生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_肥満細胞培養物からヘパリンを製造する方法。
出願番号:2003538386
年次:2005
IPC分類:7,C12P19/26,A61K31/727,A61P7/02,C08B37/10


特許情報キャッシュ

キャンス,ピエール グイルラウメ,ジャン−マルク リガル,エレン,モニク,マリー JP 2005506092 公表特許公報(A) 20050303 2003538386 20021022 肥満細胞培養物からヘパリンを製造する方法。 アヴェンティス ファーマ エス.エー. 504146660 AVENTIS PHARMA S.A. 野河 信太郎 100065248 キャンス,ピエール グイルラウメ,ジャン−マルク リガル,エレン,モニク,マリー FR 01/13606 20011022 7 C12P19/26 A61K31/727 A61P7/02 C08B37/10 JP C12P19/26 A61K31/727 A61P7/02 C08B37/10 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,OM,PH,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW FR2002003617 20021022 WO2003035886 20030501 62 20040413 4B064 4C086 4C090 4B064AF21 4B064CA10 4B064CA19 4B064DA01 4C086AA02 4C086AA04 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA06 4C086ZA54 4C090AA04 4C090BA68 4C090BC27 4C090CA42 4C090DA23 【技術分野】【0001】本発明は、細胞培養物からのヘパリンの製造に関する。【背景技術】【0002】ヘパリンは、アミノ糖(D-グルコサミンまたはガラクトサミン)およびウロン酸(D-グルクロン酸またはイズロン酸)でつくられた二糖の列の繰返しを含有する直鎖状の多糖類を含むグリコサミノグリカン(GAG)ファミリーに属する。【0003】ヘパラン硫酸とともにグルコサミノグリカンサブファミリーに属するヘパリンの場合、アミノ糖はD-グルコサミンである。ウロン酸は、グルクロン酸(Glc)またはイズロン酸(Ido)のいずれかである。グルコサミンは、N-アセチル化、N-硫酸化またはO-硫酸化できる。【0004】通常、「ヘパリン」の語は、グルコサミン残基の80%より多くがN-硫酸化され、O-サルフェートの数がN-サルフェートの数より多い、高度に硫酸化された多糖類のことをいう。ヘパリンについて、サルフェート/二糖の比は、通常、2より大きい。しかしながら、ヘパリンの構造は、実際に非常に不均質であり、非常に異なった比を含有する鎖が存在する。【0005】全てのGAGと同様に、ヘパリンはプロテオグリカンの形態で合成される。この合成は、肥満細胞の副次集団、血清または結合組織肥満細胞(CTCM)において優先的に起こる。これらの肥満細胞は、皮膚および呼吸粘膜下組織において豊富である。これらは、非常に長い寿命(少なくとも6ヶ月)を有する。ヘパリンのほかにも、これらはヘパラン硫酸、およびかなりの量のヒスタミン(約10 pg/細胞、動物種による)を含有する。【0006】ヘパリン合成の第一工程は、規則正しく交互になったセリンおよびグリシン残基からなるセルグリシン(serglycine)タンパク核の形成である。ヘパリン鎖の伸長は、オサミンおよびウロン酸の連続した付加により、テトラサッカライドから起こる。このようにして形成されたプロテオグリカンは、多くの連続した変換をうける:N-脱アセチル化、N-硫酸化、D-グルクロン酸エピマー化およびO-硫酸化である。しかしながら、この完全な完成は、プロテオグリカンの部分にのみ起こり、これが不均質性の原因である、ヘパリンの顕著な構造の変化性を生み出す。【0007】次いで多糖の鎖は、エンドグルクロニダーゼによりセルグリシンから切断される。次いでこれらの鎖は、5000〜30000 Daの間の分子量を有する。これらはアルカリプロテアーゼと複合体を形成し、このように肥満細胞顆粒中に貯蔵される。ヘパリンは、肥満細胞の脱顆粒中にのみ放出される。【0008】ヘパリンは、特にホメオスタシスにおいて重要な生物学的役割を果たし、特に抗凝固剤および抗血栓剤として、治療に広く用いられる。