生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_ミトコンドリア病予防と対策
出願番号:2004002787
年次:2007
IPC分類:A61K 31/198,A61K 31/375,A61K 31/7105,A61K 31/7052,A61P 43/00,A61P 25/06,A61P 1/08,A61P 25/08


特許情報キャッシュ

森重 福美 JP WO2005084660 20050915 JP2004002787 20040305 ミトコンドリア病予防と対策 森重 文江 598023861 萼 経夫 100068618 中村 壽夫 100093193 宮崎 嘉夫 100104145 加藤 勉 100104385 森重 福美 A61K 31/198 20060101AFI20070713BHJP A61K 31/375 20060101ALI20070713BHJP A61K 31/7105 20060101ALI20070713BHJP A61K 31/7052 20060101ALI20070713BHJP A61P 43/00 20060101ALI20070713BHJP A61P 25/06 20060101ALI20070713BHJP A61P 1/08 20060101ALI20070713BHJP A61P 25/08 20060101ALI20070713BHJP JPA61K31/198A61K31/375A61K31/7105A61K31/7052A61P43/00 105A61P25/06A61P1/08A61P25/08A61P43/00 121 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20070809 2006515303 15 4C086 4C206 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA18 4C086EA16 4C086MA02 4C086MA03 4C086MA04 4C086MA10 4C086NA05 4C086NA06 4C086ZA02 4C086ZA06 4C086ZA29 4C086ZA71 4C086ZB21 4C206AA01 4C206AA02 4C206HA32 4C206MA02 4C206MA03 4C206MA04 4C206MA13 4C206MA28 4C206NA14 4C206ZA02 4C206ZA06 4C206ZA29 4C206ZA71 4C206ZB21 本発明は、細胞中のミトコンドリアの機能異常に起因して様々な症状を表す疾病であって、所謂“ミトコンドリア病”として総括される疾病の予防および対策に有効な薬剤を提供する。技術分野 ミトコンドリアは細胞中に存在し、エネルギー生産に深く関与する小器官である。そしてエネルギー生産系酵素の遺伝異常によりミトコンドリアの機能が低下し、中枢神経、骨格筋、心臓、眼、肝臓、腎臓、大腸、小腸、内耳、膵臓等の器官、また血液、皮膚、内分泌腺等に様々な病型が生じる疾病が総括して“ミトコンドリア病”と呼ばれている。特にエネルギーの消費量が多い脳および筋肉にミトコンドリアの機能異常は大きく影響を及ぼすので、“ミトコンドリア脳筋症”と呼ぶこともある。 ミトコンドリア病は、生化学的異常により、臨床症状により、またDNA異常の様式により様々に分類されるが、特にKSS(慢性進行性外眼麻痺症候群)、MERRF(福原病)、MELAS、Leber病、Leigh脳症およびPearson病と命名されているものが広く知られている。なかんずく、脳卒中様症状を主体とする病型であるMELASは全体の30%以上を占め、ミトコンドリア病で最も多い病型とされている。 MELASは、小児期に発作性の頭痛(偏頭痛)、嘔吐、半身痙攣で発症するミトコンドリア病の一病型であり、1984年にコロンビア大学において初めて臨床的に報告された。MELASの患者では、その80%にミトコンドリアDNAのtRNALeu(UUR)遺伝子のA3243G変異が報告されている。症状としては、20歳以前の脳卒中様症状を特徴とし、発作は連続で起こることもあり、発作時に見られる症状は一過性の場合もあるが、適切な治療が無ければ症状は遷延し、また一回の発作で死に至る場合もある。 ミトコンドリア病の診断は、形状、機能およびDNAの観点からミトコンドリアに異常があるか否かを調査することにより行うことができる。 ミトコンドリアの形状についての調査は、骨格筋を薄切片にし、染色後に光学顕微鏡による観察で行う。正常なミトコンドリアを持つ細胞では染色されたミトコンドリアは目立たないが、ミトコンドリア病患者の場合、筋細胞の内部に染色されたミトコンドリアが斑点状に観察されたり、また筋細胞の周辺部に染色されたミトコンドリアが集積していることが観察される。