タイトル: | 特許公報(B2)_γ−グルタミルシステインを含有するキャンディダ・ユティリス |
出願番号: | 2003578559 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12N 15/09,A23L 1/28,A23L 1/30,C12N 1/16,C12N 1/19 |
西内 博章 西村 康史 黒田 素央 JP 4561099 特許公報(B2) 20100806 2003578559 20030326 γ−グルタミルシステインを含有するキャンディダ・ユティリス 味の素株式会社 000000066 川口 嘉之 100100549 松倉 秀実 100090516 遠山 勉 100089244 西内 博章 西村 康史 黒田 素央 JP 2002085058 20020326 20101013 C12N 15/09 20060101AFI20100922BHJP A23L 1/28 20060101ALI20100922BHJP A23L 1/30 20060101ALI20100922BHJP C12N 1/16 20060101ALI20100922BHJP C12N 1/19 20060101ALI20100922BHJP JPC12N15/00 AA23L1/28 AA23L1/30 ZC12N1/16 GC12N1/19 C12N 15/09 A23L 1/28 A23L 1/30 C12N 1/16 C12N 1/19 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) Science Direct GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq SwissProt/PIR/GeneSeq 国際公開第01/090310(WO,A1) 特開昭61−052299(JP,A) 特開昭61−031081(JP,A) 大竹 康之,バイオサイエンスとインダストリー,日本,1992年,V50 N10,P989-994 MUTOH, N.,J BIOCHEM,日本,1995年,V117 N2,P283-288 WU, AL.,MOL CELL BIOL,1994年,V14 N9,P5832-5839 OHTAKE, Y.,YEAST,1991年,V7 N9,P953-961 5 JP2003003715 20030326 WO2003080832 20031002 20 20060207 山本 匡子 技術分野本発明は、γ−グルタミルシステインを産生するキャンディダ・ユティリス、及びそれを利用した食品に関するものである。γ−グルタミルシステイン、及びそれから製造されるシステインは、食品分野で有用である。背景技術システインは、食品の風味改善などを目的に用いられている。システインの製法については蛋白分解法や半合成法などが知られているが、現在主に用いられている方法は蛋白分解法と半合成法である。システインを食品の風味改善に用いることを目的として、システイン含量の高い天然食品素材が求められているが、そのような天然食品素材は従来ほとんど知られていなかった。一方、γ−グルタミルシステインを含む酵母エキスを加熱または酵素処理すれば、システインを高含有する食品素材を得ることが可能であると報告されている(WO 00/30474)。γ−グルタミルシステインは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)では、γ−グルタミルシステイン合成酵素の働きによりシステインとグルタミン酸を基質にして合成される。また、グルタチオンはグルタチオン合成酵素の働きによりγ−グルタミルシステインとグリシンを基質にして合成される。γ−グルタミルシステインを高含有する酵母は、WO 00/30474;Otake et al.,Agri.Biol.Chem.,54(12),3145−3150,1990;クリスら、Molecular Biology of the Cell.,8,1699−1707,1997;Inoue et al.,Biochimica et Biophysica Acta,1395(1998)315−320)などで報告されている。しかし、これらの報告は全てサッカロマイセス・セレビシエを用いてなされた検討であり、キャンディダ・ユティリスを用いた報告例はない。キャンディダ・ユティリスは、以前はピヒア(Pichia)属、又はハンゼニュラ(Hansenula)属に分類されていたこともあるが、現在はキャンディダ属として分類されている。このキャンディダ属とは、有性生殖を行なわないか、有性生殖を行なうことが見つけられない不完全菌酵母15の属の1つで、系統分類の見地からみれば全く寄せ集めの属であり(酵母研究技法の新展開(ISBN番号:4−7622−4670−0)、p124−125)、キャンディダ属に属する酵母は、サッカロマイセス・セレビシエと比較して特異な性質を有していることが多い。例えば、キャンディダ・ユティリスは、ピリジン塩基を生産するペントース燐酸経路でエネルギーの大部分を得るという特徴(Biotechnolgy,vol.3(ISBN番号:3−527−25765−9)p30,1983)や、カタボライト制御が弱いという特徴(Biotechnolgy,vol.3 p30,1983)等を有している。また、研究用酵母としては、通常サッカロマイセス・セレビシエが用いられているため、キャンディダ・ユティリスに関する知見は数少ない。そのような状況から、キャンディダ・ユティリスがどの様にしてグルタチオンを生合成しているか報告例がなく、わずかに、亜鉛耐性等を利用して取得された特定のキャンディダ・ユティリスにおいて、グルタチオンを高生産する温度が通常の温度より5℃以上低いとの報告例(特公平03−18872)などがあるのみである。このように、キャンディダ・ユティリスにおいては、グルタチオン合成酵素活性とγ−グルタミルシステインの蓄積との関係は知られておらず、グルタチオン合成酵素活性を低下させることによりγ−グルタミルシステインを蓄積させることができるか否かは不明であった。発明の開示キャンディダ・ユティリスは単位糖あたりの生育がサッカロマイセス・セレビシエよりよいと報告されている(Biotechnolgy,vol.3 p30,1983)。また、厳格な好気条件下ではエタノールの副生が生じない為(Kondo et al(JOURNAL OF BACTERIOLOGY,DEC.1995,p7171−7177))、培養上エタノールの副生に注意する必要性が低い。そこで、本発明者は、γ−グルタミルシステインを高含有するキャンディダ・ユティリスを用いて製造した酵母エキスは、サッカロマイセス・セレビシエを用いて製造した酵母エキスよりも安価になり、工業生産には望ましいと考えた。本発明は、上記観点からなされたものであり、γ−グルタミルシステインを高含有するキャンディダ・ユティリス、及びそれを用いた酵母エキス、並びにそれらを用いたγ−グルタミルシステイン又はシステイン含有食品及びその製造法を提供することを課題とする。本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、他の生物との相同性から、キャンディダ・ユティリスからグルタチオン合成酵素をコードしていると予測される遺伝子断片を取得し、その断片を利用してグルタチオン合成酵素活性を低下させることにより、キャンディダ・ユティリスにγ−グルタミルシステインを生産させることに成功した。さらに、キャンディダ・ユティリスからγ−グルタミルシステイン合成酵素をコードしていると予測される遺伝子断片を取得することに成功し、本発明を完成するに至った。本発明の要旨は、以下のとおりである。(1)最小培地で培養したとき、対数増殖期に乾燥菌体当たり1重量%以上のγ−グルタミルシステインを含有するキャンディダ・ユティリス。