現在、用いられているヘパリンのほとんどがブタ腸粘膜から単離されており、ここからタンパク分解で抽出され、それに続いてアニオン交換樹脂で精製される(ヘパリンの製造の種々の方法についての概説には、DUCLOS;"L'Heparine:fabrication, structure, proprietes, analyse";Masson編、Paris、1984参照)。【0009】ヘパリンの本来の不均質性に加えて、それが得られる動物の群の多様性がある。非常に多くの変化性はこれに起因し、特に生物学的活性のレベルに反映される。さらに、原料の充分な供給を定期的に受けることが困難である。【0010】GAGまたはプロテオグリカンを製造するための、哺乳動物由来の細胞の使用はすでに提案されている。つまり、特許出願WO 99/26983は、ラット肥満細胞から、プロテオグリカン(HEP-PG)またはグリコサミノグリカン(HEP-GAG)であるヘパリンタイプの化合物を得ることを記載している。これらの化合物はヘパリンではない。このようにして単離された細胞は、樹立されたラインではない。さらに、出願人は単離した細胞を線維芽細胞と共培養することを推奨している。【0011】WangおよびKovanenによる論文(Circulation Research、84、1、74〜83、1999)は、その中でラット漿液肥満細胞の単離、およびこれらの細胞からのプロテオグリカンの製造を記載している。特許出願WO 99/26983におけるように、プロテオグリカンの製造に用いられる細胞は、樹立されたラインではないが、単離され次いでプロテオグリカンを産生するように刺激された単なる細胞である。【0012】調査報告に引用された特許出願WO 90/14418は、マウス肥満細胞腫から得られた細胞ラインおよびヘパリン製造のためのそれらの使用を記載している。これらの細胞の起源は、したがって腫瘍性であり、衛生問題を提起するであろう。Montgomeryらによる論文(Proc Natl Acad Sci USA、89、23、11327〜11331、1992)も、その中でマウス肥満細胞腫の単離を記載している。【0013】本発明は、一定の品質のヘパリンの調製物の製造を促進し、安定な特徴を持つ均質な原料の簡便に入手可能な源を用いて、上記の欠点を克服し、量および質の点での供給の問題を回避することを提案する。【0014】本発明者らは、ブタ腸粘膜から抽出したヘパリンの特性に匹敵する特性を有する、かなりの量のヘパリンを、肥満細胞ラインの培養物から製造することができることを知った。原料としての細胞培養物の使用は、ヘパリンの合成のための条件の制御、およびそれにより再現性のある特徴を有する製品を得ることも可能にする。【0015】本発明の主題は、ブタ起源の肥満細胞を培養し、得られた培養物からヘパリンを回収することを含むことを特徴とする、ヘパリンを製造する方法である。好ましくは、上記肥満細胞培養物はブタ起源の肥満細胞ラインである。【0016】本明細書における「培養物」の語は、一般に、インビトロで培養された細胞または細胞の組を表す。動物から採取された細胞または組織サンプルから直接作製した培養物は、「初代培養物」とよばれる。「ライン」の語は、継代培養において少なくとも1継代、および通常はいくつかの連続した継代が成功して行われれば用いられ、これに由来するいずれの培養物をも表す (SCHAEFFER、In Vitro Cellular and Developmental Biology、26、91〜101、1990)。【0017】有利には、上記肥満細胞は、ブタ肥満細胞培養物に由来し、特に特許出願FR 0113608および"Cultures de mastocytes de porc et luers utilisations [ブタ肥満細胞培養物およびその使用]"の名称でINRA およびENVAにより本出願と同日にファイルされたPCT出願に記載のようにして得られたブタ肥満細胞培養物に由来する。