜出血、網膜血管の蛇行、ソーセージ状の血管閉塞、網膜血管透過性の増大、眼内ヘモグロビン量の上昇等の症状を呈する動物である。 「糖尿病モデル動物」とは、「I型糖尿病モデル動物」および「II型糖尿病モデル動物」を意味している。 「I型糖尿病モデル動物」とは、ストレプトゾシン誘発糖尿病動物、アロキサン誘発糖尿病動物、BB ラット、LETL ラット、BBZ/Wor ラット、WBN/Kob KK マウス、KKAy マウス、NOD マウスラットすい臓β細胞にウイルスなどの抗原、サイトカインを高発現したトランスジェニクマウスである。 「II型糖尿病モデル動物」とは、GKラット、Zucker diabetic fatty ラット,OLETF(Otsuka Long−Evans Tokushima Fatty)ラット,Wistar fatty ラット,SHR/N−cp(SHR/NIH−corpulent)ラット,ob/ob マウス,db/db マウス,C57BL/Ksj マウス,NSY(Nagoya−Shibata−Yasuda)マウス,IRS−1 ノックアウトマウス,GLUT4 トランスジェニクマウス,PEPCK トランスジェニクマウスであり、好ましくは、GKラット、Zucker diabetic fattyラットSHR/N−cpラットであり、さらに好ましくはGKラットである。該GKラットは日本エスエルシー、日本クレア、日本チャールズリバー、塩野義製薬油日ラボラトリーズで継代飼育されており、日本エスエルシー、日本クレア、日本チャールズリバーより購入可能であり、塩野義製薬油日ラボラトリーズより入手可能である。 「光化学反応」とは、光増感物質に一定の波長の光を照射し、1重項酸素生じさせる反応である。 「光増感物質」とは、一定の波長の光の照射により1重項酸素生じさせる物質であり、例えばローズベンガル、メチレンブルー、エオジンY、が示され、好ましくはローズベンガルを用いる。 光増感物質の「投与方法」としては、静脈内投与が挙げられ、好ましくは尾、頚または大腿の静脈内投与、さらに好ましくは尾の静脈内投与による。投与量は、1から100ミリグラム/キログラム、好ましくは5から50ミリグラム/キログラム、さらに好ましくは10から20ミリグラム/キログラムである。投与時間は、1秒から10分、好ましくは2秒から5分、さらに好ましくは5から10秒である。 「短期間で作成する」とは、従来のモデル動物が施術してから発症するまでの期間である24週より短い期間に本モデル動物を作成することであり、好ましくは、2週以内に作成すること、さらに好ましくは、1週以内に作成することである。 「再現性良く模擬する」とは、従来のモデル動物に施術して模擬する個体の割合、例えば80%より高い割合で模擬することであり、好ましくは90%以上の個体で模擬することであり、さらに好ましくは99%以上の個体で模擬することである。 「一定の波長の光」とは、波長が 210ナノメーターから700ナノメーターの紫外・可視光であり、好ましくは、400ナノメーターから700ナノメーターであり、さらに好ましくは、548ナノメーターの緑色光であり、L4887(ハママツ ホトニクス 株式会社)等の機器を用いて照射が可能である。照射強度は、1,000から100,000ルクス、好ましくは3,000から50,000ルクス、さらに好ましくは10,000から50,000ルクスである。照射時間は、10秒から10分、好ましくは30秒から5分、さらに好ましくは3分から5分である。 本発明の「網膜症のモデル動物の作成方法」とは、ラットまたはマウス等の動物に好ましくは光増感物質を例えば、1から100ミリグラム/キログラム静脈注射し、210ナノメーターから700ナノメーターの紫外・可視光を、1,000から100,000ルクスの強度で、10秒から10分間照射し、光化学反応を利用して好ましくは24週以内で網膜症のモデル動物を作出する方法である。好ましくは、II型糖尿病モデル動物にローズベンガル、メチレンブルー、エオジンYを5から50mg/kgの用量で尾、頚または大腿のいずれかから静脈注射し、400ナノメーターから700ナノメーターの光を、3,000から50,000ルクスの強度で、30秒から5分間照射し、2週以内で網膜症のモデル動物を作出する方法である。より好ましくは、GKラットにローズベンガルを10から20ミリグラム/キログラムの用量で尾から静脈注射し、548ナノメーターの光を、10,000から50,000ルクスの強度で、3から5分間照射し、1週以内で網膜症のモデル動物を作出する方法である。 