タイトル: | 特許公報(B2)_ミコール酸の迅速で高感度な定量法 |
出願番号: | 2003578584 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12Q 1/18,C12R 1/15,C12R 1/32,C12R 1/365 |
スマン・プリート・シン・カヌジャ スチ・スリヴァスタヴァ ティルッパディリプリユル・ランガナタン・サンタ・クマール アジット・クマール・シャサニ マヘンドラ・パンドゥラング・ダロカル ソウミャ・アワスティ JP 4081446 特許公報(B2) 20080215 2003578584 20020325 ミコール酸の迅速で高感度な定量法 カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ 596020691 COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH 田中 光雄 100081422 田村 恭生 100068526 北原 康廣 100103115 スマン・プリート・シン・カヌジャ スチ・スリヴァスタヴァ ティルッパディリプリユル・ランガナタン・サンタ・クマール アジット・クマール・シャサニ マヘンドラ・パンドゥラング・ダロカル ソウミャ・アワスティ 20080423 C12Q 1/18 20060101AFI20080403BHJP C12R 1/15 20060101ALN20080403BHJP C12R 1/32 20060101ALN20080403BHJP C12R 1/365 20060101ALN20080403BHJP JPC12Q1/18C12Q1/18C12R1:15C12R1:32C12R1:365 C12Q 1/18 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/CAplus(STN) JMEDPlus/JST7580/JSTPlus(JDream2) J. Chromatogr., vol. 104, pp. 460-464 (1975) J. Clin. Microbiol., vol. 35, pp. 1287-1289 (1997) 12 IB2002001127 20020325 WO2003080860 20031002 2005520555 20050714 12 20050224 石丸 聡 本発明は、抗菌剤として有用なミコール酸生合成インヒビターを選別するために種々の被験化合物の存在下において490〜500nmの最大吸光度でミコール酸−フクシン染料錯体中のミコール酸を迅速で、高感度で、簡単に、しかも高い費用効率で検出して定量する分光光度法、並びに塩基性フクシン染料(0.1〜1.0g/100ml)、フェノール、95%エタノールおよび蒸留水を含有する該方法のための診断用キット(但し、フェノールと95%エタノールの量比は1:4〜2:1(v/v)であり、また、フェノールと蒸留水の量比は1:14〜1:25である)に関する。 結核菌によってもたらされる結核症は、この20年間においてその重大性が増大している公衆衛生の問題であり、該問題の一部は後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連してもたらされる症例数の増加と多剤耐性菌の出現に起因している。しばしば結核菌とは区別できない他のマイコバクテリアも増加している。 現行の検出法は、(1)たん、脳脊髄液、気管支洗液、角膜潰瘍および骨髄の臨床的単離物および(2)抗酸性染色スミア(smear)陽性臨床的試料から得られるミコール酸の像(pattern)を測定する方法である。標準化されたミコール酸抽出法を使用することによってミコール酸誘導体の抽出率を最大にして該方法の感度を高めている。異なるクロマトグラフィーカラムを使用してミコール酸の化学種を同定している。