これらのうち、本発明に従った方法の実行のために好ましいラインは:−受理番号I-2735の下で、INRA (147 rue de l'Universite, 75007 Paris, France)により、2001年10月17日にCNCM (Collection Nationale de Cultures de Microorganismes [National Collection of Cultures of Microorganisms], Pasteur Institut, 26 rue du Docteur Roux, 75724 PARIS CEDEX 15, France)に寄託された、ブタ胎児肝臓幹に由来する肥満細胞のライン;−番号I-2736の下で、INRAにより、2001年10月17日にCNCMに寄託された、ブタ胎児肝臓に由来し、SV40ウイルスT抗原でトランスフェクションされた肥満細胞のライン;−番号I-2734の下で、INRA により、2001年10月17日にCNCMに寄託された、ブタ胎児骨髄に由来し、SV40ウイルスT抗原でトランスフェクションされた肥満細胞のラインである。好ましくは、これらの肥満細胞は漿液肥満細胞である。【0018】これらの肥満細胞は、組み合わせるかまたは別個に用いる、1 ng/ml〜1μg/mlの間の濃度でのSCF(幹細胞因子)、任意の、0.1 ng/ml〜100ng/mlの間の濃度でのIL3 (インターロイキン3)または1 nM〜1μMの間の濃度でのPGE2 (プロスタグランジンE2)のような成長因子を補った合成培地(MEMα/DMEM、RPMI、IMDMなど)中に培養されることが好ましい。培地は、0.5%〜20% (v/v)の間の濃度でのウシ血清を補うこともできる。【0019】培地中のタンパク質濃度および動物起源の化合物の使用に伴う危険を減少させるように、培地へのウシ血清の添加の代わりに、AIMV (INVITROGEN)のような無血清培地を用いることができる(KAMBEら、J. Immunol. Methods、240、101〜10、200)。トランスフォーマーおよび/または不死化剤の作用を介した、細胞の表現型の制御された変異により、血清の添加および/または成長因子の使用に依存しない細胞を得ることが可能である(TSUJIMURA、Pathology International、46、933〜8、1996;PIAOおよびBERNSTEIN、Blood、87(8)、3117〜23、1996)。【0020】肥満細胞は、例えばGRIFFITHSら(Animal Cell Biology、SpierおよびGriffiths編、Academic Press、London、第3巻、179〜220、1986)により記載されたような、真核細胞の大量培養のために開発された技術を用いて培養することができる。PHILIPSら(Large Scale Mammalian Cell Culture、FederおよびTolbert編、Academic Press、Orlando、USA、1985)またはMIZRAHI (Process Biochem、August、9〜12、1983)により記載されたように、数m3より大きい容量のバイオリアクターを用いることもできる。培養は、VAN MEZEL (Nature、216、64〜65、1967)により記載された技術に従って、懸濁物中または微小担体上で行うこともできる。【0021】工業的規模において使用するのにより簡単であるという事実のために真核細胞培養に通常用いられる、回分培養系を用いることもできる(VOGELおよびTODARO、Fermentation and Biochemical Engineering Handbook、第2版、Noyes Publication、Westwood、New Jersey、USA、1997)。これらの系で得られる細胞密度は、通常、106〜5×106細胞/mlである。【0022】回分培養の生産性は、GAG抽出およびヘパリン単離の操作のためにバイオリアクターからいくらかの細胞(70%〜90%)を移し、そして新しい培養を開始させるために残りの細胞を同じバイオリアクターに留めることにより、有利に増加させることができる。この「繰返し回分」培養形態においては、細胞増殖段階の最適パラメータを、細胞中にGAGおよびヘパリンのより顕著な蓄積を許容するものと区別することもできる。【0023】細胞の保持とともに、または保持せずに、連続潅流-供給培養系(continuous perfusion-fed culture system)を用いることもできる(VELEZら、J. Immunol. Methods、102(2)、275〜278、1987;CHAUBARDら、Gen. Eng. News、20、18〜48、2000)。本発明の関係においては、反応器中に細胞の保持を許容し、そして回分培養において得られるものより多い増殖および生産となる潅流-供給培養系を特に用いることができる。