このような異常な筋細胞(筋線維)は、赤色ぼろ線維(ragged−red−fiber:RRF)と呼ばれ、ミトコンドリア病であるか否かの指標となる。 またミトコンドリアの機能の観察は、例えばミトコンドリアの電子伝達系酵素である複合体IV:シトクロームC酸化酵素(COX)の活性を調査することにより行われる。筋組織の凍結切片についてCOX活性を調査すると、ミトコンドリア病の患者ではCOX活性のない筋細胞が散在することがあり、この所謂COX部分欠損はミトコンドリア異常を示す重要な指標である。 さらにミトコンドリアのDNA自体の異常を調査することによっても、ミトコンドリア病であるか否かを判定することができる。ミトコンドリアDNAの研究は近年大幅な進歩を遂げており、これらの成果が臨床的にも応用されつつある。 ところで、ミトコンドリア病の従来採用されている治療方法は、対症療法および原因療法の二つに大別することができる。 対症療法は、ミトコンドリア病により生じる症状を、ミトコンドリア病以外の疾病、例えば糖尿病や癲癇等により生じる同様の症状の治療に有効であることが周知である薬剤により治療を試みることからなる療法である。この療法では、有効であることが既に確認されている薬剤を用いることから治療効果を十分期待することができるが、ミトコンドリアの機能異常が改善されないので根本的な解消には至らない。 また原因療法は、ミトコンドリアを賦活化する薬剤を投与することにより、ミトコンドリアの機能異常自体を改善することを目的とする療法である。このような薬剤はミトコンドリアで行われれるエネルギー代謝を活性化する観点から選択され、例えばジクロロ酢酸(DCA)、ノイキノン、ビタミンB1等が使用されている。 ジクロロ酢酸は、ピルビン酸脱水素酵素(PDHC)の活性を高め、ミトコンドリア内のエネルギー代謝を高める作用を有する。特に血中の乳酸値が上昇してアシドーシス(酸血症)となっている場合に顕著な改善効果がある。またDCAを使用するとPDHCの活性の上昇と共にビタミンB1が消費されるので、DCAとビタミンB1の同時投与が必要となる。このようなDCAの投与によりミトコンドリア病の発作が抑制された、全身状態が改善したとの報告があるが、過剰投与での意識障害および肝機能障害も報告されており、血中濃度を常に観察しながらジクロロ酢酸の投与する必要がある。 ノイキノンは鬱血性心不全の治療において知られている薬剤であって、大量使用によりミトコンドリア病に有効との報告がある。しかしながら一方で、大量投与によってもノイキノンはミトコンドリア病に無効であるとの報告もある。 ビタミンB1は、ミトコンドリア病の一病型であるLeigh脳症において、その一部の患者に顕著な効果を示すことが報告されている。Leigh脳症の患者ではビタミンB1依存性ビルビン酸脱水素酵素複合体欠損が観察される場合があるが、この場合にビタミンB1の投与は顕著な効果を示す。またビタミンB1欠乏症でない場合であっても、ビタミンB1はミトコンドリア代謝において補酵素に重要な働きをしているため、明確な効果が確認されなくともミトコンドリア病の患者に投与される場合が多い。 このように、ミトコンドリア病の原因療法には、全ての病型のミトコンドリア病に有効であり、かつ重大な副作用を示さない薬剤は知られていなかった。従って本発明は、ミトコンドリアを賦活化することによって全ての病型のミトコンドリア病の予防および治療に有効な薬剤を提供することを目的とする。 本発明者等は鋭意研究を行った結果、アルギニンとビタミンCとを一緒に配合することにより、ミトコンドリアを賦活化できると同時にアルギニンの投与による悪影響を抑制することができ、ミトコンドリア病の原因療法に有効な薬剤となり得ることを見出した。またアルギニンおよびビタミンCに加えて、さらにリボ核酸を配合することにより、ミトコンドリア病に対する効果を増強し得ることをも見出した。 従って、本発明は、L−アルギニンと、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを含んでなることを特徴とするミトコンドリア病治療剤、およびL−アルギニンと、リボ核酸、リボヌクレオチドおよびリボヌクレオシドからなる群より選択される少なくとも一種と、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを含んでなることを特徴とするミトコンドリア病治療剤に関する。 本発明のミトコンドリア病治療剤は、第一の態様において、L−アルギニンと、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを含んでなる。 