(2)最小培地がSD培地である(1)のキャンディダ・ユティリス。(3)グルタチオン合成酵素活性が0.005μmol GSH/mgタンパク質/時間以下である(1)又は(2)のキャンディダ・ユティリス。(4)細胞内のグルタチオン合成酵素活性が低下するようにグルタチオン合成酵素をコードする遺伝子が改変された(1)〜(3)のいずれかのキャンディダ・ユティリス。(5)γ−グルタミルシステイン合成酵素をコードする遺伝子の発現量が上昇するように改変された(1)〜(4)のいずれかのキャンディダ・ユティリス。(6)(1)〜(5)のいずれかのキャンディダ・ユティリスを好適な条件で培養して得られる培養物、もしくはγ−グルタミルシステインを含む前記培養物の分画物又は熱処理によってシステインが生成したこれらの培養物もしくは分画物を含む飲食品。(7)飲食品が発酵食品調味料である(6)の飲食品。(8)(1)〜(5)のいずれかのキャンディダ・ユティリスを好適な条件で培養して得られる培養物を用いて製造された酵母エキス。(9)(1)〜(5)のいずれかのキャンディダ・ユティリスを好適な条件で培養し、得られる培養物もしくはその分画物、又は加熱処理した前記培養物又は分画物を、飲食品原料に混合し、飲食品に加工することを特徴とする、γ−グルタミルシステイン又はシステイン含有食品の製造法。(10)下記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードするDNA。(A)配列番号43に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。(B)配列番号43に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、γ−グルタミルシステイン合成酵素活性を有するタンパク質。(11)下記(a)又は(b)に示すDNAである(10)のDNA。(a)配列番号42の塩基番号110〜2101の記載の塩基配列を含むDNA。(b)配列番号42の塩基番号110〜2101の記載の塩基配列又は同塩基配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、γ−グルタミルシステイン合成酵素活性を有するタンパク質。発明を実施するための最良の形態以下、本発明を詳細に説明する。<1>本発明のキャンディダ・ユティリス本発明のキャンディダ・ユティリスは、最小培地で培養したとき、対数増殖期に乾燥酵母菌体当たり1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、より好ましくは2.0重量%以上のγ−グルタミルシステインを含有する。前記最小培地としては、下記組成を有するSD培地が挙げられる。〔SD培地組成〕グルコース 2%Nitrogen Base 1倍濃度(10倍濃度Nitrogen Baseは、1.7gのBacto Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids and Ammonium Sulfate(Difco社)と5gの硫酸アンモニウムを混合したものを100mlの滅菌水に溶解し、pHを5.2程度に調整し、フィルター濾過滅菌したもの)「対数増殖期」とは、培養中における細胞数が培養時間に対して対数的に増加する時期をいう。培養は、振盪培養でも静置培養でもよいが、振とう培養が好ましい。γ−グルタミルシステインの含有量は、乾燥酵母菌体すなわち菌体の固形成分、例えば、105℃で4時間加熱した後の菌体重量に対するγ−グルタミルシステインの含有量(%)をいう。尚、上記のγ−グルタミルシステインの含有量は、対数増殖期のすべてにわたって維持される必要はなく、少なくとも対数増殖期の任意の時点において、好ましくは、対数増殖期の次に述べる状態で、上記の値を示せばよい。即ち、前記状態とは、対数増殖期から定常状態になったときの培養液の吸光度の1/2以上の吸光度を有する対数増殖期である。本発明のキャンディダ・ユティリスは、グルタチオン合成酵素活性が0.005μmol GSH/mgタンパク質/時間以下であることが好ましく、0.001μmol GSH/mgタンパク質/時間以下であることがより好ましい(「GSH」はグルタチオンを示す)。更には、グルタチオン合成酵素活性が検出限界以下であることが好ましい。グルタチオン合成酵素性は、Gushimaらの方法(Gushima,T.et al.,J.Appl.Biochem.,5,210(1983))によって測定することができる。本発明のキャンディダ・ユティリスは、キャンディダ・ユティリスの適当な菌株、例えば野生株を、突然変異処理又は遺伝子組換え技術(例えば、以下の文献等に開示されている技術が利用できる。FEMS Microbiology Letters165(1998)335−340、JOURNAL OF BACTERIOLOGY,Dec.1995,p7171−7177、Curr Genet 1986;10(8):573−578、WO 98/14600)により、細胞内のグルタチオン合成酵素活性が低下するように改変することにより、取得することができる。グルタチオン合成酵素活性が低下するとは、グルタチオン合成酵素活性が消失することを含む。また、細胞内のγ−グルタミルシステイン合成酵素活性が上昇するように改変することによっても、γ−グルタミルシステインを含有するキャンディダ・ユティリスを育種することができる。γ−グルタミルシステイン合成酵素活性は、Jacksonの方法(Jackson,R.C.,Biochem.J.,111,309(1969))によって測定することができる。突然変異処理としては、紫外線照射、または、MNNG、エチルメタンスルフォネート(EMS)、メチルメタンスルフォネート(MMS)等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。また、遺伝子組換え技術を利用してグルタチオン合成酵素活性を低下させるには、グルタチオン合成酵素活性が低下するようにグルタチオン合成酵素をコードする遺伝子を改変する方法が挙げられる。キャンディダ・ユティリスATCC15239株のグルタチオン合成酵素をコードする遺伝子の一部の塩基配列を、配列番号17に示す。従来、キャンディダ属酵母のグルタチオン合成酵素遺伝子は知られていなかったが、本発明者は、各種生物のグルタチオン合成酵素のアミノ酸配列から、保存性の高い領域を検索し、配列番号1〜8の領域を見出した。そして、それらのうち、配列番号6〜8に示すアミノ酸配列に対応するプライマーを用いてPCRを行うことにより、キャンディダ・ユティリス染色体DNAから、グルタチオン合成酵素をコードすると予想される遺伝子断片を増幅することに成功した。同遺伝子断片を取得するためのプライマーとしては、配列番号15及び16に示すプライマーが挙げられる。また、キャンディダ・ユティリスの菌株としては特に制限されないが、例えばATCC15239株が挙げられる。同菌株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、住所10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209,United States of America)から入手することができる。グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子を改変してグルタチオン合成酵素活性を低下させるには、例えば、グルタチオン合成酵素の発現量が低下するように前記遺伝子の発現調節配列を改変するか、または、活性を有するグルタチオン合成酵素が発現しないように、コード領域を改変する方法が挙げられる。具体的には例えば、5’末端部及び3’末端部を欠失した変異型グルタチオン合成酵素遺伝子を含む組換えDNAでキャンディダ・ユティリスを形質転換し、変異型遺伝子と染色体上の野生型遺伝子との間で組換えを起こさせることにより、染色体上の遺伝子を破壊することができる。