保持は、スピンフィルター、中空糸または固体マトリックスタイプの保持システムによりもたらすことができる(WANGら、Cytotechnology、9、41〜49、1992;VELEZら、J. Immunol. Methods、102(2)、275〜278、1987)。得られる細胞密度は、一般に、107〜5×107細胞/mlの間である。バイオリアクター中での培養は、オンライン測定センサーの使用を介して、細胞増殖の物理化学的パラメータ、ならびに細胞内のGAGおよびヘパリンの蓄積のよりよい制御を許容する:pH、pO2、酸化還元、ビタミン、アミノ酸、炭素ベースの基体(例えばグルコース、フラクトース、ガラクトース)のような増殖基体、ラクテートまたは水性アンモニアのような代謝物などである。【0024】これらの条件下で培養3〜30日後、通常は培養3〜10日後に細胞を回収し、そして通常、遠心分離またはろ過によって培地から分離することができる。種々の遠心分離システムを用いることができる;例えばVOGELおよびTODARO (Fermentation and Biochemical Engineering Handbook、第2版、Noyes Publication、Westwood、New Jersey、USA)により記載されたものが挙げられる。代わりに、または遠心分離と組み合わせて、溶液/懸濁液中の他の化合物が通過することを許容しながら同時に細胞の平均径(5〜20μm)より小さい孔のメンブレンを用いる接線微小ろ過(tangential microfiltration)による分離を行うことができる。接線流速およびメンブレンにかける圧力は、分離操作中のメンブレンの詰まりを減少させ、細胞の完全性を保持するために、ほとんどせん断力を発生しないように(レイノルド数が5000秒-1より小さい)選択する。【0025】種々のメンブレンを用いることができ、例えばらせん膜(AMICON、MILLIPORE)、中空糸の平面膜(AMICON、MILLIPORE、SARTORIUS、PALL、GF)である。その孔、電荷またはグラフトが、細胞タンパク質、DNA、ウイルス、または他の巨大分子のような、培地中に存在する可能性がある夾雑物に関して分離および最初の精製を行うことを可能にするメンブレンを選択することも可能である。【0026】細胞内の内容物にGAGおよびヘパリンを保存することを可能にする製造ならびに細胞回収の方法を用いることができる;しかしながら、GAGおよびヘパリンは、細胞の溶解または脱顆粒の後に培地から回収することもできる。脱顆粒は、肥満細胞の表面に存在する受容体への特異的リガンドの結合により起こすことができ、例えばアレルゲンタイプの剤(IgE Fcフラグメントまたはこのフラグメントのアナログのような)の、肥満細胞IgE受容体への結合である。全てもしくはいくらかの肥満細胞の脱顆粒または溶解により、ヘパリンが細胞内の内容物から放出され、そして分離工程のときに培地中に存在する場合、より小さい孔のメンブレンの使用も考えられる。この場合、サイズおよび分子量ならびに任意の電荷または生物学的特性の機能により、その機構および孔がヘパリンを濃縮し、それを培地中に存在する他の種から分離することを可能にする1つ以上のメンブレンでの限外ろ過からなる工程と、細胞の分離を組み合わせることができる。【0027】この実施形態の関係において、メンブレンのカットオフ閾値は、好ましくは1000〜5 kDaである。微小ろ過に用いるものと類似のメンブレンシステムを用いることができ、例えばらせん膜、中空糸の平面膜である。有利には、その電荷特性またはヘパリンへの親和性を示すリガンド(例えば抗体、ATIII、レクチン、ペプチド、ヌクレオチドなど)のグラフトの特性のために、ヘパリンを分離して精製することを可能にするメンブレンを用いることができる。【0028】他の剤も肥満細胞の脱顆粒を誘導することができる。これらの剤は、細胞毒性の剤、酵素、多糖類、レクチン、アナフィラトキシン、塩基性化合物(コンパウンド48/80、サブスタンスPなど)、カルシウム(A23187イオノフォア、イオノマイシンなど)のようないくつかのカテゴリーに分類することができる[D. LagunoffおよびT. W. Martin、1983、Agents that release histamine from mast cells. Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol.、23:331〜51]。脱顆粒剤を、培養物中に維持されている同じ細胞に繰返し用いることができる。この製造方法において、上清からの回収方法の単純化、および培養物中での細胞の維持により、生産性はかなり上昇する。