タイトル: | 特許公報(B2)_新規なセレノシステイン含有タンパク質 |
出願番号: | 2003532683 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 9/02,A61K 38/44,A61P 9/00,A61P 9/10,A61P 25/28,A61P 29/00,A61P 35/00,A61P 37/06,A61P 39/06 |
上仲 小玲 上仲 一義 平嶋 正樹 前田 浩明 野崎 周英 高橋 和彦 JP 4199662 特許公報(B2) 20081010 2003532683 20020912 新規なセレノシステイン含有タンパク質 財団法人化学及血清療法研究所 000173555 田村 恭生 100068526 坪井 有四郎 100076521 品川 永敏 100126778 上仲 小玲 上仲 一義 平嶋 正樹 前田 浩明 野崎 周英 高橋 和彦 JP 2001278749 20010913 20081217 C12N 15/09 20060101AFI20081127BHJP C12N 9/02 20060101ALI20081127BHJP A61K 38/44 20060101ALN20081127BHJP A61P 9/00 20060101ALN20081127BHJP A61P 9/10 20060101ALN20081127BHJP A61P 25/28 20060101ALN20081127BHJP A61P 29/00 20060101ALN20081127BHJP A61P 35/00 20060101ALN20081127BHJP A61P 37/06 20060101ALN20081127BHJP A61P 39/06 20060101ALN20081127BHJP JPC12N15/00 AC12N9/02A61K37/50A61P9/00A61P9/10 101A61P25/28A61P29/00A61P35/00A61P37/06A61P39/06 C12N 15/00-15/90 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) G-Search HURST R.,BIOCHEM. J.,1999年,V338,P723-728 HAZEBROUCK S.,J. BIOL. CHEM.,2000年,V275 N37,P28715-28721 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.90(1993)p.537-541 DEAGEN J. T.,J. INORG. BIOCHEM.,1991年,V41 N4,P261-268 7 JP2002009313 20020912 WO2003029469 20030410 27 20050901 三原 健治 技術分野本願発明は、医療用薬剤の分野に属す新規なタンパク質に関し、詳細にはセレノシステイン非含有タンパク質にセレノシステインを導入して作られた、酵素活性を有する新規な物質に関するものである。さらに詳細には、所望の位置にセレノシステインコドンを有するセレノシステイン非含有タンパク質のコーディング配列と、その3’側に位置するセレノシステイン挿入配列(SECIS)からなる遺伝子とその発現タンパク質に関する。好適にはアルブミンにセレノシステインを導入した過酸化リン脂質還元活性を有するセレノシステイン含有タンパク質及びその遺伝子に関する。本願発明は酸化ストレスに関連した各種疾病に対する病態悪化阻止、予防または治療剤等医薬品の提供を可能ならしめるものである。背景技術近年、活性酸素種、フリーラジカルによる生体分子の酸化的傷害と疾患の関係が、例えば、老化、炎症、自己免疫疾患、発ガン、虚血再灌流障害、神経変性、動脈硬化、糖尿病、白内障または筋萎縮などで次々と明らかにされてきた。前記のような病態では、病因となる酸化ストレスに対抗するために様々な生体内抗酸化物質が働いている。タンパク質では、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)、セルロプラスミンなど、低分子として、グルタチオン(GSH)、ビタミンEやC等が知られている。また、アルブミンにも抗酸化作用が知られている。ヒト血清アルブミン(HSA)は、初め609残基のプレプロタンパク質として生合成され、まず、シグナルペプチダーゼによってN末端側の18残基が、さらに、続く6残基が分泌経路を経る間に切断除去され、血漿中には585個のアミノ酸残基を持った成熟型アルブミンとして存在する。アルブミンは全血漿タンパク質(7.5−8.0g/100ml)の約50−60%を占め、血漿中には生体内での全量の約40%が存在し、残りの60%は細胞外間腔に存在することから、生体内で量的に重要な抗酸化作用を担っていると考えられている。