ミコール酸を保有するバクテリアの即座の検出は抗酸性染色法および顕微鏡によっておこなわれている。脂質に富む細胞壁は通常の染料によっては透過されない。 塩基性染料(フクシン)およびフェノール(脂質溶剤)がこのような目的のために使用されている。フェノールは細胞壁を部分的に溶解させることによって、フクシンの細胞壁の透過およびミコール酸との結合を可能にする。フクシンが取り込まれた後では、酸アルコールにさらしても脱色に対する耐性が発現され、マイコバクテリアを特徴づける特性を未処理の臨床的試料、濃縮試料または培養物(culture)について発揮させることができる。 この原理は、ミコール酸を産生するバクテリアを顕微鏡を用いて同定するために広く利用されている。しかしながら、ミコール酸の視覚的検出に基づく改良されたシステムの場合には、膨大な植物由来の化合物から潜在的なミコール酸生合成抑制性化合物を選別するためには多大な時間が必要となる。 分光光度計を用いることによって、検出と定量をより正確におこなうことができる。抑制度は、特定の波長における光学密度を測定することによって簡単に定量することができる。この方法の場合には、現在使用されているIR、NMRおよびGCスペクトロスコピー等を用いる複雑で高コストの技法は不要である。 顕微鏡検出を伴う抗酸性染色法によっては定量することができないミコール酸の量は、分光光度計による分析を伴う系統的な抽出と染料結合によって定量することができる。ミコール酸を検出して定量するために簡単で、迅速で費用効率の高い処置キットであって、ミコール酸生合成に対する潜在的なインヒビターを同定するための効率の高い選別をもたらすキットが考案されていることに留意すべきである。 ミコール酸の抽出単離法およびミコール酸産出バクテリアの抗酸性染色による検出法は当該分野においては知られている。しかしながら、このような方法を実施するためのシステムは全体としては効率が悪く、また、ミコール酸産生バクテリアの存在を検知するためには顕微鏡が必要である。 同様に、ミコール酸の抽出、単離および特性評価はクロマトグラフィーおよびIRとNMRスペクトロスコピーによる別の方法によっておこなわれている。本願発明者がここで強調したいことは、潜在的なミコール酸生合成抑制活性を有する多量の植物由来の抽出物と化合物を迅速かつ低コストで選別するシステムを提供することであった。 本発明の主要な目的は、ミコール酸を同定するための迅速で、簡単で、高感度で、費用効率の高い方法を開発することである。 本発明の別の主要な目的は、ミコール酸を定量するための迅速で、簡単で、高感度で、費用効率の高い方法を開発することである。 本発明の別の目的は、ミコール酸を同定して定量するための迅速で、簡単で、高感度で、費用効率の高い分光光度法を開発することである。 本発明のさらに別の目的は、ミコール酸を同定して定量するための迅速で、簡単で、高感度で、費用効率の高い分光光度法を開発するために、石炭酸−フクシン染料とミコール酸との錯体を使用することである。 本発明の他の目的は、ミコール酸抑制特性を有する被験化合物が選別する方法を開発することである。 本発明のさらにまた別の目的は、分光光度法によってミコール酸を検出するための診断用キットを開発することである。 本発明は、抗菌剤として有用なミコール酸生合成インヒビターを選別するために種々の被験化合物の存在下において490〜500nmの最大吸光度でミコール酸−フクシン染料錯体中のミコール酸を迅速で、高感度で、簡単に、しかも高い費用効率で検出して定量する分光光度法、並びに塩基性フクシン染料(0.1〜1.0g/100ml)、フェノール、95%エタノールおよび蒸留水を含有する該方法のための診断用キット(但し、フェノールと95%エタノールの量比は1:4〜2:1(v/v)であり、また、フェノールと蒸留水の量比は1:14〜1:25である)に関する。 