その際、組換えDNAには、宿主の栄養要求性等の形質にしたがって、マーカー遺伝子を含ませておくと操作がしやすい。また、前記組換えDNAは、制限酵素で切断する等により直鎖状にしておくと、染色体に組換えDNAが組み込まれた株を効率よく取得することができる。また、グルタチオン合成酵素遺伝子の内部の配列を欠失し、正常に機能するグルタチオン合成酵素を産生しないように改変した変異型遺伝子を含む組換えDNAをキャンディダ・ユティリスに導入し、変異型遺伝子と染色体上の正常な遺伝子との間で組換えを起こさせることにより、染色体上の遺伝子を破壊することができる。上記のようにして染色体に組換えDNAが組み込まれた株は、染色体上にもともと存在するグルタチオン合成酵素遺伝子配列との組換えを起こし、野生型グルタチオン合成酵素遺伝子と変異型グルタチオン合成酵素遺伝子との融合遺伝子2個が組換えDNAの他の部分(ベクター部分及びマーカー遺伝子)を挟んだ状態で染色体に挿入されている。したがって、この状態では野生型グルタチオン合成酵素遺伝子が機能する。次に、染色体DNA上に変異型グルタチオン合成酵素遺伝子のみを残すために、2個のグルタチオン合成酵素遺伝子の組換えにより1コピーのグルタチオン合成酵素遺伝子を、ベクター部分(マーカー遺伝子を含む)とともに染色体DNAから脱落させる。その際、野生型グルタチオン合成酵素遺伝子が染色体DNA上に残され、変異型グルタチオン合成酵素遺伝子が切り出される場合と、反対に変異型グルタチオン合成酵素遺伝子が染色体DNA上に残され、野生型グルタチオン合成酵素遺伝子が切り出される場合がある。いずれの場合もマーカー遺伝子が脱落するので、2回目の組換えが生じたことは、マーカー遺伝子に対応する表現形質によって確認することができる。また、目的とする遺伝子置換株は、PCRによりグルタチオン合成酵素遺伝子を増幅し、その構造を調べることによって、選択することができる。遺伝子破壊に用いるグルタチオン合成酵素遺伝子又はその断片としては、配列番号17に示す塩基配列を有するDNAの他に、同塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA、又は配列番号17に示す塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。ストリンジェントな条件としては、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。尚、サッカロマイセス・セレビシエのグルタチオン合成酵素遺伝子の破壊については、WO 00/30474に開示されている。キャンディダ・ユティリスに組換えDNAを導入する方法としては、エレクトロポレーション法(Luisら,FEMS Micro biology Letters 165(1998)335−340)が挙げられる。グルタチオン合成酵素活性が低下した菌株は、メチルグリオキサールに対する感受性を指標として選択することができる(Ohtake,Y.et al.,Agri.Biol.Chem.,54(12),3145−3150,1990)。グルタチオンを一定量生合成できる菌株(グルタチオン合成酵素活性及びγ−GC合成酵素活性を有する菌株)は、メチルグリオキサールに耐性を示す。また、グルタチオンを含有しない培地での生育を調べることによっても、グルタチオン合成酵素活性が低下していることを確認することができる。更に、グルタチオン合成酵素活性が低下した菌株は、MNNG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)濃度勾配プレートを利用することにより効率的に取得することができる。グルタチオン合成酵素活性の低下は、例えば以下の例と同様にして確認することができる。YPD寒天プレートの中央にフィルターを置き、1mgのMNNGを30μlのDMSOに溶解させた溶液を全量、そのフィルターに染み込ませ、MNNG濃度が中心点から遠ざかるにつれて薄くなるMNNG濃度勾配寒天培地を作製した。この寒天培地に、YPD培地で培養したサッカロマイセス・セレビシエ1倍体Nα1株及びNα3株をスプレッドした。30℃で70時間培養後、寒天培地の中心点から酵母がコロニーを形成するまでの距離を測定した。その結果、Nα1株は2.3cm、Nα3株は1.8cmであった。Nα3株はNα1株を親株にしてグルタチオン合成酵素の370位のアルギニン残基以降を欠失させるように改変して取得した株である。その為、グルタチオン合成酵素が弱化しており、グルタチオンを微量しか含有していないという特徴を有している。本発明のキャンディダ・ユティリスは、グルタチオン合成酵素活性が低下することに加えて、γ−グルタミルシステイン合成酵素活性が増強されていてもよい。γ−グルタミルシステイン合成酵素活性は、γ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子、発現可能な形態でキャンディダ・ユティリスに導入することによって、増強することができる。γ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ由来の遺伝子や、後述するキャンディダ・ユティリス由来の遺伝子が挙げられる。キャンディダ・ユティリスへのγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子の導入する方法としては、例えば、同遺伝子と、キャンディダ・ユティリス染色体上に存在するDNA配列とを含む組換えDNAで、キャンディダ・ユティリスを形質転換し、染色体中に組換えDNAを組み込む方法がある(Kondo,K.et al.,J.Bacteriol.,177,7171−7177(1995))。具体的には、前記遺伝子置換と同様にして行うことができる。また、キャンディダ・ユティリスへの目的遺伝子の導入は、染色体DNA中に存在する自律複製配列(ARS)を含むプラスミドを用いて行うこともできる。キャンディダ・ユティリスのARS、及び、それを用いた形質転換は、国際公開WO95/32289号パンフレットに記載されている。キャンディダ・ユティリスの形質転換法としては、プロトプラスト法、KU法(H.Ito et al.,J.Bateriol.,153−163(1983))、KUR法(発酵と工業 vol.43,p.630−637(1985))、エレクトロポレーション法等、通常酵母の形質転換に用いられる方法を採用することができる。また、酵母の胞子形成、1倍体酵母の分離、等の操作については、「化学と生物 実験ライン31 酵母の実験技術」、初版、廣川書店;「バイオマニュアルシリーズ10 酵母による遺伝子実験法」初版、羊土社等に記載されている。また、キャンディダ・ユティリス細胞内のγ−グルタミルシステイン合成酵素活性を増強する方法として、染色体上のγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子のプロモーターを強転写プロモーターで置換する方法(大竹康之ら、バイオサイエンスとインダストリー、第50巻第10号、第989〜994頁、1992年)が挙げられる。<2>キャンディダ・ユティリスのγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子本発明のDNAは、下記の(A)又は(B)のタンパク質をコードするDNAである。(A)配列番号43に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。(B)配列番号43に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、γ−グルタミルシステイン合成酵素活性を有するタンパク質。γ−グルタミルシステイン合成酵素活性とは、システインとグルタミン酸からγ−グルタミルシステインを生成する反応を触媒する活性をいう。