アルブミンの抗酸化能力は、酸化還元緩衝機能が中心であると言われている。生体や細胞内は嫌気的でかなり酸素濃度の低い状態である。生命現象は、このような還元的な環境下で行われており、そのために、酸化還元状態の絶妙なバランスが必要である。例えばGSHは分子内にSH基を1個有し、これを利用して細胞内を還元状態にしている。アルブミンも34番目(成熟型アルブミンのN末端側から数えて)のシステイン(Cys34)がフリー(還元型)で、GSHと同様、その圧倒的な量を利用して、生体内が酸化的な状態に傾くのを防ぎ、生体内を還元状態に保っている。最近、アルブミンには過酸化リン脂質を還元する酵素活性があることが判明し、その活性中心がCys34であることが示された(R.HURSTら、Biochem.J.,338,723(1999))。正常な成人男子の場合、アルブミンの約75%がフリーCys34を持っているが、この割合は、加齢とともに変化し、老人になるほどフリーCys34が減少することが知られている。このバランスは、ある種の疾患では、例えば、慢性の肝臓病や腎不全では還元型のアルブミンが大きく減少していることが認められている。また、酸化ストレス疾患の一種である敗血症患者中のアルブミンでは還元型が健常人に比べて減っており、それに伴って過酸化リン脂質還元活性も低下していることが示されている。このように、生体の恒常性や酸化ストレス疾患でのアルブミンの重要性が認められている。発明の開示(発明が解決しようとする技術的課題)しかし、還元型SH基はアルブミン1分子につき1個であるので、臨床効果を上げるためには大量のアルブミン投与が必要となる。アルブミン製剤の大量投与には倫理的にも生理的にも限界があり、また大量投与にともなう副作用が知られている。例えば、アルブミン濃度4g/dl以上の投与では、生体のアルブミン合成能が抑制され、免疫抑制をも惹起することがある。また、高濃度や大量の輸注では血圧低下や心不全など心臓への負担が増大する。このような、副作用を防ぐためには、抗酸化能力を高めたアルブミンが必要とされ、アルブミンの機能改変が望まれている。しかし、現実には、そのような機能改変したアルブミンは一切知られていなかった。なお、本明細書の記述は、「抗酸化物質の全て」吉川敏一編、先端医学社;「臨床アルブミン学」渡邊明治編、メディカルビュー社;「マルチ機能タンパク質:血清アルブミン」恵良聖一著、共立出版;「All about Albumin」T.Peters,JR、ACADEMIC PRESS;「医学大辞典」CD−ROM版、南山堂;「最新医学大辞典」CD−ROM第2版、医歯薬出版、の記述を参考にした。(その解決方法)上述の状況の下、本願発明者等は、新たな抗酸化ストレス剤、とりわけ過酸化脂質の関わる疾患に対する治療薬を供するべく鋭意研究した結果、ヒトアルブミンのCys34の代わりに、Cysのイオウ(S)がセレン(Se)に置き換わったアミノ酸であるセレノシステイン(以下、「Sec」という)を導入することに成功し、その改変アルブミンに、従来報告されていなかった高活性の過酸化リン脂質還元活性を見出した。このように、Sec非含有タンパク質にSecを導入することで新たな抗酸化活性を持った物質を作ることができることを見出し、この知見に基づいて本願発明を完成するに至った。発明を実施するための最良の形態本願発明の酵素活性を有する新たなタンパク質は、Sec非含有タンパク質を基本骨格とし、当該タンパク質の1以上のCysがSecに置換されるかあるいは1以上のSecの挿入または置換によって形成され、且つ酵素活性を有することを特徴とする組換えSec含有タンパク質であり、好適には当該酵素活性は過酸化リン脂質還元活性であり、基本骨格となるSec非含有タンパク質はアルブミンである。さらに、本願発明においては前記組換えSec含有タンパク質をコードする遺伝子及び当該遺伝子を利用した組換えSec含有タンパク質の調製方法をも提供する。本発明者らは、Cys34の機能を高めるために、Cys34のSをSeに変化させることを考案した。Seは、周期率表で酸素(O)、Sと同族元素でそれらの下に位置し、Seの性質はSと原子径の大きさ以外極めて類似した性質をもち、明確な差は認められない。しかし、CysのSをSeに置き換えたSecのセレノールは求核反応により過酸化物を還元できるが、その還元力はSをもつCysよりもはるかに強いとされている。また、Secの場合、セレノールのpKaは5.24であるのに対し、CysのチオールのpKaは8.25である。すなわち、生体内環境である中性付近では、Cysのチオールはほとんど解離していないが、Secのセレノールはほとんどイオン化している。本発明者らは、このようなSeとSの性質の差に着目して、アルブミンの抗酸化機能を強化することが可能であると考えた。CysのSをSeに変換する方法として、大きく3つの方法が考えられる。