L−アルギニンは、化学式:C6H14N4O2、分子量:374.20、融点(分解点):244℃を有する塩基性アミノ酸の一種であり、プロタミンヒストンのような塩基性タンパク質中に多く存在する。 近年、このL−アルギニンが血圧調節や感染防止など広範な生体機能に関与するNOラジカルの発生源であることが報告された。またL−アルギニンは、アンモニアの尿素サイクルによる解毒の促進、内分泌ホルモンの分泌促進に関与し、またクレアチンリン酸、ポリアミンおよびプロリンの合成素材、体内情報伝達物質としてのNOラジカルの発生源ともなり、多彩な生理機能に関与していることが明らかになりつつある。 加えて、ミトコンドリア病の一病型であるMELASの患者では、L−アルギニンの有効濃度が特にその脳卒中急性期において顕著に低下することが明らかのとなった。L−アルギニン濃度の低下に伴い、MELAS患者ではNO産生の総量を表すNOラジカルもまた有意に低下し、MELAS患者の動脈は非常に拡張し難い状態にあると言える。従って、ミトコンドリア病患者にL−アルギニンを投与してNOラジカルを増加せしめることは、ミトコンドリア病の治療において効果を有すると予期される。 しかし同時に、L−アルギニンは極めてえぐい味(あくが強く辛い味で、喉をいらいらと刺激する味)が有るので摂取が極めて困難なことも知られていた。さらにL−アルギニン摂取後には、胃のえぐい感(胸焼け、悪心、嘔気または嘔吐)がするので、その摂取は極めて不快であった。特にL−アルギニンの無機酸、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等はえぐい味が強く、摂取後に残るえぐい感もまた強いものであった。 また、L−アルギニンを長期にわたり摂取し体内でのNO発生量が増大すると、このNOが胃中で亜硝酸に変化した後、胃中の食物に含まれる第二アミンと反応して変異原性(発癌性)を有するニトロソアミン化合物を生成する。さらに障害を受けた細胞中ではスーパーオキシドラジカルアニオンのような活性酸素種が頻繁に生成し、このスーパーオキシドラジカルアニオンがNOラジカルと反応し、毒性の高い過酸化亜硝酸イオン(O=NOO−)を生成しする。 しかしながら本発明者等は、これらのL−アルギニンの摂取に伴う問題点が、L−アルギニンをL−アスコルビン酸と同時に摂取することにより解消し得ること、またさらにL−アスコルビン酸がミトコンドリア病の治療を促進し得ることを見出して、本発明を完成させた。 L−アスコルビン酸(ビタミンC)は生体内の酸化還元反応に関与している水溶性のビタミンであって、ヒト、サル等の動物は、その中間体の反応に関わる酵素を有しないためビタミンである。そして、血中のL−アスコルビン酸濃度が減少して低アスコルビン酸血症、誘導性アスコルビン酸過小症等と呼ばれる状態になると、免疫系の障害、血液凝固系の障害、副腎機能の低下によるストレス対応の失調、コラーゲン生成の障害、神経系の機能不全、免疫機能の低下や発ガン物質の解毒能の低下に起因するガンの発生等が引き起こされる。 このL−アスコルビン酸をL−アルギニンに混合すると、L−アスコルビン酸の酸味により、L−アルギニンのえぐい味およびアルギニン摂取後の胃のえぐい感(胸焼け、悪心、嘔気または嘔吐)を軽くすることができる。 また、L−アスコルビン酸は常に自動酸化してラジカルを放出しているが、L−アルギニンの投与により発生した過剰のNOラジカルは、L−アスコルビン酸由来のラジカルにより消去(スカベンジ)することができる。これにより、L−アルギニンの摂取した過剰のNOラジカルが有害なニトロソアミン化合物や過酸化亜硝酸イオン等に変化することを抑制できる。 L−アルギニンとL−アスコルビン酸との混合比率は、L−アルギニンのえぐい味を無くすことを目的とする場合、L−アルギニン1重量部に対し、少なくよもL−アスコルビン酸0.2重量部を混合する必要がある。混合するL−アスコルビン酸の重量部が0.2より少ないと、L−アルギニンのえぐい味が増加する。またL−アスコルビン酸の重量部が0.25より増加すると、混合したL−アスコルビン酸の重量部の増加と共に混合物の酸味が増加する。L−アルギニン摂取後のえぐい感を軽くすることを目的についても同様の傾向が有り、L−アルギニン1重量部に対して少なくともL−アスコルビン酸0.2重量部を混合することにより、えぐい感を軽くすることができる。 一方、本発明のミトコンドリア病治療剤において、L−アスコルビン酸の混合量がL−アルギニン1重量部に対して0.25重量部を超えた場合に混合物が呈する酸味はアスコルビン酸に由来するものであって、アスコルビン酸の粉末が常用の栄養補助食品として販売されていることが示すように、一般の摂食者にとっては絶え難いものではない。また、錠剤にすることによりこの酸味はかなり減退されるものである。