本発明のDNAがコードするγ−グルタミルシステイン合成酵素は、同酵素活性が損なわれない限り、配列番号43に示すアミノ酸配列において1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位を含んでもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には、2〜15個、好ましくは、2〜8個、より好ましくは2〜5個である。上記のようなγ−グルタミルシステイン合成酵素と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAは、例えば部位特異的変異法によって、特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加、または逆位を含むように塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変されたDNAは、従来知られている変異処理によっても取得され得る。変異処理としては、γ−グルタミルシステイン合成酵素をコードするDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及びγ−グルタミルシステイン合成酵素をコードするDNAを保持する微生物、例えばエシェリヒア属細菌を、紫外線照射またはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NG)もしくはEMS等の通常に変異処理に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、γ−グルタミルシステイン合成酵素を保持するキャンディダ・ユティリスの菌株の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutationまたはvariation)も含まれる。上記のような変異を有するDNAを、サッカロマイセス・セレビシエ等の適当な細胞で発現させ、その細胞のγ−グルタミルシステイン合成酵素活性を調べることにより、γ−グルタミルシステイン合成酵素と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。また、変異を有するγ−グルタミルシステイン合成酵素をコードするDNAまたはこれを保持する細胞から、例えば配列番号42の塩基配列又はその一部を有するプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、γ−グルタミルシステイン合成酵素活性を有するタンパク質質をコードするDNAを単離することによっても、γ−グルタミルシステイン合成酵素と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。プローブとして、配列番号42の塩基配列の一部の配列を用いることもできる。そのようなプローブは、配列番号42の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、配列番号42の塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。プローブとして、300bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件は、50℃、2×SSC、0.1%SDSが挙げられる。上記のような条件でハイブリダイズする遺伝子の中には途中にストップコドンが発生したものや、変異により活性を失ったものも含まれるが、それらについては、発現産物の酵素活性をを調べることによって選択することができる。配列番号42に示す塩基配列を有するDNAは、後記実施例に示すように、γ−グルタミルシステイン合成酵素が弱化したサッカロマイセス・セレビシエに導入したところ、グルタチオン合成が促進されたことから、γ−グルタミルシステイン合成酵素をコードしていることが確認された。配列番号42のアミノ酸配列を、データベースで相同性検索したところ、サッカロマイセス・セレビシエ、及びシゾサッカロマイセス・ポンベのγ−グルタミルシステイン合成酵素のアミノ酸配列と、各々50.93%及び42.88%の相同性が認められた。<3>本発明の酵母エキス、飲食品及びその製造法上記のようにして得られるγ−グルタミルシステインを産生する酵母を好適な条件で培養して得られた培養物又はその分画物は、γ−グルタミルシステインを含有する。培養物は、酵母菌体を含む培養液であってもよいし、それから採取された酵母菌体、菌体破砕物、又は菌体抽出物(酵母エキス)であってもよい。菌体破砕物又は酵母エキスから、γ−グルタミルシステインを含む画分を得てもよい。上記γ−グルタミルシステインを含む培養物又はその分画物を加熱することにより、γ−グルタミルシステインがシステインとピロリドンカルボン酸に分解するため、システインを遊離させることができる。具体的には、培養物又はその分画物を、水の存在下で、酸性から中性、具体的にはpH1〜7において50〜120℃に3〜300時間保持することにより、システインを生成させることができる。また、γ−グルタミルシステインを含む培養物又はその分画物をpH3〜9に調整した後、γ−グルタミルペプチド分解酵素(γ−グルタミルトランスフェラーゼ、γ−グルタミルシクロトランスフェラーゼ、グルタミナーゼ等)を加え、15〜70℃で1〜300分作用させることによっても、システインを生成させることができる。培養に用いる培地は、本発明の酵母が良好に生育し、かつ、γ−グルタミルシステインを効率よく産生するものであれば特に制限されない。尚、必要に応じて、用いる酵母の形質にしたがって必要な栄養素を培地に添加する。培養条件及び酵母エキス等の調製は、通常の酵母の培養、及び酵母エキスの調製と同様にして行えばよい。酵母エキスは、酵母菌体を熱水抽出したものでもよいし、酵母菌体を消化したものでもよい。また、本発明の酵母エキスは、熱処理又は酵素処理によりシステインを生成させたものであってもよいし、他の飲食品原料とともに飲食品に加工する際、又は加工後に熱処理されるものであってもよい。具体的には、酵母エキスの熱処理は次のようにして行うことができる。酵母エキス粉末に水を加え、塩酸でpHを5に調整し、濃度2%の水溶液を作製し、これを98℃で180分間加熱する。上記γ−グルタミルシステイン又はシステインを含む培養物又はその分画物は、飲食品の製造に用いることができる。飲食品としては、アルコール飲料、パン食品、又は発酵食品調味料が挙げられる。熱処理によるγ−グルタミルシステインからシステインの生成は、飲食品の製造中、又は製造の後に行われてもよい。また、飲食品の製造に先立って、酵母の培養物又はその分画物を熱処理してもよい。上記飲食品は、γ−グルタミルシステイン又はシステインを含む培養物又はその分画物を、飲食品原料に混合し、飲食品に加工することによって製造される。本発明の飲食品は、前記培養物又は分画物を使用すること以外は、通常の飲食品と同様の原料を用い、同様の方法によって製造することができる。このような原料としては、例えばアルコール飲料では、米、大麦、コーンスターチ等、パン食品では小麦粉、砂糖、食塩、バター、発酵用酵母菌等が、発酵食品調味料では大豆、小麦等が挙げられる。また、酵母エキスもしくはその濃縮物、またはそれらを乾燥したものは、それ自体で発酵食品調味料として用いることができる。実施例以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例1 γ−グルタミルシステインを産生するキャンディダ・ユティリスの構築<1>キャンディダ・ユティリスのグルタチオン合成酵素をコードすると予測される遺伝子断片の取得キャンディダ・ユティリスATCC15239株をYPD試験管培地で30℃で振とう培養し、Genとるくん酵母用(宝酒造(株)、Code9084)を用いて、菌体から染色体を回収した。