1番目の方法は、生体や細胞、あるいは無細胞などの蛋白合成系を利用する方法である。前述のようにSeとSは非常に類似した物理的性質を持っているため、過剰の無機Se存在下では、アミノ酸の生合成システムが無差別的にSの代わりにSeを取り込んでしまうことがある。すなわち、無機Se等として過剰なSe源を生体に直接投与するか、動物細胞や酵母などの真核細胞の細胞培養系に混合させると、ある一定の確率で、CysのSの代わりにSeを取り込みSecが作られる。しかし、この方法ではSを持っているメチオニンなどもセレノメチオニンになるなど、取り込みをコントロールすることが難しい。2番目の方法は、化学的な反応によってSecを導入する方法である。この方法はセリンをターゲットに、このアミノ酸をSecに化学的修飾で変換する方法である。具体的には、目的のタンパク質を、PMSF(phenylmethanesulfonylfluoride)処理後、H2Se(もしくは、NaHSeとH2O2)処理することで、セリンをSecに変換することができる(Z.P.WuおよびD.Hilvert,111,4513(1989))。この方法を用いて、GSH結合抗体の軽鎖のセリンをSecに変換したり(G.M.Luoら、Biochem.Biophys.Res.Commun.198,1240(1994))、セレリンプロテアーゼであるスブチリシンの活性中心である221番目のセリンをSecに変換して(Z.P.WuおよびD.Hilvert,112,5647(1990))、ともに過酸化物還元活性のある酵素を作出している。しかし、この方法は、セリンしかターゲットにすることができず、また、部位特異的に修飾を加えることが難しい。3番目の方法は、遺伝子組換え技術を利用する方法である。Secは終止コドンUGAでコードされており、ユニークな機構によって翻訳される(J.F.AtkinsおよびR.F.Gesteland,Nature,407,463(2000))。セレノプロテインのmRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)には、ステムループ構造を取りうるセレノシステイン挿入配列(SECIS)と呼ばれる配列が存在している。SECISを削除すると翻訳が終止することから、この配列の存在がコドンUGAを終止ではなくセレノシステイン挿入として認識させるのに必須であることが知られている(M.J.BerryらNature vol.353,p.273(1991);M.J.BerryらEMBO J.vol.12,p.3315(1993))。真核生物のUGA翻訳機構には最低3つの因子が関わっていると考えられる。すなわちUGAのアンチコドンを持つSec−tRNA(B.J.LeeらJ.Biol.Chem.264、9724(1989))、このtRNAに特異的に結合する伸長因子(eEFSec)(D.FagegaltierらEMBO J.19,4796(2000))およびSECISに結合するタンパク質(SBP2)(P.R.CopelandらEMBO J.19,306(2000))である。AUGから翻訳が開始し、ポリペプチドがUGAまで合成されると、SECIS−SBP2複合体と結合しているeEFSecからSec−tRNAが供給される。ポリペプチド鎖にSecが結合し、Sec挿入後も翻訳は継続し、UGA以外の終止コドンで翻訳が終止する。すなわち、3番目の方法は、このようなSec含有タンパク質の生合成メカニズムを利用する方法である。これら3つの方法はいずれも、Sec導入方法として使用できるが、最後の方法が、前者2つの方法と比べ、確実に、しかも位置特異的にSecを導入することができるので、最も好適な方法として挙げられる。本発明者らは、前述の3番目の原理方法を利用し、抗酸化活性を持ち所望の位置にSecを有するタンパク質を作出する方法として、Sec非含有タンパク質のコーディング配列遺伝子の所望の位置にSecのコドンTGAを挿入し、そのコーディング配列の3’側にSECIS配列を持つ遺伝子を構築し、これを動物細胞で発現させる方法を考案した。さらに詳細には、基本骨格となるタンパク質は、GSHなどのチオール供与体を介して、過酸化物を還元する活性を少しでも持つSec非含有タンパク質なら、どのようなタンパク質、たとえ人工的に作られたアブザイムのような酵素活性をもつ抗体でも、その対象となりうる。アルブミンがその好適な材料として挙げられる。そのようなタンパク質の中でSecを導入する位置は、コドンとアミノ酸配列のフレームが一致する位置ならばどの位置でもよく、その数にも左右されない。望ましくは、活性中心となっているCysやセリンなどのアミノ酸がよく、アルブミンの場合には34番目のCysが最適である。そのような望ましい配列を持ったSec含有成熟型アルブミンのアミノ酸配列として配列番号9の配列を例示することができる。