従って、本発明では、L−アルギニンのえぐい味およびえぐい感を無くすために最小限必要なL−アスコルビン酸の量を越えてL−アスコルビン酸の混合量が増加することは特に問題は無く、例えばL−アルギニン1重量部に対してL−アスコルビン酸20重量部を混合することも可能である。 加えて、混合するL−アスコルビン酸の一部について、L−アスコルビン酸以外のビタミンC、または体内でL−アスコルビン酸と同様の作用を奏する誘導体および類似体に置き換えることも可能である。 また、本発明のミトコンドリア病治療剤は、第二の態様において、L−アルギニンと、リボ核酸、リボヌクレオチドおよびリボヌクレオシドからなる群より選択される少なくとも一種と、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを含んでなる。 リボ核酸は栄養補助食品として知られており、脳脊髄性疾患の症状の改善に使用されている。該脳脊髄性疾患には、特に脳脊髄退行性疾患があり、その例として老人性ボケを含む痴呆症、癲癇症、痙攣発作、脳変性疾患、脳神経疾患、脳基底核疾患、小脳の変性疾患、脊髄変性疾患および筋疾患等が挙げられる。従って、L−アルギニンおよびL−アスコルビン酸に加えてリボ核酸をミトコンドリア病の患者に投与することは、ミトコンドリア病が特に脳を含む中枢神経系で引き起こす障害を解消するに役立つ。 リボ核酸の投与量が大量になる場合、アスコルビン酸を併用すると、併用しない場合よりも、血液中の尿酸値が低下する傾向が認められる。これにより、RNA等の投与によって尿酸値が上昇する傾向のある体質の患者の場合、血中尿酸値の上昇により招くであろう痛風の症状を回避することが可能である。これは、アスコルビン酸が、最終生成物として尿酸を生成させるプリン排泄系において、ヒポキサンチンからキサンチンへの代謝に関与する酵素の活性を低下させて、それにより尿酸の生成量を減少させるためである。従って、アルギニンのえぐい味を無くすために添加されるアスコルビン酸は、RNA等の摂取により増加する場合の血液中の尿酸値を低下させて痛風の発症を回避させることにも効果がある。 なお、L−アルギニン、L−アスコルビン酸、並びにそれらの混合比率については上記した通りである。 本発明で使用されるL−アルギニン、L−アスコルビン酸、リボ核酸の形態は、混合するのに適している固形物、例えば粉末または微粉末、結晶または微結晶、または微粉末または微結晶に容易に粉砕できる塊が適している。また、L−アスコルビン酸としては、接着剤、例えばコーンスターチを少量、例えば3%添加して流動層造粒法により製造した細粒状粉末(例えば、BASF武田ビタミン株式会社製「ビタミン顆粒−97」)を使用し得る。 上記混合物に、ポリオール、例えばキシリトールまたはソルビトールの粉末を添加すると、褐変の進行をさらに抑制することができる。 上記混合は通常、各成分の粉末または微粉末、または結晶または微結晶を、均一な混合物が得られるように十分に粉砕することにより行われる。混合は通常粉砕を伴う。 上記混合は、L−アスコルビン酸が湿気を含む雰囲気中で酸化するのを可能な限り回避するために、40%以下の低湿度雰囲気中で行われる。また混合容器の内面は、混合成分と不活性でありかつ硬質な材質、例えば陶質のようなセラミックであることが好ましい。混合容器の例として、セラミック製、例えば陶製で、内面が滑面または粗面の耐久性の高い乳鉢、臼または筒(円筒または多角筒)を挙げることができる。L−アスコルビン酸は鉄と反応し易いので、鉄製のカッター刃で切り砕くミル方式の混合機の使用は好ましくない。 上記混合は通常、常温、好ましくは10〜15℃で、各成分が均一となるように十分に行われる。混合時間は各成分が均一に混合されるのに十分な時間であればよい。混合後の混合物の粒度は、例えば50メッシュ、好ましくは100メッシュ、さらに好ましくは200メッシュの篩を通過するものである。 また、L−アスコルビン酸をコーティングで被覆し、その後にL−アルギニンと混合することもできる。この場合では、L−アスコルビン酸がコーティングにより被覆されているため、L−アルギニンと直接接触せず、メイラード反応が起こらない。該コーティングにより被覆されたL−アスコルビン酸としては、油脂で完全にコーティングしたものを用いることができる。 上記リボ核酸としては例えば、ビール酵母エキス由来のものを挙げることができる。 本発明のミトコンドリア病治療剤は、点滴や注射に適した液体とすることもできる。この液状のミトコンドリア病治療剤は、ミトコンドリア病の急性期において患者が意識を喪失している場合、患者が高齢である場合等において、ミトコンドリア病治療剤の経口投与が困難であるときに有効である。ここで、液体製剤とする際に問題となるのは、アミノ酸が糖類と反応するメイラード反応である。