〔YPD培地組成〕グルコース 2%ペプトン 2%酵母エキス 1%(pH5.0)サッカロマイセス・セレビシエ、シゾサッカロマイセス・ポンベ、及びラットのグルタチオン合成酵素のアミノ酸配列(以上、クリスら、Molecular Biology of the Cell.,8,1699−1707,1997)から、以下の相同性が高い配列を選定した。各々のアミノ酸配列から縮重プライマーを設計し、▲1▼と▲2▼、▲1▼と▲3▼、▲1▼と▲4▼、▲1▼と▲5▼、▲2▼と▲3▼、▲2▼と▲4▼、▲2▼と▲5▼、▲3▼と▲4▼、▲3▼と▲5▼、及び▲4▼と▲5▼の各々の組み合わせに対応する宿重プライマーを用いて、degenerated PCRを行なった。PCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、予想される大きさの領域を切り出し、DNAを回収した。さらに、この回収DNAを鋳型としてnested PCRを行なったが、目的の断片を取得することはできなかった。次に、以下のアミノ酸配列に対応するプライマーを、キャンディダ・ユティリスのコドン使用頻度を参考に設定した。上記▲6▼のアミノ酸配列に対応するプライマー(GGT TCY AAG AAG ATY CAR CA(配列番号9))と、▲7▼のアミノ酸配列に対応するプライマー(CCA CCA CCY TCT CTY TGT GG(配列番号10))を用いてPCRを行った。PCRは、KOD dash(TOYOBO社 コードLDP−101)を使用して、製造者の指示に従い、次の条件で行った。94℃2分→94℃1分、55℃(1サイクル毎に0.5℃づつ温度減少)1分、74℃40秒を22サイクル→94℃1分、50℃1分、74℃40秒を15サイクル。PCR産物をアガロースゲル(Nusieve3:1アガロース3%、1×TAE溶液(宝酒造(株)、CodeF5180A))にて電気泳動を行なった。ゲルをエチジウムブロマイド溶液で染色後、100bp〜300bpに相当する領域を切り出し、MagExtractor(TOYOBO社、CodeNPK−601)を用いてゲルからDNAを回収した。この回収DNAを鋳型として、▲6▼の領域に対応するプライマー(配列番号9)と▲8▼の領域に対応するように設定したプライマー(GTT GTT ACC ACC ACC YTC(配列番号11))を用いてnested PCRを行なったところ、100bp〜300bpに相当する領域に、3本のバンドが検出された。PCRは、前記と同様の条件で行った。これらの3本のバンドを各々切り出し、ゲルからDNAを回収した。各々のバンドを、pGEM−T Easy vector(Promega社)に、DNA ligation Kit ver.2(宝酒造(株))を用いて連結し、大腸菌JM109コンピテントセル(宝酒造(株)、Code9052)を形質転換した。得られた形質転換体の一つからキャンディダ・ユティリスのグルタチオン合成酵素をコードしていると予測される遺伝子断片を含んでいると予測される形質転換体を取得した。形質転換体が持つインサートの塩基配列を常法に従い、決定した。上記のようにして決定した塩基配列をもとに3’RACE(3’RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends(GIBCOBRL社、Cat.No 18373−027)を使用)を行なった。キャンディダ・ユティリスから、Rneasy Mini Kit(QIAGEN社、Cat.No.74104)を用いて調製したmRNAから、cDNA一次鎖を調製した後、3回のPCRを行った。用いたプライマーは以下のとおりである。PCRは、KOD dash(TOYOBO社コードLDP−101)を使用し、製造者の指示に従い、次の条件で行った。94℃2分1サイクル→94℃1分、50℃30秒、74℃40秒を30サイクル。PCR産物をpGEM−T Easy vectorに連結し、大腸菌を形質転換した。得られた形質転換体が持つインサートの塩基配列を解析し、キャンディダ・ユティリスのグルタチオン合成酵素を含んでいると予測される遺伝子断片情報を取得した。以上の操作により判明した情報から、プライマーを設計し(GGT TCT AAG AAG ATT CAG CA(配列番号15)、CCC TCG GAA AAG GAG ACG AAG G(配列番号16))、キャンディダ・ユティリスATCC15239より回収した染色体DNAを鋳型として、PCRを行い、増幅産物の塩基配列を決定した。PCRは、Pyrobest(宝酒造(株)、Code R0005A)を使用して、製造者の指示にしたがい、次の条件で行った。98℃2分→98℃20秒、55℃30秒、72℃2分を40サイクル。結果を配列番号17に示す。この塩基配列によりコードされると予測されるグルタチオン合成酵素のアミノ酸配列を配列番号18に示す。<2>キャンディダ・ユティリスのグルタチオン合成酵素遺伝子破壊カセットの作製キャンディダ・ユティリスATCC15239より回収した染色体DNAを鋳型として、前記配列番号15及び16のプライマーを用いてPCRを行った。PCRは、Pyrobest(宝酒造(株))を用いて、製造者の指示にしたがい、次の条件で行った。98℃2分→98℃20秒、55℃30秒、72℃2分を40サイクル。増幅産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社、Cat.No 28106)を用い精製し、精製産物の末端にアデニンを付加した後、pGEM−T Easyベクターに連結した。アデニンの付加は、AmpliTaq(ABI社、Code N808−0161)を用い、dNTPの代わりに2.5mMのdATPを使用し、72℃で10分間反応させることにより行った。続いて、QuikChange Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社、Catalog#200518)を用いて、部位特異的組換えによりクローニング断片の2箇所の塩基配列を置換し、HindIII及びKpnI切断部位を導入し、CGSH2Ctermi/pGEMT−Easyベクターを得た。部位特異的組換えに使用したプライマーは以下のとおりである。〔1度目の変異導入(HindIII切断部位の導入)〕〔2度目の変異導入(KpnI切断部位の導入)〕一方、キャンディダ・ユティリスATCC15239より回収した染色体DNAを鋳型として、以下のプライマーを用いてPCRを行い、URA3遺伝子を含む断片を増幅した。PCRは、KOD dash(TOYOBO社コードLDP−101)を使用して、製造者の指示に従い、次の条件で行った。94℃2分→94℃1分、54℃30秒、74℃40秒を30サイクル。増幅産物をpGEMT−Easyベクターに導入し、CURA3/pGEMT−Easyベクターを得た。CGSH2Ctermi/pGEMT−Easyベクター及びCURA3/pGEMT−Easyベクターを、各々HindIII及びKpnIにて切断した。CGSH2Ctermi/pGEMT−EasyベクターからはCGSH2及びpGEMT−Easy本体を含む断片を回収し、CURA3/pGEMT−EasyベクターからはCURA3を含む断片を回収した。これらの回収断片を連結し、大腸菌JM109を形質転換した。このようにして、CURA3ΔCGSH2/pGEMT−Easyベクターを作製した。CURA3ΔCGSH2/pGEMT−Easyベクターを制限酵素NotIで切断したものを鋳型とし、配列番号15及び16に示すプライマーを用いてPCRにより増幅した。こうして、キャンディダ・ユティリスのグルタチオン合成酵素遺伝子破壊カセットを作製した(図1、2)。