SECIS配列の導入位置はアミノ酸コーディング配列の3’側ならどの位置でもよく、SECIS配列も、セレノプロテイン類の遺伝子由来ならどのSECIS配列でも使用可能である。また、その数にも限定はなく、組合せも自由であるが、セレノプロテインPの3’非翻訳領域を使用するのが望ましい。発現調節領域となるプロモーターやエンハンサー、さらにはポリA付加シグナルなど遺伝子発現に必要なエレメントには特別な限定はなく、動物細胞用ならいかなるエレメントも使用可能である。そのようにしてデザイン、構築された遺伝子は、リポフェクチン法やエレクトロポレーションなど一般的な方法で、動物細胞に導入することができ、導入すべき動物細胞にも限定はない。しかし、そのような導入細胞の培養条件として、亜セレン酸や他のセレノプロテイン類などSe源となるサプリメントが必要である。以上述べてきた方法によって、新たな機能タンパク質として、Secを持った新規なタンパク質を作ることが可能である。これらの方法で作られたSec含有タンパク質は、抗酸化活性をもつ新規なタンパク質であり、特にアルブミンを基本骨格にしたものはチオール供与体存在下で過酸化リン脂質還元活性をもつ新規タンパク質である。産業上の利用の可能性本願発明の新規タンパク質は、活性酸素種、フリーラジカルによる生体分子の酸化的傷害いわゆる酸化ストレスの関わる疾患全般に治療及び予防薬として利用可能である。とりわけ、老化、炎症、発ガン、自己免疫疾患、虚血再灌流障害、神経変性、動脈硬化などの病態に対する好適な治療薬として提供される。例えば、心筋梗塞、脳梗塞や臓器移植など再灌流障害が観察される疾病、AIDS、神経変性症(パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄小脳変性症など)など細胞死や酸化ストレスの関わる疾患、喘息、リウマチなどの免疫疾患、敗血症など炎症性疾患などが挙げられる。また、Secを含有していることから、セレン要求性の高い組織器官(脳神経、心臓、筋肉、免疫系、生殖)に関する疾患にも適応可能である。さらに、従来のアルブミン製剤の対象としていた、出血性や外傷性のショック、侵襲の大きな手術、肝硬変、ネフローゼなどに対しても適応可能である。以下に、実施例を挙げて本願発明をさらに具体的に説明する。なお、以下に示す実施例では、特に断りのない限り、和光純薬、宝酒造、東洋紡およびNew England BioLabs社、ファルマシア社、バイオラド社、シグマ社、ギブコBRL社製の試薬を使用した。実施例1(改変アルブミン遺伝子の構築)(1)セレノプロテインP(SeP)3’非翻訳領域を含有するベクターヒトSeP cDNAの5’末端に制限酵素XhoI、HindIII認識配列を、3’末端にBamHI、BglII認識配列、マウスセレノプロテインP poly A付加シグナルを付加するために、ヒトSeP cDNAが挿入されたプラスミドSeP/pBluescript(北海道大学薬学部高橋和彦助教授より供与)を鋳型に下記配列をプライマーとしてPCRを実施した(図1)。サーマルサイクラーにはアステックprogram temp control system PC−800を、DNAポリメラーゼにはLATaq(TAKARA社)を用い、試薬濃度はキット添付プロトコールに従い、温度条件96℃20秒、68℃3分の25サイクル、68℃5分の1サイクルでPCRした。得られた約2kbpの増幅断片をTOPO TAcloning kit(Invitrogen社)の手法に従いpCR2.1 vectorにクローニングした。得られたクローンについて、M13 reverceおよびT7をプライマーとして、挿入断片の5’末端から約200bpのPvuII認識配列までと、3’末端から約100bpのBsmI認識配列までのDNA配列を解析した。解析結果から正しい配列が付加されたDNAクローンを選択し、XhoI/BglIIで消化し、得られた約2.1kbpの断片をpSP72ベクターに組み込んだ(p201:図2)。SeP/pBluescriptのPvuII/BsmI消化により得られる2つの内部断片のうち、3’側のPvuII−BsmI断片(0.9kbp)をp201のPvuII/BsmI消化後のベクター側を含む断片に挿入した(p203:図2)。(2)c−myc付加ヒト血漿アルブミン(HSA)発現ベクター:C34Cの構築HSA cDNAは、Hepatocyte mRNA(サワデーテクノロジー社)より一本鎖cDNA合成キット(ファルマシア社)を用いて調製したcDNAを鋳型として、以下の配列をもつプライマーで、前述の条件でPCRを行った。このPCR断片をXhoI/EcoRIで消化し、pBluscriptIIのXhoI/EcoRIサイトにクローニングし(pALB:図3)、全長をシークエンスしてフレームシフト等のエラーのないことを確認した。初めに、pALB内のXbaIサイトを、XbaI消化、T4ポリメレースによる平滑末端化、セルフライゲーションにより、欠失させた。