「網膜症を改善するための化合物」とは、網膜の一部にできた血流異常、網膜出血や血管新生を阻害または抑制、血管の閉塞や網膜出血等を縮小または消滅させる化合物であって、例えば、血糖を降下させるトログリタゾン等の血糖降下剤(ノーラン(Nolan JJ)ら,“ニュー イングランド ジャーナル オブ メディスン(N.Engl.J.Med.)”,1994年,第331巻,1188−93頁)や血管新生を抑制するカプトプリルなどの血管新生抑制剤(タデッセ(Tadesse M)ら,“インベスティゲイション オブ オフタルモロジカル ビジュアル サイエンス(Invest Ophthalmol Vis Sci)”,2001年,42巻,1867−72頁)がある。 「スクリーニング方法」とは、光増感物質を投与して光化学反応により作成した網膜症モデル動物に、網膜症を改善するための候補化合物を投与し、実験前後での網膜の一部にできた血流異常、網膜出血や血管新生を阻害または抑制、血管の閉塞や網膜出血を縮小または消滅する割合等を比較することにより該候補化合物の網膜症を改善する効果を調べて化合物をスクリーニングする方法である。好ましくは、糖尿病網膜症モデル動物に、網膜症を改善するための候補化合物を3〜7日間投与し、実験期間中の網膜症発生率、網膜症誘発期間、血流異常、網膜出血や血管新生、血管の閉塞や網膜出血を調べ、候補化合物を投与しなかった群と比較することにより、網膜症の治療薬および予防薬をスクリーニングする方法である。また本発明は、本モデル動物を使用して網膜症の治療効果等を考察し、それを反映させて人を含む哺乳動物の網膜症を改善または治療する方法等も提供する。 本発明を以下の実施例でより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。 糖尿病ラットにおける網膜症モデルの作成 II型糖尿病モデル動物であるGKラットに網膜症を発症させるために光増感物質であるローズベンガルを投与して網膜症のモデル動物を作製した。II型糖尿病モデル動物であるGKラットをハロタン麻酔し、ミドリンP(参天製薬)を点眼し瞳孔を散大させた後、対照系として左眼は緑色光(L4887,Hamamatsu Photonics K.K.)の照射のみを行った。右眼は、視神経乳頭部を中心に緑色光(548ナノメーター強度=10,000ルクス、時間=5分間)の照射開始と同時に光増感物質であるローズベンガル(投与量=20ミリグラム/キログラム、投与時間=5秒)を静脈内へ注入して生じる光化学反応で網膜血管の傷害を惹起した。作成時間は約1週間であった。 光化学反応処置後の眼底像 血管傷害惹起後に生じる眼底の経時的変化を観察するため、血管傷害惹起直後、1、3および5日後に眼底像およびフルオレセイン蛍光眼底像を眼底カメラ(proIII,kowa)で撮影した。光化学反応による処置を行った直後は主要な網膜動静脈の血流は保たれており、見かけ上は特に変化が無かった。処置1日後の眼底像では、視神経乳頭部周囲の細小血管閉塞および主幹動脈の狭細化と網膜部位の浮腫が観察された。処置3日後、5日後には網膜出血、網膜血管の蛇行、ソーセージ状の血管閉塞など、ヒトの糖尿病網膜症に類似した病態が観察できた。一方、光照射のみを施行した左眼の眼底は観察期間中全く変化は認められなかった(図1)。 光化学反応処置後の網膜血管透過性 また、網膜血管送過性変化を測定するため、血管傷害惹起3時間後、1、3、7日後に125i標識ウシ血清アルブミン(125i−BSA)をトレーサーとして1時間の血液循環時間内に網膜および硝子体中に漏出した125i−BSA量をγカウンター(cobra III,pACKARD)で計測した。処置3時間後には既に網膜血管透過性が亢進していた。この透過性の亢進は1日後に最大に達し、3および7日後には1日後に比して低下したが対照の左眼に比して血管透過性の亢進が持続した(図2)。 光化学反応処置後の眼内ヘモグロビン さらに、血管傷害惹起3日後に認められた眼底出血を定量化するため、網膜および硝子体中のヘモグロビン量を市販のヘモグロビン測定キット(SIGMA)で測定した。光化学反応処置を行った眼球では対照眼に比較して眼内ヘモグロビン量が顕著に上昇しており、網膜出血が眼内ヘモグロビン量として定量化が可能な指標であることが確認できた(図3)。 以上から明らかなように、本発明の網膜症のモデル動物、好ましくは糖尿病網膜症ラットは、その眼底変化が、糖尿病網膜症、特にII型糖尿病網膜症の臨床所見に類似しており、かつその作成期間が極めて短いことから、網膜症の病態の解明および治療法、治療薬の探索、開発研究に有用である。 光化学反応によって誘発された網膜血管傷害を有する網膜症のモデル動物。 