<3>ウラシル要求性キャンディダ・ユティリスATCC15239ura−株の取得常法(Luisらの手法、FEMS Microbiology Letters 165(1998)335−340)に従い、ATCC15239由来のウラシル要求性株ATCC15239ura−株を取得した。ATCC15239ura−株は、後述するようにURA3遺伝子によって相補されたことから、ura3変異株であると推定される。<4>キャンディダ・ユティリス由来のγ−グルタミルシステイン産生酵母(ATCC15239Δgsh2株)の取得まず、ATCC15239ura−株をYPD試験管培地で一晩30℃で培養した。培養産物をYPDフラスコ培地(坂口フラスコ500ml容、50ml張り込み)に植菌し、30℃で振とう培養した。対数増殖期に集菌し、4℃に冷やした1Mソルビトール溶液で、菌体を3回洗浄した。洗浄菌体を冷やした1Mソルビトール溶液に懸濁した。懸濁液に、50μl(2μg)のグルタチオン合成酵素遺伝子破壊カセットを加え、0.2cmキュベット中でよく混合し、エレクトロポレーション(Gene Pulser system(BioRad社)を使用、インピーダンス200Ω、キャパシタンス125μF、設定電圧1.5kVに設定)を行なった。キュベットに、1mlの冷やした1Mソルビトールを注ぎ、キュベットを10分間氷上で冷却した。菌体懸濁液をSDプレートにスプレッドし、30℃で静地培養した。プレートに生育してきた株を、SDプレート及び10mMのメチルグリオキサールを含むSDプレートにレプリカし、30℃で静地培養した。メチルグリオキサールに感受性を示す株を7株選択した。これら7株を各々YPD試験管培地で30℃で一晩振とう培養した。培養液をSD培地(坂口フラスコ500ml容、50ml張り込み)に2%植菌し、30℃で振とう培養した。対数増殖期に集菌し、滅菌水で2回菌体を洗浄した。洗浄菌体を70℃10分の熱水抽出を行い、酵母菌体内のγ−グルタミルシステインを抽出し、HPLCにより分離定量した。一方、酵母の乾燥菌体量は、一定培地中に含まれる洗浄酵母菌体を濾紙上に取り、105℃で4時間加熱後に残った菌体重量として測定した。このようにして、乾燥酵母菌体あたり1%以上のγ−グルタミルシステインを含有するキャンディダ・ユティリス菌株として、ATCC15239Δgsh2株を取得した。ATCC15239Δgsh2株をSD培地に植菌し、30℃で2日振とう培養した。培養物をSD培地に2%植菌し、30℃で振とう培養した。7時間後、及び9時間後のγ−グルタミルシステイン含有量を測定したところ、それぞれ1.08%、及び1.12%であった。グルタチオンは検出限界以下であった。<5>ATCC15239Δgsh2株のグルタチオン合成酵素活性の測定ATCC15239Δgsh2株をYPD培地に植菌し、30℃で振とう培養した。培養物をSD培地(2L容フィン付三角フラスコに400ml張り込み)に2%植菌し、30℃で振とう培養した。対数増殖期に菌体を集菌し、4℃に冷やした1Mソルビトールで菌体を2回洗浄した。洗浄菌体を0.1mMのPMSF(フェニルメタンスルフォニルフルオリド)を含む10mM Tris−HClバッファー(pH7.5)0.5mlに懸濁した。懸濁液にガラスビーズ(GLASS BEADS 425−600microns Acid−washed(SIGMA社、コードG−8772))を加え、BEAD−BEATER(和研薬株式会社)を用いて細胞を破砕した。細胞の破砕は顕微鏡で確認した。その後、1mlの前記バッファーを加え、遠心操作により、ガラスビーズ及び細胞デブリを取り除いた。このようにして、細胞粗抽出液を得た。細胞粗抽出液をULTRAFREE−15 Biomax10(MILLIPORE社、Cat.No UFV2BGC40)を用いて精製し、酵素液を得た。酵素液の蛋白量は、Bradford法により定量した。発色はプロテインアッセイCBB溶液(ナカライ社、Code29449−15)を用いて行い、595nmの吸収を測定した。標準曲線はAlbumin standard(PIERCE社、No.23210)を用いて作成した。このようにして得た、酵素液中のグルタチオン合成酵素活性を、Gushimaらの方法(Gushima,T.et al.,J.Appl.Biochem.,5,210(1983))にしたがって、以下のようにして測定した。〔反応液〕100mM γ−グルタミルシステイン 100μl100mM MgCl2 100μl50mM ATP 100μl100mM Gly 100μl1M Tris−HCl(pH8.0) 85.5μl160mM PEP 12.5μl1mg/ml PK 2μl酵素液(1〜10mg蛋白)精製水合計 2mlPEP:ホスホエノールピルビン酸(SIGMA社、Code P−7127)PK :ピルビン酸キナーゼ(SIGMA社、Code P−1903)上記組成の反応液を、酵素量1〜10mg蛋白の範囲で30℃で0〜2時間反応させた。メタクリル酸を1/5当量加えて反応を停止させた後、反応液のpHを8.0に調整し、生成したGSH量を定量した。この時の酵素活性は検出限界以下であり、検出されなかった。次に、ATCC15239Δgsh2株の親株であるATCC15239株のグルタチオン合成酵素活性を同様にして測定した。その結果、ATCC15239株のグルタチオン合成酵素活性は0.383μmol−GSH/mg蛋白/時間であった。実施例2 γ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子の取得<1>γ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子ホモログの取得サッカロマイセス・セレビシエ、シゾサッカロマイセス・ポンベのγ−グルタミルシステイン合成酵素のアミノ酸配列(Ohtake et al(Yeast 1991 Dec;7(9):953−961)、Mutoh et al(J Biochem(Tokyo)1995 Feb;117(2):283−288)から、以下の相同性が高い配列を選定した。各々のアミノ酸配列から縮重プライマーを設計し、degenerated PCRを行なった。▲1▼の領域に相当するプライマーとして、プライマーF1(ATG GGN TTY GGN ATG GG)(配列番号27)を、▲2▼の領域に相当するプライマーとしてプライマーR1(RAA YTC NAC NCK CCA)(配列番号28)を設計した。DNA polymeraseとしてKOD dash(TOYOBO社)を用いて製造者の指示に従ってPCRを行なった。PCRの条件は94℃3分を1サイクル→94℃1分,52℃1分,74℃1分を30サイクルで行なった。PCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、予想される大きさの約700bpに相当する領域を切り出し、MagExtractor(TOYOBO社、CodeNPK−601)を用いてゲルからDNAを回収した。さらに、この回収DNAを鋳型としてnested PCRを行なった。PCRは前述と同様にして行った。増幅産物をアガロースゲルにて電気泳動後エチジウムブロマイド溶液で染色し、約700bpに相当する領域を切り出し、MagExtractorを用いてゲルからDNAを回収した。回収したDNAをDNA ligation kit ver.2(宝酒造(株))を用いてpGEM−T Easy vectorに連結し、大腸菌JM109コンピテントセルを形質転換した。得られた形質転換体の一つから、キャンディダ・ユティリスのγ−グルタミルシステイン合成酵素をコードすると予想される遺伝子断片を含んでいると推測される形質転換体を取得した。形質転換体が持つインサートの塩基配列を常法に従い、決定した。上記のようにして決定した塩基配列をもとに3’RACE(3’RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends(GIBCOBRL社))を行なった。