次に、HSA cDNAの5’末端にXhoI、HindIII認識配列およびHSAのシグナル配列を、3’末端にフラッグとしてc−myc遺伝子の一部、SeP遺伝子の3’末端非翻訳配列の一部、XbaI、BamHI、およびEcoRI認識配列を付加するため、pALBを鋳型として下記プライマーを用いてPCRを行った(図3)。PCR条件はLATaqを用い、96℃20秒、68℃2分を30サイクル、その他は前述の場合と同様に実施した。得られた約1.8kbpの増幅断片をpCR2.1vectorにクローニングし、シークエンス解析により5’末端ATGからPvuIIサイトまでと、3’末端からSacIサイトまでについて正しい配列を有するクローンを選択した。このクローンをXhoI/EcoRIで消化し、pSP72に挿入した。このプラスミドのPvuII/SacI消化断片をPCR前の鋳型pALBのPvuII/SacIと入れ替えた(p110)。p203とp110をHindIII/XbaIで消化し、p203より得られた約3.5kbpのフラグメントにp110より得られた約1.9kbpフラグメントを挿入した(p111)。このp111内のPvuII/SacI断片とpALBのPvuII/SacI断片を入れ替えた後、そのプラスミドをHindIII/BamHIで消化し、得られた約2.9kbpのc−myc付加HSA断片をpCAG mcs(特願平8−165249(再公表公報WO97/46583))のHindIII/BamHIサイトに挿入し(p113)、これをC34C発現ベクターとした。(3)c−myc付加34番CysのSer及びSec変換HSA発現ベクター:C34S及びC34Uの構築HSA cDNA 5’末端に制限酵素XhoI、HindIII認識配列およびHSAのシグナル配列を付加し、ATGから約110bp下流のCys34をコードするコドンTGTをSerをコードするコドンTCA、あるいはSecをコードするコドンTGAに変換するため、pALBを鋳型として、PH1プライマーと下記プライマーを用いてPCRを行った(図3)。PCRの条件は前述の場合と同様である。得られた約200bpの増幅断片をpCR2.1ベクターにクローニングし、シークエンス解析によって正しい配列を有するクローンを選択した。これらを制限酵素BstPI/PvuIIで消化し、得られた断片をp110のBstPI/PvuII消化断片と入れ替えた。得られたクローンをそれぞれp120(C34S)、p130(C34U)とした。p203、p120およびp130をHindIII/XbaIでそれぞれ消化し、p203より得られた約3.5kbpのフラグメントにp120、p130より得られた約1.9kbpフラグメントをそれぞれ挿入した(p121、p131)。p121、p131内のPvuII/SacI断片とpALBのPvuII/SacI断片を入れ替えた後、そのプラスミドのHindIII/BamHI消化断片約2.9kbpをpCAG mcsのHindIII/BamHIサイトに挿入した(p123、p133)。これをそれぞれC34SおよびC34U発現ベクターとした。なお、p133のHindIII−BamHI挿入断片のDNA塩基配列を配列番号11に、その翻訳産物であるアミノ酸配列を配列番号10にそれぞれ示す。実施例2(改変アルブミン遺伝子の発現)(1)発現ベクターの細胞への導入導入DNAは以下のようにして調製した。構築した発現ベクターC34C、C34S、C34Uで大腸菌JM109(TOYOBO社)を形質転換し、250ml LB培地(1%tryptone,0.5%yeast extract,1%NaCl)中 37℃で一晩振盪培養し、アルカリSDS法によりプラスミドを精製した。得られたプラスミドDNA溶液より20μgを採取し、PvuIでベクター上の一カ所を消化切断、アガロース電気泳動により完全消化を確認した後、フェノール(phenol:CHCl3:isoamylalcohol=25:24:1)処理およびエタノール沈殿によりタンパク除去、核酸抽出し、脱パイロジェンの蒸留水に溶解した。2μgに相当する断片を細胞1well(2x105個)のトランスフェクションに使用した。導入細胞は以下の手順で準備した。CHO細胞(Chinese Hamster Ovary細胞;大日本製薬社)をシャーレ上で600ng/ml SeP断片(特願平10−347863(再公表公報WO00/31131))、10%FBS(Fetal Bovine Serum、ハイクローン社)含有RPMI1640(シグマ社)により増殖させた。トリプシンを作用させて細胞を剥離、懸濁し、細胞数を計算後、1.0x105cells/ml同培地の細胞液を調製した。培養用6wellテストプレート(Φ35mm)に2ml/wellで播種した。37℃、5%CO2条件下で一晩培養した。CHO細胞への遺伝子導入には、トランスフェクション用リポフェクチン溶液Trans−IT LT1(mirus社)を使用した。