光化学反応が光増感物質を用いるものである、請求の範囲第1項に記載の網膜症のモデル動物。 光増感物質がローズベンガルである、請求の範囲第2項に記載の網膜症のモデル動物。 糖尿病モデル動物において光化学反応によって誘発された網膜血管傷害を有する、請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の糖尿病網膜症のモデル動物。 糖尿病モデル動物がII型糖尿病動物モデルである、請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の糖尿病網膜症のモデル動物。 II型糖尿病モデル動物がGKラットである、請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の糖尿病網膜症のモデル動物。 網膜の形態学的異常を伴う、請求の範囲第1項〜第6項のいずれかに記載の網膜症のモデル動物。 網膜血管閉塞、網膜血管異常、網膜浮腫、網膜出血および網膜血管新生の少なくとも一つの症状を呈する、請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載の網膜症のモデル動物。 網膜症のモデル動物の作製方法であり、(1)動物の血管に光増感物質を注入し、(2)一定の波長の光を網膜に照射し、(3)網膜症の症状を呈する個体を選択する、工程を含む請求の範囲第1項〜第8項のいずれかに記載の網膜症のモデル動物の作製方法。 網膜症を改善するための化合物のスクリーニング方法であり、(1)請求の範囲第1項から第8項のいずれかに記載の網膜症モデル動物に化合物を投与し、(2)網膜症の症状を検出し、(3)化合物非投与群と比較する工程を含む網膜症を改善するための化合物のスクリーニング方法。 動物に光増感物質を投与することにより網膜症を併発した網膜症のモデル動物を作製する。具体的には、GKラットにローズベンガルを投与することで網膜症を併発させることにより、網膜症モデルラットを作製した。このように作製されたモデル動物を用いて網膜症治療薬のスクリーニングを行うことができる。 20040830 A16333 全文 3 【書類名】特許請求の範囲【請求項1】光化学反応によって誘発された網膜血管傷害を有する網膜症のモデル動物。【請求項2】光化学反応が光増感物質を用いるものである、請求の範囲第1項に記載の網膜症のモデル動物。【請求項3】光増感物質がローズベンガルである、請求の範囲第2項に記載の網膜症のモデル動物。【請求項4】糖尿病モデル動物において光化学反応によって誘発された網膜血管傷害を有する、請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の糖尿病網膜症のモデル動物。【請求項5】糖尿病モデル動物がII型糖尿病動物モデルである、請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の糖尿病網膜症のモデル動物。【請求項6】II型糖尿病モデル動物がGKラットである、請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の糖尿病網膜症のモデル動物。【請求項7】網膜の形態学的異常を伴う、請求の範囲第1項〜第6項のいずれかに記載の網膜症のモデル動物。【請求項8】網膜血管閉塞、網膜血管異常、網膜浮腫、網膜出血および網膜血管新生の少なくとも一つの症状を呈する、請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載の網膜症のモデル動物。【請求項9】網膜症のモデル動物の作製方法であり、(1)動物の血管に光増感物質を注入し、(2)一定の波長の光を網膜に照射し、(3)網膜症の症状を呈する個体を選択する、工程を含む請求の範囲第1項〜第8項のいずれかに記載の網膜症のモデル動物の作製方法。【請求項10】網膜症を改善するための化合物のスクリーニング方法であり、(1)請求の範囲第1項から第8項のいずれかに記載の網膜症モデル動物に化合物を投与し、(2)網膜症の症状を検出し、(3)化合物非投与群と比較する工程を含む網膜症を改善するための化合物のスクリーニング方法。【請求項11】主幹血管閉塞を起こしていない、請求の範囲第4項〜第6項のいずれかに記載の糖尿病網膜症のモデル動物。【請求項12】糖尿病網膜症のモデル動物の作成方法であり、(1)動物の血管に光増感物質としてローズベンガル10〜20mg/kgを注入し、(2)一定の波長の光を網膜に照射し、(3)糖尿病網膜症の症状を呈する個体を選択する、工程を含む請求の範囲第11項に記載の糖尿病網膜症のモデル動物の作製方法。