キャンディダ・ユティリスから、Rneasy Mini Kitを使用して調製したmRNAから、cDNA一次鎖を合成した後、3回のPCRを行なった。用いたプライマーは以下の通りである。PCRは、KOD dashを使用し、製造者の指示に従い、次の条件で行なった。94℃2分1サイクル→94℃1分、50℃30秒、74℃40秒を30サイクル。PCR産物をpGEM−T Easy vectorに連結し、大腸菌を形質転換した。得られた形質転換体がもつインサートの塩基配列を解析し、キャンディダ・ユティリスのγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子を含んでいると予測される遺伝子断片情報を取得した。次に、これまでに判明している塩基配列を元に、5’RACEを行った。キットは5’RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends Reagent Assembly Version 2.0(GIBCOBRL社)を用いた。cDNA一次鎖調製のためのRT(逆転写)に用いたプライマーは以下の通りである。AGC ACC AGA AAT GAC GTT C(配列番号32)製造者の指示に従って作製したcDNAライブラリーより、以下のプライマーを用いて3回のPCRを行なった。PCRは、KOD dashを使用し、製造者の指示に従い、次の条件で行なった。94℃2分1サイクル→94℃1分、50℃30秒、74℃40秒を30サイクル。用いたプライマーは以下の通りである。PCR産物をpGEM−T Easy vectorに連結し、大腸菌を形質転換した。得られた形質転換体がもつインサートの塩基配列を解析し、キャンディダ・ユティリスのγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子を含んでいると予測される遺伝子断片情報を取得した。他の生物の相同性より全長をクローニングしていないと考え、更に5’RACEを行なった。cDNA一次鎖調製のためのRTに用いたプライマーは以下の通りである。TGA TCT TCT GCT GTT CAT GTT(配列番号36)製造者の指示に従って作製したcDNAライブラリーより、以下のプライマーを用いて3回のPCRを行なった。用いたプライマーは以下の通りである。PCR産物をpGEM−T Easy vectorに連結し、大腸菌を形質転換した。得られた形質転換体がもつインサートの塩基配列を解析し、キャンディダ・ユティリスのγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子を含んでいると予測される遺伝子断片情報を取得した。以上のようにして判明した情報から、プライマーを設計し、PCRを行い、増幅産物の塩基配列を決定した。PCRはPyrobest(宝酒造)を使用して、製造者の指示に従い、次の条件で行なった。98℃2分→98℃20秒、55℃30秒、72℃2分を40サイクル。用いたプライマーは以下のとおりである。このようにして増幅したPCR産物の塩基配列を常法に従って決定した。結果を配列番号42に示す。また、この塩基配列によりコードされると予測されるγ−グルタミルシステイン合成酵素のアミノ酸配列を配列番号43に示す。このようにして、キャンディダ・ユティリスのγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子ホモログを取得した。実施例3 サッカロマイセス・セレビシエにおけるγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子の発現<1>グルタチオン合成酵素活性が低下したサッカロマイセス・セレビシエグルタチオン合成酵素活性が低下したサッカロマイセス・セレビシエとして、国際公開WO 2001/090310号パンフレットに記載のサッカロマイセス・セレビシエNα3株を用いた。Nα3株は、サッカロマイセス・セレビシエのウラシル要求性酵母一倍体であるNα1株(国際公開WO 2001/090310号パンフレットに記載)を親株として、弱化型グルタチオン合成酵素遺伝子置換株として構築された菌株である。<2>γ−グルタミルシステイン合成酵素活性が低下したサッカロマイセス・セレビシエの取得(1)GSH1遺伝子置換カセットの作製まず、前記Nα1株の染色体DNAを鋳型として、γ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子(配列番号44)の中流領域から末端領域までをPCR法により増幅した。PCR反応は、KOD dash(TOYOBO社)を使用して、製造者の指示に従い、次の条件で行った。下記に示す組成の反応液を用いて、94℃1分の後、94℃30秒、60℃40秒、74℃1分を30サイクル繰り返すことにより行った。プライマーはGF1(gtg gac gac cgt act ccg aag)(配列番号46)及びGR1(acc caa atc gat aat gtc aac)(配列番号47)を用いた。上記のようにして増幅したGSH1遺伝子断片を、製造者の指示に従ってプラスミドpGEM−T Easy(Promega社)に連結し、GSH1dash/pGEMを得た。次に、部位特異的変異法により、GSH1dash/pGEMに含まれるγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子(配列番号44)の、同遺伝子がコードするγ−グルタミルシステイン合成酵素(配列番号45)の372番目、373番目に対応するアミノ酸セリン及びリジンに対応するコドンを終止コドンに置換した。この操作は、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)を用い、製造者のプロトコルに従って行った。プライマーはQCF1(ctt ttc ttg ggt ggg tag taa ttt ttc aat agg act)(配列番号48)、QCR1(agt cct att gaa aaa tta cta ccc acc caa gaa aag)(配列番号49)を用いた。このようにしてプラスミドGSH1Mdash/pGEMを作製した。上記のようにして変異が導入されたγ−グルタミルシステイン合成酵素(弱化型グルタチオン合成酵素)は、微弱な酵素活性を保持している(国際公開WO 2001/090310号パンフレット)。次に、国際公開WO2001/090310号パンフレットに記載のプラスミドpYES2dash(プラスミドpYES2(Invitrogen社)から2μoriを除去したプラスミド)、及び前記GSH1Mdash/pGEMを、いずれも制限酵素SacI及びSphIで切断し、pYES2dashからはURA3遺伝子を含む断片を、GSH1Mdash/pGEMからはγ−グルタミルシステイン合成酵素の部分遺伝子配列を含む領域を切り出し、これらを連結した。このようにしてプラスミドGSH1Mdash/pYES2dashを作製した。GSH1Mdash/pYES2dashを制限酵素BbeIで切断し、遺伝子置換カセットを得た(図3)。(2)γ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子置換株の構築上記のようにして作製した遺伝子置換カセットを用いて、Nα1株のγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子の遺伝子置換を行った。Nα1株を前培養した後に、培養物を50mlのYPD培地に植え継ぎ、対数増殖期まで培養した。培養菌体を1Mソルビトールに懸濁し、遺伝子置換カセットを混和して、エレクトロポレーションにより形質転換を行った。形質転換株を1mMのグルタチオンを含むSDプレートで培養し、生育する株を選択した。遺伝子置換カセットが染色体上の目的の位置に組み込まれたことをPCRによって確認し、得られた株をNα4中間体とした。