【0029】A23187イオノフォアの特定の場合において、肥満細胞の脱顆粒は、例えば2×106肥満細胞/mlを1〜100μg/mlの間の濃度のA23187イオノフォアで、1分〜4時間の範囲の作用時間で処理することにより、誘導することができる。【0030】肥満細胞の溶解は、例えば低張液もしくは高張液を用いた浸透圧衝撃により、熱的衝撃(凍結/融解)により、機械的衝撃により(例えば超音波破砕もしくは圧力変化)、化学薬品の作用により(NaOH、THESIT(登録商標)、NP40(登録商標)、TWEEN 20(登録商標)、BRIJ-58(登録商標)、TRITON X(登録商標)-100など)、もしくは酵素溶解(パパイン、トリプシンなど)、またはこれらの方法の2つ以上の組み合わせにより、誘導することができる。【0031】細胞溶解物からヘパリンを抽出し精製するために、セルグリシン核から多糖鎖を分離するために、そして抽出溶媒中に存在する他のGAGからヘパリン鎖を分離するために、それら自体が公知であり、DUCLOS(上記)による手引のような通常の研究において記載される、動物組織からのヘパリンの抽出および精製の関係において用いられるものと同様の方法を用いることができる。【0032】限定しない例として、核酸および細胞タンパク質からヘパリンを分離するために、そしてそれを溶解するため、すなわちセルグリシン核との結合を破壊するために:−細胞溶解物を1つ以上の酵素消化(プロナーゼ、トリプシン、パパインなど)に供することができる;−ヘパリン−タンパク質結合は、アルカリ媒質中に、サルフェートまたはクロライドの存在下に加水分解することができる;−細胞起源の核酸およびタンパク質を破壊するために、酸媒質中に処理を行うこともでき(例えば冷却条件下でのトリクロロ酢酸とともに用いる)、これにGAG-タンパク質相互作用を解離することを可能にするイオン性溶液の使用を追加することができる;−酵素加水分解の後に、可溶化されたヘパリンを精製するためにグアニジン抽出を行うこともでき、例えば酢酸カリウム、4級アンモニウム、アセトンなどとともにそれを沈殿させることができる。【0033】有利には、これらの精製工程は、1つ以上のクロマトグラフィー工程、特にアニオン交換クロマトグラフィーまたは親和性クロマトグラフィー工程をそれらに追加するか、またはこれらで置き換えることもできる。【0034】本発明の主題は、本発明の方法を用いて肥満細胞培養物から得ることができるヘパリンの調製物である。本発明によるヘパリンの調製物は、動物組織から従来技術において得られるヘパリン調製物のものに匹敵する生物学的特性を有し、ヘパリンの通常の使用の全てに用いることができる。【0035】本発明は、肥満細胞培養物からのヘパリンの製造および得られたヘパリンの特性決定に言及する、以下に続く付加的な記載によってさらに明確に理解される。実施例1:肥満細胞培養物からのヘパリンの抽出肥満細胞の培養ブタ胎児肝臓肥満細胞ラインおよびSV40ウイルスT抗原でトランスフェクションしたブタ胎児肝臓肥満細胞のライン(それぞれCNCM I-2735およびCNCM I-2736)を用いた。細胞を、ブタIL3 (2 ng/ml)およびブタSCF (80 ng/ml)の存在下に、完全MEMα培地中に105〜5×105細胞/mlの割合で播種する。培養物を、培養ディッシュまたは1リットルのスピナーフラスコ中に調製する。細胞の増殖を毎日、4〜12日間監視する。培養物中に産生されるグリコサミノグリカンを分析することにより、ヘパリンの産生量を並行して監視する。結果を図1〜5に示す。【0036】図1、2および3は、ディッシュ中の静置培養(図1;最初の播種:◆:1×105細胞;■:2×105細胞)、およびフラスコ中での懸濁培養(図2)での肝臓肥満細胞の増殖、ならびにフラスコ中での懸濁培養でのトランスフェクションされた肝臓肥満細胞の増殖(図3)を示す。これらの実験において、フラスコ中での懸濁培養物は、約8×105 (トランスフェクションしていない細胞)〜1.5×106細胞/ml (トランスフェクションした細胞)の範囲の最大細胞密度を示す。指数増殖段階中に算出された倍加時間は、24〜48時間の間である。【0037】グリコサミノグリカンの精製プロテオグリカンを切断し、イオン性のGAG/タンパク質相互作用を回避するために、細胞を塩の存在下にアルカリ媒質中で加水分解する。この処理は次の工程を含む:1. 食塩水媒質中での水酸化ナトリウムによる処理:この工程は、細胞の破壊およびヘパリンとその母タンパク質との間の結合の切断を目的とする。