4mlポリスチレンチューブ中、無血清培地Opti−MEM(GIBCO BRL社)200μlとLT1 10μlをゆるやかに混和して室温に5分間放置した。次に導入するDNA断片2μgに相当する溶液を添加し、ゆるやかに混和して室温に5分間放置した(DNA/リポフェクチン複合体)。6wellプレートに播いた細胞の培養上清を吸引除去し、新しく同じ培地に交換した。DNA/リポフェクチン複合体溶液を全量1wellの細胞に添加した。ゆるやかに混ぜ、6時間から8時間37℃、5%CO2存在下で培養した。培養上清を新しい同培地と交換した。(2)安定形質転換細胞の獲得3日間同条件で培養後、0.4mg/ml G418(GIBCO BRL社)、10%FBS、600ng/ml SeP断片合有RPMI1640に培地交換した。3日間毎日同培地に培地交換し、その後8日間培地を換えずに培養した。6wellプレートの1wellに細胞が密にシートした後、トリプシン処理により細胞を剥離し、液体窒素に保管した。(3)発現産物の調製各安定形質転換細胞を15cm培養シャーレに10%FBS,600ng/ml SeP断片含有RPMI1640に懸濁して播き込んだ。培養後、PBSで洗浄し、600ng/ml SeP断片含有ASFに培地交換した。親株以外は0.4mg/ml G418を添加しておいた。3日間培養後上清160mlを回収し、0.22μmフィルターで細胞を除いた。分子サイズ10000カットの限外濾過膜(アミコン社)でC34Cは138.5倍、C34Sは80倍、C34Uは131倍に濃縮した。これを以下に述べるアッセイのサンプルとした。コントロールの培養上清としては、10%FBS,600ng/ml SeP断片含有RPMI1640を培地として親株を同様にまき、600ng/ml SeP断片含有ASFを無血清培地として同様に培養上清を得、最終的に130倍に濃縮した。(4)免疫沈降−ウェスタンブロットサンプルNo.1:C34C導入細胞培養上清濃縮液(138.5倍)、No.2:C34U導入細胞培養上清濃縮液(131倍)、No.3:親株CHOの培養上清濃縮液(130倍)、No.4:HSA、No.5:BSAをそれぞれ抗HSAアフィニティーセファロース(BETHYL社)を用いて次の要領で免疫沈降した。サンプルそれぞれを1.5ml試験管中で、Tween−20終濃度0.01%において抗HSAアフィニティーセファロース20μlと混和し、室温で1時間反応させた。その後6000rpmで5分間遠心し、沈殿したゲルをPBSで洗浄後、さらに0.1%Tween含有PBSで洗浄した。遠心後の沈殿に2xSDS sample buffer(還元剤不含)を20μl添加、混和して100℃で5分間熱処理した。遠心後、上清を等量ずつ2本のチューブに分け、ウェスタンブロットのサンプルとした。SDS−PAGE用12.5%アクリルアミドゲルを作製し、2枚に免疫沈降したサンプルNo.1〜5と分子量マーカー(Rainbow markers;Amersham社)を同じパターンで泳動した。泳動後のゲルをWestern blotに使用した。ブロッティング装置(ATTO社)を使用し、添付のプロトコールにしたがってPVDF膜にトランスファーした(それぞれをA、Bとする)。4%スキムミルク(DIFCO社)にPVDFを浸し、37℃で30分振盪した。一次抗体としてAは抗c−myc抗体のビオチンラベルを終濃度各1μg/mlになるように、もう一枚のBは抗HSA抗体HRP(Horse Radish Peroxidase)ラベルを終濃度0.2μg/mlになるように0.05%Tween,4%スキムミルク含有PBSに溶解し、PVDFをこれに浸し、37℃で1時間反応させた。0.05%Tween含有PBS(PBST)で洗浄後、Aは4%スキムミルクに浸して室温で5分振盪した。つぎにアビジンHRP標識試薬として、0.4%スキムミルク含有PBST中にVECSTATIN(VECTOR社PK−6100)の溶液を添付のプロトコールに従って調製し、PVDFをこれに浸し、37℃で30分反応させた。PBSTで洗浄後、A、BともにECL Plus(Amersham社)を用いて添付のプロトコールに従い化学発光をさせた。X線フィルム(コニカ社)に感光させ、現像液、定着液(ともにコニカ社)に順次浸して現像した。その結果を図4に示す。Aのレーン1および2ではC34CおよびC34U導入細胞の培養上清が抗c−myc抗体と反応しており、レーン3の親株の培養上清とレーン4のHSAおよびレーン5のウシ血清アルブミン(BSA)は全く反応しなかった。一方Bのレーン6、7、9ではC34CおよびC34U導入細胞の培養上清が抗HSA抗体と反応しており、レーン8の親株の培養上清およびレーン10のウシ血清アルブミンは全く反応しなかった。C34U導入細胞の培養上清に検出されたバンドの大きさから、34番目のSecでは翻訳が止まらず、34番目にSecが挿入されていると考えられた。