次に、変異型γ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子のみを染色体上に残す為、以下の操作を行った。Nα4中間体を1mMのグルタチオンを添加したYPD培地で培養し、培養産物を1mMのグルタチオンを含むSDFOAプレートに蒔いた。プレート上に生育してきた株のグルタチオン合成酵素遺伝子の配列を決定し、目的の部位の配列が正しく置換されていることを確認し、Nα4株を得た(図4)。(3)Nα4株のγ−グルタミルシステイン合成酵素活性弱化の確認次に、上記のように取得したNα4株のγ−グルタミルシステイン合成酵素活性が弱化しているか否か調べた。大竹らは、サッカロマイセス・セレビシエYNN27株より変異処理により取得したYH1株のγ−グルタミルシステイン合成酵素活性を測定しており(Agric.Biol.Chem54(12)3145−3150,1990)、その方法に準じて活性を測定した。その結果、Nα4株のγ−グルタミルシステイン合成酵素活性は検出限界以下であった。次に、Nα4株をSD培地で培養し、対数増殖期の細胞内のγ−グルタミルシステイン及びグルタチオン含有量を測定したが、γ−グルタミルシステインは検出されず、グルタチオンは0.01%であった。また、Nα4株は2mMのメチルグリオキサールに感受性を示したことから、YH1株と同様にγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子が置換されていることが確認された。<2>キャンディダ・ユティリス由来のγ−グルタミルシステイン合成酵素ホモログの発現ベクターの構築キャンディダ・ユティリスの染色体DNAを鋳型としてPCRを行い、キャンディダ・ユティリスのγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子ホモログのORF領域を増幅した。PCRは、Pyrobest(宝酒造)を用いて製造者の指示に従って次の条件で行った。98℃2分→98℃20秒、55℃30秒、72℃2分を40サイクル。N末端側には制限酵素KpnI切断部位を付加したプライマーCGSH1F1(GAG TAC GGT ACC ATG GGG CTG CTA TCA TTA GGG AC)(配列番号50)を、C末端側にはXbaI切断部位CGSH1R1(CCC TTA TCT AGA TTA AGC CTT TGG GTT GTT TAT C)(配列番号51)をそれぞれ用いて前記の条件でPCRを行い、増幅産物をQIAquick PCR purification Kitを用いて精製した。精製したPCR産物及びpAUR123ベクター(宝酒造)を、各々制限酵素KpnI、XbaIで切断した後連結し、大腸菌JM109コンピテントセルを形質転換した。このようにしてCGSH1/pAUR123ベクターを作製した。次に、CGSH1/pAUR123ベクター及びpYES2ベクターを制限酵素BamHIで切断した。CGSH1/pAUR123ベクターからはCGSH1のORFとpAUR123ベクター由来のプロモーターを含む領域を回収し、切断末端を脱リン酸化したpYES2ベクターと連結し、大腸菌JM109コンピテントセルを形質転換した。このようにして、キャンディダ・ユティリスのγ−グルタミルシステイン合成酵素ホモログの発現ベクターCGSH1/pYES2ベクターを作製した(図5)。<3>相補実験次に、CGSH1/pYES2ベクターをNα3株及びNα4株に導入した形質転換体を取得した。Nα3株又はNα4株を前培養した後に、培養物を50mlの液体培地(1mMのグルタチオンを含有するYPD培地)に植え継ぎ、対数増殖期まで培養した。培養菌体を1Mソルビトールに懸濁し、CGSH1/pYES2ベクターを混和して、エレクトロポレーションにより形質転換した。形質転換株を1mMのグルタチオンを含むSDプレートで培養し、生育する株を選択した。Nα3株及びNα4株はウラシル要求性を示し、CGSH1/pYES2ベクターを含有する場合のみSD培地で生育することができる。得られた形質転換体がCGSH1/pYES2ベクターを含有することを常法により確認した。 このようにして、形質転換体Nα3/CGSH1及びNα4/CGSH1株を取得した。Nα3/CGSH1は2mMのメチルグリオキサールに感受性を示したが、Nα4/CGSH1株は2mMのメチルグリオキサールに感受性を示さなかった。また、SD培地で培養したとき、その対数増殖期にNα3/CGSH1株はグルタチオンをほとんど含有しなかったが、Nα4/CGSH1株はグルタチオンを0.4%含有していた。Nα3株はサッカロマイセス・セレビシエのグルタチオン合成酵素に変異が生じグルタチオン合成力が低下しているが、Nα4株はサッカロマイセス・セレビシエのγ−グルタミルシステイン合成酵素に変異が生じグルタチオン合成力が低下していることから、CGSH1はサッカロマイセス・セレビシエのγ−グルタミルシステイン合成酵素を相補することが示された。産業上の利用の可能性本発明により、γ−グルタミルシステインを高含有するキャンディダ・ユティリスが提供される。本発明のキャンディダ・ユティリスを用いることにより、食品の風味改善等の用いることのできる酵母エキスを、安価に製造することができる。【図面の簡単な説明】図1は、キャンディダ・ユティリスのグルタチオン合成酵素遺伝子破壊カセットの構築(前半)を示す図である。図2は、キャンディダ・ユティリスのグルタチオン合成酵素遺伝子破壊カセットの構築(後半)を示す図である。図3は、キャンディダ・ユティリスのγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子置換カセットの構築を示す図である。図4は、キャンディダ・ユティリスのγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子置換株の構築を示す図である。図5は、キャンディダ・ユティリス由来のγ−グルタミルシステイン合成酵素ホモログの発現ベクターの構築を示す図である。 細胞内のグルタチオン合成酵素活性が低下するようにグルタチオン合成酵素をコードする遺伝子が改変され、グルタチオン合成酵素活性が0.005μmol GSH/mgタンパク質/時間以下であり、最小培地で培養したとき、対数増殖期に乾燥菌体当たり1重量%以上のγ−グルタミルシステインを含有するキャンディダ・ユティリスであって、前記グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子は、配列番号17に示す塩基配列を有するDNA、又は配列番号17に示す塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNAであるキャンディダ・ユティリス。 最小培地がSD培地である請求項1記載のキャンディダ・ユティリス。 γ−グルタミルシステイン合成酵素をコードする遺伝子の発現量が上昇するように改変された請求項1又は2に記載のキャンディダ・ユティリスであって、前記γ−グルタミルシステイン合成酵素をコードする遺伝子は、配列番号42に示す塩基配列を有するDNA、又は配列番号42に示す塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNAである、キャンディダ・ユティリス。 請求項1〜3のいずれか一項に記載のキャンディダ・ユティリスを好適な条件で培養し、得られる培養物を用いて酵母エキスに調製することを特徴とする、酵母エキスの製造法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載のキャンディダ・ユティリスを好適な条件で培養し、得られる培養物もしくはその分画物、又は加熱処理した前記培養物又は分画物を、飲食品原料に混合し、飲食品に加工することを特徴とする、γ−グルタミルシステイン又はシステイン含有食品の製造法。配列表