該メイラード反応が生じると各成分の効果を阻害するだけでなく味覚の点でも劣化し、非常に好ましくない。しかしながら本発明者は、システインを含まないならば、L−アルギニンとL−アスコルビン酸とを水溶液の状態で混合しても数ヶ月間、メイラード反応を生じないことを見出した。また、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコールを添加することにより、さらにメイラード反応が発生するまでの期間を延長し得ることを見出した。 従って本発明は、L−アルギニンと、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを医薬的に許容可能な溶液に溶解してなり、かつシステインを含まないことを特徴とするミトコンドリア病治療剤にも関する。 本発明のミトコンドリア病治療剤は、ミトコンドリア自体の活性を増加せしめるものであるので、ミトコンドリア病の病型によらず、以下のような様々な病型のミトコンドリア病の治療に用いることができる:慢性進行性外眼麻痺症候群(KSS)、MERRF(福原病)、MELAS、Leber病、Leigh脳症、ミトコンドリア異常を伴う糖尿病、Pearson病。 また、ミトコンドリア病の症候学的分類には以下のものがある:1. 神経系:ストローク、小脳失調、精神発達遅滞、片頭痛、皮質盲、痙攣(癲癇)、ミオクローヌス、末梢神経障害、痴呆2. 骨格筋:外眼筋麻痺、筋力低下、眼瞼下垂、易疲労性3. 内分泌:糖尿病、低身長、二次性徴の遅れ、副甲状腺機能低下症4. 心血管系:肥厚性心筋症、拡張型心筋症、心伝導ブロック5. 腎尿細管障害:腎尿細管性アシドーシス、de Toni−Fanconi症候群6. 血液:鉄芽球性貧血(Pearson症候群)7. 肝胆道系:高トランスアミナーゼ、肝不全、膵外分泌機能不全8. 消化器:腸閉塞、慢性下痢、反復性嘔吐9. 視覚器:網膜色素変性、視神経萎縮10.聴覚器:感音性難聴11.精神科的:統合失調症、行動異常、自閉症 また生化学的異常による分類には以下のものがある:カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠損症、カルチニン欠乏症、ピルベートカルボキシラーゼ欠損症、ピルベートデヒドロゲナーゼ欠損症、フマラーゼ欠損症、α−ケトグルタレートデヒドロゲナーゼ欠損症、Luft病、複合体1欠損症、複合体2欠損症、複合体3欠損症、複合体4欠損症、複合体5欠損症、複数の複合体欠損症。 さらに臨床症状による分類には以下のものがある:慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)(Kearns−Sayre症候群を含む)、ミオクローヌスを伴うミトコンドリア病、卒中様症状を伴うミトコンドリア病、Leber病、Leigh脳症、Pearson病、NARP。 DNA異常による分類:核DNA異常、mtDNA異常、(欠損・重複)−(点変異)−(欠乏状態)。 本発明のミトコンドリア病治療剤の投与量は、例えばテステープを用いて尿中のNOx量を観察することにより適宜選択し得る。即ち、ある投与量においてミトコンドリア病の症状に改善が見られない場合には、該NOx量に変化が無い範囲で投与量を増加させ、一方、該NOx量が増大した場合には投与量を減少させれば良い。ミトコンドリア病治療剤の投与量は、L−アルギニン換算で30gとなる場合もある。なおNOxの血中濃度は、アルギニンが脳神経系や筋肉に素早くプールされるので投与量の指標とはならない。 本発明は以下の例により、さらに詳細に説明されるが、本発明はそれらの態様に限定されると理解すべきではない。製造例1 L−アルギニンの粉末5gとL−アスコルビン酸の粉末1gを陶磁製の乳鉢に入れ、均一となるように十分に挽き混合した。得られた粉末は42号篩(350μ)を通過するものであり、該粉末として本発明のミトコンドリア病治療剤6gを得た。製造例2 L−アルギニン1gとアスコルビン酸粉末0.2gに加え、ビール酵母粗RNA(RNAの含有量70%)粉末1gを陶磁製の乳鉢に入れ、均一となるように十分に挽き混合した。得られた粉末は42号篩(350μ)を通過するものであり、該粉末として本発明のミトコンドリア病治療剤2.2gを得た。 こうして得られた二種のミトコンドリア病治療剤について、味験者によるえぐい味と酸味の強度を味験を行った。 その結果、上記ミトコンドリア病治療剤については、L−アルギニン/L−アスコルビン酸の重量比が1/5であるため、L−アルギニンの摂取によるえぐい味およびえぐい感は消失していた。また、何れの試料も長期間にわたり褐変しなかった。製造例3 扶桑製薬工業株式会社製のシステインを含まないL−アスコルビン酸注射液に、該注射液中に含まれるL−アスコルビン酸1重量部に対して、L−アルギニン5重量部を添加し、混合溶解して、溶液形態の本発明のミトコンドリア病治療剤を得た。