(5)ELISAによる検出C34C、C34U、C34Sを導入したCHO細胞の培養上清中のアルブミン含量を測定した。各濃縮液についてHSA定量キット(Human Albumin ELISA quantitation Kit;BETHYL社)を利用し、添付のプロトコールに従ってHSAとしての量を測定した。その結果、表1に示すように、C34C、C34U、C34Sのいずれもがアルブミンとして検出できることがわかった。実施例3(改変アルブミンの調製)各改変アルブミン発現CHO細胞を10%FBS含有RPMI1640で培養、拡張し、15cmシャーレ31枚に1.0x105cells/cm2でまき、翌日PBSで細胞表面を洗浄後、1%FBS含有ASFを30mlずつ加え、5日間37℃(5%CO2)に培養した。培養上清を回収し、培地で1リットルにメスアップ後、0.45μmフィルターで濾過した。これをカラムへのアプライ源とした。抗HSA Sepharoseを1ml用意し、カラム(直径1.5cm)に充填後、PBSで平衡化した。平衡化はPBS、溶出は0.1M glycine,0.1M NaCl,pH2.8を使用した。溶出時、コレクション用の試験管にフラクション1mlに対し120μlの1M Tris pH8.0を入れておいた。すべて0.45μmフィルター濾過した。1リットルのタンパク溶液を抗HSAカラムに1.0ml/minの流速でアプライし、アプライ終了後、25ml PBSで洗浄した。その後溶出バッファーを同じ速度で流し、1ml/フラクションで集めた。吸光度A280を測定し、ピークの周囲5mlをプールして(図5)、Centricon10(MW 10,000cut、ミリポア社)で300μlまで濃縮した。各濃縮サンプルのSDS−PAGEの泳動パターンを図6に示す。なお、タンパク質の染色は銀染色(関東化学社)にて行った。実施例4(改変アルブミンのSe含量)C34Uの改変アルブミンがSeを含んでいるかどうかを調べるために、原子吸光法によるSe定量を行った。原子吸光測定機器としてパーキンエルマ;A Analyst600を使用した。Se標準液としてナカライテスク(株)セレン標準液1000ppmを用い、希釈液(0.04%デオキシコール酸ナトリウム,0.01%Triton X−100溶液)により希釈して検量線を作製した。C34Uについては、アルブミンとして15μg/ml濃度のタンパク溶液を、原子吸光測定用希釈液により2倍希釈したものを検体とした。C34Cについては、アルブミンとして15μg/ml濃度では検出限界以下であったので、1.8mg/ml濃度のタンパク溶液をC34Uと同様に希釈して検体とした。C34Sについては、アルブミンとして1.5mg/ml濃度のタンパク溶液を同様に希釈して検体とした。各サンプルの測定結果を表2に示す。その結果、C34Uは予想通りに、アルブミン1分子当たり1個のSeを含有していることが示された。実施例5(改変アルブミンの過酸化リン脂質還元活性)(1)基質phosphatidylcholine hydroperoxide(PCOOH):L−α−phosphatidylcholine,β−linoleoyl−γ−palmitoil(PLPC,シグマ社)100mgを5mM deoxycholate Na(ナカライテスク社)を含む0.2M Tris−HCl(pH8.8)500mlに溶解し、soybean lipoxydase(Biozyme laboratories社)を添加して30分間反応させた。反応後、酢酸エチルで抽出し、減圧乾固した後にMeOHに再懸濁した。これをカラムにTSKgel ODS−80Ts(φ8.0×250mm,TOSOH社)を、移動相にMeOH/H2O(93:7)を用いたHPLCにより精製した。精製したPCOOHの濃度は、cumene hydroperoxide(ナカライテスク社)を標準品としてヨードメトリー法によって決定した。(2)反応溶液の調製0.5mM EDTA 3Na(ナカライテスク社)、10mM NaN3(ナカライテスク社)、0.025%(v/v)Triton X−100(和光社)、0.3mM deoxycholate Na、2mM glutathione(GSH、ナカライテスク社)を含む0.1M Tris−HCl(pH7.4)の反応溶液を調製し、下に示した濃度になるようにサンプルを添加した。37℃で10分間反応後、基質として60nmol/mlとなるようにPCOOHを加えて反応を開始した。(3)HPLC用サンプルの調製各時間(0,2,4,8,24時間)反応後、反応溶液から30μlを回収し、2−propanol 270μlに懸濁した。その後、10000rpm、4℃で15分間遠心し、得られた上清をHPLC添加サンプルとした。