本発明の1つの態様においては、抗菌剤として有用なミコール酸生合成インヒビターを選別するための迅速で、簡単で、高感度で、費用効率の高い方法であって、被験化合物または抽出物の存在下および不存在下においてバクテリアによって生産させるミコール酸を定量する該方法が提供される。 本発明の別の態様においては、該化合物または抽出物の存在下および不存在下において該バクテリアの個々の培養物を40〜60時間増殖させる。 本発明の別の態様においては、バクテリアのペレット(pellet)を凍結乾燥させる。 本発明の別の態様においては、ミコール酸を常套の方法によってミコール酸を抽出する。 本発明の別の態様においては、抽出されたミコール酸抽出物をヘキサンに溶解させることによってミコール酸溶液を調製する。 本発明の別の態様においては、該溶液を石炭酸−フクシン染料に対して1:4〜4:1(v/v)の量比で添加する。 本発明の別の態様においては、請求項1における過程(e)で得られる生成物を激しく振盪させることによって淡紅色のミコール酸−染料錯体を上層として形成させる。 本発明の別の態様においては、ミコール酸を490〜500nmの波長で分光光度法によって定量する。 本発明の別の態様においては、該化合物で処理したバクテリアの培養物中におけるミコール酸生合成の抑制度を測定する。 本発明の別の態様においては、ミコール酸の濃度を好ましくは494〜496nmの波長で分光光度法によって定量する。 本発明の別の態様においては、石炭酸−フクシン染料と該抽出物の量比は好ましくは1:1(v/v)である。 本発明の別の態様においては、石炭酸−フクシンは塩基性フクシン染料(0.1〜1.9g/100ml)、フェノール、95%エタノールおよび蒸留水を含有し、フェノール:エタノールの量比が1:4〜2:1(v/v)であり、また、フェノール:蒸留水の量比が1:25〜1:14(v/v)である。 本発明の別の態様においては、抑制活性を有する該被験化合物または抽出物を1/25〜1/2の最小抑制濃度(MIC)で添加する。 本発明の別の態様においては、マイコバクテリウム属、コリネバクテリウム属およびノカルジア属の微生物に対して該抗菌剤を発現させる。 本発明の別の態様においては、合成、半合成および天然の化合物および抽出物から成る群から選択されるインヒビターを前記方法を使用して選別する。 本発明の別の態様においては、色の彩度(intensity)はミコール酸の濃度の増加に伴って増加する。 本発明の別の態様においては、あらゆる存在源からのミコール酸に対して前記方法は機能する。 本発明の別の態様においては、ミコール酸生産性微生物に対する潜在的な抗菌剤を識別するために有用な診断用キットであって、石炭酸フクシン、メタノール、トルエン、ヘキサン、濃硫酸、バクテリアのペレットおよび被験化合物または抽出物を以下の量比で含有する該キットが提供される(但し、以下の量比のメタノール、トルエンおよび濃硫酸は、最終濃度が0.1〜3.0g/100mlになるようにしてバクテリアの凍結乾燥ペレットに添加する): (1)メタノール:トルエン=1:3〜3:1(v/v)、 (2)メタノール:ヘキサン=8:1〜2:1(v/v)、 (3)濃硫酸:ヘキサン=1:8〜1:2(v/v)および (4)石炭酸フクシン:ヘキサン抽出物=1:4〜4:1(v/v)。 本発明の別の態様においては、石炭酸フクシンは塩基性フクシン染料(0.1〜1.0g/100ml)、フェノール、95%エタノールおよび蒸留水から成り、フェノールとエタノールの量比が1:4〜2:1(v/v)であり、また、フェノールと蒸留水の量比が1:14〜1:25(v/v)である。 本発明の別の態様においては、バクテリアのペレットは、マイコバクテリウム属の微生物、コリネバクテリウム属の微生物およびノカルジア属の微生物から成る群から選択されるバクテリアのペレットである。 本発明の別の態様においては、抑制活性を有する該被験化合物または抽出物は1/25〜1/2の最小抑制濃度(MIC)で添加される。 