臨床例1 ミトコンドリア病の急性期に脳卒中様症状を呈するMELAS患者に、本発明のミトコンドリア病治療剤を投与した。投与量はL−アルギニン換算で0.5g/kg/時とした。 ミトコンドリア病治療剤の投与により、急性期の脳卒中様症状の殆どが解消された。また投与に由来するえぐい味およびえぐい感等の発生は無く、患者が嘔吐することは無かった。臨床例2 ミトコンドリア病患者に、本発明のミトコンドリア病治療剤を投与した。投与量はL−アルギニン換算で0.5g/kg/時とした。 L−アルギニンのみを投与した場合、本患者はL−アルギニンのえぐい味により嘔吐を繰り返し、その効果が十分に発揮されていなかった。しかし本発明のミトコンドリア病治療剤の投与では嘔吐せず、ミトコンドリア病の症状に改善が認められた。臨床例3 本発明の溶液形態のミトコンドリア病治療剤を、急性期にあるMELAS患者に点滴により投与した。点滴時には、周期的に患者の尿中のNOx濃度をテステープにより測定し、該NOx濃度が増加しないように投与量を増減させた。 本発明のミトコンドリア病治療剤の投与により、MELAS患者特有の脳卒中様症状は速やかに消失した。 本発明によれば、現在まで有効な治療剤が無かったミトコンドリア病を有効に治療可能な薬剤が提供される。 本発明のミトコンドリア病治療剤では、NOラジカルの発生源となるL−アルギニンを投与することにより、ミトコンドリア病の急性期において発生する脳卒中様の症状において、血中のL−アルギニン濃度を上昇させて脳の動脈の急性虚血性障害を改善することができる。 さらに本発明のミトコンドリア病治療剤は、L−アルギニンに加えL−アスコルビン酸を含むので、L−アルギニンの摂取に伴うえぐい味およびえぐい感を無くすと共に、過剰のNOラジカルによる有害物質の生成を抑制することができ、さらにはL−アスコルビン酸自身が持つ効果により、さらにミトコンドリア病の治療が促進される。 また本発明のミトコンドリア病治療剤が、リボ核酸を含有する場合には、アルギニン併用によりリボ核酸の神経栄養素としての利用が促進される。 L−アルギニンと、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを含んでなることを特徴とするミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜6重量部のL−アスコルビン酸を含んでなることを特徴とする、請求項1記載のミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜0.25重量部のL−アスコルビン酸とを含んでなることを特徴とする、請求項2記載のミトコンドリア病治療剤。 L−アルギニンと、リボ核酸、リボヌクレオチドおよびリボヌクレオシドからなる群より選択される少なくとも一種と、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを含んでなることを特徴とするミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜6重量部のL−アスコルビン酸を含んでなることを特徴とする、請求項4記載のミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜0.25重量部のL−アスコルビン酸とを含んでなることを特徴とする、請求項5記載のミトコンドリア病治療剤。 L−アルギニンと、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを医薬的に許容可能な溶液に溶解してなり、かつシステインを含まないことを特徴とするミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜6重量部のL−アスコルビン酸を含んでなることを特徴とする、請求項7記載のミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜0.25重量部のL−アスコルビン酸とを含んでなることを特徴とする、請求項8記載のミトコンドリア病治療剤。 本発明は、L−アルギニンと、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸と、所望によりリボ核酸、リボヌクレオチドおよびリボヌクレオシドからなる群より選択される少なくとも一種とを含んでなり、細胞中のミトコンドリアの機能異常に起因して様々な症状を表す疾病であるところのミトコンドリア病を治療し得る薬剤に関する。本発明のミトコンドリア病治療剤に含まれるL−アルギニンは、NOラジカル濃度を増加させて動脈を拡張させる。