この工程は、106細胞のペレットへの1M NaOH 100μlの添加および0.5M NaCl 800μlの添加を含む。このようにして得られた混合物を、80℃の水浴で30分間加熱し、次いで5分間超音波破砕し、その後1N HClで中和する。【0038】2. 抽出:加水分解されたサンプルを、ヘパリンを保持するアニオン交換樹脂カラム(SAX、Varian)にロードする。カラムを、タンパク質および他のGAG、特にデルマタンを除去するために、0.5M NaClを含むTris/HClバッファー、pH 7.4で3回洗浄する。ついでヘパリンを3M NaClを含むTris/HClバッファー、pH 7.4、1mlで溶出する。3. 脱塩/凍結乾燥:塩化ナトリウムの除去(以下に記載の分析方法のいくつかを適用することができるために必要)を、SEPHADEX G10ゲル上での立体配置排除クロマトグラフィーにより行い、その後、電気伝導度測定を行う。回収したヘパリンフラクションは、次いでサンプルを濃縮するように凍結乾燥する。【0039】ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析この技術は、GAGをそのサイズおよびその電荷により分離することを可能にし、ヘパリンの存在、または非存在を迅速に確かめるための試験を構成する。上記のようにして得られた精製された調製物を、デポジット(deposit)当たり20μlの調製物の割合で、30〜1 kDaの分子を分離するためのTris/トリシンポリアクリルアミドゲル(10〜20%の勾配)にロードする。デルマタン25 ng、ならびにSPIM標準ブタヘパリン(腸粘膜からのブタヘパリンの第4次国際標準) 25 ng、ならびにブタ粘膜から抽出し、水酸化ナトリウムでの処理および上述したのと同じ条件下でのアニオン交換樹脂上での精製により精製したヘパリン 25 ngを、同じゲル上にロードする。【0040】AL-HAKIMおよびLINHARDT (Applied and Theoretical Electrophoresis 1、305〜12、1991)に記載のようなアルシアンブルーの溶液、次いで硝酸銀での二重染色は、グリコサミノグリカンを明らかにすることを可能にする(硝酸銀のみではタンパク質を明らかにするだけである)。次いでゲルをスキャナー(BIO-RAD)で分析して、種々のGAGを定量する。ヘパリンの定量限界は、バンド当たり10 ngである。実験の結果を、以下の表1にまとめるが、ここでは細胞により産生されたヘパリンの量はμg/ 106細胞として表す。【0041】【表1】【0042】これらの結果は、図4にも示す(カーブ=細胞集団;バー=ヘパリン産生)。図4は、ディッシュ中の静置培養での肝臓肥満細胞の増殖の間のヘパリン産生を示す。通常みられるヘパリン濃度は、静置培養または懸濁培養において106細胞当たり2〜14μgの間である。【0043】実施例2:肥満細胞培養物から得られたヘパリンの調製物の特性決定HPLCによる二糖のプロフィール二糖の組成は、ヘパリンを他のグリコサミノグリカンと差別化することを可能にする。培養物中の肥満細胞により産生されたグリコサミノグリカンの二糖プロフィールは、LINHARDTら(Biomethods、9、183〜97、1997)により記載された方法に従って決定した。上記の実施例1に記載のようにして得られたGAG調製物は、フラボバクテリウム・ヘパリニウム(Flavobacterium heparinium)のヘパリナーゼ(ヘパリナーゼI、IIおよびIII、GRAMPIAN ENZYMES)の混合物を用いて解重合した。用いた条件は、上記のLINHARDTらによる出版物に記載されている。コントロールとして、SPIM標準ヘパリンを、同じ条件下で解重合した。これらの条件下で解重合は終了し、二糖を産生する。N-硫酸化またはN-アセチル化のいずれかをうけた、8個の主な二糖類を、図5に示す。【0044】UV検出これらの二糖類を、LINHARDTら(上記)により記載されたようにして、アニオン交換カラムでのHPLCにより分離して同定する。結果を図6に示すが、これは、標準ヘパリンの二糖プロフィール(□)と比較した、胎児肝臓由来の肥満細胞のフラスコ培養により製造されたヘパリンの調製物の二糖プロフィール(■)を表す。これらの結果は、SPIM参照ブタヘパリンに存在する二糖の全てが、割合が異なるが、肥満細胞ヘパリン中にも存在することを示す。IS/IIS比は、3.7である。【0045】蛍光検出蛍光検出による類似の方法は、ヘパリンの特徴であるISおよびIIS二糖のみを定量すること、およびその比を算出することを可能にする。