本発明の別の態様においては、マイコバクテリア属の微生物の特徴である抗酸性染色によってミコール酸を石炭酸フクシン染料に結合させて抗酸性のバチルス属の微生物の淡紅色を発現させる。 本発明の別の態様においては、この原理に基づいて、分光光度アッセイ法が開発された。このアッセイ法においては、ミコール酸のヘキサン抽出物を石炭酸フクシン染料と共にねじぶた付のガラス瓶(vial)内に保存すると、ヘキサンフラクションは無色の上層を形成し、該染料は淡紅色の下層を形成するが、該ガラス瓶を激しく振盪させると、石炭酸フクシン染料はヘキサン層中に存在するミコール酸と結合して淡紅色の上層を形成すると共に透明な下層を形成する。上方のヘキサン層中に存在するミコール酸の量に応じて、下層の淡紅色の彩度は減少するが、上層の彩度は増加する。 本発明の別の態様においては、染料とヘキサン層を激しく混合させる間に該染料はミコール酸と結合して錯体を形成し、ヘキサン層中のミコール酸の濃度に応じた量の染料がヘキサン層中へ移行し、また、ミコール酸を含まないヘキサンは、特徴的な淡紅色の上層をもたらす錯体を形成しない。 本発明の別の態様においては、ミコール酸生合成インヒビターを選別する方法が提供される。特に本発明は、混合物中、溶液中または培養菌中におけるミコール酸の相対量を検出して定量することによって、ミコール酸生合成のインヒビターを識別する方法に関する。この方法は、ミコール酸生合成を抑制する潜在的な薬剤化合物を検出するための選別法として有用である。 また、本発明は、診断用キットとして使用することができるミコール酸の検出キットにも関する。本発明は、ミコール酸の生合成を抑制して抗菌剤となる化合物の迅速な検出法を簡単化することに直接的に関連する。 本発明の別の態様においては、マイコバクテリア属の微生物中のミコール酸が石炭酸フクシンに結合するという周知の事実に関連する。実際上は、この原理を利用することによって、病院や診断研究所においては、臨床的試料にマイコバクテリア属の微生物が存在するかどうかを日常的に調べているが、この場合には、面倒な顕微鏡観察が併用される。さらに、顕微鏡を使用する方法はその他の用途、例えば、マイコバクテリア属の微生物によるミコール酸の生産量の定量が必要な薬剤選別には利用できない。 本発明の別の態様においては、本願明細書に記載の方法が同じ原理を利用するものであるが、該方法によれば、マイコバクテリア属の微生物中におけるミコール酸の生産および/またはその抑制の定量を可能にする。本願発明はこの原理自体に関するものではなく、診断用キットと分光光度法を使用することによってミコール酸を検出するための簡単で、迅速な定量法に関する。 本発明の別の態様においては、所定の試料中のミコール酸の存在およびマイコバクテリア属の微生物の存在を定量するための改良法を容易にする。また、本発明は、ミコール酸インヒビターを識別するための薬剤の選別プログラムに有用なミコール酸合成の改良定量法を容易にする。 潜在的なミコール酸生合成インヒビターを検出するための前述の簡単で、迅速な本発明による新規なシステムを以下の実施例において例示的に説明する。これらの実施例は本発明を例示的に説明するものであって、本発明の範囲を制限するものではない。 実施例1:ミコール酸の抽出 ミコール酸は、コリネバクテリウム属、ノカルジア属およびマイコバクテリアム属の微生物の細胞壁中に存在する分枝状のβ−ヒドロキシ脂肪酸である。これらの分子の大きさは該微生物によって異なり、上記の微生物の記載順により、該脂肪酸の炭素原子数は30、50および80である。上記の微生物の属とミコール酸の大きさとの間に関係があるので、未知の放線菌を識別するための初期の段階において、この生化学的指標についての試験をおこなった。ミコール酸を抽出するために本発明において使用した方法はミンニケンらの方法(1975年)に従うものである。 バクテリアを適当に増殖させた後、培養物を遠心分離処理(5000RPM)に5分間付し、次いで分離物を凍結乾燥させた。