またL−アルギニンの摂取に伴うえぐい味およびえぐい感はL−アスコルビン酸により軽減され、また過剰のNOラジカルもまたL−アスコルビン酸により消去される。20061120A16333全文3 L−アルギニンと、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを含み、該L−アスコルビン酸は油脂でコーティングされている製剤であって、少なくとも0.5g(L−アルギニン)/kg(体重)/時(時間)以上の投与量での長期間投与に使用されるミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜6重量部のL−アスコルビン酸を含んでなる請求項1に記載のミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜0.25重量部のL−アスコルビン酸を含んでなる請求項2に記載のミトコンドリア病治療剤。 L−アルギニンと、リボ核酸、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される少なくとも一種と、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを含み、該L−アスコルビン酸は油脂でコーティングされている製剤であって、少なくとも0.5g(L−アルギニン)/kg(体重)/時(時間)以上の投与量での長期間投与に使用されるミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜6重量部のL−アスコルビン酸を含んでなる請求項4に記載のミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜0.25重量部のL−アスコルビン酸を含んでなる請求項5に記載のミトコンドリア病治療剤。 L−アルギニンと、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜20重量部のL−アスコルビン酸とを医薬的に許容可能な溶液に溶解してなる製剤であって、少なくとも0.5g(L−アルギニン)/kg(体重)/時(時間)以上の投与量での点滴による長期間投与に使用され、かつシスチン及びシステインを含まないミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜6重量部のL−アスコルビン酸を含んでなる請求項7に記載のミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜0.25重量部のL−アスコルビン酸を含んでなる請求項8に記載のミトコンドリア病治療剤。20070112A16333全文3 L−アルギニンと、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜6重量部のL−アスコルビン酸とを含み、該L−アスコルビン酸は油脂でコーティングされている製剤であって、少なくとも0.5g(L−アルギニン)/kg(体重)/時(時間)以上の投与量での長期間投与に使用されるミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜0.25重量部のL−アスコルビン酸を含んでなる請求項1に記載のミトコンドリア病治療剤。 L−アルギニンと、リボ核酸、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される少なくとも一種と、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜6重量部のL−アスコルビン酸とを含み、該L−アスコルビン酸は油脂でコーティングされている製剤であって、少なくとも0.5g(L−アルギニン)/kg(体重)/時(時間)以上の投与量での長期間投与に使用されるミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜0.25重量部のL−アスコルビン酸を含んでなる請求項3に記載のミトコンドリア病治療剤。 L−アルギニンと、該L−アルギニン1重量部に対して0.2〜6重量部のL−アスコルビン酸とを医薬的に許容可能な溶液に溶解してなる製剤であって、少なくとも0.5g(L−アルギニン)/kg(体重)/時(時間)以上の投与量での点滴による長期間投与に使用され、かつシスチン及びシステインを含まないミトコンドリア病治療剤。 前記L−アルギニン1重量部に対して0.2〜0.25重量部のL−アスコルビン酸を含んでなる請求項5に記載のミトコンドリア病治療剤。


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