酵素的解重合およびHPLC分離を、上記と同様にして行う。分離の後に、グアニジンとの蛍光複合体を形成するように、カラム後誘導体化を行う。この技術による最も強い応答因子を有するISトリ硫酸化二糖が検出され、既知の濃度の標準ヘパリン溶液に対して定量される。本方法の検出限界は、細胞培養物サンプル中のヘパリン5 ng/mlのオーダーである。以下の表2は、時間中の細胞培養物のIS/IIS比を表す。【0046】【表2】【0047】実施例3:抗Xaおよび抗IIa活性の測定による、ヘパリンの生物学的特性決定生物学的活性第XaおよびIIa因子の不活性化はヘパリンの特徴であり、それをヘパラン硫酸およびデルマタンから区別することを可能にする。用いる方法は、欧州薬局方第3版(1997)、monograph on low molecular weight heparinsに記載されたものである。反応は、3工程でおこる:1. ATIII + ヘパリン → [ATIII - ヘパリン]2. [ATIII - ヘパリン] + 因子(過剰) → [ATIII - ヘパリン - 因子] + 因子(残存)3. 因子(残存) + 発色団基質 → pNA放出されたパラニトロアニリン(pNA)の量を405 nmで測定する。これは、ヘパリンの量に逆比例する。抗Xaまたは抗IIa活性を、SPIM標準を用いて創った検量直線に関して評価した。本方法の感度は、0.006 IU/mlである。得られた結果を以下の表3に示す。【0048】【表3】【0049】培養物中の肥満細胞から得られたヘパリンの抗Xaまたは抗IIa活性を、ブタ粘膜から得られたヘパリンもしくは標準ヘパリンの抗Xaまたは抗IIa活性と、それぞれ比較した。結果を以下の表4に示す。【0050】【表4】【0051】ATIII結合の特性決定LEEおよびLANDER (Proc. Natl. Acad. Sci.、88、2768〜72、1991)に記載されたような電気泳動技術を用いた移動シフトにより、ヘパリンとATIIIの間の結合が証明される。電気泳動は、pH 3の溶液(酢酸/水酸化リチウム)の中の0.8%アガロースゲル上で行う。584〜183μg/mlの減少する濃度のATIII (ヒト起源;BIOGENIC)溶液100μlを、試験されるサンプル100μlに添加する。サンプルの100μlデポジットをロードする。移動は、100ボルトで30分間である。ゲルを0.1%ヘキサデシルトリメチルアンモニウム ブロミド(CETAVLON-SIGMA)の溶液で固定する。Azure A (水中に0.08%)で、明示を行う。ゲルをスキャンし、QUANTITY ONEソフトウェア(BIO-RAD)を用いて処理する。結果を、ATIIIに結合したヘパリンの%で表す。トランスフェクションされた肝臓細胞のフラスコ培養の場合に得られた結果を、図7に示す。標準ヘパリン(SPIM)の存在下では31%のATIII結合(理論値33%)が、そして培養物(混成物)中の肥満細胞から得られたヘパリンの存在下では27%のATIII結合が観察される。【0052】実施例4:繰返し回分バイオリアクターでの肥満細胞の培養ブタ胎児肝臓に由来する肥満細胞のトランスフェクションしていないラインを用いた。細胞を、ブタIL3 (2 ng/ml)およびブタSCF (80 ng/ml)を補った完全DMEM/F12培地中に、ml当たり2.0〜4.0×105細胞の割合で播種する。用いたバイオリアクターは、2リットルの培地容量を有し、培養物の酸素圧力は飽和の20%〜40%の間に維持され、pHは7.0〜7.4の間に維持され、温度は、バイオリアクタージャケット内の、サーモスタットで調温した水の循環により37℃±0.5℃に維持される。培養物は、80〜150 rpmの間の速度で、プロペラを用いて攪拌する。【0053】4日間の培養後、細胞密度は1.3×106細胞/mlであり、これは24〜48時間の間の倍加時間に相当する。回収の日に、繰返し回分製造の操作について記載したように、培養物の80%をヘパリン抽出のために移し、培養物の残りをバイオリアクター中に保存し、2.0〜3.0×105細胞/mlの間の濃度まで新鮮な培地で希釈する。繰返し回分形態における希釈の3日後に、細胞密度9.0×105細胞/mlを得て、これは24〜48時間の間の倍加時間に相当し、最初の培養に匹敵する(図8)。ヘパリンを実施例1に記載のようにして精製する。次いで、精製したヘパリンを、実施例2に記載のようにして、コントロールとしてSPIM標準ヘパリンを用いてHPLCで分析する。