(4)HPLCによるPCOOH定量カラムはTSKgel ODS−80Ts(φ4.6×250mm,TOSOH社)を、移動相は10mM coline cloride(和光社)を含むCH3CN/MeOH/H2O(75:21:4)を用い、流速1.5ml/minで行った。(3)で得られたHPLC添加サンプル50μlをHPLCカラムに添加した。PCOOHとその還元体であるPCOHの検出は、共役ジエンの吸収極大である234nmの吸収を測定して行った。標品として精製したPCOOHと、これをテトラヒドロホウ酸ナトリウム(和光社)で還元したPCOHを用い、これらのピークの面積を基準として反応溶液中のPCOOH、PCOHを定量した。(5)結果PCOOH量の経時変化と還元体であるPCOHの経時変化を図7に示す。いずれのサンプルを用いた場合にも、反応時間に依存したPCOOHの減少、PCOHの増加が見られた。各時間におけるPCOOH減少量とPCOH増加量はほぼ一致していることから、PCOOHは還元されてPCOHになっていると考えられる。各サンプルを加えた場合のPCOH増加量からコントロールであるGSHのみを添加した場合のPCOH増加量を差し引き、各サンプルに対し、近似曲線を引き、その傾きから、単位時間あたりのPCOOH還元量(nmol/hr/ml)を算出した(表3)。その値から各サンプルの比活性を求めた。結果を表3に示す。C34Uの比活性は8.4nmol/min/mgであった。この値はコントロールであるC34C(0.070nmol/min/mg)の約120倍、HSA(0.017nmol/min/mg)の約500倍であった。(従来技術より有効な効果)本願発明により得られた新規タンパク質は、活性酸素種、フリーラジカルによる生体分子の酸化的傷害いわゆる酸化ストレスの関わる疾患、とりわけ、老化、炎症、発ガン、自己免疫疾患、虚血再灌流障害、神経変性、動脈硬化などの病態に対する好適な治療および予防薬として提供される。【配列表】【図面の簡単な説明】図1はヒトセレノプロテインP cDNAの挿入されたプラスミドのマップを図2は改変アルブミン遺伝子の構築工程を表す模式図である。図3は改変アルブミン遺伝子の構築工程を表す模式図である。図4は発現された改変アルブミンのウエスタンブロットを示す写真である。なお、図中の(A)および(B)において各レーンは以下のとおりである。(A)レーン1:C34C、レーン2:C34U、レーン3:intact CHO、レーン4:化血研HSA、レーン5:BSA、(B)レーン6:C34C、レーン7:C34U、レーン8:intact CHO、レーン9:化血研HSA、レーン10:BSA。図5は改変アルブミン(C34U)発現細胞の培養上清を抗HSA抗体カラムに通液した際の溶出パターンを示す図である。図6は調製された各改変アルブミンのSDS−PAGEの泳動パターンを示す写真である。なお、図6において★は溶出画分を表す。図7は改変アルブミンの過酸化リン脂質還元活性の経時変化を示す図であり、上段のグラフはPCOOH量の経時変化を、下段のグラフはPCOH量の経時変化をそれぞれ表す。 セレノシステイン非含有タンパク質であるヒトアルブミンを基本骨格とし、当該タンパク質の1以上のシステインがセレノシステインに置換されるかあるいは1以上のセレノシステインの挿入または置換によって形成され、過酸化リン脂質還元活性が向上しており、配列番号9に記載のアミノ酸配列または該配列のうち34番目のセレノシステインを除く1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有することを特徴とする組換えセレノシステイン含有タンパク質。 セレノシステイン非含有タンパク質であるヒトアルブミンを基本骨格とし、当該タンパク質の1以上のシステインがセレノシステインに置換されるかあるいは1以上のセレノシステインの挿入または置換によって形成され、過酸化リン脂質還元活性が向上しており、配列番号9に記載のアミノ酸配列または該配列のうち34番目のセレノシステインを除く1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有することを特徴とする組換えセレノシステイン含有タンパク質をコードする遺伝子。 セレノシステイン非含有タンパク質遺伝子のアミノ酸コーディング配列の所望の位置にセレノシステインのコドンを有し、3'側の非翻訳領域にセレノシステイン挿入配列(SECIS配列)を有する、請求項2記載の遺伝子。 SECIS配列がセレノプロテインP遺伝子より選択される請求項3記載の遺伝子。 セレノシステイン非含有タンパク質遺伝子がアルブミン遺伝子である請求項2から請求項4のいずれかに記載の遺伝子。 請求項2から請求項5のいずれかに記載の遺伝子を使用して調製される請求項1記載の組換えセレノシステイン含有タンパク質。 請求項2から請求項5のいずれかに記載の遺伝子を使用する請求項1記載の組換えセレノシステイン含有タンパク質の調製方法。