乾燥バクテリア(100mg)をメタノール(5ml)、トルエン(5ml)および濃硫酸(0.2ml)と共に20mlのねじぶた付チューブ(ポリテトラフルオロエチレンで内張りしたチューブ)内に入れて混合した。チューブの内容物を十分に混合し、メタノール分解を75℃で12〜16時間おこなった(静置インキュベーション)。反応混合物を冷却させた後、ヘキサン(1ml)を添加してミコール酸を抽出した。激しく混合した後、混合物を静置し、ミコール酸を含有する上方のヘキサン層を捕集した。 ヘキサン抽出物の試料を、メルク社製のシリカゲルH(0.5mm)で被覆したTLC上に標準ミコール酸と共に塗布し、石油エーテルとジエチルエーテルとの混合溶剤(85:15)中で展開させた。分離された化合物の位置を、クロム酸溶液(5gのK2Cr2O7を5mlのH2Oに溶解させた溶液に濃硫酸を加えて全体を100mlにした後、水で10倍に希釈した溶液)を噴霧した後、150〜200℃での炭化処理に付すことによって発現させた。 実施例2 純粋なミコール酸(シグマ・ケミカル社製)のスペクトル走査を200〜1000nmの範囲でおこなった。可視領域においては、顕著なピークは検出されなかった(図1参照)。 実施例3 石炭酸フクシン(塩基性フクシン0.3g、95%エチルアルコール10.0ml、フェノール5.0ml、蒸留水95ml)のスペクトル走査を200〜1000nmの範囲で分析したところ、可視領域において、染料の色を示す明確なピークが538.71nmにおいて記録された(図2参照)。 実施例4 ミコール酸のヘキサン溶液を石炭酸フクシン[1:1(v/v)]に添加したところ、石炭酸フクシンは淡紅色の下層を形成し、ミコール酸のヘキサン溶液は透明な上層を形成した。混合後、上方のヘキサン層は、染料とミコール酸との間で形成された錯体に起因して、淡紅色に着色した。ミコール酸はヘキサンに溶解して濃密な石炭酸フクシン層には移行しないので、染料は上方のヘキサン層へ移行して該上層を淡紅色に着色させた。この簡単な系は、ミコール酸生合成の潜在的インヒビターを選別するために利用した。ヘキサン層中に存在するミコール酸とフクシンとの錯体のUV−可視スペクトルを200〜1000nmの範囲において走査したところ、染料に起因する538.71nmにおけるピークが495.89nmにシフトすることが判明した。このことは、染料がミコール酸との間で錯体を形成したことを示すものである(図3参照)。 実施例5 この実施例においては、ミコール酸がこの種の錯体を形成する唯一の候補化合物であることを確認するために、枯草菌および大腸菌(ミコール酸を生産しない微生物)からのヘキサン抽出物の熱量アッセイを利用して観察をおこなった。ヘキサン層のみを石炭酸フクシンと混合しても変色は観察されなかった。激しく混合した後であっても、上方のヘキサン層は無色であり、下方の染料層は淡紅色であった。ヘキサン層が枯草菌および大腸菌の抽出物を含有する場合も同様の結果が得られた。しかしながら、下方の石炭酸フクシン染料の淡紅色の彩度は、ヘキサン層が恥垢菌の抽出物とブイヨンを含有するときには、激しく混合した後では低減し、一方、上方のヘキサン層は淡紅色に変色した。このことはミコール酸の存在を示すものである。 観察結果を以下の表1に示す。 1.恥垢菌MTCC6(ATCC14468と同じ菌株である):J. Gen. Microbiol. 第28巻、第339頁(1962年)。 2.枯草菌MTCC121(ATCC6051と同じ菌株である):標準菌株(type strain)、ファージ宿主、フェニルケトン尿症に対する血液スクリーニング。 3.大腸菌MTCC739(ATCC10536と同じ菌株である):標準抗生物質試験菌株(J. Bacteriol. 第54巻、第549頁(1947年)。 MTCC:ミクロバイアル・タイプ・カルチャー・コレクション (microbial type culture collection) [インスチテュート・オブ・ミクロバイアル・テクノロジー (チャンディガル、インド)] 実施例6 この系の機能を、異なる濃度のミコール酸を用いることによって詳細に特徴づけた。