【0054】表5および図9は、SPIM標準ヘパリン(□)について得られたプロフィールと比較した、ブタ胎児肝臓(■)由来の肥満細胞の懸濁培養により製造されたヘパリンの調製物の二糖のプロフィールおよびセルグリシン(Gly-Ser)タンパク核の割合を示す。【0055】表6は、SPIM標準ヘパリンの二糖のものと比較した、ブタ胎児肝臓由来の肥満細胞の懸濁培養により製造されたヘパリンの二糖のN-アセチル化、N-硫酸化およびO-硫酸化のプロフィールを示す。【0056】【表5】【0057】【表6】【0058】SV40ウイルスT抗原でトランスフェクションした肥満細胞のラインを用いた場合に、類似の結果が得られる。【0059】実施例5:脱顆粒剤を用いた、培養上清中のヘパリンの製造トランスフェクションされていない胎児肝臓肥満細胞のラインについて実験を行った。762日目(最初の培養から計数して)に、肥満細胞の濃度を2×106細胞/mlに調整し、培養物を、肥満細胞の脱顆粒を誘導する4μg/mlのイオノフォアA23187を含む、MEM培地中に1時間インキュベートした。細胞により産生された全体のGAGおよび分泌されたGAGを、PAGEにより定量する。図10は、未処理の細胞(0μg/mlのA23187)中の約10%に対して、イオノフォアA23187で処理した後の上清中にGAGの70〜75%が見出されることを示す。【0060】培養762日目にGAGの回収を行った肥満細胞を、再び培養に付した。生存力または増殖速度の損失は観察されなかった。21日後に、これらの肥満細胞をさらに脱顆粒に供し、上述のようにしてGAGを分析した。762日目に脱顆粒をうけていない、同じ齢の肥満細胞培養物をコントロールとして用いた。結果を図10に示すが、これは分泌されたGAGのパーセンテージが最初の脱顆粒の間に得られたものに匹敵し、同じ齢のコントロール細胞で得られたものにも匹敵することを示す。SV40ウイルスT抗原でトランスフェクションされた肥満細胞のラインを用いた場合に、類似の結果が得られる。【図面の簡単な説明】【0061】【図1】図1は、ディッシュ中の静置培養(最初の播種:◆:1×105細胞;■:2×105細胞) での肝臓肥満細胞の増殖を示す。【図2】図2は、フラスコ中での懸濁培養での肝臓肥満細胞の増殖を示す。【図3】図3は、フラスコ中での懸濁培養でのトランスフェクションされた肝臓肥満細胞の増殖を示す。【図4】図4は、ディッシュ中の静置培養での肝臓肥満細胞の増殖の間のヘパリン産生を示す。【図5】図5は、N-硫酸化またはN-アセチル化のいずれかをうけた、8個の主な二糖類を示す。【図6】図6は、標準ヘパリンの二糖プロフィール(□)と比較した、胎児肝臓由来の肥満細胞のフラスコ培養により産生されたヘパリンの調製物の二糖プロフィール(■)を表す。【図7】図7は、トランスフェクションされた肝臓細胞のフラスコ培養の場合に得られた結果を示す。【図9】図9は、SPIM標準ヘパリン(□)について得られたプロフィールと比較した、ブタ胎児肝臓(■)由来の肥満細胞の懸濁培養により製造されたヘパリンの調製物の二糖のプロフィールおよびセルグリシン(Gly-Ser)タンパク核の割合を示す。 ブタ起源の肥満細胞を培養し、得られた培養物からヘパリンを回収することを含むことを特徴とするヘパリンを製造する方法。 肥満細胞の培養物が、ブタ起源の肥満細胞ラインであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 肥満細胞が、ブタ胎児骨髄またはブタ胎児肝臓に由来することを特徴とする請求項1および2のいずれか1項に記載の方法。 肥満細胞が、漿液肥満細胞であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 肥満細胞が、−受託番号I-2735の下で、2001年10月17日にCNCM(ナショナルコレクション・オブ・カルチャーズ・オブ・マイクロオーガニズムズ)に寄託されたライン;−受託番号I-2736の下で、2001年10月17日にCNCMに寄託されたライン;−受託番号I-2734の下で、2001年10月17日にCNCMに寄託されたラインから選択される肥満細胞ラインに由来することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により得ることができるヘパリンの調製物。 本発明は、肥満細胞、特にブタ肥満細胞培養物からのヘパリンの産生に関する。


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