先のセクションに記載のようにして、異なる濃度(100μg/ml、250μg/ml、500μg/ml、1000μg/ml)のミコール酸を用いて染料との錯体を形成させたところ、吸光度パターンの増加が記録された。このことは色の彩度の増加を示すものである(図4参照)。 実施例7 この方法を利用することによって、対照並びに種々の植物の抽出物および化合物を用いて処理したマイコバクテリウム・スメグマチスの細胞によって生産されたミコール酸を定量した。該化合物の一部はミコール酸生合成を抑制することが知られている化合物であり、その他の被験物は植物の抽出物と未知の化合物である。これらの化合物と抽出物は、恥垢菌における抗菌性染料のルースニング(loosening)に基づいて選択された。 恥垢菌の培養菌は、亜致死濃度(1/2MIC)の化合物/抽出物を含有する栄養ブイヨン中で増殖させた。細胞を遠心分離によって捕集し、ペレットを凍結乾燥させた。対照および処理細胞の両方から等量の細胞(100mg)を秤量し、これらを、実施例1に記載のようにして、メタノール分解処理に一夜付した。抽出されたヘキサン層を乾燥させ、次いで共通ストック(stock)(5mg/ml)を用いてTLCプレートを機能させ、生産されたミコール酸の量を濃度計を用いて計算することによってミコール酸の抑制度を測定した。 抗酸性染色のルースニングを示す化合物についても分光光度アッセイのために試験した。100%の抗酸性染色を示す恥垢菌の菌株を50mlの培地中で48時間増殖させた。前述のようにして、亜致死濃度の異なる化合物で繰り返して処理した試料も48時間増殖させた。対照および異なる処理細胞を遠心分離によってペレット化させ、これらを凍結乾燥させることによって細胞の乾燥ペレットを得た。等量(100mg)の細胞(対照および処理細胞)をメタノール分解処理に一夜付した。インキュベーションを18時間おこなった後、ヘキサンフラクションを抽出して乾燥させた。対照および処理細胞に対する共通ストック(5μg/ml)を、溶剤としてヘキサンを使用することによって調製した。等量(v/v)の石炭酸フクシン染料を添加して適当に混合した。上方のヘキサン層は最初は透明であったが、淡紅色に変化した。一方、処理細胞の場合には、淡紅色の彩度は、対照細胞の場合よりも低かった。詳細な処理および異なる処理による吸光度を以下の表2に示す。 イソニアジドは既知のミコール酸生合成インヒビターであって、該化合物で恥垢菌を処理すると、該微生物はミコール酸を生産しなくなる。同様に、他の植物由来の化合物であるテバインおよび「カタランサス・ロゼウス(Catharanthus roseus)」の根のエタノール抽出物もミコール酸の合成を抑制する。従って、この方法は合成、半合成または天然の化合物の選別に使用することができ、また、抽出物は原核源または真核源であってもよい。同様に、ミコール酸生合成の抑制は、マイコバクテリア属の微生物に対してだけでなく、他の微生物群、例えば、コリネバクテリウム属およびノカルジア属の微生物等に対しても確認することができる。 当業者であれば、ミコール酸の異なる化学種およびミコール酸と錯体を形成して異なる最大吸収をもたらす異なる染料を使用することが可能である。しかしながら、本発明の本質は、ミコール酸の異なる化学種と錯体を形成して異なる最大吸収をもたらすいずれの染料も、該最大吸収における光学密度が濃度に比例して変化するときには、このような波長において評価することができる。 上述の実施例における例示的説明は、ミコール酸生合成に対する潜在的インヒビターを選別するための迅速で低コストの新規な系をもたらす発明方法の利用について詳細に示すものである。この系は簡単に見えるが、途方もない重要性と可能性を有している。何故ならば、この系を利用することによって、何百万種類の化合物や抽出物を選別して潜在的な非毒性薬剤配合物をもたらすことができるからである。本発明の商業的可能性は、ミコール酸を検出するためのキットの形態で利用してもよく、該キットはマイコバクテリウム属の微生物を検出するための診断の分野において直ちに影響を及ぼすと考えられる。ミコール酸(5μg/ml)のヘキサン中におけるスペクトル走査を示す。石炭酸−フクシン染料のスペクトル走査を示す。ミコール酸(5μg/ml)−石炭酸フクシン錯体のヘキサン中におけるスペクトル走査を示す。石炭酸−フクシン染料と錯体を形成したときのミコール酸の濃度増加に伴う吸光度の増加を示す。 被験化合物または抽出物の存在下および不存在下においてバクテリアによって生産されるミコール酸を定量することによる抗菌剤として有用なミコール酸生合成インヒビターを選別するための迅速で、簡単で、高感度で費用効率の高い方法であって、下記の過程(a)〜(h)を含む該方法: (a)該被験化合物または抽出物の存在下および不存在下において該バクテリアの個々の培養物を40〜60時間増殖させ、 (b)バクテリアのペレットを凍結乾燥させ、 (c)ミコール酸を常套法によって抽出し、 (d)ミコール酸抽出物をヘキサンに溶解させることによってミコール酸溶液を調製し、 (e)該溶液を石炭酸−フクシン染料に対して1:4〜4:1(v/v)の量比で添加し、 (f)上記の過程(e)で得られる生成物を激しく振盪させることによって淡紅色のミコール酸−染料錯体を上層として形成させ、 (g)該ミコール酸を490〜500nmの波長において分光光度法によって定量し、次いで (h)該化合物で処理したバクテリアの培養物中におけるミコール酸生合成の抑制度を決定する。 ミコール酸の濃度を好ましくは494〜496nmの波長において分光光度法によって定量する請求項1記載の方法。 石炭酸フクシン染料と該抽出物の量比が好ましくは1:1(v/v)である請求項1記載の方法。 石炭酸フクシンが塩基性フクシン染料(0.1〜1.0g/100ml)、フェノール、95%エタノールおよび蒸留水から成り、フェノール:エタノールの量比が1:4〜2:1(v/v)であり、また、フェノール:蒸留水の量比が1:14〜1:25(v/v)である請求項1記載の方法。 抑制活性を有する該被験化合物または抽出物を1/25〜1/2の最小抑制濃度(MIC)で添加する請求項1記載の方法。 該方法を、合成化合物、半合成化合物、天然化合物および抽出物から成る群から選択されるインヒビターを選別するために使用する請求項1記載の方法。 色の彩度が、ミコール酸の濃度の増加に伴って増加する請求項1記載の方法。 該方法がミコール酸に対して機能する請求項1記載の方法。 ミコール酸生産性微生物に対する潜在的な抗菌剤を識別するために有用な診断用キットであって、石炭酸フクシン、メタノール、トルエン、ヘキサン、濃硫酸、バクテリアのペレットおよび被験化合物または抽出物を以下の量比で含有する該キット(但し、以下の量比のメタノール、トルエンおよび濃硫酸は、最終濃度が0.1〜3.0g/100mlになるようにしてバクテリアの凍結乾燥ペレットに添加する): (1)メタノール:トルエン=1:3〜3:1(v/v)、 (2)メタノール:ヘキサン=2:1〜8:1(v/v)、 (3)濃硫酸:ヘキサン=1:2〜1:8(v/v)および (4)石炭酸フクシン:ヘキサン抽出物=1:4〜4:1(v/v)。 石炭酸フクシンが塩基性フクシン染料(0.1〜1.0g/100ml)、フェノール、95%エタノールおよび蒸留水から成り、フェノールとエタノールの量比が1:4〜2:1(v/v)であり、また、フェノールと蒸留水の量比が1:14〜1:25(v/v)である請求項9記載のキット。 バクテリアのペレットが、マイコバクテリウム属の微生物、コリネバクテリウム属の微生物およびノカルジア属の微生物から成る群から選択されるバクテリアのペレットである請求項9記載のキット。 抑制活性を有する被験化合物または抽出物を1/25〜1/2の最小抑制濃度(MIC)で添加する請求項9記載のキット。